1日10句千句を詠む第12集

鈴童の遊び
一日十句以上を千句詠む

（第12回）

No.	句	季語	季	作句日
1	花蜜柑急こう配のモノレール	蜜柑の花	夏	14.5.7.
2	花蜜柑香も運びゆくモノレール	蜜柑の花	夏	14.5.7.
3	花蜜柑香気を放つ瀬戸の島	蜜柑の花	夏	14.5.7.
4	眼鏡とりレンズ拭けども夏霞	夏霞	夏	14.5.7.
5	落ちそうだよ母ちゃんと背の子亀いふ	亀の子	夏	14.5.7.
6	落ちそうだよ母ちゃんと背の子亀言ひ	亀の子	夏	14.5.7.
7	黄萱に手引かるるごとく山路ゆく	黄菅（萱）	夏	14.5.7.
8	早よ見てと浅間山の黄萱呼ぶ	黄菅（萱）	夏	14.5.7.
9	早よ見てと浅間山の黄萱咲く	黄菅（萱）	夏	14.5.7.
10	筆記具を買って嬉しくなる五月	五月	夏	14.5.7.
11	孑孑の浮かび沈みて日がなかな	孑孑	夏	14.5.8.
12	孑孑は何べん沈みて巣立ちかな	孑孑	夏	14.5.8.
13	孑孑に課されし浮沈一万回	孑孑	夏	14.5.8.
14	ぼうふらの浮沈数へる閑居かな	孑孑	夏	14.5.8.
15	蜘蛛の子はてんでばらばら吾先に	蜘蛛の子	夏	14.5.8.
16	蜘蛛の子は転げるごとく散りにけり	蜘蛛の子	夏	14.5.8.
17	蜘蛛の子の逃げ足速き身過ぎかな	蜘蛛の子	夏	14.5.8.
18	蚤ほどの小さき蜘蛛の子ひた走り	蜘蛛の子	夏	14.5.8.
19	金蘭に呼ばれて登る浅間山（14.5.8.府中の浅間山７９．６ｍ吟行）	金蘭	夏	14.5.8.
20	金蘭にお出でお出でと女坂	金蘭	夏	14.5.8.
21	金蘭の背で銀蘭も揺れてをり	金蘭	夏	14.5.9.
22	針槐（はりえんじゅ）一房摘んで三杯酢	槐の花	夏	14.5.9.
23	熊ん蜂身を重たげ気に針槐	槐の花	夏	14.5.9.
24	黄鶲（きびたき）や水場濁さず飛び立てり	黄鶲	夏	14.5.9.
25	銀蘭の花控へめに佇めり	銀蘭	夏	14.5.9.
26	そよぐ風命を託す落し文	落し文	夏	14.5.9.
27	宝飾草（ほうちゃくそう）ゆらりゆらりと風まかせ	宝飾草	夏	14.5.9.
28	宝飾草花俯ひて風まかせ	宝飾草	夏	14.5.9.
29	山路来て花吹きこぼる犬ざくら	犬桜（季語：春）	夏	14.5.9.
30	風騒ぐ山路にこぼる犬ざくら	犬桜（季語：春）	夏	14.5.9.
31	孑孑（ぼうふら）や疲れを知らぬ浮き沈み	孑孑	夏	14.5.10.
32	孑孑の生きる証しの浮沈かな	孑孑	夏	14.5.10.
33	孑孑や課されし数の浮沈かな	孑孑	夏	14.5.10.
34	菖蒲湯に吾も浸せと女身仏	菖蒲湯	夏	14.5.10.
35	放ち鶏卵ころんと仏の座	仏の座（季語：春）	春	14.5.10.
36	波郷句日ふと響きたる日雷（季語：波郷忌　冬）	日雷	夏	14.5.10.
37	遠鳴りの日雷聴く波郷句碑	日雷	夏	14.5.10.
38	波郷句碑遠鳴りてゐる日雷	日雷	夏	14.5.10.
39	日雷突と聞へし波郷句碑	日雷	夏	14.5.10.
40	小でまりやお辞儀お辞儀の繰り返し	小でまり（季語：春）	春	14.5.10.
41	そよ風や愛でる人なき姫女苑	姫女苑	夏	14.5.11.
42	姫女苑優しく咲けど忘れられ	姫女苑	夏	14.5.11.
43	宝飾草目立たぬよふに花揺らす	宝飾草	夏	14.5.11.
44	落し文主は同じかあちこちに	落し文	夏	14.5.11.
45	落し文風に吹かれて道の端に	落し文	夏	14.5.11.
46	落し文そっと戻して立ち去りぬ	落し文	夏	14.5.11.
47	拾ふてもそっと返せよ落し文	落し文	夏	14.5.11.
48	尺取や尺取り終へて枝に化け	尺取虫	夏	14.5.11.
49	木漏れ日に秘密残して黒揚羽	黒揚羽	夏	14.5.11.
50	尺取や尺を取りつつ逃げにけり	尺取虫	夏	14.5.11.
51	山道を過る紐あり山かがし	山かがし	夏	14.5.12.
52	山の径紐過りたり山かがし	山かがし	夏	14.5.12.
53	破れ傘破れかぶれの振りをして	破れ傘	夏	14.5.12.
54	木漏れ日の揺れるあたりにやぶれがさ	破れ傘	夏	14.5.12.
55	纏ひにも似たる芽出しのやぶれがさ	破れ傘	夏	14.5.12.
56	唐傘のお化けと見せてやぶれがさ	破れ傘	夏	14.5.12.
57	さり気なく小花咲かせるやぶれがさ	破れ傘	夏	14.5.12.
58	小さき花小さき虫呼ぶやぶれがさ	破れ傘	夏	14.5.12.
59	筒状花小虫が揺らすやぶれがさ	破れ傘	夏	14.5.12.
60	やぶれがさ尾羽打ち枯らす振りをして	破れ傘	夏	14.5.12.
61	蔓延（はびこ）ると言ふ字の似合ふ鴨足草（ゆきのした）	鴨足草	夏	14.5.13.
62	ひげ伸ばし葉を重ねゆく雪のした	鴨足草	夏	14.5.13.
63	頼まぬに狭庭を仕切る鴨足草	鴨足草	夏	14.5.13.
64	どくだみと狭庭取り合ふ雪の下	十薬・雪の下	夏	14.5.13.
65	宵迫る蛍袋の山の径	蛍袋	夏	14.5.13.
66	荒れ庭に一株欲しき釣鐘草	釣鐘草・蛍	夏	14.5.13.
67	十薬を数数へつつ引き抜けり	十薬・どくだみ	夏	14.5.13.
68	純白を連ね咲きゐるえごの花	えごの花	夏	14.5.13.
69	濃白と呼びたきえごの花薫る	えごの花	夏	14.5.13.
70	舌出して鎌首もたぐ半夏かな	半夏・烏柄杓	夏	14.5.13.
71	姫女苑やさしく咲けど見過ごされ	姫女苑	夏	14.5.14.
72	姫女苑摘む人もなく咲き乱れ	姫女苑	夏	14.5.14.
73	摘まれない花と成り果つ姫女苑	姫女苑	夏	14.5.14.
74	姫女苑摘んで二束墓参り	姫女苑	夏	14.5.14.
75	野に摘みし姫女苑手に友見舞ふ	姫女苑	夏	14.5.14.
76	辻地蔵いっぱいの供花姫女苑	姫女苑	夏	14.5.14.
77	野仏や農婦供へし姫女苑	姫女苑	夏	14.5.14.
78	お地蔵の前を飾りし姫女苑	姫女苑	夏	14.5.14.
79	野仏は野の花が好き姫女苑	姫女苑	夏	14.5.14.
80	六地蔵どの花筒も姫女苑	姫女苑	夏	14.5.14.
81	野の花も飾れば映える姫女苑	姫女苑	夏	14.5.15.
82	卓上花客ほほ笑ます姫女苑	姫女苑	夏	14.5.15.
83	放棄田に薄雪のごと姫女苑	姫女苑	夏	14.5.15.
84	瓦礫山囲うがごとく姫女苑	姫女苑	夏	14.5.15.
85	人影の戻らぬ畑や姫女苑	姫女苑	夏	14.5.15.
86	姫女苑藪漕ぐほどに野を埋めり	姫女苑	夏	14.5.15.
87	賢治なら「野草花店」の姫女苑	姫女苑	夏	14.5.15.
88	「ご自由に」バケツ置かれて姫女苑	姫女苑	夏	14.5.15.
89	「母の日」に野の花摘みて差し出す子	姫女苑	夏	14.5.15.
90	「母の日」は野の花そっと仏壇に	姫女苑	夏	14.5.15.
91	一閃の恋のシグナル蛍の火	蛍	夏	14.5.16.
92	点滅に命を懸ける蛍かな	蛍	夏	14.5.16.
93	波長合ふ点滅探し飛ぶ蛍	蛍	夏	14.5.16.
94	恋の火を暗夜に灯す蛍かな	蛍	夏	14.5.16.
95	恋の火の消へて朝焼け蛍逝く	蛍	夏	14.5.16.
96	恋の火の消へて朝焼け蛍果つ	蛍	夏	14.5.16.
97	蛍火の明滅果てし朝ぼらけ	蛍	夏	14.5.16.
98	景膨れ夏雲ふくれうつらかな	夏雲	夏	14.5.16.
99	風騒ぎ波音となる立浪草	立浪草	夏	14.5.16.
100	風鳴りて波音伝ふ立浪草	立浪草	夏	14.5.16.
101	寄せる浪薄紫に立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
102	庭隅に寄せ来る波や立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
103	波の音かすかに伝ふ立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
104	波がしら蟻を載せたる立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
105	北斎の浪もかくやと立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
106	暫くの声かかりたる立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
107	波頭崩れんとして立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
108	波頭連ねし庭の立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
109	形よき波頭を見せて立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
110	海の香と響き伝へよ立浪草	立浪草	夏	14.5.17.
111	しゃがみ込む北斎ゐたり立浪草	立浪草	夏	14.5.18.
112	覗き込む翁がありて立浪草	立浪草	夏	14.5.18.
113	波がしら光るもの載せ立浪草	立浪草	夏	14.5.18.
114	夏茱萸を取らんとすれば下は崖	夏茱萸	夏	14.5.18.
115	夏茱萸のえぐさ懐かしおさなき日	夏茱萸	夏	14.5.18.
116	夏茱萸を夢中で食めば口痺れ	夏茱萸	夏	14.5.18.
117	よじ登り山桃食めば鬼の口	山桃	夏	14.5.18.
118	山桃の実鈴生れど枝高し	山桃	夏	14.5.18.
119	桜の実葉の陰に満ち地にもまた	桜の実	夏	14.5.18.
120	山梔子の花まったりと匂ひけり	山梔子の花	夏	14.5.18.
121	夜目遠目くちなしの花匂ひ濃し	山梔子の花	夏	14.5.19.
122	「寒卵」大書して売る道の駅（季語：寒卵　冬）	寒卵	夏	14.5.19.
123	永き日や木魚の音に遅速あり	永き日	春	14.5.19.
