鈴童の遊び
一日十句以上を千句詠む

(第3回)


季語 作句日
1 ツピーツピ鳴き声弾む四十雀 四十雀 12.2.14.
2 山茱萸の花芽を閉ざし小糠雨 山茱萸 12.2.14.
3 満作やよろぼふごとく開花せり 満作 12.2.14.
4 多喜二忌や伏せ字の並ぶ古書開く 多喜二忌 12.2.14.
5 参道の長きを歩む実朝忌 実朝忌 12.2.14.
6 畑道や轍もつれる春の泥 春の泥 12.2.14.
7 作業終へ農具洗ひし水温む 水温む 12.2.14.
8 柔らかき胸の起伏や春セーター 春セーター 12.2.14.
9 青ぬたや色それぞれも味のうち 青ぬた 12.2.14.
10 春の夢いちど目覚めて続き見る 春の夢 12.2.14.
11 犬交りつるみしままに西東 犬交り 12.2.15.
12 囀りの何言ひ合ふや姦しく 囀り 12.2.15.
13 春眠の夢切れぬままベッド降り 春眠 12.2.15.
14 古草のどっこい生きて緑かな 古草 12.2.15.
15 春昼や陰り日が差しまた陰る 春昼 12.2.15.
16 のどかさや寺の風鐸ゆるぎなし のどか 12.2.15.
17
春燈や老友集いて酒を酌む 春燈 12.2.15.
18 田楽の焦げ目がよろし味噌美味し 田楽 12.2.15.
19 田楽の二串あれば酒二合 田楽 12.2.15.
20 田楽は焼豆腐よし芋もよし 田楽 12.2.15.
21 水撥ねる農具洗ひの余寒かな 余寒 12.2.16.
22 麗日にスカ食わされし余寒かな 余寒 12.2.16.
23 地下足袋の底から上る余寒かな 余寒 12.2.16.
24 早ばやと農具を洗ふ余寒かな 余寒 12.2.16.
25 早々に畑引き揚げる余寒かな 余寒 12.2.16.
26 すき焼きの太葱掘りて春寒し 余寒 12.2.16.
27 名のみとはけふの畑ぞ春寒し 余寒 12.2.16.
28 バス停に容赦も無しの春北風(はるならひ) 春北風 12.2.16.
29 面構え日毎に荒む恋の猫 恋の猫 12.2.16.
30 三毛と斑春の恋路を急ぎけり 春の猫 12.2.16.
31 ひと車眼中になし猫の恋 猫の恋 12.2.17.
32 草食系見習ふべしや恋の猫 恋猫 12.2.17.
33
塀越へて修羅場に馳せる恋の猫 恋猫 12.2.17.
34 恋猫や欲情の声猛々し 恋猫 12.2.17.
35 恋猫や野卑むき出しにおめき合ふ 恋猫 12.2.17.
36 冬枯を置き忘れたる余寒かな 余寒 12.2.17.
37
冬がれを据え置かれたる余寒かな 余寒 12.2.17.
38 木の根方花ぶちまけし節分草 節分草 12.2.17.
39 塩撒きしごとくに咲くや節分草 節分草 12.2.17.
40 林床に守られ咲けり節分草 節分草 12.2.17.
41 林床の育み咲かす節分草 節分草 12.2.18.
42 魂きはるいのちあどけし節分草 節分草 12.2.18.
43 魂きはるいのち可憐に節分草 節分草 12.2.18.
44 林床の温もりに咲く節分草 節分草 12.2.18.
45 早咲きを支える蕊や節分草 節分草 12.2.18.
46 魂きはるいのちでありぬ節分草 節分草 12.2.18.
47 魂きはるいのちは勁し節分草 節分草 12.2.18.
48 座禅草親指ほどの苞みどり 座禅草 12.2.18.
49 座禅草流れに苞が覗きけり 座禅草 12.2.18.
50 湧水や苞が顔出す座禅草 座禅草 12.2.18.
51 膝を着き顔寄せて見る節分草 節分草 12.2.19.
52 花見るに土に顔寄す節分草 節分草 12.2.19.
53 膝着かせ顔まで呼ぶや節分草 節分草 12.2.19.
54 膝着かせ土の香嗅がす節分草 節分草 12.2.19.
55 愚痴も出る季節外れの余寒かな 余寒 12.2.19.
56 朝の屋根未練の二字の斑雪 斑雪 12.2.19.
57 冴返る野川や重機の川ざらえ 冴返る 12.2.19.
58 寒戻る幾度戻れば気の済むや 寒戻る 12.2.19.
59 冴返る夜の仕業や白い屋根 冴返る 12.2.19.
60 シーツ剥ぐごとくに消えし牡丹雪 牡丹雪 12.2.19.
61 屈み込み膝着き眺む節分草 節分草 12.2.20.
62 節分草五体投地を求めけり 節分草 12.2.20.
63 冴え返る夜やパソコンにホ句を打つ 冴返る 12.2.20.
64 一句だに採られず戻る余寒かな 余寒 12.2.20.
65 咲くと散る入試発表孫咲けり 入試 12.2.20.
66 芽吹きどき気配高まる地の鼓動 芽吹き 12.2.20.
67 さあ芽ぶき音合わせせんバイオリン 芽吹き 12.2.20.
68 畑濡らす氷雨にあらず雨水なり 雨水 12.2.20.
69 梅まつり半ばをすぎて花はまだ 梅まつり 12.2.20.
70 料峭の路地駆けて行く下校の児 料峭 12.2.20.
71 春ながら風冷え冷えと季語腐し 12.2.21.
72 春浅き瀬に立つ鷺のゆったりと 春浅し 12.2.21.
73 尻重き季を追い出せず春泣きっ面 12.2.21.
74 早春賦いつまで立てど早春賦 早春 12.2.21.
75 料峭や試飲二杯で地酒買ふ 料峭 12.2.21.
76 料峭や診察室は生温し 料峭 12.2.21.
77 料峭のバス停で待つ孤独かな 料峭 12.2.21.
78 料峭や二つに折れて行く媼 料峭 12.2.21.
79 料峭や鯉が口開け餌をねだる 料峭 12.2.21.
80 料峭の二文字で足る奥秩父 料峭 12.2.21.
81 料峭の境内行けば句碑また句碑 料峭 12.2.22.
82 田楽や手間少なくも褒められて 田楽 12.2.22.
83 春天の雲無き青の怖ろしき 春天 12.2.22.
84 春天やどこまで深き青の奥 春天 12.2.22.
85 春の夢いつも呪縛の中にいて 春の夢 12.2.22.
86 春の夢戻りたくなる夢もあり 春の夢 12.2.22.
87 冬の季語ばかり浮かぶや春寒し 春寒し 12.2.22.
88 初切やふふみ霧吹く春の水 春の水 12.2.22.
89 初切や禁じ手笑ます春相撲 12.2.22.
90 春寒し盆栽園は禁写真 春寒し 12.2.22.
91 苛めつつ生かす盆栽春寒し 春寒し 12.2.23.
92 どこぞから春の蚊降りぬ皿の上 春の蚊 12.2.23.
92 春の蚊は刺さぬといふが刺されたり 春の蚊 12.2.23.
94 路地奥の富士かがやきて冴返る 冴返る 12.2.23.
