鈴童の遊び

No.	句	季　　語	季	作句日
1	下り来る流燈掬ふ役忙し	流燈	秋	16.8.6.
2	下り来る流燈掬ふ長いたも	流燈	秋	16.8.6.
3	解夏の寺キャリーバックの僧下山	解夏	秋	16.8.6.
4	解夏の寺キャリーバックが山下る	解夏	秋	16.8.6.
5	送行（そうあん）やキャリーバッグが山下る	送行（＝解夏）	秋	16.8.6.
6	踊る輪を囲みし人の輪の厚き	踊	秋	16.8.6.
7	盆踊曲はロックに変りけり	盆踊	秋	16.8.6.
8	新しき卒塔婆並ぶ施餓鬼寺	施餓鬼	秋	16.8.6.
9	茄子の馬作る園児のはしゃぎ声	茄子の馬	秋	16.8.6.
10	脚長く麒麟に似たる茄子の馬	茄子の馬	秋	16.8.6.
11	二発目に言い訳のなき原爆忌	原爆忌	夏	16.8.6.
12	縄文の香を風にのせ大賀蓮	蓮の花	夏	16.8.7.
13	花売場ときどき売れる苧殻かな	苧殻	秋	16.8.7.
14	仏箸あまりに軽き苧殻かな	苧殻	秋	16.8.7.
15	花売場苧殻を知らぬ若い主婦	苧殻	秋	16.8.7.
16	オブジェかと苧殻手に取る花売場	苧殻	秋	16.8.7.
17	苧殻の句読めず採られぬ句会かな	苧殻	秋	16.8.7.
18	溝萩の紅一枚となる日暮れ	溝萩	秋	16.8.7.
19	溝萩の紅のぼかしや池の畔	溝萩	秋	16.8.7.
20	藤豆の重量見せて垂れにけり	藤豆	秋	16.8.7.
21	葉の陰にごろりと育つ南瓜かな	南瓜	秋	16.8.7.
22	枝豆の指に熱きを弾き食む	枝豆	秋	16.8.7.
23	窯を焚くごとき日がなに秋立ちぬ	立秋	秋	16.8.8.
24	列島を丸ごと茹でつ秋立ちぬ	立秋	秋	16.8.8.
25	リオ五輪湧き立つ知らせ今朝の秋	今朝の秋	秋	16.8.8.
26	初秋を探せばそよと風吹けり	初秋	秋	16.8.8.
27	真夏日にうだる列島秋立ちぬ	立秋	秋	16.8.8.
28	列島を釜茹でにして秋立ちぬ	立秋	秋	16.8.8.
29	列島に豆粒ほどの秋立ちぬ	立秋	秋	16.8.8.
30	境内の木陰がうれし施餓鬼寺	施餓鬼寺	秋	16.8.8.
31	卒塔婆の木の香新し施餓鬼かな	施餓鬼	秋	16.8.8.
32	本堂は施餓鬼の僧の大合誦	施餓鬼	秋	16.8.8.
33	解夏の僧痩身多し磴下る	解夏	秋	16.8.8.
34	反り返り赤子泣き告ぐ残暑かな	残暑	秋	16.8.9.
35	ごろごろとただそれっきり秋の雷	秋の雷	秋	16.8.9.
36	秋の雷削がれて薄き武甲山	秋の雷	秋	16.8.9.
37	黄金の川に仕立てし泡立草	泡立草	秋	16.8.9.
38	引っ張れば果てもなきかに藪からし	藪からし	秋	16.8.9.
39	水引の紅きらめかす日照雨かな	水引の花	秋	16.8.9.
40	タンデムを漕ぎ行く二人稲の花	稲の花	秋	16.8.9.
41	人の数虫より多き虫送り	虫送り	秋	16.8.9.
42	人の数ばかり目立つや虫送り	虫送り	秋	16.8.9.
43	提灯に灯を入れ進む虫送り	虫送り	秋	16.8.9.
44	限界の集落ひそと虫送り	虫送り	秋	16.8.9.
45	蚊遣火のひと筋になり虫送り	虫送り	秋	16.8.10.
46	鉦太鼓子らにぎやかに虫送り	虫送り	秋	16.8.10.
47	藁苞を流れに投げて虫送り	虫送り	秋	16.8.10.
48	寅さんもひょいと加わる虫送り	虫送り	秋	16.8.10.
49	鉄橋を長き貨車行く虫送り	虫送り	秋	16.8.10.
50	橋上で経よむ和尚虫送り	虫送り	秋	16.8.10.
51	虫送り終えて河原のバーベキュー	虫送り	秋	16.8.10.
52	怨霊の魂を鎮めて虫送り	虫送り	秋	16.8.10.
53	碁仇に後で来んかと虫送り	虫送り	秋	16.8.10.
54	吾亦紅かすかに揺れて気を引けり	吾亦紅	秋	16.8.10.
55	すっと落ちかさと鳴りしか桐一葉	桐一葉	秋	16.8.11.
56	白壁の土蔵を過る桐一葉	桐一葉	秋	16.8.11.
57	桐一葉ふはりと舞ひて重なりぬ	桐一葉	秋	16.8.11.
58	散り急ぐ風情を見せず桐一葉	桐一葉	秋	16.8.11.
59	藏横に積りし上にまた一葉	桐一葉	秋	16.8.11.
60	身ほとりを振り返らせて一葉落つ	一葉落つ	秋	16.8.11.
61	藏囲む桐の木立や一葉落つ	一葉落つ	秋	16.8.11.
62	積りたる上にかさりとまた一葉	一葉	秋	16.8.11.
63	一葉ずつ重なり積る藏の横	一葉	秋	16.8.11.
64	閑なる間合いを見せて桐一葉	桐一葉	秋	16.8.11.
65	落下する気配違はず一葉舞ふ	一葉	秋	16.8.11.
66	間合いとり枝離れゆく桐一葉	桐一葉	秋	16.8.11.
67	生身魂兜太のような句を詠めり	生身魂	秋	16.8.12.
68	生身魂ずらりと並ぶ句会かな	生身魂	秋	16.8.12.
69	生身魂ばかりの並ぶ句会かな	生身魂	秋	16.8.12.
70	ちちははがこいしと詠みし生身魂	生身魂	秋	16.8.12.
71	生身魂孫に教える二次関数	生身魂	秋	16.8.12.
72	嘶けり尻の大きな茄子の馬	茄子の馬	秋	16.8.12.
73	嘶くや尻の大きな茄子の馬	茄子の馬	秋	16.8.12.
74	割箸の脚八の字に茄子の馬	茄子の馬	秋	16.8.12.
75	卒塔婆の木の香新し施餓鬼かな	施餓鬼	秋	16.8.12.
76	掃苔の済て新し卒塔婆かな	掃苔	秋	16.8.12.
77	祈りしは二度と作らぬ終戦日	終戦日	秋	16.8.12.
78	すいとんのお替りしたり終戦日	終戦日	秋	16.8.12.
79	卒塔婆をことりと鳴らし秋の風	秋風	秋	16.8.12.
80	山の日（８．１１．）やその翌日は御巣鷹忌	山の日	秋	16.8.12.
81	蔭口は人の楽しみ秋の風	秋風	秋	16.8.12.
82	秋風を四角に切りて文字書かん	秋風	秋	16.8.12.
83	秋風や白秋詠みし邪宗門	秋風	秋	16.8.12.
84	爽籟や窓開け放つ日暮れかな	爽籟	秋	16.8.12.
85	実盛の藁人形や虫送り	虫送り	秋	16.8.13.
86	サインライト打ち振りてゆく虫送り	虫送り	秋	16.8.13.
87	農道をサインライトで虫送り	虫送り	秋	16.8.13.
88	にぎやかにサインライトで虫送り	虫送り	秋	16.8.13.
89	虫送り野辺の送りの同じ道	虫送り	秋	16.8.13.
90	星空に五山燃え立つ大文字	大文字	秋	16.8.13.
91	おばしま（欄干）に手を置き見上ぐ大文字	大文字	秋	16.8.13.
92	おばしまに手を置く舞妓大文字	大文字	秋	16.8.13.
93	おばしまに寄り添ひて見る大文字	大文字	秋	16.8.13.
94	水浴のクレオパトラや百日紅	百日紅	秋	16.8.13.
95	一夜明け黒々残る大文字	大文字	秋	16.8.13.
96	寅さんの姿も見える虫送り	虫送り	秋	16.8.14.
97	咲いて散りまた咲いて散る百日紅	百日紅	秋	16.8.14.
98	するすると猿上りたり百日紅	百日紅	秋	16.8.14.
99	佃まで出かけて路地の秋簾	秋簾	秋	16.8.14.
100	板前の高下駄過る秋簾	秋簾	秋	16.8.14.
101	秋簾路地から聞ゆ三味の音	秋簾	秋	16.8.14.
102	ちんとんしゃん三味の音響く秋簾	秋簾	秋	16.8.14.
103	巻き納むずしりと重き秋簾	秋簾	秋	16.8.14.
104	憚らず音高らかに走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.8.14.
105	競ふごと音立てて食む走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.8.14.
106	豪快に啜る男ら走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.8.14.
107	一握り夫持ち帰り零余子飯	零余子飯	秋	16.8.14.
108	音もまた味引き立てて走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.8.14.
109	啜る音味引き立てて走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.8.14.
110	朝礼の教育勅語消え敗戦	走り蕎麦	秋	16.8.14.
111	戦争の昭和も遠く敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
112	忘却と風化の進む敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
113	甲高き天皇の声敗戦日	敗戦日	秋	16.8.15.
114	玉音の途切れとぎれに終戦日	終戦日	秋	16.8.15.
115	カレンダーにそれと記されぬ終戦日	終戦日	秋	16.8.15.
116	何の日と言ふ若者や敗戦日	敗戦日	秋	16.8.15.
117	今日だけは晩酌やめる敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
118	少国民八十路を辿る敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
119	玉音も死語になりたる敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
120	代用食ぴんと来ぬ顔敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
121	どの顔もスマホに夢中敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
122	年ごとに影薄くなる敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
123	芋食って屁をよく放ひて敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
124	銃後では屁を放き合って敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
125	蝗採り蝗を食って敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
126	蝗採り蝗を食って戦終る	蝗（いなご）	秋	16.8.15.
127	風化する惨禍の記憶敗戦日	敗戦日	秋	16.8.15.
128	具の入らぬ目玉汁飲み敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
129	摘まめぬ具目玉汁なり敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.15.
