鈴童の遊び
一日十句以上を千句詠む

(第8回)

No. 季語 作句日
1 穀象を炒ればおこわの黒胡麻か 穀象 13.5.31.
2 ごきぶりは生まれるでなく湧きにけり ごきぶり 13.5.31.
3 ごきぶりの走ればきゃーと妻の声 ごきぶり・油虫 13.5.31.
4 ごきぶりの髭動かして思案かな ごきぶり 13.5.31.
5 スリッパはごきぶり殺すためにあり ごきぶり 13.5.31.
6 スリッパはごきぶり叩く必殺具 ごきぶり 13.5.31.
7 ごきぶりホイ覗けば二匹もがきをり ごきぶり 13.5.31.
8 澄子ならどう詠むだろか油虫
(俳人、池田澄子 <じゃんけんで負けて蛍に生まれたの>)
油虫 13.5.31.
9 油虫翅を取っても油虫 油虫 13.5.31.
10 油虫サプリに化ける日も来しか 油虫 13.5.31.
11 衣被ぬるっと剥けば指もぬるっ 衣被 13.6.1.
12 衣被ぬるっと剥いて納豆食ふ 衣被 13.6.1.
13 心太筒通らねば蜜豆に 心太・蜜豆 13.6.1.
14 赤鰯焼ひても食へぬ腰のもの 13.6.1.
15 メールでも用果たせたり梅雨の入り 梅雨入り 13.6.1.
16 梅雨入して明日は晴れると天気予報 梅雨入り 13.6.1.
17 梅雨入後に晴れても詐欺と呼ぶべからず 梅雨入り 13.6.1.
18 梅雨入して明日快晴もありぬべし 梅雨入り 13.6.1.
19 梅雨入して明日快晴と言ふ浮世 梅雨入り 13.6.1.
20 梅雨入して株は下がるも天気晴朗 梅雨入り 13.6.1.
21 いろいろの愛の形の実梅かな 実梅 13.6.2.
22 梅雨晴れ間瀬戸の渚の睦み波 梅雨晴間 13.6.2.
23 いろいろの恋のかもめや梅雨晴間 梅雨晴間 13.6.2.
24 恋されて恋するかもめ海南風 海南風 13.6.2.
25 鉄柵に髭を巻きつけ鉄線花 鉄線花 13.6.2.
26 揚羽舞ふ草蒸す松の廊下跡 揚羽蝶 13.6.2.
27 蝉しぐれ草蒸す松の廊下跡 蝉時雨 13.6.2.
28 言ひたきを言ひ放つ句や夏燕 夏燕 13.6.2.
29
やるせなきものは恋らし夏霞 夏霞 13.6.2.
30 恋路とは地図になき道夏つばめ 夏燕 13.6.2.
31 夏燕草蒸す松の廊下跡 夏燕 13.6.3.
32 風そよぐ植田に写る逆富士 植田 13.6.3.
33 稚魚取れず鰻つるりと逃げる夏 13.6.3.
34 蓮咲いて面影浮かぶ原節子 蓮の花 13.6.3.
35 夏痩せもスー・チーさんにあやかりて 夏痩せ 13.6.3.
36 鉢物の咲けば主役のアマリリス アマリリス 13.6.3.
37 アマリリス茎先伸ばし花三輪 アマリリス 13.6.3.
38 アマリリス有無を言はさず咲きにけり アマリリス 13.6.3.
39 葉茎花三ステップでアマリリス アマリリス 13.6.3.
40 ペット吹く乙女の頬や梅雨晴間 梅雨晴間 13.6.3.
41 いつ来てもおかしくなしと盆迎ふ 13.6.3.
42 夏帽子被るは老ひのしるしかな 夏帽子 13.6.3.
43 夏の朝冷気かすかな風を吸ふ 13.6.3.
44 夏暁(なつあけ)のきのうはこの刻寝に就けり 夏暁 13.6.3.
45 夏暁や早や山雀の来てゐたり 夏暁 13.6.3.
46 狭庭にもほのかに夏の匂かな 夏の匂い 13.6.3.
47 お日様の色問はれたりいまは朱夏 朱夏 13.6.3.
48 夏の陽や赤か黄色か橙か 夏の陽(日) 13.6.3.
49 大笹の涼しき皿の握りかな 涼しい 13.6.3.
50 鹿の子や武蔵鐙の苞覗く(北条鹿島で) 鹿の子 13.6.3.
51 句碑の前黒豆と見ゆ鹿の糞(北条鹿島で) 13.6.4.
52 老鶯の声流麗に雌を呼ぶ 老鶯 13.6.4.
53 老鶯や老いらくならじ恋コール 老鶯 13.6.4.
54 時鳥聞いて作句の誇らしげ 時鳥 13.6.4.
55 駆けたかとそう急かすなよ時鳥 時鳥 13.6.4.
56 黄鶲(きびたき)の声ころげ来る雑木道 時鳥 13.6.4.
57 透かし見る富士見櫓や夏木立(皇居東御苑で) 夏木立 13.6.4.
58 ほーほーと闇に雌呼ぶ青葉木菟 青葉木菟 13.6.4.
59 畑道に一羽で遊ぶ鴉の子 鴉の子 13.6.4.
60 夏蝶にさぼてんの花耐へられず 夏蝶・サボテンの花 13.6.4.
61 木漏れ日や群れを嫌ひて飛ぶ揚羽 揚羽 13.6.5.
62 群青の空に紛れて夏茜 夏茜 13.6.5.
63 ビー玉の飛んで来しかと黄金虫 黄金無視 13.6.5.
64 山道やご親切にも道をしへ() 青葉木菟 13.6.5.
65 花むぐり花粉まみれの食事かな 花むぐり 13.6.5.
66 天道虫ふっと飛び来て逃げもせず 天道虫 13.6.5.
67 脳心臓翅揃いたる糠蚊(ぬかが)かな 13.6.5.
68 蚊も蚋(ぶゆ)も姿消したる畑作業
蚊も蚋(ぶゆ)
13.6.5.
69 職種別分業みごと蟻の国 13.6.5.
70 職種別分業怖し蟻の国 13.6.5.
71 分業で一糸乱れぬ蟻の国 13.6.6.
72 若竹や抜きん出てゆく誇りあり 若竹 13.6.6.
73 ぐんぐんと丈伸ばしゆく今年竹 今年竹 13.6.6.
74 はらからの囲み育む今年竹 今年竹 13.6.6.
75 あけて待つ大空ありぬ今年竹 今年竹 13.6.6.
76 青春を身の色にして今年竹 今年竹 13.6.6.
77 新旧の引き継ぎ終へし竹落葉 竹落葉 13.6.6.
78 かさかさと竹の皮脱ぐ音したり 竹の皮脱ぐ 13.6.6.
79 かさかさと竹の皮脱ぐ音を聴く 竹の皮脱ぐ 13.6.6.
80 赤と黒地を覆いたる桑いちご 桑いちご・桑の実 13.6.6.
81 噎せかへる匂い懐かし桑いちご 桑いちご 13.6.7.
82 桑の実を食む習いなし子ら過ぎぬ 桑の実 13.6.7.
83 海洞や迸り入る夏の浪 13.6.7.
84 摘み取りて使へるならば小判草 小判草 13.6.7.
85 ちゃりんとは鳴らずに揺るる小判草 小判草 13.6.7.
86 大判にできればうれし小判草 小判草 13.6.7.
87 金の生る草に化けぬか小判草 小判草 13.6.7.
88 知らぬ間に庭隅圧し花牛蒡 花牛蒡 13.6.7.
89 茎の紅艶を放ちて花牛蒡 花牛蒡 13.6.7.
90 夏蝶や草むす松の廊下跡 夏蝶 13.6.7.
91 白から黄移ろひ見せて忍冬(すいかずら) 忍冬 13.6.8.
92 白から黄移ろひの花忍冬 忍冬 13.6.8.
93 白から黄移ろひ美し忍冬 忍冬 13.6.8.
94 純白の襟を立てたる海芋咲く 海芋(カラー) 13.6.8.
95 毅然たる花の白さや海芋咲く 海芋 13.6.8.
96 北斎の描く波なり立浪草 立浪草 13.6.8.
97 波の音かすかに聞こゆ立浪草 立浪草 13.6.8.
98 道の端に波寄せ来るや立浪草 立浪草 13.6.8.
99 地を覆ふ葉の重なりや富貴草 富貴草 13.6.8.
100 夏蕨食みつ今宵は山の宿 夏蕨 13.6.8.
101 木漏れ日に浮かぶ木苺摘みたり 木苺 13.6.9.
102 アマリリス首刎ねらるるポーズして アマリリス 13.6.9.
103 双頭の花とや言はんアマリリス アマリリス 13.6.9.
104 自分では昼の灯台アマリリス アマリリス 13.6.9.
105 夏の畦ちととと走る黄鶺鴒(せきれい)
(季語:鶺鴒=秋)
夏・鶺鴒 夏・秋 13.6.9.
106 ピッコロの囀り聴かす小雀(こがら)かな
(季語:小雀=秋)
小雀 13.6.9.
107 小雀来て囀り交わす朝の庭
(季語:小雀=秋)
小雀 13.6.9.
108 愛嬌はなけれど青き木賊(とくさ)かな
(季語:木賊=秋)
木賊 13.6.9.
109 石榴の実口いっぱいに含みたり
(季語:石榴=秋)
石榴 13.6.9.
110 かりんの実さてダリの絵のどこに置く
(季語:かりん=秋)
かりん 13.6.9.
111 手を汚し口を濡らして枇杷を食む 枇杷 13.6.10.
112 河鹿なく湯宿の村の月明かり 河鹿 13.6.10.
113 さくらんぼありがたく食む五粒ほど さくらんぼ 13.6.10.
114 桜の実赤と黒食む江戸城址 桜の実 13.6.10.
115 優曇華(うどんげ)やマツダランプの笠のころ 優曇華 13.6.10.
116 夏茱萸(なつぐみ)やえぐ味渋みもなんのその 夏茱萸 13.6.10.
117 夏茱萸(なつぐみ)やえぐ味渋みも里の味 夏茱萸 13.6.10.
118 白鷺の独り歩きや無口鳥 白鷺 13.6.10.
119 白鷺の羽はたはたと傾ぎ飛ぶ 白鷺 13.6.10.
120 孤影よし悠然もよし吾は白鷺 白鷺 13.6.10.