124	破れ傘破れかぶれの振りをかし	破れ傘	夏	14.5.19.
125	青竹の盃にとくとく冷し酒	冷し酒	夏	14.5.19.
126	茄子紺がひときわ涼しなすび漬	茄子漬	夏	14.5.19.
127	冷酒や甘露甘露と今宵また	冷酒	夏	14.5.19.
128	蜜豆を男も食めば平和なり	蜜豆	夏	14.5.19.
129	水貝や浜風通す昼座敷	水貝	夏	14.5.19.
130	夏掛けに代りし晩の落ち着かず	夏布団	夏	14.5.19.
131	店の名の草書一文字夏のれん	夏のれん	夏	14.5.20.
132	今宵またみなにこにこと暑気払	暑気払	夏	14.5.20.
133	プール開きのし披露する八十翁	プール開き	夏	14.5.20.
134	麦笛の音高らかに野を裂けり	麦笛	夏	14.5.20.
135	目立てるを厭ふかに見ゆ宝飾草	宝飾草	夏	14.5.20.
136	目立てしを厭ふがに咲く宝飾草	宝飾草	夏	14.5.20.
137	合歓の花夕風吹けば眠りたり	合歓の花	夏	14.5.20.
138	西日受け垣の花合歓閉じにけり	合歓の花	夏	14.5.20.
139	一瞥し女すぎゆく合歓の花	合歓の花	夏	14.5.20.
140	垣根から紅のぼかしの合歓二輪	合歓の花	夏	14.5.20.
141	葉を閉じて手持無沙汰の合歓の花	合歓の花	夏	14.5.21.
142	小走りの宅配の人合歓の花	合歓の花	夏	14.5.21.
143	花合歓にそっと触れゆく母と子と	合歓の花	夏	14.5.21.
144	三日目の花合歓急に老けにけり	合歓の花	夏	14.5.21.
145	紫の霞眠たし花あふち	花あふち	夏	14.5.21.
146	紫雲とも霞とも見せ花あふち	花あふち	夏	14.5.21.
147	口実はいくらでもあり暑気払	暑気払	夏	14.5.21.
148	一日花さぼてんはたと萎みけり	仙人掌の花	夏	14.5.21.
149	一日花さぼてんはたと潰へけり	仙人掌の花	夏	14.5.21.
150	一日を咲き仙人掌の花果てり	仙人掌の花	夏	14.5.21.
151	一日を咲き仙人掌の花へたる	仙人掌の花	夏	14.5.22.
152	一日を咲き仙人掌の花潰へぬ	仙人掌の花	夏	14.5.22.
153	仙人掌の花ひっそりと潰へたり	仙人掌の花	夏	14.5.22.
154	花仙人掌たったひと日の晴れ舞台	仙人掌の花	夏	14.5.22.
155	尺取は尺を取らねば逃げられず	尺取虫	夏	14.5.22.
156	爽やかにさぼてんの花咲きにけり	仙人掌の花	夏	14.5.22.
157	爽やかに仙人掌の花並びをり	仙人掌の花	夏	14.5.22.
158	うたかたの花さぼてんの宴かな	仙人掌の花	夏	14.5.22.
159	儚きは花仙人掌の宴かな	仙人掌の花	夏	14.5.22.
160	花仙人掌いっせいに咲き萎れけり	仙人掌の花	夏	14.5.22.
161	月下美人一夜かぎりの花の宴	月下美人	夏	14.5.23.
162	月下美人一夜かぎりの宴かな	月下美人	夏	14.5.23.
163	羽化登仙宴はかなき花さぼてん	仙人掌の花	夏	14.5.23.
164	バタ屋と言ふ言葉は死語に合歓の花	合歓の花	夏	14.5.23.
165	マレーシア機どこに消へしや合歓の花	合歓の花	夏	14.5.23.
166	遠い日の夕日が丘や蚊帳吊草	蚊帳吊草	夏	14.5.23.
167	一連の目刺泳ぎし海うねる	目刺	春	14.5.23.
168	初鰹皿鉢を囲む土佐造り	初鰹	夏	14.5.23.
169	生きるとは色即是空合歓の花	合歓の花	夏	14.5.23.
170	生きるとは死への道行合歓の花	合歓の花	夏	14.5.23.
171	玉葱や春夏秋冬農の軒	玉葱	夏	14.5.24.
172	五月闇心の闇のなお深く	五月闇	夏	14.5.24.
173	しゃがむ背を風渡りゆく立浪草	立浪草	夏	14.5.24.
174	潮騒に似たる葉ずれや立浪草	立浪草	夏	14.5.24.
175	立浪草薄紫が波立てり	立浪草	夏	14.5.24.
176	いままさに波頭を砕く立浪草	立浪草	夏	14.5.24.
177	潮騒は空耳なりや立浪草	立浪草	夏	14.5.24.
178	森の径しおざい聞こゆ立浪草	立浪草	夏	14.5.24.
179	北斎の頷きゐたり立浪草	立浪草	夏	14.5.24.
180	蜜吸ひの虫走り出る立浪草	立浪草	夏	14.5.24.
181	ことごとく頭を垂れし立浪草	立浪草	夏	14.5.25.
182	北斎の浪かと眺む立浪草	立浪草	夏	14.5.25.
183	北斎の絵筆走らす立浪草	立浪草	夏	14.5.25.
184	北斎の筆走るなり立浪草	立浪草	夏	14.5.25.
185	北斎の筆奔放に立浪草	立浪草	夏	14.5.25.
186	九十九里白波寄せる立浪草	立浪草	夏	14.5.25.
187	勤行の読経聴きゐる立浪草	立浪草	夏	14.5.25.
188	吾眉も半夏生なり夕ごころ	半夏生	夏	14.5.25.
189	災地訪ふ老妃の祈り合歓の花	合歓の花	夏	14.5.25.
190	前のめりしてはをらぬか立浪草	立浪草	夏	14.5.25.
191	北斎の浪と競ふや立浪草	立浪草	夏	14.5.26.
192	勤行の読経に緩急鉄線花	鉄線花	夏	14.5.26.
193	芥子坊主振ればころころ種の音	芥子坊主	夏	14.5.26.
194	芥子坊主筋目入れられ切られ与三	芥子坊主	夏	14.5.26.
195	大輪の花吹き散れば芥子坊主	芥子坊主	夏	14.5.26.
196	大輪の花早替る芥子坊主	芥子坊主	夏	14.5.26.
197	花仙人掌一輪咲けり明日は果つ	仙人掌の花	夏	14.5.26.
198	一夜明け無残を曝す花仙人掌	仙人掌の花	夏	14.5.26.
199	妖艶が一夜でへたる花仙人掌	仙人掌の花	夏	14.5.26.
200	尺取や二足歩行の元祖やも	尺取	夏	14.5.26.
201	シグナルの鳴る踏切や恋の猫	恋猫	春	14.5.27.
202	シグナルの鳴る踏切の蜥蜴かな	蜥蜴	夏	14.5.27.
203	へたり閉ずさぼてんの花ひと日の生	仙人掌の花	夏	14.5.27.
204	花仙人掌たったひと日の生と死と	仙人掌の花	夏	14.5.27.
205	花さぼてん死に花咲かせへたりけり	仙人掌の花	夏	14.5.27.
206	薫風に蝦蛄葉さぼてん遅れ咲き	薫風	夏	14.5.27.
207	シグナルの鳴りしレールや青蜥蜴	青蜥蜴	夏	14.5.27.
208	磔刑の贄からびゆく鵙日和	鵙日和	夏	14.5.27.
209	廃線路尾灯と見しが五月闇	五月闇	夏	14.5.27.
210	春蘭の別名の集ふ句会かな	春蘭	春	14.5.27.
211	麦笛の音高らかに外れけり	麦笛	夏	14.5.28.
212	麦笛の音高らかに父と子と	麦笛	夏	14.5.28.
213	麦笛の調子外れを競ひをり	麦笛	夏	14.5.28.
214	シグナルの響くレールや青蜥蜴	青蜥蜴	夏	14.5.28.
215	シグナルの響きしレール青蜥蜴	青蜥蜴	夏	14.5.28.
216	シグナルの響くレールの青蜥蜴	青蜥蜴	夏	14.5.28.
217	かたばみの黄花で埋まる庭境	かたばみ	夏	14.5.28.
218	捨て鉢を甦らせてかたばみ草	かたばみ	夏	14.5.28.
219	かたばみは抜かるるはずが水もらひ	かたばみ	夏	14.5.28.
220	かたばみに片足揚げる散歩犬	かたばみ	夏	14.5.28.
221	喉仏揺らし蹲踞の青蛙	青蛙	夏	14.5.29.
222	万緑の景に溶け込む青蛙かな	万緑・青蛙	夏	14.5.29.
223	紫陽花の葉ごとに蹲踞青蛙	紫陽花・青蛙	夏	14.5.29.
224	万緑や時計音なく時刻む	万緑	夏	14.5.29.
225	時止めて万緑の中眠りたし	万緑	夏	14.5.29.
226	ちょん髷の結へて声飛ぶ五月場所	五月場所	夏	14.5.29.
227	昼寝覚母の乳吸ふ吾のゐて	昼寝覚	夏	14.5.29.
228	母を追ふ幼き吾や昼寝覚	昼寝覚	夏	14.5.29.
229	鳶の弟子スマホ片手に三尺寝	三尺寝	夏	14.5.29.
230	座席の娘スマホがことり昼寝覚	昼寝覚	夏	14.5.29.
231	猫昼寝胸乳取り合ふ子猫かな	昼寝	夏	14.5.30.
232	振り向いて駅名を追ふ昼寝覚	昼寝覚	夏	14.5.30.
233	下穿きの少女のエロス若葉風（バルテュス「夢見るテレーズ」に）	若葉風	夏	14.5.30.
234	下穿きの少女の股間風入るる（バルテュス「夢見るテレーズ」に）	風入	夏	14.5.30.
235	けふもまた座布団飛びし五月場所	五月場所	夏	14.5.30.
236	紫陽花やずぶ濡れ似合ふ雨の花	紫陽花	夏	14.5.30.
237	九十九折れ一折れごとに山あじさゐ	紫陽花	夏	14.5.30.
238	九十九折れ一折れごとに四葩（よひら）咲く	紫陽花・四葩	夏	14.5.30.
239	沢の音近づくほどに山あじさゐ	紫陽花	夏	14.5.30.
240	沢音の激しきなぞへ四葩咲く	四葩	夏	14.5.30.
241	渓流釣りする人影や山あじさゐ	紫陽花	夏	14.5.31.
242	薫風に呼び覚まされし鳩時計	薫風	夏	14.5.31.
243	薫風に応えてぽっぽと鳩時計	薫風	夏	14.5.31.
244	万緑やぽっぽと鳴り出す鳩時計	万緑	夏	14.5.31.
245	噴水の昇り極めて落ちる位置	噴水	夏	14.5.31.
246	昼寝覚めさせて路地行く回収車	昼寝覚	夏	14.5.31.
247	鴨足草ひげの伊之助庭を埋め	鴨足草	夏	14.5.31.
