鈴童の遊び
一日十句以上を千句詠む

(第9回)


No. 季 語 作句日
1 川床を途切れとぎれに泡立草 泡立草 13.8.12.
2 日を怖れ怯へしままに花茗荷 花茗荷 13.8.12.
3 日を怖れ隠れつ咲くや花茗荷 花茗荷 13.8.12.
4 首欠けし像にも花の地蔵盆 地蔵盆 13.8.12.
5 赤まんま埃かぶりし葉の汚れ 赤まんま 13.8.12.
6 好き好きと冷やかされをり蓼の花 蓼の花 13.8.12.
7 思ひ切り引けばずるりと藪がらし 藪がらし 13.8.12.
8 水引の花に顔寄せ眼が霞む 水引 13.8.12.
9 大柄のアメリカ女カンナ咲く カンナ 13.8.12.
10 齢重ねやや丸くなり田村草
(タムラソウは花がアザミに似ているが、葉に刺がない。)
田村草 13.8.12.
11 茶蜥蜴の池に身冷まし溺れをり 蜥蜴 13.8.13.
12 儚くてされど五月蠅き小蠅かな 13.8.13.
13 はたけども潰せど切りのない小蠅 13.8.13.
14 まくなぎを目閉じ息止め潜りけり まくなぎ 13.8.13.
15 焼け石をこともなげ行く蟻の列 13.8.13.
16 雌雄兼ね恋の昂ぶりなき蚯蚓 蚯蚓 13.8.13.
17 跳びはねて蚯蚓舞ひゐるデスダンス 蚯蚓 13.8.13.
18 木漏れ日の渓の瀬音や玉紫陽花 紫陽花 13.8.13.
19 さるすべり紅白続く並木道 百日紅 13.8.13.
20 梔子の老残の花香の重し 梔子の花 13.8.13.
21 高速道大揺れ止めぬ夾竹桃 夾竹桃 13.8.14.
22 うだる街ぼったりと咲く凌霄花 凌霄花 13.8.14.
23 瀬音背に渓から見上ぐ流れ星 流星 13.8.14.
24 山稜を星流れ行く渓深し 星流る 13.8.14.
25 一閃の星流れ落つV字谷 星流る 13.8.14.
26 樹の間から落ちくる滝の奥想ふ 13.8.14.
27 蟷螂にぎょっと手を引く吾可笑し 蟷螂 13.8.14.
28 腹の虫鳴けば蚯蚓も鳴きにけり 蚯蚓鳴く 13.8.14.
29 恋と言ふ昂ぶり持てず蚯蚓鳴く
(蚯蚓は雌雄同体)
蚯蚓鳴く 13.8.14.
30 ほろ酔ひで夕暮れ迎ふ酔芙蓉 酔芙蓉 13.8.14.
31 こころなし悔やむ風情や酔芙蓉 酔芙蓉 13.8.15.
32 千成の柿たわわなる無人駅 13.8.15.
33 捥ぐ人の無きままどれも木守柿 木守柿 13.8.15.
34 ポケットに塩飴のある猛暑かな 猛暑 13.8.15.
35 カザルスの弾く鳥の詩(うた)敗戦忌 敗戦忌 13.8.15.
36 玉音で殺戮収む敗戦忌 敗戦忌 13.8.15.
37 無駄な死を無駄とはせずや敗戦忌 敗戦忌 13.8.15.
38 ラジオ聞く人垣で知る敗戦忌 敗戦忌 13.8.15.
39 甲高い朕の声して敗戦忌 敗戦忌 13.8.15.
40 不決断ゆえのむだ死に敗戦忌 敗戦忌 13.8.15.
41 火事場ドロした国もあり敗戦忌 敗戦忌 13.8.16.
42 青空はあの日と同じ敗戦忌 敗戦忌 13.8.16.
43 九歳の児童も老ひし敗戦忌 敗戦忌 13.8.16.
44 怒りあり悲しみありて敗戦忌 敗戦忌 13.8.16.
45 原爆落ち島々取られ敗戦忌 敗戦忌 13.8.16.
46 過ちは繰り返さぬか敗戦日 敗戦忌 13.8.16.
47 敗戦日母子ですいとん食したり 敗戦日 13.8.16.
48 敗戦の後も蝗を煎りて食む 13.8.16.
49 車の屋根散りては汚す百日紅 百日紅 13.8.16.
50 咲き続け落花狼藉さるすべり 百日紅 13.8.16.
51 好きと言ひ否もまたあり百日紅 百日紅 13.8.17.
52 仏壇の供花の水換ふ秋暑かな 秋暑 13.8.17.
53 するすると庭走る影秋暑し 秋暑 13.8.17.
54 パソコンの突如へそ曲ぐ残暑かな 残暑 13.8.17.
55 稲妻に音を待てども光のみ 稲妻 13.8.17.
56 滝壺にうっすら浮かぶ秋の虹 滝・秋の虹 夏・秋 13.8.17.
57 取り合えず枝豆が出て乾杯を 枝豆 13.8.17.
58 とろろ汁老いの歯無しも笑顔見せ とろろ汁 13.8.17.
59 酒汲みつ待つほどに来る走り蕎麦 走り蕎麦・新蕎麦 13.8.17.
60 青竹に代へて添水(そうず)の音新た 添水 13.8.17.
61 学校田アルカイックな案山子たち 案山子 13.8.18.
62 敗戦日しのぶすいとん旨すぎぬ 敗戦日 13.8.18.
63 夏柳池面にダイブしかねをり 夏柳 13.8.18.
64 葉柳や池面に伸びる蛸の足 葉柳 13.8.18.
65 夏柳ひゅーどろどろと揺れてをり 夏柳 13.8.18.
66 若楓重なり合ふもなほ透けて 若楓 13.8.18.
67 風受けし襤褸の旗や破れ芭蕉 破れ芭蕉 13.8.18.
68 雨音のトレモロ聞かす芭蕉かな 芭蕉 13.8.18.
69 汗拭ふベンチを過ぎる青葉風 青葉 13.8.18.
70 桑の実の落果噎せ来る発酵臭 桑の実 13.8.18.
71 向日葵のすべて顔垂る記録の日 向日葵 13.8.19.
72 白馬岳望む木道独活の花 独活の花 13.8.19.
73 獅子独活の花咲き初めて白馬岳 独活の花 13.8.19.
74 掃苔やこの年々の繰り返し 掃苔 13.8.19.
75 流灯の向ひし先はニライカナイ 流灯 13.8.19.
76 無辜の死者嘲る国も原爆忌 原爆忌 13.8.19.
77 原爆忌季語に使いし句に怒り 原爆忌 13.8.19.
78 無花果を剥くより早く割りて食ふ 無花果 13.8.19.
79 酸橘(すだち)でも香母酢(かぼす)でもよし酎ロック 酸橘・香母酢 13.8.19.
80 乳房裏膕(ひかがみ)に汗浮かぶ夏 13.8.19.
81 句を捨てて戯作に活路西鶴忌 西鶴忌 13.8.20.
82 句作りに現ぬかせり西鶴忌 西鶴忌 13.8.20.
83 遅れ来て相方探す秋蛍 秋蛍 13.8.20.
84 秋の蚊の吾刺す力残しをり 秋の蚊 13.8.20.
85 秋の蜂命縮めつ巣の仕上げ 秋の蜂 13.8.20.
86 ひぐらしやかなかなと鳴き果てにけり ひぐらし 13.8.20.
87 お接待の番茶いただく秋遍路 秋遍路 13.8.20.
88 底紅や隣の国とのわだかまり 底紅・木槿 13.8.20.
89 藤棚や花の後には実も下げて 藤の実 13.8.20.
90 臭木の実草木染めたる空の青 臭木の実 13.8.20.
91 十四五本咲きて人呼ぶ鶏頭花 鶏頭花 13.8.21.
92 秘めごとは秘めてこそなり流れ星 流れ星 13.8.21.
93 一瞬の煌めき懸けて流れ星 流れ星 13.8.21.
94 象嵌の漆艶やか星月夜 星月夜 13.8.21.
95 雨戸手に目を合わせたる盆の月 盆の月 13.8.21.
96 薄雲の流れ気にせず盆の月 盆の月 13.8.21.
97 つくつくと痞(つか)へつ初音法師蝉 法師蝉 13.8.21.
98 蜩(ひぐらし)の声聞き急ぎ酒買ひに 13.8.21.
99 蜩の啼けば孤独が目を覚ます 13.8.21.
100 秋旱(ひでり)野菜に呼ばれ水撒きに 秋旱 13.8.21.
101 秋の雷聞きて雨欲る畑仕事 秋の雷 13.8.22.
102 白粉の花目覚めたり夕近し 白粉花 13.8.22.
103 ジンジャーの純白の花香で呼べり ジンジャー(花縮砂) 13.8.22.
104 とんとんと叩いて買ひし西瓜切る 西瓜 13.8.22.
105 向日葵向日葵の瞳明るく微笑めり 向日葵 13.8.22.
106 向日葵の黒目大きく笑む風情 向日葵 13.8.22.
107 向日葵の百のつぶらな瞳笑む 向日葵 13.8.22.
108 向日葵や百の瞳のつぶらなり 向日葵 13.8.22.
109 さるすべり花をこぼしつ花咲けり 百日紅 13.8.22.
110 芙蓉咲く一期一会の朝の風 芙蓉 13.8.22.
111 百日を花撒き散らすさるすべり 百日紅 13.8.23.
112 国破れ青山ありと敗戦忌 敗戦忌 13.8.23.
113 抜け殻も耳傾ける蝉しぐれ 蝉時雨 13.8.23.
114 青空や大殺戮の大花火
(狂気の原爆実戦実験に)
花火 13.8.23.
115 夏の海原子雲見し白昼夢 夏の海 13.8.23.
116 夏の海原子雲起つ白昼夢 夏の海 13.8.23.
117 向日葵や百の乳暈かも知れず 向日葵 13.8.23.
118 コスモスの縺れもつれて揺れにけり コスモス 13.8.23.
119 コスモスや花を揺らして風生めり コスモス 13.8.23.
120 風を呼ぶためにコスモス揺れるとや コスモス 13.8.23.
121 花蕎麦を降り積む白と酒汲まん 花蕎麦 13.8.24.
122 講釈の庵主も薬味走り蕎麦 走り蕎麦 13.8.24.
123 曖昧を許さぬ風情桔梗咲く 桔梗 13.8.24.
124 曖昧は許さじと咲く桔梗かな 桔梗 13.8.24.
125 路地の角ことしも芒穂を立てり 13.8.24.
126 地蔵堂供花青々と芒の穂 13.8.24.
127 萩の花一枝揺るればみなうねり 13.8.24.
