鈴童の遊び 一日十句以上千句を詠む

(第13回）

No.	句	季　語	季	作句日
1	ほうとうの熱々に付く冷奴	冷奴	夏	14.7.15.
2	餺飥（ほうとう）の熱きを冷ます冷奴	冷奴	夏	14.7.15.
3	風よぎり音がしたかに小判草	小判草	夏	14.7.15.
4	昼顔や人の手借りず咲きにけり	昼顔	夏	14.7.15.
5	月見草よべの思い出秘めて閉ず	月見草	夏	14.7.15.
6	擬宝珠の花招きゐる古寺の庭	擬宝珠の花	夏	14.7.15.
7	擬宝珠の花に招かれ古寺の庭	擬宝珠の花	夏	14.7.15.
8	蒲の穂の人を寄らせる磁力かな	蒲の穂	夏	14.7.15.
9	密生の葎抜き出る夏薊	夏薊	夏	14.7.15.
10	密生の葎に茎立つ夏薊	夏薊	夏	14.7.15.
11	頭頂の紅色清し夏薊	夏薊	夏	14.7.16.
12	鮮紅の花頭頂に夏薊	夏薊	夏	14.7.16.
13	笛吹の川の瀬速し夏薊	夏薊	夏	14.7.16.
14	笛吹の徒歩鵜間近や瀬は速し	鵜飼	夏	14.7.16.
15	早口で言ひ立つ首相遠花火	遠花火	夏	14.7.16.
16	笛吹川の川の瀬速し夏薊	夏薊	夏	14.7.16.
17	餺飥（ほうとう）の熱きに添えし冷奴	冷奴	夏	14.7.16.
18	擬宝珠の花乱れ咲く古寺の庭	擬宝珠の花	夏	14.7.16.
19	ほうとうの煮立ちし盆に冷奴	冷奴	夏	14.7.16.
20	青葉風抹茶の碗に放光寺	青葉	夏	14.7.16.
21	苔踏んで笛吹川の徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.7.17.
22	笛吹川（ふえふき）の早き流れや夏薊	夏薊	夏	14.7.17.
23	笛吹川（ふえふき）の流れは早し夏薊	夏薊	夏	14.7.17.
24	恵林寺や青葉に映ゆる武田菱	青葉	夏	14.7.17.
25	餺飥（ほうとう）の鉄鍋に添へ冷奴	冷奴	夏	14.7.17.
26	擬宝珠の花乱れ咲く古刹かな	擬宝珠の花	夏	14.7.17.
27	驟雨去り小さきワイン醸造所	驟雨	夏	14.7.17.
28	水車小屋水音高く夏燕	夏燕	夏	14.7.17.
29	檜扇や日照雨よぎりて露残す	檜扇	夏	14.7.17.
30	花擬宝珠古刹の庭に乱れ咲く	擬宝珠の花	夏	14.7.17.
31	花擬宝珠乱れ咲きたる古刹かな	擬宝珠の花	夏	14.7.18.
32	多摩河原塒（ねぐら）に憩ふ夏燕	夏燕	夏	14.7.18.
33	多摩河原塒に集ふ夏燕	夏燕	夏	14.7.18.
34	舞い上がり舞い降り自在夏つばめ	夏燕	夏	14.7.18.
35	二万羽の憩ふ河原や夏つばめ	夏燕	夏	14.7.18.
36	塒（とや）に就く多摩の河原の夏つばめ	夏燕	夏	14.7.18.
37	多摩河原一夜の夢の夏つばめ	夏燕	夏	14.7.18.
38	居住まいを正し端居の本を閉ず	端居	夏	14.7.18.
39	宵闇の迫る端居や本を置く	端居	夏	14.7.18.
40	パソコンに向ひていつか三尺寝	三尺寝	夏	14.7.18.
41	海の日や猫あくびして過りけり	海の日	夏	14.7.19.
42	蝉の声降りしきりたる原爆忌	原爆忌	夏	14.7.19.
43	阿鼻叫喚地獄見せた日原爆忌	原爆忌	夏	14.7.19.
44	元安川流れに刻む原爆忌	原爆忌	夏	14.7.19.
45	南洋場所の名懐かしき名古屋場所	名古屋場所	夏	14.7.19.
46	野放図な声轟かす牛蛙	牛蛙	夏	14.7.19.
47	胴間声かくやとばかり牛蛙	牛蛙	夏	14.7.19.
48	牛蛙伴侶求めて胴間声	牛蛙	夏	14.7.19.
49	急停止また走り出す青蜥蜴	蜥蜴	夏	14.7.19.
50	白い腹みせて溺死の蜥蜴かな	蜥蜴	夏	14.7.19.
51	ぽぽぽぽと鳴いて筒鳥名を教へ	筒鳥	夏	14.7.20.
52	恵林寺や青葉の甍武田菱	青葉	夏	14.7.20.
53	砂時計こぼれ続けて原爆忌	原爆忌	夏	14.7.20.
54	性能のテストをされて原爆忌	原爆忌	夏	14.7.20.
55	ピカドンで止め差されし原爆忌	原爆忌	夏	14.7.20.
56	語り部のしんがりとなる原爆忌	原爆忌	夏	14.7.20.
57	蛇の衣はっと構へし蛇嫌い	蛇の衣	夏	14.7.20.
58	急流を軽々よぎる蛇の技	蛇	夏	14.7.20.
59	蛇差せし指えんがちょと擦る子ら	蛇	夏	14.7.20.
60	蝮てふ綽名の男ゐたりけり	蝮	夏	14.7.20.
61	舟虫や波被りても皆不動	舟虫	夏	14.7.21.
62	変身で蝶よ花よの毛虫かな	毛虫	夏	14.7.21.
63	げぢと呼ぶ綽名の上司ゐる不幸	げじげじ	夏	14.7.21.
64	山蛭の山道遠く老ひにけり	蛭	夏	14.7.21.
65	気が付けば後ろ禿をり夏燕	夏燕	夏	14.7.21.
66	恵林寺や青葉に映ゆる武田菱	青葉	夏	14.7.21.
67	逝きし友面影浮ぶ遠花火	遠花火	夏	14.7.21.
68	くちなわや抜き手も見せず泳ぎけり（ぬく）	くちなわ	夏	14.7.21.
69	尺蠖や逃げるときにも尺を取り	尺蠖	夏	14.7.21.
70	フィットネスクラブで人も尺蠖に	尺蠖	夏	14.7.21.
71	大尺蠖のた打つフィットネスクラブ	尺蠖	夏	14.7.22.
72	昇り詰め尺蠖天に頭振る	尺蠖	夏	14.7.22.
73	尺蠖やくの字くの字の大レース	尺蠖	夏	14.7.22.
74	新聞を取れとこわもて百日紅	百日紅	夏	14.7.22.
75	兜太翁天衣無縫に百日紅	百日紅	夏	14.7.22.
76	紫陽花の見飽きしころに梅雨空けり	紫陽花・梅雨明け	夏	14.7.22.
77	かはたれの空ざわめかす蚊喰鳥	蚊喰鳥	夏	14.7.22.
78	マリア像吹き飛ばしたる長崎忌	長崎忌	夏	14.7.22.
79	マリア像瓦礫となりぬ長崎忌	長崎忌	夏	14.7.22.
80	マリア像深き眼窩や長崎忌	長崎忌	夏	14.7.22.
81	焼マリア深き眼窩の長崎忌	長崎忌	夏	14.7.23.
82	浦上の空に迎火秋ぼたる	迎え火・秋蛍	秋	14.7.23.
83	味噌添へて胡瓜ごろりと夏料理	胡瓜・夏料理	夏	14.7.23.
84	流れ落つ涙の谷の大暑かな	大暑	夏	14.7.23.
85	涙の谷流れ落ち行く大暑かな	大暑	夏	14.7.23.
86	吾に対峙四肢踏ん張りし蜥蜴かな	蜥蜴	夏	14.7.23.
87	ほうとうの熱々と喰ふ冷奴	冷奴	夏	14.7.23.
88	ほうとうの熱々に添へ冷奴	冷奴	夏	14.7.23.
89	しゃきしゃきと匙で音たて掻き氷	かき氷	夏	14.7.23.
90	用水路早き流れや夏薊	夏薊	夏	14.7.23.
91	ちびとでぶ試しに投下原爆忌 （広島原爆＝リトルボーイ　長崎原爆＝ファットマン）	原爆忌	夏	14.7.24.
92	おはぐろの川面に映る影も黒	おはぐろとんぼ	夏	14.7.24.
93	おはぐろのなにかさみしい飛翔かな	おはぐろとんぼ	夏	14.7.24.
94	急くことを厭ふお歯黒蜻蛉かな	おはぐろとんぼ	夏	14.7.24.
95	糸とんぼ止まりしものとともに揺れ	糸とんぼ	夏	14.7.24.
96	ピカドンの死語になりゆく原爆忌	原爆忌	夏	14.7.24.
97	赤錆の浮きし鉄棒敗戦忌	敗戦忌	夏	14.7.24.
98	西日背に富士黒々と夏つばめ	夏燕	夏	14.7.24.
99	袋から紅い顔出す夏の桃	夏の桃	夏	14.7.24.
100	朝ぼらけアメリカンブルー際立てり		夏	14.7.24.
101	赤富士の路地奥遠く燃へ立ちぬ	赤富士	夏	14.7.25.
102	道をしへけふもガイドの散歩道	道をしへ	夏	14.7.25.
103	氷片を一つ浮かべし冷し酒	冷酒	夏	14.7.25.
104	ざりがにを釣る子らの声梅雨明くる	梅雨明け	夏	14.7.25.
105	足元を見ずば香し紅蓮	蓮の花	夏	14.7.25.
106	掌に載せて愛でたや蓮の花	蓮の花	夏	14.7.25.
107	密生の葉陰にぽつり紅蓮	蓮の花	夏	14.7.25.
108	絵日傘の数に押されし大賀蓮・	蓮の花	夏	14.7.25.
109	昼近し花びら緩ぶ紅蓮	蓮の花	夏	14.7.25.
110	紅蓮散華迫りし夕間暮れ	蓮の花	夏	14.7.25.
111	悠久のいのちつなぎて蓮散華	蓮散華	夏	14.7.26.
112	古代蓮見守る甍薬師堂	蓮の花	夏	14.7.26.
113	散る刻を知りて咲きゐる蓮かな	蓮の花	夏	14.7.26.
114	み仏の御座肯へり蓮の花	蓮の花	夏	14.7.26.
115	打水に風鈴ちりと鳴りにけり	打水・ 風鈴	夏	14.7.26.
116	茗荷の子採りて刻んでおかかかけ	茗荷の子	夏	14.7.26.
117	繁りたる葉を分けて採る茗荷の子	茗荷の子	夏	14.7.26.