95 木道のくの字くの字に冴返る 冴返る 12.2.23.
96 日を浴びて揺るる小枝や冴返る 冴返る 12.2.23.
97 花見へぬ上水の路冴返る 冴返る 12.2.23.
98 六地蔵首なきもある余寒かな 余寒 12.2.23.
99 季に添はぬ非難の籠もる余寒かな 余寒 12.2.23.
100 立ち食いのうどんかき込む余寒かな 余寒 12.2.23.
101 よろぼいつ煤けて過ぎる恋の猫 恋の猫 12.2.24.
102 桜貝浜で拾ふは片ばかり 桜貝 12.2.24.
103 桜貝二枚揃ひしことありや 桜貝 12.2.24.
104 桜貝離れ離れで拾われし 桜貝 12.2.24.
105 桜貝片方だけの宝物 桜貝 12.2.24.
106 抽斗で潮騒の夢桜貝 桜貝 12.2.24.
107 群れの鮠(はや)漁する人の居ぬ不思議 12.2.24.
108 蛍烏賊食べすすむうち生臭し 蛍烏賊 12.2.24.
109 ひこばえの親と子の仲いかなるや ひこばえ 12.2.24.
110 投稿句ポストに入れて風生忌 風生忌 12.2.24.
111 恋に生き女をいきて真砂女の忌 真砂女忌 12.2.25.
112 葱の畝掻き削りゆく春北風(はるならひ)
春北風 12.2.25.
113 大仏を訪ねて行かん実朝忌 実朝忌 12.2.25.
114 嘴太の畑地で踊る余寒かな 余寒 12.2.25.
115 俳ひねり呆け防止てふ春句会 12.2.25.
116 花開かず車座もなき梅まつり 梅まつり 12.2.25.
117 花は何処探しあぐねる梅まつり 梅まつり 12.2.25.
118 伊奈谷に弊衣飄々井月忌 井月忌 12.2.25.
119 悲しみを心の奥に井月忌 井月忌 12.2.25.
120 俳と酒虱を友に井月忌 井月忌 12.2.25.
121 虚しくも瓢然と生き井月忌 井月忌 12.2.26.
122 虚しさを句と酒に寄せ井月忌 井月忌 12.2.26.
123 伊奈谷の虱井月春しぐれ 春時雨 12.2.26.
124 瓢然と伊奈に果つるや井月忌 井月忌 12.2.26.
125 井月の思ひ託して春の雁 春の雁 12.2.26.
126 3.11.虱井月と重なりぬ 3月 12.2.26.
127 春の声なかなか聴けぬ余寒かな 余寒 12.2.26.
128 梅林を濡れ鼠とし春時雨 春時雨 12.2.26.
129 陰々と音立つるなり春時雨 春時雨 12.2.26.
130 名に背き陰々寒し春時雨 春時雨 12.2.26.
131 冷え冷えと濡るるを厭ふ雨水かな 雨水 12.2.27.
132 大仏や胎から眺む長谷の春 12.2.27.
133 いつまでも大寒小寒二月尽 二月尽 12.2.27.
134 寒日の続き続いて二月尽 二月尽 12.2.27.
135 梅林や蕾ばかりが凛として 梅林 12.2.27.
136 人心のさびさびとして薄氷 薄氷 12.2.27.
137 桜貝余波(なごり)の砂に見え隠れ 桜貝 12.2.27.
138 佐保姫の胸疼かせるものはなに 佐保姫 12.2.27.
139 佐保姫の駆け下りて来し素足かな 佐保姫 12.2.27.
140 佐保姫の裳裾濡らして瀬の速む 佐保姫 12.2.27.
141 佐保姫の胸乳に山野目覚めけり 佐保姫 12.2.28.
142 佐保姫の馳せて汗する胸乳かな 佐保姫 12.2.28.
143 佐保姫の濡らす胸乳の香しき 佐保姫 12.2.28.
144 佐保姫の胸乳隠せし霞かな 佐保姫 12.2.28.
145 桜貝五十年目の里帰り 桜貝 12.2.28.
146 きさらぎや白磁の壺を虫登る 如月 12.2.28.
147 きさらぎや日数少なきカレンダー 如月 12.2.28.
148 きさらぎや突然のごと月替わる 如月 12.2.28.
149 きさらぎや損得のある短月 如月 12.2.28.
150 きさらぎや訪問教授なる制度 如月 12.2.28.
151 灰色の空陰々と二月尽 二月尽 12.2.29.
152 啓蟄や食うも食わるも顔を出し 啓蟄 12.2.29.
153 啓蟄やトラクター入れ新区画 啓蟄 12.2.29.
154 啓蟄を空から狙ふ影舞へり 啓蟄 12.2.29.
155 啓蟄や空の目地の目狙いゐて 啓蟄 12.2.29.
156 啓蟄や手ぐすねを引く樹上の目 啓蟄 12.2.29.
157 啓蟄や七人の敵穴の外 啓蟄 12.2.29.
158 啓蟄や寝ぼけ眼を狙い打ち 啓蟄 12.2.29.
159 啓蟄や蚯蚓が撥ねて蛇走る 啓蟄 12.2.29.
160 啓蟄や目覚ましの音地に響き 啓蟄 12.2.29.
161 啓蟄や地のざわざわと虫目覚む 啓蟄 12.3.1.
162 啓蟄やまず空腹のバトルから 啓蟄 12.3.1.
163 インフルの次ぎは花粉のマスク増え 花粉症 12.3.1.
164 木道のくの字くの字や春浅し 春浅し 12.3.1.
165 せせらぎに緑の苞や座禅草 座禅草 12.3.1.
166 春の水掬へば甘き味したり 春の水 12.3.1.
167 春浅し浦賀水道とんび舞ふ 春浅し 12.3.1.
168 灯台は母の温もり二月尽 二月尽 12.3.1.
169 春北風人の汲み来る走り水 春北風 12.3.1.
170 春風や汲み来る人の走り水 春風 12.3.1.
171 波消しの背黒鴎や春北風 春北風 12.3.2.
172 汐溜まり春北風避け鴎浮く 春北風 12.3.2.
173 黒い染み広げ朽ちゆく落椿 落椿 12.3.2.
174 梅まつり蕾のままで終はりけり 梅まつり 12.3.2.
175 春寒の空に浮かびし鳶の影 春寒 12.3.2.
176 崎に立つ灯台染めて春夕焼 春夕焼 12.3.2.
177 すかんぽの緑豊かに浜の路 酸模 12.3.2.
178 春一番吹かずに吹くは春北風 春北風 12.3.2.
179 ひたすらに背を丸くして二月尽 二月尽 12.3.2.
180 風信子(ひやしんす)ゐたら楽しいカゼノブコ ヒヤシンス 12.3.2.
181 がけ下の屋根を覆ふて梅満開
(馬堀海岸付近で1樹のみ)
12.3.3.
182 お内裏と齢の差開く老夫婦 内裏雛 12.3.3.
183 お内裏と齢の違はぬころもあり 内裏雛 12.3.3.
184 梅遅れ遅れ遅れていつ咲くや 12.3.3.
185 梅遅れ遅れ遅れてまだ蕾 12.3.3.
186 春寒や空高々と鳶浮けり 春寒 12.3.3.
187 春寒や空高々と鳶静止 春寒 12.3.3.
