１日１０句１０００句を詠む

鈴童の遊び

No.	句	季　　語	季	作句日
1	すらすらと草書軽やか一葉忌	一葉忌	冬	15.12.1.
2	早すぎる生まれ惜しまる一葉忌	一葉忌	冬	15.12.1.
3	厚焼きの一葉せんべい冬木の芽	冬木の芽	冬	15.12.1.
4	厚焼きの煎餅食めり一葉忌	一葉忌	冬	15.12.1.
5	煮立ちたる肉ほかほかと桜鍋	桜鍋	冬	15.12.1.
6	馬道を少し歩いて桜鍋	桜鍋	冬	15.12.1.
7	酒の盃重ねて温し桜鍋	桜鍋	冬	15.12.1.
8	煮ゆる音をちこち響く桜鍋	桜鍋	冬	15.12.1.
9	階段を仲居の運ぶ桜鍋	桜鍋	冬	15.12.1.
10	首のボタン外して突く桜鍋	桜鍋	冬	15.12.1.
11	馬面の荷風も突く桜鍋	桜鍋	冬	15.12.1.
12	桜鍋食ひて蹴飛ばす憂世かな	桜鍋	冬	15.12.1.
13	すらすらと草書原稿一葉忌	一葉忌	冬	15.12.1.
14	おでこから滴る汗や桜鍋	桜鍋	冬	15.12.1.
15	をちこちで手締めにぎやか三の酉	三の酉	冬	15.12.2.
16	女らも骨しゃぶりをり鮟鱇鍋	鮟鱇鍋	冬	15.12.2.
17	寄鍋を囲んで声の入り乱れ	寄鍋	冬	15.12.2.
18	寄鍋の湯気を挟んで老夫婦	寄鍋	冬	15.12.2.
19	煮凝のぷるると揺れて出て来たり	煮凝	冬	15.12.2.
20	煮凝はどれも四角の決まりかな	煮凝	冬	15.12.2.
21	早よ食えと煮凝へたり始めたり	煮凝	冬	15.12.2.
22	煮凝のすっと通りしルージュかな	煮凝	冬	15.12.2.
23	風呂吹の熱々を食む宿の夜	風呂吹	冬	15.12.2.
24	風呂吹を口に転がし湯気吐けり	風呂吹	冬	15.12.2.
25	箸先の海鼠腸啜り独り酒	海鼠腸	冬	15.12.2.
26	琴線を震はすけふは義士まつり	義士祭	冬	15.12.3.
27	義士の日や熱き鯛焼き舌を焼く	義士の日	冬	15.12.3.
28	ねぎま汁熱々を食ふ板場めし	ねぎま汁	冬	15.12.3.
29	欠礼の葉書溜りし嵐雪忌	嵐雪忌	冬	15.12.3.
30	僧形の俳画の像や嵐雪忌	嵐雪忌	冬	15.12.3.
31	三の酉済んで熊手の残りもの	三の酉・熊手	冬	15.12.3.
32	おでん屋台ふらり舞ひ込む落葉かな	おでん	冬	15.12.3.
33	石彫の庭を歩めば枇杷の花	枇杷の花	冬	15.12.3.
34	枇杷の花くち寄せ甘き香を吸へり	枇杷の花	冬	15.12.3.
35	もみ殻から一つまた一つ冬林檎	冬林檎	冬	15.12.3.
36	冬りんご二つに切れば蜜の層	冬林檎	冬	15.12.3.
37	仏吐く空也の忌日つむじ風	空也忌	冬	15.12.3.
38	獣らをやさしく抱いて山眠る	山眠る	冬	15.12.4.
39	獣らを懐深く山眠る	山眠る	冬	15.12.4.
40	獣らを懐に入れ山眠る	山眠る	冬	15.12.4.
41	おでん屋台ときに落葉も舞ひ込めり	おでん・落葉	冬	15.12.4.
42	おでん屋台落葉の浮ぶ風雅かな	おでん・落葉	冬	15.12.4.
43	煮凝をすっと吸ひ込むルージュかな	煮凝	冬	15.12.4.
44	農小屋に農具仕舞へば雪蛍	雪蛍	冬	15.12.4.
45	畑仕事終へるきっかけ雪ぼたる	雪蛍	冬	15.12.4.
46	塾帰り子らが足止む雪蛍	雪蛍	冬	15.12.4.
47	下校の鐘鳴る校庭に雪蛍	雪蛍	冬	15.12.4.
48	からすの子鳴る校庭に雪蛍	雪蛍	冬	15.12.4.
49	熊手買ひ手締めにぎやか異国客	雪蛍	冬	15.12.4.
50	玉子酒玉子は抜きで頼みけり	玉子酒	冬	15.12.5.
51	熱燗に酔ふほど滾る忿怒かな	熱燗	冬	15.12.5.
52	風邪引いて背中丸める小春かな	風・小春	冬	15.12.5.
53	鯛焼を尾から食べる子頭の子	鯛焼	冬	15.12.5.
54	総入れ歯黙々と食むおでん鍋	おでん鍋	冬	15.12.5.
55	好き嫌いなぜか許さるおでん鍋	おでん鍋	冬	15.12.5.
56	好き嫌い大目に見らるおでん鍋	おでん鍋	冬	15.12.5.
57	玉子三つ食べて叱らるおでん鍋	おでん鍋	冬	15.12.5.
58	竹輪麩に水団想うふおでん鍋	おでん鍋	冬	15.12.5.
59	闇汁にひとを食ったる物も入れ	闇汁	冬	15.12.5.
60	家路来てからだ温めし納豆汁	納豆汁	冬	15.12.5.
61	小春日やサッカーボール蹴り返す	小春日	冬	15.12.5.
62	獣らを眠らせ山も眠りけり	山眠る	冬	15.12.5.
63	「からすの子」響く校庭雪蛍	雪蛍	冬	15.12.6.
64	「からすの子」流る校庭雪蛍	雪蛍	冬	15.12.6.
65	日当たりへ眠りつ移る浮寝鳥	浮寝鳥	冬	15.12.6.
66	どれもみな首折り曲げて浮寝鳥	浮寝鳥	冬	15.12.6.
67	艶めいた話途絶へて石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.6.
68	艶話遠くに薄れ石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.6.
69	艶やかな葉に流星紋石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.6.
70	崩し文字読めぬ句碑あり石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.6.
71	崩し字の薄れし句碑や石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.6.
72	石蕗の花嫌はるほどの勁き草	石蕗の花	冬	15.12.6.
73	潮風の強き切岸石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.6.
74	輪郭線太く描きたし石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.6.
75	輪郭線太く描き上ぐ石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.6.
76	庭隅の捨鉢に咲く冬菫	冬菫	冬	15.12.6.
77	パソコンを開き年賀のメール読む	年賀	新年	15.12.7.
78	初春やパソコン開きメール読む	初春	新年	15.12.7.
79	後いくら残る命や年新た	年新た	新年	15.12.7.
80	初春や砲声響く国もあり	初春	新年	15.12.7.
81	正月の路地に子供の姿なし	正月	新年	15.12.7.
82	まだ酒の飲める体や年新た	年新た	新年	15.12.7.
83	相撲部屋土俵清しき淑気かな	淑気	新年	15.12.7.
84	人参の炊込み飯や母の味	人参	冬	15.12.7.
85	セロリ食むかりかりと食む朝の卓	セロリ	冬	15.12.7.
86	風呂吹と思ひて食むや煮大根	風呂吹・煮大根	冬	15.12.7.
87	義士の日に八日は知らぬ日本人	義士の日	冬	15.12.7.
88	さくさくと霜柱踏み朝の畑	霜柱	冬	15.12.7.
89	霜柱溶けだす前の畑仕事	霜柱	冬	15.12.7.
90	人は人殺す阿保かと寒鴉	寒鴉	冬	15.12.7.
91	待ちきれず早や日溜りに犬ふぐり	犬ふぐり	冬	15.12.8.
92	稽古待つ土俵清しき淑気かな	淑気	新年	15.12.8.
93	長閑さや隣の三毛の大あくび	長閑	冬	15.12.8.
94	初大師飴包丁の音踊る	初大師	新年	15.12.8.
95	飴包丁響く参道初大師	初大師	新年	15.12.8.
96	僧正のお練りまばゆき初不動	初不動	新年	15.12.8.
97	初天神妻の願ひの長きこと	初天神	新年	15.12.8.
98	妻よりも先に召させと初薬師	初薬師	新年	15.12.8.
99	ボタン押し諭し聞きたり初閻魔	初閻魔	新年	15.12.8.
100	文字通り尾羽打ち枯らし冬の蝶	冬の蝶	冬	15.12.8.
101	吐き溜めに尾羽打ち枯れし冬の蝶	冬の蝶	冬	15.12.8.
102	霜枯の畑に鴉の晒首	霜枯	冬	15.12.8.
103	死囚詠みし凜烈の句や冬芒	冬芒	冬	15.12.9.
104	十二月八日はさりげなく過ぎぬ	十二月八日	冬	15.12.9.
105	十二月八日無言のうちに過ぐ	十二月八日	冬	15.12.9.
106	師走早や八日となりぬ開戦日	師走	冬	15.12.9.
107	十二月忘れて欲しくない日あり	十二月	冬	15.12.9.
108	十二月忘れて欲しくない八日	十二月	冬	15.12.9.
109	欠礼の葉書の溜まる十二月	十二月	冬	15.12.9.
110	賀状書く先ず欠礼を取り分けて	賀状書き	冬	15.12.9.
111	取り分ける欠礼増へし賀状書き	賀状書き	冬	15.12.9.
112	池普請最後にのこる主の鯉	池普請	冬	15.12.9.
113	二句一章詠むときめきや乙字の忌	乙字の忌	冬	15.12.9.
114	寄鍋やよくも割れずに四十年	寄鍋	冬	15.12.9.
115	寄鍋に呼ばぬ客来て座を作る	寄鍋	冬	15.12.9.
116	寄鍋を囲む幸せこれでよし	寄鍋	冬	15.12.9.
117	寄鍋を囲む仲間も老ひにけり	寄鍋	冬	15.12.9.
118	セーターの胸の膨らみ恋初め	セーター	冬	15.12.10.
119	煮立てたる熱燗を出す下戸の妻	熱燗	冬	15.12.10.
120	煮立つほど熱き鰭酒呑む一夜	鰭酒	冬	15.12.10.
121	鰭酒の蓋開け点火いざ乾杯	鰭酒	冬	15.12.10.
122	冬の灯に黒楽の艶あたゝかし	冬灯	冬	15.12.10.
123	ぼっと炎上りし鰭の酒に酔ふ	鰭酒	冬	15.12.10.