121 海洞をせめぎ轟く夏の浪 13.6.11.
122 海洞の陰(ほと)せめぎ合ふ夏の波 13.6.11.
123 梅の実の音立てて落ちひび割れぬ 梅の実 13.6.11.
124 曇天と言へど雨なき芒種(ぼうしゅ)かな 芒種 13.6.11.
125 雲垂れし芒種の朝の散歩かな 芒種 13.6.11.
126 曇天に浅沙の花の灯しかな 浅沙の花 13.6.11.
127 鹿の子や木陰に母の睨みあり(伊予北条鹿島) 鹿の子 13.6.11.
128 鹿の子や木陰に母の目玉あり(伊予北条鹿島) 鹿の子 13.6.11.
129 畑道やひとり遊びの鴉の子 鴉の子 13.6.11.
130 一八の相かたまりて路地の角 一八 13.6.11.
131 点火せしごとくに咲けり花石榴 石榴の花 13.6.12.
132 若者の臭いと紛う栗の花 栗の花 13.6.12.
133 花栗の白く浮き出る薄暮かな 栗の花 13.6.12.
134 栗の花小走りになる尼僧かな 栗の花 13.6.12.
135 紫の靄かけたる花樗(はなあふち) 花樗 13.6.12.
136 一つずつ長柄が揺らすえごの花 えごの花 13.6.12.
137 美女に髭生へたるごとく未央柳 未央柳・美容柳 13.6.12.
138 垂直に咲き上りゆく立葵 立葵 13.6.12.
139 夏の露うなじにころと落ちにけり 夏の露 13.6.12.
140 川へだて多摩の横山夏がすみ 夏霞 13.6.12.
141 十薬や水やらぬのに庭覆ふ 夏霞 13.6.13.
142 老ひてなおにはあらじ恋の夏 13.6.13.
143 瀧泉陰(ほと)涸らさずに田水張る 田水張る 13.6.13.
144 十薬や役には立てど厭はれぬ 十薬 13.6.13.
145 十薬や活けられぬ花狭庭埋め 十薬 13.6.13.
146 雉鳩のででぽぽーと鳴く旱(ひでり)梅雨 旱梅雨 13.6.13.
147 雉鳩は雄も乳やる旱梅雨
(雌雄がそ嚢から出すピジョン・ミルク)
旱梅雨 13.6.13.
148 空耳か波の音する立浪草 立浪草 13.6.13.
149 喜寿すぎてしみじみ見つむ花糸瓜 花糸瓜 13.6.13.
150 風止まる畑道まぶし胡麻の花 胡麻の花 13.6.13.
151 風止まり日向の臭い胡麻の花 胡麻の花 13.6.14.
152 蕗の葉の重なり合ひて江戸城址 13.6.14.
153 青時雨飛び退る間に止みにけり 青時雨 13.6.14.
154 青時雨ひとを選んで降りにけり 青時雨 13.6.14.
155 葉の色に紛れてたわわ青胡桃 青胡桃 13.6.14.
156 ゆすら梅見つけたれども他所の庭 ゆすら梅 13.6.14.
157 刈込みの大玉となりさつき咲く さつき 13.6.14.
158 立浪草耳傾げれば波の音 立浪草 13.6.14.
159 高速道車過ぎゆく夾竹桃 夾竹桃 13.6.14.
160 大柄の華ある美女や夾竹桃 夾竹桃 13.6.14.
161 夾竹桃影なき花の日陰かな 夾竹桃 13.6.15.
162 日を浴びし夾竹桃の日陰かな 夾竹桃 13.6.15.
163 夾竹桃大揺れにゆれ拘らず 夾竹桃 13.6.15.
164 竹の性(さが)桃の華継ぐ夾竹桃 夾竹桃 13.6.15.
165 仙人掌(さぼてん)の花たおやかに待つ日の出 仙人掌の花 13.6.15.
166 惜しげなく芯開けたる仙人掌花 仙人掌の花 13.6.15.
167 花芯開き虫を誘ふ仙人掌花 仙人掌の花 13.6.15.
168 小雀(こがら)来てわがママチャリを遊び場に 小雀 13.6.15.
169 小雀来てママチャリの上遊び場に 小雀 13.6.15.
170 小雀来てサドルに残す糞ひとつ 小雀 13.6.15.
171 風に揺れなほ華やげる夾竹桃 夾竹桃 13.6.16.
172 風に揺れなほ華やぐや夾竹桃 夾竹桃 13.6.16.
173 右左揺れて華やぐ夾竹桃 夾竹桃 13.6.16.
174 しなやかに揺れて華やぐ夾竹桃 夾竹桃 13.6.16.
175 夕暮れの風切る羽音蚊喰鳥
蚊喰鳥=蝙蝠 、
かはほり
13.6.16.
176 かはたれに風切り翔ける蚊喰鳥 蚊喰鳥 13.6.16.
177 かはたれの頭上群れ飛ぶ蚊喰鳥 蚊喰鳥 13.6.16.
178 さわさわと捕食の羽音蚊喰鳥 蚊喰鳥 13.6.16.
179 蚊何匹喰ひ腹満つ蚊喰鳥 蚊喰鳥 13.6.16.
180 用水路ざりがにを釣る児らの声 ざりがに 13.6.16.
181 ざりがにやするめの脚で釣られをり ざりがに 13.6.17.
182 滾(たぎ)るものなほ心中に喜寿の夏 13.6.17.
183 蛍烏賊すべて雌なり酢味噌和へ 蛍烏賊 13.6.17.
184 産みに来て一網打尽蛍烏賊 蛍烏賊 13.6.17.
185 幾山川越え来る夏蝶の意志 夏の蝶 13.6.17.
186 幾山河あさぎまだらの遍路旅 夏の蝶=夏蝶 13.6.17.
187 お大師にあさぎまだらの縺れ行く あさぎまだら 13.6.17.
188 海渡る浅葱斑の不思議旅 あさぎまだら 13.6.17.
189 海越へて浅葱斑の二千キロ あさぎまだら 13.6.17.
190 海原に影を映して夏の蝶 夏の蝶 13.6.17.
191 海渡るあさぎまだらの自然体 あさぎまだら 13.6.18.
192 海渡る宇宙の孤独夏の蝶
(浅葱斑は海を渡り、2000km超を飛ぶという不思議蝶)
夏の蝶 13.6.18.
193 木漏れ日に浅葱斑の過りたり 夏の蝶 13.6.18.
194 虹の弧に浅葱斑の載りて飛ぶ 13.6.18.
195 虹の弧や浅葱斑の大滑空 13.6.18.
196 葉を替へつ蹲踞で餌を待つ青蛙 青蛙 13.6.18.
197 ひたすらに餌を待つ蹲踞青蛙 青蛙 13.6.18.
198 はまなすや東北弁の訛りあり はまなす(浜梨) 13.6.18.
199 ほうちゃくはいずこの訛り宝鐸(ほうしゃく)草 ほうちゃく草 13.6.18.
200 地を覆ふて夏桑の実の黒絨毯 夏桑 13.6.18.
201 久々に傘差して出る旱梅雨 旱梅雨 13.6.19.
202 やはりこれ喜雨の音なり華やげり 喜雨 13.6.19.
203 途切れなく屋根打つ響き喜雨を聴く 喜雨 13.6.19.
204 途切れなく屋根打つ響き喜雨と書く 喜雨 13.6.19.
205 六方を踏みし仁王や若葉風 若葉風 13.6.19.
206 実桜の無数に生りて散り敷きぬ 実桜 13.6.19.
207 実桜の無数に生りて地にこぼれ 実桜 13.6.19.
208 桜の実ほどの乙女の乳首かな 実桜 13.6.19.
209 赤と黒同じ味する桜の実 実桜 13.6.19.
210 桜の実ふふみてみたり江戸城址 実桜 13.6.19.
211 後生車ごろと回せし梅雨晴間 梅雨晴間 13.6.20.
212 水のみで十日を生きる蛍かな 13.6.20.
213 夜を仕切る蛍も昼はただの虫 13.6.20.
214 繁殖に生きまぐわいて死ぬ蛍 13.6.20.
215 繁殖に生きまぐわいて蛍死す 13.6.20.
216 恋をしてまぐわいをして夏燕 夏燕 13.6.20.
217 葉の緑花の白さや夏椿 夏椿 13.6.20.
218 花びらの縁やはらかに沙羅の花 沙羅の花 13.6.20.
219 霖雨得て濃紫の杜若 杜若(かきつばた) 13.6.20.
220 雨を呼び紫冴へる燕子花(かきつばた) 燕子花 13.6.20.
221 蟇らにも美男と美女はありぬべし 蟇・蟇蛙 13.6.21.
222 梔子や錆びても重き香り立つ 梔子の花 13.6.21.
223 梔子の錆びても哀し厚化粧 梔子の花 13.6.21.
224 燕子花光琳描くままに咲く 燕子花 13.6.21.
225 雨に濡れ杜若描く絵師光琳 燕子花 13.6.21.
226 蟇笑ふ顔想ふだに怖ろしき 13.6.21.
227 蝦蟇(がま)の子はやはり親似の蝦蟇の面 蝦蟇(がま) 13.6.21.
228 蟇同士惚れてまぐはう微笑まし 13.6.21.
229 奇岩怪石蟇もまた 13.6.21.
230 蟇だってぶすいけめんのありぬべし 13.6.21.
231 面(つらつき)付きの怪異で決まる蟇の恋 13.6.22.
232 庭の隅今年もやあと蟇来たり 13.6.22.
233 雌の背にしがみ付く雄蟇の恋 13.6.22.
234 蟇蛙早よ道渡れ車来る 13.6.22.
235 喉揺らし物言いた気に蟇蛙 蟇蛙 13.6.22.
236 西日背に蟇悠然と匍匐かな 13.6.22.
237 蝦蟇(がま)の眼に人の世界は早回し 蝦蟇 13.6.22.
238 雨蛙葉を移りてはまた蹲踞 雨蛙 13.6.22.
239 金縁の眼鏡かけたる雨蛙 雨蛙 13.6.22.
240 闇に湧く大合唱や雨蛙 雨蛙 13.6.22.
241 嫁求め大合唱の雨蛙 雨蛙 13.6.23.
242 雨蛙夜道を包むラブコール 雨蛙 13.6.23.
243 声かぎり雌呼ぶ恋の青蛙 青蛙 13.6.23.