248	庭埋めるひげの伊之助鴨足草	鴨足草	夏	14.5.31.
249	おっとっと白鵬不覚五月場所	五月場所	夏	14.5.31.
250	信号機鳴りしレールや青蜥蜴	青蜥蜴	夏	14.5.31.
251	万緑や土風呂浴びる雀たち	万緑	夏	14.6.1.
252	万緑や時は止まらず花時計	万緑	夏	14.6.1.
253	水上バス水脈八の字の清和かな	清和	夏	14.6.1.
254	星明り填めてとぽつり花柘榴	花柘榴	夏	14.6.1.
255	蔓絡む細き間合ひに鉄線花	鉄線花	夏	14.6.1.
256	しっかりとフェンスを夫に鉄線花	鉄線花	夏	14.6.1.
257	格子巻き鉄線の花揺るぎなし	鉄線花	夏	14.6.1.
258	ぱらぱらとどこに触れしか青時雨	青時雨	夏	14.6.1.
259	八の字の髭集ひたる虎耳草（ゆきのした）	虎耳草	夏	14.6.1.
260	パソコンの前でしばしば昼寝覚	昼寝覚	夏	14.6.1.
261	信号機響くレールや青蜥蜴	青蜥蜴	夏	14.6.2.
262	ぱらぱらと触れもせぬのに青時雨	青時雨	夏	14.6.2.
263	生唾を呑み檻の虎昼寝覚	昼寝覚	夏	14.6.2.
264	訪ふ影を蕊濡らし待つアマリリス	アマリリス	夏	14.6.2.
265	訪ふ影に花芯を濡らすアマリリス	アマリリス	夏	14.6.2.
266	蹲踞にも堂に入りたる蟾蜍（ひきがえる）	蟾蜍	夏	14.6.2.
267	見てる癖して知らぬ顔庭の蟇（がま）	蟇	夏	14.6.2.
268	蟇蛙その疣いぼがなんともはや	蝦蟇	夏	14.6.2.
269	主面（ぬしづら）でのそりと歩む庭の蟇	蟇	夏	14.6.2.
270	無声不動蹲踞続ける庭の蝦蟇	蝦蟇	夏	14.6.2.
271	蹲踞して蝦蟇の聞き入る大相撲	蝦蟇	夏	14.6.3.
272	蝦蟇（がまがえる）踏んでぐにゃりとおぞましき	蝦蟇	夏	14.6.3.
273	蝦蟇踏みしおぞまし気味悪し	蝦蟇	夏	14.6.3.
274	なんとなく遠巻きされる蝦蟇	蝦蟇	夏	14.6.3.
275	見てくれでなしと言へども蝦蟇	蝦蟇	夏	14.6.3.
276	蟇（がま）踏んで二度と踏みたくない気持	蟇	夏	14.6.3.
277	蟇踏まれ気味悪がらる身の不幸	蟾蜍	夏	14.6.3.
278	蟾蜍（ひきがえる）ぐにゃりと踏みし畦の道	蟾蜍	夏	14.6.3.
279	牛蛙一声もなく踏まれけり	牛蛙	夏	14.6.3.
280	菖蒲田に悪声響く牛蛙	牛蛙	夏	14.6.3.
281	蹲踞して飛ぶ虫ぱくり蟾蜍（ひきがえる）	蟾蜍	夏	14.6.4.
282	季に添ふや蟇目良雨の姓と号	蟇	夏	14.6.4.
283	蹲踞して仁王見据える蟾蜍	蟾蜍	夏	14.6.4.
284	蟾蜍物に動ぜず轢かれけり	蟇	夏	14.6.4.
285	蟇と蟇恋の立て引きしてをりぬ	蟇	夏	14.6.4.
286	のっそりと尻を起して蟇始動	蟇	夏	14.6.4.
287	人影など歯牙にもかけず蝦蟇は行く	蝦蟇	夏	14.6.4.
288	怪異なるどこに惹かれし蟇の恋	蟇	夏	14.6.4.
289	容貌の怪異で選ぶ蟇の恋	蟇	夏	14.6.4.
290	ポケットに蟇入れてゐた餓鬼大将	蟇	夏	14.6.4.
291	庭居の蟇雌かも知れずと思いしが	蟇	夏	14.6.5.
292	牛蛙葎の陰で胴間声	牛蛙	夏	14.6.5.
293	牛蛙雌呼ぶ声のふてぶてし	牛蛙	夏	14.6.5.
294	眼間を過る虫待つ蟇の舌	蟇	夏	14.6.5.
295	眼間を過る影待つ蟇の狩	蟇	夏	14.6.5.
296	鉄棒に赤錆浮ぶ原爆忌	原爆忌	夏	14.6.5.
297	ビニール傘骨ばらばらに原爆忌	原爆忌	夏	14.6.5.
298	蚰蜒や波打つ脚に縺れなし	蚰蜒（げじげじ）	夏	14.6.5.
299	三十万瞬時に屠る原爆忌	原爆忌	夏	14.6.5.
300	原爆忌人の記憶の薄れよう	原爆忌	夏	14.6.5.
301	白紙もて千羽鶴折る原爆忌	原爆忌	夏	14.6.6.
302	句帳裂き鶴一羽折る原爆忌	原爆忌	夏	14.6.6.
303	白靴に不意打ちかけて逃げる波	白靴	夏	14.6.6.
304	寄せる波白靴濡らし引きゆけり	白靴	夏	14.6.6.
305	白靴を脱いで母子の渚ラン	白靴	夏	14.6.6.
306	葱抜いて蛍を入れてくれし母	葱・蛍	夏	14.6.6.
307	葱抜いて蛍提灯持ち帰る	葱・蛍	夏	14.6.6.
308	籠代り蛍まばたく葱提灯	葱・蛍	冬・夏	14.6.6.
309	捕まへし蛍が灯す葱提灯	葱・蛍	冬・夏	14.6.6.
310	田一枚紅眩し蓮華草	蓮華草	夏	14.6.6.
311	貝塚に偲ぶ縄文青葉風	青葉風	夏	14.6.7.
312	縄文の貝塚過る青葉風	青葉風	夏	14.6.7.
313	万緑や書架から抜きし「罪と罰」	万緑	夏	14.6.7.
314	昼寝覚よだれで濡れる「罪と罰」	昼寝覚	夏	14.6.7.
315	前を見ぬスマホ歩きや橡の花	橡の花	夏	14.6.7.
316	マロニエの一房飾るレストラン	マロニエの花	夏	14.6.7.
317	マロニエの一房飾り誕生会	マロニエの花	夏	14.6.7.
318	マロニエの一房挿して絵手紙に	マロニエの花	夏	14.6.7.
319	マロニエの花咲く下の車椅子	マロニエの花	夏	14.6.7.
320	マロニエや夕日に揺るる花灯（ともし）	マロニエの花	夏	14.6.7.
321	風止んでぽとりと落ちる実梅あり	実梅	夏	14.6.8.
322	風止んで音やはらかに実梅落つ	実梅	夏	14.6.8.
323	気まぐれに枝離れゆく実梅あり	実梅	夏	14.6.8.
324	形よき乳房とも見ゆ実梅かな	実梅	夏	14.6.8.
325	葉隠れに尻を連ねし実梅かな	実梅	夏	14.6.8.
326	葉隠れに実梅の尻のふっくらと	実梅	夏	14.6.8.
327	幼子の尻や実梅の蒙古斑	実梅	夏	14.6.8.
328	散水の虹を潜りて猫悠然と	虹	夏	14.6.8.
329	散水の虹悠然と潜る猫	虹	夏	14.6.8.
330	散水の虹悠然と三毛潜る	虹	夏	14.6.8.
331	散水の小さき虹や電話鳴る	虹	夏	14.6.9.
332	マロニエの花咲く庭の放ち鶏	マロニエの花	夏	14.6.9.
333	女身こそ吾人生の日雷	日雷	夏	14.6.9.
334	小鳥来てちゅくちゅくちちち夏の暁	夏の暁	夏	14.6.9.
335	乳房吸ふは嬰児（ややこ）にあらず夏木立	夏木立	夏	14.6.9.
336	滴りに逆さに映る杉木立	滴り	夏	14.6.9.
337	滴りに乗りて落ちゆく虫のをり	滴り	夏	14.6.9.
338	爽やかに風に吹かるる植田かな	植田	夏	14.6.9.
339	高架橋電車が渡る夏の川	夏の川	夏	14.6.9.
340	風そよろ吹き渡り行く植田かな	植田	夏	14.6.9.
341	三方に大輪向けてアマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
342	三方を照らすがごとくアマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
343	三方に呼びかけてゐるアマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
344	三方に三方の顔アマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
345	一つ茎東南西にアマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
346	控へめに三方美人アマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
347	言ふなれば三方美人アマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
348	三面鏡演じて見せるアマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
349	三面鏡開きて見せるアマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
350	大輪を東南西とアマリリス	アマリリス	夏	14.6.10.
351	開梱の詰め物除くアマリリス	アマリリス	夏	14.6.11.
352	三方に花揃へたるアマリリス	アマリリス	夏	14.6.11.
353	三姉妹顔揃へたるアマリリス	アマリリス	夏	14.6.11.
354	蝙蝠の影いく筋も星月夜	アマリリス	秋	14.6.11.
355	自転車のライト揺れ来る星月夜	星月夜	秋	14.6.11.
356	寄せる波足元越える星月夜	星月夜	秋	14.6.11.
357	雉鳩の鳴き音静まり星月夜	星月夜	秋	14.6.11.
358	星月夜無気味なほどの星の数	星月夜	秋	14.6.11.
359	回遊の鮪も仰ぐ星月夜	星月夜	秋	14.6.11.
360	見上ぐれば幾千万の星明り	星明り	秋	14.6.11.
361	怖ろしき広大無辺星月夜	星月夜	秋	14.6.12.
362	避難地区人影のなき星月夜	星月夜	秋	14.6.12.
363	風呼んで葉裏揃へし風知草	風知草	夏	14.6.12.
364	風呼んで葉裏の揃ふ風知草	風知草	夏	14.6.12.
365	へそ曲がり葉表隠し裏葉草	風知草＝裏葉草	夏	14.6.12.
366	へそ曲がり葉表隠し風知草	風知草	夏	14.6.12.
367	江戸っ子の粋や羽織の裏葉草	裏葉草	夏	14.6.12.
368	打水にそよと揺れたる風知草	風知草	夏	14.6.12.
369	打水やそよと葉揺らす風知草	風知草	夏	14.6.12.
370	手づかみに雷神投げし雹爆ぜる	雹	夏	14.6.12.
371	揃へたる葉裏ひと揺れ風知草	風知草	夏	14.6.13.
372	蛍狩浴衣姿の行き交へり	蛍狩	夏	14.6.13.
373	蛍光のネイルも舞ふや蛍狩	蛍狩	夏	14.6.13.
374	蛍光のネイルも舞へり蛍狩	蛍狩	夏	14.6.13.
375	柑橘系ほのかな浴衣ほたる狩	蛍狩	夏	14.6.13.