124	鰭酒てふ直ぐ効く酒に身を委ね	鰭酒	冬	15.12.10.
125	鰭酒を舌焼くほどにぐいと呑む	鰭酒	冬	15.12.10.
126	鰭酒に老漁夫の背のぐいと伸び	鰭酒	冬	15.12.10.
127	鰭酒に青炎上げて宴始む	鰭酒	冬	15.12.10.
128	大皿の河豚刺しの花崩れ初む	河豚	冬	15.12.10.
129	河豚刺しの大皿いまや関ケ原	河豚	冬	15.12.11.
130	鰭酒に青炎上げて宴闌けり	鰭酒	冬	15.12.11.
131	鰭酒に仲居の点火きびきびと	鰭酒	冬	15.12.11.
132	鰭酒に仲居の点火手際よし	鰭酒	冬	15.12.11.
133	寄鍋に不意の客来て座を作る	寄鍋	冬	15.12.11.
134	湯たんぽに足先探る夜更けかな	湯たんぽ	冬	15.12.11.
135	餅焼きし火鉢も遠き昭和かな	火鉢	冬	15.12.11.
136	餅焼きし火鉢もいまや庭の池	火鉢	冬	15.12.11.
137	冬耕の人影伸ばす西没日	冬耕	冬	15.12.11.
138	北風に背中押されて縄のれん	北風	冬	15.12.11.
139	玉子酒玉子除きて一気飲み	玉子酒	冬	15.12.11.
140	木魚の響き高らか淑気満つ	淑気	冬	15.12.12.
141	鎮守社へ行き交ふ人の淑気かな	淑気	冬	15.12.12.
142	句会にも着物姿の淑気かな	淑気	冬	15.12.12.
143	卓に着くいつもの顔も淑気かな	淑気	冬	15.12.12.
144	布袋腹擦れば昇る淑気かな	淑気	冬	15.12.12.
145	玉砂利を歩む靴音淑気満つ	淑気	冬	15.12.12.
146	湧水の瀬音を包む淑気かな	淑気	冬	15.12.12.
147	人日やここで行事も一段落	人日	冬	15.12.12.
148	人日や畑に鍬振る人の影	人日	冬	15.12.12.
149	人日やてんてこ舞いの美容室	人日	冬	15.12.12.
150	春浅し猫の動かぬソファかな	春浅し	冬	15.12.12.
151	春浅し雪ん子いまだニメートル	春浅し	冬	15.12.12.
152	谷地梻（やちだも）と椴松（とどまつ）往き来雪ぼたる	雪蛍	冬	15.12.12.
153	木から木へ種のため移る雪ぼたる	雪蛍	冬	15.12.12.
154	賞でるよし貶すもよしや雪ぼたる	雪蛍	冬	15.12.12.
155	鼻歌を歌いつ飛ぶや雪ぼたる	雪蛍	冬	15.12.12.
156	冬桜御苑の空に溶け込めり	冬桜	冬	15.12.13.
157	冬桜御苑の空に紛れをり	冬桜	冬	15.12.13.
158	蜜吸ふ虫目ざとく来たり寒桜	寒桜	冬	15.12.13.
159	底冷への風に耐へをり冬桜	冬桜	冬	15.12.13.
160	花一枝茶室を飾る寒桜	寒桜	冬	15.12.13.
161	墨堤を抜け行く風や冬桜	冬桜	冬	15.12.13.
162	そよと吹く風の冷たき寒桜	寒桜	冬	15.12.13.
163	冬桜気づけば誰も花惜しむ	冬桜	冬	15.12.13.
164	あらと声上げて駆け寄る冬桜	冬桜	冬	15.12.13.
165	写真写り悪さを恥じる冬桜	冬桜	冬	15.12.13.
166	鉄工場槌音高し冬桜	冬桜	冬	15.12.13.
167	あらと足止めて見上ぐる冬桜	冬桜	冬	15.12.13.
168	好き嫌ひなぜか問われぬおでん鍋	おでん	冬	15.12.13.
169	寄鍋の雑炊となり宴果つる	寄鍋	冬	15.12.13.
170	病み上がり髭剃り落とす漱石忌	漱石忌	冬	15.12.14.
171	髭取らば童顔なりし漱石忌	漱石忌	冬	15.12.14.
172	処刑の刻待つ四十年や漱石忌（獄中がん闘病の確定死刑囚、大道寺將司に）	漱石忌	冬	15.12.14.
173	風邪ほどで身を持て余す寅彦忌	寅彦忌	冬	15.12.14.
174	揚浜の塩羊羹や漱石忌（能登・揚浜塩田で）	漱石忌	冬	15.12.14.
175	注文の本取りに行く青邨忌	青邨忌	冬	15.12.14.
176	青邨忌古色の似合ふ法科かな	青邨忌	冬	15.12.14.
177	幼逝の弟妹も古希一葉忌	一葉忌	冬	15.12.14.
178	テレビの音妻に叱られ青畝の忌	青畝忌	冬	15.12.14.
179	字幕にしテレビ静かに青畝の忌	青畝忌	冬	15.12.14.
180	吐き尽くせ何にこだわる寒蜆	寒蜆	冬	15.12.14.
181	寒蜆胸の閊へを吐き切るや	寒蜆	冬	15.12.14.
182	国越へて海越へて来し冬の雁	冬の雁	冬	15.12.14.
183	冬の雁はたりはたりと鞍部越ゆ	冬の雁	冬	15.12.14.
184	冬の雁はたりはたりと越ゆ稜線	冬の雁	冬	15.12.14.
185	干し大根軒に艶めく脚線美	干し大根	冬	15.12.14.
186	寒禽の鳴き交わしゐる老梅樹	寒禽	冬	15.12.15.
187	いろいろといろいろありて日を数ぞふ	数へ日	冬	15.12.15.
188	数へ日や処刑待つこと四十年（大道寺將司に）	数へ日	冬	15.12.15.
189	海の底昏きを生きる海鼠かな	海鼠	冬	15.12.15.
190	死の箱に生きし海鼠の四十年	海鼠	冬	15.12.15.
191	海鼠にも心燃え立つ日のあらむ	海鼠	冬	15.12.15.
192	隻手の翁妖怪連れて冬銀河（水木しげる逝く）	冬銀河	冬	15.12.15.
193	がん飼ふと詠みし死囚の年の暮れ	年の暮れ	冬	15.12.15.
194	達磨忌や死と面壁の四十年	達磨忌	冬	15.12.15.
195	団欒を演出したる聖夜かな	聖夜	冬	15.12.15.
196	その昔ケーキ行き交ふ聖夜かな	聖夜	冬	15.12.15.
197	咳すれば咳の数だけ疎まれぬ	咳	冬	15.12.15.
198	疎まれて同情されぬ咳くしゃみ	咳	冬	15.12.15.
199	疎まれて自制の効かぬ咳悲し	咳	冬	15.12.15.
200	咳止めの飴左右から来て離席	咳	冬	15.12.15.
201	抑えんとすれば無性に咳弾け	咳	冬	15.12.15.
202	咳止め飴手渡され席外す	咳	冬	15.12.15.
203	古里のお国言葉や石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.16.
204	古里のお国訛りや石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.16.
205	胸の閊え吐き出し清し寒蜆	寒蜆	冬	15.12.16.
206	死囚には夢のまた夢日向ぼこ（大道寺將司に）	日向ぼこ	冬	15.12.16.
207	ゲハなどと揶揄せし吾も木の葉髪	木の葉髪	冬	15.12.16.
208	水洟や溶ける脳漿かも知れず	水洟	冬	15.12.16.
209	咳止めの飴回り来て含意知る	咳	冬	15.12.16.
210	玉子酒素のまま煮立て飲みにけり	玉子酒	冬	15.12.16.
211	何がよくて越冬決めし燕かな	越冬燕	冬	15.12.16.
212	掛け合ひを手短に終え三十三才（みそさざい）	三十三才	冬	15.12.16.
213	日溜りに二輪寄り添ひ冬すみれ	冬菫	冬	15.12.16.
214	アロエ咲く伊豆の段々畑かな	アロエの花	冬	15.12.16.
215	沖行くは白き客船花アロエ	アロエの花	冬	15.12.16.
216	潮風やなぞへの畑のアロエ咲く	アロエの花	冬	15.12.16.
217	ずり落ちる眼鏡押し上げ日向ぼこ	日向ぼこ	冬	15.12.16.
218	高層ビル撓り続けし春の地震（なへ）	春	冬	15.12.17.
219	大津波実況テレビで凍りつく	凍る	冬	15.12.17.
220	凍りつく実況テレビ大津波	凍る	冬	15.12.17.
221	照葉よし屈託見せぬ石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.17.
222	照葉よし屈託なげに石蕗の花	石蕗の花	冬	15.12.17.
223	桜樹の根方を守り竜の玉	龍の玉	冬	15.12.17.
224	龍の玉握りし嬰の手を染めぬ	龍の玉	冬	15.12.17.
225	龍の玉握りし嬰の手の靑し	龍の玉	冬	15.12.17.
226	寒林を走り抜け行く塾帰り	寒林	冬	15.12.17.
227	寒林にトランペットの音冴ゆる	寒林	冬	15.12.17.
228	寒林に独りペットを吹く少年	寒林	冬	15.12.17.
229	寒林に温もり生まる長いキス	寒林	冬	15.12.17.
230	寒林の奥から響く子らの声	寒林	冬	15.12.17.
231	悴みし両手湯につけ人心地	悴む	冬	15.12.17.
232	上からの目線で生きる寒鴉	寒鴉	冬	15.12.17.
233	小馬鹿にせし上から目線寒鴉	寒鴉	冬	15.12.17.
234	電線を塒（ねぐら）に眠る寒鴉	寒鴉	冬	15.12.17.
235	喇叭吹く救世軍の社会鍋	社会鍋	冬	15.12.17.
236	喇叭から讃美歌流る社会鍋	社会鍋	冬	15.12.17.
237	三月の十一日を忘れまじ	3.11.	冬	15.12.17.
238	鰤起し輪島朝市婆の声	鰤起し	冬	15.12.18.
239	鰤起し波朗句碑にも響きけり	鰤起し	冬	15.12.18.
240	鰤起し能登巌門に飛沫（しぶき）散る	鰤起し	冬	15.12.18.
241	口能登の原発揺する鰤起し	鰤起し	冬	15.12.18.
242	ゆったりと回る風車や鰤起し	鰤起し	冬	15.12.18.
243	朝市の婆ちゃの声や鰤起し	鰤起し	冬	15.12.18.
244	悪筆のままに老いたり吉書揚	吉書揚	冬	15.12.18.