128 すぐひらく百合のつぼみのいさぎよさ
(すぐひらく百合のつぼみをうとみけり 安住敦の句に)
百合 13.8.24.
129 鬼百合やおどろなりしは誰が咎 百合 13.8.24.
130 青鷺の杭一本に戻りけり 青鷺 13.8.24.
131 青鷺の威風不動のうちにあり 青鷺 13.8.25.
132 青鷺の威風不動に孤影あり 青鷺 13.8.25.
133 青鷺の睥睨続く杭の上 青鷺 13.8.25.
134 青鷺の塑像となりて杭日がな 青鷺 13.8.25.
135 猛暑中ちびたる筆で句を詠まん 猛暑 13.8.25.
136 扇風機つけてそよろの風紡ぐ 扇風機 13.8.25.
137 とんぶりの粒ぷちと噛む独り酒 とんぶり(箒草の実) 13.8.25.
138 とんぶりは畑のキャビアそう思ふ とんぶり 13.8.25.
139 交尾する雄蟷螂を待つ地獄 蟷螂 13.8.25.
140 まぐわいつ雌蟷螂の舌なめずり 蟷螂 13.8.25.
141 雄を食む雌蟷螂の小顔かな 蟷螂 13.8.26.
142 蝗取り遠く懐かし田面かな 蝗・稲子 13.8.26.
143 田面飛ぶ稲子ひょいひょい捕りし日々 稲子 13.8.26.
144 満杯の袋ざわめく蝗取り 13.8.26.
145 空鍋に蓋して炒りし蝗かな 13.8.26.
146 蝗はと田面に立てど影もなし 13.8.26.
147 早暁の庭に澄む音の草雲雀 草雲雀 13.8.26.
148 寝酒をと厨に立てばちちろ鳴く ちちろ・蟋蟀 13.8.26.
149 虫籠の鈴虫鳴きし弱冷車 鈴虫 13.8.26.
150 池の面を舞ふ蜉蝣(かげろう)の影薄し 蜉蝣 13.8.26.
151 猛暑の二字日記に並び草田男忌 草田男忌 13.8.27.
152 フィナーレの花火余さず上がりけり 花火 13.8.27.
153 こめかみに走る痛みやかき氷 かき氷 13.8.27.
154 こめかみに痛み走らせかき氷 かき氷 13.8.27.
155 畑に水撒けども乾ぶ大西日 大西日 13.8.27.
156
畑に水撒くはし乾ぶ大西日 大西日 13.8.27.
157 まぐわいし雄食む至福いぼむしり いぼむしり・蟷螂 13.8.27.
158 子規居士の血しぶき想ふ杜鵑草(ほととぎす) 杜鵑草 13.8.27.
159 子規居士の胸裂く血潮杜鵑草 杜鵑草 13.8.27.
160 胸裂ける子規に壮絶に杜鵑草 杜鵑草 13.8.27.
161 撓りつつ供花となりゐる杜鵑草 杜鵑草 13.8.28.
162 碑いしぶみ)の頭撫でるや青芒 杜鵑草 13.8.28.
163 青芒お地蔵さんをそつと撫で 青芒 13.8.28.
164 秋蛍ひとつ流れて終りけり 秋蛍 13.8.28.
165 秋蛍ひとつ流れて後は闇 秋蛍 13.8.28.
166 とやこうと云ふも勝手に酔芙蓉 酔芙蓉 13.8.28.
167 酔芙蓉酒臭きはずもあらねど 酔芙蓉 13.8.28.
168 白芙蓉盃に浮べて酔はせむか 芙蓉 13.8.28.
169 白芙蓉大葉重ねてたゆたへり 芙蓉 13.8.28.
170 稲妻の遠くにあれば佇みぬ 稲妻 13.8.28.
171 稲妻の走るを見つつ雨戸閉む 稲妻 13.8.29.
172 寝酒をと向ふ厨でちちろ鳴く ちちろ鳴く 13.8.29.
173 厨の灯点ければちちろ黙しけり ちちろ虫 13.8.29.
174 ジャズフルート神楽の笛と化しにけり
神楽 13.8.29.
175 油虫百万匹の大脱走
(中国・江蘇省大豊市で20日、薬材用のゴキブリが脱走)
油虫 13.8.29.
176 ちちろ鳴く厨の灯(ともし)点けかねて ちちろ鳴く 13.8.29.
177 水羊羹四角な匙でいただけり 水羊羹 13.8.29.
178 水羊羹白い歯の間を潜りけり 水羊羹 13.8.29.
179 お喋りのいっとき止まるかき氷 かき氷 13.8.29.
180 割り箸のアイスキャンディーまだあった 氷菓 13.8.29.
181 晩夏光二十四度のさわやかさ 晩夏光 13.8.30.
182 空蝉のぽとりと転げがらんどう 空蝉 13.8.30.
183 食まれると知りつまぐわふ雄蟷螂 蟷螂 13.8.30.
184 まぐわいて後は野となれ雄蟷螂 蟷螂 13.8.30.
185 まぐわいて食はるもよしと雄蟷螂 蟷螂 13.8.30.
186 みんみんとつくつくハモる第九かな 13.8.30.
187 夜通しの雨の上がりて涼新た 涼新た 13.8.30.
188 ポストから朝刊取りて涼新た 涼新た 13.8.30.
189 新涼や早や懐かしむ猛暑の日 新涼 13.8.30.
190 新涼や夜来の雨の置き土産 新涼 13.8.30.
191 パソコンのさっと起動し涼新た 涼新た 13.8.31.
192 ご近所と朝のあいさつ涼新た 涼新た 13.8.31.
193 新涼や定期検査に家を出る 新涼 13.8.31.
194 朝食のホットコーヒー涼新た 涼新た 13.8.31.
195 屋外機どの家も止まる初涼かな 涼新た 13.8.31.
196 ごみ出しの朝風旨し涼新た 涼新た 13.8.31.
197 ごみ出しの朝風清し初涼かな 初涼 13.8.31.
198 夜来の雨耐へて息絶ふ法師蝉 13.8.31.
199 新涼の朝法師蝉逝きにけり 13.8.31.
200 油蝉じぃじと一声逝きにけり 13.8.31.
201 前立腺男のぞう器涼新た 涼新た 13.9.1.
202 鳴きつくす蝉と競はん句を詠むを 13.9.1.
203 寅さんと鯛飯を食ふ虹の島
(今秋、北条鹿島に<お遍路が一列に行く虹の中>の句碑が建つ)
13.9.1.
204 ひと刷けの薄雲ありて秋の畑 13.9.1.
205 火鉢池めだか一匹だけになり めだか 13.9.1.
206 翅休め思案沈思の赤蜻蛉 赤蜻蛉 13.9.1.
207 吹き抜けて涼しき風の形かな 涼風 13.9.1.
208 蟷螂に一瞥くれて猫過ぎぬ 蟷螂 13.9.1.
209 雌が雄食ふ蟷螂の不道徳 蟷螂 13.9.1.
210 よろぼへば蟷螂あはれ蟻の山 蟷螂 13.9.1.
211 蟷螂の骨まで愛し雄を食む 蟷螂 13.9.2.
212 蟷螂に愛はまぼろし雄は餌 蟷螂 13.9.2.
213 まぐわいは死への近道雄かまきり 蟷螂 13.9.2.
214 仙人草絡み縺れて秋めけり 秋めく 13.9.2.
215 虫すだき大集団の夜這いかな 虫すだく 13.9.2.
216 虫すだき大集団の見合いかな 虫すだく 13.9.2.
217 虫すだき魑魅魍魎の宴かな 虫すだく 13.9.2.
218 虫の音や魑魅魍魎の大宴会 虫の音 13.9.2.
219 虫の闇魑魅魍魎の宴かな 虫の闇 13.9.2.
220 虫の闇交雑起きぬみそかごと 虫の闇 13.9.2.
221 蛇二匹肌合はせゐる川辺かな 13.9.3.
222 草揺らし肌絡ませる山かがし 蛇(山かがし) 13.9.3.
223 鷹の爪翅があればと天仰ぐ 鷹の爪 13.9.3.
224 切っ先を天に突き刺し鷹の爪 鷹の爪 13.9.3.
225 艶やかに炎を包む鷹の爪 鷹の爪 13.9.3.
226 天を衝く紅蓮の想ひ鷹の爪 鷹の爪 13.9.3.
227 赤とんぼ真似て両手を広げしも 赤蜻蛉 13.9.3.
228 瓢箪の重さを許す蔓想ふ 瓢箪 13.9.3.
229 はらわたを抜いてからから大瓢 瓢(ふくべ) 13.9.3.
230 はらわたを抜けば百年瓢かな 13.9.3.
231 処暑すぎて三十六度風死せり 処暑 13.9.4.
232 蟷螂も立ち眩みたる秋猛暑 蟷螂 13.9.4.
233 海原を沸き立たせゐる秋旱 秋旱 13.9.4.
234 秋の季語破り捨てたる猛暑かな 秋の季語・猛暑 秋・夏 13.9.4.
235 夏の季語殴り込みたる残暑かな 夏の季語・残暑 夏・秋 13.9.4.
236 上三段草木に隠る払子(ほっす)の滝 13.9.4.
237 上三段隠して払子の滝躍る 13.9.4.
238 羽目板を走るものの怪大守宮 守宮(やもり) 13.9.4.
239 頼まねど我が家に居つく守宮かな 守宮 13.9.4.
240 子守宮のベッドに落ちてひとさわぎ 守宮 13.9.4.
241 猛暑日の浅草で食むコロッケふたつ
(浅草六区の食堂「水口」でコロッケを肴にビールを飲む)
猛暑日 13.9.5.
242 伝言板消えていくとせ夏ダイヤ 13.9.5.
243 もののけに会へた思い出夏休み 夏休み 13.9.5.
244 廃村の火の見櫓に大西日 大西日 13.9.5.
245 茗荷の子土に指刺し摘みにけり 茗荷の子 13.9.5.
246 地下茎の長くしたたか茗荷摘む 茗荷の子 13.9.5.
247 先の葉をぽきぽきと摘むもろへいや 13.9.5.
248 瀬戸の海金波銀波の大西日 大西日 13.9.5.
249 媚もせず佇立してゐる夏薊 夏薊 13.9.5.
250 賢治の詩纏いて咲けり夏薊 夏薊 13.9.5.
251 もののけにたくさん会ったと夏休み 夏休み 13.9.6.
252 もののけにたくさん出会った夏休み 夏休み 13.9.6.
253 廃校舎学校わらしに会いし夏 13.9.6.
254 座敷わらし会へるかしらと夏休み 夏休み 13.9.6.
255 あした咲く蕾に笑むや花芙蓉 芙蓉 13.9.6.
256 一日を精いっぱいに咲く芙蓉 芙蓉 13.9.6.
257 一日の現(うつつ)咲き切る芙蓉かな 芙蓉 13.9.6.
