鈴童の遊び 一日十句以上を千句詠む （第１０回）

No.	句	季　語	季	作句日
1	鵙（もず）高音園児の声に紛れたり	鵙	秋	13.11.19.
2	冬菊や首欠け増へし六地蔵	冬菊	冬	13.11.19.
3	落とし水逃げ遅れたる泥鰌かな	落し水	秋	13.11.19.
4	流れ行く枯葉追い抜く魚影あり	枯葉	冬	13.11.19.
5	流れ行く枯葉追い抜く魚の影	枯葉	冬	13.11.19.
6	流れ行く枯葉追い抜く魚影かな	枯葉	冬	13.11.19.
7	☆うるうると盛上りたる紅葉山 （「どんぐりと山猫」）	紅葉	秋	13.11.19.
8	☆里山のどんぐり光る寒日和 （「どんぐりと山猫」）	団栗・寒日和	秋・ 冬	13.11.19.
9	摘茸（つまみだけ）うれし友なり冬の蠅	冬の蠅	冬	13.11.19.
10	☆雪んこの来ぬ間お出でんイーハトヴ （「狼森と笊森、盗森」）	雪	冬	13.11.19.
11	☆すきとほる風に銀嶺岩木山 （「狼森と笊森、盗森」）	雪	冬	13.11.20.
12	☆木枯やお岩木山の名裁き （「狼森と笊森、盗森」）	木枯	冬	13.11.20.
13	☆食べられる山猫店の枯葉鳴る （「注文の多い料理店」）	枯葉	冬	13.11.20.
14	☆お客さま食べられますと枯葉舞ふ （「注文の多い料理店」）	枯葉	冬	13.11.20.
15	☆若烏星に願ひし雪の朝 （「烏の北斗七星」）	雪	冬	13.11.20.
16	☆雪童子カリメラの夢見守れり （「水仙月の四日」）	雪	冬	13.11.20.
17	おでん酒屋台懐かしカーバイド	おでん	冬	13.11.20.
18	冬蕨吐息のごとく胞子吐く	冬蕨	冬	13.11.20.
19	川の瀬を青鷺渡る寒日和	寒日和	冬	13.11.20.
20	あんなことこんなことあり十二月	十二月	冬	13.11.20.
21	吊し柿干大根や寒日和	吊し柿・干大根 寒日和	秋・冬	13.11.21.
22	柚子もらひ泥つき葱を返したり	柚子・葱	秋・冬	13.11.21.
23	生々し魚板の凹み寒の寺	寒	冬	13.11.21.
24	たたら踏む衰えおかし大根引き	大根引	冬	13.11.21.
25	「いやーん」と股捩りたる大根引く	大根引	冬	13.11.21.
26	吊し柿日暮れの色に変りたり	吊し柿	冬	13.11.21.
27	うつらうつら老いたる脳を散る落葉	落葉	冬	13.11.21.
28	落葉掃く作務衣の僧のナイキ靴	落葉	冬	13.11.21.
29	寒修行作務衣の靴はナイキロゴ	寒	冬	13.11.21.
30	作務衣の僧ナイキの靴で落葉焚く	落葉焚	冬	13.11.21.
31	散る紅葉賓頭盧のでこそっと撫で	散紅葉	冬	13.11.22.
32	紅葉の木々を透かせば那須五岳	紅葉	秋	13.11.22.
33	魚板打つ木槌の響き朴落葉	朴落葉	冬	13.11.22.
34	真相は言ぬが花の夜寒かな	夜寒	冬	13.11.22.
35	秘して逝く覚悟もありて冬燕	冬燕	冬	13.11.22.
36	野垂れ死に覚悟で残る冬燕	冬燕	冬	13.11.22.
37	似ればこそ嫌ふ鷹女も石蕗の花	石蕗の花	冬	13.11.22.
38	春暁に陰火傷とはあまり女史	春暁	春	13.11.22.
39	二度とまた戻れぬ命寒すみれ	寒	春	13.11.22.
40	永遠に戻らぬ命寒すみれ	寒	春	13.11.22.
41	路地裏を木枯らしだけが吹き抜けり	木枯	冬	13.11.23.
42	ホイホイに冬の守宮の屍も	冬・ 守宮	冬・夏	13.11.23.
43	ホイホイに冬の守宮の果ててをり	冬・ 守宮	冬・夏	13.11.23.
44	ホイホイに冬の守宮の果てにけり	冬・ 守宮	冬・夏	13.11.23.
45	藁塚を立たせて緑穭（ひつじ）の穂	藁塚	秋	13.11.23.
46	藁塚の整然ならず並びをり	藁塚	秋	13.11.23.
47	藁塚に凭れ本読む少年期	藁塚	秋	13.11.23.
48	稲架かけは消へて稲刈るコンバイン	稲架（はざ）	秋	13.11.23.
49	新米を「お焦げ」指定で炊きにけり	新米	秋	13.11.23.
50	新米のお焦げ三角握り飯	新米	秋	13.11.23.
51	釜炊きの焦げ飯旨し今年米	今年米	秋	13.11.24.
52	釜炊きの焦げ飯を食む今年米	今年米	秋	13.11.24.
53	紅葉狩天ぷらにして味はへり	紅葉狩	秋	13.11.24.
54	紅葉狩り天ぷらにして酒酌みぬ	紅葉狩	秋	13.11.24.
55	紅葉山天ぷらにして食みにけり	紅葉	秋	13.11.24.
56	紅葉山天ぷらにして酒旨し	紅葉	秋	13.11.24.
57	愚にもつかぬことは詠まじと寒鴉	寒鴉	冬	13.11.24.
58	嫌はれて好かれて咲けり石蕗の花	石蕗の花	冬	13.11.24.
59	嫌はれて好かれておかし石蕗の花	石蕗の花	冬	13.11.24.
60	好き嫌い毀誉褒貶の石蕗の花	石蕗の花	冬	13.11.24.
61	伽羅蕗になりて酒肴の石蕗の花	石蕗の花	冬	13.11.25.
62	門松の赤門潜りバック転	門松	新年	13.11.25.
63	門松の赤門潜る初吟かな	門松	新年	13.11.25.
64	赤門を悲喜こもごもの潜る春	春	春	13.11.25.
65	東大の学食で食ふ雑煮かな	雑煮	新年	13.11.25.
66	初詣湯島天神男坂	初詣	新年	13.11.25.
67	万両や赤門の朱に張り合へり	万両	冬	13.11.25.
68	身を振い銀杏落葉の禊かな	銀杏落葉	冬	13.11.25.
69	かさっと音かすかにしたり柿落葉	柿落葉	冬	13.11.25.
70	酔ひ覚めのごくりと旨し寒の水	寒の水	冬	13.11.25.
71	初春や正門よりもまず赤門	初春	新年	13.11.26.
72	破魔矢手に赤門潜り笑む親子	破魔矢	新年	13.11.26.
73	破魔矢手に赤門通る親子かな	破魔矢	新年	13.11.26.
74	破魔矢手に赤門潜りハイタッチ	破魔矢	新年	13.11.26.
75	落葉焚く作務衣の僧のナイキ靴	落葉焚	冬	13.11.26.
76	着ぶくれて客待つ女占い師	着ぶくれ	冬	13.11.26.
77	山茶花のついと花びら落しけり	山茶花	冬	13.11.26.
78	白菜の季に違はずに巻き初めり	白菜	冬	13.11.26.
79	巻きて重き畝の白菜確かめる	白菜	冬	13.11.26.
80	しっかりと巻く白菜の頭撫ず	白菜	冬	13.11.26.
81	笹鳴きや若鳥二羽の競ひをり	笹鳴き	冬	13.11.27.
82	古セーター引きずり出して着始めり	セーター	冬	13.11.27.
83	パソコンに向かひつうつら日向ぼこ	日向ぼこ	冬	13.11.27.
84	蹲（つくばい）に冬晴れの空揺らぎをり	冬晴れ	冬	13.11.27.
85	蹲に紅葉沈めて水揺るる	紅葉	秋	13.11.27.
86	海鼠腸（このわた）を箸先に載せ食む至福	海鼠腸	冬	13.11.27.
87	破れ翅を合はせて不動冬の蝶	冬の蝶	冬	13.11.27.
88	破れ翅でなほ生きんとす冬の蝶	冬の蝶	冬	13.11.27.
89	赤門を発ちて十門初巡り	初巡り	新年	13.11.27.
90	刀折れ矢尽きし様の枯蓮田	枯蓮田	冬	13.11.27.
91	戦果て水漬く屍の枯蓮田	枯蓮田	冬	13.1.28.
92	枯菊となりて焼かるる墓地の供花	枯菊	冬	13.11.28.
93	枯果てし身を持て余す大芭蕉	枯芭蕉	冬	13.11.28.
94	風呂吹や味噌の旨さが引き立てる	風呂吹	冬	13.11.28.
95	寿司職の賄いに出る葱鮪（ねぎま）鍋	葱鮪鍋	冬	13.11.28.
96	冬芽たち早やごそごそと息吹きをり	冬芽	冬	13.11.28.
97	一葉まで落し切らんと紅葉散る	紅葉散る	冬	13.11.28.
98	ときおりは黒きも雑じる木の葉髪	木の葉髪	冬	13.11.28.
99	後頭の不毛地広ぐ木の葉髪	木の葉髪	冬	13.11.28.
100	青空を広げ尽すか木の葉雨	木の葉雨	冬	13.11.28.
101	年を越す大蝌蚪の群れ日向ぼこ (幼生で越冬する牛蛙のオタマジャクシ）	蝌蚪・日向ぼこ	春・冬	13.11.29.
102	寒晴れや皇帝ダリア高々と	寒晴れ	冬	13.11.29.
103	白銀葦花穂突き立てて北風（きた）払ふ （しろがねよし＝パンパスグラス）	北風	冬	13.11.29.
104	冬夕焼け吾影伸びて十頭身	冬夕焼け	冬	13.11.29.
105	冬鵙の二声残せし雑木山	冬の鵙	冬	13.11.29.
106	寒夕焼け薄れしあたり一番星	寒夕焼	冬	13.11.29.
107	寒禽の声交差して日は天頂	寒禽	冬	13.11.29.
108	揺するたび煙霧吐き出す寒蕨	寒蕨	冬	13.11.29.
109	枯芭蕉無残に耐へて立ち尽くす	枯芭蕉	冬	13.11.29.
110	煮立つほど身の影消ゆる鮟鱇鍋	鮟鱇鍋	冬	13.11.29.
111	身はいずこ軟骨しゃぶる鮟鱇鍋	鮟鱇鍋	冬	13.11.30.
112	枯芭蕉襤褸に耐へて立ち尽くす	枯芭蕉	冬	13.11.30.
113	冬の日の朝のごみ出しつつがなく	冬の日	冬	13.11.30.
114	差し初むる冬の朝日に翳る路地	冬日	冬	13.11.30.
115	がたりごとり生きる軋みや枯柳	枯柳	冬	13.11.30.
116	戦争がすぐそばにゐる日向ぼこ	日向ぼこ	冬	13.11.30.
117	ポインセチアこれぞまさしく紅葉かな	ポインセチア・紅葉	冬・秋	13.11.30.