244 あら蟇が赤絨毯をのたりのたり 13.6.23.
245 食べる吻持たずに恋の蛍かな 13.6.23.
246 水だけで恋し死に行く蛍かな 13.6.23.
247 痩せる人減りて増へたる暑気中(あたり) 暑気中 13.6.23.
248 天辺まで咲き揃ひたる立葵 立葵 13.6.23.
249 茎高く花纏ひたる立葵 立葵 13.6.23.
250 花色もとりどりに揺る立葵 立葵 13.6.23.
251 花の杖並べたるごと立葵 立葵 13.6.24.
252 華やかなフェンスとなりて立葵 立葵 13.6.24.
253 立葵総身の花を揺らしをり 立葵 13.6.24.
254 照り返す道行く日傘紅蜀葵 紅蜀葵 13.6.24.
255 路の上日傘の影や紅蜀葵 紅蜀葵 13.6.24.
256 日傘の影道移り行く紅蜀葵 紅蜀葵 13.6.24.
257 白日傘影黒ぐろと紅蜀葵 紅蜀葵 13.6.24.
258 白日傘影従へて紅蜀葵 紅蜀葵 13.6.24.
259 日の眩し道に影置く紅蜀葵 紅蜀葵 13.6.24.
260 日照り道影黒々と紅蜀葵 紅蜀葵 13.6.24.
261 紅蜀葵道に影差す白日傘 白日傘 13.6.25.
262 日照り道影を従へ白日傘 白日傘 13.6.25.
263 日照り道影をお供に白日傘 白日傘 13.6.25.
264 麦秋の黄金分けゆくディーゼル車 麦秋 13.6.25.
265 さり気なく咲く裏木戸の花あやめ 花あやめ 13.6.25.
266 青柿は従容として落下せり 青柿 13.6.25.
267 百日草けふは何日目となるや 百日草 13.6.25.
268 百日草咲いて何日目となるや 百日草 13.6.25.
269 激しくも燃へて死にゆく蛍かな 13.6.25.
270 河鹿鳴く瀬音の辺り仄白し 河鹿 13.6.25.
271 青紫蘇の厨に満る香の清し 青紫蘇 13.6.26.
272 紫蘇の香は刻む音から引き出され 紫蘇 13.6.26.
273 青紫蘇の色香清しく薬味皿 青紫蘇 13.6.26.
274 葉の一枚一枚濡らす戻り梅雨 戻り梅雨 13.6.26.
275 一葉ずつ律儀に濡らす戻り梅雨 戻り梅雨 13.6.26.
276 降らねば雨降れば日を乞ふ梅雨入かな 梅雨入 13.6.26.
277 さらさらと突如降り来る松落葉 松落葉 13.6.26.
278 散松葉ベンチを青く染めにけり 散松葉 13.6.26.
279 大輪を首傾げ咲くアマリリス アマリリス 13.6.26.
280 夏茱萸や顔こわばらす児らの顔 夏茱萸 13.6.26.
281 雪残し植田に写る逆富士 植田 13.6.27.
282 昼顔のあちこち絡むフェンスかな 昼顔 13.6.27.
283 昼顔の錆しフェンスに咲きにけり 昼顔 13.6.27.
284 昼顔の数かぞえつつバスを待つ 昼顔 13.6.27.
285 草蒸せる無住の庭の小昼顔 昼顔 13.6.27.
286 青柿の音もなく落ち転がれり 青柿 13.6.27.
287 青柿の音もなく落ち轢かれけり 青柿 13.6.27.
288 新たなる落ち青柿も轢かれけり 青柿 13.6.27.
289 轢かれたる青柿に早や蟻二匹 青柿・蟻 13.6.27.
290 夏薊刈り残されて咲きにけり 夏薊 13.6.27.
291 草刈の電動ソーが石弾く 草刈 13.6.28.
292 草いきれ掻き立て唸る電動ソー 草いきれ 13.6.28.
293 万緑を受け入れてゐる空がある 万緑 13.6.28.
294 万緑や地団駄も踏む大地なり 万緑 13.6.28.
295 万緑に合はせてシャツは黄色とす 万緑 13.6.28.
296 万緑や赤シャツを着て出かけるか 万緑 13.6.28.
297 万緑に草食む駱駝あらまほし 万緑 13.6.28.
298 わが口を眼鼻も蹴飛ばし水馬(あめんぼう) 水馬 13.6.28.
299 水面を真央の気分か水馬 水馬 13.6.28.
300 滑走し飛跳ね遊ぶ水馬 水馬 13.6.28.
301 流されてまた駆けのぼる水馬 水馬 13.6.29.
302 雨もまた楽しとばかりあめんぼう 水馬 13.6.29.
303 足の裏ややこそばゆき水馬 水馬 13.6.29.
304 花菖蒲生きいきとして水に立つ 花菖蒲 13.6.29.
305 それぞれに凝りし名を持つ花菖蒲 花菖蒲 13.6.29.
306 八国の山影写す菖蒲園 菖蒲園 13.6.29.
307 足元のさざ波光る花菖蒲 花菖蒲 13.6.29.
308 花びらのよほど重たき菖蒲かな 花菖蒲 13.6.29.
309 菖蒲田やざりがに取りの児らの声 菖蒲田 13.6.29.
310 菖蒲田やざりがに取りの声弾む 菖蒲田 13.6.29.
311 田に菖蒲陸(おあか)にあやめの咲き競ふ 菖蒲・あやめ 13.6.30.
312 日を盛りて高々と咲く泰山木 泰山木の花 13.6.30.
313 豊満な巨花揺るがざり泰山木 泰山木の花 13.6.30.
314 花錆し梔子なほも香の重く 梔子の花 13.6.30.
315 池の面に時を告げをり未草 未草(ひつじぐさ) 13.6.30.
316 頬染めし乙女の風情紅はちす 紅蓮 13.6.30.
317 花びらに触るれば恥じるはちすかな 蓮・はちす 13.6.30.
318 空蝉は「暫(しばらく)」の見得切りしまま 空蝉 13.6.30.
319 空蝉や命巣立ちし朝(あした)かな 空蝉 13.6.30.
320 ごきぶりの筋金入りし出処進退 ごきぶり 13.6.30.
321 夾竹桃しなやかに揺れ華やげり 夾竹桃 13.7.1.
322 黒揚羽わが胸襟を舞ひ立ちぬ 黒揚羽 13.7.1.
323 石竹や微笑み並ぶ菩薩像 石竹 13.7.1.
324 祈り花一薬草や夏木立 夏木立 13.7.1.
325 茄子の艶母の味する鉄火味噌 茄子 13.7.1.
326 禅僧も正座して食ふ焼茄子 焼茄子 13.7.1.
327 艶やかに日を照り返す茄子畑 茄子 13.7.1.
328 熟し梅ぼたりぼたりと落ちにけり 実梅 13.7.1.
329 やまももの実赤けれど届かざり やまもも 13.7.1.
330 ひょいと手を垣に見つけしゆすらうめ ゆすらうめ 13.7.1.
331 枇杷の実の灯し明るき薄暮かな 枇杷の実 13.7.2.
332 畑仕事無くて発句する戻り梅雨 戻り梅雨 13.7.2.
333 霧雨のごとき梅雨なり山頭火 梅雨 13.7.2.
334 青柿やたれが決めしか落ちる順 青柿 13.7.2.
335 青柿の掟きびしく落ちにけり 青柿 13.7.2.
336 梅雨寒にあらねど雲の厚さかな 梅雨寒 13.7.2.
337 梅雨寒にあらねど秀野の句あはれ
(病臥呻吟する石橋秀野の句 とびからす病者に啼いて梅雨寒し に詠む)
梅雨寒 13.7.2.
338 雲垂れて終日暗し明日は夏至
(夏至=6月21日)
夏至 13.7.2.
339 蝉の知恵素数の年を選びけり
(素数2  3  5  7  11  13  17…。7年、13年置きに大発生する蝉の巣立ちに)
13.7.2.
340 大発生素数の年の蝉の声 13.7.2.
341 素数の秘十三年の蝉の声
(2013年、アメリカでは13年ごとの蝉の大発生の夏を迎える)
13.7.3.
342 巣立つ蝉素数を使ひ種を遺す 13.7.3.
343 句会では詠めぬ句を読む梅雨晴間 梅雨晴間 13.7.3.
344 茶畑のごとく整ふ杜鵑花(さつき)園 杜鵑花 13.7.3.
345 紅色の刈込うねる杜鵑花園 杜鵑花 13.7.3.
346 木道に咲きし日傘や菖蒲園 日傘。菖蒲園 13.7.3.
347 いやと言ふあやめに尿(しと)の散歩犬 あやめ 13.7.3.
348 枇杷の実のたわわを見せて築地塀 枇杷の実 13.7.3.
349 蟻一匹くるりと枇杷の実を這へり 蟻・枇杷の実 13.7.3.
350 枇杷の実のたわわに白壁華やげり 枇杷の実 13.7.3.
351 枇杷の実のたわわも庭の一樹かな 枇杷の実 13.7.4.
352 枇杷の木に二十顆ほどの灯しかな 枇杷の実 13.7.4.
353 梅雨曇り厨の音のかたことと 梅雨曇り 13.7.4.
354 蝉の声聴きつ滅びの刻(とき)想ふ 蝉の声 13.7.4.
355 けふは夏至夏の終りの始めとや 夏至・夏 13.7.4.
356 梅雨に夏至夏始りつ終りへと 梅雨・夏至 13.7.4.
357 短夜の伸び始めなりけふは夏至 短夜・夏至 13.7.4.
358 戻り梅雨ふと雨音の消へにけり 戻り梅雨 13.7.4.
359 戻り梅雨拍刻みゐる樋の音 戻り梅雨 13.7.4.
360 芍薬の幕引きみごと花積る 芍薬 13.7.4.
361 ひんやりと灯し寂しく葉の蛍 13.7.5.
362 童貞のまま逝きし蝉はかなきや 13.7.5.
363 抜け上がる空の青さよ梅雨晴間 梅雨晴間 13.7.5.
364 ベランダを干しもの占める梅雨晴間 梅雨晴間 13.7.5.
365 日盛りや宅配便のドアの音 日盛り 13.7.5.
366 日盛りの路地音絶へて黒き影 日盛り 13.7.5.
367 ことりとも音せぬ路地の日の盛 日盛り 13.7.5.
