一日十句以上千句詠む

　　鈴童の遊び


1	浜離宮句友と集合初写真	初写真	新年	18.1.5.
2	ちゝぽゝとたかしの打ちし初鼓	初鼓	新年	18.1.5.
3	謡初声朗々と句友医師	謡初	新年	18.1.5.
4	八百万神しめやかに姫始め	姫始め	新年	18.1.5.
5	本殿に寄れぬ人出の初観音	初観音	新年	18.1.5.
6	メキシコの妹くれし初メール	初メール	新年	18.1.5.
7	枯木立幹のハートに二人の名	枯木立	冬	18.1.5.
8	入れ替わり混み合ふ暮れの診療所	暮れ	冬	18.1.5.
9	手袋を咥えて脱ぎし幼かな	手袋	冬	18.1.5.
10	蝋梅の艶際立たす空の青	蝋梅	冬	18.1.5.
11	うらうらの日の続く中寒に入る	寒の入り	冬	18.1.6.
12	初もうで人に埋まりし浅草寺	初詣	新年	18.1.6.
13	水上バス鴎従へ初観音	初観音	新年	18.1.6.
14	初寅やちんしゃんがらんと毘沙門天	初寅	新年	18.1.6.
15	居並びし僧の声和す初勤行	初勤行	新年	18.1.6.
16	心持ち膝を崩せし初弁天	初弁天	新年	18.1.6.
17	水中に硬貨光りぬ初弁天	初弁天	新年	18.1.6.
18	ボタン押し声有難き初閻魔	初閻魔	新年	18.1.6.
19	鷽替への木彫求めて長き列	鷽替	新年	18.1.6.
20	鷽替の木彫替へないコレクター	鷽替	新年	18.1.6.
21	鷽替や新たな嘘のつき初め	鷽替	新年	18.1.6.
22	子に破魔矢持たせ抱き行く若い父	破魔矢	新年	18.1.6.
23	枯木立幹にハートと二人の名	枯木立	冬	18.1.6.
24	全山の僧の声和す初勤行	初勤行	新年	18.1.6.
25	雪降れば雪に疲るる過疎の里	雪	冬	18.1.6.
26	六地蔵色とりどりの冬帽子	冬帽子	冬	18.1.6.
27	六地蔵色を違へし冬帽子	冬帽子	冬	18.1.6.
28	室咲きの花と野菜と果物と	室咲き	冬	18.1.6.
29	正ちゃん帽被り出かける初句会	初句会	秋	18.16..
30	神鶏のパトロールする神の留守	神の留守	秋	18.1.7.
31	神職の少し息つく神の留守	神の留守	秋	18.1.7.
32	神の留守鳴き龍しかと響きけり	神の留守	秋	18.1.7.
33	茶の花の露地囀りつ下校の子	茶の花	冬	18.1.7.
34	茶の花の咲ひて寂しい空家かな	茶の花	冬	18.1.7.
35	茶の花の垣根挟んで立ち話	茶の花	冬	18.1.7.
36	見上ぐれば出窓に真紅のシクラメン	シクラメン	冬	18.1.7.
37	ピアノ弾く部屋の出窓にシクラメン	シクラメン	冬	18.1.7.
38	何匹も潜むがごとく龍の玉	龍の玉	冬	18.1.7.
39	葉の隙間ちらと目の合ふ竜の玉	竜の玉	冬	18.1.7.
40	桜樹の根方を守り龍の玉	龍の玉	冬	18.1.7.
41	初春もあっと言ふ間の七日かな	初春	新年	18.1.7.
42	英字紙を読みつ客待つ焼芋屋	焼芋	冬	18.1.8.
43	水揚げの漁船を包む冬かもめ	冬鷗	冬	18.1.8.
44	水上バス窓叩くかに百合かもめ	百合鴎	冬	18.1.8.
45	水上バス後引く水脈に都鳥	都鳥	冬	18.1.8.
46	無住持の小さき墓地の枯芒	枯芒	冬	18.1.8.
47	刀折れ矢尽きし風情枯蓮田	枯蓮田	冬	18.1.8.
48	己が身につい引き寄せて枯芒	枯芒	冬	18.1.8.
49	枯葎羽毛の役を果たしをり	枯葎	冬	18.1.8.
50	蕪畑抜くと言ふより拾ひゆく	蕪	冬	18.1.8.
51	白菜の尻の艶見て品定め	白菜	冬	18.1.8.
52	白菜の半切を買ふ独り者	白菜	冬	18.1.8.
53	万両の赤き実豊か貧の庭	万両	冬	18.1.8.
54	凍蝶を日向に移し見送りぬ	凍蝶	冬	18.1.8.
55	凍蝶の一つ羽搏き逝きにけり	凍蝶	冬	18.1.8.
56	使命終え旅立ち行くや冬の蝶	冬の蝶	冬	18.1.8.
57	使命終え旅立ち行けり冬の蝶	冬の蝶	冬	18.1.8.
58	束の間の日向に逝けり冬の蝶	冬の蝶	冬	18.1.8.
59	羽搏いてはたと逝きけり冬の蝶	冬の蝶	冬	18.1.8.
60	日向にて骸となりし冬の蝶	冬の蝶	冬	18.1.8.
61	コバルトのペンキを踏みし冬の蠅	冬の蠅	冬	18.1.8.
62	血の色のペンキを踏みし冬の蠅	冬の蠅	冬	18.1.8.
63	血の色のペンキの跡や冬の蠅	冬の蠅	冬	18.1.8.
64	ペンキ踏み脚を捕られし冬の蠅	冬の蠅	冬	18.1.8.
65	塗り立ての緑のペンキ冬の蠅	冬の蠅	冬	18.1.8.
66	塗り立てのペンキと知らず冬の蠅	冬の蠅	冬	18.1.8.
67	室咲きの温室に舞ふ蝶千羽	室咲き・蝶	冬・春	18.1.8.
68	室咲きの大温室や蝶千羽	室咲き・蝶	冬・春	18.1.8.
69	凍蝶の翅解けゆく池の靄	凍蝶	冬	18.1.8.
70	ナイヤガラ巨大氷柱の暖簾掛け	氷柱	冬	18.1.8.
71	神ってる男の纏ふ淑気かな	淑気	新年	18.1.8.
72	常緑の樹々を立ち割る冬紅葉	冬紅葉	冬	18.1.9.
73	散紅葉折重なりし吹き溜まり	散紅葉	冬	18.1.9.
74	山路きておぼしきあたり冬苺	冬苺	冬	18.1.9.
75	おぼしきと来れば見つけし冬苺	冬苺	冬	18.1.9.
76	おぼしきに見つけて嬉し冬苺	冬苺	冬	18.1.9.
77	寒菊を香りとともに摘み行けり	寒菊	冬	18.1.9.
78	花籠に香り積み上ぐ冬の菊	冬の菊	冬	18.1.9.
79	枯菊をごーごーと焚く焼却炉	枯菊	冬	18.1.9.
80	夜来の雨緑鮮やか冬菜畑	冬菜	冬	18.1.9.
81	白き玉地表に浮かぶ蕪畑	蕪	冬	18.1.9.
82	ひょいひょいと拾ふがごとく摘む蕪	蕪	冬	18.1.9.
83	罅皸霜焼ゐない幼稚園	罅・皸・霜焼	冬	18.1.10.
84	罅皸霜焼知らぬ子どもたち	罅・皸・霜焼	冬	18.1.10.
85	風冴えて池底の鯉不動	冴ゆ	冬	18.1.10.
86	風冴えて戸袋の戸を揺すりけり	冴ゆ	冬	18.1.10.
87	突堤に寒釣の人影ひとり	寒釣り	冬	18.1.10.
88	寒釣りの意地で糸垂る顔三つ	寒釣り	冬	18.1.10.
89	寒釣りの釣果を問へば鯊一尾	寒釣り	冬	18.1.10.
90	寒釣りの男ら意地の張り通し	寒釣り	冬	18.1.10.
91	大根引きときに艶めく肢体出ぬ	大根引き	冬	18.1.10.
92	深き穴次つぎ残し大根引く	大根引き	冬	18.1.10.
93	抜くと言ふ不思議感覚大根引き	大根引き	冬	18.1.10.
94	抜く役と運ぶ役あり大根引き	大根引き	冬	18.1.10.
95	海鼠食ひ海鼠腸啜る一夜かな	海鼠・海鼠腸	冬	18.1.11.
96	酒友来て海鼠腸啜り海鼠食む	海鼠・海鼠腸	冬	18.1.11.
97	海鼠腸と酒盗で軽く食前酒	海鼠腸	冬	18.1.11.
98	沢庵と鯵のフライの昭和かな	沢庵	冬	18.1.11.
99	沢庵に鯵のフライの青春期	沢庵	冬	18.1.11.
100	レトルトの七草粥を買ふ媼	七草粥	冬	18.1.12.
101	寒牡丹一株ごとの名の楽し	寒牡丹	冬	18.1.12.
102	寒牡丹入れて自撮りの二人連れ	寒牡丹	冬	18.1.12.
103	冬牡丹一株ずつの藁囲ひ	冬牡丹	冬	18.1.12.
104	百草園磴わきに咲く寒あやめ	寒あやめ	冬	18.1.12.
105	むらさきの薄々として寒あやめ	寒あやめ	冬	18.1.12.
106	水道を行交う船や水仙花	水仙	冬	18.1.12.
107	蝋梅の花見上るればヘリの音	蝋梅	冬	18.1.12.
108	渡り来し吊橋下に探梅行	探梅	冬	18.1.12.
109	麓から昼のサイレン梅探る	探梅	冬	18.1.12.
110	廃村の山路しめやか探梅行	探梅	冬	18.1.12.
111	雪女見目のあえかに手招きぬ	雪女	冬	18.1.13.
112	乳吸へと胸をはだけし雪女	雪女	冬	18.1.13.
113	抱きたる吾をまさぐる雪女	雪女	冬	18.1.13.
114	素裸になりて吾呼ぶ雪女	雪女	冬	18.1.13.
115	素裸に乳房の丸き雪娘	雪女	冬	18.1.13.
116	吾を抱き乳含まする雪女	雪女	冬	18.1.13.
117	左の乳吸へば右もと雪女	雪女	冬	18.1.13.
118	雪女臍を触らせなほさらに	雪女	冬	18.1.13.
