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鈴童の遊び

1	昨日のまま一昨日のまま烏瓜	烏瓜	秋	16.10.8.
2	自然薯の鞘払ふごと引き抜けり	自然薯（＝山芋）	秋	16.10.8.
3	細心と大胆で掘る山の芋	山芋	秋	16.10.8.
4	求道の尊師とも見ゆ自然薯掘り	自然薯	秋	16.10.8.
5	長きまま無傷で掘らる山の芋	山芋	秋	16.10.8.
6	垂直に伸びし山芋横たはる	山芋	秋	16.10.8.
7	息詰めしごとく掘りゆく山の芋	山芋	秋	16.10.8.
8	鞘払ふごとく抜きたり山の芋	山芋	秋	16.10.8.
9	労はりつ宥めつ掘りぬ山の芋	山芋	秋	16.10.8.
10	尺八寸無傷で抜かる山の芋	山芋	秋	16.10.8.
11	自然薯の掘り穴深し黒々と	自然薯	秋	16.10.8.
12	引き抜きし地の穴深き山の芋	山芋	秋	16.10.8.
13	錦鯉肌擦り合はせ初紅葉	初紅葉	秋	16.10.8.
14	十粒ほど放り込んだる零余子飯	零余子飯	秋	16.10.9.
15	五六粒載りし零余子の飯を食ふ	零余子飯	秋	16.10.9.
16	ほくほくの零余子肴に独り酒	零余子	秋	16.10.9.
17	零余子摘みつ地中に伸びしもの想ふ	零余子	秋	16.10.9.
18	痩せ畑の芋煮転がす峡の宿	芋	秋	16.10.9.
19	農小屋の軒を巡りて大豆干す	大豆干し	秋	16.10.9.
20	田の稲架は大豆干し場で生き残る	大豆干し	秋	16.10.9.
21	秋耕や夏の残滓を鋤き込めり	秋耕	秋	16.10.9.
22	秋耕の音軽やかに耕耘機	秋耕	秋	16.10.9.
23	新蕎麦を打つは古びし亭主かな	新蕎麦	秋	16.10.9.
24	碧い目も音立てて食む走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.10.9.
25	蕎麦の実が付出しで出る蕎麦前酒	蕎麦	秋	16.10.9.
26	原因は加齢と言はれしむ身かな	身に入む	秋	16.10.9.
27	上手下手見せて秋刀魚を食む家族	秋刀魚	秋	16.10.9.
28	ぐちゃぐちゃに食はれて悲し秋刀魚かな	秋刀魚	秋	16.10.9.
29	若狭鰈美しく食む京の女（ひと）	（若狭鰈）	秋	16.10.9.
30	お迎えのいつ来てもよし秋彼岸	秋彼岸	秋	16.10.9.
31	汐満つる干潟にきらと芦の絮	芦の絮	秋	16.10.9.
32	汐満つる谷津の干潟や芦の絮	芦の絮	秋	16.10.9.
33	芦の絮夕日に染まる谷津干潟	芦の絮	秋	16.10.9.
34	夕映えの湖面かすめて芦の絮	芦の絮	秋	16.10.9.
35	潮満てる干潟を舞ふや芦の絮	芦の絮	秋	16.10.9.
36	芦の絮舞ひし干潟に潮戻る	芦の絮	秋	16.10.9.
37	穭（ひつじ）田に山羊の母子や峡の里	穭田	秋	16.10.9.
38	甲州路なぞへに延びる葡萄棚	葡萄	秋	16.10.10.
39	ミス・ベーラ種も吐かずに葡萄食む	葡萄	秋	16.10.10.
40	種なしの葡萄むしゃむしゃミス・ベーラ	葡萄	秋	16.10.10.
41	夜霧の街ハリーの影が走りたり	霧	秋	16.10.10.
42	夜霧の街ハリーの影が走り過ぐ	霧	秋	16.10.10.
43	夜霧の街ハリーの影を走らせる	霧	秋	16.10.10.
44	大房を剪るたび重しマスカット	マスカット	秋	16.10.10.
45	葡萄狩り房を抱へて食むおさな	葡萄狩	秋	16.10.10.
46	金木犀匂ひ止めたる刻のあり	金木犀	秋	16.10.10.
47	木犀の香に酔ふたかに辻地蔵	木犀	秋	16.10.10.
48	もう一度吸ふてつくづく金木犀	金木犀	秋	16.10.10.
49	落花積む根方明るし金木犀	金木犀	秋	16.10.10.
50	小田原で降りて摘まむは小鯵寿司	鯵	夏	16.10.10.
51	おちょぼ口してふくれ面ふぐ提灯	河豚	冬	16.10.10.
52	おちょぼ口して客招く河豚提灯	河豚	冬	16.10.10.
53	おちょぼ口紅差してゐる河豚提灯	河豚	冬	16.10.10.
54	大皿に河豚の花びら七重八重	河豚	冬	16.10.10.
55	河豚刺や掬うがごとき箸使い	河豚	冬	16.10.11.
56	大絵皿河豚刺消えて行く速さ	河豚	冬	16.10.11.
57	鰭酒の青い火つけて行く仲居	鰭酒	冬	16.10.11.
58	鰭酒の蓋取り点火していく仲居	鰭酒	冬	16.10.11.
59	鰭酒の鰭買って速歩の家路かな	鰭酒	冬	16.10.11.
60	突拍子なき音発し瓢の笛	瓢の笛	秋	16.10.11.
61	吹いてみせ説明に入る瓢の笛	瓢の笛	秋	16.10.11.
62	冬瓜はいつもごろりと三枚目	冬瓜	秋	16.10.11.
63	冬瓜の精進料理坊の宿	冬瓜	秋	16.10.11.
64	冬瓜の料理いただく坊の宿	冬瓜	秋	16.10.11.
65	冬瓜の餡かけ旨し京の宿	冬瓜	秋	16.10.11.
66	冬瓜の吸ひ物も良し京料理	冬瓜	秋	16.10.11.
67	旅の師を偲ぶ杉風後の月	後の月	秋	16.10.11.
68	師を偲び杉風見上ぐ十三夜	十三夜	秋	16.10.11.
69	喧噪の街に懸りし十三夜	十三夜	秋	16.10.12.
70	さやさやと風の音する無月かな	無月	秋	16.10.12.
71	さやさやと風のの音立つ無月かな	無月	秋	16.10.12.
72	消へかかる街灯一つ無月かな	無月	秋	16.10.12.
73	街灯の煤けて昏し月の雨	雨月	秋	16.10.12.
74	一葉の街で見上ぐる十三夜	十三夜	秋	16.10.12.
75	秋風や深き眼窩の埴輪像	秋風	秋	16.10.12.
76	山駆けて彩管振るう龍田姫	龍田姫	秋	16.10.12.
77	彩管を手に忙しき龍田姫	龍田姫	秋	16.10.12.
78	庭下駄のひんやりとして露寒し	露寒	秋	16.10.12.
79	突堤に竿びっしりと根釣かな	根釣	秋	16.10.12.
80	秋晴れや歯冠施す老歯医者	秋晴れ	秋	16.10.13.
81	瀧の音間近に山の粧へり	山粧ふ	秋	16.10.13.
82	急流を魚影走らせ水の秋	水の秋	秋	16.10.13.
83	急流を走る魚影や水の秋	水の秋	秋	16.10.13.
84	山々を粧はせ祖谷の葛（かずら）橋	山粧ふ	秋	16.10.13.
85	水澄めど堰立ちはだかりて鮎澱む	水澄む	秋	16.10.13.
86	悠然と川渡り行く穴惑	穴惑	秋	16.10.13.
87	悠然と川渡り行く秋の蛇	秋の蛇	秋	16.10.13.
88	城跡の古き石垣穴惑	穴惑	秋	16.10.13.
89	城跡の古き石垣秋の蛇	秋の蛇	秋	16.10.13.
90	無花果のすまし顔なる千疋屋	無花果	秋	16.10.13.
91	無花果のすまし顔あり千疋屋	無花果	秋	16.10.13.
92	無花果のつんとすまして千疋屋	無花果	秋	16.10.13.
93	無花果をひょいと捥ぎ食ふ狭庭かな	無花果	秋	16.10.13.
94	炊き上がり艶やかに立つ今年米	今年米	秋	16.10.13.
95	炊き上がりみな立ちてをり今年米	今年米	秋	16.10.13.
96	ぞろぞろと観光バスの秋遍路	秋遍路	秋	16.10.14.
97	秋遍路大師の像と自撮りのＶ	秋遍路	秋	16.10.14.
98	目につくはスマホ片手の秋遍路	秋遍路	秋	16.10.14.
99	スマホ繰りつ秋の京都のグルメ旅	秋	秋	16.10.14.
100	スマホ手に歩き遍路や鰯雲」	鰯雲	秋	16.10.14.
101	紅葉一枝挿して始まる句会かな	紅葉	秋	16.10.14.
102	秋風やノーベル賞のボブ・ディラン	秋風	秋	16.10.14.
103	秋風の吹いてディランにノーベル賞	秋風	秋	16.10.14.
104	どの顔もイケメンばかり菊人形	菊人形	秋	16.10.14.
105	萎れ花手早く替へて菊人形	菊人形	秋	16.10.14.
106	菊膾食みし漢のおちょぼ口	菊膾	秋	16.10.14.
107	般若湯啜る僧侶や菊膾	菊膾	秋	16.10.14.
108	齧りたる金柑の皮甘きかな	金柑	秋	16.10.14.
109	夕映えの湖上を舞ひぬ芦の絮	芦の絮	秋	16.10.15.
110	夕映えの湖上に踊る芦の絮	芦の絮	秋	16.10.15.
111	夕映えの湖上に眩し芦の絮	芦の絮	秋	16.10.15.
112	城跡の石垣伝ふ秋の蛇	秋の蛇	秋	16.10.15.
113	城跡の石垣走る秋の蛇	秋の蛇	秋	16.10.15.
114	城跡の石垣よぎる秋の蛇	秋の蛇	秋	16.10.15.
115	石垣をよぎる影あり秋の蛇	秋の蛇	秋	16.10.15.
116	彩管を手に山駆ける龍田姫	龍田姫	秋	16.10.15.
117	植林の暗きを抜けてななかまど	ななかまど	秋	16.10.15.
118	鎖場を見守るごとくななかまど	ななかまど	秋	16.10.15.
119	岩鼻に燃ゆる朱色やななかまど	ななかまど	秋	16.10.15.
120	櫨の実の採る人もなく鈴鳴れり	櫨の実	秋	16.10.15.
121	石垣の隙間窺ふ穴まどひ	穴惑	秋	16.10.16.
122	土牢の崩れて釣瓶落しかな	釣瓶落し	秋	16.10.16.
123	木道のじぐざぐ行けば薄紅葉	薄紅葉	秋	16.10.16.