118	ポインセチアこれぞ紅葉に違ひなし	ポインセチア・紅葉	冬・秋	13.11.30.
119	雅なる記憶を秘めて枯芙蓉	枯芙蓉	冬	13.11.30.
120	美しき日々も在りしを枯芙蓉	枯芙蓉	冬	13.11.30.
121	移ろひを止めたる真紅青木の実	青木の実	冬	13.12.1.
122	室咲の花の命の長きこと	室咲	冬	13.12.1.
123	冬木立梢に光る星ひとつ	冬木立	冬	13.12.1.
124	多摩川のくねりて流る柚子の里	柚子	秋	13.12.1.
125	余命こそやることありて冬木立	冬木立	冬	13.12.1.
126	後いくつ寝れば彼岸に生身魂	生身魂	秋	13.12.1.
127	寒菊のふてぶてしくも乱れ咲く	寒菊	冬	13.12.1.
128	日を浴びて寒菊頑と咲きにけり	寒菊	冬	13.12.1.
129	吾庭は十両ばかり藪柑子	藪柑子	冬	13.12.1.
130	葉の間からちょっとだけよと藪柑子	藪柑子	冬	13.12.1.
131	冬菜畑水菜小松菜ほうれん草	冬菜畑	冬	13.12.2.
132	冬菜畑畝いっぱいの緑かな	冬菜畑	冬	13.12.2.
133	白菜の尻を揃へて積まれけり	白菜	冬	13.12.2.
134	白菜の尻撫でながら糶（せり）の声	白菜	冬	13.12.2.
135	白菜の尻丸々と糶られたり	白菜	冬	13.12.2.
136	前衛を捨てし学徒や枯芭蕉	枯芭蕉	冬	13.12.2.
137	眦（まなじり）を決するは死語十二月	十二月	冬	13.12.2.
138	街中はスマホ奴隷の年の暮	年の暮	冬	13.12.2.
139	冬菜摘みそのしゃきしゃきを持ち帰る	冬菜	冬	13.12.2.
140	綿虫や手探りで詠む十七字	綿虫	冬	13.12.2.
141	よろぼひつ問ひつ惑ひつ枯野道	枯野	冬	13.12.3.
142	道の端の落花で気付く寒椿	寒椿	冬	13.12.3.
143	侘助は一輪挿しの似合ふ花	侘助	冬	13.12.3.
144	和ばさみで侘助切りて老尼笑む	侘助	冬	13.12.3.
145	白珊瑚さも似る庭の花八つ手	花八つ手	冬	13.12.3.
146	茶の花の眩しげに咲く里の道	茶の花	冬	13.12.3.
147	茶の花にしがみつきゐる熊ん蜂	茶の花	冬	13.12.3.
148	ひひらぎの花こぼれ散り地も香る	柊	冬	13.12.3.
149	柊の小さき花に小さき虫	柊	冬	13.12.3.
150	穫り入れは拾ふがごとく蕪畑	蕪	冬	13.12.3.
151	水涸れて落葉積りし用水路	落葉	冬	13.12.4.
152	山眠る前の賑はい谷紅葉	山眠る・紅葉	冬・秋	13.12.4.
153	渓谷を深く刻みて紅葉晴れ	紅葉	秋	13.12.4.
154	兵児帯で主降り立つ庭紅葉	紅葉	秋	13.12.4.
155	兵児帯の主の背に乗る落葉かな	寒晴	冬	13.12.4.
156	寒晴の空見上げつつごみ出しに	寒晴	冬	13.12.4.
157	寒鴉目と目が合ひてついと去る	寒鴉	冬	13.12.4.
158	初詣上りは易き女坂	初詣	新年	13.12.4.
159	初詣降りはけろり男坂	初詣	新年	13.12.4.
160	寒晴れや吉川英治記念館	寒晴	冬	13.12.4.
161	鮟鱇鍋身は諦めて骨しゃぶる	鮟鱇鍋	冬	13.12.5.
162	吟行の句会終れば年忘れ	年忘れ	冬	13.12.5.
163	落葉焚く作務衣の僧は美青年	落葉焚き	冬	13.12.5.
164	見張り役一羽に託し浮寝鳥	浮き寝鳥	冬	13.12.5.
165	先生の数だけ綽名漱石忌	漱石忌	冬	13.12.5.
166	生まれどき違へて辛き冬の蝶	冬の蝶	冬	13.12.5.
167	蹲にそっと紅葉を浮かべけり	紅葉	秋	13.12.5.
168	蹲に散りし紅葉や水の糸	紅葉	秋	13.12.5.
169	口寒し秘密を増やす秘密法	寒い	冬	13.12.5.
170	紅葉谷またぐ奥多摩橋も紅	紅葉	秋	13.12.5.
171	千成の柿の実まぶし無人駅	柿の実	秋	13.12.6.
172	渓谷を深く刻みて紅葉晴	紅葉	秋	13.12.6.
173	寒晴れや英治ゆかりの草思堂	寒晴	冬	13.12.6.
174	古井戸の覆いし蓋に散紅葉	散紅葉	冬	13.12.6.
175	焼酎に柚子の香りやカンタータ	柚子	秋	13.12.6.
176	兵児帯の主も仰ぎし庭紅葉	紅葉	秋	13.12.6.
177	柚子たわわたつきの煙吉野郷	柚子	秋	13.12.6.
178	笹鳴きの小藪かしまし坂下る	笹鳴き	冬	13.12.6.
179	笹鳴きの掛け合ひ響く日暮れ道	笹鳴き	冬	13.12.6.
180	山里の日暮れは早し冬紅葉	冬紅葉	冬	13.12.6.
181	峪深き瀬音届けり冬紅葉	冬紅葉	冬	13.12.7.
182	里の道足止めさせる枇杷の花	枇杷の花	冬	13.12.7.
183	冬わらび首に触るれば煙吐く	冬蕨	冬	13.12.7.
184	道細き鎌倉古道柚子たわわ	柚子	秋	13.12.7.
185	古民家の亭主打ちたる走り蕎麦	走り蕎麦	秋	13.12.7.
186	針千本刺されて豆腐針供養 （関東は春、関西は冬）	針供養	冬	13.12.7.
187	釣り針の紛れ込みたる針供養 （針供養＝季語：春＆冬）	針供養	冬	13.12.7.
188	糸伝ひ凧の鼻息手に響く	凧	春	13.12.7.
189	峪深き瀬音かそけく冬紅葉	冬紅葉	冬	13.12.7.
190	峪深き瀬音の遠く冬紅葉	冬紅葉	冬	13.12.7.
191	笹鳴きの小藪かしまし里の道	笹鳴き	冬	13.12.8.
192	霜夜ごと甘さを溜める菜っ葉かな	霜	冬	13.12.8.
193	水菜採りそのしゃきしゃきを持ち帰る （水菜＝季語：春）	水菜	春	13.12.8.
194	鮟鱇鍋身はどこへやら骨しゃぶる	鮟鱇鍋	冬	13.12.8.
195	枯菊の焚かれる炎音高し	枯菊	冬	13.12.8.
196	冬ざれの相貌見せて老鉄幹	冬ざれ	冬	13.12.8.
197	朝採りがどんぶりで出る大根炊き	大根炊き	冬	13.12.8.
198	椎茸と油揚げも入れ大根炊き	大根炊き	冬	13.12.8.
199	われ見よとばかりに赤き七竈	七竈	秋	13.12.8.
200	ひょっこりと一句生まれし日向ぼこ	日向ぼこ	冬	13.12.8.
201	余命気にしつつうつらの日向ぼこ	日向ぼこ	冬	13.12.9.
202	蒼天に凧を据へたる大たるみ（凧＝季語：春）	凧	春	13.12.9.
203	天高く凧上るほど糸撓む	凧	春	13.12.9.
204	糸伝ひ凧の荒息手に響く	凧	春	3.12.9.
205	年新た吉野の郷に立つ煙	年新た	新年	13.12.9.
206	パソコンに年の始めのキー叩く	年始	新年	13.12.9.
207	初詣佳句詠みたしと神頼み	初詣	新年	13.12.9.
208	初春や他人行儀の挨拶を	初春	新年	13.12.9.
209	一年ぶり鳥居潜りて初詣	初詣	新年	13.12.9.
210	酔ひざめの屠蘇ありがたく頂けり	屠蘇	新年	13.12.9.
211	淑やかに和服もありて初句会	初句会	新年	13.12.10.
212	師の選句胸ときめかす初句会	初句会	新年	13.12.10.
213	コンビニに初荷のトラック横付けに	初荷	新年	13.12.10.
214	初句会早々に終へ新年会	新年会	新年	13.12.10.
215	読初めは芭蕉句集を習ひとし	読初め	新年	13.12.10.
216	草石蚕（ちよろぎ）の名も字も不思議紅の色	草石蚕	新年	13.12.10.
217	喰積（くひつみ）の不思議ちょろぎと慈姑（くわい）食む	喰積（＝重詰、お節）	新年	13.12.10.
218	歯ぎしりの数だけごまめ食みにけり	ごまめ	新年	13.12.10.
219	初風呂やふぐりはどこぞ隠れけり	初風呂	新年	13.12.10.
220	初風呂や老ひしふぐりは縮みけり	初風呂	新年	13.12.10.
221	一日の作句から書く初日記	初日記	新年	13.12.11.
222	老仲間笑顔で集ひ鍬始	桑始	新年	13.12.11.
223	追羽子（おひばね）を突きし娘ら早や初老	追羽子	新年	13.12.11.
224	庭に出て佳句詠みたしと四方拝	四方拝	新年	13.12.11.
225	薺（なずな）打つ厨の響き軽やかに	薺打つ	新年	13.12.11.
226	レトルトの七草粥や独り者	七草粥	新年	13.12.11.
227	わが家では初手から鳥総松（とぶさまつ）飾り	鳥総松	新年	13.12.11.
228	成木責可哀想だと言ふ幼（おさな）	成木責	新年	13.12.11.
229	子供らは顔火照らせつ吉書揚	吉書揚	新年	13.12.11.
230	初詣この日ばかりは皆信者	初詣	新年	13.12.11.
231	恵方へと向ひ太巻きかぶりつく	恵方	新年	13.12.12.
232	とんとこと飴切る音や初大師	初大師	新年	13.12.12.
233	初場所やモンゴル国の国技かな	初場所	新年	13.12.12.
234	ひと日だけ瑞兆となる初鴉	初鴉	新年	13.12.12.
235	出窓には日差しと競ふ福寿草	福寿草	新年	13.12.12.
236	産土の白き御幣の淑気かな	淑気	新年	13.12.12.
237	同じ顔なれど華やぐ初句会	初句会	新年	13.12.12.
238	老ひ忘れみな浮き浮きと初句会	初句会	新年	13.12.12.
239	顔ぶれが欠けずに揃ひ初句会	初句会	新年	13.12.12.
240	初句会みんな背筋を伸ばしけり	初句会	新年	13.12.12.
241	御用始め遥に遠き日の記憶	御用始め	新年	13.12.13.
242	鍬始め畑の陰で初尿（ゆ）まり	鍬始め	新年	13.12.13.
243	艶然と衆生迎へる初巳かな	初巳（初弁天）	新年	13.12.13.