376	蝮よけ長靴履いて蛍狩り	蛍狩	夏	14.6.13.
377	母親の手を握りしめ蛍狩	蛍狩	夏	14.6.13.
378	手をつなぎ幸せ気分ほたる狩	蛍狩	夏	14.6.13.
379	晩餐の卓を離れて蛍狩り	蛍狩	夏	14.6.13.
380	人口の滝音を背にほたる狩	蛍狩	夏	14.6.13.
381	蛍狩りそっと籠開く係員	蛍狩	夏	14.6.14.
382	浴衣着て合コン組の蛍狩り	蛍狩	夏	14.6.14.
383	婚活のそぞろ歩きや蛍狩	蛍狩	夏	14.6.14.
384	田水ゆれ風やわらかに蛍狩	蛍狩	夏	14.6.14.
385	団扇手に池めぐり行く蛍狩り	蛍狩	夏	14.6.14.
386	草陰で蛍火消へて恋成就	蛍狩	夏	14.6.14.
387	朝顔の双葉がやがて百葉にも	朝顔	夏	14.6.14.
388	一足で踏みつぶされし百足虫かな	百足虫	夏	14.6.14.
389	百の足一糸乱さず百足虫ラン	百足虫	夏	14.6.14.
390	蚰蜒（げじ）と呼びみなが恐れた上司逝く	蚰蜒	夏	14.6.14.
391	世も末と嘆くばかりやほととぎす	時鳥	夏	14.6.15.
392	世はすでに末の世なりきほととぎす	時鳥	夏	14.6.15.
393	やい百足虫いちど見せぬか千鳥足	百足虫	夏	14.6.15.
394	蒼天を突き上げてゆく雲の峰	雲の峰	夏	14.6.15.
395	ガウディの思ひに応ふ雲の峰	雲の峰	夏	14.6.15.
396	散水の虹を見下ろす雲の峰	雲の峰	夏	14.6.15.
397	千枚田一枚ごとの雲の峰	雲の峰	夏	14.6.15.
398	山峡の村静かなり雲の峰	雲の峰	夏	14.6.15.
399	どっしりとふうわりと立つ雲の峰	雲の峰	夏	14.6.15.
400	夏の雲悠然と湧き地を焦がす	夏雲	夏	14.6.15.
401	夏雲や罪滅ぼしの風少々	夏雲	夏	14.6.16.
402	雲の峰どれ仰ぎても未踏峰	雲の峰	夏	14.6.16.
403	山頂を踏んだ者なき雲の峰	雲の峰	夏	14.6.16.
404	山頂で昼寝のしたき雲の峰	雲の峰	夏	14.6.16.
405	雷神の太鼓の音や雲の峰	雲の峰	夏	14.6.16.
406	夭折の弟妹遊べ雲の峰	雲の峰	夏	14.6.16.
407	父と母弟妹のゐる雲の峰	雲の峰	夏	14.6.16.
408	吾もまた登り行くかな雲の峰	雲の峰	夏	14.6.16.
409	補虫箱ごきぶり追いし守宮（やもり）果つ	油虫（ごきぶり）	夏	14.6.16.
410	わが書斎大ごきぶりのあるじ顔	油虫（ごきぶり）	夏	14.6.16.
411	人食った逃げ足憎し油虫	油虫（ごきぶり）	夏	14.6.17.
412	青梅雨や書痴を気取りて俳書読む	青梅雨	夏	14.6.17.
413	爽やかに風渡り行く植田かな	植田	夏	14.6.17.
414	昇り詰め踵を返す噴井かな	噴井	夏	14.6.17.
415	走り梅雨一草庵の茶碗酒（山頭火終焉の庵で）	走り梅雨	夏	14.6.17.
416	丸まると実梅肥へたり梅雨近し	梅雨	夏	14.6.17.
417	丸まると肥へたる実梅梅雨に入る	梅雨入り	夏	14.6.17.
418	噴水の頂と知り落ち行けり	噴水	夏	14.6.17.
419	造り滝鯉悠然と滝口に	造り滝	夏	14.6.17.
420	三方に花芯を向けしアマリリス	アマリリス	夏	14.6.17.
421	二十四の瞳の像や走り梅雨	走り梅雨	夏	14.6.18.
422	溝浚ひ終へたる流れ走り出す	溝浚ひ	夏	14.6.18.
423	十薬も八重ともなれば愛でらるる	十薬	夏	14.6.18.
424	溝浚ひ終へたる流れ走りけり	溝浚ひ	夏	14.6.18.
425	靴脱いで渚歩めば星月夜	星月夜	秋	14.6.18.
426	瀬戸大橋走る車窓の星月夜	星月夜	秋	14.6.18.
427	ほの白く里道浮ぶ星月夜	星月夜	秋	14.6.18.
428	ほの白く里道延びる星月夜	星月夜	秋	14.6.18.
429	池底に落ちて実梅の身の不幸	実梅	夏	14.6.18.
430	池に落ち朽ちるほかなき実梅かな	実梅	夏	14.6.18.
431	ががんぼやあっさりと脚二本捨て	ががんぼ	夏	14.6.19.
432	ががんぼや触るれば長き脚外れ	ががんぼ	夏	14.6.19.
433	蚊蜻蛉や脚持て余し捨てて去る	蚊蜻蛉	夏	14.6.19.
434	ががんぼや手足を捨てて無頓着	ががんぼ	夏	14.6.19.
435	幼き日揺れて夢見しハンモック	ハンモック	夏	14.6.19.
436	海中の魚になりし寝間の蚊帳	蚊帳	夏	14.6.19.
437	蚊遣火の豚まん丸の口を開け	蚊遣火	夏	14.6.19.
438	かはたれの空ざはめきて蚊喰鳥	蚊喰取り	夏	14.6.19.
439	布団蹴り平目鰈の蚊帳の海	蚊帳	夏	14.6.19.
440	噴水の昇り極めて位に着けり	噴水	夏	14.6.19.
441	蛇苺銀座の女指長し	蛇苺	夏	14.6.20.
442	蛇苺嫌はれ松子かも知れず	蛇苺	夏	14.6.20.
443	ちょっぽりと乙女の乳首蛇苺	蛇苺	夏	14.6.20.
444	嫌はれる故なき紅や蛇苺	蛇苺	夏	14.6.20.
445	ブラジャーを外せば可愛蛇苺	蛇苺	夏	14.6.20.
446	蛇苺ただ名の故にさげすまれ	蛇苺	夏	14.6.20.
447	蛇苺ほどの価値なきもの多し	蛇苺	夏	14.6.20.
448	乙女らの胸に二粒蛇苺	蛇苺	夏	14.6.20.
449	女人僧胸に隠せし蛇苺	蛇苺	夏	14.6.20.
450	葉陰から鮮紅眩し蛇苺	蛇苺	夏	14.6.20.
451	葉陰から鮮紅笑みし蛇苺	蛇苺	夏	14.6.22.
452	マンションの屋上高く夏燕	夏燕	夏	14.6.22.
453	郭公の声の弾んで梅雨入りかな	郭公・梅雨入	夏	14.6.22.
454	走り梅雨告げるがごとく遠郭公	走り梅雨郭公	夏	14.6.22.
455	三声ほど入梅告げる遠郭公	遠郭公	夏	14.6.22.
456	啼く声の滑舌もよく遠郭公	遠郭公	夏	14.6.22.
457	東京も梅雨に入りたり閑古鳥	梅雨入・閑古鳥	夏	14.6.22.
458	啼く声に聞き違へなし閑古鳥	閑古鳥	夏	14.6.22.
459	梅雨冷や窓越しに聞く遠郭公	梅雨冷・	夏	14.6.22.
460	梅雨冷の窓を閉めつつ郭公きく	梅雨冷・郭公	夏	14.6.22.
461	昨日今日家の近くで啼く郭公	郭公	夏	14.6.23.
462	鎮守の杜郭公啼いて雨あがる	郭公	夏	14.6.23.
463	ででぽぽと啼く雉鳩に遠郭公	遠郭公	夏	14.6.23.
464	休みなく行き交ふ電波星月夜	星月夜	夏	14.6.23.
465	休みなく電波行き交ふ星月夜	星月夜	夏	14.6.23.
466	ほーほーと呼びつ幼の蛍狩	蛍狩	夏	14.6.23.
467	ほーほーとじじばばの呼ぶ蛍狩	蛍狩	夏	14.6.23.
468	じじばばの姿が目立つ蛍狩	蛍狩	夏	14.6.23.
469	長距離を運ばれ蛍旅疲れ	蛍	夏	14.6.23.
470	夕焼けの里飛ぶ蛍旅疲れ	蛍	夏	14.6.23.
471	長旅の籠出る前に逝く蛍	蛍	夏	14.6.24.
472	梅雨の間を籠開けられて飛ぶ蛍	梅雨・蛍	夏	14.6.24.
473	知らぬ地の闇に戸惑う蛍かな	蛍	夏	14.6.24.
474	蛍狩り河鹿の声も加はりて	蛍狩・河鹿	夏	14.6.24.
475	長旅の疲れ隠して飛ぶ蛍	蛍	夏	14.6.24.
476	土砂降りで始まる梅雨やいかり肩	梅雨	夏	14.6.24.
477	おれおれに騙さる不思議桜桃忌	桜桃忌	夏	14.6.24.
478	梅雨冷の朝とは言へど十七度	梅雨冷	夏	14.6.24.
479	蔓延りて狭庭を占むる灸花	灸花	夏	14.6.24.
480	吾星も満天照らす星月夜	星月夜	夏	14.6.24.
481	肩車父にされたる星月夜	星月夜	夏	14.6.25.
482	句会後の小酌終へて星月夜	星月夜	夏	14.6.25.
483	ででぽぽと鳴く雉鳩や梅雨に入る	梅雨入	夏	14.6.25.
484	星ひとつ流れ落ちたる星月夜	星月夜	秋	14.6.25.
485	山頭火ごろりと眠る星月夜	星月夜	秋	14.6.25.
486	漁り火の沖にきらめく星月夜	星月夜	秋	14.6.25.
487	灸（やいと）花蔓縦横に満艦飾	灸花	夏	14.6.25.
488	灸花蔓を引けども切のなし	灸花	夏	14.6.25.
489	白花に紅置く可憐くそかずら	屎蔓＝屁糞蔓	夏	14.6.25.
490	可憐花なれど粗野な名くそかずら	屎蔓＝屁糞蔓	夏	14.6.25.
491	ほーほーと昔の唄でほたる狩	蛍狩	夏	14.6.26.
492	青臭き香を手に残しほたる狩	蛍狩	夏	14.6.26.
493	長旅の疲れ残して飛ぶ蛍	蛍	夏	14.6.26.
494	白無垢の八重のどくだみ蹲み見る	どくだみ・十薬	夏	14.6.26.
495	十薬の八重の白無垢観世音	どくだみ・十薬	夏	14.6.26.
496	十薬の八重白無垢の女神物	どくだみ・十薬	夏	14.6.26.
497	十薬の八重神々し白観音	どくだみ・十薬	夏	14.6.26.
498	神々し八重のどくだみ白観音	どくだみ・十薬	夏	14.6.26.