130	米足りず蝗を食って敗戦日	敗戦日	秋	16.8.15.
131	農きびし睡魔を払ふ佞武多かな	佞武多	秋	16.8.16.
132	男踊り女踊りや風の盆	風の盆	秋	16.8.16.
133	観光客去りし路地裏風の盆	風の盆	秋	16.8.16.
134	すすり泣く胡弓の響き風の盆	風の盆	秋	16.8.16.
135	裏路地を忍び泣き音の風の盆	風の盆	秋	16.8.16.
136	辻明り人影映す風の盆	風の盆	秋	16.8.16.
137	辻明り胡弓流しの風の盆	風の盆	秋	16.8.16.
138	丑三つの辻に流しや風の盆	風の盆	秋	16.8.16.
139	乙女らのいと淑やかに風の盆	風の盆	秋	16.8.16.
140	胡弓の音嫋々として風の盆	風の盆	秋	16.8.16.
141	サインライト打ち振る子らの虫送り	虫送り	夏	16.8.17.
142	サインライト手に手に子らの虫送り	虫送り	夏	16.8.17.
143	松明のひと筋になり虫送り	虫送り	夏	16.8.17.
144	ほどのよき酒呑む人や秋初め	秋初め	秋	16.8.17.
145	室外機朝から唸る素秋かな	素秋	秋	16.8.17.
146	散水にそよと風あり今朝の秋	今朝の秋	秋	16.8.17.
147	露座仏のはだへに籠もる秋暑かな	秋暑	秋	16.8.17.
148	秋立ちて気配さがせど見つからず	立秋	秋	16.8.17.
149	秋天の靑に透かしの残り月	秋天	秋	16.8.17.
150	観覧車動くと見せず秋暑かな	秋暑	秋	16.8.17.
151	桂剥く若き板前涼新た	涼新た	秋	16.8.17.
152	秋涼の風呼び入れる板場かな	秋涼	秋	16.8.17.
153	秋涼の風呼び入るる板場かな	秋涼	秋	16.8.17.
154	燈火親し部屋に籠もりてスマホかな	燈火親し	秋	16.8.18.
155	青春の書き込み見つけ燈火かの秋	燈火の秋	秋	16.8.18.
156	灯親し乱読の書を積み上げて	燈火親し	秋	16.8.18.
157	燈火親し五輪のテレビ夜更けまで	燈火親し	秋	16.8.18.
158	燈火親しパソコンで読む新刊書	燈火親し	秋	16.8.18.
159	隣家にも灯火親しむ窓明り	燈火親しむ	秋	16.8.18.
160	家ごとに灯火親しむ事情あり	燈火親しむ	秋	16.8.18.
161	燈火親し友のメールに返事打つ	燈火親し	秋	16.8.18.
162	燈火親し電子将棋で夜は更けぬ	燈火親し	秋	16.8.18.
163	それぞれの部屋で親しむ燈火かな	燈火親し	秋	16.8.18.
164	燈火親しPDFで読む紀要	燈火親し	秋	16.8.18.
165	露座仏の背にひと筋の稲光	稲光	秋	16.8.18.
166	稲びかりスカイツリーが飲み込めり	稲光	秋	16.8.18.
167	稲妻や土蔵に小さき避雷針	稲妻	秋	16.8.18.
168	稲妻を背にゆっくりとバス来たり	稲妻	秋	16.8.18.
169	稲びかり女の顔の厚化粧	稲光	秋	16.8.18.
170	稲びかり辻の地蔵は驚かず	稲光	秋	16.8.18.
171	いなびかり京都五山を走りけり	稲光	秋	16.8.18.
172	朝刊を咥えしポスト秋立ちぬ	立秋	秋	16.8.18.
173	蜩やなぞへの墓地の夕間暮れ	蜩	秋	16.8.18.
174	ゲリラ雨の走る列島秋はじめ	初秋	秋	16.8.19.
175	秋草をかき分け流る野川かな	秋草	秋	16.8.19.
176	秋草を覆い尽して荒地瓜	秋草	秋	16.8.19.
177	秋草の仲間に入れて思ひ草	秋草	秋	16.8.19.
178	秋草に優しさなぞと荒地瓜	秋草	秋	16.8.19.
179	すすき原根方にひょこと思ひ草	思ひ草（＝煙管草）	秋	16.8.19.
180	面伏せ世を憚るや思ひ草	思ひ草（＝南蛮煙管）	秋	16.8.19.
181	ひょこひょこと芒の根方思ひ草	思ひ草	秋	16.8.19.
182	あっち向きこっち向きたる煙管草	煙管草	秋	16.8.19.
183	ヒモで生きヒモで枯れ行く煙管草	煙管草	秋	16.8.19.
184	芒原枯れし根方の思ひ草	思ひ草	秋	16.8.19.
185	生き方も姿も可笑し思ひ草	思ひ草	秋	16.8.19.
186	生き方も姿も異端思ひ草	思ひ草	秋	16.8.19.
187	恋ならば心に秘めて思ひ草	思ひ草	秋	16.8.19.
188	稲妻や土蔵の小さき避雷針	稲妻	秋	16.8.19.
189	向き変へて頬を撫でゆく秋の風	秋風	秋	16.8.19.
190	絵馬堂やかたりことりと秋の風	秋風	秋	16.8.19.
191	新涼や四百リレー銀メダル！	新涼	秋	16.8.20.
192	流燈を満を持し待つ回収船	流燈	秋	16.8.20.
193	かなかなや旧家に残る屋敷林	かなかな	秋	16.8.20.
194	自らを急き立て煽る法師蝉	法師蝉	秋	16.8.20.
195	かなかなの鳴ひて打ち切る立ち話	かなかな	秋	16.8.20.
196	蜩に話打ち切る主婦二人	蜩	秋	16.8.20.
197	かなかなの二度ほど鳴ひて日の暮れぬ	かなかな	秋	16.8.20.
198	ひぐらしの鳴ひて和尚の法話止む	蜩	秋	16.8.20.
199	夕空に見事な数の赤とんぼ	赤とんぼ	秋	16.8.20.
200	残照の畑の道や赤とんぼ	赤とんぼ	秋	16.8.20.
201	かなかなの声が幕引く日暮れかな	かなかな	秋	16.8.20.
202	神楽坂くだりて来れば秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.21.
203	外濠の木立にしみる秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.21.
204	仰向けの秋蝉じじとだけ鳴けり	秋蝉	秋	16.8.21.
205	尿放ちついと飛び去る秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.21.
206	出し抜けに庭で鳴き初む法師蝉	法師蝉	秋	16.8.21.
207	無差別の殺戮の果て敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.21.
208	愚行とは戦争のこと敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.21.
209	口実は言ひ訳なりし敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.21.
210	反戦のペン引き継がん松明忌 （むのたけじ死去、享年１０１歳）	松明忌	秋	16.8.21.
211	列島に墓標並びし敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.21.
212	仰向けの秋蝉じじと鳴き果てり	秋蝉	秋	16.8.21.
213	秋蝉のひと声残し果てにけり	秋蝉	秋	16.8.22.
214	雨に濡れ婚活の声秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.22.
215	日本の忌三つ並びし八月尽	八月尽	秋	16.8.22.
216	しまったと思へど遅し火取虫	火取虫	夏	16.8.22.
217	弾崎灯台囲む除虫菊	除虫菊	夏	16.8.22.
218	海越えて来し逞しき除虫菊	除虫菊	夏	16.8.22.
219	挨拶のできぬ少年金魚草	金魚草	夏	16.8.22.
220	青臭き蛍の匂ひ青春期	蛍	夏	16.8.22.
221	椿山荘知らぬ庭舞ふ蛍かな	蛍	夏	16.8.22.
222	身を任す蛍火さがす雌ほたる	蛍	夏	16.8.22.
223	蛍狩り口づけ交す二人かな	蛍狩	夏	16.8.23.
224	客寄せの小さきパンダ蛍舞ふ	蛍	夏	16.8.23.
225	お土産はビニール籠の蛍かな	蛍	夏	16.8.23.
226	蛍狩り暗闇さがす二人かな	蛍狩	夏	16.8.23.
227	住み馴れて岸辺に憩ふ通し鴨	通し鴨	夏	16.8.23.
228	餌ねだるほどに馴れたる通し鴨	通し鴨	夏	16.8.23.
229	名前付け呼べば振り向く通し鴨	通し鴨	夏	16.8.23.
230	軽鳧の子の面影消えし季の終り	軽鳧の子	夏	16.8.23.
231	高野聖独り遊びの泥田かな	高野聖（＝田亀）	夏	16.8.23.
232	ざりがにの爪立て空しポリバケツ	ざりがに	夏	16.8.23.
233	河骨や水の中にも花開く	河骨	夏	16.8.23.
234	生ひ茂る草潜りゆく夏の川	夏の川	夏	16.8.23.
235	二発目に言い訳ありや原爆忌	原爆忌	秋	16.8.24.
236	手が触れて女の睨む盆踊	盆踊	秋	16.8.24.
237	手の触れぬやうに気を付け盆踊	盆踊	秋	16.8.24.
238	シャツはみな国防色の終戦日	終戦日	秋	16.8.24.
239	オンリーの唇赤き敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
240	GIと腕組むオンリー敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
241	コンビニが弁当捨てる敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
242	すいとんがご馳走だった終戦日	終戦日	秋	16.8.24.
243	玉砕の島が相次ぎ敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
244	玉砕の報が相次ぎ敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
245	列島を焦土に変へて敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
246	無差別に人焼き殺し敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
247	殺戮の歯止め無きまま敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
248	究極の殺戮問はぬ原爆忌	原爆忌	秋	16.8.24.
249	国に命捧げる美辞や敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
250	火事泥の北方領土敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
251	反米にあらず反戦敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.24.
252	手が触れて女睨みし盆踊	盆踊	秋	16.8.24.
253	蜩の楷書で鳴きし夕木立	蜩	秋	16.8.24.
254	赤とんぼ群れで飛ぶ日と飛ばぬ日と	赤とんぼ	秋	16.8.25.
255	茶寿と言ふ楽しき夢や秋あかね	秋あかね	秋	16.8.25.
256	サインライト輪の伸び縮む盆踊	盆踊	秋	16.8.25.
257	よさこいのテンポに変る盆踊	盆踊	秋	16.8.25.
258	輪に入れば振り思ひ出す盆踊	盆踊	秋	16.8.25.
259	天皇の声甲高き終戦日	終戦日	秋	16.8.25.