119	雪女乳首のほのと紅差せり	雪女	冬	18.1.13.
120	雪女見しも見たきも男かな	雪女	冬	18.1.13.
121	声聞かぬままに別れし雪女	雪女	冬	18.1.13.
122	立ちしまま裾上げゆまる雪女郎	雪女郎	冬	18.1.13.
123	雪女われと並びてゆまるかな	雪女	冬	18.1.13.
124	肌襦袢湯文字も白き雪女郎	雪女郎	冬	18.1.13.
125	長き髪恥毛も黒き雪女	雪女	冬	18.1.13.
126	山小屋の床に水跡雪女	雪女	冬	18.1.13.
127	お六櫛残して消えぬ雪女郎	雪女郎	冬	18.1.13.
128	足跡を消しつつ去りぬ雪女郎	雪女郎	冬	18.1.13.
129	一夜さの楽しき夢の雪をんな	雪女	冬	18.1.13.
130	一夜さの恋に解けたる雪をんな	雪女	冬	18.1.13.
131	己が身を溶かせし恋の雪女	雪女	冬	18.1.13.
132	ブラジャーのホックを外す雪女	雪女	冬	18.1.13.
133	乱れたる黒髪長き雪女郎	雪女郎	冬	18.1.13.
134	恋に濡れ黒髪ほつる雪女	雪女	冬	18.1.13.
135	雪女消えてベッドに水溜り	雪女	冬	18.1.13.
136	思ひ出は円き乳房の雪女	雪女	冬	18.1.13.
137	胸隠す長き黒髪雪をんな	雪女	冬	18.1.13.
138	丸き尻いつも冷たき雪女	雪女	冬	18.1.13.
139	一年に一度の逢ふ瀬雪女	雪女	冬	18.1.13.
140	こんもりと飾り毛黒き雪女	雪女	冬	18.1.13.
141	梟を木々に侍らせ雪女	雪女	冬	18.1.13.
142	脹らみつ横一列に寒雀	寒雀	冬	18.1.13.
143	艶やかな尻で白菜買はれけり	白菜	冬	18.1.13.
144	白菜の帯は仙花紙すみれ色	白菜	冬	18.1.14.
145	寒雀羽根ふくらませ身繕ひ	寒雀	冬	18.1.14.
146	大寒や早出が急ぐ靴の音	大寒	冬	18.1.14.
147	大寒や吐く息白き通学路	大寒	冬	18.1.14.
148	大寒やストーブ唸る杣の小屋	大寒	冬	18.1.14.
149	半切の白菜売れる世となりぬ	白菜	冬	18.1.14.
150	白菜の重きに軋む猫車	白菜	冬	18.1.14.
151	白菜を洗ふしぶきの夕映える	白菜	冬	18.1.14.
152	両端からブロッコリ摘む農夫婦	ブロッコリ	冬	18.1.14.
153	次つぎと拝む形で大根引く	大根引	冬	18.1.14.
154	ひょいひょいとリズムを付けて大根引き	大根引	冬	18.1.14.
155	大寒や達磨ストーブ轟々と	大寒	冬	18.1.15.
156	大寒の鉄橋軋む貨車百輌	大寒	冬	18.1.15.
157	濁声が競り上げてゆく寒土用	寒土用	冬	18.1.15.
158	毛繕ひさせてボス猿日向ぼこ	日向ぼこ	冬	18.1.15.
159	肩冷えて布団かき揚ぐ寒夜かな	寒夜	冬	18.1.15.
160	肩冷えて夢中断の霜夜かな	霜夜	冬	18.1.15.
161	数へるほど春は間近や寒土用	寒土用	冬	18.1.15.
162	底冷えの露地にぽつんと赤提灯	底冷え	冬	18.1.15.
163	本尊は薄着におはす寒夜かな	寒夜	冬	18.1.15.
164	何のことと問ひ返されし小正月	小正月	冬	18.1.15.
165	電線にふくら雀の並びをり	ふくら雀	冬	18.1.16.
166	もふもふとふくら雀を指さす子	ふくら雀	冬	18.1.16.
167	腹くちてふわりとふくら雀かな	ふくら雀	冬	18.1.16.
168	腹くちて夢見るふくら雀かな	寒月	冬	18.1.16.
169	寒月の冴えざえ照らす夜道かな	寒月	冬	18.1.16.
170	寒月の夜道に響く女靴	寒月	冬	18.1.16.
171	書き割の月かと紛ふ寒満月	寒満月	冬	18.1.16.
172	雲過るたびに寒月走りけり	寒月	冬	18.1.16.
173	実千両センター試験無事終わる	実千両	冬	18.1.16.
174	実千両祝ひの膳のちらし寿司	実千両	冬	18.1.16.
175	千両の小枝を添へて祝ひ膳	千両	冬	18.1.16.
176	卓上の白布に映ゆる実千両	実千両	冬	18.1.16.
177	薄氷の下をゆらりと大真鯉	薄氷	春	18.1.17.
178	薄氷や親の仇と踏み行く子	薄氷	春	18.1.17.
179	小石載せ朝日に光る薄氷	薄氷	春	18.1.17.
180	薄氷を踏み蹴飛ばして登校児	薄氷	春	18.1.17.
181	母と子の楽し気に踏む薄氷	薄氷	春	18.1.17.
182	ピザカッター縦横斜め春浅し	春浅し	春	18.1.17.
183	削り節踊るうどんや春浅し	春浅し	春	18.1.17.
184	裸婦の絵の乳房に黒子春浅し	春浅し	春	18.1.17.
185	春浅しなれど生足女高生	春浅し	春	18.1.17.
186	春浅し団地広場の刃物砥ぎ	春浅し	春	18.1.17.
187	電線にふくら雀の横並び	ふくら雀	冬	18.1.17.
188	大寒や露座の大仏薄衣	大寒	冬	18.1.17.
189	けろけろと夜道の蛙踏みし日も	蛙	春	18.1.17.
190	冬の夜や駄目よだめだめうふんもう	冬の夜	冬	18.1.18.
191	凍滝や暫の見得権五郎	凍滝	冬	18.1.18.
192	ごみ出しや路地水墨に冬の霧	冬の霧	冬	18.1.18.
193	ごみ出しや路地煙らせて冬の霧	冬の霧	冬	18.1.18.
194	くの一の紺足袋走る冬の霧	冬の霧	冬	18.1.18.
195	どれもみなふくら雀の横並び	ふくら雀	冬	18.1.18.
196	良寛さん一番寒そ冬雀	冬雀	冬	18.1.18.
197	ところでな腹減り申した寒すずめ	感雀	冬	18.1.18.
198	切岸にところを得たる水仙花	水仙花	冬	18.1.18.
199	海風に揉みしだかれて野水仙	野水仙	冬	18.1.18.
200	吹き抜けの庭に大揺れ野水仙	野水仙	冬	18.1.18.
201	さわさわと吾を呼ぶかに野水仙	野水仙	冬	18.1.18.
202	騒ぎ立てやがて疲れし野水仙	野水仙	冬	18.1.18.
203	室咲きの花を隔てて野水仙	室咲き・野水仙	冬	18.1.18.
204	杣の小屋氷柱を折りてロック酒	氷柱	冬	18.1.19.
205	氷柱折りロックが旨し北の宿	氷柱	冬	18.1.19.
206	氷柱折りロックが旨し囲炉裏端	氷柱	冬	18.1.19.
207	ぱきぱきと氷柱折り来て杣の宴	氷柱	冬	18.1.19.
208	山小屋の軒の氷柱でロック酒	氷柱	冬	18.1.19.
209	氷柱折りオンザロックの北の宿	氷柱	冬	18.1.19.
210	氷柱折りオンザロックの宴かな	氷柱	冬	18.1.19.
211	杣の小屋氷柱入り来て宴かな	氷柱	冬	18.1.19.
212	山小屋の一夜楽しき氷柱酒	氷柱	冬	18.1.19.
213	杣の小屋湯割りロックも氷柱かな	氷柱	冬	18.1.19.
214	窓開けて氷柱掻き取りロック酒	氷柱	冬	18.1.19.
215	滝封じ氷柱千本揺るぎなし	氷柱	冬	18.1.19.
216	人生を開く入試の寒復習（ざらい）	寒復習	冬	18.1.19.
217	豪快に氷柱でロック杣の宿	氷柱	冬	18.1.20.
218	咲いて散り咲いて散る日々姫椿	姫椿（＝山茶花）	冬	18.1.20.
219	頚打ち合ふ大白鳥の猛々し	白鳥	冬	18.1.20.
220	千人の胃袋満たす大鮪	鮪	冬	18.1.20.
221	煮え踊る菜の陰白き鱈掬ふ	鱈	冬	18.1.20.
222	木の実をば車に轢かす寒鴉	寒鴉	冬	18.1.20.
223	梟の夜を仕切りて森深し	梟	冬	18.1.20.
224	梟の声くぐもりて森深し	梟	冬	18.1.20.
225	杣小屋で聞く梟の声寂し	梟	冬	18.1.20.
226	塵取りの凍蝶ぱたと翅打てり	凍蝶	冬	18.1.20.
227	翅一つ打ちて逝きけり冬の蝶	冬の蝶	冬	18.1.20.
228	清澄の池にふらりと都鳥	都鳥	冬	18.1.20.
229	暫の見得荘厳に滝氷る	滝氷る	冬	18.1.21.
230	暫の見得壮麗に冬の滝	冬滝	冬	18.1.21.
231	一瞬を止め払子の滝凍てり	凍滝	冬	18.1.21.
232	三頭の滝凍て固まりて朝日浴ぶ	凍滝	冬	18.1.21.
233	落水の音を封じて滝凍てり	凍滝	冬	18.1.21.
234	滝壺に寸止め見事滝凍てり	凍滝	冬	18.1.21.
235	軒先の氷柱払いて早出かな	氷柱	冬	18.1.21.
236	奥の院岩屋に懸かる大氷柱	氷柱	冬	18.1.21.
237	朝の茶に軒の氷柱を五六本	氷柱	冬	18.1.21.
238	杣の朝早し氷柱で茶を沸かす	氷柱	冬	18.1.21.
239	寒夕焼けみな背を丸め急ぎ足	寒夕焼け	冬	18.1.21.
240	寒夕焼けスーパーのレジ長い列	寒夕焼け	冬	18.1.21.