368 炎天に出て来し鹿の鼻黒し 炎天 13.7.5.
369 片蔭を自転車までも走り行く 片蔭 13.7.5.
370 バス停の明暗分けて片かげり 片かげり 13.7.5.
371 菖蒲園一枚だけの植田かな 植田 13.7.6.
372 6.22泰然として夏の富士
(13.6.22.富士山・美保の松原とともに世界文化遺産に)
夏富士 13.7.6.
373 夏帽を被りて富士の遺産入り 夏帽 13.7.6.
374 夏富士や美保引き寄せて遺産入り 夏富士 13.7.6.
375 あめんぼう水を割れずに滑りをり あめんぼう 13.7.6.
376 こともなげ流れを滑る水馬(あめんぼう) 水馬 13.7.6.
377 あめんぼう交尾はつねに鏡張り あめんぼう 13.7.6.
378 あめんぼは水の鏡でまぐはへり あめんぼう 13.7.6.
379 水馬まぐはふ姿鏡張り 水馬 13.7.6.
380 水の輪の数だけ走るあめんぼう あめんぼう 13.7.6.
381 水中も空も自在に源五郎 源五郎 13.7.7.
382 まひまひや眼で追ふだけも疲れたり まひまひ 13.7.7.
383 八国の山写す田やみずすまし みずすまし 13.7.7.
384 児の掬ふ攩網(たも)に一匹みずすまし みずすまし 13.7.7.
385 ざりがにのかりかりと掻くプラバケツ ざりがに 13.7.7.
386 水の底影を走らすあめんぼう あめんぼう 13.7.7.
387 あめんぼう影離さんと走るかな あめんぼう 13.7.7.
388 水底の影追いかけるあめんぼう あめんぼう 13.7.7.
389 富士もまた神である国梅雨晴間 梅雨晴間 13.7.7.
390 振り向けば猫が足止む梅雨曇り 梅雨曇り 13.7.7.
391 猫一歩二歩と寄りゆく木下闇 木下闇 13.7.8.
392 ボス猫のなに窺ふや濃紫陽花 濃紫陽花 13.7.8.
393 羽抜鳥衣替へとは言ひながら 羽抜鳥 13.7.8.
394 哀れむな卵は産むと羽抜鳥 羽抜鳥 13.7.8.
395 生え揃ふまでが侘しき羽抜鳥 羽抜鳥 13.7.8.
396 風切りのなき間を耐へよ羽抜鳥 羽抜鳥 13.7.8.
397 羽抜鶏羽毛踏みしめ餌つつく 羽抜鶏 13.7.8.
398 羽抜鶏七面鳥に似たるかな 羽抜鶏 13.7.8.
399 羽毛舞ふ鶏舎泰然羽抜鶏 羽抜鶏 13.7.8.
400 卵ひとつ産んで尻上ぐ羽抜鶏 羽抜鶏 13.7.8.
401 羽抜鶏こけこっこおと鳴きにけり 羽抜鶏 13.7.9.
402 生え換わる疼きを秘めて羽抜鳥 羽抜鳥 13.7.9.
403 むず痒き日々続くかな羽抜鳥 羽抜鳥 13.7.9.
404 詩人らの恋の縺れや羽抜鳥
(ねじめ正一「荒地の恋」を読み)
羽抜鳥 13.7.9.
405 夏木立縫ひて払子の滝躍る 夏木立 13.7.9.
406 夏暁(なつあけ)の鏡に笑みて食卓に 夏暁 13.7.9.
407 いい顔を鏡に残し夏の朝 夏の朝 13.7.9.
408 轟音を二発すかして日雷(ひかみなり) 日雷 13.7.9.
409 軒を行く悪相猫や日雷 日雷 13.7.9.
410 性悪な猫聞かぬふり日雷 日雷 13.7.9.
411 片陰の反対走る散歩犬 片陰 13.7.10.
412 西日受け赤松の幹仁王立ち 西日 13.7.10.
413 赤銅の吊り玉葱や温気濃し 玉葱 13.7.10.
414 日向臭き吊り玉葱の竿しなる 玉葱 13.7.10.
415 銭湯の夏富士の絵に「祝」の文字
(世界文化遺産登録で)
夏富士 13.7.10.
416 夏雲や風通しよき神楽殿 夏雲 13.7.10.
417 水だけを啜りて生きる蛍かな 13.7.10.
418 夕顔やなぜかどぎまぎ覗きをり 夕顔 13.7.10.
419 ねじれゆへしごきたくなる捩り花 捩花 13.7.10.
420 見落とされ身すぎ世すぎの破れ傘 破れ傘 13.7.10.
421 ディーゼルカー左右に揺れて青田揺れ 青田 13.7.11.
422 田植機やディーゼルカーに並走し 田植機 13.7.11.
423 茄子胡瓜捥ぐ男らもぶらりかな 茄子・胡瓜 13.7.11.
424 戻り梅雨庇の下で耐へる野良 戻り梅雨 13.7.11.
425 点滅で来てよ来てよと恋蛍 13.7.11.
426 はね被り佐平治きめる南瓜かな 南瓜 13.7.11.
427 戻り梅雨畑仕事なく句を詠めり 戻り梅雨 13.7.11.
428 子蟷螂そう怒るなよ日が暮れる 子蟷螂 13.7.11.
429 鎌振りつ世渡り始む子かまきり 子かまきり 13.7.11.
430 子かまきり顔三角に月丸し 子かまきり 13.7.11.
431 マッチ棒より大きけりお短小茄子(たんこなす) 茄子 13.7.12.
432 子かまきり鎌振り上ぐや仁王像子 子かまきり 13.7.12.
433 子かまきりや相手は仁王様なるぞ 子かまきり 13.7.12.
434 孑孒のすいと沈みてすいと浮き 孑孒(ぼうふら) 13.7.12.
435 孑孒の浮沈で示す喜怒哀楽 孑孒 13.7.12.
436 孑孒やトランポリンの優れ技 孑孒 13.7.12.
437 あとずさりあとずさりして蟻地獄 蟻地獄 13.7.12.
438 蟻地獄指でせせられ泣きっ面 蟻地獄 13.7.12.
439 書架抜きし古き詩集を紙魚走る 紙魚 13.7.12.
440
木を上る蟻に耳打つ下る蟻 13.7.12.
441 萍(うきくさ)の水面を隠す緑かな 萍(うきくさ) 13.7.13.
442 落ちる水舞い上がる水浄蓮の滝 13.7.13.
443 細魚(さより)刺箸に挟めば透けにけり 細魚 13.7.13.
444 紐泳ぐかと見直せば山かがし 13.7.13.
445 草いきれ唸りを上げる電気ソー 草いきれ 13.7.13.
446 草いきれ重く漂ふ電気ソー 草いきれ 13.7.13.
447 草いきれ掻き散らしゐる電気ソー 草いきれ 13.7.13.
448 鼻襲ふ重き臭いや草いきれ 草いきれ 13.7.13.
449 草いきれムンクのごとく叫ぶかな 草いきれ 13.7.13.
450 草いきれムンクの叫び聞こへたり 草いきれ 13.7.13.
451 まぐはひし汗の臭いや草いきれ 草いきれ 13.7.14.
452 まぐはひの汗にも似たる草いきれ 草いきれ 13.7.14.
453 生々し命の匂い草いきれ 草いきれ 13.7.14.
454 生臭き命の匂い草いきれ 草いきれ 13.7.14.
455 人いきれ脱ければ薄暮草いきれ 草いきれ 13.7.14.
456 ホームレスやはり嫌はるなめくじら なめくじ・なめくじら 13.7.14.
457 家捨てて蔑まれし身なめくじら なめくじら 13.7.14.
458 身も軽くなりしが裏目なめくじら なめくじら 13.7.14.
459 家なきがゆえに嫌はるなめくじら なめくじら 13.7.14.
460 主(あるじ)果て無住の家の草いきれ 草いきれ 13.7.14.
461 青紫蘇の涼味加へて冷奴 冷奴 13.7.15.
462 シンプルの極致うれしい冷奴 冷奴 13.7.15.
463 紫に薬味投げ入れ冷奴 冷奴 13.7.15.
464 これをしも貧しと言はず冷奴 冷奴 13.7.15.
465 金持ちも貧乏人も冷奴 冷奴 13.7.15.
466 鑑真もしみじみと食む冷奴 冷奴 13.7.15.
467 浴衣着て胡坐で食まん冷奴 冷奴 13.7.15.
468 箸の癖四角四角に冷奴 冷奴 13.7.15.
469 立飲みの一番人気冷奴 冷奴 13.7.15.
470 とも白髪ふたつ置かれし冷奴 冷奴 13.7.15.
471 突出しは店主自慢の冷奴 冷奴 13.7.16.
472 ヘンリーの大好物や冷奴 冷奴 13.7.16.
473 冷奴食みつ静かに独り酒 冷奴 13.7.16.
474 長々と穴子載せくる握りかな 穴子 13.7.16.
475 長々と穴子の載りし握りかな 穴子 13.7.16.
476 丼の縁はみ出して穴子天 穴子 13.7.16.
477 丼の蓋はみ出して穴子天 穴子 13.7.16.
478 穴子鮨食んで徳利寝かせたり 穴子 13.7.16.
479 長いもの苦手と言ひつ穴子食む 穴子 13.7.16.
480 長いもの苦手が摘まむ穴子鮨 穴子 13.7.16.
481 公害の文字知らぬ児らの夏 13.7.17.
482 蟻の列踏みにじられてテロルなり 13.7.17.
483 蟻の群れ踏みにじり行く農夫の足袋 13.7.17.
484 巣穴から湧き出る蟻の無尽蔵 13.7.17.
485 干からびし蚯蚓無視する蟻の列 蚯蚓・蟻 13.7.17.
486 無防備の蟻堂々と黒い列 13.7.17.
487 惨劇に動揺見せず蟻の列 13.7.17.
488 身を守る一字を持たぬ蟻あはれ 13.7.17.
489 身を捨つる大義訊きたし蟻の列 13.7.17.
490 踏まれても泰然と過ぐ蟻の列 13.7.17.
491 日雷(ひかみなり)火柱立てよ波郷句碑
(終焉の地、清瀬市に7月句碑建つ。<雷落ちて火柱見せよ胸の上>の句に)
日雷 13.7.18.
492 日雷火柱立てん波郷句碑 日雷 13.7.18.