188 佐保姫がくすりと笑ひ唇に手を 佐保姫 12.3.3.
189 夢の分あわせば二倍春の夜も 12.3.3.
190 剣山に触るるがごとく春寒し 春寒し 12.3.3.
191 落椿朽ち果ててゆく紅無残 落椿 12.3.4.
192 母と子が足跡残す春の雪 春の雪 12.3.4.
193 しんしんと雪降り積もり二月尽 二月尽 12.3.4.
194 東京は雪降るなかに二月尽 二月尽 12.3.4.
195 春の雪池面に浮かぶシャーベット 春の雪 12.3.4.
196 淡雪のはずが五寸も積もりけり 淡雪 12.3.4.
197 春の雪積もりし枝を滴れり 春の雪 12.3.4.
198 春の雪降りつつ枝を垂(しず)りゐる 春の雪 12.3.4.
199 雪垂ずる音に耳寄せ二月尽 二月尽 12.3.4.
200 淡雪や垂ずる音して降り止みぬ 淡雪 12.3.4.
201 雪景色置き土産とし二月尽 二月尽 12.3.5.
202 あたたかや鬚剃る床を地震(なゐ)の揺れ 暖か 12.3.5.
203 うらら日や雪垂(しず)る音かしましき うらら 12.3.5.
204 うらら日や雪垂(る音にぎやかに うらら 12.3.5.
205 暖かやきのふの雪をぬからせて 暖か 12.3.5.
206 蹲り顔寄せて見る節分草 節分草 12.3.5.
207 岬の鼻灯台染むる春夕焼け 春夕焼け 12.3.5.
208 前の日に慌てて飾る内裏雛 12.3.5.
209 今年またお内裏だけで雛飾り 雛飾 12.3.5.
210 髢草(かもじぐさ)名の由来あす雛まつり 雛まつり 12.3.5.
211 かもじ草結わえて仕上ぐ内裏さま 内裏雛 12.3.6.
212 老宅やボードの上の雛飾り 12.3.6.
213 お雛さま祭り終われば箱の中 12.3.6.
214 内裏さま金婚式も間近なり 内裏雛 12.3.6.
215 灯り消へ内裏も衣を重ねけり 内裏雛 12.3.6.
216 閨に入り内裏も衣を重ねけり 内裏雛 12.3.6.
217 内裏雛あくびを笏で隠しけり 内裏雛 12.3.6.
218 おほほほと扇子で笑ふ妃雛 内裏雛 12.3.6.
219 春耕をえさ場と狙ふ鳥の影 春耕 12.3.6.
220 花柄の光りにまぶし春日傘 春日傘 12.3.6.
221 歩に合はせ華やいでゆく春日傘 春日傘 12.3.7.
222 ヴィバルディ流して行くや春日傘 春日傘 12.3.7.
223 ヴィバルディ目で聴いてゐる春日傘 春日傘 12.3.7.
224 春服のこころ弾ます軽さかな 春服 12.3.7.
225 春服に着替えて気づくほつれかな 春服 12.3.7.
226 あんぱんの臍の塩あじ桜漬 桜漬 12.3.7.
227 桜湯のゆるりと開き花浮かぶ 桜湯 12.3.7.
228 花菜漬箸ひらひらと摘まむかな 花菜漬 12.3.7.
229 つくばいに影を落とすや梅の花 12.3.7.
230 スタンドに野菜と並ぶ土筆かな 土筆 12.3.7.
231 スタンドに土筆三袋置かれけり 土筆 12.3.8.
232 スタンドのけふの特売土筆なり 土筆 12.3.8.
233 踏まれてもどこ吹く風の犬ふぐり 犬ふぐり 12.3.8.
234 踏まれてもこともな気なる犬ふぐり 犬ふぐり 12.3.8.
235 啓蟄や虫といふ虫蠢きぬ 啓蟄 12.3.8.
236 耳の日(3月3日)や聞きもらす言多くなり 耳の日 12.3.8.
237 五十年喧嘩もせずや内裏さま 内裏 12.3.8.
238 啓蟄やラマダン明けの小鳥待つ 啓蟄 12.3.8.
239 穴を出し蜥蜴親子の警戒心 蜥蜴出づ 12.3.8.
240 床屋裏東風に煽らる干しタオル 東風 12.3.8.
241 ランチエ(年金生活者)も書類書き込む納税期 納税期 12.3.9.
242 春服の洗濯タグを外しけり 春服 12.3.9.
243 着古しの春服着れば若造り 春服 12.3.9.
244 つくばいに雲を浮かべて水温む 水温む 12.3.9.
245 池の鯉重なり合いて水温む 水温む 12.3.9.
246 用水路筋目かすかに蜷歩む 12.3.9.
247 田螺食む話に孫の奇異の顔 田螺 12.3.9.
248 スーパーに田螺のありし不思議な日 田螺 12.3.9.
249 ハケの水加えて行くや春の川 春の川 12.3.9.
250 墨染めの旅のこころや西行忌 西行忌 12.3.9.
251 近道の墓地を吹き過ぐ涅槃西風(ねはんにし) 涅槃西風 12.3.10.
252 濡れ畑を乾かして行く涅槃西風 涅槃西風 12.3.10.
253 鐘の音を運んで行くや涅槃西風 涅槃西風 12.3.10.
254 春塵やマスクの顔が眼をこする 春塵 12.3.10.
255 サドルにも産毛のごとき春の塵 春塵 12.3.10.
256 涅槃像横寝のお顔安らけく 涅槃像 12.3.10.
257 穴太寺(あなおうじ)撫でさせ給ふ涅槃像 涅槃像 12.3.10.
258 そっと触れ心癒せし涅槃像 涅槃像 12.3.10.
259 海渡る選択重し帰り鴨 帰り鴨 12.3.10.
260 鳥雲や海峡低くまた高く 鳥雲 12.3.10.
261 暖かや廂に揺るる光の輪 暖か 12.3.11.
262 ていれぎの川を降りれば西林寺 ていれぎ 12.3.11.
263
ていれぎや刺身の妻に今宵酒
<四国・松山では大葉種付花を「ていれぎ」と言い、香りと辛味があり、刺身の妻などに用いる。>
ていれぎ 12.3.11.
264 日の暮れて林道辿る春の闇 春の闇 12.3.11.
265 無灯火のぬっと現る春の闇 春の闇 12.3.11.
266 枯死の木に緑の芽吹く生命かな 芽吹く 12.3.11.
267 枯死の木の心踊らす芽吹きかな 芽吹く 12.3.11.
268 藻草生ひ物洗貝も湧き出たり 藻草生ふ 12.3.11.
269 畑打の黒地広げてトラクター 藻草生ふ 12.3.11.
270 芥子菜や荒々しき葉を湯に通す 芥子菜 12.3.11.
271 春菊や波打つ畝に仏の座 春菊 12.3.12.
272 茎立や黙々と引く畑作業 茎立 12.3.12.
273
茎立てば葉物こぞりて菜の花に
<からしな、たかな、はぼたん、キャベツ、ブロッコリー、かぶ、はくさい、
だいこん…アブラナ科の野菜は、茎立ちすると「菜の花」に戻る。>
茎立 12.3.12
274 仰向きも俯きもあり落椿 落椿 12.3.12.