124	並びしはしめじの小籠道の駅	しめじ	秋	16.10.16.
125	山採りの初茸並ぶ道の駅	初茸	秋	16.10.16.
126	松茸は見るだけにしてしめじ買ふ	松茸・しめじ	秋	16.10.16.
127	つややかに小人の国の天狗茸	天狗茸	秋	16.10.16.
128	小人の国紛れ込みしか天狗茸	天狗茸	秋	16.10.16.
129	山路来て出逢えば蹴りし煙茸	茸	秋	16.10.16.
130	吉々と言祝ひで飛ぶばったかな	ばった	秋	16.10.16.
131	錆鮎の塩焼き食みつ聴くディラン	錆鮎	秋	16.10.16.
132	錆鮎や河口は遠く皿の上	錆鮎	秋	16.10.16.
133	蛤や雀変じし潮汁（季語：蛤＝春）	蛤	春	16.10.17.
134	池隔て照葉の奥に銀閣寺	照葉	秋	16.10.17.
135	浅緑の丈を揃へて新松子	新松子	秋	16.10.17.
136	撓りたる枝に艶やか実紫	実紫	秋	16.10.17.
137	実を一つ落とし無患子知らぬ顔	無患子	秋	16.10.17.
138	ひょんの笛代はる代はるに吹きたれど	瓢の笛	秋	16.10.17.
139	ひょんの笛唾だらけにし吹く子かな	瓢の笛	秋	16.10.17.
140	野葡萄や色の変化に遅速見せ	野葡萄	秋	16.10.17.
141	色とりどり独り華やぐ花白粉	花白粉	秋	16.10.17.
142	花筒に鬼灯挿せる辻地蔵	鬼灯	秋	16.10.17.
143	丈高き紫苑にふっと背比べ	紫苑	秋	16.10.17.
144	残菊のただ従容と焚かれけり	残菊	秋	16.10.17.
145	腹割って潔白示す種茄子	種茄子	秋	16.10.17.
146	間引菜の抜けばたちまちへたりけり	間引菜	秋	16.10.18.
147	抜き違へごめんごめんと菜の間引き	間引菜	秋	16.10.18.
148	抜き違へ菜に詫びながら間引きゆく	間引菜	秋	16.10.18.
149	抜けばすぐ間引菜くたる畑の畝	間引菜	秋	16.10.18.
150	間引菜の死屍累々と畝の溝	間引菜	秋	16.10.18.
151	乾びても色艶やかに鷹の爪	鷹の爪	秋	16.10.18.
152	一括りされて西日の鷹爪	鷹の爪	秋	16.10.18.
153	草の絮夕焼け空へ旅立てり	草の絮	秋	16.10.18.
154	夕風に行方託して草の絮	草の絮	秋	16.10.18.
155	数珠玉や子らの遊びも変はりたり	数珠玉	秋	16.10.18.
156	紅の穂を佇立させをり葛の花	葛の花	秋	16.10.18.
157	鮭浮かぶ粕汁温し北の宿	粕汁	冬	16.10.18.
158	貧乏を嘲笑ふかに藪枯らし	藪枯らし	秋	16.10.18.
159	蔓引けばずるりずるりと藪がらし	藪枯らし	秋	16.10.18.
160	鳥兜薬草園に無標識	鳥兜	秋	16.10.18.
161	お地蔵の花筒飾る鳥兜	鳥兜	秋	16.10.18.
162	遊ぶ子ら見かけぬままに赤まんま	赤まんま	秋	16.10.18.
163	食へるとは奇想天外たまご茸	茸	秋	16.10.18.
164	イースター玉子と紛ふたまご茸	茸	秋	16.10.18.
165	秋風やどれも首なき六地蔵	秋風	秋	16.10.18.
166	夜霧濃しコンビニ包む孤愁かな	夜霧	秋	16.10.18.
167	がんがんの炭火で焼きぬ初秋刀魚	初秋刀魚	秋	16.10.19.
168	がんがんの炭火に烟る焼秋刀魚	秋刀魚	秋	16.10.19.
169	大皿の黒焦げを食ふ初秋刀魚	初秋刀魚	秋	16.10.19.
170	ぼうぼうと烟る秋刀魚にかぶりつく	秋刀魚	秋	16.10.19.
171	黒焦げで食はれ秋刀魚の大往生	秋刀魚	秋	16.10.19.
172	昼花火老いも若きも焼秋刀魚	秋刀魚	秋	16.10.19.
173	皿の上まだじゅうじゅうと焼秋刀魚	秋刀魚	秋	16.10.19.
174	焼秋刀魚かぶりつく子の鼻下に髭	秋刀魚	秋	16.10.19.
175	焼秋刀魚けむり渦巻くバーベキュー	秋刀魚	秋	16.10.19.
176	熱々を豪快に食ぶ焼さんま	秋刀魚	秋	16.10.19.
177	秋刀魚焼く若い衆の顔煤けをり	秋刀魚	秋	16.10.19.
178	箸捨てて子ら手掴みで焼さんま	秋刀魚	秋	16.10.19.
179	はふはふと口に風入れ焼秋刀魚	秋刀魚	秋	16.10.19.
180	大根おろし載せて渡さる焼秋刀魚	秋刀魚	秋	16.10.19.
181	出世して食はれて果てる鱸かな	鱸	秋	16.10.19.
182	吾肩に止まれば嬉し石たたき	石叩き（＝鶺鴒）	秋	16.10.19.
183	石橋を叩きつわたる黄鶺鴒	鶺鴒	秋	16.10.19.
184	どうせならドラム叩けや黄鶺鴒	鶺鴒	秋	16.10.19.
185	夕暮れて一樹膨らむ椋鳥の塒	椋鳥	秋	16.10.19.
186	螻蛄のこと知らぬ俳人蚯蚓鳴く	螻蛄・蚯蚓鳴く	秋	16.10.20.
187	のっとゐる枯蟷螂の怒り鎌	蟷螂	秋	16.10.20.
188	木犀の己が香に飽く落花かな	木犀	秋	16.10.20.
189	金玉笛べーべーとなり天高し	天高し	秋	16.10.20.
190	俳句らしいだけの句多し十月尽	十月尽	秋	16.10.20.
191	包丁の剥き後残る吊るし柿	吊るし柿	秋	16.10.20.
192	夕日浴びけふが初日の吊るし柿	吊るし柿	秋	16.10.20.
193	けふはまだ竿撓らせる吊るし柿	吊るし柿	秋	16.10.20.
194	柿色のまだ生々し吊るし柿	吊るし柿	秋	16.10.20.
195	助っ人の日と風頼り柿すだれ	柿	秋	16.10.20.
196	渋柿や音軽やかに皮むき機	渋柿	秋	16.10.20.
197	種なしの葡萄皮ごと食んで立つ	葡萄	秋	16.10.20.
198	毬栗を軽く踏んでは栗拾ひ	栗	秋	16.10.21.
199	散歩道毬栗どれも虚栗	栗	秋	16.10.21.
200	ぱっくりと情念滾る石榴かな	石榴	秋	16.10.21.
201	口裂ひて焔たぎらす石榴かな	石榴	秋	16.10.21.
202	生々し情念かとも石榴の実	実石榴	秋	16.10.21.
203	腹裂きて思いひぶち撒く石榴かな	石榴	秋	16.10.21.
204	情念の赤き裂け目や石榴爆ず	石榴	秋	16.10.21.
205	裂けし石榴がぶり食みし女かな	石榴	秋	16.10.21.
206	鬼子母神もかくやと石榴食む女	石榴	秋	16.10.21.
207	命生む秘所赤々と石榴爆ぜ	石榴	秋	16.10.21.
208	命生む秘所赤裸々に石榴爆ぜ	石榴	秋	16.10.21.
209	命生む秘所美しく石榴爆ぜ	石榴	秋	16.10.21.
210	情念はかくのごとしと石榴裂け	石榴	秋	16.10.21.
211	命生む女陰にしかじ石榴の実	石榴	秋	16.10.21.
212	激しくも女陰露はに石榴爆ぜ	石榴	秋	16.10.21.
213	榠樝の実だれも拾はぬ農の庭	榠樝（かりん）	秋	16.10.21.
214	榠樝の実七日過ぎても拾はれず	榠樝	秋	16.10.21.
215	地に落ちて朽ちる日を待つ榠樝かな	榠樝	秋	16.10.21.
216	千切りせば鮮血噴くや照紅葉	照紅葉	秋	16.10.21.
217	ゆうべ納豆今夜はとろろつるつると	とろろ汁	秋	16.10.22.
218	吊し柿幼の頬の柔らかさ	吊し柿	秋	16.10.22.
219	外人も音立てて食ふ走り蕎麦	走り蕎麦	秋	16.10.22.
220	駄菓子屋に西日射しこむ秋簾	秋簾	秋	16.10.22.
221	青竹の色あざやかに鹿威し	鹿威し	秋	16.10.22.
222	柿食へば一句詠みたき子規気分	柿	秋	16.10.22.
223	胡坐かき柿を喰らはば子規気分	柿	秋	16.10.22.
224	胡坐かき柿を喰らはば子規モード	柿	秋	16.10.22.
225	秋の空なにか気忙し八十路かな	秋空	秋	16.10.22.
226	神がくれし余命も深き秋に入る	秋	秋	16.10.22.
227	遠見には白銀覗く紅葉山	紅葉	秋	16.10.22.
228	島々を黒く浮かべて瀬戸の秋	秋	秋	16.10.23.
229	秋刀魚焼く煙りの中の学園祭	秋刀魚	秋	16.10.23.
230	焼き秋刀魚頬張る子らの野性かな	秋刀魚	秋	16.10.23.
231	山路来て真紅つるりとたまご茸	茸	秋	16.10.23.
232	ハロウィンのかぼちゃランタン十月尽	十月尽	秋	16.10.23.
233	鹿垣の縦横走るなぞへ畑	鹿垣	秋	16.10.23.
234	縦横に鹿垣走るなぞへ畑	鹿垣	秋	16.10.23.
235	鹿垣を餌場と見なし山の猿	鹿垣	秋	16.10.23.
236	石榴裂け女の怒り吐き出せり	石榴	秋	16.10.23.
237	ひたすらに走り過ぎゆく秋の川	秋の川	秋	16.10.23.
238	なんとなく石切したる秋の川	秋の川	秋	16.10.23.
239	なんとなく石切したり秋の川	秋の川	秋	16.10.23.
240	石切が七つまで飛ぶ秋の川	秋の川	秋	16.10.23.
241	秋の川石切沈み泣き出す子	秋の川	秋	16.10.23.
242	黙然と生きて幸せてふ海鼠（季語：海鼠＝冬）	海鼠	秋	16.10.23.
243	木曽路行く寝覚の床の十三夜	十三夜	秋	16.10.23.