493 日雷立てる火柱波郷句碑 日雷 13.7.18.
494 句碑となり清瀬に戻る波郷かな 13.7.18.
495 雷鳴や清瀬の臍の波郷句碑 雷鳴 13.7.18.
496 夏富士や山頂目指す蟻の列 13.7.18.
497 登る蟻下るも列の富士の峰 13.7.18.
498 梅干に青梅も欲し句会かな 青梅 13.7.18.
499 夏雲を突き出でて立つ富士の峰 夏雲 13.7.18.
500 塗椀のごとき翅翔ぶ天道虫 天道虫 13.7.18.
501 岩清水ひしゃげ柄杓で掬ひをり 岩清水 13.7.19.
502 清水汲むアルミ柄杓の凹みぶり 清水 13.7.19.
503 青葱を大山盛りに泥鰌鍋 葱・泥鰌鍋 冬・夏 13.7.19.
504 凌霄(のうぜん)の落花血糊と化す定め 凌霄花 13.7.19.
505 落花して血糊となりし凌霄花(のうぜんか) 凌霄花 13.7.19.
506 照り返す道の遥かに凌霄花 凌霄花 13.7.19.
507 照り返し厳しき路地の凌霄花 凌霄花 13.7.19.
508 日盛りの朱色も重く凌霄花 凌霄花 13.7.19.
509 日盛りの路面を焦がし凌霄花 凌霄花 13.7.19.
510 重たきを見せて垂れゐる凌霄花 凌霄花 13.7.19.
511 ずっしりとのうぜんかずらの花の群れ 凌霄花 13.7.20.
512 凌霄の居住まいただす落花かな 凌霄花 13.7.20.
513 凌霄の踏むをはばかる落花かな 凌霄花 13.7.20.
514 夏暖簾鼻で分け入る馴染客 夏暖簾 13.7.20.
515 客の髪撫でて迎へる夏暖簾 夏暖簾 13.7.20.
516 さっぱりと糊効かせたる白暖簾 白暖簾 13.7.20.
517 打ち水と盛り塩清し神楽坂 打水 13.7.20.
518 ガラス器の氷に載せて夏料理 夏料理 13.7.20.
519 箸置きも器もガラス夏料理 夏料理 13.7.20.
520 囮鮎最後はやはり塩焼きに 囮鮎 13.7.20.
521 日雷火柱燃へ立つ波郷句碑 日雷 13.7.21.
522 日雷波郷の叫び轟きぬ 日雷 13.7.21.
523 胸裂けとおらぶ波郷や日雷 日雷 13.7.21.
524 盛塩の傍に置かるる風知草 風知草 13.7.21.
525 打水やそよろと揺れし風知草 風知草 13.7.21.
526 飛び石の窪濡れてをり風知草 風知草 13.7.21.
527 縷紅草この能天気この赤さ 縷紅草 13.7.21.
528 木漏れ日に開き直りし破れ傘 破れ傘 13.7.21.
529 夏帽を脱いでかしわ手打ち直し 夏帽子 13.7.21.
530 老妻の手抜きと分かる冷奴 冷奴 13.7.21.
531 眉毛にも白髪が二本釣忍 釣忍 13.7.22.
532 飛び石の窪濡れてをり夏料理 夏料理 13.7.22.
533 打水の誘ひ出したる風よぎる 打水 13.7.22.
534 手も足もなくて木の枝蛇の衣 蛇の衣 13.7.22.
535 さり気なく枝にかかりし蛇の衣 蛇の衣 13.7.22.
536 天女舞ふ三保の松原蛇の衣 蛇の衣 13.7.22.
537 羽衣や三保の松原蛇の衣 蛇の衣 13.7.22.
538 葉の一枚ふと揺らぎたる風知草 風知草 13.7.22.
539 ずぶ濡れの同士討ちなり水鉄砲 水鉄砲 13.7.22.
540 濡れるほど歓声あがる水鉄砲 水鉄砲 13.7.22.
541 濡れ鼠喜々と撃ち合ふ水鉄砲 水鉄砲 13.7.23.
542 濡らされて泣く子のゐない水鉄砲 水鉄砲 13.7.23.
543 母親の叱声目がけ水鉄砲 水鉄砲 13.7.23.
544 叱声が悲鳴に変る水鉄砲 水鉄砲 13.7.23.
545 濡らされて濡らしてはしゃぐ水鉄砲 水鉄砲 13.7.23.
546 目をこすり撃ち合ふ児らの水鉄砲 水鉄砲 13.7.23.
547 水鉄砲浴びて泣き出す子が一人 水鉄砲 13.7.23.
548 剣葉の裏艶やかに風知草 風知草 13.7.23.
549 艶やかな葉裏を秘めて風知草 風知草 13.7.23.
550 凪の庭こそりと揺れし風知草 風知草 13.7.23.
551 切取りてころりころりと茄子の籠 茄子 13.7.24.
552 切取りてだんだん重し茄子の籠 茄子 13.7.24.
553 葉の陰に見落としてゐし大胡瓜 胡瓜 13.7.24.
554 土寄せを重ねて青し夏の葱 夏葱 13.7.24.
555 土寄せを重ねて青き刈葱掘る 刈葱 13.7.24.
556 茎の根をまさぐりて摘む茗荷の子 茗荷の子 13.7.24.
557 縮緬花咲いては散らす百日紅 百日紅 13.7.24.
558 ちりめんの花咲き散らす百日紅 百日紅 13.7.24.
559 鎌振りて仁王を睨む子かまきり 子かまきり 13.7.24.
560 鎌振りつ世を渡り初む子かまきり 子かまきり 13.7.24.
561 西日受け大樹赤松仁王立ち 西日 13.7.25.
562 西日受け仁王と化せる松大樹 西日 13.7.25.
563 洗車雨とならず逢瀬の双つ星(
季語:秋 洗車雨=七夕前日に降る雨)
洗車雨 13.7.25.
564 彦星の牛車磨きし洗車雨 洗車雨 13.7.25.
565 囮鮎友釣りの鮎一つ魚篭(びく) 13.7.25.
566 雲の峰仁王が肩の力瘤 雲の峰 13.7.25.
567 山門の高きを占める雲の峰 雲の峰 13.7.25.
568 仁王像見据える先の雲の峰 雲の峰 13.7.25.
569 雲の峰汗もしとどに畑仕事 雲の峰 13.7.25.
570 ブーメランひらひら戻る雲の峰 雲の峰 13.7.25.
571 寺の鐘一つ鳴らして雲の峰 雲の峰 13.7.26.
572 寺の鐘余韻を残して雲の峰 雲の峰 13.7.26.
573 雲の峰見向きもせずに猫過る 雲の峰 13.7.26.
574 梅雨明けて汗の滴る街となる 梅雨明け 13.7.26.
575 炎昼や阿吽の仁王汗見せず 炎昼 13.7.26.
576 仁王像六方踏みて雲の峰 雲の峰 13.7.26.
577 夫(つま)は妻妻は夫(つま)呼ぶ星迎 星迎 13.7.26.
578 大西日ムンクのごとく叫ぶかな 西日 13.7.26.
579 腹見せて死んだふりする黄金虫 黄金虫 13.7.26.
580 黄金虫闇に返して雨戸閉む 黄金虫 13.7.26.
581 逃げ隠れせずに捨てらる黄金虫 黄金虫 13.7.27.
582 黄金虫殺すを厭ひ闇に投ぐ 黄金虫 13.7.27.
583 森知らぬ家系に生まる兜虫 兜虫 13.7.27.
584 森知らぬ三代目となる兜虫 兜虫 13.7.27.
585 憎っくきと憎悪掻き立つ夜盗虫 夜盗虫 13.7.27.
586 尺取が空足を踏む板の端 尺取虫 13.7.27.
587 空足を踏みつ思案の尺取虫 尺取虫 13.7.27.
588 尺取のリズム崩せし虚空かな 尺取虫 13.7.27.
589 尺取を戸惑はせゐる板の端 尺取虫 13.7.27.
590 火蛾いろいろ網戸に轡並べけり 火蛾 13.7.27.
591 火蛾いろいろ網戸に轡並べをり 火蛾 13.7.28.
592 村の道人影見へず蝉しぐれ 蝉時雨 13.7.28.
593 土蔵の裾崩れをり蝉しぐれ 蝉時雨 13.7.28.
594 白壁の裾崩れをり蝉しぐれ 蝉時雨 13.7.28.
595 乙女らの生足光る猛暑かな 猛暑 13.7.28.
596 川に入りたも振る児らの鼻の汗 13.7.28.
597 草むらに花の灯しや野萱草 野萱草 13.7.28.
598 夕間暮れ狐火のごと野萱草 野萱草 13.7.28.
599 汗の玉鼻に浮かべて昼寝の子 汗・昼寝 13.7.28.
600 堂々の大ごきぶりに凄みあり ごきぶり 13.7.28.
601 床走る大ごきぶりに足竦む ごきぶり 13.7.29.
602 影薄くうすばかげろふ過りけり 薄翅蜉蝣 13.7.29.
603 自死かとも薄翅蜉蝣水に落つ 薄翅蜉蝣 13.7.29.
604 水引の暇もてあまし揺るるかな 水引草 13.7.29.
605 水引の小花に粋なグラデーション 水引草 13.7.29.
606 花穂揺らしひとり遊びの水引草(季語:水引草・秋) 水引草 13.7.29.
607 水引草ひとり遊びで揺れてをり 水引草 13.7.29.
608 ぎしぎしの咲く河原道木陰なし ぎしぎしの花 13.7.29.
609 ぎしぎしの花に尾を振る散歩犬 ぎしぎしの花 13.7.29.
610 夏薊少し煤けて悪びれず 夏薊 13.7.29.
611 頭掻く癖止められず夏薊 夏薊 13.7.30.
612 愛される花とも言へず夏薊 夏薊 13.7.30.
613 熱中症の話飛び交ふ油照り 油照り 13.7.30.
614 日中には墨田の花火額の花 額の花 13.7.30.
615 音立てず墨田の花火額の花 額の花 13.7.30.
616 空耳か墨田の花火額の花 額の花 13.7.30.
617 玉屋あー墨田の花火額の花 額の花 13.7.30.
618 額の花墨田の花火火花散る 額の花 13.7.30.
619 火花散る墨田の花火額の花 額の花 13.7.30.