275 落椿の辞世の意志や裏表 落椿 12.3.12.
276 椿にも落ちる美学の裏表 落椿 12.3.12.
277 花の向きどこで決めるや落ち椿 落椿 12.3.12.
278 突き上ぐるものの激しく猫の恋 猫の恋 12.3.12.
279 上品な恋などあらじおめく猫 恋猫 12.3.12.
280 尼寺の庫裏にも聞こゆ猫の恋
猫の恋 12.3.12.
281 耳ちぎれ修羅場を離る恋の猫 恋猫 12.3.13.
282 花玉の朱色募るや豊後梅 12.3.13.
283 花玉も小枝も朱に染む豊後梅 12.3.13.
284 春寒や孤立死といふ世の冷気 春寒 12.3.13.
285 春陰や孤立死を生む世の歪み 春陰 12.3.13.
286 たんぽぽのこころはずむやぽぽぽぽと たんぽぽ 12.3.13.
287 たんぽぽのはずむこころやぽぽぽぽと たんぽぽ 12.3.13.
288 たんぽぽや瀬音聴きつつぽぽぽぽと たんぽぽ 12.3.13.
289 たんぽぽやぽぽぽと駆けるおんなの児 たんぽぽ 12.3.13.
290 のったりと歩む影追ふ春満月 春満月 12.3.13.
291 のったりと歩むを笑ふ春満月 春満月 12.3.14.
292 草の芽の踏まれてもなほ青々と 草の芽 12.3.14.
293 菜園の境に蒔くや花の種 花の種 12.3.14.
294 伊那谷を窪溜りとし井月忌
<1887.3.10.放浪の俳人、井上井月66歳没>
井月忌 12.3.14.
295 伊那谷は窪溜りなり井月忌
<落栗の座を定めるや窪溜り 井月>
井月忌 12.3.14.
296 身を告げず酒をうつつに井月忌 井月忌 12.3.14.
297 俳と酒虱疥癬井月忌 井月忌 12.3.14.
298 井月忌ない(地震)に纏はる悲話秘めて 井月忌 12.3.14.
299 伊那谷に果てし井月春の闇 春の闇 12.3.14.
300 春セーター思ひ直して晴れの日に 春セーター 12.3.14.
301 春服の軽すぎて脱ぐ曇りの日 春服 12.3.15.
302 水草生ふ小魚喜々とかくれんぼ 水草生ふ 12.3.15.
303 カラフルに染め分けられし種を蒔く 種蒔き 12.3.15.
304 畝ごとに染め色違ふ種蒔けり 種蒔き 12.3.15.
305 畝違へ色華やかな種を蒔く 種蒔き 12.3.15.
306 種袋原色に染む種こぼる 種袋 12.3.15.
307 原色に種染められし種袋 種袋 12.3.15.
308 カラフルに種染めて売る種袋 種袋 12.3.15.
309 青赤黄蒔く種色も多彩なり 種蒔き 12.3.15.
310 髪ならぬ物種までもカラフルに 物種 12.3.15.
311 三・一一無念の一語刻むのみ 三・一一 12.3.16.
312 必要な悪などあらじ原発忌 原発忌 12.3.16.
313 末代につけを遺すや原発忌 原発忌 12.3.16.
314 三・一一遅々たるなかの一周忌 三・一一 12.3.16.
315 春寒や拭へぬ汚染こそ大禍 春寒し 12.3.16.
316 沈黙の春迎えたる里悲し 12.3.16.
317 土筆摘む人影もなき里悲し 土筆 12.3.16.
318 鎮魂の浜辺を洗ふ春の波 春の波 12.3.16.
319 牙剥かず漁場整へん春の浪 春の浪 12.3.16.
320 凍て解けや被災の人の心をも 凍て解け 12.3.16.
321 涙ぐむこころの絆三・一一 三・一一 12.3.17.
322 わが豊後ついぞ咲き初む涅槃西風
<12.3.13.開花。11年の初咲きは2月25日>
涅槃西風 12.3.17.
323 禍牛梅ついに初咲く元磨忌 元磨忌 12.3.17.
324 豊後の香太宰へ送れ涅槃西風 涅槃西風 12.3.17.
325 初花の豊後のかほり涅槃西風 涅槃西風 12.3.17.
326 数十の一気開花や豊後梅 豊後梅 12.3.17.
327 初咲きが三十一なりし豊後かな 豊後梅 12.3.17.
328 紅かすか白梅ひらく元磨忌 元磨忌 12.3.17.
329 梅の香を太宰に送る涅槃西風 涅槃西風 12.3.17.
330 紅ふくみほっこりと咲く豊後かな 豊後梅 12.3.17.
331 遅咲きの典雅漂ふ豊後梅 豊後梅 12.3.18.
332 待つ甲斐を知らしめて咲く豊後かな 豊後梅 12.3.18.
333 咲き初めし花の香伝ふ涅槃吹 涅槃吹 12.3.18.
334 楊貴妃の花の姿や豊後梅 豊後梅 12.3.18.
335 綿雲や競ふがごとく梅畑 12.3.18.
336 白梅や樹下に寄り添ふ仏の座 白梅 12.3.18.
337 昼酒や河津桜と色くらべ 12.3.18.
338 ほうれん草食んで無敵のポパイかな ほうれん草 12.3.18.
339 梅林の人みな梅の香を纏ひ 12.3.18.
340 あちこちに立ちて座りて梅見かな 梅見 12.3.18.
341 あちこちに車座できる梅林 梅林 12.3.19.
342 薄紅梅女御更衣の立居かな 紅梅 12.3.19.
343 遅梅の艶冶に咲けり尼僧寺 12.3.19.
344 誘はるる匂ひの先ぞ梅畑 12.3.19.
345 春の日やバス待つうちに打ち解けて 春の日 12.3.19.
346 種薯を二つ三つに切りて植ゆ 種薯 12.3.19.
347 春風や戸をごとごとと鳴らし行く 春風 12.3.19.
348 豊後梅踊るがごとく開きゆく 豊後梅 12.3.19.
349 咲く花に鳥影ふえる庭の梅 12.3.19.
350 つくしんぼ摘めども摘めどにょきにょきと つくしんぼ 12.3.19.
351 蜜吸ひの目白のこぼす梅の花 12.3.20.
352 花吸ひの鳥な脅しそ大鴉 12.3.20.
353 すかんぽを噛んで遊びし小川かな すかんぽ 12.3.20.
354 すかんぽや酸葉酸いぞと齧りし日 すかんぽ 12.3.20.
355 井月の筆乱るるや花見酒 花見 12.3.20.
356 年金で暮らす身なれど納税期 納税期 12.3.20.
357 鷹鳩と化して豆食む浅草寺 鷹鳩と化す 12.3.20.
358 東風連れて五分遅れのバス来たり 東風 12.3.20.
359 春の川魚影連ねる鮠の群れ 春の川 12.3.20.
360 水温み大口開ける池の鯉 水温む 12.3.20.
361 水草生ふ委細かまわず鮠速し 水草生ふ 12.3.21.
362 轟然と岩噛んでゆく春の川 春の川 12.3.21.
363 春場所や異国力士に一喜一憂 春場所 12.3.21.
364 剃り跡も女人さわぐや西行忌 西行忌 12.3.21.
365 咲き満つる吉野の山や西行忌 西行忌 12.3.21.