245	爆竹の音かも知れずどんど鳴る	どんど	冬	15.12.18.
246	どんど囲み赤鬼のごと顔揺らぐ	どんど	冬	15.12.18.
247	どんどの火赤鬼めかす顔囲む	どんど	冬	15.12.18.
248	どんどの火赤鬼めかす顔並ぶ	どんど	冬	15.12.18.
249	老若の赤鬼囲むどんどかな	どんど	冬	15.12.18.
250	買初はパソコン用紙ひと梱包	買初め	冬	15.12.18.
251	買初は句会に使うペン五本	買初め	冬	15.12.18.
252	買初は立食い蕎麦となりにけり	買初め	冬	15.12.18.
253	冬萌やくくくっと笑ふ気配あり	冬萌	冬	15.12.19.
254	ふむふむと人立ち止まる冬木の芽	冬木の芽	冬	15.12.19.
255	葉の間（はざま）靑目寄せ合ふ龍の玉	龍の玉	冬	15.12.19.
256	酒の友伽羅蕗となる庭の石蕗	石蕗（つわ）	冬	15.12.19.
257	伽羅蕗に炊き上がりたる庭の石蕗	石蕗	冬	15.12.19.
258	午後の日を呼んで息づく藪柑子	藪柑子	冬	15.12.19.
259	故ありて春を待てぬか冬蒲公英	冬蒲公英	冬	15.12.19.
260	冬蒲公英尿かけてゆく散歩犬	冬蒲公英	冬	15.12.19.
261	せっかちな遺伝子故か冬蒲公英	冬蒲公英	冬	15.12.19.
262	咲いちゃったこれも定めと冬蒲公英	冬蒲公英	冬	15.12.19.
263	草木にもせっかちがゐて冬蒲公英	冬蒲公英	冬	15.12.19.
264	枯すすき昭和の唄も遠くなり	枯芒	冬	15.12.19.
265	ダイナマイト腹に含みし海鼠かも	海鼠	冬	15.12.20.
266	いろいろと言はれし海鼠黙のまま	海鼠	冬	15.12.20.
267	いろいろと言はれど海鼠口閉ざす	海鼠	冬	15.12.20.
268	いろいろと言はれど海鼠頷かず	海鼠	冬	15.12.20.
269	いろいろと言はれど海鼠無関心	海鼠	冬	15.12.20.
270	なまこにはなまこの悩みありさうな	海鼠	冬	15.12.20.
271	黙千年万年続くなまこかな	海鼠	冬	15.12.20.
272	身を守る術なきなまこ声もなし	海鼠	冬	15.12.20.
273	賽の目に切られしなまこ黙のまま	海鼠	冬	15.12.20.
274	風花を教へてくれし入日かな	風花	冬	15.12.20.
275	ごみ出し日枯菊の束積まれをり	枯菊	冬	15.12.21.
276	ごみ出し日枯菊置かる集積所	枯菊	冬	15.12.21.
277	枯菊のごみ出しの日に捨てらるる	枯菊	冬	15.12.21.
278	枯菊を焚くもならずにごみ出し日	枯菊	冬	15.12.21.
279	枯菊を束ねて哀しごみ出し日	枯菊	冬	15.12.21.
280	枯菊や輝きし日々振り返る	枯菊	冬	15.12.21.
281	枯菊になほ伝ひ行く虫の影	枯菊	冬	15.12.21.
282	枯れてなほずしりと重き菊の束	枯菊	冬	15.12.21.
283	枯菊の三束置かれし集積所	枯菊	冬	15.12.21.
284	枯菊の括り解かれて抜かれけり	枯菊	冬	15.12.21.
285	枯菊や人も括られ捨つらるる	枯菊	冬	15.12.21.
286	卓に着く家族の顔の淑気かな	淑気	新年	15.12.21.
287	耳澄まし足音待つや春浅し	春浅し	春	15.12.21.
288	明日から日を伸ばしゆく冬至かな	冬至	冬	15.12.21.
289	お通しにかぼちゃ出てくる冬至かな	冬至	冬	15.12.21.
290	夕日背に吾影伸びる冬至かな	冬至	冬	15.12.21.
291	ひょろひょろと吾影伸ばす冬至かな	冬至	冬	15.12.21.
292	お通しにかぼちゃの煮付けふ冬至	冬至	冬	15.12.22.
293	ふうふうと風呂吹食みつ友と酒	風呂吹	冬	15.12.22.
294	風呂吹と湯豆腐楽し俳ごころ	風呂吹・湯豆腐	冬	15.12.22.
295	風呂吹を食みつ静かに盃交す	風呂吹	冬	15.12.22.
296	手前味噌かけし風呂吹禅の寺	風呂吹	冬	15.12.22.
297	風呂吹を食みつ手酌の独りかな	風呂吹	冬	15.12.22.
298	宿坊や風呂吹でやる般若湯	風呂吹	冬	15.12.22.
299	舌を焼くほどがよろしき根深汁	根深汁	冬	15.12.22.
300	盃伏せてまずひと啜り根深汁	根深汁	冬	15.12.22.
301	セロリ食むぱりぱりと食むサラダバー	セロリ	冬	15.12.22.
302	セロリ食み人参を食みハイボール	セロリ	冬	15.12.22.
303	まずセロリ音立てて食むサラダバー	セロリ	冬	15.12.22.
304	藪の奥笹子の鳴き音気忙しく	笹子	冬	15.12.22.
305	雑木山声なく過る冬の鵙	冬の鵙	冬	15.12.22.
306	右左縺れ歩きの千鳥発つ	千鳥	冬	15.12.22.
307	冬ざれや地元が許す再稼働	冬ざれ	冬	15.12.22.
308	蹲踞して構え忘れぬ枯蟷螂	枯蟷螂	冬	15.12.22.
309	枯蟷螂なれどみどりの奴もゐて	枯蟷螂	冬	15.12.22.
310	枯蟷螂なれどみどりを残しけり	枯蟷螂	冬	15.12.22.
311	ほっとけと妻を諌めて冬の蠅	冬の蠅	冬	15.12.23.
312	くしゃみして席替られるバスの中	くしゃみ	冬	15.12.23.
313	風邪引いて病む人の苦を思ひ遣る	風邪引く	冬	15.12.23.
314	咳抑へ句会に出たる地獄かな	咳	冬	15.12.23.
315	ぎりぎりのぎりぎりに書く賀状かな	賀状書く	冬	15.12.23.
316	森走る夜光の眼あり冬銀河	冬銀河	冬	15.12.23.
317	見上ぐれば音なきままに冬の星	冬の星	冬	15.12.23.
318	数へ日ややらねばならぬことばかり	数へ日	冬	15.12.23.
319	ボーナスの縁が切れたる二十年	ボーナス	冬	15.12.23.
320	三年は生きるつもりの日記買ふ	日記買ふ	冬	15.12.23.
321	新しき暦背にして古暦	振る暦	冬	15.12.23.
322	係留の鉄鎖にならぶ冬鷗	冬鷗	冬	15.12.24.
323	係留の鉄鎖肩寄せ冬鷗	冬鷗	冬	15.12.24.
324	世界クルーズ甲板髙し冬鷗	冬鷗	冬	15.12.24.
325	手を汚し口を汚して松葉蟹	松葉蟹	冬	15.12.24.
326	てんでんにせせり食みをりずわい蟹	ずわい蟹	冬	15.12.24.
327	酒の盃置き去りにして毛蟹食ふ	ずわい蟹	冬	15.12.24.
328	盃を置いてひたすらずわい蟹	毛蟹	冬	15.12.24.
329	食ひ散らすとはこのことか松葉蟹	松葉蟹	冬	15.12.24.
330	箸の先つると滑りし千枚漬	千枚漬	冬	15.12.24.
331	箸先で逃れる素ぶり千枚漬	千枚漬	冬	15.12.24.
332	白き肌つると逃れし千枚漬	千枚漬	冬	15.12.24.
333	千枚漬舌に載せたる白い肌	千枚漬	冬	15.12.24.
334	京美人食む心地して千枚漬	千枚漬	冬	15.12.24.
335	熱々がぽんと出さるるねぎま汁	ねぎま汁	冬	15.12.24.
336	粕汁でぽっと赤らむ下戸の妻	粕汁	冬	15.12.24.
337	粕汁でぽっと頬染む下戸の妻	粕汁	冬	15.12.24.
338	粕汁で頬を染めるや下戸の妻	粕汁	冬	15.12.24.
339	冬の虹人せかせかと行き交へり	冬の虹	冬	15.12.25.
340	冬虹や吉凶を言ふ人の声	冬の虹	冬	15.12.25.
341	冬の虹富士を外して立ちにけり	冬の虹	冬	15.12.25.
342	重なりし雲の上なる冬の虹	冬の虹	冬	15.12.25.
343	超高層ビル群を背に冬の虹	冬の虹	冬	15.12.25.
344	靄かかる山並の上冬の虹	冬の虹	冬	15.12.25.
345	じゃんけんぽんする子もをらず冬夕焼	冬夕焼	冬	15.12.25.
346	冬夕焼路地ゆっくりと灯油売り	冬夕焼	冬	15.12.25.
347	日向ぼこしつつたこ焼食む母子	日向ぼこ	冬	15.12.25.
348	冬霧や吊橋揺れつ軋みけり	冬霧	冬	15.12.25.
349	泥つきの葱持ち帰り妻往生	葱	冬	15.12.25.
350	メールでとならず今年も賀状書く	賀状書く	冬	15.12.25.
351	風化とは忘却の罪災地凍つ	凍つ	冬	15.12.25.
352	原発の利を説く国や底冷える	底冷え	冬	15.12.25.
353	裏切りし神話学ばず冬ざるる	冬ざるる	冬	15.12.25.
354	除染せぬ森轟轟と雪嵐	雪嵐	冬	15.12.25.
355	除染せぬ森咆哮す雪嵐	雪嵐	冬	15.12.25.
356	忘るなと魂の声冬怒涛	冬怒涛	冬	15.12.25.
357	薫風と言へどもときに厠風	薫風	夏	15.12.26.
358	送る船つなぐテープや冬日和	冬日和	冬	15.12.26.
359	瀬音まで繰り言に似て冬の水	冬の水	冬	15.12.26.
360	枯庭の色引き立たせ敷松葉	敷松葉	冬	15.12.26.
361	ジングルベル流れず過ぎしクリスマス	クリスマス	冬	15.12.26.
362	電飾のとなかい踊る聖夜かな	聖夜	冬	15.12.26.
363	神様をあなたと呼びし降誕祭	降誕祭	冬	15.12.26.