241	ごみ出しの路地おし黙り雪もよひ	雪催	冬	18.1.22.
242	屋根間近空降り来る雪催	雪催	冬	18.1.22.
243	手の届くほどの空なり雪催	雪催	冬	18.1.22.
244	小型犬抱かれて散歩雪もよひ	雪催	冬	18.1.22.
245	美容師が白衣でごみ出し雪催	雪催	冬	18.1.22.
246	登校の子らそそくさと雪ぐもり	雪曇	冬	18.1.22.
247	雪催ひ水上バスの水脈伸びる	雪催	冬	18.1.22.
248	ぱりぱりの餃子の尻や雪催	雪催	冬	18.1.22.
249	五重塔煤けさせたる雪催ひ	雪催	冬	18.1.22.
250	スコップの置場確かめ雪催	雪催	冬	18.1.22.
251	雪催ひ賑い見せる神谷バー	雪催	冬	18.1.22.
252	半切の半切売れる白菜棚	白菜	冬	18.1.22.
253	鬱屈の空撫ぜてみる雪催ひ	雪催	冬	18.1.22.
254	大雪や未踏の道をさくさくと	雪	冬	18.1.23.
255	結氷の池面雪積み鯉眠る	氷・雪	冬	18.1.23.
256	南天の小枝跳ね上ぐしずり雪	雪	冬	18.1.23.
257	雪掻きをする首筋にしずり雪	雪	冬	18.1.23.
258	父と子の嬉々と転がす雪丸げ	雪丸げ	冬	18.1.23.
259	屋根の雪どすと野太き落下音	雪	冬	18.1.23.
260	屋根の雪弾みをつけし落下音	雪	冬	18.1.23.
261	雪雲を落しきりたる天真青	雪	冬	18.1.23.
262	昼過ぎて軒にぎやかにしずり雪	雪	冬	18.1.23.
263	アップテンポ軒にぎやかにしずり雪	雪	冬	18.1.23.
264	五重塔煤けし空や雪催ひ	雪催	冬	18.1.23.
265	凍結の路地怖ろしや雪の後	雪	冬	18.1.24.
266	口切の筒音ぽんと弾けけり	口切	冬	18.1.24.
267	新年も日記代りの日々十句	新年	新年	18.1.24.
268	常念を背に冬耕の鍬を振る	冬耕	冬	18.1.24.
269	奥多摩の山里の軒干菜見ゆ	干菜	冬	18.1.24.
270	フレームの菜を摘む女広東語	フレーム	冬	18.1.24.
271	放鷹の鷹を追詰む鳶の群れ	放鷹	冬	18.1.24.
272	背のザック酒を忍ばせ探梅行	探梅行	冬	18.1.24.
273	漁師らは釣り針を手に針供養	針供養	冬	18.1.24.
274	ご近所を憚り小声福は内	福は内	冬	18.1.24.
275	除名さる論争もなし草城忌（草城忌１．２９．）	草城忌	冬	18.1.24.
276	温め酒ジャーに仕込みし探梅行	探梅行	冬	18.1.24.
277	一声を残し寒禽飛び立てり	寒禽	冬	18.1.24.
278	寒禽の己叱咤の声残し	寒禽	冬	18.1.24.
279	寒禽や己叱咤の声残し	寒禽	冬	18.1.24.
280	食って飛び食はねば飛べぬ冬の鳥	冬の鳥	冬	18.1.24.
281	寒禽の互助の鳴き音か渓深し	寒禽	冬	18.1.25.
282	老妻に尻叩かれて雪を掻く	雪掻き	冬	18.1.25.
283	ぎっくり腰恐れおそれつ雪掻けり	雪掻き	冬	18.1.25.
284	門口の雪掻くだけで息上ぐる	雪掻き	冬	18.1.25.
285	どの家も雪掻く量の相似たり	雪掻き	冬	18.1.25.
286	早ばやと雪掻きすます老いの家	雪掻き	冬	18.1.25.
287	路地直線雪掻く人のとびとびに	雪掻き	冬	18.1.25.
288	雪掻かぬ家に足跡一安堵	雪掻き	冬	18.1.25.
289	受験子の決戦来る二月かな	二月	冬	18.1.25.
290	寒禽の鳴き音の渡る渓深し	寒禽	冬	18.1.25.
291	裾分けの米に犇めく寒雀	寒雀	冬	18.1.26.
292	腹くちてダウン脹らむ寒雀	寒雀	冬	18.1.26.
293	電線を埋めて日を浴ぶ寒雀	寒雀	冬	18.1.26.
294	肩並べ午睡楽しむ寒雀	寒雀	冬	18.1.26.
295	日を溜めてふくら雀のうつらかな	ふくら雀	冬	18.1.26.
296	枝々を撓らせふくら雀どき	ふくら雀	冬	18.1.26.
297	日を浴びるふくら雀の平和かな	ふくら雀	冬	18.1.26.
298	腹くちてふくら雀の幼顔	ふくら雀	冬	18.1.26.
299	退いて攻めまた退いて攻め寒雀	寒雀	冬	18.1.26.
300	長きもの首振りちぎる寒雀	寒雀	冬	18.1.26.
301	長きもの咥へ首振る寒雀	寒雀	冬	18.1.26.
302	長すぎる餌に手こずる寒雀	寒雀	冬	18.1.26.
303	半切の半切並ぶ白菜棚	白菜	冬	18.1.26.
304	見下ろしつ大欠伸する寒鴉	寒鴉	冬	18.1.26.
305	南天の枝を跳ね上ぐしずり雪	しずり雪	冬	18.1.26.
306	氷柱まで歪み仰け反る季の狂ひ	氷柱	冬	18.1.26.
307	氷柱まで歪み仰け反る寒さかな	氷柱	冬	18.1.26.
308	氷柱まで歪み仰け反る寒列島	氷柱	冬	18.1.26.
309	腹くちてふくら雀の顔のどか	ふくら雀	冬	18.1.26.
310	白菜のぐらりと軋む猫車	白菜	冬	18.1.26.
311	白菜を洗ふしぶきや夕映える	白菜	冬	18.1.26.
312	列島の縮こまりたる寒土用	寒土用	冬	18.1.27.
313	大寒の街を行交ふ猫背かな	大寒	冬	18.1.27.
314	大寒や猫背行き交ふ交差点	大寒	冬	18.1.27.
315	大寒や猫背の目立つ交差点	大寒	冬	18.1.27.
316	腹くちてふくら雀の横並び	ふくら雀	冬	18.1.27.
317	日を呼んでふくら雀のうらうらと	ふくら雀	冬	18.1.27.
318	寒鴉大欠伸して舞ひ去りぬ	寒鴉	冬	18.1.27.
319	かあとだけ呟くごとく寒鴉	寒鴉	冬	18.1.27.
320	白菜の四分の一を買ふ媼	白菜	冬	18.1.27.
321	寒月や鉄橋軋む貨車の列	寒月	冬	18.1.27.
322	氷結の路面をそろり冬の月	冬の月	冬	18.1.27.
323	漆黒の空独り占め月冴ゆる	月冴ゆる	冬	18.1.27.
324	白菜漬七味をかけて呑み始む	白菜	冬	18.1.27.
325	白菜漬七味をかけて独り呑む	白菜	冬	18.1.27.
326	白菜を漬け終え妻の顔弛む	白菜	冬	18.1.27.
327	白菜のずしりと重き一個かな	白菜	冬	18.1.27.
328	白菜漬ぱりっと食みし朝餉かな	白菜	冬	18.1.27.
329	白菜は四分の一に切り売られ	白菜	冬	18.1.28.
330	日を溜めてふくら雀の長閑なる	ふくら雀	冬	18.1.28.
331	ちょこちょことどれも忙しげ寒雀	寒雀	冬	18.1.28.
332	大寒やストーブ吼ゆる杣の小屋	大寒	冬	18.1.28.
333	池の鯉底に沈みて春浅し	春浅し	春	18.1.28.
334	雲垂るる多摩の横山春浅し	春浅し	春	18.1.28.
335	海女小屋の窓にブラジャー春浅し	春浅し	春	18.1.28.
336	木魚の音ふと止まる余寒かな	余寒	春	18.1.28.
337	木魚の音時々止まる余寒かな	余寒	春	18.1.28.
338	余寒なほ和尚の被る毛糸帽	余寒	春	18.1.28.
339	新聞受け朝刊を取る余寒かな	余寒	春	18.1.28.
340	暖房の風量上げる余寒かな	余寒	春	18.1.28.
341	薄氷を胸で分け行く鴨の陣	薄氷	春	18.1.28.
342	薄氷を破り口開く真鯉かな	薄氷	春	18.1.28.
343	薄氷を破り真鯉の口並ぶ	薄氷	春	18.1.28.
345	日を溜めてふくら雀のうらうらと	ふくら雀	冬	18.1.28.
346	白菜漬けお袋の味妻の味	白菜漬	冬	18.1.28.
347	白菜の塩漬けでよし茶漬け食ふ	白菜	冬	18.1.28.
348	ホチキスの針も混ざりし針供養	針供養	春	18.1.29.
349	初午や屋敷稲荷の赤幟	初午	春	18.1.29.
350	妻くれしバレンタインのチョコ一つ	バレンタイン	春	18.1.29.
351	薄氷の上で啄む雀どち	薄氷	春	18.1.29.
352	薄氷の上を軽やか雀どち	薄氷	春	18.1.29.
353	薄氷を左右に分けて鴨の陣	薄氷・鴨の陣	春・冬	18.1.29.
354	浮氷蹴散らして来る鯉の群れ	浮氷	春	18.1.29.
355	銃声の渓を切裂き冴返る	冴返る	春	18.1.29.
356	夢の中男立ちたる老いの春	春	春	18.1.29.
357	薄氷にしゃがみ頷き老い自在	薄氷	春	18.1.29.
358	渓渡る発破の響き冴返る	冴返る	春	18.1.30.
359	薄氷を胸で分け行く番ひ鳥	薄氷	春	18.1.30.
360	蕗の薹一つ見つけてここあそこ	蕗の薹	春	18.1.30.
361	蕗の薹見つけし声にここあそこ	蕗の薹	春	18.1.30.
362	武蔵野の大樹の陰に節分草	節分草	春	18.1.30.
363	なぞへ径頂花震はせ節分草	節分草	春	18.1.30.
364	しゃがみ込み顔寄せて見る雪割草	雪割草	春	18.1.30.