260	音立てて火焔の走る大文字	大文字	秋	16.8.25.
261	妙法も舟形も燃ゆ大文字	大文字	秋	16.8.25.
262	五山には熱き灸（やいと）の大文字	大文字	秋	16.8.25.
263	処暑過ぎてなほ唸りをり室外機	処暑	秋	16.8.25.
264	唐突に狭庭で鳴けり法師蝉	法師蝉	秋	16.8.25.
265	蜩の鳴いて広がる薄暮かな	蜩	秋	16.8.25.
266	かなかなの鳴いて静寂（しじま）の生まれけり	かなかな	秋	16.8.25.
267	赤とんぼ群れ飛ぶ空の靑さかな	赤とんぼ	秋	16.8.25.
268	群れ飛べどみなてんでんに赤とんぼ	赤とんぼ	秋	16.8.25.
269	火事泥の北方領土敗戦忌	敗戦忌	秋	16.8.25.
270	みなが詠む六九十五八月忌	八月忌	秋	16.8.25.
271	定番句六九十五八月忌	八月忌	秋	16.8.25.
272	新涼や添削の赤ペンを置く	新涼	秋	16.8.26.
273	新涼や詠んで見つけし先行句	新涼	秋	16.8.26.
274	詠みたれば先行句あり秋の雷	秋の雷	秋	16.8.26.
275	新涼や郵便局へ用足しに	新涼	秋	16.8.26.
276	新涼や郵便局へ散歩かね	新涼	秋	16.8.26.
277	新涼の風呼び込みし網戸かな	新涼	秋	16.8.26.
278	網戸越し小声でじじと秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.26.
279	口下手に鳴きかけて止む秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.26.
280	鳴きかけて口ごもりをり秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.26.
281	じじじじと呟くやうに秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.26.
282	鳴きかけてまた鳴き止めり秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.26.
283	ようやくに長鳴きに入る秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.26.
284	秋蝉のクレッシェンドで嫁呼べり	秋蝉	秋	16.8.26.
285	ようやくに長鳴きできし秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.26.
286	不精ひげ剃らずに散歩秋めきぬ	秋めく	秋	16.8.26.
287	子らゐなくなりて寂しき地蔵盆	地蔵盆	秋	16.8.27.
288	子らの声なきまま迎ふ地蔵盆	地蔵盆	秋	16.8.27.
289	傘寿の妻遠き目をする地蔵盆	地蔵盆	秋	16.8.27.
290	葉茎分けきゅっきゅと摘みし茗荷の子（夏）	茗荷の子	夏	16.8.27.
291	まじまじと見ることもなき赤のまま	赤のまま	秋	16.8.27.
292	母が子に一茎渡す赤のまま	赤のまま	秋	16.8.27.
293	どの花も紅ほんのりと桜蓼	蓼の花	秋	16.8.27.
294	桜蓼その名もみやび花の列	蓼の花	秋	16.8.27.
295	さくら蓼一輪挿して花みつる	蓼の花	秋	16.8.27.
296	桜蓼花咲き満ちて華やげり	蓼の花	秋	16.8.27.
297	ぎらぎらの日と戯るる藪からし	藪からし	秋	16.8.27.
298	引くほどにずるりずるりと藪からし	藪からし	秋	16.8.27.
299	木漏れ日に水引の花際立てり	水引	秋	16.8.27.
300	オンリーの花子が闊歩カンナ燃ゆ	カンナ	秋	16.8.27.
301	千枚田一枚ごとに稲の花	稲の花	秋	16.8.27.
302	マリコと呼ぶオンリーがゐた花カンナ	花カンナ	秋	16.8.27.
303	マリコと言ふオンリーに似てカンナ燃ゆ	カンナ燃ゆ	秋	16.8.27.
304	オンリーも死語になりたりカンナ燃ゆ	カンナ燃ゆ	秋	16.8.27.
305	黒猫が尾を立て過る花カンナ	花カンナ	秋	16.8.27.
306	尾を立てて黒猫よぎる花カンナ	花カンナ	秋	16.8.27.
307	雨に濡れ婚活コール秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.27.
308	どの猫も尾を立て過る花カンナ	花カンナ	秋	16.8.27.
309	どの猫もなぜか尾を立て花カンナ	花カンナ	秋	16.8.27.
310	賓頭盧のおでこ艶やか八月尽	八月尽	秋	16.8.27.
311	高野聖てふ田亀の遊ぶ泥田かな	田亀（＝高野聖）	秋	16.8.27.
312	朝刊を咥えしポスト霧立ちぬ	霧立つ	秋	16.8.27.
313	朝刊を咥えしポスト霧の中	霧	秋	16.8.27.
314	賓頭盧のおでこに夕日八月尽	八月尽	秋	16.8.27.
315	尾を立てて過る黒猫花カンナ	花カンナ	秋	16.8.27.
316	尾を立てて過る黒猫カンナ燃ゆ	カンナ	秋	16.8.27.
317	葉生姜や生噛りする酒のあて	葉生姜	秋	16.8.27.
318	日本酒のあてにうれしい谷中かな	谷中生姜	秋	16.8.27.
319	風呼んで風船葛ふわりふわり	風船葛	秋	16.8.27.
320	痛めたる腰に膏薬抜菜汁	抜菜（＝間引菜）	秋	16.8.27.
321	二畝を間引きて夕餉抜菜汁	抜菜（＝間引菜）	秋	16.8.27.
322	父祖の地の信濃をゆけば蕎麦の花	蕎麦の花	秋	16.8.27.
323	信濃路を行けば紅白蕎麦の花	蕎麦の花	秋	16.8.27.
324	山裾のなぞへを覆い蕎麦の花	蕎麦の花	秋	16.8.27.
325	刈りたるも刈り残せしも蛍草	蛍草（＝露草）	秋	16.8.27.
326	くすみたる空にもめげず蛍草	蛍草	秋	16.8.27.
327	生味噌を付けて谷中で酒を酌む	谷中生姜（＝葉生姜）	秋	16.8.28.
328	味噌付けし谷中齧りつ友と酒	谷中生姜	秋	16.8.28.
329	小突いてもぶらりと長き糸瓜かな	糸瓜	秋	16.8.28.
330	どれもみなどてりと長き糸瓜かな	糸瓜	秋	16.8.28.
331	秋茄子を焼いて熱々夕餉の膳	秋茄子	秋	16.8.28.
332	秋茄子はお袋の味鉄火味噌	秋茄子	秋	16.8.28.
333	屋形船舫ふ運河を鯔の波	鯔	秋	16.8.28.
334	屋形船舫ふ運河を鯔飛べり	鯔	秋	16.8.28.
335	船溜まり爆ぜ跳ね走る鯔の群れ	鯔	秋	16.8.28.
336	せいご・ふっこ・すずきとなりて刺身かな	鱸	秋	16.8.28.
337	〆刺身夕餉の卓に秋の鯖	秋鯖	秋	16.8.28.
338	また一つ訃報届きぬ芙蓉の実	芙蓉の実	秋	16.8.29.
339	杖ついて老友来り芙蓉の実	芙蓉の実	秋	16.8.29.
340	飛ぶやうにジョガー走りぬ芙蓉の実	芙蓉の実	秋	16.8.29.
341	まばらなる枯葉に添ひて芙蓉の実	芙蓉の実	秋	16.8.29.
342	鶏頭を数へてみたり十五本	鶏頭	秋	16.8.29.
343	葉を擦ればほのと薄荷の匂ひけり	薄荷の花	秋	16.8.29.
344	ひと畝は紫淡き花薄荷	薄荷の花	秋	16.8.29.
345	にぎやかに子らの嗅ぎ合ふ花薄荷	薄荷の花	秋	16.8.29.
346	花薄荷刈りし農夫の顔ゆるむ	薄荷の花	秋	16.8.29.
347	曼珠沙華観る人の列巾着田	曼珠沙華	秋	16.8.29.
348	曼珠沙華野辺の送りの道しるべ	曼珠沙華	秋	16.8.29.
349	落飾のはずが燃え立つ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
350	まんじゅさげ野辺の送りの道飾る	曼珠沙華	秋	16.8.29.
351	カルメンの棺に投げよ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
352	次もまた無人駅なり曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
353	曼珠沙華だれが挿したか無縁墓	曼珠沙華	秋	16.8.29.
354	まんじゅさげ勝手に咲けり無人駅	曼珠沙華	秋	16.8.29.
355	ホームにも彼岸花咲くローカル線	彼岸花	秋	16.8.29.
356	墓地守る意志見せるかに曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
357	曼珠沙華錆びて寂しき廃校舎	曼珠沙華	秋	16.8.29.
358	人影の見えぬ集落彼岸花	彼岸花	秋	16.8.29.
359	艶やかに寂たる墓地の曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
360	村営のバンガロー朽ち曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
361	千枚田縁取り赤き曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
362	狭庭にも紛れ込みたる曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
363	木立埋め曼珠沙華燃ゆ巾着田	曼珠沙華	秋	16.8.29.
364	曼珠沙華火焔を上げる巾着田	曼珠沙華	秋	16.8.29.
365	人呼べる曼珠沙華なり巾着田	曼珠沙華	秋	16.8.29.
366	曼珠沙華乗っ取りしかに過疎の里	曼珠沙華	秋	16.8.29.
367	山寺の無住になりて曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
368	独り居て乳房疼けり曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
369	乙女独り乳房疼けり曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
370	恋すれば乳房疼けり曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.8.29.
371	総銀の笛に唇秋の風	秋風	秋	16.8.29.
372	男には前立腺や桐一葉	桐一葉	秋	16.8.29.
373	ヴィオロンの溜息ひとつ秋の風	秋風	秋	16.8.29.
374	秋場所や口滑らかに相撲取り	秋場所	秋	16.8.29.
375	天守閣窓開け放ち秋の風	秋風	秋	16.8.29.
376	フルートの音嫋々と秋の風	秋風	秋	16.8.29.
377	秋風や長き無住の山の寺	秋風	秋	16.8.29.
378	秋風に乗りて雉鳩ででぽぽー	秋風	秋	16.8.30.
379	日がな鳴く雉鳩の声秋の風	秋風	秋	16.8.30.
380	蜩やバトンタッチで鳴き継げり	蜩	秋	16.8.30.
381	じいと鳴き長鳴きに入る秋の蝉	秋蝉	秋	16.8.30.
382	鳴くうちにピッチの上がる法師蝉	法師蝉	秋	16.8.30.