366 諸々に堪えて咲き継ぐシクラメン シクラメン 12.3.21.
367 鳴き声に幼さ残し巣立鳥 巣立鳥 12.3.21.
368 親の修羅ありて授かる仔猫かな 仔猫 12.3.21.
369 少年の掛けし巣箱ぞ鳥来る 巣箱 12.3.21.
370 姿消すブルートレイン百闃 百闃 12.3.21.
371 駆け足で過ぎし六年孫巣立つ 巣立 12.3.22.
372 ほうれん草色鮮やかに卵とじ ほうれん草 12.3.22.
373 鳴き声もまだ拙くて鴉の巣 鴉の巣 12.3.22.
374 児ら巣立つ別れの涙春時雨 春時雨 12.3.22.
375 春雨や六三四の塔は雲の中 春雨 12.3.22.
376 蟻穴を出でて早速獲物あり 蟻穴を出ず 12.3.22.
377 春服の古着取り出し若造り 春服 12.3.22.
378 春の服古着はどれも若造り 春の服 12.3.22.
379 春服の軽さに老ひの背を伸ばし 春服 12.3.22.
380 晩酌のオンザロックや春の水 春の水 12.3.22.
381 光る瀬にひたすら上る鮎の影 上り鮎 12.3.23.
382 上り簗掬い取られて跳ねる鮎 上り簗 12.3.23.
383 上り簗跳ねて身を打つ鮎あわれ 上り簗 12.3.23.
384 火の粉撒き歓喜が走る修仁会かな 修仁会 12.3.23.
385 ひと巡りしたり尊き涅槃像 涅槃像 12.3.23.
386 朝光を浴びつ蜜吸ふ目白かな 目白 12.3.23.
387 春の風満開の枝揺さぶりぬ 春の風 12.3.23.
388 春の風揺さぶる一花も散らざりき 春の風 12.3.23.
389 満開の花散らさじと撓る梅 12.3.23.
390 満開の梅揺すりけり風と鳥 12.3.23.
391 東風吹けど梅の一花も散らさざり 東風 12.3.24.
392 井月や酒肴佳伊那の春 12.3.24.
393 井月や居場所定めし伊那の春 12.3.24.
394 井月の世捨ての友や春虱 12.3.24.
395 伊那谷や井月が行く土筆道 土筆 12.3.24.
396 井月の千両の酒伊那の春 12.3.24.
397 襤褸切れとなりて果てたり井月忌 井月忌 12.3.24.
398 漂鳥となりて井月弥生の死 弥生 12.3.24.
399 井月の虱も目覚む伊那の春 12.3.24.
400 虱まで宝となるや井月忌 井月忌 12.3.24.
401 春めきてまた寒い日や土竜道 12.3.25.
402 菜の花や無人の駅に降りる客 菜の花 12.3.25.
403 菜の花の畑分け入るディーゼル車 菜の花 12.3.25.
404 菜の花と蝶が迎える無人駅 菜の花 12.3.25.
405 菜の花と蝶が見送るディーゼル車 菜の花 12.3.25.
406 菜の花や薄煙吐くディーゼル車 菜の花 12.3.25.
407 蚤虱井月がゆく伊那の春 12.3.25.
408 蜜を吸ふ目白の影や豊後梅 12.3.25.
409 蜜を吸ふ目白の影や梅満開 12.3.25.
410 老いらくの友の見舞いや桜餅 桜餅 12.3.25.
411 淀み抜け瀬に出てゆくや梅の花 12.3.26.
412 気ぜわしく花蜜あさる目白かな 目白 12.3.26.
413 座禅僧初音が耳に入りしか 初音 12.3.26.
414 座禅僧耳を過ぎりし初音かな 初音 12.3.26.
415 警策に和するがごとく初音して 初音 12.3.26.
416 穴出でて幹上り行く蟻のあり 蟻穴を出ず 12.3.26.
417 穴出でて幹駆け上る蟻おかし 蟻穴を出ず 12.3.26.
418 春一番吹き忘れたる彼岸かな 春一番 12.3.26.
419 春一番吹かずに過ぎし彼岸かな 春一番 12.3.26.
420 彼岸過ぎごめんごめんと春一番 春一番 12.3.26.
421 春一番春セーターを吹き抜けり 春一番
春セーター
12.3.27.
422 春セーター吹き抜けてゆく春一番 春一番
春セーター
12.3.27.
423 春一番戸袋鳴らし吹き過ぎぬ 春一番 12.3.27.
424 春一番あたふたと吹く彼岸すぎ
春一番 12.3.27.
425 理不尽を押しつけるなよ春一番 春一番 12.3.27.
426 春セーター吹き抜けてゆく南風 春セーター 12.3.27.
427 牡丹餅や大皿で食ふ彼岸かな 彼岸 12.3.27.
428 牡丹餅や母の流儀で彼岸の日 彼岸 12.3.27.
429 牡丹餅は彼岸に食みし母の味 彼岸 12.3.27.
430 牡丹餅や彼岸懐かし母の味 彼岸 12.3.27.
431 庭の梅蜜吸ふ鳥のにぎやかに 12.3.28.
432 藻の中に入ったり出たり春目高 12.3.28.
433 つくばいをふわりと過ぎし春の雲 春の雲 12.3.28.
434 種薯を縦に斜めに切って植ゆ 種薯 12.3.28.
435 木灰をまぶし種薯畝に置く 種薯 12.3.28.
436 種薯や利休鼠に灰まぶし 種薯 12.3.28.
437 種薯の切り刻まれて並ぶ畝 種薯 12.3.28.
438 種薯や切り刻まれて命継ぐ 種薯 12.3.28.
439 山茱萸の眠りを誘ふ黄の霞 山茱萸 12.3.28.
440 満開の梅小鳥待つ風情なり 12.3.28.
441 さみどりの色も味なり嫁菜飯 嫁菜飯 12.3.29.
442 目立たねど目につく花や薺咲く 薺の花 12.3.29.
443 ゆきずりの草とは見せて花薺 花薺 12.3.29.
444 蕉翁もよく見て気づく薺花 花薺 12.3.29.
445 俳聖を立ち止まらせし薺咲く 薺の花 12.3.29.
446 土埃浴びてもなほの花薺 花薺 12.3.29.
447 踏まれてもこともなき気の薺花 花薺 12.3.29.
448 われもまた薺のごとく咲き枯れぬ 花薺 12.3.29.
449 ぺんぺんと三味線弾くや花薺 花薺 12.3.29.
450 民草と相似て生きる花薺 花薺 12.3.29.
451 手桶さげ墓への道の花薺 花薺 12.3.30.
452 綿あめのごとき雲飛ぶ彼岸道 彼岸道 12.3.30.
453 新しき供花で賑ふ彼岸墓地 彼岸墓地 12.3.30.
454 彼岸みち左右に供花の居並びて 彼岸道 12.3.30.
455 墓前花みな新しき彼岸寺 彼岸寺 12.3.30.
456 どの供花も相似て並ぶ彼岸墓地 彼岸墓地 12.3.30.
457 墓碑囲み携帯で撮る彼岸かな 彼岸 12.3.30.
458 梅舞ひて池面に白き花だまり 12.3.30.
459 散る梅やひとひらずつの花の舞ひ 12.3.30.