244	凍瀧の裏でくぐもる水の音	凍瀧	新年	13.12.13.
245	冴ゆる夜は床暖に坐しハイボール	冴ゆ	冬	13.12.13.
246	雪女恋せば溶ける泣き所	雪女	冬	13.12.13.
247	寒月や兎の杵も凍りたり	寒月	冬	13.12.13.
248	酒下げて寒暮の道の遠きかな	寒暮	冬	13.12.13.
249	じじじじと咽び泣きをり冬燈（ともし）	冬燈	冬	13.12.13.
250	煮凝の突き出しが出て「取り合えず」	煮凝り	冬	13.12.13.
251	凍蝶の閉じし翅ふと開きたり	凍蝶	冬	13.12.14.
252	藪柑子日陰日陰と増えにけり	藪柑子	冬	13.12.14.
253	日当たりの良ければ嬉々と冬菫	冬菫	冬	13.12.14.
254	藁ぼっち羽織る大輪寒牡丹	寒牡丹	冬	13.12.14.
255	唇を寄せれば香し冬の薔薇	冬薔薇	冬	13.12.14.
256	青髭の中から覗く竜の玉	竜の玉	冬	13.12.14.
257	畑脇に見過ごしいたる冬苺	冬苺	冬	13.12.14.
258	早梅を見つけて嬉々と四十雀	早梅	冬	13.12.14.
259	ジグザグにタックル躱（かわ）すフルバック	ラグビー	冬	13.12.14.
260	フルバック飛鳥のごとく駆け抜けり	ラグビー	冬	13.12.14.
261	湯ざめして湯船に戻る夜更けかな	湯ざめ	冬	13.12.15.
262	寒林の梢が作る靄霞む	寒林	冬	13.12.15.
263	絡み合ひ冬眠中の蛇に夢	冬眠	冬	13.12.15.
264	俳の道迷ひ迷ひて乙字の忌（乙字忌：１．２０．）	乙字忌	冬	13.12.15.
265	二句一章難しきかな乙字の忌	乙字忌	冬	13.12.15.
266	蕉翁の二句一章や乙字の忌	乙字忌	冬	13.12.15.
267	洞門に浪轟けり久女の忌（久女忌：１．２１．）	久女忌	冬	13.12.15.
268	部屋飼の犬ばかりなり漱石忌	漱石忌	冬	13.12.15.
269	耳敏き生業遠く青畝の忌（青畝忌：１２．２２．）	蒼畝忌	冬	13.12.15.
270	耳遠くもこのままでよし青畝の忌	蒼畝忌	冬	13.12.15.
271	寒暁や朝刊配るエンジン音	寒暁	冬	13.12.16.
272	親族の最長老となりし暮	暮	冬	13.12.16.
273	小国民冬至南瓜に箸が出ず	冬至	冬	13.12.16.
274	歳晩の金星一段低き位置	歳晩	冬	13.12.16.
275	傘寿までまだ二年ある年の暮	年の暮	冬	13.12.16.
276	花のなき壺を逃げ出す冬の虫	冬の虫	冬	13.12.16.
277	熱々をふうふうと食ぶ大根炊き	大根炊き	冬	13.12.16.
278	嚔（くしゃみ）するその大口に絆創膏	嚔（くしゃみ）	冬	13.12.16.
279	嚔の字書いてゐるうちはあくしょん	くしゃみ	冬	13.12.16.
280	嚔の字見ているだけでへっくしょん	くしゃみ	冬	13.12.16.
281	戦争を知らぬ政権冬木立	冬木立	冬	13.12.17.
282	嚔とは異端排除のリアクション	くしゃみ	冬	13.12.17.
283	散らせてはならぬ枝葉も冬木立	冬木立	冬	13.12.17.
284	耳遠しも音聞き取らぬ冬木立	冬木立	冬	13.12.17.
285	鼻老ひせど香を嗅ぎ分けぬ冬の蝶	冬の蝶	冬	13.12.17.
286	目霞めども見分け続けぬ冬の星	冬の星	冬	13.12.17.
287	老ひてなほ冬芽の明日見届けぬ	冬芽	冬	13.12.17.
288	湯ざめして嚔連発また風呂に	湯ざめ	冬	13.12.17.
289	凍てし国ひと理不尽に死を賜る	凍てる	冬	13.12.17.
290	冬の日の暮れて余命が一つ減り	冬日	冬	13.12.17.
291	寒晴や十四も若く逝きし父	寒晴	冬	13.12.18.
292	友の訃報続く寂しさ冬木立	冬木立	冬	13.12.18.
293	綿虫の触るれば逝きし儚さよ	綿虫	冬	13.12.18.
294	相次ぎし友の訃報や返り花	返り花	冬	13.12.18.
295	寒林の梢にかかる霞かな	寒林	冬	13.12.18.
296	寒林を見上ぐる息の白さかな	寒林	冬	13.12.18.
297	寒林に踏み込む靴の柔らかき	寒林	冬	13.12.18.
298	寒林の最後の一葉散りにけり	寒林	冬	13.12.18.
299	十二月八日知らぬと言ふ学生	十二月	冬	13.12.18.
300	十二月八日語らず語られず	十二月	冬	13.12.18.
301	十二月八日特集とてもなし	十二月	冬	13.12.19.
302	端境期花なき庭の石蕗の花	石蕗の花	冬	13.12.19.
303	才人の爪尖らせず蕪村の忌	蕪村忌	冬	13.12.19.
304	爪まるく切りて日を浴ぶ蕪村の忌	蕪村忌	冬	13.12.19.
305	年賀状書かぬと決めしゆとりかな	年賀状	冬	13.12.19.
306	山茶花や花びら散らし実を醸す	山茶花	冬	13.12.19.
307	山茶花は実を醸さんと散り急ぐ	山茶花	冬	13.12.19.
308	寒木瓜や返り花にはあらずして	寒木瓜・返り花	冬	13.12.19.
309	木の葉時雨ついに降り止むとき来たり	木の葉時雨	冬	13.12.19.
310	落葉掻く傍ら埋む落葉かな	落葉	冬	13.12.19.
311	掻き集め掻き集めても散る公孫樹	銀杏落葉	冬	13.12.20.
312	木枯らしや豆腐ステーキ箸で食ふ	木枯らし	冬	13.12.20.
313	ひたすらに眠りに入りし冬田かな	冬田	冬	13.12.20.
314	枝先に花芽艶やか冬木立	冬木立	冬	13.12.20.
315	去年今年つなぐ夜道を初詣	初詣	新年	13.12.20.
316	去年今年つなぐ夜更けの初詣	初詣	新年	13.12.20.
317	鎮守社に人湧き出でて初詣	初詣	冬	13.12.20.
318	一枚の畑を染めたる麦双葉	麦双葉	冬	13.12.20.
319	麦の芽の細き葉すべて天を指す	麦の芽	冬	13.12.20.
320	柔らかな起伏を見せて麦双葉	麦双葉	冬	13.12.20.
321	麦の芽の葉先撫でゆく風のあり	麦の芽	冬	13.12.21.
322	雑煮椀淑と手に取る朝かな	雑煮椀	新年	13.12.21.
323	雑煮椀わが家の味の五十年	雑煮椀	新年	13.12.21.
324	冬草に片足揚げる散歩犬	冬草	冬	13.12.21.
325	要領の悪さを見せて冬の蜂	冬の蜂	冬	13.12.21.
326	ちぐはぐとはかくなることと冬の蜂	冬の蜂	冬	13.12.21.
327	よろぼいつなほ死にきれず冬の蝶	冬の蝶	冬	13.12.21.
328	掃き寄せし落葉にすがる冬の蝶	冬の蝶	冬	13.12.21.
329	凍て蝶の骸ころがり星一つ	凍て蝶	冬	13.12.21.
330	銀の穂が来いよこいよと枯芒	枯芒	冬	13.12.21.
331	ひとつふたつ手抜きをしつつ年用意	年用意	冬	13.12.22.
332	初富士やビューポイントは路地の角	初富士	新年	13.12.22.
333	大鷹の凧見下ろしつ舞ふ高さ	凧	春	13.12.22.
334	木屑から伊勢海老がばと跳ね出たり	伊勢海老	新年	13.12.22.
335	白き脚さらして大根売られけり	大根	冬	13.12.22.
336	大根のもち肌惜しげなく積まれ	大根	冬	13.12.22.
337	大根のもち肌あらは積まれをり	大根	冬	13.12.22.
338	すんなりと伸びし大根の生脚	大根	冬	13.12.22.
339	白き肌あらはに大根売り場かな	大根	冬	13.12.22.
340	白き脚ごろりと大根売り場かな	大根	冬	13.12.22.
341	雪に似し虫も飛びをり雪催	雪催	冬	13.12.23.
342	老鉄幹最後の枯葉落しけり	枯葉	冬	13.12.23.
343	火鉢池ふたとせ守る冬目高	冬	冬	13.12.23.
344	花八つ手雲垂る空に揺るがざり	花八つ手	冬	13.12.23.
345	鮟鱇鍋煮れば煮るほど骨ばかり	鮟鱇鍋	冬	13.12.23.
346	裸木のアダムとイヴのごとく立つ	裸木	冬	13.12.23.
347	裸木の腋窩に光る一番星	裸木	冬	13.12.23.
348	枯木立梢が醸す薄霞	枯木立	冬	13.12.23.
349	隠しごと何一つなし裸の木	裸木	冬	13.12.23.
350	雪仏辻に立ちたる嵐雪忌 （嵐雪の師、芭蕉追悼句：この下にかくねむるらん雪仏）	嵐雪忌	冬	13.12.23.
351	辻立ちのお地蔵きょうは雪仏	雪	冬	13.12.24.
352	荒涼の中でこつこつ冬木の芽	冬木	冬	13.12.24.
353	ファゴットの音柔らかに夕時雨	時雨	冬	13.12.24.
354	背を丸め足早になる時雨かな	時雨	冬	13.12.24.
355	引き際で器量試さる時雨かな	時雨	冬	13.12.24.
356	白菜のずしりと重き引き抜けり	白菜	冬	13.12.24.
357	風呂吹きを一皿置いて燗一本	風呂吹き	冬	13.12.24.
358	才一読む知的遊びや雪催	雪催	冬	13.12.24.
359	寒垢離の読経に女声混じりけり	寒垢離	冬	13.12.24.
360	詠初にさり気なき一句書きとめり	詠初	新年	13.12.24.
361	読初と詠初すます大旦（おおあした）	読初、読初・	新年	13.12.25.
362	シジフォスの苦闘始まる大旦	大旦	新年	13.12.25.
363	鉄幹の枝うっすらと霜の粉	霜	冬	13.12.25.
364	どの枝も清めの塩や霜の朝	霜	冬	13.12.25.
365	グラニュー糖被りしごとく霜の庭	霜	冬	13.12.25.
366	朝採りの菜から散りたる霜の粉	霜	冬	13.12.25.
367	朝採りの菜からこぼれる霜の粉	霜	冬	13.12.25.
368	朝採りの菜から舞ひ散る霜の粉	霜	冬	13.12.25.
369	朝採りの菜の霜の粉を掌に	霜	冬	13.12.25.