620 「暫」と墨田の花火額の花 額の花 13.7.30.
621 濡れてよし墨田の花火額の花 額の花 13.7.31.
622 雨乞ひし墨田の花火額の花 額の花 13.7.31.
623 暮れなずむ墨田の花火額の花 額の花 13.7.31.
624 浜栲(はまごう)の紫の浜海の青 浜栲(はまごう) 13.7.31.
625 浜栲の紫映ゆる海の青 浜栲 13.7.31.
626 はまぼうの花の紫加賀の浜 浜栲・はまぼう 13.7.31.
627 蟻の眼でこの世を見れば怖ろしき 13.7.31.
628 掌に携帯持たぬ蟻の列 13.7.31.
629 携帯が人動かすや蝉の声 13.7.31.
630 絵日記に「なので」の並ぶ夏休み 夏休み 13.7.31.
631 真夏日や首の捥げたる六地蔵 真夏日 13.8.1.
632 美味いと言ふ冷し中華の不味さかな 冷し中華 13.8.1.
633 雲の峰冷凍にする夢を見た 雲の峰 13.8.1.
634 いちごより小豆がうれしかき氷 かき氷 13.8.1.
635 でこの蚊をつるりと払ふ老師かな 13.8.1.
636 裏切りと嘘交差してダリヤ咲く
(ダリヤの花言葉:裏切り)
ダリヤ 13.8.1.
637 ごきぶりや妻の仏心吹き飛ばす ごきぶり .13.8.1.
638 ノーブラの乳首くすぐる浴衣かな 浴衣 13.8.1.
639 句会には出さぬ句を溜め青すだれ 青すだれ 13.8.1.
640 向日葵に赤や紫なき不思議 向日葵 13.8.1.
641 向日葵や黄花ばかりを揃へをり 向日葵 13.8.2.
642
向日葵やときに深紅の花見たし 向日葵 13.8.2.
643 壮大を描いて見せる雲の峰 雲の峰 13.8.2.
644 一匹の蟻登り行く六三四の塔 13.8.2.
645 炎昼や抜けぬ指輪を切り落とす 炎昼 13.8.2.
646 耳を削ぎ魔羅を削ぐ人雲の峰 雲の峰 13.8.2.
647 浮き沈み激しき句会夏燕 夏燕 13.8.2.
648 汗かいた量だけ旨し缶ビール ビール 13.8.2.
649 腹見せて猫も伸びゐる極暑かな 極暑 13.8.2.
650 選挙カー溽暑の街を際立たせ 溽暑 13.8.2.
651 腹を蹴る胎児も渇く酷暑かな 酷暑 13.8.3.
652 滴りの首筋を打つ二つ三つ 滴り 13.8.3.
653 滴りに顔を向ければ口も開く 滴り 13.8.3.
654 「飲めません」お鷹の泉にべもなし 13.8.3.
655 すれ違ふ女の匂ひ蛍狩り 13.8.3.
656 一つ葉の根の繋がりて大家族 一つ葉 13.8.3.
657 喜怒哀楽ひと色に込め大西日 大西日 13.8.3.
658 浴衣着てけふは下着を着けないの
(池田澄子風に詠む)
浴衣 13.8.3.
659 風呂上がり下着をつけぬ浴衣かな 浴衣 13.8.3.
660 下着なし乳房が踊る浴衣かな 浴衣 13.8.3.
661 氷柱で肩凝りの壷突き刺さん 氷柱 13.8.4.
662 少女入り老女出て来る夏木立 夏木立 13.8.4.
663 人影の見へぬ札所や夏木立 夏木立 13.8.4.
664 太枝の突如裂けたり夏木立 夏木立 13.8.4.
665 一本の弦ともなりて蟻の列 蟻の列 13.8.4.
666 ならぬことはならぬ福島夏燕 夏燕 13.8.4.
667 ブラジャーを外して走る夏野かな 夏野 13.8.4.
668 蟻の列ふと湧き出る殺意かな 蟻の列 13.8.4.
669 ホースの水縦にかけをり蟻の列 蟻の列 13.8.4.
670 虐殺の思案を誘ふ蟻の列 蟻の列 13.8.4.
671 蟻の列無造作に消す竹箒 蟻の列 13.8.5.
672 蟻の列掃き散らし行く竹箒 蟻の列 13.8.5.
673 さあ踏めとばかりに続く蟻の列 蟻の列 13.8.5.
674 無防備に命消さるる蟻の列 蟻の列 13.8.5.
675 太平洋無賃で来たる蟻も増へ 13.8.5.
676 毛虫焼くついでに焼かる蟻の列 蟻の列 13.8.5.
677 男臭き匂いを纏ひ蟻の列 蟻の列 13.8.5.
678 一つ身で恋のせつなさ無き蚯蚓
(蚯蚓は雌雄同体なれば)
蚯蚓 13.8.5.
679 一つ身で恋のたてひき無き蚯蚓 蚯蚓 13.8.5.
680 飛び跳ねてやがて干からぶ蚯蚓かな 蚯蚓 13.8.5.
681 あな寂し男女(おとこおんな)の蚯蚓とは 蚯蚓 13.8.6.
682 一つ身で二役務む蚯蚓かな 蚯蚓 13.8.6.
683 媾(まぐは)ひを知らず蚯蚓の咽び泣き 蚯蚓 13.8.6.
684 月明に緑の闇の谷深し
(「春耕」9月号課題詠「月一般」
月明 13.8.6.
685 月明に緑の闇の谷間かな
(同上
月明 13.8.6.
686 月明に緑の闇となる谷間
(同上
月明 13.8.6.
687 谷底の瀬音聞へる月明かり
(同上
月明 13.8.6.
688 谷底の瀬音伝はる月明かり
(同上
月明 13.8.6.
689 月光に猪口と徳利の影並べ
(同上
月光 13.8.6.
690 月明に猪口と徳利の影置けり
(同上
月明 13.8.6.
691 月光にものの怪走る谷木立
(同上
月光 13.8.7.
692 陰沼にものの怪走る月明かり
(同上
月明 13.8.7.
693 無人駅降りて青田の風のなか 青田 13.8.7.
694 里の道漕ぎ渡らんか青田波 青田 13.8.7.
695 里山へ続く青田の幾百枚 青田 13.8.7.
696 草の香を載せてそよろと青田風 青田 13.8.7.
697 かるの子がひょいと顔出す青田かな 青田 13.8.7.
698 掬ふ掌を満たして零る清水かな 清水 13.8.7.
699 滴りの音に休符の混じりけり 滴り 13.8.7.
700 滴りや8分休符のある不思議 滴り 13.8.7.
701 Tシャツや老ひも若きも夏ごろも 夏衣 13.8.8.
702 梅を干す簾の上の濃き温気 梅干 13.8.8.
703 生きる術閉ざして光る蛍かな
(成虫の蛍には採餌機能がない。)
13.8.8.
704 恋なりて従容と逝く雄蛍 13.8.8.
705 虎尾草のお辞儀と見ればお辞儀なり 虎尾草(とらのお) 13.8.8.
706 廃村の崩れし道の都草 都草 13.8.8.
707 捩花や心すなおに捩じれ咲く 捩花 13.8.8.
708 蟻地獄なにごともなく凹みをり 蟻地獄 13.8.8.
709 にわか雨常山木(くさぎ)の花と濡れにけり 常山木 13.8.8.
710 ずぶ濡れを常山木の花と分かちけり 常山木 13.8.8.
711 花カンナ挑む女のルージュかな カンナ 13.8.9.
712 踏切の脇に場所得しカンナかな カンナ 13.8.9.
713 大輪のカンナはどこか秘所めきぬ カンナ 13.8.9.
714 無人駅ホームの端のカンナかな カンナ 13.8.9.
715 茄子胡瓜とまと穫り入る農の日々 カンナ 13.8.9.
716 里山の裾へと続く青田道 青田 13.8.9.
717 そうなんだ溜息ひとつ雲の峰 雲の峰 13.8.9.
718 夏暁(あけ)や残月懈(たゆ)く中天に 夏暁 13.8.9.
719 老骨のあちこち軋む晩夏光 晩夏光 13.8.9.
720 蝉の声ひとつだになく夏深し 蝉・夏深し 13.8.9.
721 蝉時雨降らぬ庭先寂しけり 蝉時雨 13.8.10.
722 七年目迎へる蝉のおらぬ夏 蝉・夏 13.8.10.
723 土用太郎次郎三郎鰻なし 土用太郎・土用次郎・土用三郎・鰻 13.8.10.
724 鰻から宗旨を変へて泥鰌鍋 鰻・泥鰌鍋 13.8.10.
725 鰻なんざ悪たれつきつ泥鰌鍋 鰻・泥鰌鍋 13.8.10.
726 鰻やめ飯田屋で食ふ泥鰌鍋 鰻・泥鰌鍋 13.8.10.
727 鰻消へ土用丑の日の牛丼 鰻・土用丑の日 13.8.10.
728 物干しの狭き露台に妻の愚痴 露台 13.8.10.
729 夏蒲団覚めればつねに左側 夏蒲団 13.8.10.
730 網戸越し瀬音間近に山の宿 網戸 13.8.10.
731 炎昼のやや治まりて二十九度 炎昼 13.8.11.
732 夏暁やひとつの訃報駆け巡る 夏暁 13.8.11.
733 夏暁や命の灯消し哲ちゃん逝く 夏暁 13.8.11.
734 紫陽花やあの葉この葉に青蛙 紫陽花・青蛙 13.8.11.
735 溝浚ひ死語に変へたる下水道 溝浚ひ 13.8.11.
736 どぶ浚ひ消へて下水のマンホール どぶ浚ひ 13.8.11.
737 どぶ浚ひするどぶも消へ暗渠かな どぶ浚ひ 13.8.11.
738 どぶ浚ふおはぐろどぶもなき時代 どぶ浚ひ 13.8.11.
739 しゃきしゃきと砥ぐ包丁の音涼し 涼し 13.8.11.
740 鼻の先汗の粒乗せ児ら走る 13.8.11.
741 蜜豆を食む男らの間の悪さ 蜜豆 13.8.12.
742 薬味葱山盛りに載せどぜう鍋 泥鰌鍋 13.8.12.
743 下足札横に胡坐のどぜう鍋 泥鰌鍋 13.8.12.
744 夏暖簾でこで分け入る馴染客 夏暖簾 13.8.12.