460 ひとひらのまたひとひらの梅の散る 12.3.30.
461 永き日や泳ぎ飽きずに鯉泳ぐ 永き日 12.3.31.
462 永き日のあたかも島の遠のきて 永き日 12.3.31.
463 本開き二三ページで目借時 目借時 12.3.31.
464 風凪いで梅も花びら舞ふを止め 12.3.31.
465 山颪堪えて片栗咲く姿勢 片栗の花 12.3.31.
466 片栗の颪に揺るる花鋭角 片栗の花 12.3.31.
467 種薯に土かけてゆく育てよと 種薯 12.3.31.
468 紫陽花の枝のそれぞれ緑の芽 12.3.31.
469 艶やかに紫陽花の芽の吹き出せり 芽吹く 12.3.31.
470 風遊ぶ池面や梅の花溜まり 12.3.31.
471 高齢と仕切らるる身や春の闇 春の闇 12.4.1.
472 座禅草ふたつ並んでにらめっこ 座禅草 12.4.1.
473 つぎつぎと覗き込まるる座禅草 座禅草 12.4.1.
474 立ち止まり覗き込まるる座禅草 座禅草 12.4.1.
475 瞑想の祖師ありがたや座禅草 座禅草 12.4.1.
476 覗かれてちと恥ずかしや座禅草 座禅草 12.4.1.
477 背を丸め瞑想つづく座禅草 座禅草 12.4.1.
478 人笑ます河津桜の功徳かな 12.4.1.
479 華やぐや河津桜の花天蓋 12.4.1.
480 花重ね河津桜の夕映えり 12.4.1.
481 ときとして一陣の風ヒヤシンス ヒヤシンス 12.4.2.
482 ヒヤシンス少年愛の影曳いて ヒヤシンス 12.4.2.
483 山里の山茱萸の花霞をり 山茱萸 12.4.2.
484 薺花つくずく見れば可憐なり 12.4.2.
485 シクラメン花の命の長き花 シクラメン 12.4.2.
486 涙添へ送り送らる三月尽 三月尽 12.4.2.
487 青空に花の数珠提ぐ土佐みづき 土佐水木 12.4.2.
488 魚島や大ご馳走と鴎舞ふ 魚島 12.4.2.
489 魚島や宝の島と鴎舞ふ 魚島 12.4.2.
490 丑三つのしじまをひらり梅散りぬ 12.4.2.
491 花びらの枝離れたり春の闇 春の闇 12.4.3.
492 種芋や浪人生の無精ひげ 種芋 12.4.3.
493 ランボーや青春遠き春の闇 春の闇 12.4.3.
494 山葵田の畝たてよこに水の音 山葵田 12.4.3.
495 沐浴で穢れなき身の山葵かな 山葵 12.4.3.
496 とんび舞ひ瀬音かすかに山葵沢 山葵沢 12.4.3.
497 犬ふぐりコンパクト見る男増へ 犬ふぐり 12.4.3.
498 コンパクト覗く男や犬ふぐり 犬ふぐり 12.4.3.
499 うらら日や男客増ゆ美容院 うらら日 12.4.3.
500 化粧品息子に選ぶ母子草 母子草 12.4.3.
501 父子草母子草より寂しげに 父子草
母子草
12.4.4.
502 父子草母子草より痩せてをり 父子草
母子草
12.4.4.
503 父子草母子草より華やがず 父子草
母子草
12.4.4.
504 早蕨の綿毛を被り招きをり 早蕨 12.4.4.
505 早蕨の綿毛被りてにょきにょきと 早蕨 12.4.4.
506 早蕨の綿毛を剥げば猫招き 早蕨 12.4.4.
507 生前葬怪しく楽し平吉忌
<浅草を愛し、浅草で没した風俗作家、吉村平吉さん(1929-20053.1.)を偲ぶ会で披露した20句。野坂昭如「エロ事師たち」のモデルとして知られる。大老、井伊直弼の菩提寺、世田谷・豪徳寺の吉村家の墓に眠る。故人を偲び新季語・平吉忌>
平吉忌 12.4.4.
508 大老と背中合わせや平吉忌
<彦根藩主・井伊家の墓所と隣り合わせに墓がある。>
平吉忌 12.4.4.
509 大老に風俗語る平吉忌 平吉忌 12.4.4.
510 春はうなぎ夏はどぜうの平吉忌
<吉村平吉さんを敬愛する仲間たちで命日月の毎年3月、豪徳寺に墓参り、帰途、松陰神社の鰻割烹「一二三」で鰻、夏は吉原の遊女の投げ込み寺、浄閑寺(南千住)に参拝後、西浅草「飯田屋」のどぜう鍋で暑気払いを兼ねて、平吉さんを偲ぶ会を続けている。>
平吉忌 12.4.4.
511 江戸前の心優しき平吉忌
<東京赤坂の骨董店の長男に生まれた江戸っ子だった。>
平吉忌 12.4.5.
512 女郎にも純情尽くし平吉忌 平吉忌 12.4.5.
513 白スーツ決めてビールや平吉忌
<平さんはビール党だった。>
平吉忌 12.4.5.
514 酸狂の行きつく果てや平吉忌 平吉忌 12.4.5.
515 吉原を足抜けできず平吉忌
<浅草竜泉で没>
平吉忌 12.4.5.
516 訥々と話す江戸前平吉忌 平吉忌 12.4.5.
517 竜泉で仏になりぬ平吉忌 平吉忌 12.4.5.
518 にこにことビールに噎せる平吉忌 平吉忌 12.4.5.
519 威張るよりえばられている平吉忌 平吉忌 12.4.5.
520 粋狂の八十四年平吉忌 平吉忌 12.4.5.
521 純情の恋も数々平吉忌 平吉忌 12.4.6.
522 陋巷を終の棲家に平吉忌 平吉忌 12.4.6.
523 風俗を生真面目に生き平吉忌 平吉忌 12.4.6.
524 忙しきぐうたらの日々平吉忌 平吉忌 12.4.6.
525 墓石にビールを注ぎ平吉忌 平吉忌 12.4.6.
526 春疾風バスを呑み込む土煙 春疾風 12.4.6.
527 春嵐だいだらぼっちの灰かぐら 春嵐 12.4.6.
528 ときならぬ大音響や春疾風 春疾風 12.4.6.
529 疾風に狂喜乱舞の雪柳 雪柳 12.4.6.
530 葉と数を競ふがごとく白つばき 椿 12.4.6.
531 白無垢の沈丁の花香り立つ 沈丁花 12.4.7.
532 花馬酔木カリヨンのごと鳴るもがな 馬酔木 12.4.7.
533 鮮黄のミモザ球なし眩しけり ミモザ 12.4.7.
534 鮮黄のミモザひたすら眩しけり ミモザ 12.4.7.
535 大揺れにゆれて眩しいミモザかな ミモザ 12.4.7.
536 鮮黄に香を潜らせてミモザ咲く ミモザ 12.4.7.
537 散る梅の吹き寄せられし花溜まり 12.4.7.
538 烈風にひたすら耐えて花辛夷 辛夷 12.4.7.
539 枝揺らす風に我慢の花辛夷 辛夷 12.4.7.
540 春疾風過ぎしあしたのうつらうつら 春疾風 12.4.7.