365	木道を逸れし木陰に雪割草	雪割草	春	18.1.30.
366	雪割草接写の音の続きけり	雪割草	春	18.1.30.
367	春菊をざくりざくりと畑鋏	春菊	春	18.1.30.
368	背を丸め春菊を摘む畑鋏	春菊	春	18.1.30.
369	畝の間の雪踏みしめつ水菜採り	水菜	春	18.1.30.
370	箸先の蕗味噌舐る夕餉かな	蕗味噌	春	18.1.30.
371	箸先の蕗味噌舐り独り酒	蕗味噌	春	18.1.30.
372	ツーピーと吾を呼ぶ声四十雀	四十雀	春	18.1.31.
373	屋外機唸る庭先四十雀	四十雀	春	18.1.31.
374	早口に掛け合ふ声や四十雀	四十雀	春	18.1.31.
375	四十雀元気印の鳴き音かな	四十雀	春	18.1.31.
376	鳴き声を交し連れ立つ四十雀	四十雀	春	18.1.31.
377	掛け合ひの早口競ふ四十雀	四十雀	春	18.1.31.
378	四十雀けふも賑やか老梅樹	四十雀	春	18.1.31.
379	ペアで来てペアで立ち去る四十雀	四十雀	春	18.1.31.
380	枝移りしつつ掛け合ひ四十雀	四十雀	春	18.1.31.
381	枝渡り鳴き音気忙し四十雀	四十雀	春	18.1.31.
382	おしゃべりでけふを始める四十雀	四十雀	春	18.1.31.
383	老梅樹花はなけれど四十雀	四十雀	春	18.1.31.
384	花いまだ梅樹に集ふ四十雀	四十雀	春	18.1.31.
385	寒明けの大川眩し船の水脈	寒明	春	18..2.1.
386	寒明けや巨船押し行くタグボート	寒明	春	18..2.1.
387	餌をねだる鯉の大口寒明けり	寒明	春	18..2.1.
388	神田川空を映して寒明けり	寒明	春	18..2.1.
389	舟下りしぶき煌めく寒の明け	寒明	春	18..2.1.
390	寒明けやしぶき冷たき川下り	寒明	春	18..2.1.
391	卒園の準備始まる寒の明け	寒明	春	18..2.1.
392	鳥の声日々にかしまし寒明けり	寒明	春	18..2.1.
393	寒明けやうがいの響き高らかに	寒明	春	18..2.1.
394	寒明けり渡れば揺るる蔓橋	寒明	春	18..2.1.
395	覗き込む大歩危小歩危寒明けり	寒明	春	18..2.1.
396	寒明けや木魚の音も弾みけり	寒明	春	18..2.1.
397	米撒ひて雀呼びをり寒の明け	寒明	春	18..2.1.
398	いざやいざ入試本番寒の明け	寒明	春	18..2.1.
399	着ぶくれの立ちたる席や春浅し	春浅し	春	18..2.1.
400	東京に二度の大雪春浅し	春浅し	春	18..2.2.
401	春浅し眼鏡曇らせ饂飩食ふ	春浅し	春	18..2.2.
402	風狂の俳人列伝春浅し	春浅し	春	18..2.2.
403	春浅し白皚々の雑木山	春浅し	春	18..2.2.
404	浅き春脱兎過りし雑木山	春浅し	春	18..2.2.
405	石庭の白砂の筋目春浅し	春浅し	春	18..2.2.
406	川の瀬に白鷺佇立春浅し	春浅し	春	18..2.2.
407	春浅し残雪目立つ雑木山	春浅し	春	18..2.2.
408	春浅し薄着でおはす仏様	春浅し	春	18..2.2.
409	春浅し着ぶくれ並ぶカウンター	春浅し	春	18..2.2.
410	マスクの人減らずに増ゆる余寒かな	余寒	春	18..2.2.
411	海女小屋の窓にブラジャー春きざす	春きざす	春	18..2.2.
412	薄氷を蹴散らして来る鯉の群れ	薄氷	春	18..2.2.
413	練塀に触れて優しき糸柳	糸柳	春	18..2.2.
414	腰屈め潜りし頬に糸柳	糸柳	春	18..2.2.
415	池の面に触れて離れる糸柳	糸柳糸柳	春	18..2.2.
416	髪を撫で素知らぬ風情糸柳	糸柳	春	18..2.2.
417	糸柳風を知らせて揺れにけり	糸柳	春	18..2.2.
418	石神井の池面を巡る糸柳	糸柳	春	18..2.2.
419	糸柳垂れし端食む池の鯉	糸柳	春	18..2.2.
420	糸柳池面を突き鯉呼べり	糸柳	春	18..2.2.
421	糸柳垂れしを鯉の遊びをり	糸柳	春	18..2.2.
422	ラジコンのボート潜らせ糸柳	糸柳	春	18..2.2.
423	団子屋の目印務め糸柳	糸柳	春	18..2.2.
424	地図を手に練塀小路の糸柳	糸柳	春	18..2.2.
425	糸柳枝を上げ下げ三歳児	糸柳	春	18..2.2.
426	用水の水音軽ろし糸柳	糸柳	春	18..2.2.
427	オカリナを誰が吹くのか糸柳	糸柳	春	18..2.2.
428	はたはたと頁繰る風糸柳	糸柳	春	18..2.2.
429	頁繰る風の行く手に糸柳	糸柳	春	18..2.2.
430	道風の沓音したり糸柳	糸柳	春	18..2.2.
431	泥中に眠る泥鰌や春隣	春隣	春	18..2.2.
432	蜆汁啜りて安堵二日酔ひ	蜆汁	春	18..2.3.
433	遠き日や親子四人の蜆汁	蜆汁	春	18..2.3.
434	亭主の座独り大椀しじみ汁	蜆汁	春	18..2.3.
435	赤味噌の香り立ちたる蜆汁	蜆汁	春	18..2.3.
436	行きつけは椀大ぶりの蜆汁	蜆汁	春	18..2.3.
437	一汁に蜆汁出る朝餉かな	蜆汁	春	18..2.3.
438	出雲路や蜆汁出る朝の宿	蜆舟	春	18..2.3.
439	夕日背に引き上げ始む蜆舟	蜆舟	春	18..2.3.
440	鋤簾（じょれん）掻くたびに大揺れ蜆舟	蜆舟	春	18..2.3.
441	宍道湖の夕映え眩し蜆舟	蜆舟	春	18..2.3.
442	身のすべてせせり終えたる蜆汁	蜆汁	春	18..2.3.
443	夫が掻き妻が舵取る蜆舟	蜆汁	春	18..2.3.
444	宍道湖の金波に漁る蜆舟	蜆汁	春	18..2.3.
445	み仏の薄着気になる余寒かな	余寒	春	18..2.3.
446	寒明けて日々にかしまし鳥の声	寒明け	春	18..2.3.
447	春立ちぬ日々にかしまし鳥の声	立春	春	18..2.4.
448	雲垂れし空の重きに春立ちぬ	立春	春	18..2.4.
449	春来たる日とは言へねどけふ立春	立春	春	18..2.4.
450	冬帝の立去らぬまま春立てり	冬帝・立春	春	18..2.4.
451	はだれ野の荒涼としてけふ立春	はだれ野・立春	冬・春	18..2.4.
452	残雪の凍てし狭庭や春立ちぬ	残雪・立春	冬・春	18..2.4.
453	冬帝に立ち退き願ふけふ立春	冬帝・立春	冬・春	18..2.4.
454	長短針納め時計の針供養	針供養	春	18..2.4.
455	針供養針を納めし古時計	針供養	春	18..2.4.
456	踏む踏まぬ己が心の絵踏かな	絵踏	春	18..2.4.
457	白内障進みてうるむ春燈	春燈	春	18..2.4.
458	団欒の声にぎやかに春燈	春燈	春	18..2.4.
459	春燈の一つ一つに幸不幸	春燈	春	18..2.4.
460	春燈のどれも相似て違いけり	春燈	春	18..2.4.
461	時計屋も針を納めに針供養	針供養	春	18..2.4.
462	寄り道のこれも春燈赤提灯	春燈	春	18..2.5.
463	春燈や追ひ込みかける受験生	春燈	春	18..2.5.
464	春燈や数えて五軒山の里	春燈	春	18..2.5.
465	東名は光の筋や春灯	春燈	春	18..2.5.
466	吾を呼ぶ春燈ありぬ赤提灯	春燈	春	18..2.5.
467	吾を呼ぶ赤提灯や春灯	春燈	春	18..2.5.
468	春燈やほろほろと出る赤提灯	春燈	春	18..2.5.
469	遅くまで塾の特訓春燈	春燈	春	18..2.5.
470	春燈や病院前の葬儀店	春燈	春	18..2.5.
471	厨から抜けて一服春灯	春燈	春	18..2.5.
472	捩じりん棒回る床屋の春灯	春燈	春	18..2.5.
473	春燈のはずれのベンチ二人連れ	春燈	春	18..2.5.
474	春燈の届かぬベンチ二人連れ	春燈	春	18..2.5.
475	春燈の暗きベンチの二人かな	春燈	春	18..2.5.
476	春浅し尼僧の被る毛糸帽	春浅し	春	18..2.5.
477	余寒なほ尼僧の被る毛糸帽	余寒	春	18..2.5.
478	料峭や人に幸せ不幸せ	料峭	春	18..2.5.
479	春燈や人に幸せ不幸せ	春燈	春	18..2.5.
480	白菜を漬け終え妻の頬弛む	白菜	冬	18..2.5.
481	寒月の走ると見せて雲速し	寒月	冬	18..2.6.
482	稜線の切れ込み確と寒満月	寒満月	冬	18..2.6.
483	終バスの赤い尾灯や寒満月	寒満月	冬	18..2.6.
484	終バスの潤む尾灯や寒満月	寒満月	冬	18..2.6.
485	けふもまた縺れし恋や寒の月	寒月	冬	18..2.6.
486	己が影踏みし家路や寒の月	寒月	冬	18..2.6.
487	寒月や遠見に黒き赤城山	寒月	冬	18..2.6.
488	かつえ鳥啄み尽す実千両	実千両	冬	18..2.6.
489	一粒も余さず消えし実千両	実千両	冬	18..2.6.
490	小鳥どち雪後の飢えに実千両	実千両	冬	18..2.6.