383	自らを急き立てて鳴くつくつくし	つくつくし（＝法師蝉）	秋	16.8.30.
384	かなかなのリレー始まる夕木立	かなかな（＝蜩）	秋	16.8.30.
385	秋場所や抱負はみんな標準語	秋場所	秋	16.8.30.
386	場所入りはハイヤーで来る役力士	相撲	秋	16.8.30.
387	処暑過ぎてなほエアコンは強のまま	処暑	秋	16.8.30.
388	声高に愛でずと咲けり白木槿	白木槿	秋	16.8.30.
389	底紅の花あちこちに高麗の里	底紅（＝白木槿）	秋	16.8.30.
390	朝顔の咲き続け来て今朝もなほ	朝顔	秋	16.8.30.
391	ヴィオロンの溜息解きて秋の風	秋風	秋	16.8.30.
392	ヴィオロンの音嫋々と秋の風	秋風	秋	16.8.30.
393	梅入れし湯割り焼酎秋めけり	秋めく	秋	16.8.31.
394	梅干しの湯割り焼酎秋めきぬ	秋めく	秋	16.8.31.
395	半袖の腕過ぐ風の涼新た	涼新た	秋	16.8.31.
396	聞き返すほどの遠鳴り秋の雷	秋の雷	秋	16.8.31.
397	敗戦の風化進みし八月尽	八月尽	秋	16.8.31.
398	日の傾ぐほどに華やぐ花白粉	花白粉	秋	16.8.31.
399	川床を黄一色に泡立草	泡立草	秋	16.8.31.
400	代用食知らぬ乙女のパンプキン	南瓜	秋	16.8.31.
401	高級な食材となりパンプキン	南瓜	秋	16.8.31.
402	代用食怨みの深き南瓜かな	南瓜	秋	16.8.31.
403	代用食時代の南瓜不味かった	南瓜	秋	16.8.31.
404	戦中の不味さの記憶芋南瓜	芋・南瓜	秋	16.8.31.
405	飢えてなほ不味き記憶の芋南瓜	芋・南瓜	秋	16.8.31.
406	飢えてなほ不味き記憶の南瓜かな	南瓜	秋	16.8.31.
407	先生も産休明けて二学期来	二学期	秋	16.9.1.
408	災害は忘れずに来る震災忌	震災忌	秋	16.9.1.
409	期限切れ入替済ます震災忌	震災忌	秋	16.9.1.
410	期限切れ食料捨つる震災忌	震災忌	秋	16.9.1.
411	防災のグッヅ入換へ震災忌	震災忌	秋	16.9.1.
412	嫋々と胡弓響きし風の盆	風の盆	秋	16.9.1.
413	街裏を夜更けの胡弓風の盆	風の盆	秋	16.9.1.
414	風の盆忍び音洩らす胡弓かな	風の盆	秋	16.9.1.
415	三味胡弓笛の連行く風の盆	風の盆	秋	16.9.1.
416	裏をかく悪意を見せて野分過ぐ	野分	秋	16.9.1.
417	鳥も虫も息を殺せし野分中	野分	秋	16.9.1.
418	秋夕焼遠見の富士のシルエット	秋夕焼	秋	16.9.1.
419	秋暁の雲なき空に残り月	秋暁	秋	16.9.2.
420	記録なき川決壊の秋出水	秋出水	秋	16.9.2.
421	辞書の文字かすむ八十路や秋灯し	秋灯し	秋	16.9.2.
422	秋の燈やパソコンで引く電子辞書	秋燈	秋	16.9.2.
423	付箋貼りつページ読み継ぐ夜長かな	夜長	秋	16.9.2.
424	キー叩きコラム書き上ぐ夜長かな	夜長	秋	16.9.2.
425	養生の幕から洩るる夜なべの灯	夜なべ	秋	16.9.2.
426	カップ麺さがし湯を注ぐ夜食かな	夜食	秋	16.9.2.
427	艶よき葉選び下げ行く生姜市	生姜市	秋	16.9.2.
428	晩酌のあてに引っ下げ生姜市	生姜市	秋	16.9.2.
429	歳時記を広げ狭庭の秋意詠む	秋意	秋	16.9.2.
430	走る人犬連れし人花野みち	花野道	秋	16.9.2.
431	雄かまきり媾ひて後食はれけり	蟷螂	秋	16.9.3.
432	雄かまきり媾ひの果て食はれけり	蟷螂	秋	16.9.3.
433	いぼむしり鎌振り上げて呵呵大笑	いぼむしり（＝蟷螂）	秋	16.9.3.
434	媾ひの駄賃に喰はるいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.3.
435	身を焦がし果てに喰はるるいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.3.
436	鰯雲見向きもせずに散歩犬	鰯雲	秋	16.9.3.
437	鰯雲投網を捌く川漁師	鰯雲	秋	16.9.3.
438	みすゞの詩ふと思い出す鰯雲	鰯雲	秋	16.9.3.
439	投網舞ふ湖面泳ぎし鰯雲	鰯雲	秋	16.9.3.
440	鰯雲広がる川面投網舞ふ	鰯雲	秋	16.9.3.
441	鰯雲そうだ握りとつみれ汁	鰯雲	秋	16.9.3.
442	鰯雲決めた握りとつみれ汁	鰯雲	秋	16.9.3.
443	酒買ふて戻る家路や鰯雲	鰯雲	秋	16.9.3.
444	富士の影茜に染まる鰯雲	鰯雲	秋	16.9.3.
445	富士遠見茜に染まる鰯雲	鰯雲	秋	16.9.3.
446	群れてこそ波立ち撓る秋桜	秋桜	秋	16.9.4.
447	勁草にあらねど風の秋桜	秋桜	秋	16.9.4.
448	長距離バス目を楽します秋桜	秋桜	秋	16.9.4.
449	風遊ぶコスモス畑揺れ通し	コスモス	秋	16.9.4.
450	コスモスのそっと混ざりし墓の供花	コスモス	秋	16.9.4.
451	大束のコスモス担ぐ花農家	コスモス	秋	16.9.4.
452	街道に花のだんだら秋桜	コスモス	秋	16.9.4.
453	コスモスの原華やかに虫呼べり	コスモス	秋	16.9.4.
454	コスモスの迷路に弾む子らの声	コスモス	秋	16.9.4.
455	コスモスの迷路を走る母と子と	コスモス	秋	16.9.4.
456	コスモスや雲なき空の残り月	コスモス	秋	16.9.4.
457	コスモスや空には淡き残り月	コスモス	秋	16.9.4.
458	路地裏を夜更けの胡弓風の盆	風の盆	秋	16.9.5.
459	蟷螂の剣法つねに大上段	蟷螂（＝いぼむしり）	秋	16.9.5.
460	三角の小顔かしげるいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.5.
461	正眼の構へ崩さぬいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.5.
462	正眼の構へ決めたるいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.5.
463	身を焦がし果てに喰はるやいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.5.
464	みすゞの詩空に描きし鰯雲	鰯雲	秋	16.9.5.
465	いぼむしり鎌振り上げて貌傾ぐ	いぼむしり	秋	16.9.5.
466	何事も鎌振り上げていぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.5.
467	蒼天に万の数ゐる鰯雲	鰯雲	秋	16.9.5.
468	蒼天に何匹ゐるや鰯雲	鰯雲	秋	16.9.5.
469	鰯雲数え始める暇つぶし	鰯雲	秋	16.9.5.
470	鰯雲数へてゐたり暇つぶし	鰯雲	秋	16.9.5.
471	仁王像まばたきしたり鰯雲	鰯雲	秋	16.9.5.
472	仁王像目玉ぎょろりと鰯雲	鰯雲	秋	16.9.5.
473	いわし雲目玉に映す仁王さん	鰯雲	秋	16.9.5.
474	いわし雲目玉に映し仁王像	鰯雲	秋	16.9.5.
475	厨窓茜に染まる鰯雲	鰯雲	秋	16.9.5.
476	厨窓開けて茜の鰯雲	鰯雲	秋	16.9.5.
477	汚染土に暮らす定めと蚯蚓鳴く	蚯蚓鳴く	秋	16.9.5.
478	汚染土に生きて死ぬ身と蚯蚓鳴く	蚯蚓鳴く	秋	16.9.5.
479	汚染地区闇の深きを蚯蚓鳴く	蚯蚓鳴く	秋	16.9.5.
480	汚染土の闇深くして蚯蚓鳴く	蚯蚓鳴く	秋	16.9.5.
481	蚯蚓鳴く墓も移せぬ汚染地区	蚯蚓鳴く	秋	16.9.5.
482	蓑虫や空也に似たる糞掃衣	蓑虫	秋	16.9.5.
483	蓑虫や破れたら縫ふ糞掃衣	蓑虫	秋	16.9.5.
484	蓑虫と競ふ聖の糞掃衣	蓑虫	秋	16.9.5.
485	良寛と蓑虫競ふ糞掃衣	蓑虫	秋	16.9.5.
486	蓑虫や聖も纏ふ糞掃衣	蓑虫	秋	16.9.5.
487	利休坐す障子の部屋や茶立虫	茶立虫	秋	16.9.5.
488	障子越し茶の湯に紛ふ茶立虫	茶立虫	秋	16.9.5.
489	さらさらと茶筅の音や茶立虫	茶立虫	秋	16.9.6.
490	そよぐ風小豆洗ひの音もありぬ	小豆洗ひ（＝茶立虫）	秋	16.9.6.
491	頭頂に木の実こつんと秋の風	秋の風	秋	16.9.6.
492	蓑虫のちらと眼を出しまた潜む	蓑虫	秋	16.9.6.
493	蓑虫のふはりぽっかりのほほんと	蓑虫	秋	16.9.6.
494	蓑虫の縦横揺れる日がなかな	蓑虫	秋	16.9.6.
495	蓑虫の枝に垂れをり残り月	蓑虫	秋	16.9.6.
496	古里は汚染地区なり蚯蚓鳴く	蚯蚓鳴く	秋	16.9.6.
497	稲雀汚染地区には立ち寄らず	稲雀	秋	16.9.6.
498	稲雀汚染地区には寄り付かず	稲雀	秋	16.9.6.
499	金山寺味噌ではじかみ齧り呑む	はじかみ（＝新生姜）	秋	16.9.6.
500	金山寺味噌ではじかみ齧り酌む	はじかみ	秋	16.9.6.
501	金山寺味噌ではじかみ独り酒	はじかみ	秋	16.9.6.
502	はじかみの白きに味噌は金山寺	はじかみ	秋	16.9.6.