118	初穫りがいきなり二十茗荷の子	茗荷の子	夏	14.7.26.
119	吾庭の収穫うれし茗荷の子	茗荷の子	夏	14.7.26.
120	食欲のぐんと背を押す茗荷の子	茗荷の子	夏	14.7.26.
121	手土産に庭で採れたる茗荷の子	茗荷の子	夏	14.7.27.
122	夕食の膳に三品茗荷の子	茗荷の子	夏	14.7.27.
123	庭穫れと女将に渡す茗荷の子	茗荷の子	夏	14.7.27.
124	茗荷の子無農薬なり庭育ち	茗荷の子	夏	14.7.27.
125	茗荷の子刻めば始まる昼の宴	茗荷の子	夏	14.7.27.
126	水洗ひたちまち清し茗荷の子	茗荷の子	夏	14.7.27.
127	花揺るる風の道なり大賀蓮	蓮の花	夏	14.7.27.
128	風の道教へてくれし蓮の花	蓮の花	夏	14.7.27.
129	大賀蓮いのちつなぎし花緩ぶ	蓮の花	夏	14.7.27.
130	み仏の御座と顔寄す蓮の花	蓮の花	夏	14.7.27.
131	散り時を知りて緩ぶか古代蓮	蓮の花	夏	14.7.28.
132	戦争に聖戦あらじカンナ燃ゆ	カンナ	夏	14.7.28.
133	限界の集落の辻カンナ燃ゆ	カンナ	夏	14.7.28.
134	木苺に呼び止めらるる山の道	木苺	夏	14.7.28.
135	遠山にそのまま続く青田かな	青田	夏	14.7.28.
136	田水沸き湯当りしたる泥鰌かな	田水沸く	夏	14.7.28.
137	花茣蓙に胡坐をかけり民家園	花茣蓙	夏	14.7.28.
138	山法師花の上なる武甲山	山法師	夏	14.7.28.
139	夕暮れを待たず咲き初む月見草	月見草	夏	14.7.28.
140	玉葱の振り分け並ぶ納屋の軒	玉葱	夏	14.7.28.
141	新じゃがの小粒を選び煮転がし	新じゃが	夏	14.7.29.
142	水打って向ひの主婦と声交はす	打水	夏	14.7.29.
143	打水や地球の頭少し濡れ	打水	夏	14.7.29.
144	水を打つ若き板場の朴歯下駄	打水	夏	14.7.29.
145	葬儀屋の水を打ちをり胆冷ゆる	打水	夏	14.7.29.
146	いなびかり天の打水地を洗ふ	打水	夏	14.7.29.
147	水打てばむっと湧き立つ温気かな	打水	夏	14.7.29.
148	炎昼のバス停に立ち日陰なし	炎昼	夏	14.7.29.
149	ここに吾ありとばかりに縷紅草	縷紅草	夏	14.7.29.
150	縁石の代り務めし龍の髭	龍の髭	夏	14.7.29.
151	かっと目を覚まさせし花黄蜀葵	黄蜀葵	夏	14.7.30.
152	風呼んで大輪揺らす紅蜀葵	紅蜀葵	夏	14.7.30.
153	美しき雑草と化し姫女苑	姫女苑	夏	14.7.30.
154	宝鐸草かすかに揺れて見せにけり	宝鐸草	夏	14.7.30.
155	宝鐸草かすかに花を揺すりをり	宝鐸草	夏	14.7.30.
156	葬儀屋も打水をして客待つや	打水	夏	14.7.30.
157	叩きつけ跳ねてをさまる滝の水	滝	夏	14.7.30.
158	女陰とは不思議な言葉鮑見る	鮑	夏	14.7.30.
159	琉球処分いまなほ続く沖縄忌 （沖縄忌６月２３日）	沖縄忌	夏	14.7.30.
160	防弾のチョッキ着せられ沖縄忌	沖縄忌	夏	14.7.30.
161	いまもなほ醜の御楯か沖縄忌	沖縄忌	夏	14.7.31.
162	古希なほも防弾の島沖縄忌	沖縄忌	夏	14.7.31.
163	やまとんちゅう起こせし戦沖縄忌	沖縄忌	夏	14.7.31.
164	基地の島いつまで続く沖縄忌	沖縄忌	夏	14.7.31.
165	陰と書きほとと声にす黒揚羽	揚羽蝶	夏	14.7.31.
166	黒揚羽君にも陰の備はりて	揚羽蝶	夏	14.7.31.
167	陽根と陰に灯しの蛍舞ふ	蛍	夏	14.7.31.
168	海亀のつるつると生む卵かな	海亀	夏	14.7.31.
169	母の陰焼きし火の神カンナ燃ゆ	カンナ	夏	14.7.31.
170	玉葱の振り分け撓る納屋の軒	玉葱	夏	14.7.31.
171	夏草や彼方に青き富士の嶺	夏草	夏	14.8.1.
172	木漏れ日や日がな糸垂る浦島草	浦島草	夏	14.8.1.
173	林中になにを釣らんと浦島草	浦島草	夏	14.8.1.
174	鍬の柄についと止まりし鬼やんま	鬼やんま	夏	14.8.1.
175	蜻蛉も蜻蛉捕る子もをらぬ夏	蜻蛉	夏	14.8.1.
176	蟻地獄ありと認めつ跨ぎけり	蟻地獄	夏	14.8.1.
177	かなかなの鳴きし古刹の夕日蔭	蜩	秋	14.8.1.
178	たそがれを伝ふ蜩鳴き初めり	蜩	秋	14.8.1.
179	夕ひぐらし聴けば胸内風過る	蜩	秋	14.8.1.
180	夕ひぐらし下山急げと鳴きにけり	蜩	秋	14.8.1.
181	夕ひぐらし下山を督し鳴きにけり	蜩	秋	14.8.2.
182	大暑など屁の河童らし油虫	大暑	夏	14.8.2.
183	むずむずと紙魚こそばゆき書架の古書	紙魚・雲母虫・きらら	夏	14.8.2.
184	十年ぶり書架から抜きし本の紙魚	紙魚・雲母虫・きらら	夏	14.8.2.
185	虚を突かれページを走るきららかな	紙魚・雲母虫・きらら	夏	14.8.2.
186	一生を古事記で暮らす雲母あり	紙魚・雲母虫・きらら	夏	14.8.2.
187	書痴よりも本に親しむきららかな	紙魚・雲母虫・きらら	夏	14.8.2.
188	下戸も呼び口実はただ暑気払ひ	暑気払い	夏	14.8.2.
189	句会終へ後は楽しい暑気払ひ	暑気払い	夏	14.8.2.
190	海月とは刺しつ刺されつ喰ひ喰わはれ	海月	夏	14.8.2.
191	水着からちろとはみ出す恥毛かな	水着	夏	14.8.3.
192	かなかなの鳴きし古刹の大銀杏	ひぐらし	夏	14.8.3.
193	琉球処分解かれぬままに沖縄忌 （＝６月２３日）	沖縄忌	夏	14.8.3.
194	指おりつ少年詠めり夏の雲	夏の雲	夏	14.8.3.
195	古代蓮悠久を経て神々し	蓮	夏	14.8.3.
196	路地遊びする子らをらず茗荷の子	茗荷の子	夏	14.8.3.
197	夕涼み縁台将棋も廃れけり	涼み	夏	14.8.3.
198	目のくらむ吊り橋に立ち涼みをり （宮崎県綾町の照葉大吊橋）	涼み	夏	14.8.3.
199	目のくらむ吊り橋といふ涼み台	涼み	夏	14.8.3.
200	竹牀几ひょいと掛ければ蚊も来たり	竹牀几 ・蚊	夏	14.8.3.
201	金太郎腹掛けの子や天花粉	天花粉	夏	14.8.4.
202	青柿の落ちしを誰も見向かざる	青柿	夏	14.8.4.
203	一フィートフィルムを連ね沖縄忌	沖縄忌	夏	14.8.4.
204	一フィートフィルム繋ぎし沖縄忌	沖縄忌	夏	14.8.4.
205	一フィートフィルム繋ぎぬ沖縄忌	沖縄忌	夏	14.8.4.
206	一フィートフィルム語る沖縄忌	沖縄忌	夏	14.8.4.
207	一フィートフィルム繋げり沖縄忌	沖縄忌	夏	14.8.4.
208	水着からちろとはみ出す毛が一本	水着	夏	14.8.4.
209	生き延びていつか気づけば生身魂	生身魂	秋	14.8.4.
210	生身魂資格者揃ふ句会かな	生身魂	秋	14.8.4.
211	二発目を落せし底意長崎忌	長崎忌	秋	14.8.5.
212	夏と秋繋ぐ二つの原爆忌	原爆忌	夏・秋	14.8.5.
213	蚊遣火の煙を腰に枝払ひ	蚊遣火	夏	14.8.5.
214	風呼んで夏萩踊る川辺かな	夏萩	夏	14.8.5.
215	灸花だけを残して草むしり	灸花	夏	14.8.5.
216	野牡丹の紫まぶし染井墓地	野牡丹	夏	14.8.5.
217	凌霄花散り敷く道の血の臭ひ	凌霄花	夏	14.8.5.
218	向日葵の大輪支ふ茎不動	向日葵	夏	14.8.5.
219	見ないでと卍巴の蜥蜴かな	蜥蜴	夏	14.8.5.
220	庭先にしかと交はる蜥蜴かな	蜥蜴	夏	14.8.5.
221	媾合へる蜥蜴に慌て後じさり	蜥蜴	夏	14.8.6.
222	媾合へる蜥蜴慌てず媾合へり	蜥蜴	夏	14.8.6.
223	媾合へる蜥蜴慌てず果しけり	蜥蜴	夏	14.8.6.
224	媾合へる蜥蜴済まして離れけり	蜥蜴	夏	14.8.6.
225	交へる蜥蜴悠々済ましけり	蜥蜴	夏	14.8.6.
226	日の焦がす狭庭に耐へて花擬宝珠	花擬宝珠	夏	14.8.6.
227	古戸棚ニス塗る庭に花擬宝珠	花擬宝珠	夏	14.8.6.
228	千手仏おはす古刹や花擬宝珠	花擬宝珠	夏	14.8.6.
229	母と子の声過りたり花擬宝珠	花擬宝珠	夏	14.8.6.
230	花擬宝珠の茎にょきにょきと咲き初めり	花擬宝珠	夏	14.8.6.
231	観音の千手思はす花擬宝珠	花擬宝珠	夏	14.8.7.
232	道埋む実桑の甘き温気かな	桑の実	夏	14.8.7.
233	ハレもケも花色淡く擬宝珠咲く	花擬宝珠	夏	14.8.7.
234	千手仏一手一手に花擬宝珠	花擬宝珠	夏	14.8.7.