258 一日の現がうれし芙蓉かな 芙蓉 13.9.6.
259 コスモスは倒れ傾き縺れ揺る コスモス 13.9.6.
260 コスモスや揺れて縺れて風のまま コスモス 13.9.6.
261
コスモスの揺れて縺るる日がなかな コスモス 13.9.7.
262 おのが殻脱げずに果てし蝉あはれ 13.9.7.
263 蟷螂の三角面(つら)が苛立たし 蟷螂 13.9.7.
264 理不尽と思へど蟷螂面憎し 蟷螂 13.9.7.
265 俳句らしい俳句つまらぬ鳥兜 鳥兜 13.9.7.
266 臍の茶もペットボトルか鳥渡る 鳥渡る 13.9.7.
267 理不尽と思へど蟷螂面憎し 蟷螂 13.9.7.
268 麦秋にひなとも日向臭きかな   麦秋 13.9.7.
269 陰と書きほとと声にす夏の恋 13.9.7.
270 鎌上げて蟷螂の貌ぺこと向く 蟷螂 13.9.7.
271 秋天や瀬戸の鹿島の句碑めぐり 秋展 13.9.8.
272 句碑並ぶ瀬戸の鹿島の展墓かな 展墓 13.9.8.
273 句碑たどり瀬戸の鹿島の墓参り 墓参り 13.9.8.
274 句碑と鹿数を競へる瀬戸鹿島 鹿 13.9.8.
275 居残りの佐平次決める残暑かな 残暑 13.9.8.
276 疎開児の空腹しのぐ歯磨き粉
(集団疎開児童のO君は、空腹に耐えかね、スモカ歯磨き粉を盗み食いして凌いだという。後年栄養障害の後遺症で片目を失明)
無季 13.9.8.
277 寅さんに明日はあしたと赤とんぼ
(風天<赤とんぼじっとしたまま明日どうする>に。)
赤とんぼ 13.9.8.
278 砂時計こぼれ続ける残暑かな 残暑 13.9.8.
279 威を振い川辺を塞ぐ葛の花 葛の花 13.9.8.
280 葛の花香しけれど大雑草 葛の花 13.9.8.
281 廃屋の庭を蔽いし葛の花 葛の花 13.9.9.
282 愛でられて嫌はれものの葛の花 葛の花 13.9.9.
283 廃村を包む花あり葛の花 葛の花 13.9.9.
284 他の草木蔽いてわが世葛の花 葛の花 13.9.9.
285 動くものあれば鎌上ぐいぼむしり いぼむしり・蟷螂 13.9.9.
286 交尾して雄の貌食むいぼむしり いぼむしり 13.9.9.
287 鰯雲見上げつ秋刀魚焼ひて食ふ 鰯雲・秋刀魚 13.9.9.
288 魚(さかな)雲見上げつ秋刀魚焼ひて食ふ 秋刀魚 13.9.9.
289 生身魂だれかと問へば他にゐず 生身魂 13.9.9.
290 渓深く瀬音の涼し宿更ける 涼し 13.9.9.
291 露草や女神の陰も濡れにけり 露草 13.9.10.
292 露草や女神の陰を濡らしけり 露草 13.9.10.
293 露草や女神の陰の濡れる夜も 露草 13.9.10.
294 龍田姫これは紅葉と裾隠し 龍田姫 13.9.10.
295 月明に兄妹のごと寝まるかな 月明 13.9.10.
296 閨の奥蚯蚓密かに鳴きにけり 蚯蚓なく 13.9.10.
297 秋の雲鼻毛を抜いてくしゃみかな 秋の雲 13.9.10.
298 冷奴庭の青紫蘇二枚ほど 冷奴・紫蘇 13.9.10.
299 到来の南瓜へちまの形して 南瓜・糸瓜 13.9.10.
300 宿坊の膳に載りたる芋茎和 芋茎 13.9.10.
 301  里山で摘みし零余子の五合ほど 零余子   秋 13.9.11. 
 302 紫蘇の実をしごいて摘めば爪染むる  紫蘇の実  秋  13.9.11.
 303 一日の花萎れたる茗荷摘む    茗荷の花   13.9.11. 
 304  手弱女と言ふはこれぞと花茗荷  茗荷の花    秋  13.9.11.
 305 鷹の爪赤く鋭く天指せり 鷹の爪   秋  13.9.11.
 306  唐辛子細身鋭き赤さかな 唐辛子   秋 13.9.11. 
 307  残照に真紅を磨く鷹の爪 鷹の爪   秋 13.9.11. 
 308 朝採りの谷中は味噌で食む旨さ   生姜(谷中   秋 13.9.11. 
 309   稲光する間に稲の花孕み  稲の花   秋 13.9.11. 
 310 早稲の香に疎開児のころ懐かしく   早稲の香  秋 13.9.11  
 311   ずっしりと頭(こうべ)を垂れる中稲(なかて)かな 中稲   秋  13.9.12. 
 312  中稲刈る越後平野はコシヒカリ  中稲   秋  13.9.12 
 313  落穂拾ひ昔語りにコンバイン  落穂拾い   秋  13.9.12 
 314  雀らの落穂残せよコンバイン  落穂   秋  13.9.12.
 315  棚田にて落穂を拾ふ初体験 落穂ひろい   秋   13..12.
 316 萌え出ても鋤き込まれゆく穭(ひつじ)かな  穭   秋   13.9.1. 
 317  醤油の香焼きもろこしに導けり  玉蜀黍   秋  13.9.12 
 318 開田村埋め尽くしたる蕎麦の花  蕎麦の花   秋  13.9.12.
 319  山里に紅白競ふ蕎麦の花   蕎麦の花   秋 13.9.12. 
 320 布団打つ主婦に負けじと胡麻叩く  胡麻叩く   秋  13.9.12.
 321 草の花てんでに伸びて咲きにけり   草の花    秋  13.9.13.
 322  頼まれもせずに庭埋む草の花  草の花    13.9.13. 
 323 背高を持て余しゐる紫苑かな 紫苑     13.9.13.
 324 ワイシャツの紅懐かしき鳳仙花  鳳仙花    13.9.13.
  325 白粉花摘んで遊びし娘(こ)も五十    白粉花    13.9.13.
 326 茨の実啄む鳥のありしかな  茨の実    13.9.13.
 327 野葡萄の実のとりどりに食へぬ色  野葡萄    13.9.13.
 328 茱萸の実のえぐみ懐かし山の道        茱萸    13.9.13. 
 329 みっちゃんにだけ茱萸の木の場所教へ 茱萸     13.9.13.
 330 枸杞の実の光透かせし紅眩し   枸杞の実     13.9.13.
  331 枯れ色の蟷螂のゐる山葡萄  蟷螂 ・山葡萄     13.9.14.
 332 名の由来少し憚る通草(あけび)かな
(「開けつび」がつづまったという。「つび」は女性器の古名。)
通草     13.9.14. 
 333  腹割って話そうと言ふあけびかな  通草     13.9.14.
334   破れ芭蕉襤褸の旗の矜持かな  破れ芭蕉     13.9.14.
 335  原色で貌を紛らすカンナかな  カンナ     13.9.14.
 336 新聞受け朝刊取れば秋めけり  秋めく     13.9.14.
 337  夜来の雨あがり新涼深く吸ふ  新涼     13.9.14.
 338  秋茄子やこつまなんきん風になり 秋茄子      13.9.14.
 339  葉陰から秋空見上ぐ花オクラ 秋空      13.9.14.
 340  花オクラ鄙には稀の風情あり 花おくら      13.9.14.
 341 早暁の眠りを破る秋の雷  秋の雷     13.9.15.
 342  涼風を置いて立ち去る秋の雷 涼風・秋の雷     13.9.15.
 343  トトロの池どんぐりぽとりとはまりけり どんぐり     13.9.15.
 345  佇みて木の実の落ちる音を聞く 木の実     13.9.15.
 346 もののけの袖触るるたび木の実落つ    木の実    13.9.15.
 347  八重もまた木の実拾ひて遊びしか  木の実  秋   13.9.15.
 348  石段に落ちて木の実のけんけんぱ 木の実     13.9.15.
 349 どんぐりが汗かいている幼の掌  どんぐり    13.9.15.
 350  ひと刷けの薄雲ありて白露かな  白露    13.9.15.
  351  上背を持て余しゐる紫苑かな 紫苑     13.9.16.
 352  石垣に尾を垂らしゐる秋の蛇  秋の蛇  13.9.16.
 353   身ひと筋に早瀬を渡る秋の蛇   秋の蛇    13.9.16.
  354  紐が瀬を渡り行くかと秋の蛇  秋の蛇    13.9.16 
 355  花蕎麦を雪見としゃれて酒汲めり  花蕎麦    13.9.16. 
 356  国境を自在に跨ぎ鳥帰る  鳥帰る    13.9.16. 
 357  無人駅燕旅立ち巣は空に 燕帰る     13.9.16. 
 358   敗戦忌飢へをしのぎし歯磨き粉 敗戦忌      13.9.16. 
 359 底紅と紛ふ畑の花おくら 底紅・花おくら     13.9.16. 
 360   ひと刷けの雲の流るる白露かな 白露     13.9.16. 
 361  青柿や死を賜りて落果せり 青柿  夏   13.9.17. 
 362  青柿の転げ込みたる轍かな  青柿   13.9.17. 
  363   星月夜星の雫を盃に受け 星月夜   秋  13.9.17. 
 364  おやすみと友送り出し星月夜  星月夜   秋  13.9.17. 
 365  家路辿りまなこ上ぐれば星月夜  星月夜   秋  13.9.17. 
 366  投稿句ポストに投じ獺祭忌 獺祭忌   秋  13.9.17. 
 367  鋤き込みて畝ふっくらと大根蒔く 大根蒔く   秋  13.9.17. 
 368  仰向けにじいと一声秋の蝉  秋の蝉  秋  13.9.17. 
 369  無人駅蠅取リボンついと揺れ 蠅取リボン   夏  13.9.17. 
 370   蠅取紙死屍累々の虫の影 蠅取紙   夏  13.9.17. 
 371 日雷火球走らす水の中  日雷    13.9.18. 
 372 水中を火球走るや日雷   日雷    13.9.17. 
 373  御魂乗せ彼岸へ帰る茄子の馬 茄子の馬     13.9.17. 
 374  辻に立つ地蔵に供ふ青芒 青芒     13.9.17. 
 375 辻立ちの地蔵に供ふ青芒  青芒     13.9.17. 
 376 辻地蔵供花には青き芒かな  青芒     13.9.17. 
 377  掛け布団足先包み涼新た  涼新た    13.9.17. 
 378  青柿の従容として落ちにけり  青柿    13.9.17. 