370	ファゴットといふ低音の笛クリスマス	クリスマス	冬	13.12.25.
371	ファゴット吹く陽気な楽士クリスマス	クリスマス	冬	13.12.26.
372	朝採りの作業さくさく霜柱	霜柱	冬	13.12.26.
373	山門に阿吽の仁王初句会	初句会	新年	13.12.26.
374	やあと声おうと応ずる初詣	初詣	新年	13.12.26.
375	去年今年三色菫咲き通す	去年今年・三色菫	新年・冬	13.12.26.
376	ジャズバンド時雨に雪の混じりをり	時雨・雪	冬	13.12.26.
377	高らかにソプラノサックス社会鍋	社会鍋	冬	13.12.26.
378	生きるにはいろいろありて一茶の忌	一茶忌	冬	13.12.26.
379	雀など一羽もおらぬ一茶の忌	一茶忌	冬	13.12.26.
380	馬が糞ぼとりと落し一茶の忌	一茶忌	冬	13.12.26.
381	湯気纏ふ厨の灯り空也の忌	空也忌	冬	13.12.27.
382	消へかかる街灯に雨空也の忌	空也忌	冬	13.12.27.
383	度の強い眼鏡をかけて蕪村の忌	蕪村忌	冬	13.12.27.
384	かはかはと風が音立つ蕪村の忌	蕪村忌	冬	13.12.27.
385	金平糖一粒口に漱石忌	漱石忌	冬	13.12.27.
386	師を囲み洒落半畳も漱石忌	漱石忌	冬	13.12.27.
387	小走りに溝（どぶ）を横切る一葉忌	一葉忌	冬	13.12.27.
388	渓深し二つの寺の除夜の鐘	一葉忌	冬	13.12.27.
389	いうなれば吾も連なる翁の忌	翁忌	冬	13.12.27.
390	残り火を掻き立てる炉辺時雨の忌	翁忌	冬	13.12.27.
391	バナメイエビ新語もどきに年暮れる	年の暮	冬	13.12.28.
392	土少しずつ押し上げて霜柱	霜柱	冬	13.12.28.
393	鴬張り歩く音なり霜柱	霜柱	冬	13.12.28.
394	いろいろの第九がありて年暮るる	年の暮	冬	13.12.28.
395	霜の花場所に合せし意匠かな	霜の花	冬	13.12.28.
396	正ちゃん帽するりと落とす木の葉髪	木の葉髪	冬	13.12.28.
397	朝採りの靴にきゅつきゅつと霜柱	霜柱	冬	13.12.28.
398	ちょこまかと鶺鴒走る霜の道	霜	冬	13.12.28.
399	汚染土の置場に咲けよ寒の木瓜	寒木瓜	冬	13.12.28.
400	年越しはバナメイエビの天蕎麦で	年越蕎麦	冬	13.12.28.
401	こまいぬさん「あ」「うん」と桜吹雪けり （昭和１８年、国民学校１年国語教科書より）	桜吹雪	春	13.12.29.
402	一陽来復畑の霜解け泥濘（ぬかるみ）ぬ （冬至：２２日）	一陽来復・霜	冬	13.12.29.
403	柚子入れし袋の浮かぶ冬至風呂	柚子・ 冬至風呂	冬	13.12.29.
404	柚子袋ぽかりぽかりと湯気のなか	柚子	冬	13.12.29.
405	冬至南瓜日々喰らひたる悪夢あり	冬至南瓜	冬	13.12.29.
406	人がみな歩調合はせる十二月	十二月	冬	13.12.29.
407	十二月あわただしさを作る月	十二月	冬	13.12.29.
408	心ならず忙しくする十二月	十二月	冬	13.12.29.
409	指図さることに苛立つ十二月	十二月	冬	13.12.29.
410	気に染まぬ雑事ばかりや十二月	十二月	冬	13.12.29.
411	天皇の猫背で会釈誕生日 （１２月２３日）	天皇誕生日	冬	13.12.30.
412	オルフェーヴル八馬身差の年の暮	年の暮	冬	13.12.30.
413	放射能汚染で決まる人類忌	人類忌		13.12.30.
414	大地震明日来るやも年の暮	年の暮	冬	13.12.30.
415	枯蟷螂まだ死に切れぬ者同士	枯蟷螂	冬	13.12.30.
416	もしかして年越すつもり枯蟷螂	枯蟷螂	冬	13.12.30.
417	生き残る無様もよろし冬の蝶	冬の蝶	冬	13.12.30.
418	凍蝶の根を限りに生きてをり	凍蝶	冬	13.12.30.
419	破翅の凍蝶そっと日に向けり	凍蝶	冬	13.12.30.
420	今生は一度限りや冬の蝶	冬の蝶	冬	13.12.30.
421	凍蝶や神経痛の走りたり	凍蝶	冬	13.12.31.
422	凍蝶や稲妻となる神経痛	凍蝶	冬	13.12.31.
423	最後まで生きよ生き抜け冬の蝶	冬の蝶	冬	13.12.31.
424	枯蔓の葉のかさかさと擦れをり	枯蔓	冬	13.12.31.
425	除夜の厨宴の果ての皿小鉢	除夜	冬	13.12.31.
426	食洗器唸りて除夜の鐘を聞く	除夜	冬	13.12.31.
427	上水の鯉も若水ふゝみけり	若水	新年	13.12.31.
428	庭に立ち心の中で四方拝	四方拝	新年	13.12.31.
429	なんとまあ池の鯉まで初笑ひ	初笑ひ	新年	13.12.31.
430	池の鯉大口開けて初笑ひ	初笑ひ	新年	13.12.31.
431	池の鯉こぞり押し寄せ初笑ひ	初笑ひ	新年	14.1.1.
432	朝採りをふうふうと食ぶ大根炊き	大根炊き	冬	14.1.1.
433	拝殿で慌てて脱ぐや冬帽子	冬帽子	冬	14.1.1.
434	膝の塵はたいて被る冬帽子	冬帽子	冬	14.1.1.
435	来なければ来ないで寂し寒鴉	寒鴉	冬	14.1.1.
436	餌咥へ考へてゐる寒鴉	寒鴉	冬	14.1.1.
437	したたかなしぶとき面の寒鴉	寒鴉	冬	14.1.1.
438	朝の日に羽黒光り寒鴉	寒鴉	冬	14.1.1.
439	ふんとばかり一瞥残し寒鴉	寒鴉	冬	14.1.1.
440	ごみ置き場散らかし尽す寒鴉	寒鴉	冬	14.1.1.
441	賢し気に頭傾げる寒鴉	寒鴉	冬	14.1.2.
442	空き缶を転がし遊ぶ寒鴉	寒鴉	冬	14.1.2.
443	かあとだけ啼いて飛び去る寒鴉	寒鴉	冬	14.1.2.
444	畑仕事じっと見てゐる寒鴉	寒鴉	冬	14.1.2.
445	かあとだけ鳴いて沈思の寒鴉	寒鴉	冬	14.1.2.
446	人間と付かず離れず寒鴉	寒鴉	冬	14.1.2.
447	七つの子じっと聞き入る寒鴉	寒鴉	冬	14.1.2.
448	三四郎池の真鯉も初笑ひ	初笑ひ	新年	14.1.2.
449	破魔矢手に赤門潜る親子かな	破魔矢	新年	14.1.2.
450	枯蟷螂まだ死ねないよさふ思ふ	枯蟷螂	冬	14.1.2.
451	いろいろとあって七癖年暮るる	年の暮	冬	14.1.3.
452	雲垂れる日にも艶やか藪柑子	藪柑子	冬	14.1.3.
453	速足で過ぎ行く二人息白し	息白し	冬	14.1.3.
454	鰭酒の半分減れば継ぎ足して	鰭酒	冬	14.1.3.
455	足袋の裏清し白さの若女将	足袋	冬	14.1.3.
456	寒泉を流れ出る水岩伝ひ	寒泉	冬	14.1.3.
457	寒泉の水流れ行く岩伝ひ	寒泉	冬	14.1.3.
458	寒泉の岩間を抜けて水走る	寒泉	冬	14.1.3.
459	神池に影を映して藪柑子	藪柑子	冬	14.1.3.
460	ひょんの実を吹けどひょんとも鳴り申さず （季語：ひょんの実＝秋）	ひょんの実	秋	14.1.3.
461	ひょんの実を吹けど鳴らずや飾り置く	ひょんの実	秋	14.1.4.
462	ひょんの実やタクラマカンの笛に似て	ひょんの実	秋	14.1.4.
463	柞（いす）の木が苦笑ひするひょんの笛	ひょんの実	秋	14.1.4.
464	ひょんの笛ひゅうと沙漠の風の音	ひょんの実	秋	14.1.4.
465	子の上手く大人は鳴らぬひょんの笛	ひょんの実	秋	14.1.4.
466	除夜の鐘百八つ目で年新た	除夜の鐘	冬	14.1.4.
467	初春や塔克拉瑪干（タクラマカン）のつむじ風	初春	新年	14.1.4.
468	侘助の一輪飾る降誕祭	侘助・降誕祭	冬	14.1.4.
469	侘助の一輪壺に投げ入れぬ	侘助	冬	14.1.4.
470	侘助の挿花一輪京料理	侘助	冬	14.1.4.
471	白足袋のカルメン咥ふ寒椿	寒椿	冬	14.1.5.
472	韃靼の海に身を果つ冬の蝶	冬の蝶	冬	14.1.5.
473	韃靼の海へ旅立つ冬の蝶	冬の蝶	冬	14.1.5.
474	茶の花の日にうつろひて錆びにけり	茶の花	冬	14.1.5.
475	百七人仕上げは和尚除夜の鐘	除夜の鐘	冬	14.1.5.
476	舶来の神仏多し七福神	七福神	新年	14.1.5.
477	これこそがインターナショナル七福神	七福神	新年	14.1.5.
478	初詣半裸の仁王寒からじ	初詣	新年	14.1.5.
479	昔から呉越同舟七福神	七福神	新年	14.1.5.
480	帆も櫂もなき世之介の船向春	春	春	14.1.5.
481	菜畑の春泥靴を咥へけり	春泥	春	14.1.6.
482	春泥に靴奪はれて泣きっ面	春泥	春	14.1.6.
483	すれ違ふわれ人ともに息白し	息白し	冬	14.1.6.
484	蒸気上ぐSLのごと歩く人	息白し	冬	14.1.6.
485	おはようと声掛け合ひて息白し	息白し	冬	14.1.6.
486	夜明け道息白き人近づけり	息白し	冬	14.1.6.
487	白息を纏いつ朝のウォーカー	息白し	冬	14.1.6.
488	吹初を公園でするカルテット	吹初	新年	14.1.6.
489	山門を揺るがすくしゃみ仁王像	くしゃみ	冬	14.1.6.
490	仁王像右と左で大くしゃみ	くしゃみ	冬	14.1.6.
491	仁王の屁臭ふぞなもし煤払	煤払	冬	14.1.7.
492	鳥招く準備着々冬木の芽	冬木の芽	冬	14.1.7.
493	鳥を呼ぶ支度静かに冬木の芽	冬木の芽	冬	14.1.7.
494	ビー玉で遊びし日々や冬銀河	冬銀河	冬	14.1.7.