745 夏暖簾跳ね上ぐ弓手(ゆんで)左利き 夏暖簾 13.8.12.
746 心太つんと鼻過ぐ辛子かな 心太 13.8.12.
747 腕の蚊の一呼吸置き刺しにけり 13.8.12.
748 息ひそめ擂鉢の底蟻地獄 蟻地獄 13.8.12.
749 大ジョッキがちりと当てて暑気払ひ 暑気払ひ 13.8.12.
750 風鈴に一一〇番の時代かな 風鈴 13.8.12.
751 お化け屋敷よりごみ屋敷怖ろしき お化け屋敷 13.8.13.
752 夏中を暑気払ひしてけふは冷や 暑気払ひ 13.8.13.
753 甚平を着てパソコンで打つツイッター 甚平 13.8.13.
754 紫陽花や家で携帯電話かな 紫陽花 13.8.13.
755 お化け茄子ジンギスカンの乗馬かな 茄子 13.8.13.
756 白無垢を吊り連ねたるえごの花 えごの花 13.8.13.
757 穂孕み期丈揃ひたる青田揺れ 青田 13.8.13.
758 穂の丈の揃ふを揺らす青田風 青田 13.8.13.
759 鯵握る漁師板前赤銅色 13.8.13.
760 鯵握る板前漁師深きしわ 13.8.13.
761 漁師町舎利たっぷりの鯵握り 13.8.14.
762 やや温きしゃりがうれしひ鯵握り 13.8.14.
763 文学者眠る霊園雲の峰 雲の峰 13.8.14.
764 ペンの人眠る墓苑や雲の峰 雲の峰 13.8.14.
765 俳人も眠る墓苑や雲の峰 雲の峰 13.8.14.
766 ミニトマトほどの枇杷の実百顆熟る 枇杷の実 13.8.14.
767 いま買いひし李をかじる道の駅 13.8.14.
768 大蟻の行きつ戻りつぎこちなし 13.8.14.
769 雷鳴を連れて夕立の雨しぶき 夕立 13.8.14.
770 蟻の列たちまち沈めゲリラ雨 13.8.14.
771 土砂降りとなりて夕立の居丈高 夕立 13.8.15.
772 夕立に逃げ足速き露天か商 夕立 13.8.15.
773 夕立やスマホ繰りつつ雨宿り 夕立 13.8.15.
774 ごろと句点打ちて雷店じまひ 雷神 13.8.15.
775 風凪て大暑の夜の月満てる 大暑 13.8.15.
776 月満ちて大暑の空の雲分けぬ 大暑 13.8.15.
777 のの字書くへその曲がりし胡瓜もぐ 胡瓜 13.8.15.
778 茄子畑三日見ぬ間のお化けぶり 茄子 13.8.15.
779 茄子畑三日見ぬ間にお化け茄子 茄子 13.8.15.
780 晩酌や夜ごと夜ごとの暑気払ひ 暑気払ひ 13.8.15.
781 どったりと育ち過ぎたる胡瓜もぐ 胡瓜 13.8.16.
782 茄子畑三日で育つお化けぶり 茄子 13.8.16.
783 茄子畑三日来ぬ間にお化け茄子 茄子 13.8.16.
784 晩酌や酒もとりどり暑気払ひ 暑気払ひ 13.8.16.
785 空海と同じ天空雲の峰 雲の峰 13.8.16.
786 空海の高野で仰ぐ雲の峰 雲の峰 13.8.16.
787 天空の高野で仰ぐ雲の峰 雲の峰 13.8.16.
788 空海と言ふ天才や雲の峰 雲の峰 13.8.16.
789 高野山空海も見し雲の峰 雲の峰 13.8.16.
790 奥の院巨木の醸す木下闇 木下闇 13.8.16.
791 庭一樹百顆の枇杷を灯しけり 枇杷 13.8.17.
792 花の色刈る手止めさす蛍草 蛍草・露草 13.8.17.
793 儚きと見せて繁茂のほたる草 蛍草・露草 13.8.17.
794 露草の儚き風情したたかに 蛍草・露草 13.8.17.
795 雑草と言へて言へない蛍草 蛍草・露草 13.8.17.
796 藍色の花に露載せほたる草 蛍草・露草 13.8.17.
797 雑草の身ながら雅(みやび)ほたる草 蛍草・露草 13.8.17.
798 われも雑草きみも雑草ほたる草 蛍草・露草 13.8.17.
799 露草の名も儚くて蛍草 蛍草・露草 13.8.17.
800 露草の名に違わずに朝の露 蛍草・露草 13.8.17.
801 露ひとつ転がり落ちて蛍草 蛍草・露草 13.8.18.
802 鴫焼や作務衣の僧の給仕受け 鴫焼 13.8.18.
803 正座して鴫焼を食む修行僧 鴫焼 13.8.18.
804 青竹の香を楽しみつ冷し酒 冷し酒 13.8.18.
805 青竹の香を合せ飲む冷し酒 冷し酒 13.8.18.
806 瀬の音に包まれて呑む岩魚酒 岩魚 13.8.18.
807 夏菊や農具を洗ふ用水路 夏菊 13.8.18.
808 じりじりと照りつける日や胡麻の花 胡麻の花 13.8.18.
809 雷鳴を連れて夕立の大しぶき 雷鳴・夕立 13.8.18.
810 パソコンに一句詠むうち昼寝かな 昼寝 13.8.18.
811 わしゃ知らんなどと言はれて咲く紫蘭 柴蘭 13.8.19.
8132 繁茂する勢ひ怖し灸花 灸花 13.8.19.
813 かたばみにちょっと手を止め草むしり かたばみ 13.8.19.
814 虎杖(いたどり)の花は悲しも活けられず 虎杖 13.8.19.
815 目の端に入りたる現の証拠かな げんのしょうこ 13.8.19.
816 檜扇の咲く路地裏を過る猫 檜扇 13.8.19.
817 夏の蝶ニライカナイへ翔び立てり 夏の商 13.8.19.
818 裸子にちんちんもあり貝もあり 裸子 13.8.19.
819 猛暑日や運河を跨ぐ水道管 猛暑日 13.8.19.
820 書斎とは言ひて恥ずかし端居なり 端居 13.8.19.
821 飲用は不可の泉に缶ビール 缶ビール 13.8.20.
822 夏川にたも振る児らの声弾む 夏川 13.8.20.
823 朝の庭歩けば濡るる夏の露 夏の露 13.8.20.
824 存在の軽く哀しき守宮逃ぐ 守宮(やもり) 13.8.20.
825 遠慮しつ儚く生きる守宮かな 守宮 13.8.20.
826 べーべーと金玉笛や夏まつり 夏まつり 13.8.20.
827 昼寝さめ夢中の佳句を忘れたり 昼寝 13.8.20.
828 夏風邪のはな水止まり治りたり 夏風邪 13.8.20.
829 生足の名で闊歩する素足かな 素足 13.8.20.
830 生足と呼ばる素足の乙女たち 素足 13.8.20.
831 生足と呼びし乙女の素足行く 素足 13.8.21.
832 もち竿で蝉取る児らやいまいずこ 13.8.21.
833 メイドインチャイナとありし水中花 水中花 13.8.21.
834 これもまた中国製や水中花 水中花 13.8.21.
835 あめんぼを追いかけ走る樟脳舟 あめんぼ・樟脳舟 13.8.21.
836 浮いてこぬ浮人形の臍曲がり 浮人形 13.8.21.
837 登る列下るも列の富士の夏 13.8.21.
838 露ひとつ転ろげ落ちたり蛍草 蛍草 13.8.21.
839 炎昼の運河を跨ぐ水道管 炎昼 13.8.21.
840 流れゆく落葉に蟻の右往左往 13.8.21.
841 流れゆく落葉の蟻やとほほ顔 13.8.22.
842 流れゆく落葉の蟻を助けたり 13.8.22.
843 洗濯物ひらひら揺れる晩夏光 晩夏光 13.8.22.
844 コープ車に主婦ら集まる晩夏かな 晩夏 13.8.22.
845 夏深しストラディバリウスを聴く 夏深し 13.8.22.
846 部屋涼しストラディバリを聴くサロン 涼し 13.8.22.
847
フルートの管ひんやりとして晩夏 晩夏 13.8.22.
848 炎昼や生足で行く乙女たち 炎昼 13.8.22.
849 炎昼や頷いて読む誓子の句 炎昼 13.8.22.
850 炎昼のバス亀足で近づけり 炎昼 13.8.22.
851 炎昼やどのバス停も日陰なし 炎昼 13.8.23.
852 虹に乗り滑り行く夢幼の日 13.8.23.
853 虹架かる大つり橋の渓深し 13.8.23.
854 葉の一枚一枚ずつに青蛙 青蛙 13.8.23.
855 米櫃で熟柿に変る富有柿
(「春耕」10月号課題詠「柿」)
13.8.23.
856 米櫃で熟柿となりし富有柿 13.8.23.
857 米櫃のコメに埋まりて柿熟す 13.8.23.
858 米櫃のコメに埋もる熟柿かな 13.8.23.
859 米櫃から母の取り出す熟柿食み 13.8.23.
860 米櫃で熟せし柿や母の味 13.8.23.
861 米櫃の熟柿啜りし幼き日 13.8.24.
862 米櫃の熟柿懐かし母の味 13.8.24.
863 米櫃の熟柿賜ひし母の笑み 13.8.24.
864 米櫃の熟柿取り出す母の笑み 13.8.24.
865 米櫃の熟柿にはしゃぐ幼の日 13.8.24.
866 夕日浴ぶ柿のたわわに過疎の村 13.8.24.
867 だれも取らぬ柿たわなる過疎の村 13.8.24.
868 たわわなる千成柿や過疎の村 13.8.24.
869 たわわなる柿の木あらば過疎の村 13.8.24.
870 たわわなる柿の木寂し過疎の村 13.8.24.
871 柿たわわ取る者もなく村さびれ 13.8.25.
872 動態の視力に賭ける雨蛙 雨蛙 13.8.25.
873 蹲踞して動くもの待つ雨蛙 雨蛙 13.8.25.
874 雨蛙狩り場は視界五十ミリ 雨蛙 13.8.25.
875 季重なり季違いもあり夏不動 13.8.25.
876 原爆忌落とした国の民主主義 原爆忌 13.8.25.
877 スマホてふ人が人見ぬ街の夏 13.8.25.