491	小鳥らの飢えを凌がせ実千両	実千両	冬	18..2.6.
492	飢え鳥の啄み尽す実千両	実千両	冬	18..2.6.
493	ことごとく啄み許し実千両	実千両	冬	18..2.6.
494	啄ませ種を蒔かすや実千両	実千両	冬	18..2.6.
495	啄ませ種も仕掛けも実千両	実千両	冬	18..2.6.
496	余寒なほ尼さん被る毛糸帽	寒月・毛糸帽	冬	18..2.6.
497	寒月や橋を軋ませ貨車渡る	寒月	冬	18..2.6.
498	己が影踏みし家路を寒の月	寒月	冬	18..2.6.
499	余寒なほ尼僧の被る高祖頭巾	余寒	春	18..2.6.
500	小鳥らの雪後の飢えに実千両	実千両	冬	18..2.6.
501	余寒なほ若き尼僧の高祖頭巾	余寒	春	18..2.6.
502	寒月や夜道に響く女靴	寒月	冬	18..2.6.
503	池の底動かぬ鯉や春浅し	春浅し	春	18..2.7.
504	ビル風のごおと音立て冴返る	冴返る	春	18..2.7.
505	見据へたる仁王の目玉冴返る	冴返る	春	18..2.7.
506	裸婦像の身を固くして冴返る	冴返る	春	18..2.7.
507	一番星ぽつんと一つ冴返る	冴返る	春	18..2.7.
508	赤銅の月薄々と寒戻る	寒戻る	春	18..2.7.
509	冴返る路地に音立つ屋外機	冴返る	春	18..2.7.
510	冴返る夜道に響く女靴	冴返る	春	18..2.7.
511	裸婦像の丸き乳房や冴返る	冴返る	春	18..2.7.
512	理科室の骨格模型冴返る	冴返る	春	18..2.7.
513	潮入りの離宮庭園冴返る	冴返る	春	18..2.7.
514	赤提灯少し傾ぎて冴返る	冴返る	春	18..2.7.
515	うららかや小海老居残る忘れ潮	麗か	春	18..2.7.
516	うららかや若き尼僧の手にスマホ	麗か	春	18..2.7.
517	うららかや唇赤き女身仏	麗か	春	18..2.7.
518	うららかや唇赤き弁財天	麗か	春	18..2.7.
519	うららかや釣り糸垂らす忘れ潮	麗か	春	18..2.7.
520	うららかや矢切の渡し客ひとり	麗か	春	18..2.7.
521	うららかや寅も渡りし矢切行く	麗か	春	18..2.7.
522	弁財天爪弾く琵琶のうららかや	麗か	春	18..2.7.
523	砂浴びに勤しむ雀うらうらら	麗か	春	18..2.8.
524	寒月や若き尼僧の高祖頭巾	寒月	冬	18..2.8.
525	吾はわれ君は君なり春浅し	春浅し	春	18..2.8.
526	一歩また一歩上りし春山路	春	春	18..2.8.
527	源流はいとしめやかに春の水	春	春	18..2.8.
528	源流てふいとしめやかに春の山	春	春	18..2.8.
529	僕がゐて君がゐて春の山	春	春	18..2.8.
530	ゆっくりと三毛場所選び日向ぼこ	日向ぼこ	冬	18..2.8.
531	胃の痛み旨酒呑めば春うらら	春うらら	春	18..2.8.
532	列島の北は大雪寒明けり	寒明け	冬・春	18..2.8.
534	寒明けてなほ寒明けを待つこころ	寒明け	春	18..2.8.
535	瀬戸は凪海鳥よぎる風生忌	風生忌	春	18..2.9.
536	句会終え昼のワインや鳴雪忌	鳴雪忌	春	18..2.9.
537	萌え出る時刻々と名草の芽	名草の芽	春	18..2.9.
538	早鐘を打ち初む気配名草の芽	名草の芽	春	18..2.9.
539	ものの芽の満を持したる野を歩む	ものの芽	春	18..2.9.
540	刻々と季は休みなし鳥帰る	鳥帰る	春	18..2.9.
541	囀や余程楽しきことあらむ	囀	春	18..2.9.
542	囀の途切れぬ狭庭日の眩し	囀	春	18..2.9.
543	囀のどれも早口止めどなし	囀	春	18..2.9.
544	火の粉散り響く回廊お水取	お水取	春	18..2.9.
545	火を噴ひて揺るる堂宇やお水取	お水取	春	18..2.9.
546	降り注ぐ火の粉被るやお水取	お水取	春	18..2.9.
547	もふもふとふくら雀を指す子かな	ふくら雀	春	18..2.10.
548	春灯に喜怒哀楽の影にじむ	春灯	春	18..2.10.
549	山里は爺婆ばかり春灯	春灯	春	18..2.10.
550	料峭や無住の寺に灯火なし	料峭	春	18..2.10.
551	飲み過ぎて朝餉は蜆汁一杯	蜆汁	春	18..2.10.
552	稜線を黒く刻みて春夕焼	春夕焼	春	18..2.10.
553	武蔵野の畑土巻ひて春一番	春一番	春	18..2.10.
554	土煙走る武蔵野春一番	春一番	春	18..2.10.
555	畑土を掬ひ巻き上げ春一番	春一番	春	18..2.10.
556	長靴もおしゃれ模様や春時雨	春時雨	春	18..2.10.
557	春塵や黄粉まぶしの駐車場	春塵	春	18..2.10.
558	春灯に喜怒哀楽の影よぎる	春灯	春	18..2.10.
559	春灯や喜怒哀楽の影多彩	春灯	春	18..2.10.
560	春灯や喜怒哀楽の影浮かぶ	春灯	春	18..2.10.
561	蕗の薹摘んでいそいそ家路かな	蕗の薹	春	18..2.10.
562	三個摘み幸せ気分蕗の薹	蕗の薹	春	18..2.10.
563	三個摘み得した気分蕗の薹	蕗の薹	春	18..2.10.
564	ハンカチに包みし三個蕗の薹	蕗の薹	春	18..2.10.
565	蕗の薹摘んで家路を急ぎ足	蕗の薹	春	18..2.10.
566	蕗の薹見つけし三個季節摘む	蕗の薹	春	18..2.11.
567	ハンカチに包んで嬉し蕗の薹	蕗の薹	春	18..2.11.
568	蕗の薹和えて夕餉の卓に載る	蕗の薹	春	18..2.11.
569	公魚を七輪で焼くキャンプかな	公魚	春	18..2.11.
570	串焼きの公魚食めば湖暮れる	公魚	春	18..2.11.
571	山路来てどどと雪崩れる杉花粉	杉花粉	春	18..2.11.
572	単線の車窓に烟る杉花粉	杉花粉	春	18..2.11.
573	杣夫らを黄粉まぶしに杉花粉	杉花粉	春	18..2.11.
574	楤の芽を摘めば噛みつく太き刺	楤の芽	春	18..2.11.
575	楤の芽の天婦羅で呑む杣の小屋	楤の芽	春	18..2.11.
576	掌で山椒の芽打ち夕支度	山椒の芽	春	18..2.11.
577	長命寺詣でそこそこ桜餅	桜餅	春	18..2.12.
578	長命寺詣でる先は桜餅	桜餅	春	18..2.12.
579	一つ目は葉ごと喰らひし桜餅	桜餅	春	18..2.12.
580	一つ目は葉ごと喰らふや桜餅	桜餅	春	18..2.12.
581	辛党も桜餅食ふ長命寺	桜餅	春	18..2.12.
582	墨堤に繰り出し酒と桜餅	桜餅	春	18..2.12.
583	虚子も来て三つ食つたる桜餅	桜餅	春	18..2.12.
584	欣一は綾子讃へて桜餅	桜餅	春	18..2.12.
585	墨堤は花に団子に桜餅	桜餅	春	18..2.12.
586	墨堤に長蛇の列や桜餅	桜餅	春	18..2.12.
587	田楽に菜飯さみどり田舎膳	田楽・菜飯	春	18..2.13.
588	田楽に菜飯を添へて田舎膳	田楽・菜飯	春	18..2.13.
589	道の駅母の味する菜飯膳	菜飯	春	18..2.13.
590	ピクニック菜飯にぎりを頬張りぬ	菜飯	春	18..2.13.
591	嬉し気に菜飯食む夫幼顔	菜飯	春	18..2.13.
592	定食は菜飯田楽道の駅	田楽・菜飯	春	18..2.13.
593	宿坊の椅坐のテーブル菜飯膳	菜飯	春	18..2.13.
594	めずらしや夫がお代り嫁菜飯	菜飯	春	18..2.13.
595	菜飯の菜あれこれ混ざる山の宿	菜飯	春	18..2.13.
596	懐石に静と出されし菜飯食む	菜飯	春	18..2.13.
597	戦中の飢え思い出す菜飯かな	菜飯	春	18..2.13.
598	寒月や夜道に響くハイヒール	寒月	春	18..2.14.
599	長命寺詣でし後は桜餅	桜餅	春	18..2.14.
600	まず一つ葉ごと食みたる桜餅	桜餅	春	18..2.14.
601	懐石のさみどり清し菜飯食む	菜飯	春	18..2.14.
602	右左バレンタインのチョコレート	バレンタインデー	春	18..2.14.
603	貫主にもバレンタインのチョコ届く	バレンタインデー	春	18..2.14.
604	ほろ苦きバレンタインの義理のチョコ	バレンタインデー	春	18..2.14.
605	紅梅を一枝添へてチョコ贈る	梅	春	18..2.14.
606	梅一枝添へて優しき義理のチョコ	梅	春	18..2.14.
607	梅一枝添へてバレンタインチョコ	梅・バレンタインデー	春	18..2.14.
608	バレンタイン義理にさよなら妻のチョコ	バレンタインデー	春	18..2.14.
609	ものの芽の満を持したる野の気配	ものの芽	春	18..2.15.
610	うららかや文庫本読むホームレス	麗か	春	18..2.15.
611	うららかや野点頂く緋毛氈	麗か	春	18..2.15.
612	青饅の鮮緑と朱を当てに飲む	青饅	春	18..2.15.
613	長き柄の鋤簾（じょれん）操り蜆舟	蜆	春	18..2.15.
614	麗かやマスク外して深呼吸	麗か・マスク	春・冬	18..2.15.
615	うららかや母の手作り散らし寿司	麗か	春	18..2.15.