244	一葉の駒下駄の音十三夜	十三夜	秋	16.10.23.
245	山門に琵琶の音みやび後の月	後の月	秋	16.10.23.
246	山門に琵琶の音聞こゆ十三夜	十三夜	秋	16.10.23.
247	ざりがにの寝返り打てり十三夜	十三夜	秋	16.10.23.
248	末枯れの雲を映せしにはたずみ	末枯れ	秋	16.10.23.
249	末枯れの雲を映してにはたずみ	末枯れ	秋	16.10.23.
250	旅宿の翁照らせり後の月	後の月	秋	16.10.23.
251	鳥渡る岬に小さきなぞへ墓地	鳥渡る	秋	16.10.23.
252	杉風の鯉の生簀や破芭蕉	破芭蕉	秋	16.10.23.
253	鯉跳ねる生簀にさやと破芭蕉	破芭蕉	秋	16.10.23.
254	秋燕二番子もみな旅立てり	秋燕	秋	16.10.23.
255	二番子もみな旅立ちぬ秋燕	秋燕	秋	16.10.23.
256	日溜りの窪にちょこんと濃竜胆	竜胆	秋	16.10.23.
257	茎丈を詰めて逞し笹竜胆	竜胆	秋	16.10.23.
258	黙然と生きる家訓の海鼠かな	海鼠	冬	16.10.23.
259	海鼠には海鼠の悟り吾もまた	海鼠	冬	16.10.24.
260	生きてゐる海鼠怖ろし三杯酢	海鼠	冬	16.10.24.
261	声もなく切り刻まれし海鼠かな	海鼠	冬	16.10.24.
262	このわたを舐めつ手酌の独り酒	このわた	冬	16.10.24.
263	和室なき家に住みをり一葉忌	一葉忌（１１月２３日）	冬	16.10.24.
264	ちゃぶ台の部屋懐かしき一葉忌	一葉忌	冬	16.10.24.
265	スマホ繰りつ女が行けり一葉忌	一葉忌	冬	16.10.24.
266	登場の駆け付け警護憂国忌	憂国忌（三島忌25日）	冬	16.10.24.
267	海外へ駆け付け警護憂国忌	憂国忌	冬	16.10.24.
268	深大寺詣で蕎麦食ふ風鶴忌	風鶴忌（波郷忌21日）	冬	16.10.24.
269	心臓を持たず恋する海鼠かな	海鼠	冬	16.10.24.
270	満天星の紅葉燃え立つ峡の寺	満天星紅葉	秋	16.10.24.
271	あられなく大口開けしあけびかな	郁子	秋	16.10.25.
272	慎みてふっくら熟れし郁子五つ	郁子	秋	16.10.25.
273	縦横に惜し気なく裂け破れ芭蕉	破れ芭蕉	秋	16.10.25.
274	あけつびの露はなる実の熟れにけり	通草（あけび）	秋	16.10.25.
275	尾根を越え険路の憩ひ山葡萄	山葡萄	秋	16.10.25.
276	早や緑滲み出でたる刈田かな	刈田	秋	16.10.25.
277	美男てふよき名艶めく実葛	実葛	秋	16.10.25.
278	柔らかに風を呼びをり穭の田	穭田（ひつじだ）	秋	16.10.25.
279	柔らかに風誘ふや穭の田	穭田	秋	16.10.25.
280	穭田の風を誘ひて薄緑	穭田	秋	16.10.25.
281	黄金田と色競ひをり泡立草	泡立草	秋	16.10.25.
282	秋天を突き上げ丸亀天守閣	秋天	秋	16.10.25.
283	泡立草黄金色なす休耕田	泡立草	秋	16.10.25.
284	白銀の穂波たゆたふ芒原	芒	秋	16.10.25.
285	夕映えの渚を辿る秋遍路	秋遍路	秋	16.10.26.
286	車いす押して母娘の秋遍路	秋遍路	秋	16.10.26.
287	接待の柿旨そふに食ふ遍路	柿・遍路	秋・春	16.10.26.
288	中也なら何と詠ふや酔芙蓉	酔芙蓉	秋	16.10.26.
289	藤の実の見上ぐる人を待つ風情	藤の実	秋	16.10.26.
290	太刀魚のたたきを食みぬ瀬戸路かな	太刀魚	秋	16.10.26.
291	太刀魚のたたき肴に瀬戸路かな	太刀魚	秋	16.10.26.
292	接待の靑蜜柑食む母子遍路	青蜜柑・遍路	秋・春	16.10.26.
293	香を分けて青蜜柑食む車内かな	青蜜柑	秋	16.10.26.
294	湯けむりを上ぐる道後やおんこの実	おんこの実〈一位の実）	秋	16.10.26.
295	さいかちの莢黒々と入日かな	さいかちの莢	秋	16.10.27.
296	田一枚コスモス揺るる伊予路かな	コスモス	秋	16.10.27.
297	薄造り河豚の代りの穴子食む	河豚・穴子	冬・秋	16.10.27.
298	さいかちの実の黙然と風に揺る	さいかちの実	秋	16.10.27.
299	白銀の芒の穂波伊予路行く	芒	秋	16.10.27.
300	歯応への奥歯にしかとしめじ汁	しめじ	秋	16.10.27.
301	秋天と色を競ひて瀬戸の海	秋天	秋	16.10.27.
302	鯔跳んで瀬戸の潮路を教えけり	鯔	秋	16.10.27.
303	穭田のみどりの先は瀬戸の海	穭田	秋	16.10.27.
304	青々とたなびく穭鋤かれゆく	穭	秋	16.10.27.
305	休耕田稲田と紛ふ泡立草	泡立草	秋	16.10.27.
306	吾指に山雀止まる俳句茶屋（７１番札所弥谷寺で）	山雀（やまがら）	秋	16.10.28.
307	山雀やこの指止まり餌を食めり	山雀	秋	16.10.28.
308	山雀の手乗り楽しや札所寺	山雀	秋	16.10.28.
309	落鮎の火に炙られし身の不幸	落鮎	秋	16.10.28.
310	下り簗跳ねて虎口を抜けし鮎	下り簗・鮎	秋・夏	16.10.28.
311	潮引けば鴫の忙しき谷津干潟	鴫	秋	16.10.28.
312	潮引けば鴫小走りに谷津干潟	鴫	秋	16.10.28.
313	青雲の気迫漂ふ新松子	しんちじり	秋	16.10.28.
314	暖房を入れかねてゐるそぞろ寒	そぞろ寒	秋	16.10.28.
315	空海の健脚辿る秋遍路	秋遍路	秋	16.10.28.
316	なんとまあ健気が哀れ穭の穂	穭の穂	秋	16.10.29.
317	逞しと言ふより哀し穭の穂	穭の穂	秋	16.10.29.
318	すくすくと育てば哀し穭の穂	穭の穂	秋	16.10.29.
319	すくすくと伸びて哀しき穭の穂	穭の穂	秋	16.10.29.
320	何のため穂波揃へし穭かな	穭の穂	秋	16.10.29.
321	望まれず嫌はれもせず穭の穂	穭の穂	秋	16.10.29.
322	勝手だろ言はれるだけの穭かな	穭	秋	16.10.29.
323	風招きそよろそよろと穭の穂	穭の穂	秋	16.10.29.
324	爽やかに鋤込まれゆく穭かな	穭	秋	16.10.29.
325	山茱萸の赤き実透かす入日かな	山茱萸の実	秋	16.10.29.
326	鈴懸の実揺るるともなく揺る日暮れ	鈴懸の実	秋	16.10.30.
327	蔓掴み揺すれば零余子ころころと	零余子	秋	16.10.30.
328	讃岐路や田をいっぱいに稲架の列	稲架	秋	16.10.30.
329	晩稲田の黄金眩しき穭の穂	晩稲田・穭の穂	秋	16.10.30.
330	讃岐路や籾殻を焼く田の烟り	籾柄	秋	16.10.30.
331	鹿島には糞散らばりて一夜茸	茸	秋	16.10.30.
332	鹿島には鹿の豆糞一夜茸	茸	秋	16.10.30.
333	鹿の島糞転がりて一夜茸	茸	秋	16.10.30.
334	鹿の糞転がる島の一夜茸	茸	秋	16.10.30.
335	哀切の尻声となる鹿の恋	鹿	秋	16.10.30.
336	恋鹿の啼き音走りて十月尽	鹿・十月尽	秋	16.10.30.
337	恋鹿の啼き音走りて渓深し	鹿	秋	16.10.30.
338	神の留守乾びし鉢に水を遣る	神無月	冬	16.10.31.
339	旅疲れ三日目に消ゆ神無月	神無月	冬	16.10.31.
340	神無月温き日差しで始まりぬ	神無月	冬	16.10.31.
341	重ね着し暦をめくる十一月	十一月	冬	16.10.31.
342	札所では手乗り山雀十月尽	十月尽	冬	16.10.31.
343	ハロウイン一夜さわぎて十月尽	十月尽	冬	16.10.31.
344	行楽の気分醸しつ秋遍路	秋遍路	秋	16.10.31.
345	留守の神手持無沙汰の初日かな	留守の神	冬	16.103.1.
346	スマホ手に出雲へ向ふ神の旅	神の旅	冬	16.10.31.
347	マイカーに飛行機組も神の旅	神の旅	冬	16.10.31.
348	鳥取のなゐ話し合ふ神の旅 （鳥取県中部地震１６．１０．２１．）	神の旅	冬	16.10.31.
349	神鹿や糞ぱらぱらと神の留守	神の留守	冬	16.10.31.
350	小春日やつま弾く老妓の名は小春	小春日	冬	16.10.31.
351	小春日や瀬戸大橋を渡り切る	小春日	冬	16.10.31.
352	瀬戸の海魚爆ぜゐる小春凪	小春凪	冬	16.10.31.
353	黄落や五百四十の磴続く （７１番札所弥谷寺）	黄落	冬	16.10.31.
354	ごみ出しや交わすあいさつ冬めけり	冬めく	冬	16.11.1.
355	雨音も発句のリズム芭蕉の忌	芭蕉忌	冬	16.11.1.
356	空ぐんと降りて小暗き初時雨	初時雨	冬	16.11.1.
357	大根煮る温き匂ひの厨かな	大根煮る	冬	16.11.1.
358	厨から匂ひの届くぶり大根	鰤大根	冬	16.11.1.
359	切干の匂ひ懐かし母の味	切干	冬	16.11.1.
360	切干の日々縮みゆく荒莚	切干	冬	16.11.1.
361	切干に顔写真貼り道の駅	切干	冬	16.11.1.
362	高舞へる大鷹追ひしレンズ百	鷹	冬	16.11.1.
363	虎落笛聴きに北への旅に出る	虎落笛	冬	16.11.1.
364	虎落笛聴きに北へと旅立ちぬ	虎落笛	冬	16.11.1.