235	河骨の水中にまで金の鈴	河骨	夏	14.8.7.
236	おもむきは天地創造雲の峰	雲の峰	夏	14.8.7.
237	もくもくと山塊増やす雲の峰	雲の峰	夏	14.8.7.
238	噴煙を呑み込みそそる雲の峰	雲の峰	夏	14.8.7.
239	やすやすと切岸越ゆる青嵐	青嵐	夏	14.8.7.
240	青嵐吹き抜けラグビーノーサイド	青嵐	夏	14.8.7.
241	千手仏み手一つずつ花擬宝珠	花擬宝珠	夏	14.8.8.
242	切岸に鴎吹き寄る青嵐	青嵐	夏	14.8.8.
243	閑古鳥声する彼方大欅	閑古鳥	夏	14.8.8.
244	朝ぼらけ郭公の声届きけり	郭公	夏	14.8.8.
245	臆病もときに必要敗戦忌	敗戦忌	夏	14.8.8.
246	行け行けと解釈変へる敗戦忌	敗戦忌	夏	14.8.8.
247	立葵下から順に花の列	立葵	夏	14.8.8.
248	茎頭に花列届く立葵	立葵	夏	14.8.8.
249	花の列空へ空へと立葵	立葵	夏	14.8.8.
250	日の光すっくと受けて紅蜀葵	紅蜀葵	夏	14.8.9.
251	日に灼ける地蔵が辻の銭葵	銭葵	夏	14.8.9.
252	廃線の踏切跡や銭葵	銭葵	夏	14.8.9.
253	花葵かすかな風を教へけり	花葵	夏	14.8.9.
254	花葵かすかな風を告げにけり	花葵	夏	14.8.9.
255	鬨の声上げし若武者新松子	新松子	秋	14.8.9.
256	石段を上る片ヘに新松子	新松子	秋	14.8.9.
257	富士見櫓白壁映へる新松子	新松子	秋	14.8.9.
258	文庫本持ちて散歩に新松子	新松子	秋	14.8.9.
259	新松子みな正眼の構へなり	新松子	秋	14.8.9.
260	武者震ひ押さへ兼ねたる新松子	新松子	秋	14.8.9.
261	甲冑の初々しくも新松子	新松子	秋	14.8.10.
262	刃傷の松の廊下や新松子	新松子	秋	14.8.10.
263	新松子赤き単車の郵便夫	新松子	秋	14.8.10.
264	国宝の古びの塔や新松子	新松子	秋	14.8.10.
265	いとこ会みな老ひたれど新松子	新松子	秋	14.8.10.
266	欠伸してはっと引き締む新松子	新松子	秋	14.8.10.
267	草の花場所変るあり変へぬあり	草の花	秋	14.8.10.
268	草の花赤い胴着の散歩犬	草の花	秋	14.8.10.
269	草の花逃げも隠れもせず刈らる	草の花	秋	14.8.10.
270	草の花一顧だにせず刈り取られ	草の花	秋	14.8.10.
271	石けりも缶けりもなし草の花	草の花	秋	14.8.11.
272	ことごとく刈り取られゆく草の花	草の花	秋	14.8.11.
273	敗荷の裂け目広げて風渡る	敗荷	秋	14.8.11.
274	夕日浴び敗荷の池黒き影	敗荷	秋	14.8.11.
275	夕日浴び敗荷の池影伸ばす	敗荷	秋	14.8.11.
276	流燈の早や消へたるも下り行く	敗荷	秋	14.8.11.
277	流燈の肩寄せるあり離るあり	敗荷	秋	14.8.11.
278	黒南風や憎悪掻き立つ愚の哀し	黒南風	夏	14.8.11.
279	憲法忌できてはならじ五月闇	五月闇	夏	14.8.11.
280	国々の軋み際立つ溽暑かな	溽暑	夏	14.8.11.
281	山百合を千羽の鶴に加えけり	山百合	夏	14.8.12.
282	折り鶴の千羽目とせん山の百合	山百合	夏	14.8.12.
283	山百合を加えて仕上ぐ千羽鶴	山百合	夏	14.8.12.
284	山百合を祈りの鶴の千羽目に	山百合	夏	14.8.12.
285	折り鶴の重き祈りや広島忌	広島忌	夏	14.8.12.
286	ひっそりと白い影立つ花茗荷	花茗荷	夏	14.8.12.
287	見らるるを恥じらひて咲く花茗荷	花茗荷	夏	14.8.12.
288	ひそやかに咲きて萎みぬ花茗荷	花茗荷	夏	14.8.12.
289	土割りて密やかに咲く花茗荷	花茗荷	夏	14.8.12.
290	葭原の塒の寝息か秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.12.
291	葭原の塒寝静まる秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.13.
292	時合せ塒につぎつぎ夏燕	夏燕	夏	14.8.13.
293	時合せ塒に戻りし夏つばめ	夏燕	夏	14.8.13.
294	葭原の塒数万の秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.13.
295	寂として塒の河原の夏つばめ	葭・秋燕	夏	14.8.13.
296	肩寄せる塒の河原の夏つばめ	夏燕	夏	14.8.13.
297	河原埋め寝息流るる夏つばめ	夏燕	夏	14.8.13.
298	河原埋め夢結びゐる夏つばめ	夏燕	夏	14.8.13.
299	河原埋め憩いし夜の夏つばめ	夏燕	夏	14.8.13.
300	没る日や塒ふくらむ夏つばめ	夏燕	夏	14.8.13.
301	河原埋め眠りむさぼるか夏燕	夏燕	夏	14.8.14.
302	夏燕とやの河原に夢結ぶ	夏燕	夏	14.8.14.
303	夏つばめ塒の河原を夜風過ぐ	夏燕	夏	14.8.14.
304	葭原の塒の夜風や秋つばめ	葭・秋燕	夏	14.8.14.
305	夏つばめ塒広々と中河原	夏燕	夏	14.8.14.
306	数万が河原に褥（しとね）夏つばめ	夏燕	夏	14.8.14.
307	河原埋め夢路辿りし夏つばめ	夏燕	夏	14.8.14.
308	河原埋め夢路を辿る夏つばめ・	夏燕	夏	14.8.14.
309	河原埋め夢路辿るや夏つばめ	夏燕	夏	14.8.14.
310	二番子も河原を塒に夏つばめ	夏燕	夏	14.8.14.
311	数万の途方なき塒夏つばめ	夏燕	夏	14.8.15.
312	日の入りや塒（ねぐら）ふくらむ夏つばめ	夏燕	夏	14.8.15.
313	秋つばめ塒（とや）広々と葭の原	葭・秋燕	秋	14.8.15.
314	河原埋め夢路辿るや夏つばめ	夏つばめ	夏	14.8.15.
315	二番子も葭原塒に夏つばめ	夏つばめ	夏	14.8.15.
316	万を超す途方なき塒夏つばめ	夏つばめ	夏	14.8.15.
317	葭原に夢路を辿る秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.15.
318	送電線長き塒なり川鵜寝る	鵜	夏	14.8.15.
319	葭原の塒の夜風や秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.15.
320	葭の葉を塒に夢路の秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.15.
321	葭の葉に一夜を託す秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.16.
322	去ぬ日まで葭の塒居の秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.16.
323	夜風立つ塒の葭原秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.16.
324	秋燕や群れ戻り来る多摩川原	帰燕	秋	14.8.16.
325	秋燕の塒の葭原夜風立つ	葭・秋燕	秋	14.8.16.
326	葭原の葉擦れの塒や秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.16.
327	葭の葉の塒が揺るる秋つばめ	葭	秋	14.8.16.
328	大空で子に餌与ふ秋つばめ	帰燕	秋	14.8.16.
329	親が先ず南を目指す帰燕かな	帰燕	秋	14.8.16.
330	葭の塒旅立ち近き帰燕かな	葭・帰燕	秋	14.8.16.
331	夜風吹く葭の葉の塒秋つばめ	葭・秋燕	秋	14.8.17.
332	送電線川鵜千羽の日暮れかな	鵜	夏	14.8.17.
333	送電線ずらりと川鵜日の暮るる	鵜	夏	14.8.17.
334	群で身を守る理（ことわり）秋つばめ	秋つばめ	秋	14.8.17.
335	葭の原二万羽憩ふ帰燕かな	帰燕	秋	14.8.17.
336	葭原の塒に寝息の秋つばめ	秋つばめ	秋	14.8.17.
337	葭原を発ちて二万の帰燕かな	秋つばめ	秋	14.8.17.
338	群組んで南へ向かふ帰燕かな	秋つばめ	秋	14.8.17.
339	子と別れ葭の塒発つ帰燕かな	秋つばめ	秋	14.8.17.
340	親が先ず葭の塒発つ帰燕かな	秋つばめ	秋	14.8.17.
341	山百合を折りて千羽の鶴に添へ	山百合	夏	14.8.18.
342	一生を古事記で暮らす雲母かな	雲母	夏	14.8.18.
343	高齢の句仲間うちで生身魂	生身魂	秋	14.8.18.
344	近づく死まだ他人事に生身魂		秋	14.8.18.
345	門口にちょこと置かるる茄子の馬	茄子の馬	秋	14.8.18.
346	おはぐろの落ちさふに飛ぶ日暮れかな	羽黒蜻蛉	夏	14.8.18.
347	よたよたとお羽黒の飛ぶ用水路	羽黒蜻蛉	夏	14.8.18.
348	こてこてに冷房かけし初秋かな	冷房・初秋	夏・ 秋	14.8.18.
349	むっと来る温気に秋は忍びしか	秋	秋	14.8.18.
350	隣りは抜き吾は水遣る草の花	草の花	秋	14.8.18.
351	生身魂子らに混じりてざりがに釣	生身魂	秋	14.8.19.
352	亡き先輩肴につつく泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.8.19.
353	茄子漬を食ふ海原の色を食む	茄子漬	夏	14.8.19.
354	茄子漬を食ひ海原の色を食む	茄子漬	夏	14.8.19.
355	寝息立つ葭原の塒秋つばめ	秋つばめ	秋	14.8.19.
356	戦ありエボラ熱あり秋立てり	立秋	秋	14.8.19.
357	泥鰌鍋つつきつ署名反原発	泥鰌鍋	夏	14.8.19.
358	気絶せしままに煮え立つ泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.8.19.
359	人生もたちまち果てぬ泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	14.8.19.
360	スマホ繰る客が半分冷房車	冷房	夏	14.8.19.
361	列島の樽底抜きし野分かな	野分	秋	14.8.20.
362	空蝉と同じ数だけ蝉の穴	空蝉・蝉	夏	14.8.20.
363	文明のちぐはぐ見せてエボラ熱			14.8.20.
364	進み来る野分待つ間のいわし雲	鰯雲	秋	14.8.20.
365	鰯雲広がるを見て秋ごころ	鰯雲	秋	14.8.20.