364	漂泊の中に身を置き時雨の忌	時雨忌	冬	15.12.26.
365	漂泊と詩心語りて翁の忌	翁忌	冬	15.12.26.
366	漂泊と詩心テーマに翁の忌	翁忌	冬	15.12.26.
367	漂泊の言葉で遊ぶ翁の忌	翁忌	冬	15.12.26.
368	助平もほどほど残し一茶の忌	一茶忌	冬	15.12.26.
369	笠こそは吾棲家なり時雨の忌	時雨忌	冬	15.12.26.
370	蝋梅の花に顔寄す人の影	蝋梅	冬	15.12.27.
371	蝋梅の艶ある花の日に眩し	蝋梅	冬	15.12.27.
372	先駆けを競ひ蝋梅犬ふぐり	蝋梅・犬ふぐり	冬	15.12.27.
373	蝋梅の咲きし証しや人の影	蝋梅	冬	15.12.27.
374	蝋梅の花を弾けば鳴るかとも	蝋梅	冬	15.12.27.
375	蝋梅の花のカリオン鳴り初むる	蝋梅	冬	15.12.27.
376	蝋梅の花の目覚まし鳴りし朝	蝋梅	冬	15.12.27.
377	蝋梅の花の目覚まし鳴りにけり	蝋梅	冬	15.12.27.
378	蝋梅や紺碧の空切り取りて	蝋梅	冬	15.12.27.
379	蝋梅にやあと声かく犬ふぐり	蝋梅	冬	15.12.27.
380	早咲きの花と向き合ひ返り花	返り花	冬	15.12.27.
381	吾こそは先駆けと言ふ返り花	返り花	冬	15.12.27.
382	返り花人にも似たる早とちり	返り花	冬	15.12.27.
383	虚も実もみんな現実返り花	返り花	冬	15.12.27.
384	行違いとも思はれず返り花	返り花	冬	15.12.27.
385	返り花立ち止まる人過ぎる人	返り花	冬	15.12.27.
386	八重咲きの雅ふっくら冬桜	冬桜	冬	15.12.28.
387	吹き過ぎる風荒々し冬桜	冬桜	冬	15.12.28.
388	騒がしき時を外して冬桜	冬桜	冬	15.12.28.
389	車座の人なく咲けり冬桜	冬桜	冬	15.12.28.
390	気づく人しみじみ見上ぐ冬桜	冬桜	冬	15.12.28.
391	ふっくらと八重咲きみやび冬桜	冬桜	冬	15.12.28.
392	去りかねて樹を巡るひと冬桜	冬桜	冬	15.12.28.
383	冬桜静かに見せるど根性	冬桜	冬	15.12.28.
394	つむじ風まだ散らすなよ冬桜	冬桜	冬	15.12.28.
395	賀状書き二十九日もまだ零枚	賀状書く	冬	15.12.28.
396	裏路地のそのまた裏に花八つ手	花八つ手	冬	15.12.29.
397	日当たりを選ばずさけり花八つ手	花八つ手	冬	15.12.29.
398	いつもありいつも咲くかに花八つ手	花八つ手	冬	15.12.29.
399	昭和では厠隠して花八つ手	花八つ手	冬	15.12.29.
400	花八つ手庭に咲きたる白珊瑚	花八つ手	冬	15.12.29.
401	池面見て八つ手の花の散るを知る	花八つ手	冬	15.12.29.
402	気づかれず八つ手の花の散り敷けり	花八つ手	冬	15.12.29.
403	寒木瓜の朱色が嬉し季節かな	寒木瓜	冬	15.12.29.
404	日の差せば真紅艶やか青木の実	青木の実	冬	15.12.29.
405	ポインセチア出窓に所得たるかな	ポインセチア	冬	15.12.29.
406	出窓にはポインセチアの似合ひけり	ポインセチア	冬	15.12.29.
407	神様も暖とりに来るどんどかな	どんど	新年	15.12.30.
408	振舞酒だんだん効きしどんどかな	どんど	新年	15.12.30.
409	一一〇番されずにどんど燃えにけり	どんど	新年	15.12.30.
410	爆ぜる音肝を冷やしてどんどかな	どんど	新年	15.12.30.
411	爆ぜる音人驚かすどんどかな	どんど	新年	15.12.30.
412	神さまも両手をかざすどんどかな	どんど	新年	15.12.30.
413	どんど燃ゆ神公認の焚き火かな	どんど	新年	15.12.30.
414	ちゃっかりと薯焼く子らのどんど焚き	どんど焚き	新年	15.12.30.
415	どんどの火神も輪に入る焚き火かな	どんど	新年	15.12.30.
416	神さまも火に手をかざすどんどかな	どんど	新年	15.12.30.
417	神さまもひょいと加はるどんどかな	どんど	新年	15.12.30.
418	神さまも本殿抜けてどんどの輪	どんど	新年	15.12.30.
419	神さまも肩を並べてどんどの輪	どんど	新年	15.12.30.
420	お隣りはあら神様だどんどの輪	どんど	新年	15.12.30.
421	輪の隣り神様がゐるどんど焚き	どんど焚き	新年	15.12.30.
422	神さまも温まっていくどんどかな	どんど	新年	15.12.30.
423	ごみ出しをじっと見つめる寒鴉	寒鴉	冬	15.12.30.
424	枯芝に降りて気忙し寒雀	寒雀	冬	15.12.30.
425	笹鳴きの何告げ合ふや藪の中	笹鳴	冬	15.12.30.
426	儚きはさっと一秒年賀状	年賀状	新年	15.12.31.
427	儚さやさっと一瞥年賀状	年賀状	新年	15.12.31.
428	除夜の鐘自粛の寺のまた増えて	除夜の鐘	冬	15.12.31.
429	去年今年けじめの鐘も自粛かな	除夜の鐘	冬	15.12.31.
430	除夜の鐘騒音と言ふ時代かな	除夜の鐘	冬	15.12.31.
431	鐘つけば一一〇番の大晦日	大晦日	冬	15.12.31.
432	願い事ながながとする初詣	初詣	新年	15.12.31.
433	ふっくらと八重雅なる冬桜	冬桜	冬	15.12.31.
434	数よりも健気さがよし冬桜	冬桜	冬	15.12.31.
435	いま咲くも吾都合なり返り花	返り花	冬	15.12.31.
437	返り花天変地変かも知れず	返り花	冬	15.12.31.
438	若水や蛇口切り替へ湯を水に	若水	新年	16.1.1.
439	若水を汲むと言ふより捻りたり	若水	新年	16.1.1.
440	若水や蛇口捻ればほとばしる	若水	新年	16.1.1.
441	若水にボトルの水の封を切る	若水	新年	16.1.1.
442	若水を二口三口酔ひ覚まし	若水	新年	16.1.1.
443	鉢植えに若水注ぐ日和かな	若水	新年	16.1.1.
444	塗り椀の卓に並びし淑気かな	淑気	新年	16.1.1.
445	五十円賽銭箱に初詣	初詣	新年	16.1.1.
446	初詣熱い甘酒振舞はれ	初詣	新年	16.1.1.
447	鎮守社は普段着ばかり初詣	初詣	新年	16.1.1.
448	鎮守社に普段着で行く初詣	初詣	新年	16.1.1.
449	松飾せぬ家増えて路地静か	松飾	新年	16.1.1.
450	乗初のバスはスマホの客ばかり	乗初	新年	16.1.1.
451	大旦二日酔ひにて明けにけり	大旦	新年	16.1.1.
452	日本髪和服姿も見ぬ二日	二日	新年	16.1.2.
453	節料理一日で飽き街に出る	おせち料理	新年	16.1.2.
454	海越えて画像とりどり初メール	初メール	新年	16.1.2.
455	声付きの動画で御慶スマホかな	御慶	新年	16.1.2.
456	レストランお節逃れの人いきれ	おせち料理	新年	16.1.2.
457	普段着が街に繰り出す二日かな	二日	新年	16.1.2.
458	吾もまたお節のがれで街に出る	おせち料理	新年	16.1.2.
459	句帳手に淑気見つけに街に出る	淑気	新年	16.1.2.
460	句帳手に淑気見つけの島歩き	淑気	新年	16.1.2.
461	江の島や淑気を探し磴登る	淑気	新年	16.1.2.
462	江の島や険しき磴の淑気かな	淑気	新年	16.1.2.
463	磴登る一段ずつの淑気かな	淑気	新年	16.1.2.
464	楪（ゆずりは）を句帳に挟み磴登る	楪	新年	16.1.３
465	楪を句帳に挟み島を去る	楪	新年	16.1.３.
466	楪をつと差し出せば頷けり	楪	新年	16.1.３.
467	しらす丼人だかりする二日かな	二日	新年	16.1.３.
468	初漁やまだ跳ねそうなしらす丼	初漁	新年	16.1.３.
469	楪を句帳に挟み磴登る	楪	新年	16.1.３.
470	初詣片瀬の海の遠見富士	初詣	新年	16.1.３.
471	初凪の片瀬の海や遠見富士	初凪	新年	16.1.３.
472	初凪も岩打つ浪の猛きかな	初凪	新年	16.1.３.
473	節（せち）飽ひてまだ跳ねさうなしらす丼	おせち料理	新年	16.1.３.
474	しらす丼客の列なす三日かな	三日	新年	16.1.4.
475	旅始片瀬の海の遠見富士	旅始	新年	16.1.4.
476	それぞれに位置を正して年新た	年新た	新年	16.1.4.
477	それぞれの位置あるがまま大旦	大旦	新年	16.1.4.
478	初凪にあれど岩打つ浪猛し	初凪	新年	16.1.4.
479	戦火なき国よ続けと年始	年始	新年	16.1.4.
480	戦火なき国こそギネス年新た	年新た	新年	16.1.4.
481	平和呆けそれもまた良し年新た	年新た	新年	16.1.4.
482	初詣龍神太鼓轟けり	初詣	新年	16.1.4.
483	岨道に餌を啄ばむや寒雀	寒雀	冬	16.1.4.
484	白頭巾ふはり被りて三日富士	三日	新年	16.1.4.
485	追っかけの賀状も止みて五日かな	五日	新年	16.1.5.
486	トーストにコーヒーの卓五日かな	五日	新年	16.1.5.
487	挨拶も普段に戻る五日かな	五日	新年	16.1.5.
488	声抑えおめでとう言ふ五日かな	五日	新年	16.1.5.
489	牛日や早や正月は過去となり	牛日（五日）	新年	16.1.5.
490	吟行が御用始となりにけり	御用始	新年	16.1.5.
491	吟行や句を詠むことも寒稽古	寒稽古	冬	16.1.5.
492	寒声の披講朗々わが句あり	寒声	冬	16.1.5.