499	蛍火の点滅弱し旅疲れ	蛍火	夏	14.6.26.
500	長旅を運ばれ果てる蛍狩	蛍狩	夏	14.6.26.
501	空襲に怯へし街の星月夜	星月夜	秋	14.6.27.
502	街の灯を隠せど空は星月夜	星月夜	秋	14.6.27.
503	サンバイザー夏手袋の散歩かな	夏手袋	夏	14.6.27.
504	夏帽にタモ持ち走る児らどこぞ	夏帽子	夏	14.6.27.
505	小田原へ行けば立ち寄る鯵の鮨	鮨	夏	14.6.27.
506	灯を隠す家並照らして星月夜（灯火管制の思い出）	星月夜	秋	14.6.27.
507	街の灯を隠せど照らす星月夜 (灯火管制の思い出）	星月夜	秋	14.6.27.
508	土砂降りにひとり華やぐ四葩かな	四葩・紫陽花	夏	14.6.27.
509	株ごとに花の名みやび紫陽花寺	紫陽花	夏	14.6.27.
510	しもつけに京鹿の子あり名のごとし	しもつけ	夏	14.6.27.
511	雄が追ひ雌が誘ひて夏の蝶	夏蝶	夏	14.6.28.
512	人の訃を伝へるごとく黒揚羽	揚羽蝶	夏	14.6.28.
513	夏よもぎ川の中州をほしいまま	夏蓬	夏	14.6.28.
514	昼顔のそばまで飛んで三塁打	昼顔	夏	14.6.28.
515	万緑や糞神もゐる八百万（やおよろず）	万緑	夏	14.6.28.
516	万緑や波邇夜須毘古（ハニヤスヒコ）の野糞かな	万緑	夏	14.6.28.
517	夏草や野糞楽しむ伊昔紅（金子兜太の父、医師、俳人）	夏草	夏	14.6.28.
518	夏燕流し会釈でよぎりけり	夏燕	夏	14.6.28.
519	著莪の花ちちりちちりと咲きにけり	著莪（しゃが）	夏	14.6.28.
520	時計草でろれん国の時刻む	時計草	夏	14.6.28.
521	夏燕びゅうりりりんと過りたり	夏燕	夏	14.6.29.
522	川面突く竿音ことり花あやめ	花あやめ	夏	14.6.29.
523	柿の花ぽつりとこぼれ木を見上ぐ	柿の花	夏	14.6.29.
524	散るを見てああ咲いたかと柿の花	柿の花	夏	14.6.29.
525	零るるを見て気づきけり柿の花	柿の花	夏	14.6.29.
526	黒剣が空よぎりたり夏燕	夏燕	夏	14.6.29.
527	きゅんきゅんに朱を見せつけて花柘榴	花柘榴	夏	14.6.29.
528	さりさりとフェンス昇りし鉄線花	鉄線花	夏	14.6.29.
529	むったりと匂ひ澱ませ栗の花	繰りの花	夏	14.6.29.
530	荒梅雨にひとり華やぐ四葩（よひら）かな	四葩	夏	14.6.29.
531	零るるに咲くを知りたる柿の花	柿の花	夏	14.6.30.
532	柿の花一つ零れて咲くを知る	柿の花	夏	14.6.30.
533	青柿や轍に落ちて由もなし	青柿	夏	14.6.30.
534	青柿の自然淘汰と言ふ掟	青柿	夏	14.6.30.
535	鮨喰って一丁上りの茶を貰ふ	鮨	夏	14.6.30.
536	醤油皿握り泳がせ喰ふ外人	握り鮨	夏	14.6.30.
537	冷酒を呑む大湯呑魚へん	冷酒	夏	14.6.30.
538	大湯呑冷やなみなみと寿司屋酒	冷酒	夏	14.6.30.
539	白雨雹日照雨の空と慌し	白雨・雹	夏	14.6.30.
540	髪薄き頭を雹の狙い打ち	雹	夏	14.6.30.
541	雹爆ぜてあっと言ふ間の日照りかな	雹	夏	14.7.1.
542	夏雲のひょいと零せし日照雨かな	夏雲	夏	14.7.1.
543	草矢から征矢に化けゆく白昼夢	草矢	夏	14.7.1.
544	雹爆ぜて蹲踞の水つぽつぽと	雹	夏	14.7.1.
545	雹晴れて菜畑見舞ふ老農婦	雹	夏	14.7.1.
546	雹晴れて畝覗き込む畑の主	雹	夏	14.7.1.
547	雹過り何事もなき日照りかな	雹	夏	14.7.1.
548	羽ばたいて古きを捨つる羽抜鶏	羽抜鶏	夏	14.7.1.
549	羽ばたいて鳥肌見せる羽抜鶏	羽抜鶏	夏	14.7.1.
550	青鷺のこの杭と決め日がなかな	青鷺	夏	14.7.1.
551	Ｔシャツが定番となる夏衣	夏衣	夏	14.7.2.
552	Ｔシャツに炎帝の文字ミニパンツ	炎帝	夏	14.7.2.
553	絽羽織の女（ひと）に出逢いし神楽坂	絽羽織	夏	14.7.2.
554	パナマ帽斜に被りたる副総理	パナマ帽	夏	14.7.2.
555	夏布団朝には床に落ちてをり	夏布団	夏	14.7.2.
556	啼く声の舌滑らかに遠郭公	遠郭公	夏	14.7.2.
557	縁遠くなりゆく土用鰻かな	土用	夏	14.7.2.
558	上水に群れ泳ぐ鯉桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.2.
559	ででぽぽと雉鳩啼けり桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.2.
560	バー・ルパンいまも銀座に桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.2.
561	かば焼きが高嶺の花に桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.3.
562	焼酎のホッピー割や桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.3.
563	倍生きて晩酌旨し桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.3.
564	とかとんとん耳鳴りがして桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.3.
565	郭公もお詣りに来る桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.3.
566	ぐでんぐでんルパンの夜や桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.3.
567	ぐでんぐでん知らぬ若者桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.3.
568	バー・ルパン賑はう夜なり太宰の忌	太宰忌	夏	14.7.3.
569	桜桃忌草葉の陰ではにかんで	桜桃忌	夏	14.7.3.
570	脚組んでポーズをつけし太宰の忌	太宰忌	夏	14.7.3.
571	郭公の声さわやかに雨戸繰る	郭公	夏	14.7.4.
572	郭公がカッコウと鳴く街静か	郭公	夏	14.7.4.
573	子育てを託し悠然閑古鳥	閑古鳥	夏	14.7.4.
574	ひとの巣に卵をころり閑古鳥	閑古鳥	夏	14.7.4.
575	朝まだきやはり二声閑古鳥	閑古鳥	夏	14.7.4.
576	托卵を終へてうふふの閑古鳥	閑古鳥	夏	14.7.4.
577	口跡よく郭公啼けり大欅	郭公	夏	14.7.4.
578	よその巣に卵ぽとりと閑古鳥	閑古鳥	夏	14.7.4.
579	あっけらかん子育て託し啼く郭公	郭公	夏	14.7.4.
580	閑古鳥今朝も二声大欅	閑古鳥	夏	14.7.4.
581	かっこーと二声ありて大欅	郭公	夏	14.7.5.
582	かっこうと楷書で啼けり閑古鳥	閑古鳥	夏	14.7.5.
583	遠雷や暮れきる海を見る放哉	遠雷	夏	14.7.5.
584	丸の組割きの組あり泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.5.
585	煮へ立つをはふはふ喰へり泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.5.
586	隣りには噺家もゐる泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.5.
587	飯田屋でひと汗かけり泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.5.
588	煮へ立つをてんでの箸で泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.5.
589	うなぎ屋の前素通りし泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.5.
590	下足札握り二階へ泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.5.
591	柳川で飯食っている下戸もゐて	柳川鍋	夏	14.7.6.
592	噺家も昼席終へて泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.6.
593	鍋囲み師匠を囲みどじょう汁	泥鰌汁	夏	14.7.6.
594	冷房の効きし座敷で鍋囲む	冷房	夏	14.7.6.
595	偲ぶ人つぎつぎ増へて泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.6.
596	麦笛を吹いてみせたり外れたり	麦笛	夏	14.7.6.
597	麦笛を吹いてみせれば外れたり	麦笛	夏	14.7.6.
598	端居する廊下もなくて部屋籠もる	端居	夏	14.7.6.
599	駒下駄の白き素足は紅の爪	素足	夏	14.7.6.
600	庭に来てけふも日和と四十雀	四十雀	夏	14.7.6.
601	蕎麦前の酒にこだわり桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.7.
602	蕎麦前の酒が楽しや桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.7.
603	太宰忌や蕎麦前の酒ちょっとだけ	太宰忌	夏	14.7.7.
604	上水の流れは浅く桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.7.
605	たこ焼を肴にごくり桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.7.
606	放哉をふと思い出す桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.7.
607	戦争がぬっと立ちそな桜桃忌（集団的自衛権解釈を憂う）	桜桃忌	夏	14.7.7.
608	とかとんとん聞へたような太宰の忌	太宰忌	夏	14.7.7.
609	とかとんとん墓前で聞こゆ太宰の忌	太宰忌	夏	14.7.7.
610	さくらんぼ墓いっぱいに桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.7.
611	供花いろいろ酒もいろいろ太宰の忌	太宰忌	夏	14.7.8.
612	本年も鴎外に尻向け太宰の忌（対面は森鴎外の墓所）	太宰忌	夏	14.7.8.
613	鴎外の墓に尻向け桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.8.
614	爺爺婆婆も若者も来て桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.8.
615	太宰の忌電気ブランも手向けられ	太宰忌	夏	14.7.8.
616	さくらんぼ墓石を埋めて太宰の忌（文綵院大猷治通居士の忌)	太宰忌	夏	14.7.8.
617	桜桃忌さくらんぼより生ビール	桜桃忌	夏	14.7.8.
618	刺青の女も合掌桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.8.
619	清流とも呼べぬ上水太宰の忌	太宰忌	夏	14.7.8.
620	桜桃忌浅葱の袈裟の僧が経	桜桃忌	夏	14.7.8.
621	ゴールデンバット供物で並ぶ太宰の忌	太宰忌		14.7.9.
622	カストリは供物に見へず太宰の忌	太宰忌	夏	14.7.9.
623	夕焼けに富士黒々と月見草	月見草	夏	14.7.9.
624	昼顔の勝手に咲きて切られずも	昼顔	夏	14.7.9.
625	夏蓬足に絡まり怖ろしき	夏蓬	夏	14.7.9.
626	放棄田に米の仲間の青芒	青芒	夏	14.7.9.
627	蟻ほどの命の軽さ自爆テロ	蟻	夏	14.7.9.
628	山開き人増へるだけ富士汚れ	山開き	夏	14.7.9.
629	一の花火音で始まる川開き	川開き	夏	14.7.9.
630	電気ブランそっと供へる桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.9.
631	倍生きて墓前に祈る桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.10.
632	死を厭いなれど買ひ来し金魚かな	金魚	夏	14.7.10.