503	秋の蚊を叩かず吹きて払ひけり	秋の蚊	秋	16.9.6.
504	虫の音に混ざる初心のバイオリン	虫の音	秋	16.9.7.
505	人住めぬ汚染地域や虫時雨	虫時雨	秋	16.9.7.
506	虫時雨野犬うろつく汚染地区	虫時雨	秋	16.9.7.
507	汚染地区太古に戻る虫の闇	虫の闇	秋	16.9.7.
508	虫すだき闇を深める汚染の地	虫	秋	16.9.7.
509	虫売りの姿消えたる夜店かな	虫	秋	16.9.7.
510	芋洗ふ水車の響き峡の里	芋	秋	16.9.7.
511	ときに止りまた回り出す芋水車	芋	秋	16.9.7.
512	用水路速き流れの芋水車	芋	秋	16.9.7.
513	虫すだく夜道に響くハイヒール	虫	秋	16.9.7.
514	最終のバス待つ列の夜寒かな	夜寒	秋	16.9.7.
515	峡の宿荒地の芋の煮転がし	芋	秋	16.9.7.
516	燈火親し青春の日の朱の傍線	燈火親し	秋	16.9.7.
517	銀座通り外す野分のへそ曲り	野分	秋	16.9.7.
518	養生のカバーのたうつ野分中	野分	秋	16.9.7.
519	本堂に木魚の響き野分中	野分	秋	16.9.7.
520	床しき名持つ秋草や門跡寺	秋草	秋	16.9.7.
521	秋草や裸足で走る柔道部	秋草	秋	16.9.7.
522	秋草のこれも一つや思草	秋草	秋	16.9.7.
523	台風銀座外す野分のへそ曲り	台風。野分	秋	16.9.7.
524	何一つ覚えてをらじ酔芙蓉	酔芙蓉	秋	16.9.7.
525	時と場で呼び名の変る曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.9.7.
526	落蝉や黄泉へ手足を動かせり	落蝉	秋	16.9.7.
527	コスモスはブーケにならぬ風の花	コスモス	秋	16.9.7.
528	おぞましき死人花とも曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.9.7.
529	犀星の貌浮かび来るいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.8.
530	来給えと手招く犀星いぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.8.
531	犀星の貌思ひ出すいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.8.
532	犀星の手招くやうないぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.8.
533	犀星に手招きされていぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.8.
534	煌々と夜空冴えたる野分あと	野分	秋	16.9.8.
535	煌々と冴えし夜空や野分あと	野分	秋	16.9.8.
536	簾巻く二の腕白き若女将	簾納む	秋	16.9.8.
537	旅立ちの昂ぶり見せず去ぬ燕	去ぬ燕	秋	16.9.8.
538	台風を使いこなしつ鷹渡る	鷹渡る	秋	16.9.8.
539	嵐突き刺羽の列の渡りかな	鷹渡る	秋	16.9.9.
540	廃れしを惜しみて交す菊の酒	菊の酒	秋	16.9.9.
541	句会終え仲間と交す菊の酒	菊の酒	秋	16.9.9.
542	陽数の極まる菊の酒旨し	菊の酒	秋	16.9.9.
543	重陽を知らずも子らの九九の声	重陽	秋	16.9.9.
544	九九覚えしころの懐かし今日の菊	今日の菊	秋	16.9.9.
545	箸先の酒盗舐りつ温め酒	温め酒	秋	16.9.9.
546	居酒屋はビルの三階登高す	登高	秋	16.9.9.
547	山寺や千段の磴登高す	登高	秋	16.9.9.
548	山寺や磴千段を登高す	登高	秋	16.9.9.
549	山寺の高きに登る磴千段	高きに登る	秋	16.9.9.
550	菊一片浮かべて出さる温め酒	温め酒	秋	16.9.9.
551	秋草に刈萱の名や父恋し	秋草	秋	16.9.10.
552	父恋ひの刈萱童子秋の草	秋草	秋	16.9.10.
553	数羽ずつ旅立ち行くや秋燕	秋燕	秋	16.9.10.
554	数羽ずつひそと旅立つ帰燕かな	帰燕	秋	16.9.10.
555	秋草やトランペットを吹く少女	秋草	秋	16.9.10.
556	初潮の引けば無数の忘れ潮	初潮	秋	16.9.10.
557	初潮や追ひ抜く波の荒々し	初潮	秋	16.9.10.
558	秋潮や胸乳豊かな海女戻る	初潮	秋	16.9.10.
559	秋潮や胸乳豊かな海女潜る	秋潮	秋	16.9.10.
560	月天心乙女の肌の青光る	月天心	秋	16.9.10.
561	靑光る乙女の肌や月天心	月天心	秋	16.9.10.
562	雀らの波打ち飛ぶや芋嵐	芋嵐	秋	16.9.10.
563	打ち打たる葉裏葉表芋嵐	芋嵐	秋	16.9.10.
564	裏返しまた裏返し芋嵐	芋嵐	秋	16.9.10.
565	葉の裂けよ茎も折れよと芋嵐	芋嵐	秋	16.9.10.
566	辻仏供花とは別に衣被	衣被	秋	16.9.11.
567	手に取ればおっと熱々きぬかつぎ	衣被	秋	16.9.11.
568	三つ指でつるりと剥いて衣被	衣被	秋	16.9.11.
569	しみじみとずゐきの煮物母の味	芋茎	秋	16.9.11.
570	一皿はずゐきの煮つけ坊の宿	芋茎	秋	16.9.11.
571	法事の膳ずゐきの皿も載りにけり	芋茎	秋	16.9.11.
572	十六夜に黒々浮ぶ寺木立	十六夜	秋	16.9.11.
573	山門に琵琶の調べの十六夜	十六夜	秋	16.9.11.
574	山門に響く琵琶の音十六夜	十六夜	秋	16.9.11.
575	立待の月に夜空の深き靑	立待月	秋	16.9.11.
576	立待の月に夜空の雲速し	立待月	秋	16.9.11.
577	パソコンを閉じて狭庭の居待月	居待月	秋	16.9.11.
578	知る花も知らぬも楽し秋の草	秋草	秋	16.9.11.
579	可憐な花見つけて屈む秋の草	秋草	秋	16.9.11.
580	それなりに姿整ふ秋の草	秋草	秋	16.9.11.
581	登る磴風柔らかに秋の草	秋草	秋	16.9.11.
582	風呼んで風と戯る秋の草	秋草	秋	16.9.11.
583	野を行けば秋七草の揃ひ踏み	秋の七草	秋	16.9.11.
584	末枯れても香のたゆたへし藤袴	藤袴	秋	16.9.12.
585	肌に触る風の清しく藤袴	藤袴	秋	16.9.12.
586	身ほとりにほのと香のあり藤袴	藤袴	秋	16.9.12.
587	風されど撓りしままの藤袴	藤袴	秋	16.9.12.
588	そこはかとなき香清しく藤袴	藤袴	秋	16.9.12.
589	ゐのこづち散歩の犬の腹手足	ゐのこづち	秋	16.9.12.
590	野の小道獲物待つかにゐのこづち	ゐのこづち	秋	16.9.12.
591	人の目の先を辿ればゐのこづち	ゐのこづち	秋	16.9.12.
592	人の目にはっと気づけりゐのこづち	ゐのこづち	秋	16.9.12.
593	ゐの小づち数へつ毟る十八個	ゐのこづち	秋	16.9.12.
594	ゐのこづち毟るマダムの薄笑ひ	ゐのこづち	秋	16.9.12.
595	散歩道気づけばけふもゐのこづち	ゐのこづち	秋	16.9.12.
596	枸杞の実の透ける真紅に空深む	枸杞	秋	16.9.13.
597	枸杞の実の真紅眩しき空の靑	枸杞	秋	16.9.13.
598	生垣に枸杞の実きらら日の光り	枸杞	秋	16.9.13.
599	枸杞の実の真紅に触れて風光る	枸杞	秋	16.9.13.
600	枸杞の実の真紅に染まり光る風	枸杞	秋	16.9.13.
601	枸杞の実の真紅に清し空の靑	枸杞	秋	16.9.13.
602	秋草に刈萱の名や父子の悲話	秋草・刈萱	秋	16.9.13.
603	秋草に刈萱の名や父子哀話	秋草・刈萱	秋	16.9.13.
604	秋草や刈萱堂に父子の悲話	秋草	秋	16.9.13.
605	秋草や市場移設のしだらでん	秋草	秋	16.9.13.
606	ひたすらに眠たし眠し秋涼し	秋涼し	秋	16.9.14.
607	古民家の間取り丸見え秋涼し	秋涼し	秋	16.9.14.
608	丸見えの古民家吹き抜く秋の風	秋風	秋	16.9.14.
609	流れ星また一つまた一つ飛ぶ	流れ星	秋	16.9.14.
610	頭頂にこつんと木の実秋ぐもり	秋曇り	秋	16.9.14.
611	逆流の食道苦し秋涼し	秋涼し	秋	16.9.14.
612	マスカットがぶりと喰らふ棚の下	マスカット	秋	16.9.14.
613	種と皮丸食ひ旨し黒葡萄	葡萄	秋	16.9.14.
614	マスカットフォークでつつく披露宴	マスカット	秋	16.9.14.
615	裕次郎聴きつ走らす夜霧かな	夜霧	秋	16.9.14.
616	たくらみを覆い隠して夜の霧	夜霧	秋	16.9.14.
617	髑髏鳴らす歯の音夜の霧	夜霧	秋	16.9.14.
618	髑髏こつんと蹴りぬ夜の霧	夜霧	秋	16.9.14.
619	裏通り夜霧に滲む赤提灯	夜霧	秋	16.9.14.
620	コンビニの無言の客や夜の霧	夜霧	秋	16.9.14.
621	釣瓶落し井戸無き街も日暮れけり	釣瓶落し	秋	16.9.14.
622	釣瓶落しヘッドライトの花開く	釣瓶落し	秋	16.9.14.
623	釣瓶落し無灯のままも混りをり	釣瓶落し	秋	16.9.14.
624	駆け足で帰る子釣瓶落しかな	釣瓶落し	秋	16.9.14.
625	掘るほどにごろりごろりと八頭	八頭	秋	16.9.15.
626	黄砂来ぬおらが国土と引き取れや （季語：春）	黄砂	秋	16.9.15.
627	納豆を食むときに似し衣被	衣被	秋	16.9.15.
628	味噌醤油塩の小皿で衣被	衣被	秋	16.9.15.