495	山門を揺るがし仁王大くしゃみ	くしゃみ	冬	14.1.7.
496	仁王様ときにはくしゃみときに屁も	くしゃみ	冬	14.1.7.
497	仁王様力み過ぎては血圧に			14.1.7.
498	仁王様ときには相撲でもいかが	相撲	秋	14.1.7.
499	寒の屁はにおふかと問ふ仁王かな	寒	冬	14.1.7.
500	煤逃げはせずにそのまま煤残し	煤逃	冬	14.1.7.
501	煤逃げと言はれぬように庭掃除	煤逃	冬	14.1.8.
502	煤逃げの昼の飲み会悩ましや	煤逃	冬	14.1.8.
503	倍返しありそ煤逃げ諦める	煤逃	冬	14.1.8.
504	大綿の湧き出て日没進みたり	大綿	冬	14.1.8.
505	静かなる永遠の眠りの涅槃像 （春耕３月号課題詠　涅槃像、寝釈迦）	涅槃像	春	14.1.8.
506	おみ足のふっくらとして寝釈迦かな	寝釈迦	春	14.1.8.
507	ゆったりと横臥の釈迦の黒光り	寝釈迦	春	14.1.8.
508	そよ風のそっと触れゆく涅槃像	涅槃像	春	14.1.8.
509	ふっくらと心安らぐ寝釈迦かな	寝釈迦	春	14.1.8.
510	入寂の安らぎ伝ふ涅槃仏	涅槃像	春	14.1.8.
511	巨大なる寝釈迦を巡るタイの寺	寝釈迦	春	14.1.9.
512	ねんねネと幼児指さす涅槃像	涅槃像	春	14.1.9.
513	初春や幟に太鼓大相撲	初春	新年	14.1.9.
514	初春や幟に太鼓国技館	初春	新年	14.1.9.
515	初春や大川端の触れ太鼓	初春	新年	14.1.9.
516	初夢は両手に余る白い星	初夢	新年	14.1.9.
517	初場所や客呼ぶ太鼓てけてけと	初場所	新年	14.1.9.
518	初春や今年会うひと会はぬ人	初春	新年	14.1.9.
519	数へ日やけふが今年のどん詰まり	数え日	冬	14.1.9.
520	大年や馬のひづめが聞へ初む	大年	冬	14.1.9.
521	大年の尖閣の海荒れ模様	大年	冬	14.1.9.
522	大年も蛇の尾先に至りけり	大年	冬	14.1.9.
523	読みかけも年越して読む楽しみに	年越し	冬	14.1.9.
524	年越しのそば前酒は吾担当	年越し	冬	14.1.9.
525	どの家もドアーに下がる松飾	松飾	新年	14.1.9.
526	出さぬのに来し年賀状選り分ける	年賀状	年賀状	14.1.9.
527	雨戸開け初日をどっと浴びにけり	初日	新年	14.1.9.
528	読初は俳詩春風馬堤曲	読初	新年	14.1.9.
529	丸餅に好みの具載す雑煮かな	雑煮	新年	14.1.9.
530	数の子を噛むこりこりも味のうち	数の子	新年	14.1.9.
531	初暦まだ丸まりし癖残る	初暦	新年	14.1.10.
532	パソコンに句を添へて打つ初日記	初日記	新年	14.1.10.
533	弾初はグリッサンドで入りたり	弾初	新年	14.1.10.
534	氏神に路地裏伝い初詣	初詣	新年	14.1.10.
535	淑として年始回りか初鴉	初鴉	新年	14.1.10.
536	蝋梅や季語移る前咲き初めり	蝋梅	冬	14.1.10.
537	蝋梅は枯葉気にせず燦然と	蝋梅	冬	14.1.10.
538	蒼天に素心蝋梅画然たり	蝋梅	冬	14.1.10.
539	蝋梅や人振り向かす香のほのか	蝋梅	冬	14.1.10.
540	蝋梅に負けじと早き梅一輪	蝋梅	冬	14.1.10.
541	揚る凧あがらぬ凧もある広場	凧揚げ	新年	14.1.11.
542	日を浴びて枝に居並ぶ初雀	初雀	新年	14.1.11.
543	枝に肩寄せて日を浴ぶ初雀	初雀	新年	14.1.11.
544	蘿蔔（すずしろ）を引き抜きに行く朝の畑	蘿蔔	新年	14.1.11.
545	けふだけは蘿蔔と呼ぶ大根畑	蘿蔔	新年	14.1.11.
546	初出合い鴉も御慶の数に入れ	御慶	新年	14.1.11.
547	無精ひげ剃り落したる三日かな	三日	新年	14.1.11.
548	横一列小枝に並ぶ寒すずめ	寒雀	冬	14.1.11.
549	横一列羽毛だるまの寒雀	寒雀	冬	14.1.11.
550	日差し浴びふくら雀の仲間入り	ふくら雀	冬	14.1.11.
551	風呂吹の熱きにちょっと舌を焼く	風呂吹	冬	14.1.12.
552	喰積も三日で終るほどのよさ	喰積	新年	14.1.12.
553	年賀状追加追加の三が日	年賀状	新年	14.1.12.
554	年賀状なにやら悪女の深情け	年賀状	新年	14.1.12.
555	早咲きに負けん気見せる返り花	返り花	冬	14.1.12.
556	わが庭は十両でよし藪柑子	藪柑子	冬	14.1.12.
557	母も子も胼皸（ひびあかぎれ）の手の時代	胼・皸	冬	14.1.12.
558	切り刻みかりこり食はる海鼠（なまこ）とは	海鼠	冬	14.1.12.
559	刻まれて酢で締めらるる海鼠とは	海鼠	冬	14.1.12.
560	海鼠といふ綽名の教師ゐたりけり	海鼠	冬	14.1.12.
561	切られても撥ねる気もなき海鼠かな	海鼠	冬	14.1.13.
562	抵抗は無駄と悟りし海鼠かな	海鼠	冬	14.1.13.
563	教師には海鼠に虎魚（おこぜ）海鞘（ほや）もゐた	海鼠	冬	14.1.13.
564	初春や赤門ちょいと潜りたり	初春	新年	14.1.13.
565	藁ぼっちいなせに被る寒牡丹 （１４．１．４．春耕吟行の給岩崎邸で）	寒牡丹	冬	14.1.13.
566	三四郎池に影置く寒椿 （１４．１．４．春耕吟行の三四郎池で）	寒椿	冬	14.1.13.
567	はいポーズ頸を突き出す寒鴉 （１４．１．４．同安田講堂前で）	寒鴉	冬	14.1.13.
568	飯桐の赤い実漁る寒鴉 （１４．１．４．同三四郎池で）	寒鴉	冬	14.1.13.
569	初吟行お玉に会へそ無縁坂 （１４．１．４．同九岩崎邸沿いの無縁阪で）	初吟	新年	14.1.13.
570	寒鯉のゆったりとゆく池の底	寒鯉	冬	14.1.13.
571	薄氷をくぐりて鯉の輪が解れ	薄氷	冬	14.1.14.
572	七草がゆ口に合はねどありがたく	七草粥	新年	14.1.14.
573	初句会宴の末の締め一本	初句会	新年	14.1.14.
574	冬薔薇に訪ふ虫のあらまほし	冬薔薇	冬	14.1.14.
575	歯眼魔羅の後は命か老ひの春	春	春	14.1.14.
576	咲き継ぎて咲き継ぎていま冬薔薇	冬薔薇	冬	14.1.14.
577	二三輪咲いて人呼ぶ冬の梅	冬梅	冬	14.1.14.
578	三四郎池を巡れば笹子鳴く	笹子	冬	14.1.14.
579	マスクしてマスクの人に道を聞く	マスク	冬	14.1.14.
580	マスクして銀行に行きマスク取る	マスク	冬	14.1.14.
581	くしゃみして飛沫振り撒く風邪男	くしゃみ	冬	14.1.15.
582	銀杏枯れビュッフェの描きし絵となれり	枯銀杏	冬	14.1.15.
583	銀杏枯れビュッフェ・モードの絵を歩く	枯銀杏	冬	14.1.15.
584	鞭百本垂れて揺るるや枯柳	枯柳	冬	14.1.15.
585	鞭百本縺れず揺るる枯柳	枯柳	冬	14.1.15.
586	火焔吹き蝦蛄葉サボテン寒の花	寒	冬	14.1.15.
587	火を吹きし蝦蛄葉サボテン寒の入り	寒の入	冬	14.1.15.
588	懐石の皿に楪（ゆずりは）敷かれをり	楪	新年	14.1.15.
589	楪の柄の紅に緑映え	楪	新年	14.1.15.
590	楪の地に落ちし葉のなほ緑	楪	新年	14.1.15.
591	譲り合ふ楪の葉の緑冴へ	楪	新年	14.1.16.
592	楪の緑の映へる柄の赤さ	楪	新年	14.1.16.
593	楪てふ柔らかき名の照葉揺る	楪	新年	14.1.16.
594	楪の紅滲みたる柄のやさし	楪	新年	14.1.16.
595	ゆずり葉に載せて出さるる加賀の菓子	楪	新年	14.1.16.
596	楪に触れてみたりし柔らかし	楪	新年	14.1.16.
597	楪の譲り合ふ葉の柔らかき	楪	新年	14.1.16.
598	縛られて白菜固く葉を巻けり	白菜	冬	14.1.16.
599	吹越の雪片光る野良に立つ （吹越＝風花）	吹越（ふっこし）	冬	14.1.16.
600	吹越の舞いひ来る方は双耳峰	吹越	冬	14.1.16.
601	吹越やゴム手袋で鍬洗ふ	吹越	冬	14.1.17.
602	風花やゴム手袋で鍬洗ふ	吹越	冬	14.1.17.
603	一花ゆえ足を止めさす梅林	梅林	春	14.1.17.
604	一輪の白梅咲きて人の声	梅	春	14.1.17.
605	一輪に早い遅いと梅の下	梅	春	14.1.17.
606	梅一輪人順番に香を嗅げり	梅	春	14.1.17.
607	梅一輪蜜吸ふ虫の早やも来ぬ	梅	春	14.1.17.
608	古城の春てふ早梅に日の眩し	梅	春	14.1.17.
609	鴛鴦の脇に連れなき鷺一羽	鴛鴦	冬	14.1.17.
610	河豚刺しの大花びらを崩し食ふ	河豚	冬	14.1.17.
611	墓地の中かさりと落葉動きけり	落葉	秋	14.1.18.
612	木漏れ日に節分草の花二輪	節分草	春	14.1.18.
613	春の戸の開くを告げて節分草	春	春	14.1.18.
614	春の戸の開く音する節分草	春	春	14.1.18.
615	春の戸を叩く音する節分草	春	春	14.1.18.
616	笹鳴きや木漏れ日に咲く節分草	笹鳴	冬	14.1.18.
617	冬晴れや墓地に面せし家並ぶ	冬晴	冬	14.1.18.
618	成人の晴着ちょこちょこ歩きけり	成人の日	新年	14.1.18.
619	成人の晴着姿の付け睫毛	成人の日	新年	14.1.18.
620	成人の晴着姿のVサイン	成人の日	新年	14.1.18.
621	成人の日非婚宣言する乙女	成人の日	新年	14.1.19.