616	優先席若者ばかり春うらら	麗か	春	18..2.15.
617	うららかや口開く鯉に虫歯なし	麗か	春	18..2.15.
618	日差し縫ふ上水の鯉春うらら	麗か	春	18..2.15.
619	柳揺れ風の在りかを告げにけり	柳	春	18..2.15.
620	遠見には白塗りの富士春うらら	麗か	春	18..2.16.
621	さみどりの菜飯にぎりを頬張りぬ	菜飯	春	18..2.16.
622	ものの芽の鼓動聞こゆる野道かな	ものの芽	春	18..2.16.
623	ラジコンボート走る池面や糸柳	柳	春	18..2.16.
624	糸柳ほつれも見せず風の道	柳	春	18..2.16.
625	うらら日や顔より大き鯉の口	麗か	春	18..2.16.
626	うららかや虫歯一本河馬の口	麗か	春	18..2.16.
627	うらら日を浴びつ和尚とへぼ将棋	麗か	春	18..2.16.
628	うららかや待った連発へぼ将棋	麗か	春	18..2.16.
629	うららかやたちまち決まるへぼ将棋	麗か	春	18..2.16.
630	うららかやベンチ将棋は六局目	麗か	春	18..2.16.
631	パソコンを打つも夜なべの余寒かな	余寒	春	18..2.16.
632	冬帝に長居無用と梅白し	梅	冬・春	18..2.17.
633	空拭きの廊下艶やか梅映える	梅	春	18..2.17.
634	梅を背に自撮りの笑顔Vサイン	梅	春	18..2.17.
635	水切りの石投げてゐる春愁ひ	春愁	春	18..2.17.
636	鉄橋を貨車渡り行く春愁ひ	春愁	春	18..2.17.
637	灸据える言葉廃れて二日灸	二日灸	春	18..2.17.
638	ぶらんこに腰かけスマホ繰る二人	ぶらんこ	春	18..2.17.
639	異国語の飛び交ふ札所遍路宿	遍路宿	春	18..2.17.
640	トレイルを楽しむ異邦の遍路かな	遍路	春	18..2.17.
641	遍路寺英語で応ふ和尚かな	遍路寺	春	18..2.17.
642	四国路は異邦遍路で賑いひぬ	遍路	春	18..2.17.
643	水切りの石投げてゐる春愁ひ	春愁	春	18..2.17.
644	片思ひそっと取り出す桜貝	桜貝	春	18..2.18.
645	抽斗の奥に眠りし桜貝	桜貝	春	18..2.18.
646	古里に戻る日あらん桜貝	桜貝	春	18..2.18.
647	桜貝いつもしんみり想うとき	桜貝	春	18..2.18.
648	いろいろの恋の思い出桜貝	桜貝	春	18..2.18.
649	あの人も老ひていずこに桜貝	桜貝	春	18..2.18.
650	少年も少女も老ひて桜貝	桜貝	春	18..2.18.
651	一片ずつ交換したる桜貝	桜貝	春	18..2.18.
652	青春の輝き留め桜貝	桜貝	春	18..2.18.
653	足濡らし拾ってくれし桜貝	桜貝	春	18..2.18.
654	桜貝多情多感の遠き日々	桜貝	春	18..2.18.
656	思い出の浜辺に戻す桜貝	桜貝	春	18..2.18.
657	九十九里砂地に光る桜貝	桜貝	春	18..2.18.
658	片貝となりて渚の桜貝	桜貝	春	18..2.18.
659	長き柄の鋤簾（じょれん）躍るや蜆採り	蜆	春	18..2.19.
660	鋤簾置き夫婦で帰る蜆舟	蜆舟	春	18..2.19.
661	夕暮れて夫婦で帰る蜆舟	蜆舟	春	18..2.19.
662	鋤簾繰り湖面に傾ぐ蜆舟	蜆舟	春	18..2.19.
663	柄の長き鋤簾に傾ぐ蜆舟	蜆舟	春	18..2.19.
664	湯気立ちし蜆汁ある朝餉かな	蜆汁	春	18..2.19.
665	汁足してもらふお代り蜆汁	蜆汁	春	18..2.19.
666	朝の膳眼鏡曇らせ蜆汁	蜆汁	春	18..2.19.
667	朝の膳眼鏡の曇る蜆汁	蜆汁	春	18..2.19.
668	朝の膳言葉少なく蜆汁	蜆汁	春	18..2.19.
669	練塀を撫ぜて優しき糸柳	柳	春	18..2.19.
670	練塀にそっと触れをり糸柳	柳	春	18..2.19.
671	夜の厨あすの死を待つ蜆かな	蜆	春	18..2.19.
672	あすのこと知らぬ厨の蜆かな	蜆	春	18..2.19.
673	ふと断たる命儚き蜆かな	蜆	春	18..2.19.
674	厨の朝蜆に起こる一大事	蜆	春	18..2.19.
675	助け呼ぶこともならずに蜆汁	蜆	春	18..2.19.
676	助け呼ぶ間もあらばこそ蜆汁	蜆	春	18..2.19.
677	朝ぼらけ湖に夫婦の蜆舟	蜆舟	春	18..2.20.
678	夜の厨吐く砂尽きし蜆かな	蜆	春	18..2.20.
679	乗込みの鮒ずっしりと手に太し	乗込み鮒	春	18..2.20.
680	犇めきて用水走る春の鮒	春の鮒	春	18..2.20.
681	黒々と池面盛り上ぐ春の鮒	春の鮒	春	18..2.20.
682	隠沼や鬨の声上ぐ春の鮒	春の鮒	春	18..2.20.
683	日に透けて鮠走らせる野川かな	鮠	春	18..2.20.
684	大だもを打ち振る子らや鮠速し	鮠	春	18..2.20.
685	肩車して付け替へる巣箱かな	巣箱	春	18..2.20.
686	遍路行く一人ひとりに幸不幸	遍路	春	18..2.20.
687	投げ出せし脚さすり合ふ遍路かな	遍路	春	18..2.20.
688	連れ合ひの旅立ちし後残り鴨	残る鴨	春	18..2.21.
689	故あらんぽつんと一羽残り鴨	残る鴨	春	18..2.21.
690	白鷺とほどよき距離に残り鴨	残る鴨	春	18..2.21.
691	湖の広さに堪えて残り鴨	残る鴨	春	18..2.21.
692	捨てられし訳でもなさそ残り鴨	残る鴨	春	18..2.21.
693	春の鴨池広々と過ぎりけり	春の鴨	春	18..2.21.
694	捨てたのか捨てられたのか残り鴨	残る鴨	春	18..2.21.
695	居残りし事情はあらん春の鴨	春の鴨	春	18..2.21.
696	めんどいと湖に残るや春の鴨	春の鴨	春	18..2.21.
697	仲間去り広き池面の残り鴨	残る鴨	春	18..2.21.
698	それなりの理由はあらん残り鴨	残る鴨	春	18..2.21.
699	残りたる同士で小さき鴨の陣	残る鴨	春	18..2.21.
700	春の鴨残置諜者かも知れず	春の鴨	春	18..2.21.
701	残り鴨残置諜者かも知れず	残る鴨	春	18..2.21.
702	白鷺とほどよき距離に春の鴨	春の鴨	春	18..2.21.
703	群れ飛んでビルを巻き上ぐ岩燕	岩燕	春	18..2.22.
704	黒豆を空に抛るや岩燕	岩燕	春	18..2.22.
705	躍動とは空を群れ舞ふ岩燕	岩燕	春	18..2.22.
706	見上ぐれば寄せては返す岩燕	岩燕	春	18..2.22.
707	岩つばめ群れてんでんに右左	岩燕	春	18..2.22.
708	岩つばめ群れ飛ぶ空は高曇り	岩燕	春	18..2.22.
709	山寺の磴千段や岩燕	岩燕	春	18..2.22.
710	山寺や磴千段を岩燕	岩燕	春	18..2.22.
711	ビル巻ひて飛翔滑空岩つばめ	岩燕	春	18..2.22.
712	磴千段掠め行きけり岩燕	岩燕	春	18..2.22.
713	川の瀬を腹擦るかに岩燕	岩燕	春	18..2.22.
714	群れ飛べど帯にはならぬ岩燕	岩燕	春	18..2.22.
715	大空を舞ひて安らぐ岩燕	岩燕	春	18..2.22.
716	渓掠め吊橋くぐる岩つばめ	岩燕	春	18..2.22.
717	どつき合ふ下校の子らや水温む	水温む	春	18..2.23.
718	突堤の釣り人増えて水温む	水温む	春	18..2.23.
719	犇めける鯉の大口水ぬるむ	水温む	春	18..2.23.
720	ざりがにを釣る子らの声水温む	水温む	春	18..2.23.
721	釣堀で舟漕ぐ人や水温む	水温む	春	18..2.23.
722	川の瀬の軽きせせらぎ水温む	水温む	春	18..2.23.
723	吊橋の影を揺らして水温む	水温む	春	18..2.23.
724	畑の径長靴取られ春の泥	春の泥	春	18..2.23.
725	ぬかるみを越すに越されぬ春の泥	春の泥	春	18..2.23.
726	一歩ごと長靴掴む春の泥	春の泥	春	18..2.23.
727	春泥に立ち往生の晴着の子	春の泥	春	18..2.23.
728	なんでそういじわるするの春の泥	春の泥	春	18..2.23.
729	汁粉だと思へば楽し春の泥	春の泥	春	18..2.23.
730	春の泥顔に塗り合ふ祭かな	春の泥	春	18..2.23.
731	春泥の田んぼサッカー誰がだれ	春の泥	春	18..2.23.
732	美しき尼僧の名あり春の泥	春の泥	春	18..2.23.
733	春泥を跳んで滑って泣き笑ひ	春の泥	春	18..2.23.
734	春泥の道を蹴散らし装甲車	春の泥	春	18..2.23.
745	春泥の田に髭面の泥鰌かな	春の泥	春	18..2.23.
746	内裏雛夜の睦言ひそやかに	雛	春	18..2.23.
747	ひそひそと交はす睦言雛の部屋	雛	春	18..2.23.
748	内裏雛衣服弛める夜の部屋	雛	春	18..2.23.
749	上気して朝を迎へし内裏雛	雛	春	18..2.23.
750	天地神明春の泥食ふ漢かな	春の泥	春	18..2.23.