 379  青柿の利休に似たる落果かな   青柿    13.9.17. 
 380   青柿の掟厳しき落果かな       青柿    13.9.17. 
 381 秋暁や首まで上ぐる掛け布団  秋暁    13.9.18. 
 382 用足しのペダルを踏みて爽やかに 爽やか    13.9.18. 
 383 敗戦忌飢えし児ら食ふ歯磨き粉  敗戦忌    13.9.18. 
 384  敗戦忌スモカ歯磨き食みし飢餓    敗戦忌     13.9.18. 
 385 ほんとうは秋かも知れず夜の秋 夜の秋     13.9.18. 
 386 どぶろくを椀に注ぎて祝重九 重九     13.9.18. 
 387  孫くれし青春きっぷ秋の旅 秋     13.9.18. 
 388  死に顔は別人のごと菊の中 菊     13.9.18. 
 389  青柿や突き放されて死出の旅 青柿     13.9.18. 
 390   猛々しき大葉従へ葛の花      葛の花    13.9.18. 
 391 里の道お出でおいでと芒の穂  芒    13.9.19. 
 392  村はずれ墓一基あり曼珠沙華  曼珠沙華    13.9.19. 
 393 隠田に一基の墓や曼珠沙華   曼珠沙華    13.9.19. 
 394 貯水湖の空に水尾描き鳥渡る  鳥渡る    13.9.19. 
 395 秋雲や芭蕉子規虚子俳の道  秋雲    13.9.19. 
 396 早暁の鳥の飛び立つ白露かな  白露    13.9.19. 
 397 早暁の鳥の声聞く白露かな   白露  13.9.19. 
 398 朝散歩長袖となる白露かな   白露    13.9.19. 
 399  散歩道長袖増ゆる白露かな   白露    13.9.19. 
 400    猛々し葉の重なりや葛の花         葛の花    13.9.19. 
 401  青柿の落ちしを拾ひ絵手紙に   青柿     13.9.20. 
 402 秋の雲堀に映りし天守閣   秋の雲     13.9.20. 
 403   トンネルを抜ければ眩し稲田かな 稲田     13.9.20. 
 404  国宝の天守で触るる秋の風 秋の風     13.9.20. 
 405  国宝の天守吹き抜け秋の風  秋の風     13.9.20. 
 406  国宝の天守仰ぎつ走蕎麦  走り蕎麦    13.9.20. 
 407  新蕎麦や松本城の天守閣 新蕎麦     13.9.20. 
 408  箸置いてそば湯飲み干す走蕎麦  走り蕎麦     13.9.20. 
 409  新走干して箸とる走蕎麦   走り蕎麦    13.9.20. 
 410 どぶろくの米の形を噛みつ飲む   どぶろく     13.9.20. 
 411  柚子味噌を舐(ねぶ)り酒飲み飯を食む 柚子味噌     13.9.21. 
 412   秋遍路ゆくには遠く鈴鳴らす   秋遍路     13.9.21. 
 413  火鉢池水溢れをり野分中 野分中     13.9.21. 
 414  野分雨池を飛び出し鯉狼狽  野分    13.9.21. 
 415  野分雨池を飛び出し跳ねる鯉  野分    13.9.21. 
 416  列島を袈裟懸けにして野分過ぎ  野分    13.9.21. 
 417  野分雨池面たたけど鯉悠々  野分    13.9.21. 
 418  観光客去りてほんとの風の盆  風の盆    13.9.21. 
 419  鴉鳴く野分の去りし合図かな 野分   13.9.21. 
 420   野分去り無事を告げゐる鴉かな 野分    13.9.21.
 421  爪痕といふ不幸置き野分去る 野分     13.9.22.
 422  芋虫の見つかればすぐ踏まれけり 芋虫     13.9.22.
 423  蓑虫は糸一本の命かな 蓑虫     13.9.22.
 424  夕日背に男の孤影秋遍路  秋遍路    13.9.22.
 425   夕日背に影を伸ばして秋遍路   秋遍路   13.9.22.
 426  寅さんの句碑立つ鹿島秋遍路  秋遍路     13.9.22.
 427  空耳か足止めて聴く鉦叩 鉦叩き     13.9.22.
 428  間引菜の命を惜しみ汁の具に 間引菜     13.9.22.
 429  鷹の爪干さるるほどに艶やけり 鷹の爪     13.9.22.
 430  野分去り雲間の夕日きはやかに  野分    13.9.22.
 431  台風の暴れ暴れて立ち去れり 台風     13.9.23.
 432  エアコンを止めて窓開く雁渡し 雁渡し     13.9.23.
 433   大風雨どこで避けたか虫時雨 虫時雨     13.9.23.
 434  大嵐去り十六夜の月眩し 十六夜の月     13.9.23.
 435  間引菜の間引かれたるはあはれかな  間引菜    13.9.23.
 436 間引菜の間引く端からへたりけり  間引菜     13.9.23.
 437 間引菜の間引く端からへたりをり   間引菜    13.9.23.
 438  採る人もなくてたわわの零余子(むかご)かな  零余子    13.9.23.
 439  零余子をば四五個ほど採り持て余し   零余子    13.9.23 
 440 蓮の実の爆ぜ飛ぶ池の水輪かな  蓮の実     13.9.23.
 441   とき経たる定めやあはれ破れ蓮(はちす)     破れ蓮     13.9.24.
 442 月見するその間もふえる汚染水 月見     13.9.24.
 443 名月の雲ひとつなく野良照らす  名月     13.9.24.
 444  畑の物団子と並べ良夜かな 良夜      13.9.24.
 445  けふの月芒はなくて団子だけ  月・芒     13.9.24.
 446 パソコンのキー叩きゐる良夜かな  良夜     13.9.24.
 447 キーボード叩ひてカメラ買ふ良夜  良夜     13.9.24.
 448 名月やパソコンで聴くベートーヴェン  名月      13.9.24.
 449 雨戸開けカメラ持ち出す月見かな  月見     13.9.24.
 450 満月の時間を告げる妻の声  満月     13.9.24.
 451    名月やまたまみえるか八年後          名月  13.9.25.
 452 汚染水漏れ入る海の良夜かな  良夜   13.9.25.
 453 名月や汚染を海は語らねど  名月   13.9.25.
 454 柿の木や落柿の果ての実りなり     13.9.25.
 455  柿の木や落柿ありての実りなり   13.9.25.
 456  選ばれて枝を離るる落柿かな  柿      13.9.25.
 457 初々し若いが栗の薄緑      13.9.25.
 458   毬栗の幼が二つ薄緑 毬栗      13.9.25.
 459  道ふさぐ毬栗どれも薄緑 毬栗      13.9.25.
 460  毬栗をまたぎ疲れて散歩道 毬栗      13.9.25.
 461  散歩道ここに吾よと吾亦紅     吾亦紅      13.9.26.
 462  散歩道吾が居るよと吾亦紅  吾亦紅      13.9.26.
 463  夕焼けに影かと見れば吾亦紅  吾亦紅      13.9.26.
 464 神さまも意表をつくや吾亦紅  吾亦紅       13.9.26.
 465 吾亦紅一つと見れば花穂五つ  吾亦紅      13.9.26.
 466  これもまた花の仲間や吾亦紅  吾亦紅      13.9.26.
 467  目立たぬは目立ちの極意吾亦紅  吾亦紅      13.9.26.
 468  五分刈りの美女想はせる吾亦紅  吾亦紅       13.9.26.
 469  名月や立待居待寝待追ふ  月     13.9.26.
 470  仲秋や立待居待寝待追ひ  月     13.9.26.
 471 十六夜も立居寝待も月見酒    十六夜・月見酒     13.9.27.
 472 満月や寝待に至る月見酒  満月・月見酒    13.9.27.
 473  濁酒(どぶろく)で献杯したる既望かな  濁酒・既望     13.9.27.
 474  赤い月(ルナロッサ)中天に来て十六夜に 十六夜     13.9.27.
 475  居待月現れぬまま月見酒 居待月・月見酒      13.9.27.
 476   飲み終へて夜空仰げば立待の月  居待月      13.9.27.
 477 青毬栗踏んでもいいよと道ふさぐ 毬栗     13.9.27.
 478  毬栗を踏みかね跨ぐ散歩道 毬栗     13.9.27.
 479  毬栗の一枝飾りし竹の筒 毬栗     13.9.27.
 480  口火切る月見の酒や小望月 月見酒・小望月     13.9.27.
 481  濁酒で待てど居待は雲の奥 濁酒・居待月     13.9.28.
 482  金水引ゆらりと揺れて西日中 水引草・西日  秋・夏  13.9.28.
 483  蔓穂揺る色なき風の通り道 色なき風    13.9.28.
 484  登校の児ら急ぎ足曼珠沙華 曼珠沙華    13.9.28.
 485  散歩する人影長し曼珠沙華  曼珠沙華     13.9.28.
 486 曼珠沙華白もまじりて華やげり  曼珠沙華     13.9.28.
 487 供花筒に挿され艶やか彼岸花  彼岸花     13.9.28.
 488   夕日浴び天蓋の花きらめけり
 天蓋花     13.9.28.
 489   大揺れに揺れて知らせる吾亦紅
 吾亦紅     13.9.28.
 490   影伸ばす蔓穂の花穂に秋の蝶
 秋の蝶     13.9.28. 
 491 残照の色艶染めて柿実る
 柿    13.9.29.
 492   青空や毬栗転げ薄緑
 毬栗    13.9.29.
 493 爽籟に頬撫ぜられる洗車かな
 爽籟    13.9.29.
 494   爽籟に頬撫ぜられつ庭仕事
 爽籟    13.9.29.
 495   洗車して菩提寺に行く秋彼岸
 秋彼岸    13.9.29.
 496   精霊がきちきちと鳴き過りけり
 精霊飛蝗    13.9.29.
 497   きちきちと翅音を残し飛蝗消ゆ
 飛蝗    13.9.29.
 498 負んぶ飛蝗別れて飛べりさもあらん
 飛蝗    13.9.29.
 499   負んぶ飛蝗飛ぶときゃ他人さもあらん
 飛蝗    13.9.29.
 500  栗覗くいがを跨げば雲速し  毬栗    13.9.29.
 501  子供減り地付きも老ひぬ秋祭  秋祭    13.9.30.
 502   菓子袋今年も余る秋祭   秋祭     13.9.30.
 503  菓子袋欲しがらぬ子ら里祭
 里祭     13.9.30.
 504   太鼓打つ役も老ひたる里祭
 里祭     13.9.30.
 505   ラジカセの祭囃子や里の秋
 里祭     13.9.30.
 506   世話役は年寄ばかり秋祭
 秋祭     13.9.30.
 507   子らの声聞こへず終る里祭
 里祭     13.9.30.
 508   夕凪の金波銀波や秋遍路
 秋遍路     13.9.30.