365	生きものを懐深く山眠る	山眠る	冬	16.11.1.
366	黄落や五百四十の磴登る（７１番札所弥谷寺）	黄落	冬	16.11.1.
367	水道に突き出す岬返り花	返り花	冬	16.11.2.
368	烟立つ田の畦道に帰り花	帰り花	冬	16.11.2.
369	避難指示解けぬ地区なり狂ひ花	返り花	冬	16.11.2.
370	遠富士の白銀まぶし返り花	返り花	冬	16.11.2.
371	崩れたる城址の土塁帰り花	帰り花	冬	16.11.2.
372	群れ咲きて人が足止む狂ひ花	狂ひ花	冬	16.11.2.
373	群れ咲きて人驚かす狂ひ花	狂ひ花	冬	16.11.2.
374	蒲公英の狂ひ咲く土手足止まる	狂ひ花	冬	16.11.2.
375	蒲公英の狂い咲きをり磴の窪	狂ひ咲き	冬	16.11.2.
376	躑躅垣ぽつんぽつんと返り花	返り花	冬	16.11.2.
477	躑躅垣咲いて淋しき返り花	返り花	冬	16.11.2.
378	フランケンシュタイン目覚めて掴む狂ひ花	狂ひ花	冬	16.11.2.
379	ドラキュラの目覚めて摘むや狂ひ花	狂ひ花	冬	16.11.2.
380	知らぬ間に上衣は腕に室の花	室の花	冬	16.11.2.
381	外界を一重隔つる室の花	室の花	冬	16.11.2.
382	色と香に噎せつ愛でゆく室の花	室の花	冬	16.11.2.
383	色と香に噎せつ歩けり室の花	室の花	冬	16.11.2.
384	部屋にゐて何かうろうろそぞろ寒	そぞろ寒	秋	16.11.2.
385	讃岐路や溜池澄て秋惜しむ	秋惜しむ	秋	16.11.3.
386	溜池の澄し讃岐路秋惜しむ	秋惜しむ	秋	16.11.3.
387	讃岐には溜池多し秋惜しむ	秋惜しむ	秋	16.11.3.
388	空海の誕生札所秋惜しむ	秋惜しむ	秋	16.11.3.
389	空海の生まれし寺に秋惜しむ	秋惜しむ	秋	16.11.3.
390	夕映えの瀬戸の島影秋惜しむ	秋惜しむ	秋	16.11.3.
391	晴天の習ひ違はず文化の日	秋惜しむ	秋	16.11.3.
392	ごみ出して昼から句会文化の日	文化の日	秋	16.11.3.
393	行く秋や渡船で渡る瀬戸の海	行秋	秋	16.11.3.
394	行く秋や子規の仰ぎし天守閣	行秋	秋	16.11.3.
395	ごみ出して鉢に水遣る文化の日	文化の日	秋	16.11.3.
396	聞き返す声の大きく文化の日	文化の日	秋	16.11.3.
398	かっと射す日の晴れやかに文化の日	文化の日	秋	16.11.3.
399	ジンクスを守り快晴文化の日	文化の日	秋	16.11.3.
400	ハロウィンのかぼちゃランタン揺らめけり	ハロウイン	秋	16.11.4.
401	ハロウィンのかぼちゃランタン灯りけり	ハロウイン	秋	16.11.4.
402	恋鹿の啼き音走らせ渓暮るる（１６．１１．４．）	鹿	秋	16.11.4.
403	恋鹿の啼き音鋭く渓を切る（１６．１１．４．）	鹿	秋	16.11.4.
404	恋鹿の啼き音鋭き日暮れかな（１６．１１．４．）	鹿	秋	16.11.4.
405	恋鹿の啼き音走らせ渓の黙（１６．１１．４．）	鹿	秋	16.11.4.
406	恋鹿の啼き音切裂く渓の黙（１６．１１．４．）	鹿	秋	16.11.4.
407	嫌ひなら嫌ひでよしと石蕗の花（１６．１１．４．）	石蕗の花	冬	16.11.4.
408	切岸の日の差すところ石蕗の花（１６．１１．４．）	石蕗の花	冬	16.11.4.
409	沖を往く船を遠見に石蕗の花（１６．１１．４．）	石蕗の花	冬	16.11.4.
410	崩落の跡生々し石蕗の花（１６．１１．４．）	石蕗の花	冬	16.11.4.
411	崩落の岩ごろごろと石蕗の花（１６．１１．４．）	石蕗の花	冬	16.11.4.
412	恬淡と男勝りの石蕗咲けり（１６．１１．４．）	石蕗の花	冬	16.11.4.
413	似過ぎゆえ鷹女の嫌ふ石蕗の花（１６．１１．４．）	石蕗の花	冬	16.11.4.
414	ハロウィンのかぼちゃランタン相似形	ハロウィン	秋	16.11.4.
415	石蕗咲けり五百四十の磴の寺 （16.10.28.四国弥谷寺で）	石蕗の花	冬	16.11.4.
416	大根煮るしみじみ温き匂ひかな	大根	冬	16.11.4.
417	青真珠葉陰に潜め龍の玉	龍の玉	冬	16.11.4.
418	青真珠葉陰にちらと龍の玉	龍の玉	冬	16.11.4.
419	天見上げ昇る日はかる竜の玉	龍の玉	冬	16.11.4.
420	茶室開け池見下ろせば石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.4.
421	毀誉褒貶ありてきりりと石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.4.
422	六地蔵どれも首なし石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.4.
423	自然石連ねし磴や石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.4.
424	艶やかな葉抜きん出て石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.4.
425	池渡る飛び石の先石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.4.
426	気が付けば庭の要に石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.4.
427	清澄の庭を巡れば石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.4.
428	日溜りにすらりと黄花石蕗の黙	石蕗の花	冬	16.11.4.
429	ハロウィンのかぼちゃランタンどれも似て	ハロウィン	秋	16.11.4.
430	欠礼の書状来初めり藪柑子	藪柑子	冬	16.11.4.
431	地ビールで村再生の麦を蒔く	麦を蒔く	冬	16.11.5.
432	厨から匂ひ届けりぶり大根	鰤大根	冬	16.11.5.
433	飴色に焚けて湯気立つ鰤大根	鰤大根	冬	16.11.5.
434	母の味妻が引き継ぐぶり大根	鰤大根	冬	16.11.5.
435	カレーライスなぜかお菜は鰤大根	鰤大根	冬	16.11.5.
436	泥つきの大根が売りの直販所	大根	冬	16.11.5.
437	一葉ごと空を広げる朴落葉	朴落葉	冬	16.11.5.
438	日溜りに蒲公英けろと帰り花	帰り花	冬	16.11.5.
439	石畳濡れて鮮やか散紅葉	散り紅葉	冬	16.11.5.
440	懐石に一葉添へたる柿落葉	柿落葉	冬	16.11.5.
441	山宿の刺身こんにゃく紅葉添へ	紅葉	秋	16.11.5.
442	ポケモンＧＯ片手で繰りつ神の旅	神の旅	冬	16.11.5.
443	留守の指示スマホ使いつ神の旅	神の旅	冬	16.11.5.
444	留守の指示スマホで済ます神の旅	神の旅	冬	16.11.5.
445	生きものを懐に入れ山眠る	神の旅	冬	16.11.5.
446	ポケモンＧＯスマホで追ひつ神の旅	神の旅	冬	16.11.5.
447	小人たち踊り出そうな玉子茸	茸	秋	16.11.6.
448	さあ蹴れと丸く膨らむ煙茸	茸	秋	16.11.6.
449	煙茸蹴ればたちまち煙りけり	茸	秋	16.11.6.
450	食へるとは知らず蹴りたる埃茸	茸	秋	16.11.6.
451	廃屋の軒を伝ひし烏瓜	烏瓜	秋	16.11.6.
452	ストーブの点火テストや今朝の冬	ストーブ・今朝の冬	冬	16.11.6.
453	日向でも風の冷たき冬に入る	冬に入る	冬	16.11.6.
454	立ち襟のフリース温し今朝の冬	今朝の冬	冬	16.11.6.
455	子供らは寒風まさつ冬立つ日	立冬	冬	16.11.6.
456	句会での当季雑詠冬に入る	冬に入る	冬	16.11.6.
457	ことことと雨戸の音も冬めきぬ	冬めく	冬	16.11.6.
458	僧正が股引を穿く今朝の冬	今朝の冬	冬	16.11.6.
459	体操で始まる朝礼冬立ちぬ	立冬	冬	16.11.6.
460	登校の子ら軽々と冬に入る	冬に入る	冬	16.11.6.
461	風呂吹や手間きっちりと膳の上	風呂吹	冬	16.11.7.
462	合掌し風呂吹きを食む碧眼僧	風呂吹	冬	16.11.7.
463	風呂吹きを正座して食む碧眼僧	風呂吹	冬	16.11.7.
464	箸先に海鼠腸啜りつ独り酒	海鼠腸	冬	16.11.7.
465	沢庵をばりばり噛みし八十路かな	沢庵	冬	16.11.7.
466	沢庵を食める幸せ入歯なし	沢庵	冬	16.11.7.
467	冬立つ日空に雲なき小春かな	立冬・小春	冬	16.11.7.
468	きびきびと荒縄使ひ冬構	冬構	冬	16.11.7.
469	荒縄の束おちこちに冬囲	冬囲	冬	16.11.7.
470	きゅつきゅつと荒縄しごき冬囲	冬囲	冬	16.11.7.
471	殿が谷戸庭園早やも敷松葉	敷松葉	冬	16.11.7.
472	近ごろは焚き火禁止の庭仕事	焚き火	冬	16.11.7.
473	青々と艶を残せし敷松葉	敷松葉	冬	16.11.7.
474	艶やかな緑重なる敷松葉	敷松葉	冬	16.11.7.
475	鮮やかな緑清しき敷松葉	敷松葉	冬	16.11.7.
476	大根焚く厨の温き匂ひかな	大根焚	冬	16.11.7.
477	はつふゆの林明るく空広ぐ	初冬	冬	16.11.8.
478	雉鳩の鳴き音の絶えし冬はじめ	冬初め	冬	16.11.8.
479	柊の花香ばしくこぼれをり	柊の花	冬	16.11.8.
480	大頭のふくろふ貌をひと回し	梟	冬	16.11.8.
481	八百万新幹線で神の旅	神の旅	冬	16.11.8.
482	やあやあと車内挨拶神の旅	神の旅	冬	16.11.8.
483	やあやあと声を掛け合ひ神の旅	神の旅	冬	16.11.8.
484	神の留守恵比寿忙し縁結び	神の留守	冬	16.11.8.
485	神鶏もあたふた走り神迎	神迎	冬	16.11.8.
486	行き交ふは八百万なり神集ひ	神集ひ	冬	16.11.8.
487	八百万久闊を叙す神集ひ	神集ひ	冬	16.11.8.