751	大の字に春泥喰らふ漢かな	春の泥	春	18..2.23.
752	春泥を喰らふ漢の高笑ひ	春の泥	春	18..2.23.
753	春泥や千万の虫息吹き初む	春の泥	春	18..2.23.
754	め雛解く裸身に蒼き月の姦	春の泥	春	18..2.23.
755	己をば知らぬ蜆や蜆汁	蜆	春	18..2.23.
756	己が身の価値知らぬまま蜆汁	蜆	春	18..2.23.
757	兜太逝く脊梁山脈春疾風	春疾風	春	18..2.23.
758	狼も鮫も行き交ふ兜太の忌（＝２．２０．）	兜太忌	春	18..2.23.
759	内裏雛夜は奔放に睦みけり	雛	春	18..2.23.
760	衣解く雛の裸身や蒼き月	雛	春	18..2.23.
761	内裏雛夜は奔放に睦みをり	雛	春	18..2.23.
762	月光に白き裸身の女雛かな	雛	春	18..2.23.
763	春泥を跳んで滑って泣く子かな	春の泥	春	18..2.23.
764	春泥の田んぼサッカー遠巻きに	春の泥	春	18..2.23.
765	ひそやかに華やぐ夜の雛の部屋	雛	春	18..2.24.
766	衣解きくつろぐ夜の雛かな	雛	春	18..2.24.
767	衣解きくつろぐ夜の雛の部屋	雛	春	18..2.24.
768	衣解き夜伽睦まじ夫婦雛	雛	春	18..2.24.
769	衣解き睦言交す夜の雛	雛	春	18..2.24.
770	内裏雛着衣弛める夜の部屋	雛	春	18..2.24.
771	兜太忌や脊梁山脈春疾風	兜太忌・春疾風	春	18..2.24.
772	路地裏のそのまた隅の忘れ雪	忘れ雪	春	18..2.24.
773	古民家の土間抜け出れば雪の果	雪の果	春	18..2.24.
774	裏木戸の小笹の陰に忘れ雪	忘れ雪	春	18..2.24.
775	築地裏意固地に残る雪の果	雪の果	春	18..2.24.
776	峡の底照らして深し春の星	春の星	春	18..2.25.
778	山稜の黒々として春星群	春の星	春	18..2.25.
779	満天に光騒がし春の星	春の星	春	18..2.25.
780	満天を光で濡らす春の星	春の星	春	18..2.25.
781	春星の宴の跡や朝の露	春の星	春	18..2.25.
782	春星の残してゆきし朝の露	春の星	春	18..2.25.
783	満天の光りを濡らす春の星	春の星	春	18..2.25.
784	満天の濡るる光や春の星	春の星	春	18..2.25.
785	見上ぐればどれも濡れをり春の星	春の星	春	18..2.25.
786	満天の春星濡らす夜露かな	春の星	春	18..2.25.
787	満天を濡らし滲ます春の星	春の星	春	18..2.25.
788	引く波に蟹横走り春の星	蟹・春の星	夏・春	18..2.25.
789	水平線しかと画せし春の星	春の星	春	18..2.25.
790	水平線おぼろに画す春の星	春の星	春	18..2.25.
791	潮騒の聞ゆる宿や春の星	春の星	春	18..2.25.
792	里の灯を見下ろす山路春の星	春の星	春	18..2.25.
793	引く波をやどかり追へば波寄する	やどかり	春	18..2.25.
794	潮騒を聞きつ潮の香春の星	春の星	春	18..2.25.
795	潮騒に乗りて潮の香春の星	春の星	春	18..2.25.
796	夜更けてうふと声する雛の部屋	雛	春	18..2.25.
797	夜更けて話声する雛の部屋	雛	春	18..2.25.
798	夜更けてくぐもる声の雛の部屋	雛	春	18..2.25.
799	練塀をそっと撫でをり糸柳	柳	春	18..2.25.
800	春泥や誰ともつかぬ田の祭り	春泥	春	18..2.25.
801	春泥を両脚上げてバイク便	春泥	春	18..2.25.
802	足跡の風呂場へ続く春の泥	春泥	春	18..2.25.
803	長靴の底に滲みし春の泥	春泥	春	18..2.25.
804	春泥を山の土産に登山靴	春泥	春	18..2.25.
805	春泥に長靴取られ不倶戴天	春泥	春	18..2.25.
806	吹く風に白壁撫ずる柳かな	柳	春	18..2.26.
807	吹く風に白壁撫ずる糸柳	糸柳	春	18..2.26.
808	糸柳ちらちら見ゆる常夜灯	糸柳	春	18..2.26.
809	門柳いそいそ通る舞妓かな	門柳	春	18..2.26.
810	盛塩の二つ置かれて門柳	門柳	春	18..2.26.
811	門柳消し忘れたる常夜灯	門柳	春	18..2.26.
812	柳揺れ消し忘れたる常夜灯	柳	春	18..2.26.
813	作務衣着て庭掃く尼や糸柳	糸柳	春	18..2.26.
814	黒塗りの車迎へる門柳	門柳	春	18..2.26.
815	枝垂るる練塀小路の柳かな	柳	春	18..2.26.
816	塀越しに垂るる柳に飛びつく子	柳	春	18..2.26.
817	塀越しに垂るる柳に子がジャンプ	柳	春	18..2.26.
818	道風と芭蕉出食はす柳かな	柳	春	18..2.26.
819	道風と芭蕉出食はす池柳	柳	春	18..2.26.
820	新緑の遠見に烟る柳かな	柳	春	18..2.27.
821	新緑の遠見に烟る糸柳	糸柳	春	18..2.27.
822	空堀に柳枝垂るる城址かな	柳	春	18..2.27.
823	水上バス水脈引く川辺柳垂る	柳	春	18..2.27.
824	縺れてもはらり解けし柳かな	柳	春	18..2.27.
825	縺れてもはらりと解く柳かな	柳	春	18..2.27.
826	糸柳くぐる先には縄のれん	柳	春	18..2.27.
827	大川の川面眩しき柳かな	柳	春	18..2.27.
828	くぐらんとすれば頬撫ず柳かな	柳	春	18..2.27.
829	雨に濡れ傘に重たき柳かな	柳	春	18..2.27.
830	荒凡夫兜太逝きけり柳の芽	柳	春	18..2.27.
831	縄のれんくぐる手つきで柳分け	柳	春	18..2.27.
832	縄のれんくぐる手つきで柳除け	柳	春	18..2.27.
833	日に透けて鮠走らせる里の川	」鮠	春	18..2.27.
834	風を呼び風と遊ぶや糸柳	糸柳	春	18..2.27.
835	ひと掴み楤の芽くれし杣夫かな	楤の芽	春	18..2.28.
836	楤の芽の味噌和分ける杣の昼	楤の芽	春	18..2.28.
837	楤の芽を摘まんとすれば刺襲ふ	楤の芽	春	18..2.28.
838	楤の芽を摘まんとすれば太き刺	楤の芽	春	18..2.28.
839	楤の芽を摘んで下山の足軽し	楤の芽	春	18..2.28.
840	楤の芽と一人が言へば足止まる	楤の芽	春	18..2.28.
841	楤の芽の料理が五品山の宿	楤の芽	春	18..2.28.
842	通行止め解かれし山路楤芽吹く	楤の芽	春	18..2.28.
843	白銀の遠見の富士や楤芽吹く	楤の芽	春	18..2.28.
844	昼飯の場所を探せば楤芽吹く	楤の芽	春	18..2.28.
845	こわごわと刺を恐れつ楤芽摘む	楤の芽	春	18..2.28.
846	楤の芽を摘みし足元蕗の薹	楤の芽・蕗の薹	春	18..2.28.
847	こわごわと刺を除けつつ楤芽摘む	楤の芽	春	18..2.28.
848	つつましく刺を除けつつ楤芽摘む	楤の芽	春	18..2.28.
849	楤の芽に太き刺持つ用心棒	楤の芽	春	18..2.28.
850	鳴き龍の廊下艶けし梅映ゆる	梅	春	18..2.28.
851	乗込みの鮒にうねりし水面かな	乗込み鮒	春	18..3.1.
852	乗込みの鮒に忙し太公望	乗込み鮒	春	18..3.1.
853	凄まじき食い気露はに春の鮒	春の鮒	春	18..3.1.
854	犇めきてうねり跳ねをり春の鮒	春の鮒	春	18..3.1.
855	小流れに乗上げ跳ねる春の鮒	春の鮒	春	18..3.1.
856	腹太く命抱へし春の鮒	春の鮒	春	18..3.1.
857	持ち帰る釣果重たき春の鮒	春の鮒	春	18..3.1.
858	乗込みの鮒逞しく命継ぐ	乗込み鮒	春	18..3.1.
859	春鮒を近所に配る釣果かな	春の鮒	春	18..3.1.
860	初鮒を漬込む厨活気づく	初鮒	春	18..3.1.
861	舟中で捌き出さるる鮒膾	鮒膾	春	18..3.1.
862	盃上ぐる肴は釣果鮒膾	鮒膾	春	18..3.1.
863	色愛でて色愛でられて桜貝	桜貝	春	18..3.1.
864	渚にはいつも片方桜貝	桜貝	春	18..3.1.
865	残されて一片寂し桜貝	桜貝	春	18..3.1.
866	子を捕ろとわらべ歌ふや春夕焼け	春夕焼け	春	18..3.1.
867	花冷や花美しき性ゆへに	花冷	春	18..3.1.
868	後ろ手を組んで麦踏む漢かな	麦踏み	春	18..3.1.
869	苗木市法被の男まめまめし	苗木市	春	18..3.1.
870	兵の父匍匐をしたる野に遊ぶ	野遊び	春	18..3.1.
871	うららかや眉根美し阿修羅像	うららか	春	18..3.1.
872	いま一度見たきと思ふ春の夢	春の夢	春	18..3.1.
873	香煙に霞む義士祭泉岳寺	義士祭	春	18..3.1.
874	香煙に噎せつ義士祭泉岳寺	義士祭	春	18..3.1.
875	土踏まずどれもふっくら涅槃像	涅槃像	春	18..3.1.
876	なにごとか秘めて美し尼遍路	遍路	春	18..3.1.
877	裸木の頂あたり烏の巣	烏の巣	春	18..3.1.
878	裸木のどれも頂烏の巣	烏の巣	春	18..3.1.