622	式の間もスマホに見入る新成人	成人の日	新年	14.1.19.
623	ビニールの袋剥がして餅を焼く	餅	冬	14.1.19.
624	古池ややはり古池けふは寒	寒	冬	14.1.19.
625	古池や落葉一枚浮ぶのみ	落葉	秋	14.1.19.
626	古池や主は俺だと牛蛙	蛙	春	14.1.19.
627	古池に蝋梅の影香のほのか	蝋梅	冬	14.1.19.
628	古池に水音ありて寒の入り	寒の入	冬	14.1.19.
629	三四郎池の澱みに寒の鯉	寒鯉	冬	14.1.19.
630	古池を過る影あり寒鴉	寒鴉	冬	14.1.19.
631	冬の鷺天下の孤独伝へけり	冬	冬	14.1.20.
632	孤独とは川瀬に立てる冬の鷺	冬	冬	14.1.20.
633	寒波来る孫に歳時記贈りけり	寒波	冬	14.1.20.
634	雪女郎火と燃ゆる恋あらめやも	雪女郎	冬	14.1.20.
635	雪女抱いて解かすか凍へるか	雪女郎	冬	14.1.20.
636	散歩犬嗅ぎし氷柱に尿をかけ	氷柱	冬	14.1.20.
637	青空に紛れきれずに寒の月	寒月	冬	14.1.20.
638	持ち帰るたこ焼温き寒暮かな	寒暮	冬	14.1.20.
639	一羽飛べば皆飛び立ちぬ寒雀	寒雀	冬	14.1.20.
640	初観音土産はいつも人形焼	初観音	新年	14.1.20.
641	髭ひょいと分ければ光る竜の玉	竜の玉	冬	14.1.20.
642	初大師とんとこ飴の音楽し	初大師	新年	14.1.21.
643	襟巻に頬を埋めて初不動	初不動	新年	14.1.21.
644	早梅や数輪ほどの慌てもの	早梅	冬	14.1.21.
645	寒梅や古城の春と言ふ名なり	寒梅	冬	14.1.21.
646	染み一つ無き白花や寒椿	寒椿	冬	14.1.21.
647	蝦蛄葉さぼてん火焔となりて咲き揃ふ	蝦蛄葉さぼてん	冬	14.1.21.
648	水仙の群れ咲く岬風光る	水仙	冬	14.1.21.
649	水仙の群れ咲く岬風強し	水仙	冬	14.1.21.
650	木漏れ日が教へてくれし冬苺	冬苺	冬	14.1.21.
651	切山椒居住まひ正し茶を所望	切山椒	新年	14.1.22.
652	切山椒餅は飽きたと孫の声	切山椒	新年	14.1.22.
653	自分はと声高に言ふ新成人	切山椒	新年	14.1.22.
654	切山椒江戸の味覚で言祝ぎぬ	切山椒	新年	14.1.22.
655	フルートの管を温めて寒昴	寒昴	冬	14.1.22.
656	凍星にフルートの音突き刺さる	凍星	冬	14.1.22.
657	寒林にサックスの音直進す	寒林	冬	14.1.22.
658	寒林にサックスの音ばりばりと	寒林	冬	14.1.22.
659	ハイヒールかつかつ響く冬銀河	冬銀河	冬	14.1.22.
660	アネモネの一輪ずつに茎太し	アネモネ	春	14.1.22.
661	化粧濃き美女とも想ふはないちげ （＝アネモネ）	花一華	春	14.1.23.
662	吹越の雪片光る野良仕事 越＝風花）	吹越	冬	14.1.23.
663	寒鮒の釣上げたるはコンドーム	寒鮒	冬	14.1.23.
664	底冷や脳味噌までもしゃりしゃりと	底冷	冬	14.1.23.
665	しゃりと割れ池の氷は子らの手に	氷	冬	14.1.23.
666	注連縄の新し小祠女正月	注連縄	新年	14.1.23.
667	係船の鎖を埋めて冬鴎	冬鷗	冬	14.1.23.
668	係船の鎖に憩ふ冬鴎	冬鷗	冬	14.1.23.
669	係船の鎖余さず冬鴎	冬鷗	冬	14.1.23.
670	富士望む茶店の前の冬菫	冬菫	冬	14.1.23.
671	石蕗の花すべて散り果て坊主刈り	石蕗の花	冬	14.1.24.
672	冬萌の草むらを嗅ぐ散歩犬	冬萌	冬	14.1.24.
673	大寒や作文指導うなずく眼	大寒	冬	14.1.24.
674	葱の畝土寄せをして大根引く	葱・大根	冬	14.1.24.
675	霜柱解けぬ間にする菜摘みかな	霜柱・冬菜	冬	14.1.24.
676	冬菜摘み冬菜を抜きし朝の畑	冬菜	冬	14.1.24.
677	若者の旨しと言はぬ蕪蒸し	蕪蒸し	冬	14.1.24.
678	冬草の時季弁へぬ青さ映ゆ	冬草	冬	14.1.24.
679	切岸の石蕗の花果て潮の音	石蕗の花	冬	14.1.24.
680	枯葎ちらと緑の葉も見へて	枯葎	冬	14.1.24.
681	冬耕の一鍬ごとに腰ぎくと	冬耕	冬	14.1.25.
682	暮なずみ寒月を呼ぶ星一つ	寒月	冬	14.1.25.
683	はっと足止まる真紅や寒の木瓜	寒木瓜	冬	14.1.25.
684	発句といふ迷路の深し久女の忌	久女忌	冬	14.1.25.
685	発句てふバッカス恋す久女の忌	久女忌	冬	14.1.25.
686	声残し舞ひ上りたる冬雲雀	冬雲雀	冬	14.1.25.
687	大空へ真っ逆さまに冬雲雀	冬雲雀	冬	14.1.25.
688	一句だに取られず句会寒の入り	寒の入り	冬	14.1.25.
689	風花のきらりと舞ふや野良仕事	風花	冬	14.1.25.
690	路地の隅固まりて咲く冬菫	冬菫	冬	14.1.25.
691	門前の小僧のゐない春隣	春隣	冬	14.1.26.
692	春隣り見ても分らぬ微分積分	春隣	冬	14.1.26.
693	底冷の盆地の底にゐたりけり	底冷	冬	14.1.26.
694	鷽替えや嘘とほんとを入替へり	鷽替	冬	14.1.26.
695	児が走り犬も走りて寒の入り	寒の入り	冬	14.1.26.
696	日脚伸ぶ孫の大足親凌ぐ	日脚伸ぶ	冬	14.1.26.
697	懸案を一つ片づけ日向ぼこ	日向ぼこ	冬	14.1.26.
698	皇居前儀装馬車行く小正月	小正月	冬	14.1.26.
699	雀かと見しがお茶目な三十三才（みそさざい）	鷦鷯・三十三才	冬	14.1.26.
700	石頭揃へし句会寒の入り	寒の入り	冬	14.1.26.
701	石一つぴしりと打ちて寒に入る	寒の入り	冬	14.1.27.
702	「自分は」は軍隊ことば底冷へる	底冷	冬	14.1.27.
703	鶴舞ひて苦界に浮かぶ哥川の句	鶴	冬	14.1.27.
704	鶴飛翔苦界に咲ける哥川佳句	鶴	冬	14.1.27.
705	遊女哥川苦界抜け出す俳の春	春	春	14.1.27.
706	十年の畑去る日や霜の道	霜	冬	14.1.27.
707	ぶち切れる前に立ち去る冬菜畑	冬菜畑	冬	14.1.27.
708	宗教の底冷え深き狂気知る	底冷	冬	14.1.27.
709	宗教の底冷え深き狂気かな	底冷	冬	14.1.27.
710	蒼天に残月浮ぶ草城忌 （草城忌１．２９．）	草城忌	冬	14.1.27.
711	本読めと言ふ声聞こゆ寒明忌 （＝碧梧桐忌２．１．）	寒明忌	冬	14.1.28.
712	白菜の重きたしかめ積み上げり	白菜	冬	14.1.28.
713	早よ抜けと肩むき出して大根畑	大根畑	冬	14.1.28.
714	公園に恵方巻食ぶ母と子と	恵方巻	春	14.1.28.
715	日を呼んで見る目眩しき福寿草	福寿草	冬	14.1.28.
716	漢方薬ごくりと飲みし寒の水	寒の水	冬	14.1.28.
717	裂帛の声響かせて寒稽古	寒稽古	冬	14.1.28.
718	裂帛の文字を覚へる寒稽古	寒稽古	冬	14.1.28.
719	寒鯉の身揺るぎもせず捌かれり	寒鯉	冬	14.1.28.
720	寒鰤をステーキで食ぶ夕餉かな	寒鰤	冬	14.1.28.
721	帰り花差障りなく咲きにけり	帰り花	冬	14.1.29.
722	帰り花不都合もなく咲いてをり	帰り花	冬	14.1.29.
723	寒月のなほ蒼天に居残れり	寒月	冬	14.1.29.
724	寒満月猫背は止せと道照らす	寒満月	冬	14.1.29.
725	寒満月照らす猫背の人の影	寒満月	冬	14.1.29.
726	頸すくめ猫背で歩む寒満月	寒満月	冬	14.1.29.
727	沢蟹の寒暮も夏のごとく這ひ	寒暮	冬	14.1.29.
728	寒灯はじじじと虫の鳴き音まね	寒灯	冬	14.1.29.
729	蜆汁寒の朝餉を温めけり	蜆汁	冬	14.1.29.
730	ちょんと降りまた先で待つ寒鴉	寒鴉	冬	14.1.29.
731	寒鴉先に降りては吾を待つ	寒鴉	冬	14.1.30.
732	寒鴉先に降りては吾待てり	寒鴉	冬	14.1.30.
733	散れば咲き花を絶やさず冬の薔薇	冬薔薇	冬	14.1.30.
734	鉢植えのミニ薔薇冬を咲き継げり	冬	冬	14.1.30.
735	早咲きの花かも知れず返り花	返り花	冬	14.1.30.
736	蒼天に輪郭残す寒満月	寒満月	冬	14.1.30.
737	蒼天に輪郭細き冬の月	冬の月	冬	14.1.30.
738	寒月や尼僧姿の元遊女	寒月	冬	14.1.30.
739	縺れたる葎にちらと寒苺	寒苺	冬	14.1.30.
740	凍星や百万本の薔薇歌ふ	凍星	冬	14.1.30.
741	水仙花野菜と並べ売る農家	水仙花	冬	14.1.31.
742	ホーム訪ふ老女の持ちし水仙花	水仙花	冬	14.1.31.
743	水仙花持ちて老女がホーム訪ふ	水仙花	冬	14.1.31.
744	水仙花持ちてホームを訪ふ老女	水仙花	冬	14.1.31.
745	わが狭庭藪の柑子笛麻呂亭	藪柑子	冬	14.1.31.
746	わが狭庭藪の柑子笛麻呂とや	藪柑子	冬	14.1.31.
747	わが狭庭藪柑子笛麻呂と言ふ	藪柑子	冬	14.1.31.
748	寒紅を注されて（刷かれて）幼おちょぼ口	寒紅	冬	14.1.31.