633	浴衣着てペディキュア赤き夕間暮れ	浴衣	夏	14.7.10.
634	夏帯の胸ゆるやかに乳房揺れ	夏帯	夏	14.7.10.
635	夏帯を解けば胸乳も深呼吸	夏帯	夏	14.7.10.
636	夏帯を解けば胸乳も弾みけり	夏帯	夏	14.7.10.
637	昼寝覚め夢の女に惚れるとは	昼寝覚	夏	14.7.10.
638	ペディキュアの紅夏足袋に隠れけり	夏足袋	夏	14.7.10.
639	水着ゆく隠すところはみな隠し	水着	夏	14.7.10.
640	カラフルなすててこがゆく海の家	海の家	夏	14.7.10.
641	とかとんとん響き気になる太宰の忌	太宰忌	夏	14.7.11.
642	赤錆の三輪車の庭柿若葉	柿若葉	夏	14.7.11.
643	三輪車サドル破れて柿若葉	柿若葉	夏	14.7.11.
644	早よ喰へとたちまち煮立つ泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.11.
645	割り下を水をと急かす泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.11.
646	五郎助が不満顔するけふは夏至	夏至	夏	14.7.11.
647	雲海に眩しき朝日下は雨	雲海	夏	14.7.11.
648	追ひ来たり追ひ抜いて行く夕立かな	夕立	夏	14.7.11.
649	孑孑に逃げる才覚知恵もあり	孑孑（ぼうふら）	夏	14.7.11.
650	孑孑の浮沈十日の巣立ちかな	孑孑	夏	14.7.11.
651	孑孑の逃げ足速し水の底	孑孑	夏	14.7.12.
652	孑孑や逃げの一手を身に着けり	孑孑	夏	14.7.12.
653	孑孑の倦むこと知らぬ浮き沈み	孑孑	夏	14.7.12.
654	とかとんとん戦の響き桜桃忌	桜桃忌	夏	14.7.12.
655	葉を重ね緑なす沢花わさび	花山葵	夏	14.7.12.
656	澤水の音軽やかに花山葵	花山葵	夏	14.7.12.
657	さくさくと茎刈る蕗の広葉かな	蕗	夏	14.7.12.
658	節ごとに白い輪見せて今年竹	今年竹	夏	14.7.12.
659	節ごとに白い粉ふく今年竹	今年竹	夏	14.7.12.
660	雑草の親分かとも竹煮草	竹煮草	夏	14.7.12.
661	背比べするがごとくに竹煮草	竹煮草	夏	14.7.13.
662	放棄田に版図広げる竹煮草	竹煮草	夏	14.7.13.
663	雨上り空底抜けに竹煮草	竹煮草	夏	14.7.13.
664	にべもなく丈を伸ばせし竹煮草	竹煮草	夏	14.7.13.
665	不戦の鉄鎖断ちてはならじ原爆忌	原爆忌	夏	14.7.13.
666	七十年不戦の誇り原爆忌	原爆忌	夏	14.7.13.
667	七十年不戦を誇れ原爆忌	原爆忌	夏	14.7.13.
668	知らぬゆへスマホにうつつ原爆忌	原爆忌	夏	14.7.13.
669	孑孑や息継ぐ海女にさも似たり	孑孑	夏	14.7.13.
670	孑孑や息継ぐ海女に似ておかし	孑孑	夏	14.7.13.
671	孑孑に息継ぐ肺のある不思議	孑孑	夏	14.7.14.
672	梅雨晴や金繕ひの楽茶碗	梅雨晴	夏	14.7.14.
673	梅雨晴や金繕ひの碗で飲む	梅雨晴	夏	14.7.14.
674	梅雨晴や金繕ひの楽で茶を	梅雨晴	夏	14.7.14.
675	大夕焼け富士黒々と際立てり	夕焼	夏	14.7.14.
676	朝曇り胃のしくしくと何告げる	朝曇	夏	14.7.14.
677	片蔭を手を繋ぎ行く二人連れ	片蔭	夏	14.7.14.
678	片蔭を男のはみ出す二人連れ	片蔭	夏	14.7.14.
679	青田波静かに北へ寄せにけり	青田	夏	14.7.14.
680	除草剤撒きし青田の赤い旗	青田	夏	14.7.14.
681	雹爆ぜて蹲踞の水穿ちけり	雹	夏	14.7.15.
682	浦上の夜空に万灯蛍の火	蛍火	夏	14.7.15.
683	涼風の確かに過ぎし禅林寺	涼風	夏	14.7.15.
684	ごろと言ふ音遠のきて部屋涼し	涼し	夏	14.7.15.
685	ごろごろと音残れども窓涼し	涼し	夏	14.7.15.
686	幼くて逝きし弟妹蛍の火	蛍火	夏	14.7.15.
687	涼風に佳句詠まるるや半跏仏	涼風	夏	14.7.15.
688	羅（うすもの）に女を包み銀座ママ	羅	夏	14.7.15.
689	白日傘差し片手に持つはスマートフォン	白日傘	夏	14.7.15.
690	麦こがし粉吸ひ込んで噎せにけり	麦こがし	夏	14.7.15.
691	麦こがし粉吸ひ込んで噎せにけり	麦こがし	夏	14.7.16.
692	大雹変ユンボまで出て後始末（１４．６．２4．三鷹市で１０数ｃｍ降雹）	雹	夏	14.7.16.
693	大雹変ユンボ駆り出し後始末	雹	夏	14.7.16.
694	大雹変ユンボまで出ててんやわや	雹	夏	14.7.16.
695	大雹変ユンボ繰り出してんやわや	雹	夏	14.7.16.
696	雷神の怒りの礫雹雨降る	雹	夏	14.7.16.
697	岩上にひとつ葉ひと葉揺れにけり	ひとつ葉	夏	14.7.16.
698	匍匐茎引けばひとつ葉一続き	ひとつ葉	夏	14.7.16.
699	巴里祭なにごともなく過ぎにけり	巴里祭	夏	14.7.16.
700	打水をホースでしたり風立ちぬ	打水	夏	14.7.16.
701	ギヤマンが汗かいてをり冷し酒	冷し酒	夏	14.7.17.
702	野萓草行く手妨ぐほどに咲き	萱草の花	夏	14.7.17.
703	大海原水切り見せて飛魚（あご）走る	飛魚	夏	14.7.17.
704	日本晴れ大海原を飛魚（あご）滑空	飛魚	夏	14.7.17.
705	白波を跨ぐがごとく飛魚（あご）の影	飛魚	夏	14.7.17.
706	仕事着の白き板前水を打つ	打水	夏	14.7.17.
707	水打ちて夜を迎へる神楽坂	打水	夏	14.7.17.
708	水打って軒に盛り塩置く仲居	打水	夏	14.7.17.
709	打水を無視して野良の過りたり	打水	夏	14.7.17.
710	打水を手伝ふ幼濡れ鼠	打水	夏	14.7.17.
711	小料理屋打水済ませ軒に塩	打水	夏	14.7.18.
712	客を待つ打水の露地神楽坂	打水	夏	14.7.18.
713	水打ちて風招きゐる神楽坂	水鶏	夏	14.7.18.
714	水鶏啼くあれを叩くと詠むべきか	水鶏	夏	14.7.18.
715	餌喰ひつ水鶏啼く声騒がしき	水鶏	夏	14.7.18.
716	水鶏笛これも雑滅危惧種かな	水鶏笛	夏	14.7.18.
717	水鶏来て老ひ独り居の戸を叩け	水鶏	夏	14.7.18.
718	叩く雨叩き返せし水鶏かな	水鶏	夏	14.7.18.
719	割烹着姿のママが水打てり	打水	夏	14.7.18.
720	打水を終へて盛り塩清々し	打水	夏	14.7.18.
721	鉄棒に浮きし赤錆原発忌	原発忌	夏	14.7.19.
722	鳥ひそみ猫も歩かぬ大暑かな	大暑	夏	14.7.19.
723	熱中症罹ればころり大暑かな	大暑	夏	14.7.19.
724	お接待麦茶をごくり大暑かな	大暑	夏	14.7.19.
725	大暑よし溽暑の響き息苦し	大暑・溽暑	夏	14.7.19.
726	水鶏呼ぶ笛吹川の朝ぼらけ	水鶏笛	夏	14.7.19.
727	聞くことも見たこともなし水鶏笛	水鶏笛	夏	14.7.19.
728	水鶏来て自ら笛を吹きにけり	水鶏	夏	14.7.19.
729	高下駄の板前が出て水打てり	打水	夏	14.7.19.
730	駆け落ちと噂の夫婦水を打つ	打水	夏	14.7.19.
731	焼きもちを堪へつ女水を打つ	打水	夏	14.7.20.
732	ひとバケツ水打ち終へて風湧けり	打水	夏	14.7.20.
733	打水を終へて盛り塩清々し	打水	夏	14.7.20.
734	放哉の伝記読み切る夜長かな（季語：夜長＝秋）	夜長	秋	14.7.20.
735	長き夜や放哉紡ぐ吐息の句	夜長	秋	14.7.20.
736	明易やトイレに立てば鳥の声	明易	夏	14.7.20.
737	短夜や「語る兜太」が面白い	短夜	夏	14.7.20.
738	朝涼や顔洗ふ前三句でき	朝涼	夏	14.7.20.
739	明易の戸口に灯る常夜灯	明易	夏	14.7.20.
740	朝曇りずしりと重き外気かな	朝曇	夏	14.7.20.
741	白南風に木々の葉揺れて丸い雲	白南風	夏	14.7.21.
742	雲の峰いかに崩るか見たきもの	雲の峰	夏	14.7.21.
743	レリーフの富士を浮かべて青簾	青簾	夏	14.7.21.
744	無人駅蠅取リボンに虫無数	蠅取りリボン	夏	14.7.21.
745	すいすいと箱釣金魚十匹目	箱釣	夏	14.7.21.
746	早よ喰へとばかりに煮立つ泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.7.21.
747	松落葉優しくうなじ刺しにけり	松落葉	夏	14.7.21.
748	さらさらと音するように松落葉	松落葉	夏	14.7.21.
749	夏わらび日を経ず羊歯に姿替へ	夏蕨	夏	14.7.21.
750	山宿の膳を飾りし夏蕨	夏蕨	夏	14.7.21.
751	山宿の膳にうれしい夏蕨	夏蕨	夏	14.7.22.
752	山道に見つけてしゃがむ夏蕨	夏蕨	夏	14.7.22.
753	夏わらび主婦顔になる山ガール	夏蕨	夏	14.7.22.
754	水貝の砕氷と言ふ玉座かな	水貝	夏	14.7.22.
755	天道虫逃げも隠れもせぬ衣裳	天道虫	夏	14.7.22.
756	蜻蛉見て怖いと逃げる都会の子	蜻蛉	夏	14.7.22.
757	七月が明け巻絹の花咲き揃ふ	七月	夏	14.7.22.
758	七月が明け七月の風よぎる	七月	夏	14.7.22.
759	七月が明け七月の蒼い空	七月	夏	14.7.22.
760	夏の菊香の薄けれど魁(さきがけ）り	夏菊	夏	14.7.22.