879	虎杖の茎を齧りし幼き日	虎杖	春	18..3.1.
880	美しき女人遍路や鈴すがし	遍路	春	18..3.1.
881	美しき女人遍路や桂浜	遍路	春	18..3.1.
882	美しき女人遍路と会釈して	遍路	春	18..3.1.
883	湯豆腐の上で踊りし花かつを	湯豆腐	春	18..3.1.
884	夕日浴び木の天辺に烏の巣	烏の巣	春	18..3.2.
885	赤や黄に緑も混ざる烏の巣	烏の巣	春	18..3.2.
886	高木の頂あたり烏の巣	烏の巣	春	18..3.2.
887	カラフルなアロハに似たる烏の巣	烏の巣	春	18..3.2.
888	巣箱からするると逃げるやまかがし	巣箱	春	18..3.2.
889	今年また古巣に戻る燕かな	古巣	春	18..3.2.
890	泥咥へ古巣繕ふ燕かな	古巣	春	18..3.2.
891	鴉の巣どうやら主は原色派	鴉の巣	春	18..3.2.
892	花冷や女性トイレの長い列	花冷	春	18..3.2.
893	花冷えや電気ストーブわずらはす	花冷	春	18..3.2.
894	花冷えや回す湯割りの魔法瓶	花冷	春	18..3.2.
895	裸子の尻美しく蒙古斑	裸子	夏	18..3.2.
896	思ひつくものの一つに水中花	水中花	夏	18..3.2.
897	喉仏ごくりごくりとビール干す	ビール	夏	18..3.2.
898	春多彩緑赤黄空の青	春	春	18..3.3.
899	年取らぬうりざね顔の内裏雛	内裏雛	春	18..3.3.
900	ひな人形正座し続け半世紀	雛人形	春	18..3.3.
901	娘らは五十路の坂に雛人形	雛人形	春	18..3.3.
902	娘らは五十路の坂に老けぬ雛	雛	春	18..3.3.
903	ひな祭り一枝庭の豊後梅	雛祭	春	18..3.3.
904	入学式親子ぴかぴか門くぐる	入学式	春	18..3.3.
905	大きめのよそ行きを着て入学式	入学式	春	18..3.3.
906	ぴかぴかの服は大きめ入学式	入学式	春	18..3.3.
907	ランドセルどれもぴかぴか新入生	新入生	春	18..3.3.
908	先生もみんな他所行き入学式	入学式	春	18..3.3.
909	探梅を深奥で待つ一樹あり	探梅	春	18..3.3.
910	吾もまた逝くこと確か藪椿	藪椿	春	18..3.3.
911	猫の恋眼のやり場なき辻地蔵	猫の恋	春	18..3.3.
912	片栗の花に風吹くなぞへかな	片栗	春	18..3.3.
913	吾待ちて去年の場所に犬ふぐり	犬ふぐり	春	18..3.3.
914	乙女像乳房を濡らす牡丹雪	牡丹雪	春	18..3.3.
915	ごろごろと呟くごとく春の雷	春の雷	春	18..3.3.
916	雛を背に写りし子らも五十路かな	雛	春	18..3.4.
917	老妻とぽつんと眺む内裏雛	雛	春	18..3.4.
918	缶入りの白酒下戸の妻が飲む	白酒	春	18..3.4.
919	ごろごろと遠くもの憂げ春の雷	春の雷	春	18..3.4.
920	春の雷ごろとだけ鳴りそれっきり	春の雷	春	18..3.4.
921	うたた寝の寝言のごとき春の雷	春の雷	春	18..3.4.
922	春雷か問ひ合はせ先不明なり	春の雷	春	18..3.4.
923	ごろとだけいつも無口の春の雷	春の雷	春	18..3.4.
924	砂浴びの雀立去る春の雷	春の雷	春	18..3.4.
925	野道行けば遠山あたり春の雷	春の雷	春	18..3.4.
926	野道行けば雲うらうらと春の雷	春の雷	春	18..3.4.
927	雛の夜や老妻と食む散らし寿司	雛	春	18..3.4.
928	囀のどれも軽佻浮薄かな	囀り	春	18..3.4.
929	仰向けに落ちし含羞白椿	白椿	春	18..3.4.
930	仰向けに落ちし恥じらひ白椿	白椿	春	18..3.5.
931	柔らかな音とも知れず椿落つ	椿	春	18..3.5.
932	柔らかな音かも知れず椿落つ	椿	春	18..3.5.
933	落花して踏まれて掃かる椿かな	椿	春	18..3.5.
934	受験子の避け行く道や落椿	落椿	春	18..3.5.
935	何の咎なけれど転げ落椿	落椿	春	18..3.5.
936	椿かと通り過ぎたる漢かな	椿	春	18..3.5.
937	椿咲く落ちる椿と散る椿	椿	春	18..3.5.
938	雪に日の射して雫の椿かな	雪・椿	冬・春	18..3.5.
939	造物主やはり意図あり落椿	落椿	春	18..3.5.
940	葉の艶と競ひ過ぎたる落椿	落椿	春	18..3.5.
941	落ち様で笑ふ椿に泣く椿	椿	春	18..3.5.
942	校門をくぐるぴかぴか新入生	新入生	春	18..3.5.
943	大きめの物身に着けて新入生	新入生	春	18..3.5.
944	せせらぎの響き軽やか花山葵	花山葵	春	18..3.5.
945	大蛤あっかんべーと長き舌	蛤	春	18..3.5.
946	潮引けば干潟客引く汐まねき	汐まねき	春	18..3.5.
947	海胆の棘ゆらりゆらりとてんでんに	海胆	春	18..3.5.
948	天を指し地を指し濡るる甘茶仏	甘茶仏	春	18..3.5.
949	仏生会甘茶味見の寺巡り	仏生会	春	18..3.5.
950	足元を甘茶波打つ花御堂	花御堂	春	18..3.5.
951	女身仏胸ふくよかや鳥交る	鳥交る	春	18..3.5.
952	女身仏胸ふくよかや鳥つるむ	鳥つるむ	春	18..3.5.
953	足元の薄き湯けむり甘茶仏	甘茶仏	春	18..3.5.
954	寝そびれし子もゐたりけり燕の巣	燕の巣	春	18..3.5.
955	くるくると回る浮世や風車	風車	春	18..3.5.
956	魚島を引っ張り来る鷗かな	魚島	春	18..3.5.
957	走り寄り走り去り行く卯浪かな	卯浪	夏	18..3.5.
958	廃屋の庭を埋めたる踊子草	踊子草	夏	18..3.5.
959	廃屋の庭に群れ咲く踊子草	踊子草	夏	18..3.5.
960	捨て畑の怖ろしき数踊子草	踊子草	夏	18..3.5.
961	愛でらるることなく寂し姫女苑	姫女苑	夏	18..3.5.
962	向ふ傷いくつも走る芥子坊主	芥子坊主	夏	18..3.5.
963	農婦からやると貰いし野蒜かな	野蒜	春	18..3.5.
964	散り敷けば紫の径桐の花	桐の花	夏	18..3.5.
965	白壁の蔵に浮き出る桐の花	桐の花	夏	18..3.5.
966	刻みし名朱塗りの墓石桐の花	桐の花	夏	18..3.5.
967	天に向き告げごと多き泰山木	泰山木の花	夏	18..3.5.
968	泰山木天に告げごと多き花	泰山木の花	夏	18..3.5.
969	朝市や海酸漿のおまけ付き	海酸漿	夏	18..3.5.
970	蒼き匂ひ男の匂ひ栗の花	栗の花	夏	18..3.5.
971	夫恋し防人の妻栗の花	栗の花	夏	18..3.5.
972	五月雨を式部見上ぐる連子窓	五月雨	夏	18..3.5.
973	家の無き故に嫌はるなめくじり	なめくじ	夏	18..3.5.
974	時の日や花時計には遅れなし	時の日	夏	18..3.5.
975	どんがめの雲と遊びし水田かな	田亀	夏	18..3.6.
976	青桐に残る古傷少女の名	青桐	夏	18..3.6.
977	幼二人うさぎ跳びして茅の輪抜け	茅の輪	夏	18..3.6.
978	鯵鮨を食ひに小田原途中下車	鯵	夏	18..3.6.
979	硝子器も氷もきらら夏料理	夏料理	夏	18..3.6.
980	汗拭ひふうふうと食ふどぜう鍋	泥鰌鍋	夏	18..3.6.
981	釣忍ごめんごめんと水注ぐ	釣忍	夏	18..3.6.
982	するすると穴出し蜥蜴急ぐなよ	蜥蜴穴を出ず	春	18..3.6.
983	穴出し蜥蜴素早き匍匐かな	蜥蜴穴を出ず	春	18..3.6.
984	穴を出し蜥蜴この世を過りけり	蜥蜴穴を出ず	春	18..3.6.
985	穴を出し蜥蜴匍匐の第一歩	蜥蜴穴を出ず	春	18..3.6.
986	穴を出し蜥蜴の影は腹の下	蜥蜴穴を出ず	春	18..3.6.
987	お接待で賜りたりぬ鶯餅	鶯餅	春	18..3.7.
988	出されしをこれがうぐいす餅と食む	鶯餅	春	18..3.7.
989	梅一枝そへて出されし鶯餅	鶯餅	春	18..3.7.
990	梅一枝添へて鶯餅出でし	鶯餅	春	18..3.7.
991	梅一枝鶯餅にそっと添へ	鶯餅	春	18..3.7.
992	ほうほけきょ鶯餅を食む部屋に	鶯餅	春	18..3.7.
993	黒文字で鶯餅を食む尼僧	鶯餅	春	18..3.7.
994	うぐいす餅食みにしをれば枝に鳥	鶯餅	春	18..3.7.
995	うぐいす餅黑胡麻の目を持ちにけり	鶯餅	春	18..3.7.
996	山頭火うぐいす餅を食みにけり	鶯餅	春	18..3.7.
997	うぐいす餅食みて茶を飲む山頭火	鶯餅	春	18..3.7.
998	うぐいす餅黄粉の色のうすみどり	鶯餅	春	18..3.7.
999	柔らかな音を残して椿落つ	椿	春	18..3.7.
1000	やはらかな音聞き止めぬ落椿	落椿	春	18..3.7.

♪BGM:Braga［Angels_serenade］arranged by Pian♪


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