493	七草や酒も七種を揃へけり	七種（七草）	新年	16.1.5.
494	指図する野草博士や若菜摘み	若菜（七草）	新年	16.1.5.
495	銭湯の壁画に似たる五日富士	五日	新年	16.1.5.
496	龍神の御座（おわ）す岩屋の淑気かな	淑気	新年	16.1.5.
497	人日を大方知らず若菜摘み	人日・若菜	新年	16.1.5.
498	銭湯の壁画に似たる三日富士	三日	新年	16.1.5.
499	じんじんもぶるぶるもなくけふ小寒	小寒	冬	16.1.6.
500	初弁天覗くがごとく拝みをり	初弁天	新年	16.1.6.
501	初弁天覗くがごとく拝むかな	初弁天	新年	16.1.6.
502	初弁天覗くがごとく拝む人	初弁天	新年	16.1.6.
503	頸伸ばし覗きつ拝む初弁天	初弁天	新年	16.1.6.
504	立膝の少し妖しき初弁天	初弁天	新年	16.1.6.
505	膝崩し視線を奪ふ初弁天	初弁天	新年	16.1.6.
506	膝崩し視線を誘ふ初弁天	初弁天	新年	16.1.6.
507	初弁天色香を慕ふ長き列	初弁天	新年	16.1.6.
508	コンビニの肉饅の湯気寒の入り	寒の入り	冬	16.1.6.
509	どんよりと雲低く垂れ寒に入る	寒の入り	冬	16.1.6.
510	背を丸くするほどもなき寒の入り	寒の入り	冬	16.1.6.
511	水槽に泳ぐ豆腐やけふ小寒	小寒	冬	16.1.6.
512	水底に豆腐沈めて寒に入る	寒の入り	冬	16.1.6.
513	水底に沈む豆腐や寒の入り	寒の入り	冬	16.1.6.
514	瀬の音の固く響けり寒の入り	寒の入り	冬	16.1.6.
515	ものの芽にさてと決意の気配あり	ものの芽	春	16.1.7.
516	ものの芽の満を持したる気配濃し	ものの芽	春	16.1.7.
517	ものの芽の地から吹き出す力瘤	ものの芽	春	16.1.7.
518	野を行けばものの芽たちの鬨の声	ものの芽	春	16.1.7.
519	寒の入り核実験と北の報	寒の入り	冬	16.1.7.
520	寒の入り冬将軍はいつ来るや	寒の入り	冬	16.1.7.
521	底潰し卓に立てたる寒卵	寒卵	冬	16.1.7.
522	野の草も七種籠で売られけり	七種	新年	16.1.7.
523	初弁天覗きに行って拝むかな	初弁天	新年	16.1.7.
524	初弁天覗きに行って拝みけり	初弁天	新年	16.1.7.
525	鉢植えに如雨露で注ぐ寒の水	寒の水	冬	16.1.8.
526	活け花を凜と仕上げし寒の水	寒の水	冬	16.1.8.
527	蒸し米の湯気濛々と寒造	寒造	冬	16.1.8.
528	万葉のテンポで進む御歌会	御歌会	新年	16.1.8.
529	万葉のテンポで披講御歌会	御歌会	新年	16.1.8.
530	万葉のテンポたゆとふ歌始	歌始	新年	16.1.8.
531	披講者の声ゆったりと御歌会	御歌会	新年	16.1.8.
532	万葉のテンポ息づく歌始	歌始	新年	16.1.8.
533	詠進の歌晴れやかに歌始	歌始	新年	16.1.8.
534	酔ひ覚めにごくりと飲みし寒の水	寒の水	冬	16.1.8.
535	酔ひ覚めに霊験あらた寒の水	御歌会	冬	16.1.8.
536	ドリップも寒九の水に香を載せて	寒九	冬	16.1.8.
537	披講せし声ゆったりと歌始	歌始	新年	16.1.9.
538	万葉の刻のたゆとふ歌始	歌始	新年	16.1.9.
539	蒸し米の湯気濛々と寒仕込	寒	冬	16.1.9.
540	活け花の凜と仕上がる寒の水	御歌会	冬	16.1.9.
541	華やかに貫主の御練り初不動	初不動	新年	16.1.9.
542	日脚のぶ散歩の道は恋ヶ窪	日脚伸ぶ	冬	16.1.9.
543	待ちかねて早梅咲けり二輪ほど	早梅	冬	16.1.9.
544	受験時代老ひて懐かし初天神	初天神	新年	16.1.9.
545	先駆けてほころび初めり冬の梅	冬の梅	冬	16.1.9.
546	磴降りて谷保の社殿へ初天神	初天神	新年	16.1.9.
547	参道の磴を降りて初天神	初天神	新年	16.1.9.
548	野暮天の由来楽しき初天神	初天神	新年	16.1.9.
549	輪の中に神様もゐるどんどかな	どんど	新年	16.1.10.
550	どんど焼く谷保天神社崖の下	どんど焼き	新年	16.1.10.
551	崖下に神も御座せり谷保どんど	どんど	新年	16.1.10.
552	恋文をそっと投げ込むどんどかな	どんど	新年	16.1.10.
553	恋文の束燃え尽すどんどかな	どんど	新年	16.1.10.
554	吉書揚げ恋の形見を道連れに	吉書揚	新年	16.1.10.
555	悪筆もそれなりの味吉書揚	吉書揚	新年	16.1.10.
556	消防に事前連絡どんど焚き	どんど焚き	新年	16.1.10.
557	恋文の束投げ込みしどんどかな	どんど	新年	16.1.10.
558	早梅の煙に巻かるどんどかな	どんど	冬・新年	16.1.10.
559	紅白の早梅咲きし谷保どんど	早梅・どんど	冬・新年	16.1.11.
560	早梅の紅白揃ふ谷保どんど	早梅・どんど	冬・新年	16.1.11.
561	寒梅や煙たなびく谷保どんど	寒梅・どんど	冬・新年	16.1.11.
562	早梅の噎せてゐるなり谷保どんど	早梅	冬・新年	16.1.11.
563	厄除けの長串団子焼くどんど	どんど	新年	16.1.11.
564	満願の達磨焼かるるどんどかな	どんど	新年	16.1.11.
565	神さまも輪に加はりしどんど焚き	どんど焚き	新年	16.1.11.
566	轟音に肝を冷やしつどんどの輪	どんど	新年	16.1.11.
567	轟音に火焔噴き上ぐ谷保どんど	どんど	新年	16.1.11.
568	若き日の恋の古手紙焼くどんど	どんど	新年	16.1.11.
569	火焔から爆ぜる轟音谷保どんど	どんど	新年	16.1.11.
570	火焔爆ぜ伸び縮みするどんどの輪	どんど	新年	16.1.11.
571	火焔爆ぜ輪を広げたるどんどかな	どんど	新年	16.1.11.
572	笹竹の串刺し団子焼くどんど	どんど	新年	16.1.11.
573	川底に地上絵のごと蜷の道	蜷の道	春	16.1.11.
574	川底の地上絵楽し蜷の道	蜷の道	春	16.1.11.
575	松の内過ぎれば早やも蜷の道	松の内・蜷の道	新年・春	16.1.11.
576	早春の川底に記す蜷の道	蜷の道	春	16.1.11.
577	早春の川底刻し蜷の道	早春・蜷の道	春	16.1.11.
578	満開の蝋梅の花日に眩し	蝋梅	冬	16.1.11.
579	吾ここを通りし証し蜷の道	蜷の道	春	16.1.11.
580	動くとも見えず伸び行く蜷の道・	蜷の道	春	16.1.11.
581	のたくりてつの字しの字や蜷の道	蜷の道	春	16.1.11.
582	川底に蜷とつおひつ道普請	蜷の道	春	16.1.11.
583	二三輪辛夷咲き初む谷保どんど	辛夷・どんど	春・新年	16.1.11.
584	火焔越し神さまもゐるどんど焼	どんど焼き	新年	16.1.11.
585	買初は添削用の赤きペン	買初	新年	16.1.11.
586	荒浪を光らせ走る鰤起し	鰤起し	冬	16.1.11.
587	魚ども目覚め湧き立つ鰤起し	鰤起し	冬	16.1.11.
588	荒海や魚群押し寄せ鰤起し	鰤起し	冬	16.1.11.
589	風神に負けじと雷神鰤起し	鰤起し	冬	16.1.11.
590	神鶏の餌を啄むや谷保どんど	どんど	新年	16.1.11.
591	神鶏のしゃもちゃぼのをり谷保どんど	どんど	新年	16.1.11.
592	ちらとでも降れば初雪首都東京	初雪	冬	16.1.12.
593	巌門を潜る荒波鰤起し	鰤起し	冬	16.1.12.
594	能登の海逆立つ浪や鰤起し	鰤起し	冬	16.1.12.
595	朝市のお婆の声や鰤起し	鰤起し	冬	16.1.12.
596	朝市のお婆能登弁鰤起し	鰤起し	冬	16.1.12.
597	朝市のお婆手を振る鰤起し	鰤起し	冬	16.1.12.
598	神鶏の餌啄むやどんど燃ゆ	どんど	新年	16.1.12.
599	神鶏の餌啄むやどんど焚き	どんど焚き	新年	16.1.12.
600	長串の団子焼きをりどんどの火	どんど	新年	16.1.12.
601	雷神の太鼓轟く鰤起し	鰤起し	冬	16.1.12.
602	雷神の太鼓響けり鰤起し	鰤起し	冬	16.1.12.
603	谷保どんど辛夷咲き初む二三輪	どんど・辛夷	冬・春	16.1.12.
604	はみ出しも傾きもあり吉書揚	吉書揚	新年	16.1.13.
605	長串の団子焼きをりどんど焚き	どんど焚き	新年	16.1.13.
606	底抜けの青天井の寒九かな	寒九	冬	16.1.13.
607	何鳥か庭でぺちゃくちゃ寒日和	寒日和	冬	16.1.13.
608	ごみ回収メロディー流る寒日和	寒日和	冬	16.1.13.
609	悠久のテンポで披講歌はじめ	歌会始	新年	16.1.13.
610	悠久のテンポゆかしく歌始	歌会始	新年	16.1.13.
611	コンピュータ管理の蔵や寒造	寒造	冬	16.1.13.
612	寒鰤の青光りして競られけり	寒鰤	冬	16.1.13.
613	寒鰤や市場に響く競りの声	寒鰤	冬	16.1.13.
614	雑草の仲間に戻る薺かな	薺	新年	16.1.13.
615	雑草に戻りし呼び名ぺんぺん草	ぺんぺん草	新年	16.1.13.