488	大くさめ顔をそむけるバスの客	くさめ	冬	16.11.8.
489	避難指示解けぬままなり狂ひ花	狂ひ花	冬	16.11.8.
490	大くさめ続いて一つまたひとつ	くさめ	冬	16.11.9.
491	湯ざめしてまた風呂に入る夜更けかな	湯ざめ	冬	16.11.9.
492	太極拳木枯しの中ゆっくりと	木枯し	冬	16.11.9.
493	登校の子ら駆け出して息白し	息白し	冬	16.11.9.
494	ごみ出しであいさつ交す白き息	息白し	冬	16.11.9.
495	ごみ出しで交わすあいさつ息白し	息白し	冬	16.11.9.
496	交すのは広東語らし牡蠣割女	牡蠣割女	冬	16.11.9.
497	声高に異国語話す牡蠣打女	牡蠣割女	冬	16.11.9.
498	泥鰌掘るまことに泥鰌泥の中	泥鰌掘り	冬	16.11.9.
499	冬耕の人影消えて日は髙し	冬耕	冬	16.11.9.
500	古民家で榾焚くガイド煤けをり	榾	冬	16.11.9.
501	榾爆ぜて客驚かす民家園	榾	冬	16.11.9.
502	冬晴や旗艦三笠の一世紀	冬晴	冬	16.11.9.
503	鴎舞ふ旗艦三笠の一世紀		冬	16.11.9.
504	キャンパスを訪ねし吾も返り花	返り花	冬	16.11.10.
505	キャンパスを歩めば吾も返り花	返り花	冬	16.11.10.
506	キャンパスの裏は刑務所冬構	冬構	冬	16.11.10.
507	キャンパスの奥に刑務所冬帽子	冬帽子	冬	16.11.10.
508	キャンパスに青春探す返り花	返り花	冬	16.11.10.
509	寒灯寄ってけと呼ぶ赤提灯	寒灯	冬	16.11.10.
510	寄ってけと赤提灯や寒灯	寒灯	冬	16.11.10.
511	宵闇の赤提灯や寒灯	寒灯	冬	16.11.10.
512	寒鴉かあとだけ啼き羽繕ひ	寒鴉	冬	16.11.10.
513	黄葉の銀杏並木や日矢数条	黄葉	冬	16.11.10.
514	刑務所の塀の高さや冬構	冬構	冬	16.11.10.
515	難渋の脱稿果たし初時雨	初時雨	冬	16.11.11.
516	冬ざれや句会終ればやはり酒	冬ざれ	冬	16.11.11.
517	小春日や神鶏駈ける谷保天神	小春日	冬	16.11.11.
518	小春日や御嶽渓谷綾錦	小春日	冬	16.11.11.
519	電柱の鴉と視線小六月	小六月	冬	16.11.11.
520	冬うらら犬を乗せゆくベビーカー	冬うらら	冬	16.11.11.
521	吊橋のじわりと揺れる小六月	小六月	冬	16.11.12.
522	吊橋のゆらりゆらりと冬うらら	冬うらら	冬	16.11.12.
523	吊橋のゆらりと揺れて冬うらら	冬うらら	冬	16.11.12.
524	冬うらら吊橋揺らす日の光り（御嶽渓谷吟行）	冬うらら	冬	16.11.12.
525	冬うらら鐘撞く人や寒山寺	冬うらら	冬	16.11.12.
526	寒山寺鐘の鳴るなり小六月	小六月	冬	16.11.12.
527	鐘撞けば吊橋揺るる小六月	小六月	冬	16.11.12.
528	奇岩抜けカヌーは走らす紅葉谷	紅葉	冬	16.11.12.
529	鐘の音や吊り橋揺るる小六月	小六月	冬	16.11.12.
530	小春日や瀬音聞ゆる渓の底	小春日	冬	16.11.12.
531	岩の間を抜けるカヤック小六月	小六月	冬	16.11.12.
532	水しぶき潜るカヤック小六月	小六月	冬	16.11.12.
533	嫌はれもして端然と石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.13.
534	柊のそこはかとなく匂ひけり	柊の花	冬	16.11.13.
535	柊の花かぐはしくこぼれけり	柊の花	冬	16.11.13.
526	こぼれ散る柊の花かぐはへり	柊の花	冬	16.11.13.
527	こぼるとき柊の花かぐはへり	柊の花	冬	16.11.13.
528	落石の崖に耐え咲く石蕗の花	石蕗の花	冬	16.11.13.
529	朴落葉一枚ごとに空広む	朴落葉	冬	16.11.13.
530	梟の暗視鋭く森の闇	梟	冬	16.11.13.
531	梟の暗視走るや森の闇	梟	冬	16.11.13.
532	表向き裏向きもあり朴落葉	朴落葉	冬	16.11.13.
533	梟の声に深まる森の闇	梟	冬	16.11.13.
534	刑務所の長き高塀冬構	冬構	冬	16.11.13.
535	刑務所の長き塀あり冬囲	冬囲	冬	16.11.13.
536	刑務所の長き高塀冬構	冬構	冬	16.11.13.
537	ちゃぶ台の部屋の懐かし一葉忌	一葉忌	冬	16.11.13.
538	避難指示いまだに解けず狂ひ花	狂ひ花	冬	16.11.14.
539	正座して風呂吹を食む碧眼僧	風呂吹	冬	16.11.14.
540	夕映えに乾びし影や鵙の贄	鵙の贄	冬	16.11.14.
541	夕映えに影の乾びし鵙の贄	鵙の贄	冬	16.11.14.
542	串刺しの乾びし影や鵙の贄	鵙の贄	冬	16.11.14.
543	海鼠腸を医者に内緒で酒のあて	海鼠腸	冬	16.11.14.
544	箸先で海鼠腸啜り酒ほろろ	海鼠腸	冬	16.11.14.
545	海鼠腸を啜ればつるり喉走る	海鼠腸	冬	16.11.14.
546	はつふゆの木の間広がる林地かな	初冬	冬	16.11.14.
547	紅葉谷渡る鐘の音寒山寺	紅葉	秋	16.11.14.
548	谷もみじ巌の上に鷺一羽	紅葉	秋	16.11.14.
549	紅葉谷なぞへをよぎる青梅線	紅葉	秋	16.11.14.
550	フリースを着込み勤行寒波来る	寒波	冬	16.11.15.
551	日差しまで刺さす朝や寒波来る	寒波	冬	16.11.15.
552	本堂は刺さす氷室寒波来る	寒波	冬	16.11.15.
553	雲水も股引穿くや寒波来ぬ	寒波	冬	16.11.15.
554	股引を穿ひて勤行寒波来る	寒波	冬	16.11.15.
555	黄落や太閤趣味の並木道	黄落	秋	16.11.16.
556	標識に城址とありて黄落期	黄落期	秋	16.11.16.
557	恍惚のダナエと化して黄落期	黄落期	秋	16.11.16.
558	立ち食ひのうどん啜るや黄落期	黄落期	秋	16.11.16.
559	黄落と化せしゼウスやダナエ抱く	黄落	秋	16.11.16.
560	己が身のをちこち劣化黄落期	黄落期	秋	16.11.16.
561	陵へ続く並木や黄落期	黄落期	秋	16.11.16.
562	黄落の並木誘ふ多摩御陵	黄落	秋	16.11.16.
563	白鷺の佇む御陵黄落期	黄落期	秋	16.11.16.
564	兎見て晩餐語るフランス人	兎	冬	16.11.16.
565	赤い目に黒目もをりぬ兎五羽	兎	冬	16.11.16.
566	針の穴駱駝抜けゆく小春かな	小春	冬	16.11.16.
567	何も見ずスマホ擦るや冬ざれり	冬ざれ	冬	16.11.16.
568	黄泉からのお呼びはいずれ冬うらら	冬うらら	冬	16.11.16.
569	駒下駄の音かたかたと一葉忌	一葉忌	冬	16.11.16.
570	紙幣には若き顔立ち一葉忌	一葉忌	冬	16.11.16.
571	畑仲間つぎつぎ逝けり一の酉	一の酉	冬	16.11.16.
572	八十路来ておつりの命掻く落葉	落葉掻く	冬	16.11.16.
573	余命など計る間惜しや年の暮れ	年の暮れ	冬	16.11.16.
574	余命をば計る間も惜し年の暮れ	年の暮れ	冬	16.11.16.
575	ほどほどの貧しさよしで小六月	小六月	冬	16.11.16.
576	ほどほどの貧しさがよし小六月	小六月	冬	16.11.16.
577	柊のこぼれし花も匂ひけり	柊の花	冬	16.11.17.
578	柊の香りかそけしこぼれ花	柊の花	冬	16.11.17.
579	黄落を引き立て深き青天井	黄落	秋	16.11.17.
580	コロッケを齧りつ歩む黄落期	黄落期	秋	16.11.17.
581	式挙げし白亜のチャペル黄落期	黄落期	秋	16.11.17.
582	並木道走れば滑る黄落期	黄落期	秋	16.11.17.
583	一幅のダナエとなりぬ黄落期	黄落期	秋	16.11.17.
584	拾得が箒を止めし黄落期	黄落期	秋	16.11.17.
585	拾得の呆れて見上ぐ黄落期	黄落期	秋	16.11.17.
586	拾得は呆れ顔なり黄落期	黄落期	秋	16.11.17.
587	野兎が脱兎の速さ証しけり	兎	冬	16.11.17.
588	なぞへ畑脱兎決め込む野の兎	兎	冬	16.11.17.
589	拾得の掃けば掃くほど黄落期	黄落期	秋	16.11.17.
590	きびきびと荒縄捌き冬構	冬構	冬	16.11.17.
591	黄葉の銀杏並木や日矢走る	黄葉	秋	16.11.17.
592	寒山寺紅葉かつ散る鐘一つ	紅葉かつ散る	秋	16.11.18.
593	人生の有情無情や色葉散る	色葉散る	秋	16.11.18.
594	心底の赤に徹せし照葉かな	照葉	秋	16.11.18.
595	もぎ取らば血潮噴き出す照葉かな	照葉	秋	16.11.18.
596	色葉散る無住の寺や寒山寺	色葉散る	秋	16.11.18.
597	黄葉の一樹目を惹く雑木山	黄葉	秋	16.11.18.
598	蒼天に一樹眩き黄葉映ゆ	黄葉	秋	16.11.18.
599	蒼天をからまつ黄葉ぼかしをり	黄葉	秋	16.11.18.
600	紅葉谷握り飯食ふ岩の上	紅葉	秋	16.11.18.
601	渓谷の瀬音変わらず薄紅葉	薄紅葉	秋	16.11.18.
602	ゴムボート踊る急流紅葉谷	紅葉	秋	16.11.18.
603	渓深し句帳に挟む散紅葉	散紅葉	冬	16.11.18.