761	茎太き山百合揺れしなぞへ過ぐ	山百合	夏	14.7.23.
762	茎太き山百合揺らし風渡る	山百合	夏	14.7.23.
763	海風に撓ひて揺れる夾竹桃	夾竹桃	夏	14.7.23.
764	夏暁の狭庭に立てば露こぼる	夏暁	夏	14.7.23.
765	道をしへ教へ飽きたか道をそれ	道をしへ（昆虫）	夏	14.7.23.
766	黄金虫仰向けのまま死んだふり	黄金虫	夏	14.7.23.
767	夕風に青鬼灯の頷けり	青鬼灯	夏	14.7.23.
768	炎天に霧かと仰ぐ日照雨なり	炎天	夏	14.7.23.
769	炎天に頬湿らすは日照雨なり	日照雨	夏	14.7.23.
770	炎天に薄雲見上ぐ日照雨なり	日照雨	夏	14.7.23.
771	露払ひすぐに飽きたる道をしへ	道をしへ	夏	14.7.24.
772	わが歩速心得ゐたる道をしへ	道をしへ	夏	14.7.24.
773	道をしへ追い越して行く陸上部	道をしへ	夏	14.7.24.
774	道をしへそこどいてくれ火急なり	道をしへ	夏	14.7.24.
775	道をしへ道空けてくれ火急なり	道をしへ	夏	14.7.24.
776	覆水は盆に戻らず蛇の衣	蛇の衣	夏	14.7.24.
777	青春は遠くに去りて蛇の衣	蛇の衣	夏	14.7.24.
778	海酸漿ぶいと鳴らせし祭の日	海酸漿	夏	14.7.24.
779	貝はなぜ女陰に似るや大鮑	鮑	夏	14.7.24.
780	蛤がひょいと伸ばせし象の鼻	蛤	夏	14.7.24.
781	明易の戸口に淡き常夜灯	明易	夏	14.7.25.
782	打水を終へて盛り塩つつましく	打水	夏	14.7.25.
783	土用蜆一椀旨き朝餉かな	土用蜆	夏	14.7.25.
784	草取りや畑に蔓延る滑莧（すべりひゆ）	滑莧	夏	14.7.25.
785	濠埋める布袋葵や湯築城	布袋葵	夏	14.7.25.
786	うっすらと産毛の光るトマト捥ぐ	トマト	夏	14.7.25.
787	鴫焼を一皿置ひて独り酒	鴫焼	夏	14.7.25.
788	茄子漬の色もおかずの朝餉かな	茄子漬	夏	14.7.25.
789	花蘇鉄時計回りの車止め	花蘇鉄	夏	14.7.25.
790	青田分け新道と言ふ名の田舎道	青田	夏	14.7.25.
791	バス降りてゆっくり開く白日傘	白日傘	夏	14.7.26.
792	緑色のビールを飲みしデートの日	ビール	夏	14.7.26.
793	冷酒のほどよく回りせいろ食ふ	冷酒	夏	14.7.26.
794	冷酒の酔ひ寸止めのせいろ蕎麦	冷酒	夏	14.7.26.
795	心太鼻走り抜く辛子かな	心太	夏	14.7.26.
796	土用鰻食はるる前に餌喰らふ	土用鰻	夏	14.7.26.
797	蹴飛ばせし夏布団寄す朝まだき	夏布団	夏	14.7.26.
798	籐椅子や父祖三代の昼寝かな	籐椅子	夏	14.7.26.
799	天花粉浴びて真白き孫のちん	天花粉	夏	14.7.26.
800	天花粉畳に散らし跳ねる孫	天花粉	夏	14.7.26.
801	風鈴が車内に響くローカル線	風鈴	夏	14.7.27.
802	ふと見れば水くれと呼ぶ釣忍	釣忍	夏	14.7.27.
803	ビニプール子らが残せし日向水	日向水	夏	14.7.27.
804	行水や夕日が丘の物語	行水	夏	14.7.27.
805	バスタブに泡を飛ばしてシャワー浴ぶ	シャワー	夏	14.7.27.
806	水喧嘩知らぬ農夫や田水揺る	水喧嘩	夏	14.7.27.
807	笛吹川鵜匠も浸かる徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.7.27.
808	水圧ででこを打ちたり箱眼鏡	箱眼鏡	夏	14.7.27.
809	大皿に生きて盛らるる船料理	船料理	夏	14.7.27.
810	だだこねて床に大の字冷房車	冷房車	夏	14.7.27.
811	念のため三度潜りし茅の輪かな	茅の輪	夏	14.7.28.
812	潮騒の響きにも似て蚊喰鳥	蚊喰鳥	夏	14.7.28.
813	かはたれの空乱舞する蚊喰鳥	蚊喰鳥	夏	14.7.28.
814	かはたれの空ざわめかす蚊喰鳥	蚊喰鳥	夏	14.7.28.
815	葉の一枚ずつに蹲踞の雨蛙	雨蛙	夏	14.7.28.
816	どの葉にも葉と色同じ青蛙	青蛙	夏	14.7.28.
817	ひょいと移りまた蹲踞する雨蛙	雨蛙	夏	14.7.28.
818	羨まし抜けても生へる羽抜鳥	羽抜鶏	夏	14.7.28.
819	羽抜鳥ひと羽捨てて立ち去りぬ	羽抜鶏	夏	14.7.28.
820	鷭の子が水脈に転げつ親追へり	鷭	夏	14.7.28.
821	白鷺の咥へし泥鰌揺る田水	白鷺	夏	14.7.29.
822	白鷺の嘴の泥鰌や田水揺る	白鷺	夏	14.7.29.
823	田の上を掠めて過る夏燕	夏燕	夏	14.7.29.
824	銀鱗を見せて捉はる濁り鮒	濁り鮒	夏	14.7.29.
825	水玉の模様貫く天道虫	天道虫	夏	14.7.29.
826	あめんぼう地団駄踏めど水固し	水馬	夏	14.7.29.
827	松落葉そっとうなじ刺しにけり	松落葉	夏	14.7.29.
828	エアコンも気息奄々大暑かな	大暑	夏	14.7.29.
829	室外機唸り続ける大暑かな	大暑	夏	14.7.29.
830	内堀に石垣映る大暑かな	大暑	夏	14.7.29.
831	内堀の水黒ずみし大暑かな	大暑	夏	14.7.30.
832	乳首吸ふ幼の首の汗疹かな	汗疹	夏	14.7.30.
833	大神殿かくやとばかり雲の峰	雲の峰	夏	14.7.30.
834	浜小屋に人の影なし雲の峰	雲の峰	夏	14.7.30.
835	渓流の水音高し雲の峰	雲の峰	夏	14.7.30.
836	渓流の岩に人影雲の峰	雲の峰	夏	14.7.30.
837	渓流を風吹き抜けて雲の峰	雲の峰	夏	14.7.30.
838	プロメテのぬつと出そうな雲の峰	雲の峰	夏	14.7.30.
839	連山の背を湧き昇る夏の雲	夏の雲	夏	14.7.30.
840	カクテルもオーシャンブルー南吹く	南吹く	夏	14.7.30.
841	白南風や鳶螺旋の頂に	白南風（しろはえ）	夏	14.7.31.
842	南風に螺旋を描き鳶飛ぶ	南風	夏	14.7.31.
843	もろ肌になりて汗拭く年増海女	汗	夏	14.7.31.
844	山並みを少し歪めて夏霞	夏霞	夏	14.7.31.
845	雲海や「暫く」の見得切りて不動	雲海	夏	14.7.31.
846	青田波北へ北へと寄せにけり	青田波	夏	14.7.31.
847	Ｔシャツが吾夏衣髭を剃る	夏衣	夏	14.7.31.
848	あめんぼう四肢突っ張れど滑るだけ	あめんぼう	夏	14.7.31.
849	あめんぼう押せど引けども水固し	あめんぼう	夏	14.7.31.
850	ガス弾け口元湿るラムネかな	ラムネ	夏	14.7.31.
851	しゃきしゃきと匙切り込ませ掻き氷	かき氷	夏	14.8.1.
852	べろ一面青く染まりしかき氷	かき氷	夏	14.8.1.
853	氷あずき最後に食べし夏はいつ	氷あずき・夏	夏	14.8.1.
854	舌しびれ匙舐め返す氷水	氷水	夏	14.8.1.
855	大薬缶麦茶を注ぐお接待	麦茶	夏	14.8.1.
856	蜜豆はさて置き一服吸ふ女	蜜豆	夏	14.8.1.
857	たも握り蜻蛉追ふ子や走馬灯	走馬灯	夏	14.8.1.
858	笛吹の川中あゆむ徒歩鵜飼	鵜飼	夏	14.8.1.
859	腰までも水に浸かりて徒歩鵜飼	鵜飼	夏	14.8.1.
860	音無くてなぜか寂しい遠花火	遠花火	夏	14.8.1.
861	髪洗ひ顔の大きく見へる妻	髪洗ふ	夏	14.8.2.
862	ふと目覚め余命を思ふ夜長かな	夜長	秋	14.8.2.
863	わずかなる余命を思ふ夜長かな	夜長	秋	14.8.2.
864	ビル陰にひそと夜長の占い師	夜長	秋	14.8.2.
865	占い師ひそと客待つ夜長かな	夜長	秋	14.8.2.
866	終の庵放哉独り夜長し	夜長	秋	14.8.2.
867	上水や毒を探知の鯉の群れ	鯉	夏	14.8.2.
868	箱釣りの金魚死なずに雌を追ふ	金魚	夏	14.8.2.
869	甘だれの蝦蛄の握りを箸で食ふ	蝦蛄	夏	14.8.2.
870	すっと出る胡瓜一本味噌で食ふ	胡瓜	夏	14.8.2.
871	舟虫の縺れもなしに散りにけり	舟虫	夏	14.8.3.
872	浅葱斑千キロの海へ旅立ちぬ	蝶	夏	14.8.3.
873	吾ここにありとばかりに天道虫	天道虫	夏	14.8.3.
874	孑孑を脅せば沈む速さかな	孑孑	夏	14.8.3.
875	まくなぎのどっと押し寄す眼鼻口	まくなぎ（めまとひ）	夏	14.8.3.
876	蜘蛛の子の外へ外へと散りにけり	蜘蛛	夏	14.8.3.
877	まくなぎを徒手空拳でかき分けり	まくなぎ	夏	14.8.3.
878	まくなぎに徒手空拳で突っ込めり	まくなぎ	夏	14.8.3.
879	まくなぎやニヤミスもなく飛ぶ不思議	まくなぎ	夏	14.8.3.
880	反省を促し梅雨の音静か	梅雨	夏	14.8.3.
881	七夕や逢瀬妨ぐ雨の音	七夕	秋	14.8.4.
882	遠距離の恋の元祖や星迎	腰迎	秋	14.8.4.
883	数多背にまばたき交す星二つ	二星	秋	14.8.4.
884	女御更衣針と糸手に乞巧奠	乞巧奠	秋	14.8.4.
885	牛車の音近づき来たり星の恋	星の恋	秋	14.8.4.