366	夕間暮れ半身を焦がす鰯雲	鰯雲	秋	14.8.20.
367	晴天を引き立ててゐる鱗雲	鱗雲	秋	14.8.20.
368	晩酌を欠かさぬ律儀秋の風	秋風	秋	14.8.20.
369	蕎麦前の酒嗜んで走り蕎麦	走り蕎麦	秋	14.8.20.
370	晩酌を済ましつるつるとろろ汁	とろろ汁	秋	14.8.20.
371	衣被つるりと剥ひて独り酒	衣被	秋	14.8.21.
372	八月の風よそんなに雲追ふな	八月	秋	14.8.21.
373	生身魂気づかれぬよふ苦笑ひ	生身魂	秋	14.8.21.
374	門口で迎火焚きし人も逝き	迎火	秋	14.8.21.
375	どの墓も卒塔婆新し施餓鬼かな	施餓鬼	秋	14.8.21.
376	戦争のできる国へと敗戦忌	敗戦忌	秋	14.8.21.
377	流燈の灯の一つ消へ二つ消へ	流燈	秋	14.8.21.
378	蜩の鳴いて決まりし日暮れかな	蜩	秋	14.8.21.
379	じいとだけ鳴いて息絶ふ油蝉	油蝉	秋	14.8.21.
380	蝉の穴散らばる根方大欅	蝉	夏	14.8.21.
381	季移りを促すごとく芙蓉咲く	芙蓉	秋	14.8.22.
382	銀漢といふ字重ねて天の川	銀漢・天の川	秋	14.8.22.
383	銀漢にミルキーウエイか天の川	銀漢・天の川	秋	14.8.22.
384	山百合の汚し背につけ渓下る	山百合	夏	14.8.22.
385	雨戸に手かけつつ見上ぐ盆の月	盆の月	秋	14.8.22.
386	エボラ熱赤く滴る盆の月	盆の月	秋	14.8.22.
387	三百万命犠牲に敗戦忌	敗戦忌	秋	14.8.22.
388	戦争に近寄る気配敗戦忌	敗戦忌	秋	14.8.22.
389	戦争の放棄忘るる敗戦忌	敗戦忌	秋	14.8.22.
390	二種類の原爆試し原爆忌	原爆忌	秋	14.8.22.
391	流星に平和唱へて路地に入る	流星	秋	14.8.23.
392	秋風や宙（そら）掻き回す遊び蔓	秋風	秋	14.8.23.
393	お羽黒の背すじ正しき緑かな	羽黒蜻蛉	夏	14.8.23.
394	子ら去りて公園包む秋の色	秋色	秋	14.8.23.
395	新松子スマホ持つ人視野の外	新松子	秋	14.8.23.
396	新松子スマホ持つ人目に入らず	新松子	秋	14.8.23.
397	蜩の鳴いて始まる日暮れかな	蜩	秋	14.8.23.
398	旧家らし見越しの松の新松子（１４	新松子	秋	14.8.23.
399	豆腐屋のラッパが響く新松子	新松子	秋	14.8.23.
400	豆腐屋のラッパ響けり新松子	新松子	秋	14.8.23.
401	バーベキュー庭で始まる新松子	新松子	秋	14.8.24.
402	刀折れ矢尽きし風情破れ蓮田	破蓮・敗荷	秋	14.8.24.
403	溝蕎麦のずっと続いて隠れ田跡	溝蕎麦	秋	14.8.24.
404	溝蕎麦や水辺辿れば隠れ田跡	溝蕎麦	秋	14.8.24.
405	放棄田に溝蕎麦の花寄り添へり	溝蕎麦	秋	14.8.24.
406	溝蕎麦と競ふ継子の尻拭ひ	溝蕎麦	秋	14.8.24.
407	溝蕎麦の朽橋隠し咲きにけり	溝蕎麦	秋	14.8.24.
408	晴れた日のまた巡り来し敗戦日	敗戦日	秋	14.8.24.
409	天皇の声聞き初めし敗戦日	敗戦日	秋	14.8.24.
410	ラジオから天皇の声敗戦日	敗戦日	秋	14.8.24.
411	空襲の無くなり安堵敗戦日	敗戦日	秋	14.8.25.
412	無謀なる戦の果ての敗戦日	敗戦日	秋	14.8.25.
413	戦とは狂気の連鎖敗戦日	敗戦日	秋	14.8.25.
414	勇ましき声の聞へる敗戦日	敗戦日	秋	14.8.25.
415	狂気てふ悪夢の果ての敗戦日	敗戦日	秋	14.8.25.
416	戦争に近づく気配敗戦日	敗戦日	秋	14.8.25.
417	無差別の暴力の極原爆忌	原爆忌	秋	14.8.25.
418	猪垣の幾何学模様山の畑	猪垣	秋	14.8.25.
419	立膝で文机の前獺祭忌	獺祭忌	秋	14.8.25.
420	去年のまま枯糸瓜揺る子規忌かな	子規忌	秋	14.8.25.
421	柿食ひつ思ひを致す子規忌かな	子規忌	秋	14.8.26.
422	柿を食ふしみじみと食む獺祭忌	獺祭忌	秋	14.8.26.
423	大文字草けふの京都は大文字	大文字草・大文字	秋	14.8.26.
424	人の手をかけてつぎつぎ大文字	大文字	秋	14.8.26.
425	流燈の数だけ揺るる悲願かな	流燈	秋	14.8.26.
426	流燈の光の水脈が橋くぐる	流燈	秋	14.8.26.
427	流燈の灯火一つ消へにけり	流燈	秋	14.8.26.
428	爆心の川面に映る盆の月	盆の月	秋	14.8.26.
429	笛吹を人鵜一つに徒歩鵜飼	徒歩鵜	夏	14.8.26.
430	鵜と鵜師の携へ上る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.26.
431	笛吹の流れ押し上ぐ徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.27.
432	奔流を人鵜追い上ぐ徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.27.
433	奔流を掻き分け上る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.27.
434	鵜呑み鮎魚篭に吐かせつ徒歩鵜行く	徒歩鵜	夏	14.8.27.
435	笛吹の流れ踏み締め徒歩鵜飼	徒歩鵜	夏	14.8.27.
436	鵜師の引く手綱に背く荒鵜の眼	鵜飼	夏	14.8.27.
437	鵜師の指示聞く耳持たぬ鵜もありて	鵜飼	夏	14.8.27.
438	川底の石苔滑る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.27.
439	ときにこけときにまろびし徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.27.
440	篝火に荒鵜逸らせ徒歩鵜行く	徒歩鵜	夏	14.8.27.
441	鵜籠から逸る鵜の声徒歩鵜待つ	徒歩鵜	夏	14.8.28.
442	謂れなく飼い鵜となりて徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.28.
443	海遠く飛ぶことならず徒歩鵜の鵜	徒歩鵜	夏	14.8.28.
444	笛吹川鵜師に引かれつ鮎追ふ鵜	鵜	夏	14.8.28.
445	頸縄のほどほどきつし鵜呑みかな	鵜	夏	14.8.28.
446	笛吹の人鵜寂びたる徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.28.
447	笛吹の川瀬に濡るる徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.28.
448	篝火に飛び込む虫や徒歩鵜飼	徒歩鵜	夏	14.8.28.
449	笛吹の速き瀬上り徒歩鵜行く	徒歩鵜	夏	14.8.28.
450	笛吹川夜風よろしき徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.28.
451	腰の魚篭ずしりと重き徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.29.
452	鵜師も濡れ篝火を追ふ徒歩鵜果つ	徒歩鵜	夏	14.8.29.
453	笛吹の風秋めきて徒歩鵜果つ	徒歩鵜	夏	14.8.29.
454	空き腹に鮎届かざる徒歩鵜なり	徒歩鵜	夏	14.8.29.
455	鵜呑み鮎掠め取られる鵜のあはれ	鵜	夏	14.8.29.
456	不貞腐れ鵜師に噛みつく徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.29.
457	不貞腐れ鵜師に噛みつく荒鵜をり	鵜	夏	14.8.29.
458	鵜篝消へ徒歩鵜の果てし鵜籠かな	徒歩鵜	夏	14.8.29.
459	徒歩鵜果て餌の鯖食む鵜のあはれ	徒歩鵜	夏	14.8.29.
460	早よ出せと鵜籠を揺らす荒鵜かな	鵜	夏	14.8.29.
461	笛吹や徒歩鵜の夜風秋めけり	徒歩鵜	夏	14.8.30.
462	鵜篝の火の粉潜りて鮎鵜呑み	鵜	夏	14.8.30.
463	鵜篝に虫も寄り来る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.30.
464	鵜呑みせし鮎掠め取る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.30.
465	見事なる鵜呑みを見せる徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.30.
466	松明に鮎も蛾も寄る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.30.
467	飼鵜哀し鮎吐かせられ吐かせられ	鵜	夏	14.8.30.
468	上前を刎ねる哀しき徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.8.30.
469	鵜の哀れ鵜呑みするたび吐かされぬ	鵜	夏	14.8.30.
470	患者さま医者に言はれてうそ寒し	うそ寒	秋	14.8.30.
471	患者さま医者に言はれるうそ寒さ	うそ寒	秋	14.8.31.
472	いちいちによろしいですかうそ寒し	うそ寒	秋	14.8.31.
473	おおばこの踏まれるために咲きしとか	車前草（おおばこ）の花	夏	14.8.31.
474	轍にも車前草咲けり不敵なり	車前草	夏	14.8.31.
475	轍にも車前草咲けり拘らず	車前草	夏	14.8.31.
476	踏まれてもおおばこ怯む風もなし	車前草	夏	14.8.31.
477	水溜り除けておおばこ踏みにけり	車前草	夏	14.8.31.
478	夜目遠目いたどりの花夥し	虎杖（いたどり）の花	夏	14.8.31.
479	生身魂打ち揃ひたる句会かな	生身魂	夏	14.8.31.
480	おおばこの踏んで気になる花ならず	車前草（おおばこ）の花	夏	14.8.31.
481	張りつめてびしと裂けたる破れ蓮	破れ蓮	秋	14.9.1.
482	香しき花亡きあとの破れ蓮	破れ蓮	秋	14.9.1.
483	敗け試合涙に光る秋の色	秋色	秋	14.9.1.
484	宿題の残り急がす秋の色	秋色	秋	14.9.1.
485	鵜篝に火取虫寄る徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.9.1.
486	おおばこは踏めど痛ひと言はぬ花	おおばこの花	夏	14.9.1.
487	筋斗雲ふはりと浮ひて生身魂	生身魂	夏	14.9.1.
488	筋斗雲浮ぶを見上ぐ生身魂	生身魂	夏	14.9.1.
489	たかたかとレール駆けゆく蜥蜴の子	蜥蜴	夏	14.9.1.