629	猪口を手に夜空仰ぎつ衣被	衣被	秋	16.9.15.
630	麦飯の熱々に掛けとろろ汁	とろろ汁	秋	16.9.15.
631	お運びは作務衣の僧や新豆腐	新豆腐	秋	16.9.15.
632	新蕎麦と筆太の文字客招く	新蕎麦	秋	16.9.15.
633	客はみな音立てて食む走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.9.15.
634	北海道募金箱置き走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.9.15.
635	風を呼ぶ佃の路地の秋簾	秋簾	秋	16.9.15.
636	風呼んで佃の路地の秋簾	秋簾	秋	16.9.15.
637	盃重ね仕上げは駒形とろろ汁	とろろ汁	秋	16.9.15.
638	脚立から地下足袋覗く松手入れ	松手入れ	秋	16.9.15.
639	植木職静寂を醸す松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
640	虫除けの薄き煙りや松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
641	職人の沈思黙考松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
642	松手入れ聞き耳を立てるほど静か	松手入れ	秋	16.9.16.
643	針葉の数揃へつつ松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
644	針葉の数を揃へし松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
645	針葉の数整へる松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
646	咳払ひ一つ聞えぬ松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
647	脚立かたり動かし黙の松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
648	瞑想の時刻みたる松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
649	静寂生む鋏の音や松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
650	脚立から見上げ見下ろし松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
651	松手入れ遠くに聞ゆ救急車	松手入れ	秋	16.9.16.
652	針葉をぱらぱらぱらと松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
653	針葉をぱらりぱらりと松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
654	一日を脚立で暮らす松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
655	松の香を身にたっぷりと松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
656	黙々と父子相伝の松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
657	師が弟子に二言三言松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
658	親方が二言三言松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
659	寡黙なる親方と弟子松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
660	ゆっくりとときに素早く松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
661	間をはかり鋏入れゆく松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
662	禅寺の黙深くして松手入れ	松手入れ	秋	16.9.16.
663	膳運ぶ作務衣の僧や新豆腐	新豆腐	秋	16.9.16.
664	白桔梗四十七まで貨車数ふ	白桔梗	秋	16.9.16.
665	薄紅葉四十七まで貨車数ふ	薄紅葉	秋	16.9.16.
666	ななかまど四十七まで貨車数ふ	ななかまど	秋	16.9.16.
667	秋夕焼四十七まで貨車数ふ	秋夕焼	秋	16.9.16.
668	過る貨車数えて虚し鰯雲	鰯雲	秋	16.9.16.
669	秋蝉のひそと逝きけりタクラマカン	秋蝉	秋	16.9.16.
670	秋蝉のひそと逝きけり銀座裏	秋蝉	秋	16.9.16.
671	秋蝉逝くブロードウエイ交差点	秋蝉	秋	16.9.16.
672	新蕎麦と筆太の文字暖簾わき	新蕎麦	秋	16.9.16.
673	足止めぬ夜寒の道の赤提灯	夜寒	秋	16.9.16.
674	赤提灯口実となる夜寒かな	夜寒	秋	16.9.16.
675	夜寒これ口実できて赤提灯	夜寒	秋	16.9.16.
676	ふげんの無駄いつまで続く鰯雲	鰯雲	秋	16.9.17.
677	身に入むや豊洲市場の奇奇怪怪	身に入む	秋	16.9.17.
678	身に入むや豊洲市場の魑魅魍魎	身に入む	秋	16.9.17.
679	身に入むや行雲速きにわたずみ	身に入む	秋	16.9.17.
680	潦ばしゃばしゃ行く子秋茜	秋茜	秋	16.9.17.
681	身に入むや送信メール誤字化け字	身に入む	秋	16.9.17.
682	そこかしこ秋雲映すにわたずみ	秋雲	秋	16.9.17.
683	身に入むや娘ら二人五十代	身に入む	秋	16.9.17.
684	さやけしや八十路の妻の名はさやか	さやけし	秋	16.9.17.
685	そこここの箍は弛めど秋うらら	秋麗	秋	16.9.17.
686	秋冷の狭庭に一つにわたずみ	秋冷	秋	16.9.17.
687	コンビニの無言の客や夜寒し	夜寒	秋	16.9.17.
688	秋暁の雲なき空の残り月	秋暁	秋	16.9.17.
689	秋暁の雲なき空や残り月	秋暁	秋	16.9.17.
690	止まってはまた回り出す芋水車	芋	秋	16.9.17.
691	群雀波打ち飛べり芋嵐	芋嵐	秋	16.9.17.
692	群雀波打ち飛ぶや芋嵐	芋嵐	秋	16.9.17.
693	ゆるさぬとひゃくまんべんのきりぎりす	きりぎりす	秋	16.9.18.
694	マスカットクレオパトラの立いばり	マスカット	秋	16.9.18.
695	結社とは持ちつ凭れし夜寒かな	夜寒	秋	16.9.18.
696	見くびりつ師事と宣ふ芋の露	芋の露	秋	16.9.18.
697	冷まじや無声逃れの技光る	冷まじ	秋	16.9.18.
698	子規庵や主の目線で見し糸瓜	糸瓜	秋	16.9.18.
699	文机に子規の切れ込み枯れ糸瓜	糸瓜	秋	16.9.18.
700	軒飾る根岸の里の枯れ糸瓜	糸瓜	秋	16.9.18.
701	文机に正座してみし獺祭忌	獺祭忌	秋	16.9.18.
702	文机に正座の軒の枯れ糸瓜	獺祭忌	秋	16.9.18.
703	文机に膝差し入れぬ獺祭忌	獺祭忌	秋	16.9.18.
704	子規庵の座敷に偲ぶ獺祭忌	獺祭忌	秋	16.9.18.
705	切れ込みの文机で詠む獺祭忌	獺祭忌	秋	16.9.18.
706	子規庵の訪客多し獺祭忌	獺祭忌	秋	16.9.18.
707	子規庵の狭庭に懸かる鰯雲	鰯雲	秋	16.9.18.
708	秋の蝶狭庭に舞へり子規の庵	秋の蝶	秋	16.9.18.
709	明治の香漂ふ庵や獺祭忌	獺祭忌	秋	16.9.18.
710	文机に頬杖突きて獺祭忌	獺祭忌	秋	16.9.18.
711	芋水車ひねもす回る峡の里	芋	秋	16.9.19.
712	虫すだく夜道に遠き救急車	虫	秋	16.9.19.
713	ちちとだけ鳴きし厨のすがれ虫	すがれ虫	秋	16.9.19.
714	一声で黙す厨のすがれ虫	すがれ虫	秋	16.9.19.
715	味噌汁のぶっかけ飯やちゝろ鳴く	ちちろ(＝蟋蟀）	秋	16.9.19.
716	カップ麺啜る夜食やつづれさせ	つづれさせ（＝蟋蟀）	秋	16.9.19.
717	カップ麺三分待つ間ちゝろ聴く	ちちろ	秋	16.9.19.
718	季のはざま恨みはせねどすがれ虫	すがれ虫	秋	16.9.19.
719	水琴窟和して鳴きたるすがれ虫	すがれ虫	秋	16.9.19.
720	これをしも薄幸と聴くすがれ虫	すがれ虫	秋	16.9.19.
721	泣き疲れ眠る子に似てすがれ虫	すがれ虫	秋	16.9.19.
722	人間てふ嘘つきのゐる花野かな	花野	秋	16.9.19.
723	いわし雲海の中では弔ひか	鰯雲	秋	16.9.19.
724	海原に影を映して鰯雲	鰯雲	秋	16.9.19.
725	海原の仲間呼ぶかに鰯雲	鰯雲	秋	16.9.19.
726	鰯雲動くとも見えず泳ぎけり	鰯雲	秋	16.9.19.
727	朝寒や四季鳴きとおすデデポポー	朝寒	秋	16.9.20.
728	一切れを二口ずつで梨を食む	梨	秋	16.9.20.
729	秋寒や急に寂しき庭の黙	秋寒	秋	16.9.20.
730	そぞろ寒手の甲に浮く老いの染み	そぞろ寒	秋	16.9.20.
731	長袖に替へてごみ出す朝の冷え	朝冷え	秋	16.9.20.
732	種なしの葡萄皮ごと食んでみる	葡萄	秋	16.9.20.
733	種吐かず皮ごと葡萄食む露人	葡萄	秋	16.9.20.
734	種吐かず皮ごと葡萄食むプーチン	葡萄	秋	16.9.20.
735	葡萄狩り背伸びする子と屈む父	葡萄	秋	16.9.20.
736	露人ベーラ葡萄丸ごと食みにけり	葡萄	秋	16.9.20.
737	ミス・オリガ葡萄皮ごと食みにけり	葡萄	秋	16.9.20.
738	鼻孔ふと木犀の香を捉へけり	木犀	秋	16.9.20.
739	香を辿り金木犀に行きつけり	金木犀	秋	16.9.20.
740	路地裏を己が香に染め金木犀	金木犀	秋	16.9.20.
741	木犀の香の纏ひつく通学路	木犀	秋	16.9.20.
742	木犀の香の襲い来る通学路	木犀	秋	16.9.20.
743	木犀の香のトンネルを登校す	木犀	秋	16.9.20.
744	木犀の香を掻き分けて登校児	木犀	秋	16.9.20.
745	芳香にときに辟易金木犀	金木犀	秋	16.9.20.
746	夜寒きて急に寂しき庭の黙	夜寒	秋	16.9.20.
747	夜寒なり急に寂しき庭の黙	夜寒	秋	16.9.20.
748	程超えし香の疎ましや金木犀	金木犀	秋	16.9.20.
749	色とりどり群れてこそよし秋桜	秋桜	秋	16.9.21.
750	国道の車絶えなし秋ざくら	秋桜	秋	16.9.21.
751	心やや寂しがらせて秋の風	秋風	秋	16.9.21.
752	秋まつり太鼓の音で始まれり	秋祭	秋	16.9.21.
753	野分あと夜空を走る雲速し	野分後	秋	16.9.21.
754	本堂を開け放したる野分後	野分後	秋	16.9.21.
755	消防車見回りてゆく野分後	野分後	秋	16.9.21.
756	群雀捩れ飛び立つ芋嵐	芋嵐	秋	16.9.21.
757	群雀うねりを効かす芋嵐	芋嵐	秋	16.9.21.
758	不意打ちを食わせ素知らぬ露時雨	露時雨	秋	16.9.21.