616	大佐渡も小佐渡も隠る鰤起し	鰤起し	冬	16.1.13.
612	能登金剛唸り轟く鰤起し	鰤起し	冬	16.1.13.
613	能登巌門唸り轟く鰤起し	鰤起し	冬	16.1.13.
614	能登巌門穿ち轟く鰤起し	鰤起し	冬	16.1.13.
615	笹竹の団子焼きをりどんどの火	どんど	新年	16.1.13.
616	松過ぎて雑草となる薺かな	松の内・薺	冬	16.1.13.
617	紅白梅煙に噎せをりどんど焚き	どんど焚き	新年	16.1.13.
618	朝市や突如轟く鰤起し	鰤起し	冬	16.1.13.
619	雑草に戻りて薺息をつく	薺	冬	16.1.13.
620	塀の上面ふてぶてし寒鴉	寒鴉	冬	16.1.14.
621	嘴開けて鳴きかけやめる寒鴉	寒鴉	冬	16.1.14.
622	見返せばふいと飛び去る寒鴉	寒鴉	冬	16.1.14.
623	寒林になにも求めず急ぎ過ぐ	寒林	冬	16.1.14.
624	ごみ出しを品定めする寒鴉	寒鴉	冬	16.1.14.
625	含みしをありあり見せて寒鴉	寒鴉	冬	16.1.14.
626	面構へ人苛立たす寒鴉	寒鴉	冬	16.1.14.
627	かあとだけ啼いて飛び去る寒鴉	寒鴉	冬	16.1.14.
628	寒林の径は人を急がせり	寒林	冬	16.1.14.
629	寒林の人を急かせる白き黙	寒林	冬	16.1.14.
630	近道を取れば寒林急がせる	寒林	冬	16.1.14.
631	クリオネの疲れを知らぬ立ち泳ぎ	クリオネ	春	16.1.14.
632	蔭口は不満の癒し日向ぼこ	日向ぼこ	冬	16.1.15.
633	蔭口は麻薬に似るや日向ぼこ	日向ぼこ	冬	16.1.15.
634	日向ぼこ猫のごとくにのほほんと	日向ぼこ	冬	16.1.15.
635	出過ぎれば撃たるる習ひ冬の鵙	冬の鵙	冬	16.1.15.
636	胡麻すりも人の習ひや寒鴉	寒鴉	冬	16.1.15.
637	麦の芽が日の差す方を覚えけり	麦の芽	冬	16.1.15.
638	麦の芽や土割る瞬の力瘤	麦の芽	冬	16.1.15.
639	ドライカレースプーンで掬ふ三日かな	三日	新年	16.1.15.
640	炒飯をスプーンで掬ふ三日かな	三日	新年	16.1.15.
641	温き部屋飛ばずに這えよ冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.15.
642	温き部屋目立たず這えよ冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.15.
643	若者の読めど分らぬ新年詠	新年	新年	16.1.15.
644	年越しの使命託され冬の蜂	冬の蜂	冬	16.1.15.
645	白き糞放ちて去れり寒鴉	寒鴉	冬	16.1.15.
646	部屋温くも心悴むテロ悲し	悴む	冬	16.1.15.
647	小馬鹿にとは樹上の枝の寒鴉	寒鴉	冬	16.1.15.
648	にこりとも笑はぬ男寒鴉	寒鴉	冬	16.1.15.
649	左義長の謂れが嬉しサウスポー	左義長	新年	16.1.15.
650	神鶏の近づき過ぎずどんど焚き	どんど焚き	新年	16.1.15.
651	応援をしたくなるなり冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
652	われもまた一茶のこころ冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
653	逃げろよとつい声かける冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
654	鉢の縁よろりよろりと冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
655	叩くのを止めて見送る冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
656	冬の蠅愛しく眺む吾可笑し	冬の蠅	冬	16.1.16.
657	のたのたと卓過り行く冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
658	冬の蠅一茶気分の吾がゐて	冬の蠅	冬	16.1.16.
659	走らんとすれど縺れし冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
660	わが姿重ねて顔寄す冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
661	よたよたと飛ばずに逃げる冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
662	目立つなよ目立たず歩め冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
663	目立つなよそっと過れよ冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
664	目立たずにそっと過れよ冬の蠅	冬の蠅	冬	16.1.16.
665	面構え人見下せる寒鴉	寒鴉	冬	16.1.16.
666	面構え揶揄するごとき寒鴉	寒鴉	冬	16.1.16.
667	薄氷や澱み離れて瀬を走る	薄氷	冬	16.1.16.
668	麦の芽や土割る瞬（とき）の力わざ	麦の芽	冬	16.1.16.
669	不毛なり心悴むテロ連鎖	悴む	冬	16.1.16.
670	かあとだけ鳴いて嘴閉ず寒鴉	寒鴉	冬	16.1.16.
671	かあとだけ鳴いてだんまり寒鴉	寒鴉	冬	16.1.16.
672	見返せばぷいと横向く寒鴉	寒鴉	冬	16.1.16.
673	悴める心哀しきテロ続く	悴む	冬	16.1.16.
674	小鳥来て庭でぺちゃくちゃ寒日和	寒日和	冬	16.1.16.
675	吐く息の白き朝市鰤起し	鰤起し	冬	16.1.16.
676	生みたてのほのぼの温き寒卵	寒卵	冬	16.1.17.
677	生みたての温きを残す寒卵	寒卵	冬	16.1.17.
678	寒卵割れば色濃き黄身嬉し	寒卵	冬	16.1.17.
679	寒卵二つ落とせば目玉焼き	寒卵	冬	16.1.17.
680	寒卵三つ落とせばお化け焼き	寒卵	冬	16.1.17.
681	寒卵茹でてリュックに吟行会	寒卵	冬	16.1.17.
682	艶やかな黄身ほれぼれと寒卵	寒卵	冬	16.1.17.
683	殻剥けば肌艶やかに寒卵	寒卵	冬	16.1.17.
684	煮て食ふか焼いて食おふか寒卵	寒卵	冬	16.1.17.
685	風邪見舞ひ友が下げ来し寒卵	寒卵	冬	16.1.17.
686	寒卵黄身だけ載せてかけご飯	寒卵	冬	16.1.17.
687	十両でいいじゃないかと藪柑子	藪柑子	冬	16.1.17.
688	建てこみし狭庭の日差し藪柑子	藪柑子	冬	16.1.17.
689	直ぐ翳る庭に赤き実藪柑子	藪柑子	冬	16.1.17.
690	鳥も来ず花もなけれど藪柑子	藪柑子	冬	16.1.17.
691	わが心読んでゐるらし寒鴉	寒鴉	冬	16.1.17.
692	人間に敵意隠さぬ寒鴉	寒鴉	冬	16.1.17.
693	人間を不倶戴天と寒鴉	寒鴉	冬	16.1.17.
694	太々し人を窺う寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
695	所作一つ一つが小癪寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
696	小馬鹿とは汝が面構え寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
697	筋金の入りしだんまり寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
698	近道を取れば寒林急かしくる	寒林	冬	16.1.18.
699	小賢しき故に疎まる寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
700	どこを見て可愛いと言ふ寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
701	疎まれて馬耳東風や寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
702	金色の鴟尾に悠然寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
703	がおがおと修羅の雄たけび寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
704	疎まれてそれがなんのと寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
705	大寺の甍で遊ぶ寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
706	雑木山声騒々し寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
707	嫌はれることばかりする寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
708	少年の横笛を聴く寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
709	残飯の美味い店知る寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
710	お供への蜜柑狙ひし寒鴉	寒鴉	冬	16.1.18.
711	寒鴉嫌はれ松子の思ひかな	寒鴉	冬	16.1.18.
712	寒鴉主も生きるに精一杯	寒鴉	冬	16.1.18.
713	雪の朝路地に付け行く初轍	雪	冬	16.1.18.
714	雪の朝路地に二本の初轍	雪	冬	16.1.18.
715	雪の朝轍辿りつ子ら登校	雪	冬	16.1.18.
716	のほほんと生きるふりして寒鴉	寒鴉	冬	16.1.19.
717	疎み合ふささくれ哀し寒鴉	寒鴉	冬	16.1.19.
718	知恵なけりゃ生きてはゆけぬ寒鴉	寒鴉	冬	16.1.19.
719	近道を取れば寒林急かすなり	寒林	冬	16.1.19.
720	かおかおと日暮れの墓地の寒鴉	寒林	冬	16.1.19.
721	片手袋脱いでスマホの女高生	手袋	冬	16.1.19.
722	皮手袋嵌めしナチス悪夢かな	手袋	冬	16.1.19.
723	皮手袋嵌めしナチスの悪夢の日	手袋	冬	16.1.19.
724	皮手袋色艶やかに鞭唸る	手袋	冬	16.1.19.
725	手袋の片方失せてわだかまる	手袋	冬	16.1.19.
726	ちぐはぐの手袋嵌めて庭仕事	手袋	冬	16.1.19.
727	待ちかねて芽吹き出したる雪間草	雪間草	春	16.1.19.
728	雪間から姿現す三輪車	雪間	春	16.1.19.
729	雪間から湯気立ち上る日差しかな	雪間	春	16.1.19.
730	雀らの競ひ啄む雪間かな	雪間	春	16.1.19.
731	鶏と雀集ひし雪間かな	雪間	春	16.1.19.
732	嬉し気に雪間に群れし雀かな	雪間	春	16.1.19.
733	放ち鶏啄み歩む雪間かな	雪間	春	16.1.19.
734	一刷けの薄緑あり雪間草	雪間草	春	16.1.19.
735	しめやかに営みすすむ雪間草	雪間草	春	16.1.19.
736	しめやかに進む営み雪間草	雪間草	春	16.1.19.
737	堅香子はなぞへで首を傾げをり	堅香子の花	春	16.1.19.
738	片栗の花の項が風呼べり	片栗の花	春	16.1.19.
739	片栗の花のうなじやなぞへ道	片栗の花	春	16.1.19.
740	空開けり深呼吸する雪間草	雪間草	春	16.1.20.
741	一粒の露を光らせ雪間草	雪間草	春	16.1.20.
742	深爪の指吸ひをれば四十雀	四十雀	春	16.1.20.
743	われ傘寿なれは半数四十雀	四十雀	春	16.1.20.
744	庭の樹に影の走りて四十雀	四十雀	春	16.1.20.
745	庭の樹に影を走らせ四十雀	四十雀	春	16.1.20.
746	狭庭から吾を呼ぶかに四十雀	四十雀	春	16.1.20.
747	軽やかに連れ呼ぶ声は四十雀	四十雀	春	16.1.20.
748	春しぐれ回る木馬に客ひとり	春時雨	春	16.1.20.