 509   シルエットの島影浮かぶ秋遍路
 秋遍路     13.9.30.
 510   瀬戸の凪金波銀波の秋遍路
  秋遍路     13.9.30.
 511   瀬戸凪いで金波まぶしき秋遍路
  秋遍路     13.10.1.
 512   鶺鴒の走り尾を振りまた走り
 鶺鴒    13.10.1.
 513
  椋鳥の百羽を納む一樹かな
 椋鳥    13.10.1.
 514 鳩小屋の柔毛(にこげ)舞ひ上ぐ秋の風
 秋風    13.10.1.
 515 速き雲追いかけるごと鳥渡る
 鳥渡る     13.10.1.
 516   雲速し競ふがごとく鳥渡る
 鳥渡る     13.10.1.
 517 ゆるやかに空に尾を引き鳥渡る
 鳥渡る     13.10.1.
 518 列島に影を走らせ鳥渡る
 鳥渡る     13.10.1.
 519     待つ間酒ブレーキかけつ走り蕎麦
 走り蕎麦     13.10.1.
 520  青い目も音たてて食む走り蕎麦
 走り蕎麦    13.10.1.
 521 待つ間昼酒となる走り蕎麦
 走り蕎麦    13.10.2.
 522 「菊と刀」てふ書を読みぬ菊膾
 菊膾    13.10.2.
 523  懐石の品書きのなか菊膾  菊膾     13.10.2.
 524  花びらを食む鳥もをり菊膾  菊膾     13.10.2.
 525  盃に花びら浮かべ菊の酒  菊膾     13.10.2.
 526   蕉翁の句にあやかりて菊の酒
(草の戸に日暮れてくれし菊の酒 芭蕉)
 菊酒     13.10.2.
 527  秋冷や電車待つ間もスマホかな  秋冷     13.10.2.
 528  膏薬を剥がすがごとく牛蒡引く  牛蒡引く     13.10.2.
 529  路地行けば雨戸閉ず音そぞろ寒  そぞろ寒     13.10.2.
 530 安全と言ひ切る軽さそぞろ寒   そぞろ寒     13.10.2.
 531  虫すだく夜ごとの宴果てにけり
 虫すだく     13.10.3.
 532   遅れ来てかぼそき声のきりぎりす
 きりぎりす    13.10.3.
 533   芒道遍路の覗くジー・ピー・エス
 芒    13.10.3.
 534   虫すだき遍路の鈴も和しにけり
 虫すだく    13.10.3.
 535   露草で下絵の線や加賀友禅
 露草    13.10.3.
 536   露草で描きし下絵加賀友禅
 露草    13.10.3.
 537   露草で淡き下絵の加賀友禅
 露草    13.10.3.
 538   赤い実は花水木なり鳥渡る
 鳥渡る    13.10.3.
 539   はなみずき赤き実をつけ九月尽
 九月尽    13.10.3.
 540   野葡萄や実のてんでんに色競ふ
 野葡萄    13.10.3.
 541   野葡萄の実の七色もありそふな
 野葡萄    13.10.4.
 542   実の色はスクールカラー山葡萄
 山葡萄     13.10.4.
 543   墓地に咲き供花にはならぬ曼珠沙華
 曼珠沙華     13.10.4.
 544   髪掻けば黒髪混じる秋日中
 秋日中     13.10.4.
 545   露草の水も遣らぬに露を載せ
 露草     13.10.4.
 546   露草の健気に咲くや庭の隅
 露草     13.10.4.
 547   朝露を載せし露草九月果つ
 露草     13.10.4.
 548   頸の骨こきと鳴らせば秋茜
 秋茜     13.10.4.
 549   紅葉に赤い実重ね花みずき
 紅葉     13.10.4.
 550   夕日浴び黄金仏の秋遍路
 秋遍路     13.10.4.
 551   夕日浴び金無垢となる秋遍路  秋遍路     13.10.5.
 552  夕日浴び金無垢像や秋遍路
 秋遍路     13.10.5.
 553   ウォーキングやめて家居に秋茜
 秋茜     13.10.5.
 554   蝉殻の五個連なりし被覆線
(狛江・泉竜寺の施餓鬼で)
 蝉殻     13.10.5.
 555   焼き秋刀魚ありと墨書の定食堂
 秋刀魚     13.10.5.
 556   七輪で火煙り猛る秋刀魚焼き
 秋刀魚     13.10.5.
 557   焼き秋刀魚骨だけ残る父の皿
 秋刀魚     13.10.5.
 558   じゅうじゅうと燻(ふす)ぼる秋刀魚音も食ふ
 秋刀魚     13.10.5.
 559   怪我をせしその道筋の秋薊
 秋薊     13.10.5.
 560   声高に下校の児らや曼珠沙華
 曼珠沙華     13.10.5.
 561   たん瘤も痣も消へたり萩の花
 萩     13.10.6.
 562   葉鶏頭昼ひとり居のロゼワイン
 葉鶏頭     13.10.6.
 563   接待もおもてなしなり秋遍路
 秋遍路     13.10.6.
 564   新蕎麦の待つ間が嬉し蕎麦屋酒
 新蕎麦     13.10.6.
 565   パソコンに句を打ち込みて九月尽
 九月尽     13.10.6.
 566   爽籟に頬なでられて九月尽
  九月尽     13.10.6.
 567   ごみ出しの朝の青空九月尽
  九月尽     13.10.6.
 568   一斉に政治家の襟赤い羽根
 赤い羽根     13.10.6.
 569   どの供花も鶏頭混じる秋彼岸
 秋彼岸     13.10.6.
 570   シャンソンを口ずさむ妻秋の雲
 秋     13.10.6.
 571   片言も季語次第なり鰯雲
 鰯雲     13.10.7.
 572   手づかみの速さ競ひし蝗採り
 蝗     13.10.7.
 573   秋薊呼び名をすでに三度変へ
 秋薊     13.10.7.
 574   上水路歩く分だけ芒かな
 芒     13.10.7.
 575   つんと立ちときに辞儀する芒かな
 芒     13.10.7.
 576   秋深しキース・ジャレットを独り聴く
 秋深し     13.10.7.
 577   カレンダー捲ればついと秋の蠅  秋の蠅     13.10.7.
 578  生と死の交はるあたり鰯雲
 鰯雲     13.10.7.
 579   秋深しキースの紡ぐジャズピアノ
  秋深し     13.10.7.
 580   迷い出てのたうつ蚯蚓なけるかな
 蚯蚓鳴く     13.10.7.
 581   雁渡し汚染粒子も運び来ぬ
 雁渡し     13.10.8.
 582   雁渡し汚染粒子といふおまけ
 雁渡し    13.10.8.
 583   秋雨や電動ソーの唸り止む
 秋雨    13.10.8.
 584 刈萱の道すれ違ふ父子哀し
 青北風    13.10.8.
 585
  青北風はや厚着する散歩犬
 青北風    13.10.8.
 586   雨雫払ひもせずに鶏頭花
 鶏頭花    13.10.8.
 587   秋雨のけふは休めと野良仕事
 秋雨    13.10.8.
 588   水澄みて老爺の顔が映りけり
 水澄む    13.10.8.
 589   水澄みて山椒魚のくしゃみかな
 水澄む    13.10.8.
 590   雨だれの音に気付きし秋時雨
 秋時雨    13.10.8.
 591   晩秋のベンチに載りし落ち葉かな
 晩秋    13.10.9.
 592   鳴くならば笑ふ蚯蚓もありぬべし
 蚯蚓鳴く     13.10.9.
 593   秋風や心吹き抜け句の生まる
 秋風     13.10.9.
 594   秋風にふっと消へたる人の影
 秋風     13.10.9.
 595   また一枚葉を落としゆく秋の風
 秋風     13.10.9.
 596   だだこねて泣く子の頬を秋の風
 秋風     13.10.9.
 597   句会には色なき風も招き入れ
 色なき風     13.10.9.
 598   やつほーと山の谺や吾亦紅
 吾亦紅     13.10.9.
 599   目の端にあれと見直す吾亦紅   吾亦紅     13.10.9.
 600
 目の端にあれと見直す吾亦紅
 吾亦紅     13.10.9.
 601   山登る歩幅に合せ濃竜胆
 竜胆     13.10.10.
 602   草漕ぎの入口あたり濃竜胆
 竜胆    13.10.10.
 603   山鳥の鋭き声や笹竜胆
 竜胆    13.10.10.
 604   尼寺や垣に真紅のさねかずら
 さねかずら    13.10.10.
 605   尼僧立つ庭に真紅のさねかずら
  さねかずら    13.10.10.
 606   老尼住む庵に赤きさねかずら
  さねかずら    13.10.10.
 607   庭下駄の老尼指さすさねかずら
  さねかずら    13.10.10.
 608   足止まる真紅の実なりさねかずら
  さねかずら    13.10.10.
 609   露草の毟り残せし庭仕事
 露草    13.10.10.
 610   露草を踏み分けかねしガス検針
 露草    13.10.10.
 611   枯れ蔓に赤き実託す烏瓜
 烏瓜    13.10.11.
 612   残照を裏表浴び烏瓜
 烏瓜    13.10.11.
 613   青空に赤き実吊るす烏瓜
 烏瓜    13.10.11.
 614   鎌上げし蟷螂にらむ仁王像
 蟷螂    13.10.11.
 615   蟷螂は世界を敵に鎌構へ
 蟷螂    13.10.11.
 616   秋茗荷つぎつぎに摘みつぎつぎと
 秋茗荷     13.10.11.
 617   爽籟に背中撫でられ菜を間引く
 爽籟    13.10.11.
 618 風天のじっと見つめる赤とんぼ
 赤とんぼ    13.10.11.
 619  風天のじっと見ている赤とんぼ  赤とんぼ    13.10.11.
 620   穂紫蘇摘む鋏の音にリズムあり
 紫蘇の実    13.10.11.
 621  炊き上げし紫蘇の実食みつ独り酒  紫蘇の実    13.10.12.
 622   枯れるほど艶増す赤き唐辛子
 唐辛子     13.10.12.
 623 椋鳥に一樹膨らむ夕間暮れ
 椋鳥     13.10.12.
 624   鳴くならば笑ふ蚯蚓もありしかな  蚯蚓鳴く     13.10.12.
 625 蟷螂やすぐ身構へる怯え虫
 蟷螂     13.10.12.
 626   蟷螂は威力業務の常習犯
 蟷螂     13.10.12.
 627
  蟷螂や武力依存の国に似て
 蟷螂     13.10.12.
 628   かまきりや恐がられても愛されず
 蟷螂     13.10.12.
 629   しめやかに十月桜江戸城址
 十月桜     13.10.12.
 630   ゆるキャラの案山子と遊ぶ雀かな
 案山子     13.10.12.