749	寒紅を百面相で注す(刷く）をみな	寒紅	冬	14.1.31.
750	狭庭にも日が差し光る藪柑子	藪柑子	冬	14.1.31.
751	日差し得て赤い実浮ぶ藪柑子	藪柑子	冬	14.2.1.
752	日が差せば赤い実嬉々と藪柑子	藪柑子	冬	14.2.1.
753	わが狭庭掌中にして藪柑子	藪柑子	冬	14.2.1.
754	雀呼ぶ米ばらまひて藪柑子	藪柑子	冬	14.2.1.
755	わが庭は藪ら柑子の藪柑子	藪柑子	冬	14.2.1.
756	厳寒と書けば加へる文字はなし	厳寒	冬	14.2.1.
757	厳寒の二文字で止む墨書かな	厳寒	冬	14.2.1.
758	口結び厳寒と書く児らの筆	厳寒	冬	14.2.1.
759	厳寒と書いて正座を崩しけり	厳寒	冬	14.2.1.
760	厳寒と筆太に書く老住持	厳寒	冬	14.2.1.
761	厳寒と筆太の文字動かざり	厳寒	冬	14.2.2.
762	木漏れ日の教へてくれし藪柑子	藪柑子	冬	14.2.2.
763	草むらと思へば赤き藪柑子	藪柑子	冬	14.2.2.
764	足元を鳥の飛び立つ藪柑子	藪柑子	冬	14.2.2.
765	寒紅の猪口に指挿し口に注す	寒紅	冬	14.2.2.
766	寒紅の猪口に指染め口に刷く	寒紅	冬	14.2.2.
767	寒紅の猪口に指染め唇に	寒紅	冬	14.2.2.
768	風花のきらりと舞ふや鍬一打	風花	冬	14.2.2.
769	皇居前儀装馬車行く春隣	春隣	冬	14.2.2.
770	鍬を打つ一打一打に霜柱	霜柱	冬	14.2.3.
771	鍬打ちの一打が崩す霜柱	霜柱	冬	14.2.3.
772	山道を駆け下るとき藪柑子	藪柑子	冬	14.2.3.
773	風邪引いて風邪ひかぬ魚羨まし	風邪	冬	14.2.3.
774	厳寒のブルーシートや寝静まる	厳寒	冬	14.2.3.
775	厳寒と止め正座を崩しけり	厳寒	冬	14.2.3.
776	厳寒と楷書正座を崩しけり	厳寒	冬	14.2.3.
777	厳寒と墨書正座を崩しけり	厳寒	冬	14.2.3.
778	厳寒と一筆正座を崩しけり	厳寒	冬	14.2.3.
779	やはり風邪一癖ありて立ち去らず	風邪	冬	14.2.3.
780	膝はさむ子規の文机春隣	春隣	冬	14.2.3.
781	川上る鮠追ふごとく春の風	春風	春	14.2.4.
782	川上る鮠追ひかけて春の風	春風	春	14.2.4.
783	川上る魚影追ひかけ春の風	春風	春	14.2.4.
784	川上る魚影を追ひて春の風	春風	春	14.2.4.
785	大鈴も春の響きとなりにけり	春	春	14.2.4.
786	鳩時計春が来たよと歌ふかな	春	春	14.2.4.
787	鳩時計春が来たよと歌ひをり	春	春	14.2.4.
788	鳩時計春の響きに変りけり	春	春	14.2.4.
789	浮寝鳥日の差す方へ夢追へり	浮寝鳥	冬	14.2.4.
790	古池や頸折り曲げて浮寝鳥	浮寝鳥	冬	14.2.4.
791	木漏れ日の音なき池面浮寝鳥	浮寝鳥	冬	14.2.5.
792	どれもみな頸折り曲げて浮寝鳥	浮寝鳥	冬	14.2.5.
793	羽音して一羽加はる浮寝鳥	浮寝鳥	冬	14.2.5.
794	中吉をとお籤引けば立春大吉	立春大吉	春	14.2.5.
795	中吉を願ひしみ籤立春大吉	立春大吉	春	14.2.5.
796	風花のきらりと舞ふや鍬起し	風花	冬	14.2.5.
797	雪女郎にハグされたしも凍てるかな	雪女郎	冬	14.2.5.
798	寒紅を小指に染めて雪女郎	雪女郎	冬	14.2.5.
799	寒紅を注（さ）そかと誘ふ雪女郎	雪女郎	冬	14.2.5.
800	寒紅を注そかと小指雪女郎	雪女郎	冬	14.2.5.
801	寒紅を注そと指出す雪女郎	雪女郎	冬	14.2.6.
802	中吉を願いて引けば立春大吉	立春大吉	冬	14.2.6.
803	冬の鷺ふと回れ右瀬を覗く	立春大吉	冬	14.2.6.
804	振り向きざま嘴に小魚冬の鷺	冬鷺	冬	14.2.6.
805	必勝の嘴技みせて冬の鷺	冬鷺	冬	14.2.6.
806	日脚伸ぶ瀬を渉猟の鷺の影	日脚伸ぶ	冬	14.2.6.
807	十両が千両越へて実万両 （狭庭の藪柑子が実を付け万両と判明）	十両・千両・万両	冬	14.2.6.
808	日向ぼこ浮き寝の鳥と競ふかな	日向ぼこ・浮寝鳥	冬	14.2.6.
809	硝子戸越し日向ぼっこの夢路かな	日向ぼこ	冬	14.2.6.
810	苛立たし眼鏡曇らすマスクかな	マスク	冬	14.2.6.
811	尾を咥ふ狐襟巻した媼	襟巻	冬	14.2.7.
812	見回せば手袋脱いでスマホ繰る	手袋	冬	14.2.7.
813	膝滑る本に目覚める日向ぼこ	日向ぼこ	冬	14.2.7.
814	耳袋つけてスキップ通園児	耳袋	冬	14.2.7.
815	寒紅をさしたる口を開けて閉じ	寒紅	冬	14.2.7.
816	凍蝶の何処でどうして生き延びし	凍蝶	冬	14.2.7.
817	冬木立梢はどれも天を指す	冬木立	冬	14.2.7.
818	根に深く寒肥入れて待つ実り	寒肥	冬	14.2.7.
819	軒下の乾鮭揺らす空っ風	乾鮭	冬	14.2.7.
820	夕日浴び大根すだれ黄金色	大根	冬	14.2.7.
821	厳寒のブルーシートや咳絶へず	厳寒	冬	14.2.8.
822	厳寒のブルーシートや咳やまず	厳寒	冬	14.2.8.
823	寒紅をさして俳詠む哥川かな	寒紅	冬	14.2.8.
824	寒紅の猪口に指染む日暮れかな	寒紅	冬	14.2.8.
825	寒紅の猪口を残して主は留守	寒紅	冬	14.2.8.
826	寒紅の猪口を残してお座敷へ	寒紅	冬	14.2.8.
827	車窓越し光る外濠春隣	春隣	冬	14.2.8.
828	バス停にバス近づけり春隣	春隣	冬	14.2.8.
829	春連れてバスゆっくりと近づきぬ	春	春	14.2.8.
830	夕刻に始まる句会日脚伸ぶ	日脚伸	冬	14.2.8.
831	三丁目の夕日懐かし寒日和	寒日和	冬	14.2.9.
832	川の瀬に釣り人の影冬日向	冬日向	冬	14.2.9.
833	悪筆も個性の一つ寒日和	寒日和	冬	14.2.9.
834	厳寒の酷薄に耐ふホームレス	厳寒	冬	14.2.9.
835	家仕切る鬼の指図で福は内	福は内	冬	14.2.9.
836	出て行けと鬼には言へず福は内	福は内	冬	14.2.9.
837	雨戸開け呟くよふに鬼は外	鬼は外	冬	14.2.9.
838	庭過る猫を見立ての鬼やらひ	鬼やらひ	冬	14.2.9.
839	園庭でばきゅーんばきゅーんと豆撒く児	豆撒き	冬	14.2.9.
840	咲き出して暦務める節分草	節分草	春	14.2.9.
841	今年また汐見の坂に蕗の薹	蕗の薹	春	14.2.10.
842	菜の花の緑鮮やか酢味噌和へ	菜の花	春	14.2.10.
843	大吉を引いて戸惑ふ厄詣	厄詣	冬	14.2.10.
844	口うるさき鬼がゐてこそ福は内	福は内	冬	14.2.10.
845	寒灯のじじじと小さき泣き音漏る	寒灯	冬	14.2.10.
846	寒灯のじじじと小さき泣き音かな	寒灯	冬	14.2.10.
847	湯たんぽを抱きかかえても咎めなし	湯たんぽ	冬	14.2.10.
848	湯たんぽを抱へて夢路たどりけり	湯たんぽ	冬	14.2.10.
849	湯たんぽの抱へ心地で夢もまた	湯たんぽ	冬	14.2.10.
850	風呂吹を箸で截ち取りはふはふと	風呂吹き	冬	14.2.10.
851	湯豆腐の仕上げに食みし出汁昆布	湯豆腐	冬	14.2.11.
852	煮凝のつんとすまして皿の央（なか）	煮凝	冬	14.2.11.
853	寒垢離を終へし行者の肌の湯気	寒垢離	冬	14.2.11.
854	寒詣こころに深く神頼み	寒詣	冬	14.2.11.
855	水洟やティッシュ二箱疲れたり	水洟	冬	14.2.11.
856	咳くしゃみ水洟と来て逆らへず	咳・クシャミ・水洟	冬	14.2.11.
857	係船の鉄鎖に並ぶ冬鷗	冬鷗	冬	14.2.11.
858	同じ向き鉄鎖に並ぶ冬鷗	冬鷗	冬	14.2.11.
859	冬雲雀天駆けらずに畦走る	冬雲雀	冬	14.2.11.
860	冬雲雀囀り忘れ田を走る	冬雲雀	冬	14.2.11.
861	冬の鷺日がな餌取り飽きもせず	冬の鷺	冬	14.2.12.
862	里川の魚影走らす雨水かな	雨水	春	14.2.12.
863	公魚（わかさぎ）の氷上に跳ね凍りけり	公魚	春	14.2.12.
864	氷上にわかさぎ跳ねて凍りけり	わかさぎ	春	14.2.12.
865	三椏の花もこもこと群れ咲けり	三椏	春	14.2.12.
866	三椏の花見上げ猫大欠伸	三椏	春	14.2.12.
867	ふぐりおとし湯船に揺れし同胞（はらから）からよ	ふぐりおとし	冬	14.2.12.
868	濁り酒やめて濁酒（どぶろく）買ふ春日	春日	春	14.2.12.
869	亀鳴くと詠めば孫来て呆けたかと	亀鳴く	春	14.2.12.
870	突き出しはたった五匹の蝗（いなご）かな	蝗	秋	14.2.12.
871	十分で句集読み終へ日永し	日永	春	14.2.13.
872	いじめあるよ頬霜焼の男の子	霜焼	冬	14.2.13.
873	あやかりの晴子ちゃん増ゆ春隣	春隣	冬	14.2.13.
874	いじめっ子いじめられっ子卒業式	卒業式	春	14.2.13.
875	鏡餅ビニールの中不滅なり	鏡餅	冬	14.2.13.