759	さっと降り知らぬ存ぜぬ露時雨	露時雨	秋	16.9.21.
760	狙ひたるごとく襲へり露しぐれ	露時雨	秋	16.9.21.
761	秋霖や遠くに聞ゆ救急車	秋霖	秋	16.9.21.
762	登校の子らの長靴秋しぐれ	秋時雨	秋	16.9.22.
763	マスカットずしりと重き房を剪る	マスカット	秋	16.9.22.
764	マスカットずしりと重き乳房かな	マスカット	秋	16.9.22.
765	一房の葡萄皮ごとミス・ベーラ	葡萄	秋	16.9.22.
766	ビル・エバンス聴く窓外は秋しぐれ	秋時雨	秋	16.9.22.
767	秋寒や機嫌の悪き腹の虫	秋寒	秋	16.9.22.
768	マンションの二十九階秋灯し	秋灯	秋	16.9.22.
769	独り居の秋思を訪わん五合庵	秋思	秋	16.9.22.
770	古ぶ柱秋思の旅の五合庵	秋思	秋	16.9.22.
771	補聴器を外して聴けり秋の声	秋の声	秋	16.9.22.
772	耳遠しされど聴こゆる秋の声	秋の声	秋	16.9.22.
773	ちょんぎーす昼の狭庭の螽斯（きりぎりす）	螽斯	秋	16.9.23.
774	朝まだき鈴音優しき草雲雀	草雲雀	秋	16.9.23.
775	朝まだき鈴音に目覚む草雲雀	草雲雀	秋	16.9.23.
776	きちきちと何の良き日を告げにしや	きちきち（＝飛蝗）	秋	16.9.23.
777	巾着袋膨れ蠢く蝗捕り	蝗	秋	16.9.23.
778	糠蠅の目鼻口へと苛立たし	糠蠅	秋	16.9.23.
779	螻蛄（けら）鳴ひて厨の闇を深くせり	螻蛄	秋	16.9.23.
780	揺籃の鬼の子うつらうつらかな	鬼の子（＝蓑虫）	秋	16.9.23.
781	におふかと仁王に質すへこきむし	へこきむし	秋	16.9.23.
782	がちゃがちゃと狭庭の闇の轡虫	轡虫	秋	16.9.23.
783	がちゃがちゃと闇を騒がせ轡虫	轡虫	秋	16.9.23.
784	夜寒し急に寂しき庭の黙	夜寒	秋	16.9.23.
785	すがれ虫夜道に遠き救急車	すがれ虫	秋	16.9.23.
786	コンビニの無言の客やおけら鳴く	螻蛄鳴く	秋	16.9.23.
787	撫子や雨後の流れのさゝ濁り	撫子	秋	16.9.24.
788	撫子の一茎すくと咲く川辺	撫子	秋	16.9.24.
789	撫子や水嵩増せる川の幅	撫子	秋	16.9.24.
790	風の道なれば傾ぎぬ藤袴	藤袴	秋	16.9.24.
791	藤袴はかなき紅のありどころ	藤袴	秋	16.9.24.
792	草虱昔を知らぬ子らの髪	草虱	秋	16.9.24.
793	散歩道気づけばけふも草虱	草虱	秋	16.9.24.
794	蚤虱縁なき子らに草じらみ	草虱	秋	16.9.24.
795	どんぐりの落ちて水の輪鏡池	団栗	秋	16.9.24.
796	また一つどんぐり落ちぬ鏡池	団栗	秋	16.9.24.
797	銀杏の拾ひ放題雨後の朝	銀杏	秋	16.9.24.
798	銀杏を踏まねば行けぬ停留所	銀杏	秋	16.9.24.
799	秋寒や老懶の二字入れ返書	秋寒	秋	16.9.24.
800	椎の実を敷詰む径の艶光	椎の実	秋	16.9.24.
801	強面をやめて遊ぼやいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.24.
802	蟷螂やときには友にならんかね	蟷螂	秋	16.9.24.
803	蟷螂や鎌を下ろして遊ばんか	蟷螂	秋	16.9.24.
804	かまきりや強面止めて遊ぼうよ	蟷螂	秋	16.9.24.
805	愛されぬ性の哀しきいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.24.
806	媾合の果てに雄食むいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.24.
807	愛交歓果てて雄喰ふいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.24.
808	生まれ出で死ぬまで怒るいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.24.
809	鎌収め酒酌み交はそいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.24.
810	鎌収め語り尽さんいぼむしり	いぼむしり	秋	16.9.24.
811	孫の手で背中掻きをり秋しぐれ	秋時雨	秋	16.9.24.
812	空耳に鳴きし蓑虫一句詠む	蓑虫	秋	16.9.24.
813	空耳に蓑虫鳴いて詠む一句	蓑虫	秋	16.9.24.
814	秋寒や頑固偏屈治療院	秋寒	秋	16.9.24.
815	髑髏歯をかたかたと夜寒かな	夜寒	秋	16.9.25.
816	髑髏骨を軋ます夜寒かな	夜寒	秋	16.9.25.
817	しゃれこうべ骨ぽきぽきと鳴る夜寒	夜寒	秋	16.9.25.
818	コンビニでおでん買ひゆく独り者	おでん	冬	16.9.25.
819	避難地区人影絶えし夜寒かな	夜寒	秋	16.9.25.
820	般若経聴きつ菩提子拾ひけり	菩提子	秋	16.9.25.
821	菩提子を拾ひ懐紙に南無三宝	菩提子	秋	16.9.25.
822	菩提子を拾ひて帰る寺参り	菩提子	秋	16.9.25.
823	寺参り菩提樹の実のそこかしこ	菩提樹の実（＝菩提子）	秋	16.9.25.
824	有難き聞きて菩提子拾ひけり	菩提子	秋	16.9.25.
825	仏縁を聞きて菩提子拾ひけり	菩提子	秋	16.9.25.
826	無患子のぱらりと降りし深大寺	無患子	秋	16.9.25.
827	無患子の落果を拾ふ深大寺	無患子	秋	16.9.25.
828	無患子を拾ふて僧の手内職	無患子	秋	16.9.25.
829	お遍路と無患子拾ふ札所かな	無患子	秋	16.9.25.
830	無患子の知らぬ間に降る深大寺	無患子	秋	16.9.25.
831	秋晴れや頑固偏屈臍曲り	秋晴れ	秋	16.9.25.
832	亀の子の亀頭をひょこと伸ばしけり （季語：夏）	亀の子	夏	16.9.25.
833	秋嶺やただ乗りたくて小海線	秋嶺	秋	16.9.25.
834	カド番が全勝優勝九月場所	九月場所	秋	16.9.25.
835	冷凍の鯖喰らはされ鮎獲る鵜 （鵜飼：夏）	鵜飼	夏	16.9.25.
836	荒々し火鍋音立つ秋暑かな	秋暑	秋	16.9.25.
837	月を背にスマホ繰りゆく人の影	月	秋	16.9.26.
838	海原を摘みつ月の独り言	月	秋	16.9.26.
839	霧深し籠りの庵の般若経	霧	秋	16.9.26.
840	自転車のサドルを濡らす夜の霧	霧	秋	16.9.26.
841	月の面濡らして深し夜の霧	霧	秋	16.9.26.
842	交番はいつも空っぽ夜の霧	霧	秋	16.9.26.
843	霧の夜や寄っていけよと赤提灯	霧	秋	16.9.26.
844	曲がる路地ひとつ間違へ夜の霧	霧	秋	16.9.26.
845	終バスの尾灯滲ます夜霧かな	霧	秋	16.9.26.
846	夜霧濃し小走りになるハイヒール	霧	秋	16.9.26.
847	ホームズのひょいと出さうな夜の霧	霧	秋	16.9.26.
848	避難地区釣瓶落しの闇の中	釣瓶落し	秋	16.9.26.
849	避難地区釣瓶落しの闇に入る	釣瓶落し	秋	16.9.26.
850	串焼きの芋に味噌の香囲炉裏酒	芋	秋	16.9.26.
851	飢えたればダイヤをパンに霙ふる	霙	冬	16.9.27.
852	死はいつも隣にをりぬ鰯雲	鰯雲	秋	16.9.27.
853	また一人メールで訃報暮れの秋	暮れの秋	秋	16.9.27.
854	切岸の際に燃え立つ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	16.9.27.
855	夢がほんと現が夢の枯野かな	枯野	冬	16.9.27.
856	鵙告げぬ比良坂行けば黄泉の森	鵙	秋	16.9.27.
857	黄泉の国あれこれ想ふ夜長かな	夜長	秋	16.9.27.
858	峠越ゆ黄泉ッ比良坂彼岸花	彼岸花	秋	16.9.27.
859	くしゃくしゃと雑草の径野紺菊	野紺菊	秋	16.9.27.
860	街道のダンプの風や野紺菊	野紺菊	秋	16.9.27.
861	道の辺に色すがしきは野紺菊	野紺菊	秋	16.9.27.
862	野菊咲く余命幾ばく八十路かな	野菊	秋	16.9.27.
863	竜胆と紫競ふ桔梗かな	竜胆・桔梗	秋	16.9.27.
864	どんみりと芭蕉の空や筆竜胆	竜胆	秋	16.9.27.
865	山路来て窪地に確と姫竜胆	竜胆	秋	16.9.27.
866	里山の静寂切裂き鵙高音	鵙高音	秋	16.9.27.
867	里山の静寂切裂く鵙高音	鵙高音	秋	16.9.27.
868	百丈の岩場に紫紺蔓竜胆	竜胆	秋	16.9.27.
869	空高くつづらの山路笹竜胆	竜胆	秋	16.9.27.
870	薬草園名を伏せて咲く鳥兜	鳥兜	秋	16.9.27.
871	赤色灯滲む夜霧の救急車	夜霧	秋	16.9.28.
872	夜霧湧きハリーの影の大写し	夜霧	秋	16.9.28.
873	霧の街後戻りせぬ観覧車	霧	秋	16.9.28.
874	秋刀魚焼け子らの声ある昭和かな	秋刀魚	秋	16.9.28.
875	コンビニの孤愁を包む夜霧かな	夜霧	秋	16.9.28.
876	コンビニの孤愁滲ます夜霧かな	夜霧	秋	16.9.28.
877	喜怒哀楽焼付けるごと稲光	稲光	秋	16.9.28.
878	避難地区サーフして行く稲光	稲光	秋	16.9.28.
879	鵙高音エメラルド婚すぎて早や	鵙高音	秋	16.9.28.