878 告別の列に加わる黒揚羽 揚羽蝶 13.8.25.
879 夏のれん草書一文字分けて入る 夏のれん 13.8.25.
880 宇治金時匙で崩せば夏の蝶 夏の蝶 13.8.25.
881 冷そうめん赤と緑が三筋ほど 冷そうめん 13.8.26.
882 冷し中華五種の具が載る五目かな 冷し中華 13.8.26.
883 冷そうめん啜りて過る喉仏 冷そうめん 13.8.26.
884 冷そうめん啜りて喉で噛むごとし 冷そうめん 13.8.26.
885 胡瓜もみおろし生姜のほどのよさ 胡瓜もみ 13.8.26.
886 朝取りを持ち帰り来し胡瓜もみ 胡瓜もみ 13.8.26.
887 朝取りの茄子注文の鉄火味噌 茄子 13.8.26.
888 打水の風も呼び込む大籬(おおまがき) 打水 13.8.26.
889 妓夫の撒く打水涼し大籬 打水 13.8.26.
890 野の花の誇りを色に蛍草 蛍草 13.8.26.
891 雑草の身なれど凛と蛍草 蛍草 13.8.27.
892 夏の川たも振る児らの声弾む 夏の川 13.8.27.
893 告別の列に就きたる黒揚羽 揚羽蝶 13.8.27.
894 炎昼の運河を跨ぐ水道管 炎昼 13.8.27.
895 かき氷匙で崩せば遠太鼓 かき氷 13.8.27.
896 フルートのひんやりとして晩夏かな 晩夏 13.8.27.
897 また一つ別れを告げて流れ星
(季語:流れ星=秋)
流れ星 13.8.27.
898 扇風機回しつ暦秋に入る 扇風機・秋 13.8.27.
899 頭痒し心もかゆし秋立ちぬ 立秋 13.8.27.
900 人熔かし人を焼きたる原爆忌 原爆忌 13.8.27.
901 街熔かし焼きつくしたる原爆忌 原爆忌 13.8.28.
902 台所タイマー鳴れりひろしま忌 広島忌 13.8.28.
903 蒸し焼きの阿鼻叫喚や原爆忌 原爆忌 13.8.28.
904 石の面に人影刻しひろしま忌 広島忌 13.8.28.
905 元安川川面沸き立つひろしま忌 広島忌 13.8.28.
906 元安川人折り重なりて広島忌 広島忌 13.8.28.
907 都市一つアウシュビッツやひろしま忌 広島忌 13.8.28.
908 スイッチオン都市一つ消ゆひろしま忌 広島忌 13.8.28.
909 背の子焼け母も息絶ふ原爆忌 原爆忌 13.8.28.
910 過ちを繰り返しをり原爆忌 原爆忌 13.8.28.
911 吊革に手だけ残りし原爆忌 原爆忌 13.8.29.
912 折り鶴のずしりと重し原爆忌 原爆忌 13.8.29.
913 元安川川面の火照るひろしま忌 広島忌 13.8.29.
914 街消へる前の青空ひろしま忌 広島忌 13.8.29.
915 ペットボトル持ちつ集へり原爆忌 原爆忌 13.8.29.
916 元安川ドーム映してひろしま忌 広島忌 13.8.29.
918 灯篭の川面の記憶ひろしま忌 広島忌 13.8.29.
919 地獄絵図伝へ続けよ原爆忌 原爆忌 13.8.29.
920 頭垂れ誓い新たに原爆忌 原爆忌 13.8.29.
921 茄子もぎを止めて黙とう原爆忌 原爆忌 13.8.30.
922 炊事場で妻も黙とう原爆忌 原爆忌 13.8.30.
923 朝取りの野菜を妻へ原爆忌 原爆忌 13.8.30.
924 けふもまた視界良好ひろしま忌 広島忌 13.8.30.
925 台所タイマー鳴りをりひろしま忌 広島忌 13.8.30.
926 告別の列に纏はる黒揚羽 揚羽蝶 13.8.30.
927 バス停で青空見上ぐ原爆忌 原爆忌 13.8.30.
928 眼科医の待合室や晩夏光 晩夏光 13.8.30.
929 堰に建つ兄弟像や晩夏光
(玉川上水開削の玉川兄弟像が建つ羽村堰で詠む)
晩夏光 13.8.30.
930 遠山に稲妻走る里の道 稲妻 13.8.30.
931 蝉鳴かず蜻蛉も見ずに晩夏光 蝉・蜻蛉・晩夏光 13.8.31.
932 楽隊を引き連れ夕立の大しぶき 夕立 13.8.31.
933 カサブランカ息詰まるほど香を放ち カサブランカ(百合) 13.8.31.
934 原爆碑献花の百合の香にむせり 百合 13.8.31.
935 葉隠れに茗荷の花の咲き初めり 茗荷に花 13.8.31.
936 柔かに深掘りの畝大根蒔く 大根蒔く 13.8.31.
937 鍬持つ手ふと止まるなり赤とんぼ 赤蜻蛉 13.8.31.
938 鍬持つ手ふと休ませて赤とんぼ 赤蜻蛉 13.8.31.
939 近隣の僧一堂に施餓鬼かな 施餓鬼 13.8.31.
940 茄子の馬割り箸の脚踏ん張りぬ 茄子の馬 13.8.31.
941 割り箸の脚踏ん張りて茄子の馬 茄子の馬 13.9.1.
942 門火焚く家も無きまま路地暮るる 門火焚く 13.9.1.
943 迎火の習ひも絶えて路地暗し 迎火 13.9.1.
944 フルートのひんやりとして夜の秋 夜の秋 13.9.1.
945 夏の蝶ニライカナイへ向ふかな 夏の蝶 13.9.1.
946 千羽鶴重きを抱き原爆忌 原爆忌 13.9.1.
947 山里の湯に浸かる旅晩夏光 晩夏光 13.9.1.
948 どの虫も腹を見せゐる網戸かな 網戸 13.9.1.
949 夏蒲団なぜか手足の遥か先 夏布団 13.9.1.
950 滝壺の魚影走らす水しぶき
(13.8.6.桧原村払沢の滝で)
13.9.1.
951 払子の滝ひいふうみよと落ちにけり
(同上)
13.9.2.
952 滝の音耳に留めて滝を去る
(13.8.7.桧原村九頭龍滝で)
13.9.2.
953 上下に禊ぎの人や二段滝
(同上)
13.9.2.
954 禊ぎする人を見る人滝見橋
(同上)
13.9.2.
955 滝壺に足だけ禊ぎしたるかな 13.9.2.
956 台所タイマー響く原爆忌 原爆忌 13.9.2.
957 秋立ちて季違い句詠む猛暑かな 立秋・猛暑 夏・秋 13.9.2.
958 「暫く」と秋を制する猛暑かな 猛暑 13.9.2.
959 法会済み静寂戻る施餓鬼寺 施餓鬼寺 13.9.2.
960 新しき卒塔婆を受け大施餓鬼 施餓鬼 13.9.2.
961 大施餓鬼終へて作務衣の和尚かな 施餓鬼 13.9.3.
962 供花の水湯に変じゆく施餓鬼かな 施餓鬼 13.9.3.
963 蒸しむしと風なき道の葛の花 葛の花 13.9.3.
964 日照雨(そばえ)きて葉裏に隠る葛の花 葛の花 13.9.3.
965 葉の間から天覗かんと葛の花 葛の花 13.9.3.
966 滝の風葉裏に受けて葛の花 葛の花 13.9.3.
967 葛は花愛でられつつも嫌はれて 13.9.3.
968 渓流の深き瀬音や葛の花 葛の花 13.9.3.
969 渓深き瀬音伝へて葛の花 葛の花 13.9.3.
970 滝落ちる崖を狭めて葛の花 葛の花 13.9.3.
971 滝の幅狭めんとする真葛かな 真葛・葛 13.9.4.
972 河原道待ったを掛ける葛かづら 葛かづら 13.9.4.
973 葛の葉の白き葉裏や風よぎる 13.9.4.
974 払沢の滝壺見へて葛の花 葛の花 13.9.4.
975 九頭龍の滝見へ隠れ葛の花 葛の花 13.9.4.
976 朝靄の山路にひょいと藪萱草 萱草 13.9.4.
977 草の王の雌蕊天指す雲の峰 雲の峰 13.9.4.
978 朝露を載せて眩しき月見草 月見草 13.9.4.
979 蕾爆ぜ紫こぼす玉あじさい 紫陽花 13.9.4.
980 山吹の実の艶やかに晩夏光 晩夏光 13.9.4.
981 秋立つにただいま三十七度なり 立秋 13.9.5.
982 あと何度妻と語りつ墓洗ふ 墓洗ふ 13.9.5.
983 親父より十余も生きて墓洗ふ 墓洗ふ 13.9.5.
984 花筒のすぐ湯に変る墓洗ふ 墓洗ふ 13.9.5.
985 洗ふ墓父母弟妹の眠りをり 墓洗ふ 13.9.5.
986 銀漢に父母弟妹の睦む見ゆ 銀漢 13.9.5.
987 茄子の牛胡瓜の馬と並びけり 茄子の牛・瓜の馬 13.9.5.
988 鍬形に尻かじられる茄子の馬 茄子の馬 13.9.5.
989 ガンダムを背に嘶ける茄子の馬 茄子の馬 13.9.5.
990 脚長き麒麟も交じる瓜の馬 瓜の馬 13.9.5.
991 みぞはぎや姿見の池縁取りて 溝萩 13.9.6.
992 われを指し生身魂だねと孫笑ふ 生身魂 13.9.6.
993 野菜摘む手止め黙とう長崎忌 長崎忌 13.9.6.
994 初秋や立ち入る隙のなき猛暑 初秋 13.9.6.
995 サックスに合いの手入れる秋の雷 秋の雷 13.9.6.
996 稲びかりバッグの傘を確かめる 稲光 13.9.6.
997 色に出て縒(よ)れ果てんとす酔芙蓉 酔芙蓉 13.9.6.
998 色に出て縒れて果てゆく酔芙蓉 酔芙蓉 13.9.6.
999 悔恨の曇りなきまま白芙蓉 白芙蓉 13.9.6.
1000 葉の間から茎つんつんと花擬宝珠 花擬宝珠 13.9.6.
  ♪BGM:Chopin[Nocturne5]arranged by Pian♪
表紙へ 第7回

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