876	ダルビッシュまーちゃん投げるメジャーの春	春	春	14.2.13.
877	ろうそくもそばかすもゐぬ春うらら	春うらら	春	14.2.13.
878	腰掛りゃぐしゃりと眼鏡春朧	春朧	春	14.2.13.
879	春寒しやる気なさげの赤提灯	春寒	春	14.2.13.
880	春寒の薄暮に浮かぶ赤提灯	春寒	春	14.2.13.
881	春風や大街道てふアーケード	春風	春	14.2.14.
882	人食ってみたいと檻の虎春愁	春愁	春	14.2.14.
883	法螺貝の鳴りて追儺の豆が降る （１４．２．３．高幡不動で）	追儺	冬	14.2.14.
884	飛び来る福豆口にはしと受け	福豆	冬	14.2.14.
885	餌ねだる鯉に福豆お裾分け	福豆	冬	14.2.14.
886	餌ねだる鯉に福豆分けにけり	福豆	冬	14.2.14.
887	福は内飛び来る豆に頬打たれ	福豆	冬	14.2.14.
888	拾ふより豆踏みしだく追儺かな	追儺	冬	14.2.14.
889	大屋根の鳩豆撒きの終り待つ	豆撒	冬	14.2.14.
890	目刺売る露店も並ぶ追儺寺	追儺	冬	14.2.14.
891	お不動の福豆五粒お土産に	福豆	冬	14.2.14.
892	緋衣の貫主の御練り追儺式	追儺式	冬	14.2.14.
893	鬼のゐぬお不動さまの鬼やらい	鬼やらい	冬	14.2.14.
894	吹越や三峰神社の神の御意	吹越	冬	14.2.14.
895	「立春」の暦見つめる余寒かな	余寒	春	14.2.14.
896	花などに関心なきが花の宴	花	春	14.2.14.
897	桜とは知られず波波迦房ゆらす	桜	春	14.2.14.
898	散り敷きて淡海に長き花筏	花筏	春	14.2.14.
899	花魁の解きたる帯や花筏	花筏	春	14.2.14.
900	御衣黄や緑衣ひるがせ公達来	御衣黄	春	14.2.14.
901	御衣黄や緑衣ひるがす蹴鞠かな	御衣黄	春	14.2.15.
902	飲み歌ひ呵呵大笑の花の宴	花	春	14.2.15.
903	春立つ日雪こんこんと降り来る	立春・雪	春・冬	14.2.15.
904	春立つ日白皚々の雪景色	立春	春	14.2.15.
905	大豆腐ちくりちくりと針供養	針供養	春	14.2.15.
906	戸袋の雨戸ことりと余寒かな	余寒	春	14.2.15.
907	まんさくや長き花びら解き放つ	まんさく	春	14.2.15.
908	道の端に一番咲きのいぬふぐり	いぬふぐり	春	14.2.15.
909	今年また同じところに蕗の薹	蕗の薹	春	14.2.15.
910	今年また汐見坂上蕗の薹	蕗の薹	春	14.2.15.
911	かたくりや斜面の似合ふ花なりき	片栗	春	14.2.16.
912	ほうれん草緑と紅で膳飾る	ほうれん草	春	14.2.16.
913	雪割草咲いてゐる場所丸秘とし	雪割草	春	14.2.16.
914	両の手を腰に当て踏む麦の畝	麦踏	春	14.2.16.
915	方向を違へ夫婦が麦を踏む	麦踏	春	14.2.16.
916	青空に花穂突き出してねこ柳	猫柳	春	14.2.16.
917	蕎麦前の蕗味噌が出てまず一献	蕗味噌	春	14.2.16.
918	鴬の仕上がり聞かすほうほけきょ	鴬	春	14.2.16.
919	ピッコロを吹くがごとくに四十雀	四十雀（しじゅうから）	春	14.2.16.
920	恋はかく乱るるものと猫さかる	猫さかる・恋	春	14.2.16.
921	小坊主の剃り跡青し犬ふぐり	犬ふぐり	春	14.2.17.
922	青年僧剃り跡青く犬ふぐり	犬ふぐり	春	14.2.17.
923	散歩道時違へずに犬ふぐり	犬ふぐり	春	14.2.17.
924	散歩犬尿かけるなよ犬ふぐり	犬ふぐり	春	14.2.17.
925	切岸に悪戯っぽく犬ふぐり	犬ふぐり	春	14.2.17.
926	コロニーを作り早くも犬ふぐり	犬ふぐり	春	14.2.17.
927	足止めて人しゃがませる犬ふぐり	犬ふぐり	春	14.2.17.
928	なめくじが嫌と別れて二筋に (季語：なめくじ＝夏）	なめくじ	夏	14.2.17.
929	遍路笠取れば眩しい入日かな	遍路	春	14.2.17.
930	母と子と手を繋ぎ行く遍路道	遍路	春	14.2.17.
931	お遍路が位置確かめるＧＰＳ	遍路	春	14.2.18.
932	地下足袋の紺新しく桜守	桜守	春	14.2.18.
933	樹木医の資格持ちたる桜守	桜守	春	14.2.18.
934	樹木医の名刺くれたる桜守	桜守	春	14.2.18.
935	幹を撫で二言三言桜守	桜守	春	14.2.18.
936	幹撫ぜてなにを語るや桜守	桜守	春	14.2.18.
937	春の雪テレビはソチの五輪かな	春の雪	春	14.2.18.
938	春の雪首都に白布をかけにけり	春の雪	春	14.2.18.
939	グランドで球蹴る児らや春の雪	春の雪	春	14.2.18.
940	春の雪打ちっ放しの賑へり	春の雪	春	14.2.18.
941	箸取りて一汁一菜春の雪	春の雪	春	14.2.19.
942	屋外機唸りを上げる春の雪	春の雪	春	14.2.19.
943	白皚皚術なく凍てし花菫	花菫	春	14.2.19.
944	昼になほマイナス二度や春の雪	春の雪	春	14.2.19.
945	思ひ遣る感謝の嬉し針供養	針供養	春	14.2.19.
946	ねぎらいの心を込めて針供養	針供養	春	14.2.19.
947	いたわりの心ゆかしき針供養	針供養	春	14.2.19.
948	春の雪終日降りて飽きもせず	春の雪	春	14.2.19.
949	春にそむき日がな降り継ぐ首都の雪	春の雪	春	14.2.19.
950	街の音吸い取りて降る春の雪	春の雪	春	14.2.19.
951	大雪の首都に響けり春の雷	春雷	春	14.2.20.
952	白皚皚首都に轟く春の雷	春雷	春	14.2.20.
953	太鼓かと聞き耳立てし春の雷	春雷	春	14.2.20.
954	空耳か耳を澄ませば春の雷	春雷	春	14.2.20.
955	どろどろと太鼓に似たる春の雷	春雷	春	14.2.20.
956	二回だけ鳴りて立ち去る春の雷	春雷	春	14.2.20.
957	白毛布被りし首都や春の雷	春雷	春	14.2.20.
958	腰痛し春のどか雪後始末	春の雪	春	14.2.20.
959	春なれど歳時記違へどか雪に	春の雪	春	14.2.20.
960	降りしきる首都のどか雪春の雪	春の雪	春	14.2.20.
961	あたらずにさわらずに過ぐ建国日	建国記念日	春	14.2.21.
962	四海波高くして建国日	建国記念日	春	14.2.21.
963	ニッポンの夢淡雪にソチ五輪	淡雪	春	14.2.21.
964	花移り蜜吸ふ目白気ぜわしき	目白	春	14.2.21.
965	どか雪にまんさくの花縮みをり	まんさくの花	春	14.2.21.
966	鴬の鳴き音に慣れて山下る	鴬	春	14.2.21.
967	鴬や木の間隠れに奥多摩湖	鴬	春	14.2.21.
968	鳴きやんで何の苦もなく上げ雲雀	雲雀	春	14.2.21.
969	天高く吸い取られたる揚げ雲雀	雲雀	春	14.2.21.
970	いまそこにゐたる雲雀が雲の上	雲雀	春	14.2.21.
971	助走なし一直線に揚げ雲雀	雲雀	春	14.2.22.
972	斑雪野をたちまち下に揚げ雲雀	雲雀	春	14.2.22.
973	縄梯子掛け昇りたし春満月	春満月	春	14.2.22.
974	縄梯子掛け昇らんか春満月	春満月	春	14.2.22.
975	地球捨て月に逃げる日春寝汗	春	春	14.2.22.
976	地球捨て月に逃げる日朧月	朧月	春	14.2.22.
977	便利さを捨てきれぬ民原発忌 （１１．３．１１．福島第一原発溶融）	原発忌	春	14.2.22.
978	列島を捨つる日来ぬか原発忌	原発忌	春	14.2.22.
979	斑雪（はだれ）野や野積みのままの汚染ごみ	斑雪野	春	14.2.22.
980	後世にごみ押し付けて原発忌	原発忌	春	14.2.22.
981	佐保姫の目覚めに踊る渓の水	佐保姫	春	14.2.23.
982	佐保姫の目覚め促す渓の水	佐保姫	春	14.2.23.
983	佐保姫の目覚めを告げる渓の水	佐保姫	春	14.2.23.
984	佐保姫の裳裾が揺らす蔓橋	佐保姫	春	14.2.23.
985	句会終へ小酌に急ぐ余寒かな	余寒	春	14.2.23.
986	焼き秋刀魚骨一筋が皿の上 （季語：秋刀魚＝秋）	秋刀魚	秋	14.2.23.
987	焼き秋刀魚骨一筋を残しけり	秋刀魚	秋	14.2.23.
988	鯵寿司を頬張り昼の小酌かな （季語：鯵＝夏）	鯵	夏	14.2.23.
989	ごろごろとくぐもり響く春の雷	春雷	春	14.2.23.
990	ごろとだけ鳴りて立ち去る春の雷	春雷	春	14.2.23.
991	里の川魚影を増やす雨水かな	雨水	春	14.2.24.
992	畑仕事段取り決める雨水かな	雨水	春	14.2.24.
993	公魚（わかさぎ）を食めば間近に富士の山	公魚	春	14.2.24.
994	公魚を食めば間近の富士真白	公魚	春	14.2.24.
995	三椏の花下向きに喇叭吹く	三椏の花	春	14.2.24.
996	三椏の花の喇叭はミュートかな	三椏の花	春	14.2.24.
997	人寄せて三椏の花華やげり	三椏の花	春	14.2.24.
998	人寄せて三椏の花ファンファーレ	三椏の花	春	14.2.24.
999	ファンファーレ吹くや三椏花喇叭	三椏の花	春	14.2.24.
1000	三椏の一花抜いて吸ふ少女	三椏の花	春	14.2.24.

２０１１年８月１０日に［第1集1日10句１０００句を詠む］をスタートしてからちょうど３年で第１０集の１０００句を本日（実年月日２０１４年２月１２日）詠み上げ、1万句の満願成就となりました。明日からは２万句達成を目指して第11集1日10句１０００句を詠む」に挑戦いたします。　　　　　　鈴童

♪ＢＧＭ：Ｓｅｂａｓｔｉａｎ　Ｉｒａｄｉｅｒ［La Paloma］arranged by Ripple♪

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