880	秋夕焼塒へ帰る朱鷺悠然	秋夕焼	秋	16.9.28.
881	秋夕焼塒へ帰る朱鷺悠々	秋夕焼	秋	16.9.28.
882	秋夕焼塒へ帰る朱鷺黄金	秋夕焼	秋	16.9.28.
883	含羞の昔乙女や初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
884	季の変り伝へて静か初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
885	オムライス食べる母と子初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
886	日の差して多摩の横山初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
887	ケーブルカー車窓掠める初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
888	富士浮かべ山並みほのと初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
889	真姿の池面にほのと初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
890	季寄せ手にお鷹の道や初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
891	お鷹の道抜ければ楼門初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
892	木道の九十九折る先初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
893	手を握り恋する二人初もみじ	初紅葉	秋	16.9.29.
894	里山に名の知らぬ鳥初もみじ	初紅葉	秋	16.9.29.
895	紅葉弁当開く公園初もみじ	初紅葉	秋	16.9.29.
896	木道で絵を描く人や初紅葉	初紅葉	秋	16.9.29.
897	道の端に色すがしきは野紺菊	野紺菊	秋	16.9.30.
898	休耕田人を呼び込む秋桜	秋桜	秋	16.9.30.
899	山並みの烟る安曇野秋あざみ	秋薊	秋	16.9.30.
900	山並みを烟らせ雨の秋あざみ	秋薊	秋	16.9.30.
901	草むらに濡れて鮮やか秋薊	秋薊	秋	16.9.30.
902	九十九折る遍路の道の秋あざみ	秋薊	秋	16.9.30.
903	怖ろしき名なれど清し鬼薊	鬼薊	秋	16.9.30.
904	秋霖に烟る野道や鬼薊	秋霖・鬼薊	秋	16.9.30.
905	藪漕ぎの先に鮮やか秋あざみ	秋薊	秋	16.9.30.
906	藪漕げば遥かな先に秋あざみ	秋薊	秋	16.9.30.
907	そよ風の教へてくれし吾亦紅	吾亦紅	秋	16.9.30.
908	影と見せ影にはあらじ吾亦紅	吾亦紅	秋	16.9.30.
909	ふと揺れて気づかす術の吾亦紅	吾亦紅	秋	16.9.30.
910	風来れば細き影見せ吾亦紅	吾亦紅	秋	16.9.30.
911	霧の夜やぽつんと一つ赤提灯	夜霧	秋	16.9.30.
912	後戻りできぬ夜霧の観覧車	夜霧	秋	16.9.30.
913	十月や残り二枚のカレンダー	十月	秋	16.10.1.
914	政治家の襟いっせいに赤い羽根	赤い羽根	秋	16.10.1.
915	猫の髭切りし日遠き秋思かな	秋思	秋	16.10.1.
916	長袖に替えて出かける長月来	長月	秋	16.10.1.
917	晩秋の暦が告げる冷気かな	晩秋	秋	16.10.1.
918	長袖を纏ひて街へそぞろ寒	そぞろ寒	秋	16.10.1.
919	カレンダー改む部屋のそぞろ寒	そぞろ寒	秋	16.10.1.
920	秋風やお江戸名残りの箪笥町	秋風	秋	16.10.1.
921	木犀や香水女の厚化粧	木犀	秋	16.10.1.
922	道訊けば木犀の香で教へられ	木犀	秋	16.10.1.
923	秋澄みて道灌濠の日の斑かな	秋澄む	秋	16.10.2.
924	道灌濠水面に映す初紅葉	初紅葉	秋	16.10.2.
925	初紅葉映して静か道灌濠	初紅葉	秋	16.10.2.
926	鎮もれる道灌濠や初紅葉	初紅葉	秋	16.10.2.
927	芋食って匂ふかと問ふ仁王像	芋	秋	16.10.2.
928	耳遠き翁も聴きし秋の声	秋の声	秋	16.10.2.
929	補聴器を外して聴けり秋の声	秋の声	秋	16.10.2.
930	補聴器を外せば聞ゆ秋の声	秋の声	秋	16.10.2.
931	初紅葉映す池面の日の斑かな	初紅葉	秋	16.10.2.
932	池の面に日の斑散らして初紅葉	初紅葉	秋	16.10.2.
933	池の面に日の斑と遊ぶ初紅葉	初紅葉	秋	16.10.2.
934	しげしげと見れば異形の鶏頭花	鶏頭花	秋	16.10.3.
935	古民家の庭に日を浴ぶ鶏頭花	鶏頭花	秋	16.10.3.
936	子規庵や十四五本の鶏頭花	鶏頭花	秋	16.10.3.
937	鶏頭の寄せ植え多彩日は真上	鶏頭	秋	16.10.3.
938	横臥して鶏頭眺む子規の庵	鶏頭	秋	16.10.3.
939	鶏頭を交へし供花や子規の墓	鶏頭	秋	16.10.3.
940	赤白黄なぞへを埋めし鶏頭花	鶏頭花	秋	16.10.3.
941	秋晴れや遠き昭和のアドバルン	秋晴れ	秋	16.10.3.
942	一茎の撫子咲けり石河原	撫子	秋	16.10.3.
943	朝顔や蔓たくましく門扉閉ず	朝顔	秋	16.10.3.
944	食へるぞと実を裂きて待つ通草かな	通草（あけび）	秋	16.10.3.
945	大生簀秋鯉爆ぜる芭蕉庵	秋	秋	16.10.3.
946	野葡萄の実のてんでんに色違へ	野葡萄	秋	16.10.4.
947	野葡萄の実のてんでんに色競ふ	野葡萄	秋	16.10.4.
948	野葡萄の勝手気ままに球の色	野葡萄	秋	16.10.4.
949	野葡萄の実の不揃いの色楽し	野葡萄 野葡萄	秋	16.10.4.
950	野葡萄や隣り合ふ実の色違ひ	野葡萄	秋	16.10.4.
951	山路来て見つけて嬉し山葡萄	山葡萄	秋	16.10.4.
952	山葡萄黒きを選び食みにけり	山葡萄	秋	16.10.4.
953	草蜉蝣（かげろう）のひそと貼り付く鉄扉かな	草蜉蝣	秋	16.10.4.
954	食む口を持たぬ蜉蝣日の暮れぬ	蜉蝣	秋	16.10.4.
955	蜉蝣の食む口持たず日暮れけり	蜉蝣	秋	16.10.4.
956	出直しの大輪白き酔芙蓉	酔芙蓉	秋	16.10.5.
957	横綱が通り抜けたり酔芙蓉	酔芙蓉	秋	16.10.5.
958	塾帰り子ら駆け抜ける酔芙蓉	酔芙蓉	秋	16.10.5.
959	儚きを忘れて朝の酔芙蓉	酔芙蓉	秋	16.10.5.
960	しゃれこうべ脇に据へたる酔芙蓉	酔芙蓉	秋	16.10.5.
961	酔芙蓉酒喰らいたる潤（ほと）び顔	酔芙蓉	秋	16.10.5.
962	どっしりと牡丹臭木の花紅	臭木の花	秋	16.10.5.
963	紫陽花と思はせ牡丹臭木なり	臭木の花	秋	16.10.5.
964	紫陽花と遠目の牡丹臭木かな	新豆腐	秋	16.10.5.
965	新豆腐旨さうに食ふ豆腐好き	新豆腐	秋	16.10.5.
966	水引の花ひょいひょいと撓りをり	水引の花	秋	16.10.5.
967	どの客も音立てて食む走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.10.6.
968	養老の滝音響く秋の晴れ	秋晴	秋	16.10.6.
969	鶏頭の色とりどりに赤白黄	鶏頭	秋	16.10.6.
970	遠目にも牡丹臭木や辻地蔵	臭木の花	秋	16.10.6.
971	濡れ縁で爪研ぐ猫や秋うらら	秋麗	秋	16.10.6.
972	濡れ縁で爪切る音や秋うらら	秋麗	秋	16.10.6.
973	あちこちで布団叩きや秋うらら	秋麗	秋	16.10.6.
974	ベランダで布団叩きや秋高し	秋高し	秋	16.10.6.
975	秋晴や花火が告げる運動会	秋晴	秋	16.10.6.
976	秋高し馬の背で行く霧が峰	秋高し	秋	16.10.6.
977	奥多摩の山粧ひて渓に深し	山粧ふ	秋	16.10.6.
978	赤々と達磨ストーブ山眠る	山眠る	冬	16.10.7.
979	ちらほらと舞ふもののあり山眠る	山眠る	冬	16.10.7.
980	月の輪もそろそろ夢路山眠る	山眠る	冬	16.10.7.
981	獣らの寝息確かめ山眠る	山眠る	冬	16.10.7.
982	獣らを抱き山々眠りけり	山眠る	冬	16.10.7.
983	客一人降りし気動車山眠る	山眠る	冬	16.10.7.
984	遍路鈴鳴らしてみたり蛇笏の忌	蛇笏忌	秋	16.10.7.
985	鈴の音の清し響きや秋遍路	秋遍路	秋	16.10.7.
986	昧爽の宿発つ二人秋遍路	秋遍路	秋	16.10.7.
987	草雲雀鳴く山路行く遍路鈴	草雲雀	秋	16.10.7.
988	草雲雀唱和するかに遍路鈴	草雲雀	秋	16.10.7.
989	夕映えの渚を辿る秋遍路	秋遍路	秋	16.10.7.
990	磴千段登る八十路や鳥渡る	鳥渡る	秋	16.10.8.
991	温め酒噛んで含める如く呑む	温め酒	秋	16.10.8.
992	足袋はだし白の眩しき秋祭	秋祭	秋	16.10.8.
993	秋まつり神輿戻れば茶碗酒	秋祭	秋	16.10.8.
994	穭田に山羊の遊びし峡の里	穭田	秋	16.10.8.
995	烏瓜一つ気づけばここあそこ	烏瓜	秋	16.10.8.
996	夕日浴び朱を際立たす烏瓜	烏瓜	秋	16.10.8.
997	枯れ蔓を引けばぞろりと烏瓜	烏瓜	秋	16.10.8.
998	通学路だれも捥がない烏瓜	烏瓜	秋	16.10.8.
999	枯れ蔓に憮然と下がる烏瓜	烏瓜	秋	16.10.8.
1000	嫌はれも好かれもせずに烏瓜	烏瓜	秋	16.10.8.

♪BGM：Erik Alfred Leslie Satie［Gymnopédies１］arranged by Pian♪

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