490	漆黒の戒壇巡り生身魂	生身魂	夏	14.9.1.
491	人と鵜に夜風の過る徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.9.2.
492	手綱なく鵜呑みさせたき徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.9.2.
493	川底の苔石滑る徒歩鵜かな	鵜飼	秋	14.9.2.
494	さざ波を潜り鮎追ふ鵜の手綱	鵜	夏	14.9.2.
495	かはほり飛ぶ笛吹川の徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.9.2.
496	笛吹の流れを渡る徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.9.2.
497	恋多き女鵜匠の鵜の手綱	鵜飼	夏	14.9.2.
498	笛吹の鮎の影追ふ徒歩鵜かな	鵜飼	夏	14.9.2.
499	拍手湧く女鵜匠の鵜の捌き	鵜飼	夏	14.9.2.
500	女鵜匠手綱自在に荒鵜繰る	鵜飼	夏	14.9.2.
501	笛の音の川瀬漁る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.9.3.
502	落人の悲話を伝へし徒歩鵜とや	徒歩鵜	夏	14.9.3.
503	うら若き女鵜匠の鵜の捌き	鵜飼	夏	14.9.3.
504	勇み立ち鮎追ひて行く鵜のファイト	鵜	夏	14.9.3.
505	火の粉降る川面破りて鵜の頭	鵜	夏	14.9.3.
506	羽切られ潜るほかなし鵜のあはれ	鵜	夏	14.9.3.
507	恋のなき男所帯の鵜の寂し	鵜	夏	14.9.3.
508	恋のなき男所帯の鵜を思ふ	鵜	夏	14.9.3.
509	一筋の手綱で漁る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.9.3.
510	疲れ鵜や鵜籠に入りて震えをり	鵜	夏	14.9.3.
511	鵜篝の川面に逸る荒鵜いざ	鵜	夏	14.9.4.
512	鵜師と鵜を心一つにする手綱	鵜飼	夏	14.9.4.
513	疲れ鵜の震へ止まらぬ鵜籠かな	鵜	夏	14.9.4.
514	疲れ鵜の体温める震へかな	鵜	夏	14.9.4.
515	疲れ鵜の無理強いばかりさせられて	鵜	夏	14.9.4.
516	疲れ鵜の疲れ切ったといふ風情	鵜	夏	14.9.4.
517	鮎吐ひて鯖食はさるる鵜のおかし	鵜	夏	14.9.4.
518	捕はれて徒歩鵜受け継ぐ海鵜の譜	徒歩鵜・鵜	夏	14.9.4.
519	捕はれて海なき川の徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.9.4.
520	きびきびと女鵜匠の鵜の捌き	鵜	夏	14.9.4.
521	落葉にもなれず立ち枯る破れ蓮	破れ蓮	秋	14.9.5.
522	茎折れるまで立ち尽くす破れ蓮	破れ蓮	秋	14.9.5.
523	甲子園涙に光る秋の色	秋色	秋	14.9.5.
524	甲子園涙に映る秋の色	秋色	秋	14.9.5.
525	弁慶の立ち往生や破れ蓮	破れ蓮	秋	14.9.5.
526	没日の川に鮎追ふ徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.9.5.
527	椋鳥の寝息に膨る大欅	椋鳥	秋	14.9.5.
528	鵯の小鳥蹴散らす声響く	鵯	秋	14.9.5.
529	秋燕去りて静まる葭の塒	秋燕	秋	14.9.5.
530	櫨紅葉見上げし顔をほろ酔ひに	櫨紅葉	秋	14.9.5.
531	休肝日なき晩酌に衣被	衣被	秋	14.9.6.
532	お手拭きを添へて出さるる衣被	衣被	秋	14.9.6.
533	勇み立ち鮎追ふて行く鵜の目かな	鵜	夏	14.9.6.
534	鵜篝に灯虫も纏ひ徒歩鵜飼	徒歩鵜	夏	14.9.6.
535	散ることもならず立ち枯る破れ蓮	破れ蓮	秋	14.9.6.
536	流燈が光の水脈になりにけり	流燈	秋	14.9.6.
537	流燈のやがて光の水脈となり	流燈	秋	14.9.6.
538	流燈のやがて光の水脈つくる	流燈	秋	14.9.6.
539	信玄公菩提の古寺も秋の色	秋色	秋	14.9.6.
540	訪へば甲斐善光寺秋の色	秋色	秋	14.9.6.
541	深水庵回る水車も秋の色	秋色	秋	14.9.7.
542	水溜り雲を映して秋の色	秋色	秋	14.9.7.
543	武田菱光る恵林寺秋の色	秋色	秋	14.9.7.
544	鵜と鵜師の持ちつ持たれつ行く徒歩鵜	徒歩鵜	夏	14.9.7.
545	鵜飼哀し鮎吐かせられ吐かせられ	鵜飼	夏	14.9.7.
546	腰篭のずしりと重き徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	14.9.7.
547	夕焼けの空回りゐる椋一群	椋鳥	秋	14.9.7.
548	Ｇパンの若きも増へて秋遍路	秋遍路	秋	14.9.7.
549	塒入りの鳥舞ふ空に秋の虹	秋の虹	秋	14.9.7.
550	花摘んで捨てたるよふに茗荷咲く	茗荷の花	秋	14.9.7.
551	摘み散らすごとく地に咲く秋茗荷	秋茗荷	秋	14.9.8.
552	早稲の穂のまだ青々と甲斐の里	早稲	秋	14.9.8.
553	青鷺の大屋根に佇つ鵜飼古寺 （笛吹川の鵜飼山遠妙寺で）	青鷺	夏	14.9.8.
554	池の面をひたすら滑るみづすまし	みづすまし	夏	14.9.8.
555	かなかなの鳴いて空堀暮れなずむ	かなかな・蜩	秋	14.9.8.
556	アレグロが悲鳴で終る法師蝉	法師蝉	秋	14.9.8.
557	緊急時なりとばかりに法師蝉	法師蝉	秋	14.9.8.
558	かさと音したやふな気が破れ蓮	破れ蓮	秋	14.9.8.
559	有為転変などとは言はじ破れ蓮	破れ蓮	秋	14.9.8.
560	大甕の敗荷切られ古寺静か	敗荷（やれはす）	秋	14.9.8.
561	敗荷を醜とは言はず吾もまた	敗荷	秋	14.9.9.
562	残照にビュッフェのモード敗荷田	敗荷	秋	14.9.9.
563	札所裏輪廻転生敗荷田	敗荷	秋	14.9.9.
564	悠然と鯉が水脈引く敗荷田	敗荷	秋	14.9.9.
565	古刹裏一枚田あり敗荷田	敗荷	秋	14.9.9.
566	畦に佇つ人影揺らす敗荷田	敗荷	秋	14.9.9.
567	空耳の鬨の声消へ敗荷田	敗荷	秋	14.9.9.
568	蓮の実のいまかいまかと飛ぶを待つ	蓮の実	秋	14.9.9.
569	蓮の実の生きゐる証し爆ぜ飛べり	蓮の実	秋	14.9.9.
570	蓮の実の爆ぜる音する薬師池	蓮の実	秋	14.9.9.
571	蓮の実のいまかいまかと飛ぶ待つ子	蓮の実	秋	14.9.10.
572	歳時記の指擦れ黒く秋ともし	秋ともし	秋	14.9.10.
573	歳時記の指擦れ黒き夜長かな	夜長	秋	14.9.10.
574	歳時記の指擦れ眺む夜長かな	夜長	秋	14.9.10.
575	水澄みて笛吹川の魚影濃し	水澄む	秋	14.9.10.
576	茶箪笥にニス塗りをれば秋の風	秋の風	秋	14.9.10.
577	吾もまた頭痛肩こり一葉忌 （一葉忌１１．２３．）	一葉忌	冬	14.9.10.
578	弱き身を群で守るや鰯雲	鰯雲	秋	14.9.10.
579	視野いっぱい魚影広げし鰯雲	鰯雲	秋	14.9.10.
580	古池を辿る木道盆の月	盆の月	秋	14.9.10.
581	盆の月映す古池巡りゆく	盆の月	秋	14.9.11.
582	古池のどこに佇ちても盆の月	盆の月	秋	14.9.11.
583	敗荷の吐息とも見ゆ風一陣	敗荷	秋	14.9.11.
584	敗荷の嘆息に似て風縹渺	敗荷	秋	14.9.11.
585	風縹渺嘆息聞ゆ敗荷田	敗荷	秋	14.9.11.
586	流燈の四角五角も水の上	流燈	秋	14.9.11.
587	月並も駄句も楽しき子規忌かな	子規忌	秋	14.9.11.
588	月並も駄句も詠み切る子規忌かな	子規忌	秋	14.9.11.
589	月並も駄句も数あり糸瓜の忌	糸瓜忌	秋	14.9.11.
590	月並も駄句も恐れず獺祭忌	獺祭忌	秋	14.9.11.
591	月並も駄句も山なす獺祭忌	獺祭忌	秋	14.9.12.
592	楽しげに駄句も数々獺祭忌	獺祭忌	秋	14.9.12.
593	拘らず駄句も量産獺祭忌	獺祭忌	秋	14.9.12.
594	具だくさん駄句もたくさん子規忌かな	子規忌	秋	14.9.12.
595	糸瓜忌や松山駅の大き句碑	糸瓜忌	秋	14.9.12.
596	恋の句はないものねだり糸瓜の忌	糸瓜忌	秋	14.9.12.
597	恋の句はないものねだり子規忌かな	子規忌	秋	14.9.12.
598	早稲の穂の早や頭垂る甲斐の里	早稲	秋	14.9.12.
599	流燈の肩寄せ行くも離るるも	流燈	秋	14.9.12.
600	指擦れの歳時記を繰る夜長かな	夜長	秋	14.9.12.
601	空耳の鬨の声絶ふ敗荷田	敗荷	秋	14.9.13.
602	大空に天敵はなし鰯雲	鰯雲	秋	14.9.13.
603	天敵のゐない大空いわし雲	鰯雲	秋	14.9.13.
604	襲ひ来る天敵もなし鰯雲	鰯雲	秋	14.9.13.
605	群崩す天敵もなしいわし雲	鰯雲	秋	14.9.13.
606	一輪挿し紫白二輪の桔梗かな	桔梗	秋	14.9.13.
607	新涼や緑のビール飲む二人	新涼	秋	14.9.13.
608	冷やかに水面光らす火鉢池	冷やか	秋	14.9.13.
609	指擦れの歳時記繰りし良夜かな	良夜	秋	14.9.13.
610	庭隅に木椅子がひとつ良夜かな	良夜	秋	14.9.13.
611	木魚打つ読経の僧や秋の暮	秋の暮	秋	14.9.14.
612	昨日から庭に居つきし秋の蝶	秋蝶	秋	14.9.14.