749	汐見坂石垣濡らす春時雨	春時雨	春	16.1.20.
750	靄かかる皇居の松や春時雨	春時雨	春	16.1.20.
751	春しぐれ濡らす御苑の風雅かな	春時雨	春	16.1.20.
752	鍼灸師手つき手慣れし針供養	針供養	春	16.1.20.
753	はりせーんぼん園児声上ぐ針供養	針供養	春	16.1.20.
754	針鼠ちょこんと座り針供養	針供養	春	16.1.20.
755	神の手を持つドクターも針供養	針供養	春	16.1.20.
756	畳屋も外科医も供に針供養	針供養	春	16.1.20.
757	身を守る針さまざまに針供養	針供養	春	16.1.20.
758	卓上のちょこと芽を出す福寿草	福寿草	新年	16.1.21.
759	金杯に日を受け眩し福寿草	福寿草	新年	16.1.21.
760	老人会一人ひとりに福寿草	福寿草	新年	16.1.21.
761	鷽替へて嘘になりたきもの多し	鷽替	新年	16.1.21.
762	鷽替の鷽受けてきて書架に置く	鷽替	新年	16.1.21.
763	鷽替の鷽受けに行く太鼓橋	鷽替	新年	16.1.21.
764	鷽替えや亀戸大根あさり鍋	鷽替	新年	16.1.21.
765	初場所や国産力士に大賜杯	初場所	冬	16.1.21.
766	凍滝の裏しめやかに落下音	凍滝	冬	16.1.21.
767	藪柑子雪融けてなほ平伏せり	藪柑子・雪解	冬	16.1.21.
768	雪割れてひょいと赤き実冬珊瑚	雪・冬珊瑚	冬	16.1.21.
769	被せ藁欠かせぬ景色寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.21.
770	日溜りにひそと寄り添ひ冬すみれ	冬すみれ	冬	16.1.21.
771	寒菊に人の気残る墓前かな	寒菊	冬	16.1.21.
772	雪解垣冬薔薇一輪残りけり	雪解・冬薔薇	冬	16.1.21.
773	池の面の薄氷突けば鯉反転	薄氷	冬	16.1.21.
774	白魚の活きて載せらるどんぶり飯	白魚	冬	16.1.21.
775	跳ねゐるをぶっかけて食む白魚丼	白魚	冬	16.1.21.
776	春菊の摘めども繁る畝三筋	春菊	春	16.1.21.
777	蕗の薹摘みつ今宵の酒想ふ	蕗の薹	春	16.1.21.
778	四十雀迎へる吾は八十雀	四十雀	春	16.1.21.
779	まんさくの花の短冊捩れをり	まんさくの花	春	16.1.21.
780	犬ふぐり去年と同じ日だまりに	犬ふぐり	春	16.1.21.
781	家々の路地に並べし君子蘭	君子蘭	春	16.1.21.
782	色気より食ひ気の子らの雛あられ	雛あられ	春	16.1.21.
783	爺ちゃんも呼ばれ幼とお白酒	白酒	春	16.1.21.
784	裸婦像の乳房を濡らす春の雪	春の雪	春	16.1.21.
785	十八の娘に還り山笑ふ	山笑ふ	春	16.1.21.
786	水温む池面押し上げ鯉の群れ	水温む	春	16.1.21.
787	寒日和水輪を映す大庇	寒日和	冬	16.1.21.
788	冬うらら水輪を映す大庇	冬うらら	冬	16.1.21.
789	薇（ぜんまい）の彼方に赤富士広ごれり	薇	春	16.1.22.
790	なんとなく草餅買ひて鳩と食ふ	草餅	春	16.1.22.
791	鶯餅白磁の皿に止りをり	鶯餅	春	16.1.22.
792	花霞む接骨木の文字武骨なり	接骨木の花	春	16.1.22.
793	争へば般若に変る大白鳥	白鳥	冬	16.1.22.
794	争へば修羅憚らじ大白鳥	白鳥	冬	16.1.22.
795	つつくうち話の弾む鮟鱇鍋	鮟鱇鍋	冬	16.1.22.
796	鮟鱇鍋つつくともがら皆老ひぬ	鮟鱇鍋	冬	16.1.22.
797	突出しにまず肝が出て鮟鱇鍋	鮟鱇鍋	冬	16.1.22.
798	吊るされし鮟鱇の口虚空食む	鮟鱇	冬	16.1.22.
799	鮟鱇鍋骨を啜りて肉食めり	鮟鱇鍋	冬	16.1.22.
800	ひと箸で掬ふ気配り河豚の刺	河豚	冬	16.1.22.
801	一片も残さず消えし河豚の皿	河豚	冬	16.1.22.
802	正直に冬将軍の来し大寒	大寒	冬	16.1.22.
803	酒の燗ちろろちろろと呼んでをり	燗酒	冬	16.1.23.
804	近寄ればあねいもうとの二輪草	二輪草	春	16.1.23.
805	一株に一花きりりとチューリップ	チューリップ	春	16.1.23.
806	どの家も出窓に置かるシクラメン	シクラメン	春	16.1.23.
807	シクラメン花に触れつつ長電話	シクラメン	春	16.1.23.
808	花エリカ見つむる老女名はエリカ	エリカ	春	16.1.23.
809	エリカ咲くその名恥ずかし老エリカ	エリカ	春	16.1.23.
810	十字架の並びし墓地の花エリカ	エリカ	春	16.1.23.
811	風邪召すな終日濡るる仏生会	風邪・仏生会	冬・春	16.1.23.
812	濡れ続け小さきくさめ甘茶仏	くさめ・甘茶仏	冬・春	16.1.23.
813	どどどっと地響きありて屋根の雪	雪	冬	16.1.23.
814	竹筒に侘助一花書架飾る	侘助	冬	16.1.23.
815	竹筒に侘助一花僧の部屋	侘助	冬	16.1.23.
816	竹筒に侘助一花書架の壁	侘助	冬	16.1.23.
817	竹筒に侘助一花和の厠	侘助	冬	16.1.23.
818	濃緑の葉陰に紅蓮寒の木瓜	寒木瓜	冬	16.1.23.
819	曇天に紅蓮燃え立つ寒の木瓜	寒木瓜	冬	16.1.23.
820	八重咲きの花ふくよかに冬桜	寒木瓜	冬	16.1.23.
821	こでまりにあくびする犬われもまた	こでまり	春	16.1.24.
822	心配もせずに河豚食ふ一夜かな	河豚	冬	16.1.24.
823	駆け込んで鍋焼を食ひ人心地	鍋焼	冬	16.1.24.
824	鍋焼を舌焦がしつつ食ふ夫婦	鍋焼	冬	16.1.24.
825	鍋焼をあふあふと舌焦がし食ふ	鍋焼	冬	16.1.24.
826	壺焼の藷熱々を立ち食へり	壺焼芋	冬	16.1.24.
827	湯豆腐の熱きが喉を駆け下る	湯豆腐	冬	16.1.24.
828	湯豆腐や出汁の昆布が好みなり	湯豆腐	冬	16.1.24.
829	湯豆腐の出汁の昆布がわが狙ひ	湯豆腐	冬	16.1.24.
830	寒卵茹でればつると剥けにけり	寒卵	冬	16.1.24.
831	妻の留守厨で思案寒卵	寒卵	冬	16.1.24.
832	寒卵手に持ちさてと妻の留守	寒卵	冬	16.1.24.
833	鷽替の列途切れずに続きけり	鷽替	新年	16.1.24.
834	鷽替や若き二人の嘘まこと	鷽替	新年	16.1.24.
835	鷽替の列渡り行く太鼓橋	鷽替	新年	16.1.24.
836	鷽替や願いさまざま人の列	鷽替	新年	16.1.24.
837	嘘にしてほんとにしてと鷽替ふる	鷽替	新年	16.1.24.
838	嘘にして欲しき願いの鷽替ふる	鷽替	新年	16.1.24.
839	替へし鷽額に祈る乙女をり	鷽替	新年	16.1.24.
840	嘘よねと念押し女鷽替ふる	鷽替	新年	16.1.24.
841	ごめんねと小声で鷽を替へしをり	鷽替	新年	16.1.24.
842	鷽替や嘘もほんとも浮世なり	鷽替	新年	16.1.24.
843	銀の笛吹かずに十年たかしの忌（松本たかし忌５．１１．）	たかし忌	夏	16.1.24.
844	うらうらと初かげろうの踊りをり	かげろう	春	16.1.24.
845	大寒や一話書き上げ茶を含む	大寒	冬	16.1.24.
846	厳冬来奄美の島も白いもの（１６．１．２４．奄美大島に初雪）	厳冬	冬	16.1.24.
847	琴奨菊初場所飾る初優勝	初場所	冬	16.1.24.
848	鷽が来て琴弾く仕草梅の枝	鷽	春	16.1.24.
849	鷽が来て琴の早や弾き真似てをり	鷽	春	16.1.24.
850	大根畑次つぎ抜いてゆく力士	大根引く	冬	16.1.24.
851	あくびすることもときおり寒鴉	寒鴉	冬	16.1.25.
852	恥じらうて藁づとの陰寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.25.
853	琴の音の流るるを聴き寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.25.
854	被せ藁の花魁かとも寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.25.
855	被せ藁の翳れば淋し寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.25.
856	日差し呼び被せ藁温し寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.25.
857	百咲けば百の恋あり寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.25.
858	咲くときを違へさせられ寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.25.
859	人間の勝手露はに寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.25.
860	薄紅をほのとうかべて寒牡丹（上野東照宮で）	寒牡丹	冬	16.1.25.
861	寒林の近道人を急かしめり	寒林	冬	16.1.25.
862	寒林の人を急かせる黙の径	寒林	冬	16.1.26.
863	七つの子流るる日暮れ寒鴉	寒鴉	冬	16.1.26.
864	七つの子下校促がし寒鴉	寒鴉	冬	16.1.26.
865	七つの子街に流れて寒鴉	寒鴉	冬	16.1.26.
866	悴める心哀しきテロ止まず	悴む	冬	16.1.26.
867	四十雀われは二倍の老雀	四十雀	冬	16.1.26.
868	雀散り鴉降り立つ雪間かな	雪間	冬	16.1.26.
869	雄鶏が鴉追い出す雪間かな	雪間	冬	16.1.26.
870	雪間増え瀬音高まる用水路	雪間	冬	16.1.26.
871	花魁の作り笑ひや寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.26.
872	被せ藁に夜鷹重ねし寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.26.
873	悴める心哀しきテロがまた	悴む	冬	16.1.26.
874	島影を隠し降る降る春の雨	春雨	春	16.1.26.