886	雨に身を清めつ待てる織女かな	織女	秋	14.8.4.
887	雨に身を清め彦星待つ織女	織女	夏	14.8.4.
888	雲海や「暫く」の見得そそり立つ	雲海	夏	14.8.4.
889	箱眼鏡あわて見直す怪魚かな	箱眼鏡	夏	14.8.4.
890	箱眼鏡たしかに怪魚過りけり	箱眼鏡	夏	14.8.4.
891	長き夜も議論を尽せ平和憲法	夜長	夏	14.8.5.
892	沖縄を焼き尽くしたり敗戦忌	敗戦忌	夏	14.8.5.
893	長崎の鐘鳴り響け原爆忌	原爆忌	夏	14.8.5.
894	風通り鼾も軽き昼寝かな	昼寝	夏	14.8.5.
895	アルプフォルンこだまとなりて山開	山開	夏	14.8.5.
896	アルプフォルン御嶽山の山開く	山開	夏	14.8.5.
897	浅葱斑（あさぎまだら）ふらりと海へ旅立ちぬ	揚羽蝶（＝浅葱斑）	夏	14.8.5.
898	浅葱斑千キロの海へ独り旅	揚羽蝶	夏	14.8.5.
899	浅葱斑万里の海へゆらゆらと	揚羽蝶	夏	14.8.5.
900	大川の花火見下ろす観覧塔	花火	夏	14.8.5.
901	夏祭汗飛び散らす練り神輿	祭り・汗・神輿	夏	14.8.6.
902	ちちぽぽと鼓の音やたかしの忌	たかし忌	夏	14.8.6.
903	缶を切る手間暇要らぬ不死男の忌	不死男忌	夏	14.8.6.
904	羽抜鳥ひと羽置ひて立ち去りぬ	羽抜鶏	夏	14.8.6.
905	かはたれの空のざわめき蚊喰鳥	蚊喰鳥	夏	14.8.6.
906	赤錆の浮きし鉄棒原発忌	原発忌	夏	14.8.6.
907	赤錆の浮きし鉄棒浪江の夏	夏	夏	14.8.6.
908	戦争がお出でおいでと夏木立	夏木立	夏	14.8.6.
909	戦争の見へ隠れする夏木立	夏木立	夏	14.8.6.
910	戦争の点滅続く夏木立	夏木立	夏	14.8.6.
911	風よぎり鼾も軽き昼寝かな	昼寝	夏	14.8.7.
912	長き夜や放哉独り庵に坐す	夜長	秋	14.8.7.
913	庵に独り放哉のゐる夜長かな	夜長	秋	14.8.7.
914	占い師黙と客待つ夜長かな	夜長	秋	14.8.7.
915	面脱ぎし少女剣士の頬の汗	汗	秋	14.8.7.
916	面脱ぎし少女剣士の汗凛々し	汗	夏	14.8.7.
917	つくづくと広大無辺星月夜	星月夜	秋	14.8.7.
918	無数とはこれのことかと星月夜	星月夜	秋	14.8.7.
919	それぞれが光年遥か星月夜	星月夜	秋	14.8.7.
920	園児らは水着姿で水を打ち	打水	夏	14.8.7.
921	超台風むち打ちの刑待つこころ	台風	秋	14.8.8.
922	どうにでもしやがれと待つ野分	野分	秋	14.8.8.
913	超台風近づくをただ待つばかり	台風	秋	14.8.8.
914	鳥も虫も息ひそめゐる野分前	野分	秋	14.8.8.
915	白足袋で大路駆け抜く祭かな	祭	夏	14.8.8.
916	足袋の色黒ずみ戻る神輿かな	神輿	夏	14.8.8.
917	言問を渡る浴衣や川開	川開	夏	14.8.8.
918	川開電気ブランも久しぶり	川開	夏	14.8.8.
919	一の花火揚りて一の大ジョッキ	花火	夏	14.8.8.
920	倶利伽羅が揃ひ踏みする夏祭り	夏祭り	夏	14.8.8.
921	背を押され足を踏まれつ神輿追ふ	神輿	夏	14.8.9.
922	長き夜や柱の陰の占師	夜長	秋	14.8.9.
923	ひっそりと客待つ易者夜長かな	夜長	秋	14.8.9.
924	上水の流れを隠し青胡桃	青胡桃	夏	14.8.9.
925	孫終へし中間テスト青胡桃	青胡桃	夏	14.8.9.
926	中間のテスト終りぬ青胡桃	青胡桃	夏	14.8.9.
927	葉の陰にごつりごつりと青胡桃	青胡桃	夏	14.8.9.
928	号泣の記者会見や青胡桃	青胡桃	夏	14.8.9.
929	号泣もお笑ひ芸へ青胡桃	青胡桃	夏	14.8.9.
930	号泣に朝鮮飲みも青胡桃	青胡桃	夏	14.8.9.
931	風強く枝揺れさわぐ青胡桃	青胡桃	夏	14.8.10.
932	葉がさわぎ枝揺れ止まぬ青胡桃	青胡桃	夏	14.8.10.
933	枝揺する風に動ぜず青胡桃	青胡桃	夏	14.8.10.
934	葉の色に紛れてごつき青胡桃	青胡桃	夏	14.8.10.
935	長き夜の客待つ易者無表情	夜長	秋	14.8.10.
936	長き夜や客待つ易者ぽつねんと	夜長	秋	14.8.10.
937	上水に枝を伸ばして青胡桃	青胡桃	夏	14.8.10.
938	するすると枝走る栗鼠青胡桃	青胡桃	夏	14.8.10.
939	しばらくは見ないでくれと羽抜鳥	羽抜鳥（鶏）	夏	14.8.10.
940	散らばりし羽毛突つけり羽抜鶏	羽抜鳥	夏	14.8.10.
941	雲流れ季節うつらふ羽抜鳥	羽抜鳥	夏	14.8.11.
942	鳥肌を見せて餌食ふ羽抜鶏	羽抜鳥	夏	14.8.11.
943	水鶏呼ぶ里の川辺の朝ぼらけ	水鶏	夏	14.8.11.
944	水鶏戸を叩けど主は早寝かな	水鶏	夏	14.8.11.
945	人も鵜も流れに浸る徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.8.11.
946	笛吹川鵜匠も入りて徒歩鵜飼	鵜飼	夏	14.8.11.
947	人と鵜の瀬に鮎を追ふ徒歩鵜飼	鵜飼	夏	14.8.11.
948	笛吹の川苔滑る徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.8.11.
949	高下駄の若き板前水を打つ	打水	夏	14.8.11.
950	高下駄の板前若し水を打つ	打水	夏	14.8.11.
951	ごっつんと舳ぶつけし貸ボート	ボート	夏	14.8.12.
952	漕ぐ男見つめる女貸ボート	ボート	夏	14.8.12.
953	男がなぜオール持つのか貸ボート	ボート	夏	14.8.12.
954	男漕ぎ女はスマホ貸ボート	ボート	夏	14.8.12.
955	唇を紫にして子らプール	プール	夏	14.8.12.
956	短パンの生足並ぶ冷房車	冷房車	夏	14.8.12.
957	日焼子の笑顔の瞳つぶらなり	日焼	夏	14.8.12.
958	日焼子の瞳つぶらに笑ひをり	日焼	夏	14.8.12.
959	打ち止めの花火静かに消へにけり	花火	夏	14.8.12.
960	風呼んで面を見せる裏葉草	裏葉草（風知草）	夏	14.8.12.
961	常づねは面を伏せし風知草	風知草	夏	14.8.13.
962	そよろ吹く風に頷き裏葉草	裏葉草	夏	14.8.13.
963	よぎる影そっと頷く風知草	風知草	夏	14.8.13.
964	天を向き地に背を見せて朴の花	朴の花	夏	14.8.13.
965	芳香を空に放ちて朴の花	朴の花	夏	14.8.13.
966	朴散華一辨ずつが緩びたり	朴散華	夏	14.8.13.
967	み仏に芳香捧ぐ朴の花	朴の花	夏	14.8.13.
968	朴の花支へる葉にも香を遺し	朴の花	夏	14.8.13.
969	華やかに蕊天に向け朴の花	朴の花	夏	14.8.13.
970	風向きの変はりし国や風知草	風知草	夏	14.8.13.
971	蟇蛙腹こすりつつ一歩二歩	蟇蛙	夏	14.8.14.
972	己が重さ耐へて蹲踞の蟾蜍	蟾蜍	夏	14.8.14.
973	稀勢の里真似て渋面蟇蛙	蟇蛙	夏	14.8.14.
974	鮎獲れど喉を通らぬ鵜の哀れ	鵜	夏	14.8.14.
975	嘴切られ嫁も貰へぬ荒鵜かな	荒鵜	夏	14.8.14.
976	瞼縫はれ囮哀しき海鵜かな	鵜	夏	14.8.14.
977	上前を撥ねる鵜飼や鵜は哀し	鵜飼・鵜	夏	14.8.14.
978	鵜籠の鵜拉致被害者に酷似して	鵜	夏	14.8.14.
979	もうやだと駄々を捏ねゐる荒鵜かな	荒鵜	夏	14.8.14.
980	一度くらい恋をさせたし鵜飼の鵜	鵜飼・鵜	夏	14.8.14.
981	雄ばかり集めし荒鵜殺風景	荒鵜	夏	14.8.15.
982	笛吹やきつき流れの徒歩鵜飼	鵜飼	夏	14.8.15.
983	笛吹の急流上る徒歩鵜かな	鵜	夏	14.8.15.
984	笛吹きのきつき流れや徒歩鵜飼	鵜飼	夏	14.8.15.
985	恵林寺や青葉が映へる石の庭	青葉	夏	14.8.15.
986	青葉風抹茶いただく放光寺	青葉	夏	14.8.15.
987	爽やかに蓮の花咲く放光寺	蓮の花	夏	14.8.15.
988	爽やかに蓮の花や放光寺	蓮の花	夏	14.8.15.
989	笛吹の空軽やかに夏燕	夏燕	夏	14.8.15.
990	軽やかに笛吹よぎる夏燕	夏燕	夏	14.8.15.
991	ほうとうの喉焼く熱さ冷奴	冷奴	夏	14.8.16.
992	ほうとうの熱き冷ませと冷奴	冷奴	夏	14.8.16.
993	ほうとうの熱き気遣ふ冷奴	冷奴	夏	14.8.16.
994	大鮑女陰はなぜか貝に似て	鮑	夏	14.8.16.
995	ＳＰでシャンソンを聴く巴里祭	巴里祭	夏	14.8.16.
996	竹針でダミアを聴けり巴里祭	巴里祭	夏	14.8.16.
997	女子トイレいつも列でき巴里祭	巴里祭	夏	14.8.16.
998	巴里祭口に上らず過ぎにけり	巴里祭	夏	14.8.16.
999	恵林寺や青葉に光る武田菱	青葉	夏	14.8.16.
1000	苔踏んで笛吹川の徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.8.16.

♪ＢＧＭ：Ｄｅｂｕｓｓｙ［Ａｒａｂｅｓｋ］arranged by Reinmusik♪

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