541 ランボーの身近だった日春愁ひ 春愁 12.4.8.
542 水切りの石走りゆき初雲雀 初雲雀 12.4.8.
543 セシウムを赤く染めれば日本地図 12.4.8.
544 春嵐土ぼこり舞ひセシウム舞ふ 春嵐 12.4.8.
545 ガチャ玉で原稿閉じゐる春の宵 春の宵 12.4.8.
546 春蝉や唐揚げのまま羽ばたきぬ 春蝉 12.4.8.
547 春蝉や唐揚姿で飛翔せり 春蝉 12.4.8.
548 男でも女でもなし春は秘事 12.4.8.
549 亀が鳴き藪医者もまた経を誦む 亀鳴く 12.4.8.
550 霧吹きの隠し技あり春障子 春障子 12.4.8.
551 一匹の虫水死せり春の海 春の海 12.4.9.
552 男濡れ女を濡らす春の雨 春雨 12.4.9.
553 春の駅立ち喰いそばに哲学す 12.4.9.
554 種芋や浪人生の薄化粧 種芋 12.4.9.
555 人食った話の後で目刺焼く 目刺 12.4.9.
556 春蝉や唐揚げのまま羽ばたきぬ 春蝉 12.4.9.
557 春蝉や唐揚姿で飛翔せり 春蝉 12.4.9.
558 うらら日や老眼鏡のねじ弛む 麗日 12.4.9.
559 末黒野(すぐろの)や緑の若芽湧き立てり 末黒野 12.4.9.
560 女人句会花柄の杖とりどりに 12.4.9.
561 花柄の杖並べれば春の季語 花、春 12.4.10.
562 ちょっと遊ぼ悪戯俳句春うらら 春、うらら 12.4.10.
563 末黒野を初蝶の翅ひらひらと 末黒野、
初蝶
12.4.10.
564 恋の場は末黒野なりし汚れ猫 末黒野 12.4.10.
565 薺の字まさになずなの姿かな 12.4.10.
566 春荒れや赤提灯を引き裂きぬ 春荒 12.4.10.
567 春荒れに赤提灯の走る路地 春荒 12.4.10.
568 春荒れや空海陸を黙らせて 春荒 12.4.10.
569 花といふ花滅多打ち春嵐 春嵐 12.4.10.
570 列島を叩き伏せたり春疾風 春嵐 12.4.10.
571 家揺すり雨叩きつく春嵐 春嵐 12.4.11.
572 春嵐鶏舎の鶏もずぶぬれに 春嵐 12.4.11.
573 自転車のドミノ倒しや春嵐 春嵐 12.4.11.
574 どの傘もおちょこにするや春嵐 春嵐 12.4.11.
575 雨嵐やはり一過でうらら日に うらら 12.4.11.
576 列島を暴れて過ぎる春嵐 春嵐 12.4.11.
577 被災地を痛めて過ぎる春嵐 春嵐 12.4.11.
578 春疾風鳥はとっくに巣に隠れ 春疾風 12.4.11.
579 春台風予報に違わず走り抜け 12.4.11.
580 春台風桜の前を露払い 12.4.11.
581 春台風寄らば大樹も軋むなり 12.4.12.
582 トラックもころりころがし春疾風 春疾風 12.4.12.
583 樹の個性見せて桜の咲き初めり 12.4.12.
584 咲き初めは樹に遅速ある桜かな 12.4.12.
585 日の出山降り道飾る花馬酔木 馬酔木 12.4.12.
586 春の鳥なれど鴉のしたり顔 春の鳥 12.4.12.
587 樹の上の囀り下の長話 囀り 12.4.12.
588 春の夢ふたりはともにハイティーン 12.4.12.
589 満開で気付く桜の樹の多さ 12.4.12.
590 桜咲く枯木に花の瞬間芸 12.4.12.
591 街中に白煙あげる桜かな 12.4.13.
592 一斉に開花の合図さくら咲く 12.4.13.
593 ランナーも景に取り込む桜かな 12.4.13.
594 能面に笑み走らせて桜咲く 12.4.13.
595 一二三掛け声合わせ咲く桜 12.4.13.
596 武士(もののふ)や羽衣纏ひ花を舞ふ 12.4.13.
597 さくら咲く天の羽衣打ち重ね 12.4.13.
598 羽衣を連ねてゆくやさくら道 12.4.13.
599 しろたへの花吹雪舞ふ宴かな 花吹雪 12.4.13.
600 花の宴ワイングラスにさくらかな 花の宴 12.4.13.
601 満開のさくらと競ふ人の波 12.4.14.
602 花吹雪池面を埋む花筏 花吹雪 12.4.14.
603 花吹雪池面に舞ひて花筏 花吹雪 12.4.14.
604 桜蘂(しべ)ふりて紅刷く並木道 桜蘂降る 12.4.14.
605 ほの赤く桜蘂ふる並木道 桜蘂降る 12.4.14.
606 蘂のみの桜並木や紅の道 桜蘂降る 12.4.14.
607 人こぞり咲いた咲いたの一季節 12.4.14.
608 誰も彼も咲いた咲いたの桜かな 12.4.14.
609 さくら咲き総花好きになる季節 12.4.14.
610 さくらなど一顧だにせぬ輩もいて 12.4.14.
611 撒く灰に待ったのかかる花咲爺 12.4.15.
612 花が舞ひ季節は一つ回りけり 12.4.15.
613 花むしろブルーシートといまは言ふ 花筵 12.4.15.
614 今様はブルーシートの花筵 花筵 12.4.15.
615 車座を立たんと尻もち花疲れ 花疲れ 12.4.15.
616 車座の折り重なりて花見かな 花見 12.4.15.
617 花人の身をよじり待つ長い列 花人 12.4.15.
618 アンニュイの言葉懐かし春愁ひ 春愁ひ 12.4.15.
619 熊蜂の重々しくもホバリング 熊蜂 12.4.15.
620 浮遊する鉄球となりて熊ン蜂 熊蜂 12.4.15.
621 仏生会来るたび妻は歳を取り 仏生会 12.4.16.
622 花韮の紫白と咲き競ふ 花韮 12.4.16.
623 花韮や白と紫それぞれに 花韮 12.4.16.
624 道の端に花韮が咲く遊歩道 花韮 12.4.16.
625 花韮や神楽囃子の聞こへけり 花韮 12.4.16.
626 花韮や神楽囃子の笛太鼓 花韮 12.4.16.
627 木漏れ日に花韮の花現るる 花韮 12.4.16.
628 そよ風の吹くを気付かす雪柳 雪柳 12.4.16.
629 雪やなぎ神楽囃子に揺れるかな 雪柳 12.4.16.
630 柔らかにときに波立つ雪柳 雪柳 12.4.16.
631 雪やなぎ風招かんと枝揺るる 雪柳 12.4.17.
632 連翹のてんでばらばら花明り 連翹 12.4.17.
633 連翹やあっち向いてほいの花明り 連翹 12.4.17.
634 連翹や無秩序のまま花盛り 連翹 12.4.17.
635 連翹を挿せば花器まで花明り 連翹 12.4.17.
636 はくれんの花天を向き開花待つ 白木蓮 12.4.17.
637 はくれんの花蒼天を画しをり 白木蓮 12.4.17.
638 はくれんや蒼天抉るごとく咲く 白木蓮 12.4.17.