604	ひょいと頸伸ばしたる花破芭蕉 （１６．１１．１０．東京農工大吟行）	破芭蕉	秋	16.11.10.
605	野胡桃の毬ふんはりと柔らかし	胡桃	秋	16.11.10.
606	キャンパスの農場嬉々と石たたき	石たたき	秋	16.11.10.
607	茨の実触れんとすれば陰に刺	茨の実	秋	16.11.10.
608	大き実をちらし舞ひくる朴落葉	朴落葉	冬	16.11.10.
609	あふちの実長柄連ねて子だくさん	あふちの実	秋	16.11.10.
610	山茶花や花をこぼして咲き継げり	山茶花	冬	16.11.10.
611	表向く裏向く朴の落葉かな	朴落葉	冬	16.11.19.
612	酒林揚げて蔵出す新走	新走	秋	16.11.19.
613	八十路来て迎へ待つ間の初時雨	初時雨	冬	16.11.19.
614	冬ざれや卒塔婆ことと呟けり	冬ざれ	冬	16.11.19.
615	眠る山起こすつもりか熊の鈴	眠る山	冬	16.11.19.
616	けものらを眠らせ山も眠りけり	山眠る	冬	16.11.19.
617	韋駄天で雲の過ぎ行く枯野かな	枯野	冬	16.11.19.
618	避難地区田畑変じし大枯野	大枯野	冬	16.11.19.
619	無人駅ただ茫々と大枯野	大枯野	冬	16.11.19.
620	ぼろ市や何も買はずに蕎麦を食ふ	ぼろ市	冬	16.11.19.
621	ぼろ市や何も買はずに蕎麦前酒	ぼろ市	冬	16.11.19.
622	百円の古本並ぶぼろの市	ぼろ市	冬	16.11.19.
623	はつ冬の木の間広がる雑木山	初冬	冬	16.11.19.
624	飼兎夢は脱兎の駈けくらべ	兎	冬	16.11.20.
625	なぞへ畑駆け抜けていく脱兎かな	兎	冬	16.11.20.
626	なぞへ畑影走らせる脱兎かな	兎	冬	16.11.20.
627	なぞへ畑黒影走る脱兎かな	兎	冬	16.11.20.
628	耳掴み兎運びし昭和の日	兎	冬	16.11.20.
629	耳掴み兎運びし少年期	兎	冬	16.11.20.
630	婚礼の白亜のチャペル黄落期	黄落期	秋	16.11.20.
631	一幅のダナエかと見ゆ黄落期	黄落期	秋	16.11.20.
632	瀬戸の海小魚爆ぜる小春凪	小春	冬	16.11.20.
633	野兎の脱兎となりしなぞへ畑	兎	冬	16.11.20.
634	黄落のなぞへをちこち羅漢像	黄落	秋	16.11.20.
635	駒下駄の音空耳か一葉忌	一葉忌	冬	16.11.20.
636	昭和さえ遠くになりて一葉忌	一葉忌	冬	16.11.20.
637	綿虫やそんな季節になりたるか	綿虫	冬	16.11.20.
638	綿虫や一つの意志のありしこと	綿虫	冬	16.11.21.
639	兎飼ふいきもの係糞そうじ	兎	冬	16.11.21.
640	うさぎ追ひし山川遠き昭和かな	兎	冬	16.11.21.
641	木の根っこ兎転げし昭和かな	兎	冬	16.11.21.
642	兎狩り途絶へて長き山の村	兎	冬	16.11.21.
643	小春日や神鶏駈ける天満宮	小春日	冬	16.11.21.
644	拾得や掃けど降り積む黄落期	黄落期	秋	16.11.21.
645	恍惚のダナエ目つむる黄落期	黄落期	秋	16.11.21.
646	一幅のダナエとも見ゆ黄落期	黄落期	秋	16.11.21.
647	黄落や太閤好み黄金（きん）尽くし	黄落	秋	16.11.21.
648	黄落のなぞへをちこち羅漢かな	黄落	秋	16.11.21.
649	黄落や五百羅漢の黄金（きん）尽くし	黄落	秋	16.11.21.
650	クリムトの描きしダナエ黄落期	黄落期	秋	16.11.21.
651	クリムトの描くダナエや黄落期	黄落期	秋	16.11.21.
652	クリムトのダナエの構図黄落期	黄落期	秋	16.11.21.
653	太閤に黄金の茶室黄落期	黄落期	秋	16.11.21.
654	待ちきれぬことのありせば冬菫	冬菫	冬	16.11.21.
655	待ちきれぬことのありしか冬菫	冬菫	冬	16.11.21.
656	日溜りの窪をさがせば寒菫	寒菫	冬	16.11.21.
657	日溜りに腰を下ろせば冬菫	冬菫	冬	16.11.21.
658	鉢の横ちょこんと咲けり冬菫	冬菫	冬	16.11.21.
659	へそ曲がり呼ばはりされて寒菫	寒菫	冬	16.11.21.
660	春咲けば苦労のなきを冬菫	冬菫	冬	16.11.21.
661	先駆けて人喜ばす寒菫	寒菫	冬	16.11.21.
662	握り飯転げし先の冬菫	冬菫	冬	16.11.21.
663	クリムトのダナエもかくや黄落す	黄落	秋	16.11.21.
664	恍惚のダナエに注ぐ黄落期	黄落期	秋	16.11.21.
665	活け花を庭に置かんか冬の蝶	冬の蝶	冬	16.11.21.
666	花筒の花でよければ冬の蝶	冬の蝶	冬	16.11.21.
667	凜とせし花ぶり見よと冬薔薇	冬薔薇	冬	16.11.21.
668	勝手咲く庭のをちこち花八つ手	花八つ手	冬	16.11.22.
669	昭和には便所の脇の花八つ手	花八つ手	冬	16.11.22.
670	便所花と呼ばれし昭和花八つ手	花八つ手	冬	16.11.22.
671	好き嫌い人にはありて花八つ手	花八つ手	冬	16.11.22.
672	はびこりて妻の嫌ひし花八つ手	花八つ手	冬	16.11.22.
673	造形に揺るがぬ自信花八つ手	花八つ手	冬	16.11.22.
674	侘助と呼ばれはにかむ花乙女	侘助	冬	16.11.22.
675	席題の侘助見上ぐ床柱	侘助	冬	16.11.22.
676	侘助の花が迎ふる躙り口	侘助	冬	16.11.22.
677	侘助や含羞見ゆる乙女花	侘助	冬	16.11.22.
678	躙り口侘助剪りし花鋏	侘助	冬	16.11.22.
679	侘助の開き切らずにはにかみぬ	侘助	冬	16.11.22.
680	瀬戸の海すべて日溜り小春凪	小春凪	冬	16.11.22.
681	拾得の掃き疲れたる黄落期	黄落期	冬	16.11.22.
682	クリムトのダナエ身ごもる黄落期	黄落期	冬	16.11.22.
683	恍惚のダナエ目を閉ず黄落期	黄落期	冬	16.11.22.
684	天満宮神鶏駈ける小六月	小六月	冬	16.11.22.
685	冬晴や木の間広がる雑木山	冬晴	冬	16.11.22.
686	瀬戸内はすべて日溜り小春凪	小春凪	冬	16.11.23.
687	茹で卵つるりと剥けて冬ぬくし	冬ぬくし	冬	16.11.23.
688	行乞の僧の鉄鉢冬ざるる	冬ざるる	冬	16.11.23.
689	冬ざれや宿無し猫の煤け顔	冬ざれ	冬	16.11.23.
690	冬ざれの多摩川ゆるく右カーブ	冬ざれ	冬	16.11.23.
691	冬ざれや三角波の刺々し	冬ざれ	冬	16.11.23.
692	冬ざれやダウン着てゐる散歩犬	冬ざれ	冬	16.11.23.
693	冬ざれの川瀬に佇立鷺一羽	冬ざれ	冬	16.11.23.
694	禁止札立ちし近道冬ざるる	冬ざるる	冬	16.11.23.
695	爪だけは直ぐに伸びくる小春かな	小春	冬	16.11.23.
696	山茶花の咲けば散らしてまた咲けり	山茶花	冬	16.11.23.
697	山茶花の咲けば散らしてまた咲きぬ	山茶花	冬	16.11.23.
698	口紅をつけぬ女や冬の暮	冬の暮	冬	16.11.23.
699	すっぴんでない男ゐる寒夜かな	寒夜	冬	16.11.23.
700	かさこそと踏む音響く朴落葉	朴落葉	冬	16.11.23.
701	初雪や転げる犬もゐない朝 （この日首都54年ぶりの１１月初雪）	初雪	冬	16.11.24.
702	初雪のたびに騒がし首都の朝	初雪	冬	16.11.24.
703	ひらひらと首都に初雪牡丹雪	初雪	冬	16.11.24.
704	初雪やバス停長き人の列	初雪	冬	16.11.24.
705	初雪や少し斜めに降りしきる	初雪	冬	16.11.24.
706	初雪や屋根は一律綿帽子	初雪	冬	16.11.24.
707	初雪や降り積む朝の救急車	初雪	冬	16.11.24.
708	初雪や登校の子ら声高に	初雪	冬	16.11.24.
709	初雪を顔肩腹に百羅漢	初雪	冬	16.11.24.
710	傘に積む初雪払ひ自動ドア	初雪	冬	16.11.24.
711	初雪やバス待つ間にもスマホかな	初雪	冬	16.11.24.
712	ゼウス恋ひダナエに注ぐ黄落期	黄落期	冬	16.11.25.
713	黄落や総中流の夢の果て	黄落	冬	16.11.25.
714	また一人逝きし知らせや黄落期	黄落期	冬	16.11.25.
715	中流とは思へぬ老後黄落す	黄落	冬	16.11.25.
716	中流の錯覚消へて黄落期	黄落期	冬	16.11.25.
717	中流も夢まぼろしや黄落す	黄落	冬	16.11.25.
718	黄落の葉を蹴散らして競歩かな	黄落	冬	16.11.25.
719	水垢離に紅葉かつ散る修験滝	紅葉かつ散る	冬	16.11.25.
720	黄落の埋めたるベンチ日に眩し	黄落	冬	16.11.25.
721	雲水が一列に行く黄落期	黄落期	冬	16.11.25.
722	托鉢の僧一列に黄落期	黄落期	冬	16.11.25.
733	竜泉にちょっと立ち寄り酉の市	酉の市	冬	16.11.26.
744	異国語の飛び交ふ喧噪酉の市	酉の市	冬	16.11.26.
755	二の酉に詣で神谷の電気ブラン	二の酉	冬	16.11.26.
756	熊手手に客の立ち寄る神谷バー	熊手	冬	16.11.26.
757	をちこちで手締めの響き酉の市	酉の市	冬	16.11.26.
758	縁起熊手売れて手締めの酉の市	酉の市	冬	16.11.26.