 631   ゆるキャラがべそをかきをり捨案山子
 捨案山子     13.10.13.
 632   石垣の隙間に尾垂る秋の蛇
 秋の蛇    13.10.13.
 633   二度入る夜更けの風呂や暮の秋
 暮の秋    13.10.13.
 634   顎浮かべ夜更けの風呂にちちろ聴く
 ちちろ    13.10.13.
 635   花びらを鳥も食むなり菊膾
 菊膾    13.10.13.
 636   菊膾鳥の気持ちで箸をつけ
 菊膾    13.10.13.
 637   菊膾鳥の気持ちで食みにけり
 菊膾    13.10.13.
 638   九里香のふと流れ来る句会道
 九里香    13.10.13.
 639   策越しにここよと香る金木犀
 金木犀    13.10.13.
 640   そこはかとなき香の方に金木犀
 金木犀    13.10.13.
 641   そこはかとなき香を追へば金木犀
 金木犀    13.10.14.
 642 歩を止めて鼻つき出せば金木犀
 金木犀    13.10.14.
 643   散り花で根方も香る金木犀
 金木犀    13.10.14.
 644   木犀の香を焚きこめて路地の風
 木犀    13.10.14.
 645   膾食むクリッサンセマム・モリフォリウム
 菊膾    13.10.14.
 646  懐石にいろどり添へて菊膾
  菊膾    13.10.14.
 647   花色を目でも食むなり菊膾    菊膾    13.10.14.
 648 秋深しもってのほかが膳に載る
 秋深し    13.10.14.
 649 駅弁に彩添へる菊膾
  菊膾    13.10.14.
 650   蕉翁も好んで食みし菊膾
  菊膾    13.10.14.
 651   蕉翁と膳ともにする菊膾
  菊膾   13.10.15.
 652   悪処嗜好のぞけば可愛秋の蠅
 秋の蠅    13.10.15.
 653   遅れ来し陰なく遊ぶ秋の蠅
  秋の蠅    13.10.15.
 654   窓ガラス垂直登攀秋の蠅
  秋の蠅    13.10.15.
 655   わきまえて独り遊びの秋の蠅
  秋の蠅    13.10.15.
 656   老ひてなほ恋の夢見る黄落期
 黄落    13.10.15.
 657   ハケの水黄落洗ふ野川かな
 黄落    13.10.15.
 658   木道を辿る一歩の初紅葉
 初紅葉    13.10.15.
 659   通し鴨泳ぐ野川の初紅葉
 初紅葉    13.10.15.
 660   ハケの水集めし野川うすもみじ
 薄紅葉    13.10.15.
 661   木道を誘ふ雑木もみじかな
 薄紅葉    13.10.16.
 662   気短に桜もみじが葉をこぼす
 桜紅葉     13.10.16.
 663   高架橋電車がよぎる新松子
 新松子     13.10.16.
 664   鏡池水輪が二つ木の実落つ   木の実     13.10.16.
 665  秋日浴び野川に群れるお化け蝌蚪
(野川吟行で)
 秋日     13.10.16.
 666   百万の蝶舞ふごとし秋桜
(野川吟行で)
 秋桜     13.10.16.
 667  さらさらと十月桜風に舞ふ  十月桜     13.10.16.
 668
  そっと咲き十月桜そっと散る
  十月桜     13.10.16.
 669   ひめやかに十月桜散り初めり
  十月桜     13.10.16.
 670   ひめやかに十月桜風に舞ふ
  十月桜     13.10.16.
 671   なに恥じて頭垂れるや思ひ草
  思ひ草     13.10.17.
 672   パラサイト恥じて頭を下ぐ思ひ草
  思ひ草     13.10.17.
 673   名を解きつ吟行の道草の花
 草の花      13.10.17.
 674   通し鴨泳ぐ野川の思ひ草
 思ひ草     13.10.17.
 675   ひめやかな十月桜見上ぐ吾
 十月桜     13.10.17.
 676   花を食む鳥の心地や菊膾
 菊膾     13.10.17.
 677 気が付けば裾にびっしりいのこづち
 いのこづち     13.10.17.
 678   吟行の裾に土産のいのこづち
  いのこづち     13.10.17.
 679   剪定も摘果もせずに柿たわわ
 柿     13.10.17.
 680  狂い咲く染井吉野や寒露の日  寒露     13.10.17.
 681 越年の巨大蝌蚪ゐる秋の川
 秋の川     13.10.18.
 682   三十度これが寒露の日とはまた
 寒露     13.10.18.
 683   句会から汗して戻る寒露かな
 寒露     13.10.18.
 684   歳時記の溜息つきし秋の夏
 秋     13.10.18.
 685   真上には綿雲一つきせる草
 きせる草   13.10.18.
 686   ぽんと火を一つ転がしきせる草
  きせる草     13.10.18.
 687 五右衛門が見得を切りたりきせる草
  きせる草     13.10.18.
 688   飯桐の朱塗りたくる秋高し
 秋高し     13.10.18.
 689   飯桐の朱に染まりたる秋の空
 秋空     13.10.18.
 690   剣葉の奥に色づく万年青の実
 万年青の実     13.10.18.
 691   剣葉に守られ赤き万年青の実
 万年青の実     13.10.19.
 692   野葡萄のてんでの色を競ひをり
野葡萄      13.10.19.
 693   常山木(くさぎ)の実澄みたる空の色を秘め
常山木      13.10.19.
 694   とりどりの色蝶となる秋桜   秋桜     13.10.19.
 695  とりどりの色蝶舞ふや秋桜   秋桜     13.10.19.
 696  虫の音の絶へれば巡る寒露かな
 寒露     13.10.19.
 697   蛤に化けし雀と思ひ食む
 雀蛤と化す     13.10.19.
698    焼き鳥が焼き蛤となる季節かな
 雀蛤と化す     13.10.19.
 699   わが庭に雀来ぬなり蛤に
 雀蛤と化す     13.10.19.
 700   蛤となりて雀は吸い物に
 雀蛤と化す     13.10.19.
 701   蛤に化けて雀の潮汁
 雀蛤と化す     13.10.20.
 702   蛤は飛び疲れたる雀かな
 雀蛤と化す     13.10.20.
 703 蛤に変じし雀網の上   雀蛤と化す     13.10.20.
 703   菊月や歳時記入れし旅かばん
 菊月     13.10.20.
 705 群雀すずめ色どき蛤に
 雀蛤と化す     13.10.20.
 706   稲雀すずめ色どき帰巣かな
 稲雀     13.10.20.
 707 まほろばは山の彼方に秋の空
 秋空     13.10.20.
 708   紅葉谷跨ぐ吊り橋揺れやまず
 紅葉     13.10.20.
 709   紅葉谷跨ぐ吊り橋揺れにけり
 紅葉     13.10.20.
 710   吊り橋の揺れる手すりに秋茜
 秋茜     13.10.20.
 711   吊り橋の手すりで揺れる秋茜
 秋茜     13.10.21.
 712   濁りたる色捨て去りし紅葉山
 紅葉    13.10.21.
 713   山道で菊の名問はれ野菊とや
 菊    13.10.21.
 714   秋海棠人を誘ふ花明り
 秋海棠    13.10.21.
 715   野分ゆく重低音の大唸り
 野分    13.10.21.
 716   ゆったりと野分の後の風の音     野分    13.10.21.
 717  戸がことり野分の後の風の音
 野分    13.10.21.
 718   ごみ回収野分の朝も定時なり
 野分    13.10.21.
 719   予報士の笑顔が戻り野分去る
 野分    13.10.21.
 720   爪を切る外は野分の大唸り
 野分    13.10.21.
 721   犬も猫も屋根の下なり野分中
 野分中    13.10.22.
 722   池の縁越えんと真鯉野分中
 野分中    13.10.22.
 723   はれとけを潜り抜け来て秋の虹
 秋の虹    13.10.22.
 724   ちょろちょろと小便出ずる老ひの秋
 秋    13.10.22.
 725   句仲間と連れ小便の秋の暮
 秋の暮    13.10.22.
 726   句仲間と秋の夜長の連れ小便
 秋の夜    13.10.22.
 727   黄落の池面で遊ぶ通鴨
 黄落    13.10.22.
 728   一片の雲なき空や芒原
 芒    13.10.22.
 729   煙管など知らぬ児ばかりきせる草
  きせる草    13.10.22.
 730   鰰(はたはた)の頭から食ふ生焼けを
鰰     13.10.22.
 731   鰰の生焼け喰らふ頭ごと
 鰰      13.10.23.
 732   鰰の焼けるを喰らひ蕎麦前酒
 鰰     13.10.23.
 733   病葉も虫食ひも佳し桜紅葉
 桜紅葉     13.10.23.
 734   路面にはけんけんぱの輪初紅葉
 初紅葉    13.10.23.
 735   桜紅葉はらりはらりと散りにけり  桜紅葉    13.10.23.
 736 稲雀蛤と化し田にをらず
 稲雀    13.10.23.
 737   弧を描き道案内の飛蝗(ばった)かな
 飛蝗    13.10.23.
 738   分け入れば螇蚸(ばった)飛び出す河原道
 飛蝗    13.10.23.
 739   脚垂れて花の上飛ぶ秋の蜂
 秋の蜂    13.10.23.
 740   ひんやりと芒の穂先頬よぎる   芒の穂    13.10.23.
 741  頬よぎる芒の穂先ひんやりと  芒の穂     13.10.24.
 742  重ね着し桜紅葉の道行けり  桜紅葉      13.10.24.
 743  弓手に杖馬手にボトルの秋遍路  秋遍路      13.10.24.
 744  穭(ひつじ)田の緑が映える夕間暮れ   穭田      13.10.24.
 745  穭の穂背丈揃えへて波打てり  穭の穂      13.10.24.
 746  穭の穂鋤かれる定めあはれなり  穭の穂      13.10.24.
 747  穭田の緑広がる過疎の村   穭田      13.10.24.
 748   末枯れや心はせめて赤く燃ゆ  末枯れ      13.10.24.
 749  割れ目から甘き香のする通草かな  通草      13.10.24.
 750 秋霖にふと物思ふ吾のをり  秋霖      13.10.24.
 751   秋時雨けふはダミアの日曜日  秋時雨      13.10.25.
 752  秋冷に重ね着をして部屋居かな 秋霖      13.10.25.
 753   秋冷やゴムの樹鉢を部屋に入る  秋冷      13.10.25.
 754 戸袋のかたりことりと秋時雨   秋時雨     13.10.25.
 755  一つ穴絡みつ蛇の冬ごもり  蛇穴に入る      13.10.25.
 756  新蕎麦を口実に飲む蕎麦前酒  新蕎麦      13.10.25.