613	石鎚の双耳の峰や秋の雲	秋の雲	秋	14.9.14.
614	石鎚の頂二つ秋の雲	秋の雲	秋	14.9.14.
615	突然に啼き止んで翔つ法師蝉	法師蝉	秋	14.9.14.
616	周りまで急き立てて啼く法師蝉	法師蝉	秋	14.9.14.
617	無意識に毛布掻き上ぐ秋の朝	秋の朝	秋	14.9.14.
618	秋の朝がしゃりと鳴りしトースター	秋の朝	秋	14.9.14.
619	秋澄みて水琴窟に耳寄せる	秋澄む	秋	14.9.14.
620	秋冷の庭に来て啼く遅れ蝉	秋冷	秋	14.9.14.
621	鰯雲妻に頼もふつみれ汁	鰯雲	秋	14.9.15.
622	いわし雲今夜の菜はつみれ汁	鰯雲	秋	14.9.15.
623	茶箪笥のニス塗る庭の藤袴	藤袴	秋	14.9.15.
624	いわし雲池に映りて動かざり	鰯雲	秋	14.9.15.
625	鯖雲や若狭のへしこ懐かしき	鯖雲	秋	14.9.15.
626	パソコンを閉じ雨戸繰る良夜かな	良夜	秋	14.9.15.
627	初蟷螂早や斧上げて威嚇せり	蟷螂	秋	14.9.15.
628	子蟷螂早や斧上げて小憎らし	蟷螂	秋	14.9.15.
629	例ふれば吾もたそがれ酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.15.
630	酔芙蓉花の命の短きを	芙蓉	秋	14.9.15.
631	独り酒ほどを越へねど酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
632	みな若きモノクロ写真酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
633	香しき後の無惨や酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
634	ばっちいと嬰児指さす酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
635	萎れても醜となりても酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
636	醜きはただ姿なり酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
637	身を崩す譬に倦みし酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
638	日の暮れは道を変へたり酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
639	白無垢の観音かとも花芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
640	老ひと死を急ぎ過ぎぬか酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.16.
641	老ひと死を急ぎはせぬか酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.17.
642	白で会ひ紅で会ふ酔芙蓉	芙蓉	秋	14.9.17.
643	朝露に濡れ咲く大輪白芙蓉	芙蓉	秋	14.9.17.
644	酔芙蓉酔生夢死の日がなかな	芙蓉	秋	14.9.17.
645	居並べる鵜の頭上には鰯雲	鰯雲	秋	14.9.17.
646	電線に鵜の居並べば鰯雲	鰯雲	秋	14.9.17.
647	電線に鵜の居並びて鰯雲	鰯雲	秋	14.9.17.
648	電線の鵜の数千羽鰯雲	鰯雲	秋	14.9.17.
649	電線に夕日浴ぶ鵜やいわし雲	鰯雲	秋	14.9.17.
650	秋涼し窓に隣家の時報聞く	秋涼し	秋	14.9.17.
651	秋風や腕を広げて背伸びせり	秋風	秋	14.9.18.
652	秋風や息深々と吸ふてみる	秋風	秋	14.9.18.
653	晩酌に妻が差し出す衣被	衣被	秋	14.9.18.
654	衣被つるりつるりと剥いて食ふ	衣被	秋	14.9.18.
655	針千本鎧へどどれも虚栗	虚栗（みなしぐり）	秋	14.9.18.
656	道埋めし青絨毯や虚栗	虚栗	秋	14.9.18.
657	踏みにじることさへ空し虚栗	虚栗	秋	14.9.18.
658	毬栗を踏んで空しき虚栗	毬栗・  虚栗	秋	14.9.18.
659	牙剥けど踏めば凹みし虚栗	虚栗	秋	14.9.18.
660	蹴飛ばせば空しさとなる虚栗	虚栗	秋	14.9.18.
661	蹴飛ばせば空しさ返す虚栗	虚栗	秋	14.9.19.
662	虚栗踏めば虚しさ募りけり	虚栗	秋	14.9.19.
663	過りゆく風に縺るる藤袴	藤袴	秋	14.9.19.
664	藤袴目立たぬゆえに目立ちけり	藤袴	秋	14.9.19.
665	藤袴目立たぬゆえに目立つ花	藤袴	秋	14.9.19.
666	藤袴なんの取り柄もなき取り柄	藤袴	秋	14.9.19.
667	藤袴咲く吾庭の呆けぶり	藤袴	秋	14.9.19.
668	藤袴ひと茎加へ墓参り	藤袴	秋	14.9.19.
669	虚しさを絵に描ひてみる虚栗	虚栗	秋	14.9.19.
670	道に散るどれを踏んでも虚栗	虚栗	秋	14.9.19.
671	浅葱斑帰燕の海へひらひらと	帰燕	秋	14.9.20.
672	帰燕の海ひらりひらりと秋の蝶	帰燕・秋の蝶	秋	14.9.20.
673	帰燕の海ひらり秋蝶渡り行く （渡海するタテハ蝶浅葱斑を詠む）	帰燕・秋の蝶	秋	14.9.20.
674	帰燕の海ひらりと渡る秋の蝶	帰燕・秋の蝶	秋	14.9.20.
675	謎秘めて海原渡る秋の蝶	秋の蝶	秋	14.9.20.
676	帰燕の海秋蝶渡る神の意思	帰燕・秋の蝶	秋	14.9.20.
677	生き急ぎ死に急ぎ人それぞれに鰯雲	鰯雲	秋	14.9.20.
678	生き急ぎ死に急ぎ人はそれぞれ鰯雲	鰯雲	秋	14.9.20.
679	端境の畑を守りし秋茄子	鰯雲	秋	14.9.20.
680	端境の畑繋ぎて秋茄子	鰯雲	秋	14.9.20.
681	端境の畑の朝採り秋茄子	鰯雲	秋	14.9.21.
682	秋雨や利休鼠の城ケ島	秋雨	秋	14.9.21.
683	寅さん像落葉張り付く雪駄かな （春耕１１月号課題詠：落葉）	落葉	秋	14.9.21.
684	落葉掃く坊さん泣かせつむじ風	落葉	秋	14.9.21.
685	ごみ出し日焚けぬ落葉の大袋	落葉	秋	14.9.21.
686	吾狭庭朴の落葉も舞い込めり	落葉	秋	14.9.22.
687	落葉道踏む靴裏の温みかな	落葉	秋	14.9.22.
688	軽やかに鈴の音聞かす山椒喰	山椒喰	夏	14.9.22.
689	目覚ましの鈴打ち振りて山椒喰	山椒喰	夏	14.9.22.
690	雨戸越し日和を伝ふ山椒喰	山椒喰	夏	14.9.22.
691	山椒喰けさも鈴の音ひとしきり	山椒喰	夏	14.9.23.
692	声の主知って楽しき山椒喰	山椒喰	夏	14.9.23.
693	一日の清し始まり山椒喰	山椒喰	夏	14.9.23.
694	ランパルを朝から聴けり山椒喰	山椒喰	夏	14.9.23.
695	椋鳥を呑んで膨らむ塒の木々	椋鳥	秋	14.9.23.
696	塒の木の椋鳥呑んで膨らめり	椋鳥	秋	14.9.23.
697	童謡をランパルが吹く花芒	花芒	秋	14.9.23.
698	花すすき花虎の尾と押し合へり	花芒	秋	14.9.23.
699	花すすき花虎の尾と不穏なり	花芒	秋	14.9.23.
700	藤袴包むがごとく花すすき	藤袴・花芒	秋	14.9.23.
701	歳時記の秋がなんだと百日紅	秋・百日紅	秋・夏	14.9.23.
702	帰燕の海浅葱斑もひらひらと	帰燕	秋	14.9.24.
703	帰燕の海浅葱斑（あさぎまだら）の遠き旅	帰燕	秋	14.9.24.
704	高麗の里埋め尽くすかな曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.24.
705	百万の単位で見せる曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.24.
706	高麗の里埋め尽くすほど曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.24.
707	巾着田野焼き思はす曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.24.
708	巾着田カメラカメラの曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.24.
709	高麗川の大曲して曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.24.
710	巾着田人もぞろぞろ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.24.
711	巾着田銭出して見る曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.25.
712	死人花稼げる花に巾着田	死人花	秋	14.9.25.
713	曼珠沙華人波つづく巾着田	曼珠沙華	秋	14.9.25.
714	曼珠沙華数がものいふ巾着田	曼珠沙華	秋	14.9.25.
715	巾着田白花も増へ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.25.
716	曼珠沙華人の背越しに巾着田	曼珠沙華	秋	14.9.25.
717	木漏れ日の根方を埋めて曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.25.
718	入園料払い愛でるや死人花	死人花	秋	14.9.25.
719	てかてかの光返して曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.25.
720	野仏に一茎手向く曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.25.
721	野仏に一茎手向く藤袴	藤袴	秋	14.9.26.
722	もじゃもじゃと花縺らせて藤袴	藤袴	秋	14.9.26.
723	ぎらぎらと思いを映す曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.26.
724	艶やかな庵主の頬や藤袴	藤袴	秋	14.9.26.
725	友の訃に一茎手向く藤袴	藤袴	秋	14.9.26.
726	木漏れ日に妖しき気配彼岸花	彼岸花	秋	14.9.26.
727	藤袴道で摘んだと友来る	藤袴	秋	14.9.26.
728	ハードロック耳を劈く曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.26.
729	ロッカーの針立つヘアー曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.26.
730	デーモン閣下輪になって踊ろ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.26.
731	夕焼けに朱を溶かしゆく曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.9.27.
732	蹴飛ばして踏めば凹みし虚栗	虚栗	秋	14.9.27.
733	つま先に踏めば凹みし虚栗	虚栗	秋	14.9.27.
734	鶺鴒の走って止まりまた走り	鶺鴒	秋	14.9.27.
735	小鳥来て朝のぺちくり交わしをり	小鳥来る	秋	14.9.27.
736	秋の蚊の針刺す力衰へず	秋の蚊	秋	14.9.27.
737	糸瓜忌やへちまの由来すぐ忘れ	糸瓜忌	秋	14.9.27.
738	こじつけの名など知らぬと青へちま	糸瓜	秋	14.9.27.
739	いとうりがとうりになりてへちまの忌	糸瓜忌	秋	14.9.27.
740	古机にニス塗り直す獺祭忌	獺祭忌	秋	14.9.27.
741	古机に向ひ立膝糸瓜の忌	糸瓜忌	秋	14.9.28.
742	文机に正座してみる糸瓜の忌	糸瓜忌	秋	14.9.28.
743	肩凝りて首の回らぬ子規忌かな	子規忌	秋	14.9.28.
744	肩凝りのひどくて目覚む糸瓜の忌	糸瓜忌	秋	14.9.28.