759	金持ちも持たぬも参る酉の市	酉の市	冬	16.11.26.
760	二の酉や熊手は買はず蕎麦屋酒	二の酉	冬	16.11.26.
761	熊手買ひ手締めにはしゃぐ異国客	熊手	冬	16.11.26.
762	路地裏も夜店の続く酉の市	酉の市	冬	16.11.26.
763	ミニ熊手グループ買ひの手締めかな	熊手	冬	16.11.26.
764	グループでミニ熊手買ひ手締めかな	熊手	冬	16.11.26.
765	熊手一つ売るたび響く手締めかな	熊手	冬	16.11.26.
766	半纏の娘売子や熊手市	熊手市	冬	16.11.26.
767	半纏の娘売子の熊手買ふ	熊手	冬	16.11.26.
768	半纏のいい女から買ふ熊手	熊手	冬	16.11.26.
769	半纏の女にふらと熊手買ふ	熊手	冬	16.11.26.
770	町工場事務所ふたぎの大熊手	大熊手	冬	16.11.26.
771	大熊手また一年の神頼み	大熊手	冬	16.11.26.
772	二の酉も立ち寄る先は神谷バー	二の酉	冬	16.11.26.
773	葱焼いて醤油垂らせば酒のあて	葱	冬	16.11.27.
774	焼き葱で独り酒酌む芭蕉庵	葱	冬	16.11.27.
775	葱焼いて酒は一合五勺かな	葱	冬	16.11.27.
776	晩酌のあては焼き葱ほつほつと	葱	冬	16.11.27.
777	焼き葱や五勺の酒に酔ふ良寛	葱	冬	16.11.27.
778	つややかな白き葱焼き酒を酌む	葱	冬	16.11.27.
779	俎に白き裸身の葱一本	葱	冬	16.11.27.
780	葱一本焼いて飯食ふ五合庵	葱	冬	16.11.27.
781	薄皮を剥げば艶冶な葱の肌	葱	冬	16.11.27.
782	白き肌横たふ葱に覚悟あり	葱	冬	16.11.27.
783	白き肌横たふ葱の覚悟かな	葱	冬	16.11.27.
784	白葱や若き女の肌に似て	葱	冬	16.11.27.
785	薯粥を妻と食みをり病まねども	薯粥	冬	16.11.27.
786	薯粥をふうふうと食む昼餉かな	薯粥	冬	16.11.27.
787	逝きし名を挙げて指折る年忘	年忘	冬	16.11.27.
788	一人欠け二人かけゆく年忘	年忘	冬	16.11.27.
789	酒飲みがウーロン茶飲む年忘	年忘	冬	16.11.27.
790	それぞれが持病開陳年忘	年忘	冬	16.11.27.
791	それぞれが持病持参の年忘	年忘	冬	16.11.27.
792	泥鰌掬ひ引っ下げて出る忘年会	忘年会	冬	16.11.28.
793	泥鰌掬ひ一つ覚えの忘年会	忘年会	冬	16.11.28.
794	一本締めこれが決まりの忘年会	忘年会	冬	16.11.28.
795	逝きし仲間指折数へ年忘れ	年忘	冬	16.11.28.
796	それぞれが劣化告げ合ふ忘年会	忘年会	冬	16.11.28.
797	枝打ちの鉈振る杣や峪深し	枝打ち	冬	16.11.28.
798	枝打ちの杣黙々と鉈振りぬ	枝打ち	冬	16.11.28.
799	枝打ちのなぞへの足下瀬音聞く	枝打ち	冬	16.11.28.
800	枝打ちのなぞへの底に瀬音聞く	枝打ち	冬	16.11.28.
801	遅昼や賄い飯の葱鮪汁	葱鮪汁	冬	16.11.28.
802	冷蔵庫悲鳴を上げる年用意	年用意	冬	16.11.28.
803	老夫婦手抜きの増へし年用意	年用意	冬	16.11.28.
804	黄落のなぞへをちこち百羅漢	黄落	冬	16.11.28.
805	枝打の手が入り杉の一直線	枝打	冬	16.11.28.
806	水垢離に紅葉舞ひ散る修験滝	紅葉散る	冬	16.11.28.
807	紅葉散るただひたすらに散りにけり	紅葉散る	冬	16.11.28.
808	さり気なく紅鮮やかに紅葉散る	紅葉散る	冬	16.11.28.
809	托鉢の僧一列に紅葉散る	紅葉散る	冬	16.11.29.
810	老いぬれば手抜きの目立つ年用意	年用意	冬	16.11.29.
811	噴射する水の響きや蓮根掘り	蓮根掘る	冬	16.11.29.
812	足を抜きまた足を抜き蓮根掘る	蓮根掘る	冬	16.11.29.
813	見物の方が腰引く蓮根掘り	蓮根掘る	冬	16.11.29.
814	泥んこになりて焼け糞蓮根掘り	蓮根掘る	冬	16.11.29.
815	自己犠牲ずしりと重き蓮根掘る	蓮根掘る	冬	16.11.29.
816	息の合ふ夫と妻の蓮根掘り	蓮根掘る	冬	16.11.29.
817	夕日浴びようやく終わる蓮根掘り	蓮根掘る	冬	16.11.29.
818	蓮根掘る脇を過ぎゆく単線車	蓮根掘る	冬	16.11.29.
819	ノズル閉じ終りの合図蓮根掘り	蓮根掘る	冬	16.11.29.
820	黄落を蹴散らして行く競歩かな	黄落	冬	16.11.29.
821	ノズル閉じ終了告げる蓮根掘り	蓮根掘り	冬	16.11.30.
822	咳一つ顔をそむけるバスの客	咳	冬	16.11.30.
823	くさめ三つ飛沫ばらまき降りる客	くさめ	冬	16.11.30.
824	登校の子らどの顔も息白し	息白し	冬	16.11.30.
825	ランドセル鳴らし走る子息白し	息白し	冬	16.11.30.
826	ランドセル背に駆ける子ら息白し	息白し	冬	16.11.30.
827	ジョッガーの顔に纏ひし白き息	息白し	冬	16.11.30.
828	ジョッガーのＳＬに似し白き息	息白し	冬	16.11.30.
829	ジョッガーの白き息吐き駆け抜けり	白息	冬	16.11.30.
830	無人駅列車待つ子ら息白し	息白し	冬	16.11.30.
831	朝刊を配るバイクや息白し	白息	冬	16.11.30.
832	散歩犬口から白き息吐きぬ	白息	冬	16.11.30.
833	仮設住宅朝のあいさつ白き息	白息	冬	16.11.30.
834	おはようの声息白き散歩道	白息	冬	16.11.30.
835	咳一つして声出しのオペラ歌手	咳	冬	16.11.30.
836	鐘一つ撞いて紅葉の寒山寺	紅葉	秋	16.11.30.
837	寒山寺鐘の響きや散紅葉	散紅葉	冬	16.11.30.
838	散歩犬べろ出し白き息吐きぬ	息白し	冬	16.12.1.
839	老農婦腰を伸ばしつ大根干す	大根干す	冬	16.12.1.
840	大根を洗へば眩し肌の艶	大根	冬	16.12.1.
841	湯たんぽの温きに夢は荒れ模様	湯たんぽ	冬	16.12.1.
842	爆ぜる榾身構えをればまた爆ぜぬ	榾	冬	16.12.1.
843	古民家の上がり框や榾明り	榾	冬	16.12.1.
844	榾を焚く古民家ガイド煤け顔	榾	冬	16.12.1.
845	真ん中は達磨ストーブ昼休み	ストーブ	冬	16.12.1.
846	客を待つ卓に寒灯占い師	寒灯	冬	16.12.1.
847	切干の蓆をちこち農の庭	切干	冬	16.12.1.
848	切干の香流れ来る農の庭	切干	冬	16.12.1.
849	作務衣着て沢庵漬ける修行僧	沢庵	冬	16.12.1.
850	新海苔を一枚炙り酒のあて	新海苔	冬	16.12.2.
851	飯の上新海苔ぱりと鳴りにけり	新海苔	冬	16.12.2.
852	新海苔の帯封ぷちと解き放す	新海苔	冬	16.12.2.
853	黒髪のごとく新海苔艶めけり	新海苔	冬	16.12.2.
854	新海苔で手巻き寿司食ふ家族会	新海苔	冬	16.12.2.
855	新海苔の弁当二段重ねかな	新海苔	冬	16.12.2.
856	新海苔の切り絵弁当まずシャッター	新海苔	冬	16.12.2.
857	風吹けばかすかな響き凍豆腐	凍豆腐	冬	16.12.2.
858	からからと骨の唄ふや凍豆腐	凍豆腐	冬	16.12.2.
859	柔らかに旨味吹き出る凍豆腐	凍豆腐	冬	16.12.2.
860	乾鮭や赤城颪の上州路	乾鮭	冬	16.12.2.
861	見せしめのごとく乾鮭揺らす風	乾鮭	冬	16.12.2.
862	大根を洗へば久米の仙人落つ	大根	冬	16.12.2.
863	艶やかな白き太腿大根引く	大根	冬	16.12.2.
864	散り敷ける紅葉友禅裾模様	散紅葉	冬	16.12.2.
865	綿菓子に舌伸ばす子や小六月	小六月	冬	16.12.3.
866	十二月八日のラジオ高揚す	十二月	冬	16.12.3.
867	ずっしりと重き冬至の南瓜かな	冬至南瓜	冬	16.12.3.
868	冬至まで厨を飾る南瓜かな	冬至南瓜	冬	16.12.3.
869	ハロウィンの次は冬至の南瓜かな	冬至南瓜	冬	16.12.3.
870	冬ざれや錦帯橋の上り下り	冬ざれ	冬	16.12.3.
871	寒月の磨きをかけし光か冴る	寒月	冬	16.12.3.
872	寒月の照らす路地行くハイヒール	寒月	冬	16.12.3.
873	たこ焼を下げて家路の月氷る	月氷る	冬	16.12.3.
874	冬凪やただ深々と月冴ゆる	冬凪	冬	16.12.3.
875	木枯やただ首竦め急ぎ足	木枯	冬	16.12.3.
875	凩や夜更けに鳴りしインターフォン	凩	冬	16.12.3.
876	大根を洗へば久米仙落ち来り	大根	冬	16.12.3.
877	貧すれど隙間風なきサッシ窓	隙間風	冬	16.12.4.
878	虎落笛北方領土いつ帰る	虎落笛	冬	16.12.4.
879	島民の帰島叶はず虎落笛	虎落笛	冬	16.12.4.
880	俊寛も坐して聴きしか虎落笛	虎落笛	冬	16.12.4.
881	人魂のなに啜り泣く虎落笛	虎落笛	冬	16.12.4.
882	虎落笛ただ漂々と渺々と	虎落笛	冬	16.12.4.