 757  秋の沼年越す蝌蚪のフラダンス
(牛蛙の蝌蚪は幼生のまま越年する。)
 秋     13.10.25.
 758  秋冷や散歩の犬も長袖に  秋冷     13.10.25.
 759  起き抜けの櫛入るる前藤袴 藤袴      13.10.25.
 760  誠実に新聞届くいまは秋 秋      13.10.25.
 761  十月の桜静かに咲いて舞ふ 十月桜      13.10.26.
 762  菊芋の川辺に灯す夕明かり  菊芋     13.10.26.
 763  つぎつぎと逝く人多し秋の暮  秋     13.10.26.
 764  恥じらふて雀色時おもひ草  思い草     13.10.26.
 765  雀いろどき作務衣の和尚菊手入れ  菊     13.10.26.
 766 雀色どき鈴の音遺す秋遍路 秋遍路      13.10.26.
 767  亀脚の雀色どき秋の道  秋     13.10.26.
 768  秋深し亀脚でゆく俳の道  秋     13.10.26.
 769  木の葉髪残り少なの余命かな  木の葉髪     13.10.26.
 770  木の葉髪銀ならいそと集めしを   木の葉髪     13.10.26.
 771   桐の実のトレモロを聴く散歩道   桐の実     13.10.27.
 772  桐の実の低く静かに鳴りてをり  桐の実      13.10.27.
 773

桐の実の風に応へて鳴り出せり

  桐の実       13.10.27.
 774  空耳にあらず桐の実歌いをり  桐の実      13.10.27.
 775  酒蔵の桐の実見上ぐ鳴りてをり  桐の実      13.10.27.
 776  桐の実のトレモロ風を誘いけり   桐の実       13.10.27.
 777  連続で来る台風や桐の実鳴る   桐の実      13.10.27.
 778  実を鳴らす桐の木の上雲走る   桐の実      13.10.27.
 779  冬瓜の灯(ともし)に透ける小鉢かな  冬瓜      13.10.27.
 780  冬瓜の吸い物ほこと戴けり  冬瓜      13.10.27.
 781  冬瓜は含めあんかけすまし汁  冬瓜      13.10.28.
 782  冬瓜のしゃりと歯ごたへ旨味なり  冬瓜     13.10.28.
 783  食感がいのち冬瓜食む夕餉  冬瓜     13.10.28.
 784  草むらの悪茄子の実の悪びれず  茄子     13.10.28.
 785  悪臭で秋の蠅呼ぶ摘み茸  秋の蠅     13.10.28.
 786  一度死せば帰らぬ命秋遍路  秋遍路     13.10.28.
 787  角取れて摩羅も柔らか老いの秋  秋     13.10.28.
 788  朝立ちもすべて過去なり秋時雨 秋時雨      13.10.28.
 789  鈴なりの零余子見つけて取らず去る 零余子      13.10.28.
 790   秋遍路雪駄姿は寅次郎   秋遍路     13.10.28.
 791  間引菜は抜けばたちまちへたりけり  間引き菜     13.10.29.
 792  間引く菜の隣も浮きて倒れけり   間引き菜     13.10.29.
 793  佃煮の紫蘇の実ぷちと食みにけり  紫蘇の実     13.10.29.
 794  佃煮の紫蘇の実ぷちと食む夕餉  紫蘇の実     13.10.29.
 795  酢生姜の産地はタイとある不思議  生姜      13.10.29.
 796

走り蕎麦待つ間の酒に一夜干し

走り蕎麦       13.10.29.
 797

高鳴きの鵙里山を独り占め

 鵙      13.10.29.
 798  脅し合ふ鵙の高鳴き雑木山  鵙      13.10.29.
 799  木の天辺高鳴きの鵙毅然たり  鵙      13.10.29.
 800   鰯雲野川を走る魚影あり 鰯雲       13.10.29.
 801  底抜けに明るき赤や実かずら  実(さね)かずら      13.10.30.
 802  椋鳥の声姦しき一樹かな  椋鳥     13.10.30.
 803  光年の距離の遠さよ秋の星  秋     13.10.30.
 804  梅干しを沈めて湯割り秋深し  秋      13.10.30.
 805  ゆで卵ちょんと立たせて秋夜長  秋     13.10.30.
 806  ランボーも中也も遠し鵙の声  鵙の声     13.10.30.
 807  鮎を裂き俳人占魚生まれけり  鮎     13.10.30.
 808  ひと睨み仁王見上げる鬼やんま  やんま     13.10.30.
 809  秋うらら生え揃ったと孫言へり  秋麗     13.10.30.
 810  秋空や半身削がれて泣く武甲  秋空     13.10.30.
 811  蟷螂やときに放屁をしたりして  蟷螂     13.10.31.
 812   まさかとは言はじ蝌蚪ゐる秋の川    秋     13.10.31.
 813  穭田(ひつじだ)といふ柔らかき緑かな
(東海道新幹線の西下の車窓から)
 穭田    13.10.31.
 814  稲田から緑に変わる穭かな      13.10.31.
 815  穭田の緑そよろと波立てり  穭田  13.10.31.
 816  穭田の緑の中に白い鷺  穭田    13.10.31.
 817  穭田は瑞穂の国の幕間かな  穭田    13.10.31.
 818  穭の穂思へばこれも返り花  穭の穂    13.10.31.
 819  台風の過ぎれば忘る瀬戸は凪  台風    13.10.31.
 820  鮎ほぐし俳人一人生まれけり
(上村占魚を想ひ詠む)
 鮎    13.10.31.
 821  西を向く雀色どき丸亀城       13.11.1.
 822  穭田で年越す蝌蚪の大欠伸  穭田      13.11.1.
 823  色気消へ恥じらひも失せ芒原  芒      13.11.1.
 824   角伐られ頭一振り起つ牡鹿  角切      13.11.1.
 825  伐られ頭突きを返す鹿おかし  角切      13.11.1.
 826  鹿の角切取り掲ぐ武者姿  角切      13.11.1.
 827  秋天に聳ゆる城や坊ちゃんビール  秋天      13.11.1.
 828  お遍路の影も同行芒道  芒      13.11.1.
 829  黒々と影従へて秋遍路  秋遍路      13.11.1.
 830  青空を突き抜く天守鵙叫喚  鵙       13.11.1.
 831  青空を突き抜く天守鵙鳴けり  鵙  秋     13.11.2.
 832  瀬戸内の島掠めたる帰燕かな  帰燕     13.11.2.
 833  秋天に十五万石城光る  秋天     13.11.2.
 834  秋天や松山城の天守閣  秋天     13.11.2.
 835  秋天の城や一輪桜咲く  秋天     13.11.2.
 836  城高し染井吉野の返り花  返り花     13.11.2.
 837  秋天の残月淡し瀬戸の海   秋天     13.11.2.
 838   返り花伊予松山の天守閣   返り花     13.11.2.
 839 しんがりは寅さんだろか秋遍路   秋遍路  秋   13.11.2.
 840  のほほんと雲浮かびをり秋あかね  秋あかね     13.11.2.
 841  茹で栗を添へお接待秋あかね  栗・秋あかね     13.11.3.
 842  薬缶から接待のお茶秋遍路  秋遍路     13.11.3.
 843  老僧は吾より若し秋遍路   秋遍路     13.11.3.
 844  肩並べ般若心経秋遍路   秋遍路     13.11.3.
 845  讃岐うどん食へばさぬき路薄紅葉  紅葉     13.11.3.
 846  剃髪の静の塚や薄紅葉   紅葉     13.11.3.
 847  お接待お・も・て・な・し・とも秋遍路   秋遍路     13.11.3.
 848  山頭火呟きの句碑赤とんぼ  赤とんぼ     13.11.3.
 849  読経後はスマホを叩く秋遍路   秋遍路     13.11.3.
 850  突堤の釣りの人影つばめ去る  燕去る     13.11.3.
 851  突堤に釣り人ありて秋つばめ  秋つばめ     13.11.4.
 852  突堤に釣り人立てり秋つばめ  秋つばめ     13.11.4.
 853   渡船場に一旋残し燕去る   燕去る    13.11.4.
 854  洞門に轟く浪や燕去る   燕去る    13.11.4.
 855  瀬戸の島奇岩過りて燕去る   燕去る    13.11.4.
 856  潮騒の長閑な渚燕去る   燕去る    13.11.4.
 857  潮騒に別れを告げる帰燕かな  帰燕    13.11.4.
 858  秋天の城や一輪返り花
(四国・松山城に咲く)
 返り花    13.11.4.
 859  ぶっかけの讃岐うどんや薄紅葉  紅葉    13.11.4.
 860  間引き菜は散布農薬まだコンク 間引き菜     13.11.4.
 861  赤ベンの並ぶ筆立て十月尽  十月尽    13.11.5.
 862  とんがりし若者の靴冬立ちぬ  立冬    13.11.5.
 863  木犀の香を掻き散らし児ら下校  木犀     13.11.5.
 864  木犀の香を掻き散らし児ら駆けり  木犀    13.11.5.
 865  スマホ擦る人人人や文化の日  文化の日    13.11.5.
 866  まがいビール半値が魅力文化の日   文化の日    13.11.5.
 867  鼻輪つけ半モヒカンや文化の日   文化の日    13.11.5.
 868   釣られたるべらは小太り秋深む  秋    13.11.5.
 869  切岸にしがみつき咲く石蕗(つわ)の花  石蕗の花  秋   13.11.5.
 870  尉鶲鳴き音を聞けば火が恋し 尉鶲(じょうびたき)     13.11.5.
 871  小雀二羽庭木で朝の打合せ 小雀(こがら)      13.11.6.
 872  山葡萄見つけてよしと藪を漕ぐ  山葡萄     13.11.6.
 873  冬瓜汁色なき味を噛みにけり  冬瓜汁     13.11.6.
 874  椿の実坊主頭を並べをり  椿の実     13.11.6.
 875  新松子(しんちじり)早や老成の容姿かな  新松子     13.11.6.
 876  枯れ蔓の一筋ごとに烏瓜 枯れ蔓・烏瓜   冬・秋   13.11.6.
 877  数珠玉や道草の児ら目もくれず  数珠玉      13.11.6.
 878  指さされずぼんにびっしりゐのこづち ゐのこづち      13.11.6.
 879  バス待つ間草じらみ取り追はれけり  草じらみ     13.11.6.
 880  蒼天に赤燃え立たすななかまど  ななかまど     13.11.6.
 881  夕焼けに色合はせゐる実浜茄子  実浜茄子     13.11.7.
 882  堂脇に坐して賓頭盧(びんずる)秋夕焼け 秋      13.11.7.
 883   賓頭盧のでこ撫ぜて去る秋遍路   秋遍路     13.11.7.
 884  秋遍路賓頭盧のでこ撫ぜて去る   秋遍路     13.11.7.