745	ランパルのオーデコロンや秋扇	秋扇	秋	14.9.28.
746	食べ終へしせいろの端を秋の蠅	秋の蠅	秋	14.9.28.
747	秋の蚊の鼻歌聞ゆ刺されたり	秋の蚊	秋	14.9.28.
748	庭に棲む秋の蚊のなほ逞しき	秋の蚊	秋	14.9.28.
749	かさこそと雑木紅葉の道抜けり	雑木紅葉	秋	14.9.28.
750	灯火親し隣家の窓は受験生	灯火親しむ	秋	14.9.28.
751	親仁流新蕎麦の文字踊りけり	新蕎麦	秋	14.9.29.
752	店主流新蕎麦の文字黒々と	新蕎麦	秋	14.9.29.
753	塩醤油味噌の付け皿衣被	衣被	秋	14.9.29.
754	養老の滝訪れぬ猿酒	猿酒	秋	14.9.29.
755	秋の川空を映して走り行く	秋の川	秋	14.9.29.
756	セスナ機は脚出したまま秋の空	秋の空	秋	14.9.29.
757	秋水の岩間を赤のカヌー行く	秋水	秋	14.9.29.
758	朽ち船の縁に腰かけ秋惜しむ	秋惜しむ	秋	14.9.29.
759	磨崖仏仰げば空は鰯雲	鰯雲	秋	14.9.29.
760	蹴飛ばせし布団を探す夜寒かな	夜寒	秋	14.9.29.
761	大皿に横一文字秋刀魚食ふ	秋刀魚	秋	14.9.30.
762	店主流新蕎麦の文字踊りけり	新蕎麦	秋	14.9.30.
763	つんつんと蔓穂咲き立つ土手の秋	秋	秋	14.9.30.
764	晩夏光白雪かとも仙人草	晩夏光	秋	14.9.30.
765	秋冷を遺し夜来の雨上がる	秋冷	秋	14.9.30.
766	うそ寒や散歩の犬のちゃんちゃんこ	うそ寒	秋	14.9.30.
767	秋冷や首の回らぬ肩の凝り	秋冷	秋	14.9.30.
768	新蕎麦や講釈聞きついただけり	新蕎麦	秋	14.9.30.
769	一家言持ちし店主や走り蕎麦	走り蕎麦	秋	14.9.30.
770	七草を見分けて楽し花野かな	花野	秋	14.9.30.
771	落葉掃く作務僧泣かすつむじ風	落葉	秋	14.10.1.
772	風光の明媚が仇の出水かな	出水	夏	14.10.1.
773	風光の明媚が仇の秋出水	秋出水	秋	14.10.1.
774	磨崖仏仰ぐ真上は鰯雲	鰯雲	秋	14.10.1.
775	朽ち船の縁に腰かけ水の秋	水の秋	秋	14.10.1.
776	鮠走る川の流れや秋の水	秋の水	秋	14.10.1.
777	いちいちは名前上げねど草の花	草の花	秋	14.10.1.
778	朝採りの野菜の籠に草の花	草の花	秋	14.10.1.
779	名はあれど草莽の花草の花	草の花	秋	14.10.1.
780	山路来て目を惹かれたり濃竜胆	竜胆	秋	14.10.1.
781	山路来て花が呼びたり濃竜胆	竜胆	秋	14.10.2.
782	山路来て足止めさする濃竜胆	竜胆	秋	14.10.2.
783	折り紙の江戸紫や濃竜胆	竜胆	秋	14.10.2.
784	三頭身花くっきりと濃竜胆	竜胆	秋	14.10.2.
785	供華筒を引き締めてゐる濃竜胆	竜胆	秋	14.10.2.
786	友誘ひ菊の日に飲む菊の酒	菊の酒	秋	14.10.2.
787	茄子漬を肴に友と菊の酒	菊の酒	秋	14.10.2.
788	茄子漬を肴に独り菊の酒	菊の酒	秋	14.10.2.
789	船溜まり水面押し上げ鯔飛べり	鯔	秋	14.10.2.
790	屋形船舫ふ運河を鯔上る	鯔	秋	14.10.2.
791	聞く耳はあれど遠耳鬼城の忌 （村上鬼城忌９．１７．)	鬼城忌	秋	14.10.3.
792	耳傾け肩が凝るなり鬼城の忌	鬼城忌	秋	14.10.3.
793	鬼城忌や明日天気になれと寝る	鬼城忌	秋	14.10.3.
794	目鼻摩羅ついには耳か鬼城の忌	鬼城忌	秋	14.10.3.
795	不揃ひを直販で買ふ秋野菜	秋	秋	14.10.3.
796	お袋の味懐かしくずゐき食ふ	芋茎（ずいき）	秋	14.10.3.
797	食卓に笑いひを誘ふ衣被	衣被	秋	14.10.3.
798	水の玉転がし遊ぶ芋嵐	芋嵐	秋	14.10.3.
799	枝豆がお供の鉢と並びけり	枝豆	秋	14.10.3.
800	芋の葉の裏返りまた裏返り	芋	秋	14.10.3.
801	満月や生姜祭りの荒神輿 （あきる野市二宮神社例大祭）	満月・生姜	秋	14.10.4.
802	子供歌舞伎おひねりの飛ぶ里祭	里祭	秋	14.10.4.
803	荒神輿生姜祭りの良夜かな	生姜	秋	14.10.4.
804	神輿にも生姜あきる野秋祭	生姜	秋	14.10.4.
805	葉生姜を手にあきる野の祭かな	生姜	秋	14.10.4.
806	荒神輿石段馳せる生姜祭	生姜	秋	14.10.4.
807	あきる野に緑行き交ふ生姜祭	生姜	秋	14.10.4.
808	生姜祭り田舎歌舞伎に成駒屋ァ	生姜	秋	14.10.4.
809	生姜祭り田舎歌舞伎に大向ふ	生姜	秋	14.10.4.
810	人の波参道埋める生姜祭	生姜	秋	14.10.4.
811	荒神輿三本〆で生姜祭	生姜	秋	14.10.4.
812	満月も降りて来たそな里祭	里祭	秋	14.10.4.
813	秋の蠅うるさくもなし微笑まし	秋の蠅	秋	14.10.4.
814	秋の蠅慌てもせずに歩みけり（１４	秋の蠅	秋	14.10.4.
815	生き残り子孫を繋ぐ秋の蜂	秋の蜂	秋	14.10.4.
816	水澄めば鮠の走るもくっきりと	水澄む	秋	14.10.4.
817	差し金の先で踊るや秋の蝶	秋の蝶	秋	14.10.4.
818	官兵衛と言ふ軍師の名新走り	新走り	秋	14.10.4.
819	新走り試飲の猪口の並びをり	新走り	秋	14.10.4.
820	瀬戸の凪金波眩しい秋遍路	秋遍路	秋	14.10.4.
821	瀬戸の海金波に染まる秋遍路	秋遍路	秋	14.10.5.
822	鈴の音が峠を越ゆる秋遍路	秋遍路	秋	14.10.5.
823	コロラツゥーラ澄みたる空に山椒喰	山椒喰	秋	14.10.5.
824	鈴の音の空過りゆく山椒喰	山椒喰	秋	14.10.5.
825	山椒喰ピリリと啼けり喜雨亭忌 （秋櫻子忌７．１７．）	山椒喰	秋	14.10.5.
826	天駆けて金の鈴振る山椒喰	山椒喰	秋	14.10.5.
827	庭に来て金鈴鳴らす山椒喰	山椒喰	秋	14.10.5.
828	風の波来ればゆらりと釣舟草	釣舟草	秋	14.10.5.
829	サブマリンそよと揺れゐる黄釣舟	黄釣舟	秋	14.10.5.
830	風の海潜航始む黄釣舟 （ビートルズのイエローサブマリンを聴きながら）	黄釣舟	秋	14.10.5.
831	水の辺に頭を低く秋海棠	秋海棠	秋	14.10.6.
832	切花にするは諦め秋海棠	秋海棠	秋	14.10.6.
833	花と実が仲睦まじく藪茗荷	茗荷の花	秋	14.10.6.
834	花と実が相合傘や藪茗荷	茗荷の花	秋	14.10.6.
835	灰神楽冬の茶の間のひと騒ぎ	冬	冬	14.10.6.
836	赤と白猿酒眠る冷蔵庫	猿酒	秋	14.10.6.
837	猿酒を下げて狸の出て来ぬか	猿酒	秋	14.10.6.
838	狐狸と呑む森の宴会ましら酒	猿酒	秋	14.10.6.
839	松茸飯うつわは子供茶碗ほど	松茸飯	秋	14.10.6.
840	栗だけを食べて叱らる栗おこわ	栗おこわ	秋	14.10.6.
841	蓑虫の衣に似たる衣被	蓑虫・ 衣被	秋	14.10.7.
842	蓑虫の衣剥ぐごとく衣被	蓑虫・ 衣被	秋	14.10.7.
843	とろろ汁海苔の細切りトッピング	とろろ汁	秋	14.10.7.
844	揉み海苔をパラりと撒いてとろろ汁	とろろ汁	秋	14.10.7.
845	幼子の口のまわりはとろろ汁	とろろ汁	秋	14.10.7.
846	お隣の二階を飾る柿簾	柿簾	秋	14.10.7.
847	ふと止まりまた回り出す芋水車	芋	秋	14.10.7.
848	秋の灯を四角に並べ夜汽車ゆく	秋の灯	秋	14.10.7.
849	秋の灯を横一列に夜汽車ゆく	秋の灯	秋	14.10.7.
850	磨崖仏空を埋めたる鰯雲	鰯雲	秋	14.10.7.
851	隣り家の窓を飾りし柿簾	きりぎりす	秋	14.10.8.
852	ちょんぎーす鳴き音正しくきりぎりす	きりぎりす	秋	14.10.8.
853	ちょんぎーす正調で鳴くきりぎりす	きりぎりす	秋	14.10.8.
854	ちょんぎーす草陰で呼ぶぎすの声	きりぎりす	秋	14.10.8.
855	秋風の縦に抜け行く京町屋	秋風	秋	14.10.8.
856	食卓のカットグラスに草の花	草の花	秋	14.10.8.
857	色草をワイングラスに活けし朝	色草	秋	14.10.8.
858	食卓に生き生きとして草の花	草の花	秋	14.10.8.
859	食卓に微笑み誘ふ秋の草	秋の草	秋	14.10.8.
860	供華筒に千草溢るる辻地蔵	千草	秋	14.10.8.
861	吾影のくっきり映る良夜かな	良夜	秋	14.10.9.
862	戸を閉めに立ちて見上ぐる良夜かな	良夜	秋	14.10.9.
863	荒神輿石段馳せる良夜かな	良夜	秋	14.10.9.