883	北からの悲鳴と聞こゆ虎落笛	虎落笛	冬	16.12.4.
884	北の果て灯す灯台虎落笛	虎落笛	冬	16.12.4.
885	海鳴りに浜が応える虎落笛	虎落笛	冬	16.12.4.
886	苫屋の灯消えし浜辺や虎落笛	虎落笛	冬	16.12.4.
887	をちこちで吹き競ふかに虎落笛	虎落笛	冬	16.12.4.
888	悲鳴とも楽とも聞ゆ虎落笛	虎落笛	冬	16.12.4.
889	カレンダー丸め直して年用意	年用意	冬	16.12.5.
890	筆太に賀正と書ひて年用意	年用意	冬	16.12.5.
891	急き立てる妻の声背に年用意	年用意	冬	16.12.5.
892	年用意せぬと宣言部屋籠もり	年用意	冬	16.12.5.
893	幼らが手伝ひたがる年用意	年用意	冬	16.12.5.
894	買物をスマホでチェック年用意	年用意	冬	16.12.5.
895	尻叩く妻に抗せず年用意	年用意	冬	16.12.5.
896	心中はぶつぶつ言ひつ年用意	年用意	冬	16.12.5.
897	妻豹変猛妻となる年用意	年用意	冬	16.12.5.
898	妻の声尖り始める年用意	年用意	冬	16.12.5.
899	妻の指示雨降る如く年用意	年用意	冬	16.12.5.
900	終日を妻に叱られ年用意	年用意	冬	16.12.5.
901	雨あられ妻の下知受け年用意	年用意	冬	16.12.5.
902	妻の指示終日続く年用意	年用意	冬	16.12.5.
903	牙を剥き轟く怒涛もがり笛	虎落笛	冬	16.12.5.
904	牙剥きし怒涛の浜や虎落笛	虎落笛	冬	16.12.5.
905	もがり笛ただひゅーひゅーとひゅーひゅーと	虎落笛	冬	16.12.5.
906	北を向き啜り哭くかに虎落笛	虎落笛	冬	16.12.5.
907	占い師客待つ卓の寒灯	寒灯	冬	16.12.5.
908	道陰に客待つ易の寒灯	寒灯	冬	16.12.5.
909	托鉢の僧の鉄鉢冬ざるる	冬ざれ	冬	16.12.5.
910	虎落笛聴きに北へと旅立ちぬ	虎落笛	冬	16.12.6.
911	列島の背を丸くする寒波かな	寒波	冬	16.12.6.
912	列島も一尺縮む寒波かな	寒波	冬	16.12.6.
913	終電車レール軋ます大寒波	寒波	冬	16.12.6.
914	コンビニを出れば寒波の夜道かな	寒波	冬	16.12.6.
915	正ちゃん帽耳まで被る寒波かな	寒波	冬	16.12.6.
916	目出し帽人驚かす寒波かな	寒波	冬	16.12.6.
917	鴛鴦の沓遅速合はせて池面ゆく	鴛鴦（おし）の沓	冬	16.12.6.
918	鴛鴦の沓遅速整へ池面ゆく	鴛鴦の沓	冬	16.12.6.
919	浮気など縁なき風情鴛鴦二つ	鴛鴦	冬	16.12.6.
920	手を繋ぎ視線の先に鴛鴦の沓	鴛鴦の沓	冬	16.12.6.
921	牡丹鍋突く身ほとり汗ばみぬ	牡丹鍋	冬	16.12.6.
922	大川端老舗でつつく牡丹鍋	牡丹鍋	冬	16.12.6.
923	杣小屋でつつく猪鍋男酒	猪鍋	冬	16.12.6.
924	ぼろ市やなにも買はずに蕎麦屋酒	ぼろ市	冬	16.12.6.
925	ぼろ市や寅さんに似た暦売り	ぼろ市	冬	16.12.6.
926	ぼろ市や年代物の鳩時計	ぼろ市	冬	16.12.6.
927	ぼろ市や真空管がばら売りで	ぼろ市	冬	16.12.6.
928	ぼろ市やどれも百円漫画本	ぼろ市	冬	16.12.6.
929	ぼろ市の人が列なす壺焼き屋	ぼろ市	冬	16.12.6.
930	ぼろ市や突如鳴り出す鳩時計	ぼろ市	冬	16.12.6.
931	ぼろ市や地産野菜に人だかり	ぼろ市	冬	16.12.7.
932	ぼろ市や小腹空かして焼き団子	ぼろ市	冬	16.12.7.
933	ぼろ市やアクセサリ売るイラン人	ぼろ市	冬	16.12.7.
934	ぼろ市を焼芋齧り歩きけり	ぼろ市	冬	16.12.7.
935	ぼろ市や中古ジーンズよく売れる	ぼろ市	冬	16.12.7.
936	ぼろ市やそぞろ歩けば異国語も	ぼろ市	冬	16.12.7.
937	ぼろ市や九里より旨い十三里	ぼろ市	冬	16.12.7.
938	ぼろ市や人が道空く車いす	ぼろ市	冬	16.12.7.
939	ぼろ市や二百の店が客を呼ぶ	ぼろ市	冬	16.12.7.
940	ぼろ市や掘出し物を二つほど	ぼろ市	冬	16.12.7.
941	枝打ちや峪底深き瀬音かな	枝打ち	冬	16.12.7.
942	八十路来てなほ酒旨し年忘	年忘	冬	16.12.7.
943	舌頭に酒を転がし年忘	年忘	冬	16.12.7.
944	傘寿なほ片手に余る年忘	年忘	冬	16.12.7.
945	傘寿なほ二日酔ひ知る年忘	年忘	冬	16.12.7.
946	反省は明日に委ね年忘	年忘	冬	16.12.7.
947	反省は明日に回し年忘	年忘	冬	16.12.7.
948	後悔を明日に延ばし年忘	年忘	冬	16.12.7.
949	清澄の池を塒に都鳥	都鳥	冬	16.12.7.
950	水上バス来れば腰上ぐ都鳥	都鳥	冬	16.12.7.
951	大川の金斑揺らして都鳥	都鳥	冬	16.12.7.
952	大川の日の斑に遊ぶ都鳥	都鳥	冬	16.12.7.
953	大川の日の斑に遊べ都鳥	都鳥	冬	16.12.7.
954	なんだかんだ気づけば早やも師走かな	師走	冬	16.12.7.
955	年の瀬を句会に遊ぶ翁かな	年の瀬	冬	16.12.8.
956	句に明けて句で締め括る年の果	年の果	冬	16.12.8.
957	反戦の文字の錆び付く年の暮	年の暮	冬	16.12.8.
958	年の瀬に背中を向けて井月伝	年の瀬	冬	16.12.8.
959	モノレール急こう配の蜜柑山	蜜柑山	冬	16.12.8.
960	モノレール軋みつ下る蜜柑山	蜜柑山	冬	16.12.8.
961	モノレール軋みつ上る蜜柑山	蜜柑山	冬	16.12.8.
962	蜜柑摘む足下眩しき凪の瀬戸	蜜柑	冬	16.12.8.
963	煤逃げの句会にいそと家を出る	煤逃げ	冬	16.12.8.
964	煤逃げがばれて小言の雨霰	煤逃げ	冬	16.12.8.
965	寒波来ぬ湯ざめしかけて二度の風呂	寒波	冬	16.12.8.
966	寒波来て鯉の動かぬ池の底	寒波	冬	16.12.8.
967	ぴしぴしと柱音立つ寒波の夜	寒波	冬	16.12.8.
968	列島に刺突き刺さる寒波かな	寒波	冬	16.12.8.
969	寒波の辻托鉢の僧立ち尽くす	寒波	冬	16.12.8.
970	杣小屋や猪鍋つつきつ茶碗酒	猪鍋	冬	16.12.8.
971	鴛鴦の沓遅れかけてはまた並ぶ	鴛鴦の沓（おしのくつ）	冬	16.12.8.
972	ももんじの老舗でつつく牡丹鍋	牡丹鍋	冬	16.12.8.
973	にぎやかに箸突合せ桜鍋	桜鍋	冬	16.12.9.
974	使はれて老ひたる果ての桜鍋	桜鍋	冬	16.12.9.
975	お運びの熊本訛り桜鍋	桜鍋	冬	16.12.9.
976	すき焼きにうどん投じて宴果てり	すき焼き	冬	16.12.9.
977	鮟鱇鍋骨かひ潜り身をさがす	鮟鱇鍋	冬	16.12.9.
978	鮟鱇鍋突きつまさかプロポーズ	鮟鱇鍋	冬	16.12.9.
979	鮟鱇鍋堅い話はよすことに	鮟鱇鍋	冬	16.12.9.
980	けんちん汁遠く懐かし母の味	けんちん汁	冬	16.12.9.
981	大鍋のけんちんの湯気禅の寺	けんちん汁	冬	16.12.9.
982	ちゃんこ鍋出世の順で奮ひ立つ	ちゃんこ鍋	冬	16.12.9.
983	ねぎま汁ひそと出て来る裏メニュー	ねぎま汁	冬	16.12.9.
984	坊ちゃんも一度は食みし桜鍋	桜鍋	冬	16.12.10.
985	鴛鴦の月差す池に影二つ	鴛鴦	冬	16.12.10.
986	月の池つがひの鴛鴦の影二つ	鴛鴦	冬	16.12.10.
987	遅れてはすぐに追いつく番鴛鴦	番鴛鴦	冬	16.12.10.
988	池底に影置き眠る番鴛鴦	番鴛鴦	冬	16.12.10.
989	月の池寄り添ひ眠る番鴛鴦	番鴛鴦	冬	16.12.10.
990	ももんじ屋隣りは静か牡丹鍋	牡丹鍋	冬	16.12.10.
991	割烹着白きお運び牡丹鍋	牡丹鍋	冬	16.12.10.
992	割烹着似合う仲居や牡丹鍋	牡丹鍋	冬	16.12.10.
993	煮え立ちて脂浮き立つ牡丹鍋	牡丹鍋	冬	16.12.10.
994	煮え立つを割り下注して牡丹鍋	牡丹鍋	冬	16.12.10.
995	鉄鍋の中踊り出す牡丹鍋	牡丹鍋	冬	16.12.10.
996	鉄鍋の中踊らせて猪を食ふ	猪鍋	冬	16.12.10.
997	猪鍋や隣りの部屋に客入りぬ	猪鍋	冬	16.12.10.
998	猪食ひにかんじき履いて杣の宿	猪鍋	冬	16.12.10.
999	コンビニのおでん下げ行く若夫婦	おでん	冬	16.12.10.
1000	懐石の煮凝威儀を正しをり	煮凝	冬	16.12.10.

♪ＢＧＭ：Ｅ．Ｓａｔｉｅ［Ｊｅｔｅｖｅｕｘ］arranged by Reinmusik♪

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