875	城ケ島隠し降る降る春の雨	春雨	春	16.1.26.
876	寒鴉なんぞ言ひたげ羽繕ひ	寒鴉	冬	16.1.26.
877	寒鴉独り遊びや昼下がり	寒鴉	冬	16.1.26.
878	寒鴉なんぞ言ひたげ羽繕ふ	寒鴉	冬	16.1.26.
879	寒林に人を急かせる黙の径	寒林	冬	16.1.26.
880	嬰くきと乳首を噛みて初夏の笑み	初夏	夏	16.1.26.
881	孑孑の清濁問はず逞しき	孑孑	夏	16.1.26.
882	浮き沈みしつつ孑孑巣立待つ	孑孑	夏	16.1.26.
883	火襷の徳利傾け燗の酒	燗酒	冬	16.1.26.
884	鷽替やこれまでつきし嘘の数	鷽替	新年	16.1.26.
885	蛇苺真赤なる嘘並べをり	蛇苺	夏	16.1.26.
886	なまめきて女の匂ひ蛇の衣	蛇の衣	夏	16.1.26.
887	蛇の衣脱ぎしごとくに裸女眠る	蛇の衣	夏	16.1.26.
888	蛇の衣湿り残して裸女眠る	蛇の衣	夏	16.1.26.
889	菊バウアー初場所飾り賜杯手に	初場所	新年	16.1.26.
890	空開け心逸らす雪間草	雪間草	春	16.1.27.
891	浅緑に滾るものあり雪間草	雪間草	春	16.1.27.
892	雀らを呼びて賑う雪間かな	雪間	春	16.1.27.
893	雀どち競ひ啄む雪間かな	雪間	春	16.1.27.
894	鷽替や木彫三万売り尽す	鷽替	新年	16.1.27.
895	神池の薄氷眩し太鼓橋（亀井戸天満宮で）	薄氷	冬	16.1.27.
896	薄氷を背で押上ぐる池の鯉	薄氷	冬	16.1.27.
897	薄氷抱へつ行く児登校路	薄氷	冬	16.1.27.
898	年寄が寒柝叩き路地を行く	寒柝	冬	16.1.27.
899	子らの声とんと絶えたり火の用心	火の用心	冬	16.1.27.
900	点盛りに寒紅差して名乗りけり	寒紅	冬	16.1.28.
901	寒声や甘泉園に響きけり	寒声	冬	16.1.28.
902	寒鴉独り遊びで磨く知恵	寒鴉	冬	16.1.28.
903	寒鴉独り遊びに余裕あり	寒鴉	冬	16.1.28.
904	倒れたるラガーに掛ける薬缶水	ラガー	冬	16.1.28.
905	倒れたるラガーに掛けし薬缶水	ラガー	冬	16.1.28.
906	真赤なる嘘も雑じるや蛇苺	蛇苺	夏	16.1.28.
907	寒雷に吼ゆる荒波佐渡島	寒雷	冬	16.1.28.
908	出港待つ漁船揺らめく鰤起し	鰤起し	冬	16.1.28.
909	親知らず子知らず吼ゆる鰤起し	鰤起し	冬	16.1.28.
910	ばりばりと天地引き裂く鰤起し	鰤起し	冬	16.1.28.
911	霙から雪に変るや赤提灯	霙・雪	冬	16.1.29.
912	こくこくと雪降る路地の赤提灯	雪	冬	16.1.29.
913	能登巌門穿つ飛沫や鰤起し	鰤起し	冬	16.1.29.
914	能登巌門穿つ荒浪鰤起し	鰤起し	冬	16.1.29.
915	雪の夜の赤提灯に客ひとり	雪	冬	16.1.29.
916	しずり雪薄き脳天驚かす	雪	冬	16.1.29.
917	被せ藁に雪積らせて寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.29.
918	終バスの尾灯遠のく赤提灯	寒牡丹	冬	16.1.29.
919	ピーピーとケトルの笛や外は雪	雪	冬	16.1.29.
920	音高くケトルの笛や外は雪	雪	冬	16.1.29.
921	太郎が寝次郎も眠り雪の黙	雪	冬	16.1.29.
922	調髪を妻に委ねて時雨窓	時雨	冬	16.1.30.
923	寒鯉の洗ひ運ばる佐久の宿	寒鯉	冬	16.1.30.
924	手の届くあたりに雲や雪催ひ	雪催	冬	16.1.30.
925	唸りあげ岩打つ浪や鰤起し	鰤起し	冬	16.1.30.
926	被せ藁に夜鷹紛らせ寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.30.
927	かはたれの茣蓙持つ夜鷹寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.30.
928	ひと株ごと花の名風雅寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.30.
929	寒鯉の群れ身じろぎつ夢うつつ	寒鯉	冬	16.1.30.
930	寝返りのごと身じろげる寒の鯉	寒鯉	冬	16.1.30.
931	俎に置かれ息つぐ寒の鯉	寒鯉	冬	16.1.30.
932	臘梅に鼻突き寄せる二人連れ	臘梅	冬	16.1.30.
933	泡喰ひし寒鯉ぱくと吐きにけり	寒鯉	冬	16.1.30.
934	泡喰ひし寒鯉ぱくと吐く日和	寒鯉	冬	16.1.30.
935	鯉の群れゆらりばらけて寒明けぬ	寒明け	春	16.1.30.
936	紅梅の早や散りぬるを描きくけこ	紅梅	冬	16.1.30.
937	出かけんと向ふバス停返り花	返り花	冬	16.1.30.
938	理科少年教えてくれし返り花	返り花	冬	16.1.30.
939	いつも目にする植え込みの返り花	返り花	冬	16.1.30.
940	人住まぬ廃屋十年返り花	返り花	冬	16.1.30.
941	人の目を惹かず咲きをり返り花	返り花	冬	16.1.30.
942	日溜りにこともなげ咲く返り花	返り花	冬	16.1.30.
943	ちょっとした手はず違いの返り花	返り花	冬	16.1.30.
944	返り花虫飛び来ねどまあいいか	返り花	冬	16.1.30.
945	独り身を通す人あり返り花	返り花	冬	16.1.30.
946	能登巌門岩陰に咲く返り花	返り花	冬	16.1.30.
947	それぞれに事情がありて返り花	返り花	冬	16.1.30.
948	鹿の来て匂ひ嗅ぎゆく返り花	返り花	冬	16.1.30.
949	尊徳像足元に咲く返り花	返り花	冬	16.1.30.
950	廃校舎人気なきまま返り花	返り花	冬	16.1.30.
951	廃駅のホーム崩れて返り花	返り花	冬	16.1.30.
952	廃線の崩れしホーム返り花	返り花	冬	16.1.30.
953	海鳴りの聞ゆる廃寺返り花	返り花	冬	16.1.30.
954	寅さんの雪駄の音や返り花	返り花	冬	16.1.30.
955	寅さんの通りし道の返り花	返り花	冬	16.1.30.
956	句会せし茶室の庭に返り花	返り花	冬	16.1.30.
957	廃村の崖のなぞへに返り花	返り花	冬	16.1.30.
958	返り花押し花にする人のをり	返り花	冬	16.1.30.
959	ぴり辛のラーメン店の返り花	返り花	冬	16.1.30.
960	里帰り吾を迎えし返り花	返り花	冬	16.1.30.
961	寒牡丹無理に咲かされ開かされ	寒牡丹	冬	16.1.31.
962	咲きたくて咲くにはあらじ寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.31.
963	人間の勝手に耐ゆる寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.31.
964	早や薄き染み浮かびたる冬牡丹	冬牡丹	冬	16.1.31.
965	季を違え狂い咲かせし寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.31.
966	花魁の病める美に似て冬牡丹	冬牡丹	冬	16.1.31.
967	花魁の思い哀しき冬牡丹	冬牡丹	冬	16.1.31.
968	花魁のごと仕立てられ寒牡丹	寒牡丹	冬	16.1.31.
969	どの花も同じに見ゆる冬牡丹	冬牡丹	冬	16.1.31.
970	冬薔薇風吹き抜ける路地に咲く	冬薔薇	冬	16.1.31.
971	やむをえず凜と咲きをり冬薔薇	冬薔薇	冬	16.1.31.
972	凜と咲くこと求められ冬薔薇	冬薔薇	冬	16.1.31.
973	白牡丹はたりと落ちて崩れけり	白牡丹	夏	16.1.31.
974	畑荒らす雑草莧（ひゆ）を茹で食めり	莧	夏	16.1.31.
975	サングラス度入りが無くて掛けられず	サングラス	夏	16.1.31.
976	前立腺針刺す検査二月来る	二月	冬	16.2.1.
977	前立腺針刺す検査春立つ日	立春	春	16.2.1.
978	しんしんと風尖りたる二月かな	二月	春	16.2.1.
979	草も木も凍てし狭庭に二月来る	二月	春	16.2.1.
980	戸袋がかたりことりと余寒かな	余寒	春	16.2.1.
981	立春を前に名残りの寒戻る	立春・寒	春	16.2.1.
982	凍て月と書くイメージの二月かな	二月	春	16.2.1.
983	凍て月と書きて二月と読まんかな	二月	春	16.2.1.
984	凍て月と書きたき二月来たりけり	二月	春	16.2.1.
985	春立てど佐保姫はまだ夢の中	二月	春	16.2.1.
986	春立てど佐保姫はまだ眠りをり	二月	春	16.2.1.
987	佐保姫の寝息聞ゆる二月かな	二月	春	16.2.1.
988	路地長し一直線の余寒かな	余寒	春	16.2.1.
989	路地裏の風尖りたる余寒かな	余寒	春	16.2.1.
990	茹で卵きれいに剥けて二月かな	二月	春	16.2.1.
991	空低く音も凍てし日二月来る	二月	春	16.2.1.
992	賽銭は十円玉で七福神	七福神	新年	16.2.1.
993	十円玉用意して行く七福神	七福神	新年	16.2.1.
994	狆穴子砂地ににょきと小春凪	小春	冬	16.2.1.
995	狆穴子砂地にょきにょき小春凪	小春	冬	16.2.1.
996	狆穴子ゆらりゆらりと小春凪	小春	冬	16.2.1.
997	読み書きの入れ替え自由皹皸（ひびあかぎれ）	皹・皸	冬	16.2.1.
998	皹皸遠き昔の文字となり	皹・皸	冬	16.2.1.
999	面白き漢字に罅と皸と	皹・皸	冬	16.2.1.
1000	旅に出て旅に終えたる西行忌	西行忌	春	16.2.1.

♪BGM：Bach［The Goldberg Variations22］arranged by Mari Kumamoto♪

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