864	夜店並び人の溢れし良夜かな	良夜	秋	14.10.9.
865	里歌舞伎見得を切りたる良夜かな	良夜	秋	14.10.9.
866	鰯屋で焼き刺しつみれ汁食へり	鰯	秋	14.10.9.
867	鰯引く浜賑ひてつみれ汁	鰯引く	秋	14.10.9.
868	ひね生姜擦りおろしたり鰯刺し	鰯	秋	14.10.9.
869	つみれ汁丼で出る鰯船	鰯	秋	14.10.9.
870	大漁旗なびかせ戻る鰯船	鰯	秋	14.10.9.
871	水揚げの鰯掠める鴎かな	鰯	秋	14.10.10.
872	頭垂れ稲穂波打つ日暮れかな	稲穂	秋	14.10.10.
873	没日の残照眩し稲田かな	稲田	秋	14.10.10.
874	落つる日の残照眩し稲田かな	稲田	秋	14.10.10.
875	ずっしりと稔りし稲田暮れなずむ	稲田	秋	14.10.10.
876	磨崖仏仰げば空は鰯雲	鰯雲	秋	14.10.10.
877	ひと花を咲かせるための蝉の穴	蝉	夏	14.10.10.
878	吾いわし人間どもの餌とかや	鰯	秋	14.10.10.
879	大漁旗立てて帰港のいわし船	鰯	秋	14.10.10.
890	鰯船吃水下げて戻りけり	鰯	秋	14.10.10.
891	鰯大漁弔い始まる海の底 （金子みすずの詩「大漁」へのオマージュ）	鰯	秋	14.10.11.
892	鰯にも言い分あれど食はるのみ	鰯	秋	14.10.11.
893	鰯にも言い分あれど黙死かな	鰯	秋	14.10.11.
894	地を出でし蝉の残せる深い穴	蝉	夏	14.10.11.
895	闇七年光七日の蝉昇天	蝉	夏	14.10.11.
896	吾もまた余命のかぎり蝉の声	蝉	夏	14.10.11.
897	吾もまた余命のかぎり声の蝉	蝉	夏	14.10.11.
898	蜩が戻らぬ今日を告げにけり	蜩	夏	14.10.11.
899	蜩がけふは逝けりと告げるかな	蜩	夏	14.10.11.
900	ふたたびは戻らぬ穴や蝉の穴	蝉	夏	14.10.11.
901	抜け出れば二度と戻らぬ蝉の穴	蝉	夏	14.10.11.
902	地を出れば戻ることなき蝉の穴	蝉	夏	14.10.11.
903	出でし穴戻るは禁忌蝉の穴	蝉	夏	14.10.11.
904	朝霧や死語になりたるオブラート	朝霧	秋	14.10.11.
905	文旦と言ふ飴包むオブラート（季語：文旦＝冬）	文旦	冬	14.10.11.
906	薑（はじかみ）と言ふ字おもしろ谷中食ふ	薑・生姜	秋	14.10.11.
907	晩酌に十本ほどの谷中かな	谷中生姜	秋	14.10.11.
908	厨からすぐ出るものは谷中なり	谷中生姜	秋	14.10.11.
909	けふは味噌あすは甘酢の谷中かな	谷中生姜	秋	14.10.11.
910	けふは味噌あすは甘酢の新生姜	生姜	秋	14.10.11.
911	あきる野の祭帰りは生姜抱き	生姜	秋	14.10.12.
912	葉生姜を抱え見守る荒神輿	生姜	秋	14.10.12.
913	葉生姜を祭詣での証しとし	生姜	秋	14.10.12.
914	葉生姜の緑行き交ふ祭りかな	生姜	秋	14.10.12.
915	葉生姜を載せて揉み合ふ荒神輿	生姜	秋	14.10.12.
916	爽やかな辛さを味噌で食ふ谷中	谷中生姜	秋	14.10.12.
917	供華筒に千草溢るる地蔵盆（＝季語：夏）	地蔵盆	夏	14.10.12.
918	稲穂波瑞穂の国の証しとや	稲穂	秋	14.10.12.
919	頭垂れ黄金波打つ稲の秋	稲の秋	秋	14.10.12.
920	さやさやと葉擦れの音や稲穂波	稲穂	秋	14.10.12.
921	ゆっくりと打ち返し行く稲穂波	稲穂	秋	14.10.13.
922	黄金なす稲田の中の道祖神	稲田	秋	14.10.13.
923	吾狭庭ことしも三本曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.13.
924	曼珠沙華愛でらる花となりにけり	曼珠沙華	秋	14.10.13.
925	曼珠沙華イスラム国と言ふ無惨	曼珠沙華	秋	14.10.13.
926	道祖神横の火焔は曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.13.
927	黄金田の畦に燃え立つ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.13.
928	辻地蔵供華に混りし曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.13.
929	供華筒に紅白並ぶ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.13.
930	李香蘭静に逝けり曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.13.
931	曼珠沙華この世の花と咲き立てり	曼珠沙華	秋	14.10.14.
932	曼珠沙華目立つ女の性（さが）持てり	曼珠沙華	秋	14.10.14.
933	曼珠沙華花屋に並ぶ花になり	曼珠沙華	秋	14.10.14.
934	曼珠沙華一抱えして行く農婦	曼珠沙華	秋	14.10.14.
935	曼珠沙華川に沿いたる緋毛氈」	曼珠沙華	秋	14.10.14.
936	曼珠沙華女の性を剥き出しに	曼珠沙華	秋	14.10.14.
937	鎌振るい次つぎと刈る曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.14.
938	男殺め紅唇光る曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.14.
939	俺に用か？振り向く男曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.14.
940	曼珠沙華身を捨つるほどの女かな	曼珠沙華	秋	14.10.14.
941	わが庭に飛び火をしたり曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.15.
942	曼珠沙華赤毛女の深情け	曼珠沙華	秋	14.10.15.
943	陰毛も赤毛なりしか曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.15.
944	アマゾネス乳房振り立て曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.15.
945	木漏れ日に半身を見せる曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.15.
946	陰門も火焔となりて曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.15.
947	狐花聖火繋いで山の墓地	狐花	秋	14.10.15.
948	曼珠沙華暗渠の前で途切れけり	曼珠沙華	秋	14.10.15.
949	朝採りの野菜と並ぶ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.15.
950	供華筒も墓地の裏にも曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.15.
951	無縁墓誰が挿したか曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.16.
952	切通し抜けて樹間に曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.16.
953	薄暗き藪に妖しく曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.16.
954	切岸の縁で手招く彼岸花	彼岸花	秋	14.10.16.
955	棚田の畦火焔の縁取り曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.16.
956	曼珠沙華手折らんとして土手に這ふ	曼珠沙華	秋	14.10.16.
957	卑弥呼なら髪簪に曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.16.
958	官兵衛と言ふ名の酒や新走り	新走り	秋	14.10.16.
959	舌の奥ころと転がす新酒会	新酒	秋	14.10.16.
960	秋暁や妻起き行けば吾も起き	秋暁	秋	14.10.16.
961	読みさしの本伏す机上秋意かな	秋意	秋	14.10.17.
962	早朝の庭に満ちたる秋意かな	秋意	秋	14.10.17.
963	女郎花男郎花呼ぶごとく揺れ	女郎花・男郎花	秋	14.10.17.
964	そこはかとなき香のうれし藤袴	藤袴	秋	14.10.17.
965	菊芋の花咲き揃ふ川辺かな	菊芋	秋	14.10.17.
966	抜きん出て菊芋の花並ぶ土手	菊芋	秋	14.10.17.
967	はびこりし葛の葉払ふ男たち	葛	秋	14.10.17.
968	葛の葉の重なる中に瀬音あり	葛	秋	14.10.17.
969	花こぼすために白萩風呼べり	白萩	秋	14.10.17.
970	花こぼし白萩ひそと得たり顔	白萩	秋	14.10.17.
971	人影なしごろりごろりと芋水車	芋水車	秋	14.10.18.
972	老農婦菜洗いをり芋水車	芋水車	秋	14.10.18.
973	餌啄む鶏のかたへに芋水車	芋水車	秋	14.10.18.
974	指先で剥かねば食へぬ衣被	衣被	秋	14.10.18.
975	鶏頭の数かぞへたり獺祭忌	獺祭忌	秋	14.10.18.
976	病みてなほ食衰へず糸瓜の忌	糸瓜忌	秋	14.10.18.
977	春夏を避けしわけあり秋の蝶	秋の蝶	秋	14.10.18.
978	春夏を避けし算段秋の蝶	秋の蝶	秋	14.10.18.
979	嫌はれの身と知りつつも穴まどひ	穴惑ひ	秋	14.10.18.
980	上衣着て句会に向かふ雁渡し	雁渡し	秋	14.10.18.
981	立ち入れぬ被災の里や蚯蚓鳴く	蚯蚓鳴く	秋	14.10.19.
982	首垂れて南蛮煙管なに思ふ	南蛮煙管・思い草	秋	14.10.19.
983	思草恋の焔（ほむら）に頬染むる	思い草	秋	14.10.19.
984	寅さんの句碑立つ鹿島秋の虹	秋の虹	秋	14.10.19.
985	陰門の燃へ立つ焔曼珠沙華	曼珠沙華	秋	14.10.19.
986	鶏頭は師の影踏まぬ距離で愛ず	鶏頭	秋	14.10.19.
987	師の影を踏んで眺むる鶏頭花	鶏頭花	秋	14.10.19.
988	手に触れば妖しき姿態鶏頭花	鶏頭花	秋	14.10.19.
989	手に触れば姿態妖しき鶏頭花	鶏頭花	秋	14.10.19.
990	鶏頭は秘所に連なる妖花かな	鶏頭	秋	14.10.19.
991	鶏頭の数を数へる獺祭忌	鶏頭・獺祭忌	秋	14.10.20.
992	早稲の香や瑞穂の国の文字浮ぶ	早稲の香	秋	14.10.20.
993	早稲稔るなぞへ黄金の千枚田	早稲	秋	14.10.20.
994	早稲の香やなぞへ黄金の千枚田	早稲の香	秋	14.10.20.
995	早稲の香やなぞへ黄金の千枚田	早稲の香	秋	14.10.20.
996	早稲の香や風立ち上る千枚田	早稲の香	秋	14.10.20.
997	秋鯖やしゃりより厚き棒の鮨	秋鯖	秋	14.10.20.
998	秋鯖の厚きが嬉し棒の鮨	秋鯖	秋	14.10.20.
999	秋鯖の厚きばってら頬張る夜	秋鯖	秋	14.10.20.
1000	太刀魚の刀身食めり鮨二貫	太刀魚	秋	14.10.20.

♪ＢＧＭ：Ｂaｃｈ［Goldberg Variations31aria］arranged by Kumamoto_Mari♪

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