 885 賓頭盧を撫ぜて朱に染む秋夕焼け   秋夕焼け     13.11.7.
 886

爺さんと呼ばるを断ちて冬来る

 立冬  冬   13.11.7.
 887  賓頭盧のでこで手を擦る冬の蠅  冬の蠅  冬    13.11.7.
 888  賓頭盧のでこで日を浴ぶ冬の蝶  冬の蝶  冬   13.11.7.
 889  賓頭盧の膝で息絶ふ冬の虫  冬の虫  冬   13.11.7.
 890  冬木立小雀(こがら)なにやら打合せ  冬木立・小鈴家  冬・秋   13.11.7.
 891  蒼天の城や一輪返り花 返り花   冬   13.11.8.
 892  蕪畑拾ふがごとく抜きにけり  蕪  冬    13.11.8.
 893  傾ぎてもなほ毅然たる冬の菊  冬  冬    13.11.8.
 894  泥つきのまま持ち帰り根深汁  根深汁  冬    13.11.8.
 895  冬瓜汁色なき味を含みけり  冬瓜汁  秋    13.11.8.
 896  一汁は根深汁なり今朝の膳  根深汁  冬    13.11.8.
 897  眉根立てひたぶる阿修羅小六月  小六月  冬    13.11.8.
 898  児らが跳ぶ風船ドーム紅葉晴れ  紅葉  秋    13.11.8.
 899   おびんづる軒端の風のそぞろ寒   そぞろ寒  秋    13.11.8.
 900  冬の蝶賓頭盧の掌に逝きにけり  冬の蝶  冬    13.11.8.
 901  冬の蝶賓頭盧の掌に翅を閉ず   冬の蝶     13.11.9.
 902  冬の蚊のか細き声や関の風  冬の蚊     13.11.9.
 903  冬の蚊の手に止まりたるあはれなり  冬の蚊     13.11.9.
 904  地下街の人足絶へず外は冬  冬     13.11.9.
 905  たこ焼きの焼けるを待つや冬の星  冬     13.11.9.
 906  見上ぐれば冬星夜星吾は喜寿  冬     13.11.9.
 907  ふいと来て木枯らし一号吹き抜けり  木枯らし     13.11.9.
 908  冬の蚊の関ひそやかに守るかな  冬     13.11.9.
 909  薄日さす関静まりて冬木立  冬木立     13.11.9.
 910  紅葉映ゆ茅屋根七つ大雄寺  紅葉  秋   13.11.9.
 911  紅葉映ゆ茅葺き七つ大雄寺  紅葉   秋   13.11.10.
 912   寵姫封じ殺生石の風寒し 寒い  冬   13.11.10.
 913  黒羽の俳聖を追ひ紅葉晴れ  紅葉   秋   13.11.10.
 914  木枯らしの吹き抜けゆくや殺生石 冬の蚊  冬   13.11.10.
 915  木枯らしも足早めるや殺生石  木枯らし  冬   13.11.10.
 916  木枯らしも矢を射るごとき那須野かな  木枯らし  冬   13.11.10.
 917  木枯らしや寵姫の果ての殺生石  木枯らし  冬   13.11.10.
 918  朱塗り橋紅葉と競ふ雲巌寺  紅葉  秋   13.11.10.
 919  雲重き那須野が原の枯芒  枯芒  冬   13.11.10.
 920  大那須野滑り下りしか冬の雲  冬  冬   13.11.10.
 921  背後からわが影伸ばす冬茜  冬  冬   13.11.11.
 922  大那須野わが影伸ばす冬茜  冬  冬   13.11.11.
 923  山眠る那須野の宿の句会かな  山眠る  冬   13.11.11.
 924   悪意などあって当然木枯らしの日  木枯らし  冬   13.11.11.
 825  胃が痛む訳のあるはず冬の蠅  冬  冬   13.11.11.
 926  カップ麺でも食ふかと男の冬  冬  冬   13.11.11.
 927  偽装などあってさもあり冬紅葉   冬  冬   13.11.11.
 928

間引き菜は農薬濃しを知らず食む

 間引き菜  秋   13.11.11.
 929  着ぶくれて胃が痛むなり平和ぼけ  着ぶくれ  冬   13.11.11.
 930  苛立てる鷹女に黙す石蕗の花  石蕗の花  冬   13.11.11.
 931  応えよと鷹女苛立つ石蕗の花   石蕗の花  冬   13.11.12.
 932  だんまりに苛立つ鷹女石蕗の花   石蕗の花  冬  13.11.12.
 933  たくましき花面がよし石蕗の花   石蕗の花  冬  13.11.12.
 934  したたかと図太さが好き石蕗の花   石蕗の花  冬  13.11.12.
 935  撞き損じ鐘の音欠けて山眠る  山眠る  冬  13.11.12.
 936   僧老ひて鐘突きはなし山眠る  山眠る  冬  13.11.12.
 937   檀家減り山寺は閑(ひま)山眠る    山眠る  冬  13.11.12.
 938  茶の花に頭差し込む冬の蜂  冬の蜂  冬  13.11.12.
 939  暖房の音の太きも温さかな  暖房  冬  13.11.12.
 940  生えたよと少年笑みし小六月  子六月  冬  13.11.12.
 941  たたら踏むほどにはあらず大根引  大根引き  冬  13.11.13.
 942  木枯らしや蠅取り揺らす無人駅  木枯らし  冬   13.11.13.
 943  昭和と言ふ蠅取りリボン冬遍路  冬  冬   13.11.13.
 944  昭和と言ふ蠅取りリボン冬の蠅  冬  冬   13.11.13.
 945  根方借り隠れて咲ける思いひ草
(季語:秋=思草、南蛮煙管)
思草・南蛮煙管   秋   13.11.13.
 946  隠れ咲き訪ねる虫もきせる草  煙管草  秋   13.11.13.
 947  パラサイト葦の根方の思ひ草  思い草  秋   13.11.13.
 948  お妾の道選びたるきせる草  きせる草  秋   13.11.13.
 949  お妾の道は家業ときせる草   きせる草  秋   13.11.13.
 950   お妾の色気をみせて思ひ草  思い草   秋   13.11.13.
 951  頬寄せてしめやかに咲く思ひ草  思い草   秋   13.11.14.
 952  葦の根方あちらこちらにきせる草  きせる草   秋  13.11.14.
 953  しゃがみ込み時間忘るるきせる草  きせる草   秋  13.11.14.
 954  故ありて宿借る花や思ひ草  思い草   秋  13.11.14.
 955  木枯らしや吹きても楽し句材かな  木枯らし   冬  13.11.14.
 956  飼い主とともに着ぶくれ散歩犬  着ぶくれ   冬  13.11.14.
 957  故里は遠きにもなし冬の雲  冬   冬  13.11.14.
 958  故里を持たぬ寂しさ冬の雲  冬   冬  13.11.14.
 959  殺生石翅休めゐる秋茜  秋茜  秋  13.11.14.
 960  殺生石色無き風の臭ひけり  色なき風   秋  13.11.14.
 961  糸苔のショール纏ひし照葉かな  照葉  秋  13.11.15.
 962  糸苔の緑もやもや谷紅葉  紅葉  秋   13.11.15.
 963  散る紅葉咥へ見え切る羅漢像  散紅葉  秋   13.11.15.
 964  塩焼きのくねり美し秋の鮎  秋   秋   13.11.15.
 965   黒焦げの殺生石や冬木の芽  冬  冬   13.11.15.
 966  冬蕨吐息のごとく胞子飛ぶ  冬蕨  冬   13.11.15.
 967  合掌の地蔵群れ立つ冬木の芽(殺生石で)  冬蕨  冬   13.11.15.
 968  胞子穂を叩けば埃冬わらび  冬蕨  冬   13.11.15.
 969  触れし穂の噴煙上がる冬わらび  冬蕨  冬   13.11.15.
 970  破れ翅を立てて耐へゐる冬の蝶  冬  冬   13.11.15.
 971  凍蝶の横に倒れて逝きにけり  凍て蝶  冬   13.11.16.
 972  噴煙を上げし茶臼や冬蕨  冬蕨  冬   13.11.16.
 973  雪虫の触れし手に溶け逝きにけり  雪虫  冬   13.11.16.
 974  この道を行こか戻ろか散紅葉   散紅葉  冬   13.11.16.
 975  ひと肌の湯割り焼酎虎落笛  虎落笛  冬   13.11.16.
 976  なに憎て布団叩くや団地妻       13.11.16.
 977  雪虫や襟立て直す寅次郎  雪虫  冬   13.11.16.
 978  木枯らしや寅さん包むつむじ風  木枯らし  冬   13.11.16.
 979  雪駄ばき寅を追い抜く空っ風  空っ風  冬   13.11.16.
 980  寅が行くくしゃみを一つ帝釈天  くしゃみ  冬   13.11.16.
 981  襟立てて雪駄の寅や花八つ手  花八つ手  冬   13.11.17.
 982   くしゃみしてついでにぷうと寅が行く  くしゃみ  冬  13.11.17.
 983  蒼天に豆柿の実のおびただし  柿  秋  13.11.17.
 984  豆柿や多摩の清流大曲り   柿  秋  13.11.17.
 985  寒禽の声より速く藪に消ゆ   寒禽  冬  13.11.17.
 986
 銀杏落葉ほのかに緑残す葉も   銀杏落葉  秋  13.11.17.
 987  川中に青鷺の影冬日向  冬日向  冬  13.11.17.
 988
 冬鵙の声より速く藪に消ゆ  冬  冬  13.11.17.
 989
 多摩の瀬を青鷺渡る寒日和  寒日和  寒日和   13.11.17.
 990
 寒日和黒鉄黐(くろがねもち)の実の赤し  寒日和  冬   13.11.17.
 991
  銀杏落葉みどりほのかに止む葉も 銀杏落葉   秋   13.11.18.
 992
 蒼天に豆柿の実の枝垂れをり  柿  秋   13.11.18.
 993
 古民家の烟る囲炉裏や榾(ほだ)はぜる  囲炉裏  冬   13.11.18.
 994
 榾の下赤々と燃へ囲炉裏酒  囲炉裏  冬   13.11.18.
 995
 銀杏もみじ描く人の背に散る黄葉  銀杏紅葉・黄葉  秋   13.11.18.
 996
  新海苔を新蕎麦にかけ食む冥加 新海苔・新蕎麦   冬・秋   13.11.18.
 997  新蕎麦の墨書に暖簾潜りけり  新蕎麦  秋    13.11.18.
 998  枝高き柚子見上ぐれど香は嗅げず  柚子  秋   13.11.18.
 999  顔伏せて何をはにかむ思ひ草  思い草  秋   13.11.18.
 1000
 落鮎を瀬で釣る人の影伸びる  落鮎  秋   13.11.18.
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