639 白映ゆる大島桜屹立す 12.4.17.
640 豊艶な色香に噎せて桃の花 桃の花 12.4.17.
641 散り際も量りしごとく桜咲く 12.4.18.
642 咲く美学散る美学ある桜かな 12.4.18.
643 鐘楼に花そえている桜かな 12.4.18.
644 読本のさいたさくらも懐かしく 12.4.18.
645 読本でさいたさくらを読んだころ 12.4.18.
646 散る覚悟ありて花咲く桜かな 12.4.18.
647 散る覚悟ありて美し桜かな 12.4.18.
648 散る覚悟ありて桜の美しき 12.4.18.
649 咲くときも散るも一気の桜かな 12.4.18.
650 花びらの美しきまま散る桜 12.4.18.
651 花びらの美しきまま桜散り 12.4.19.
652 花のあと蘂を散らして逝くさくら 12.4.19.
653 花ちらし蘂を散らして逝くさくら 12.4.19.
654 うなじ垂れ酔い醒ますかの花海棠 花海棠 12.4.19.
655 海棠や微醺の貴妃のごとく揺れ 花海棠 12.4.19.
656 花海棠紅にじませて二日酔ひ 花海棠 12.4.19.
657 山深く船の墓場や錨草 錨草 12.4.19.
658 かたまりて風除けてゐる錨草 錨草 12.4.19.
659 菊桃の花重なりて空を染む 12.4.19.
660 姫こぶし十二単を脱ぐしぐさ 辛夷 12.4.19.
661 富貴草根方を埋めて静かなり 富貴草 12.4.19.
662 野の菫ところ選ばず咲く風情 12.4.19.
663 山芍薬意表をついて咲く山路 山芍薬 12.4.19.
664 紅色もポップと言ふべし花海棠 花海棠 12.4.19.
665 カリヨンになりたしと咲く馬酔木かな 馬酔木 12.4.19.
666 枝つかみ揺すれば鳴るや花馬酔木 馬酔木 12.4.19.
667 つまみ菜の茎ぽきぽきと折る春日 春日 12.4.19.
668 花筏風吹く方へ延びにけり 花筏 12.4.19.
669 山芍薬山路に見つけ一休み 山芍薬 12.4.19.
670 放射線柳絮のごとく見えもせば 柳絮 12.4.19.
671 チューリップ畑の主のセンス問ふ チューリップ 12.4.20.
672 ひたすらに空見つづけるチューリップ チューリップ 12.4.20.
673 花びらが花びら支ふチューリップ チューリップ 12.4.20.
674 支へ合う花びらこそのチューリップ チューリップ 12.4.20.
675 園児にも姿描けしチューリップ チューリップ 12.4.20.
676 チューリップ紛ふことなき花姿 チューリップ 12.4.20.
677 チューリップ色を個性に生きにけり チューリップ 12.4.20.
678 砺波ではどこまで行ってもチューリップ チューリップ 12.4.20.
679 美田とはチューリップ畑こそふさわしき チューリップ 12.4.20.
680 チューリップ花寄せ合ってひそひそと チューリップ 12.4.20.
681 色帯や砺波平野のチューリップ チューリップ 12.4.21.
682 チューリップ幼子も知る有名人 チューリップ 12.4.21.
683 チューリップ幼児も好きな赤黄色 チューリップ 12.4.21.
684 日を浴びてうつらうつらや亀鳴けり 亀鳴く 12.4.21.
685 歳の功だけとは寂し亀鳴けり 亀鳴く 12.4.21.
686 耳なりに気付きし夜更け亀鳴けり 亀鳴く 12.4.21.
687 耳鳴りに頭を振れば亀鳴くや 亀鳴く 12.4.21.
688 耳なりのじいじいのなか亀鳴けり 亀鳴く 12.4.21.
689 亀鳴くか耳鳴る音と分け難し 亀鳴く 12.4.21.
690 亀鳴くやいま聞こへしは腹の虫 亀鳴く 12.4.21.
691 桂郎や亀裏返し鳴かせたり
<石川佳郎の有名句 裏がへる亀思ふべし鳴けるなり>の対句として詠む。>
亀鳴く 12.4.22.
692 腹の虫ぐぐぐと鳴れり亀も鳴く 亀鳴く 12.4.22.
693 たらの芽や採るなとばかり太いとげ 多羅の芽 12.4.22.
694 あわてるや指に血を吹く多羅新芽 多羅の芽 12.4.22.
695 やわらかに緑しだれる糸柳 糸柳 12.4.22.
696 池の面に裾引き摺りし糸柳 糸柳 12.4.22.
697 池の鯉ひょいひょいと呼ぶ柳かな 12.4.22.
698 パソコンのキイ打つ耳に春の雷 春雷 12.4.22.
699 春雷の遠慮勝ちなる昼下がり 春雷 12.4.22.
700 思い出すころにまた鳴る春の雷 春雷 12.4.22.
701 春雷や肩凝りほぐす重低音 春雷 12.4.23.
702 どろどろと祭太鼓や春の雷 春雷 12.4.23.
703 三椏(みつまた)や小花集めて一花なす 三椏 12.4.23.
704 三椏や一花と見れば群花なり 三椏 12.4.23.
705 三椏や黄花橙花競い咲く 三椏 12.4.23.
706 三椏の花咲く店や串団子 三椏 12.4.23.
707 三椏の花頷いて風招く 三椏 12.4.23.
708 三椏の花咲く庭や緋毛氈 三椏 12.4.23.
709 三椏の三つ三つと花の珠 三椏 12.4.23.
710 白無垢の沈丁見つけ香をかげり 沈丁花 12.4.23.
711 枝ごとに鎖を垂らす花木ぶし 木ぶしの花 12.4.24.
712 花木ぶし鎖を雨滴走りけり 木ぶしの花 12.4.24.
713 木ぶし咲く花の鎖が幾すじも 木ぶしの花 12.4.24.
714 花穂垂れてふと気づかせる木ぶしかな 木ぶしの花 12.4.24.
715 庭で聴く鶯の声整へり 12.4.24.
716 仕上がりの鳴き音を聞かす匂ひ鳥 鶯・匂い鳥 12.4.24.
717 一輪はやや控えめに二輪草 二輪草 12.4.24.
718 連れのない花もあるなり二輪草 二輪草 12.4.24.
719 三輪の親子と見ゆる二輪草 二輪草 12.4.24.
720 晩酌の肴は海雲(もづく)掬ひけり 海雲 12.4.24.
721 切り刻み植えたる薯の葉を広ぐ 薯植う 12.4.25.
722 春の畑茎ぽきぽきとかき菜摘む 春の畑 12.4.25.
723 高曇る空の薄紅糸桜 糸桜 12.4.25.
724 曇り日をほの明るませ糸桜 糸桜 12.4.25.
725 しなやかに枝垂れ桜の紅霞む 枝垂れ桜 12.4.25.
726 菜の花やちょっと小振りのちんげん采 菜の花 12.4.25.
727 葱坊主見つけては摘む畑仕事 葱坊主 12.4.25.
728 葱坊主欠き取ることも農作業 葱坊主 12.4.25.
729 苗札のゴールドラッシュに頬ゆるみ 苗札 12.4.25.
730 春菊や切り取りてまた切り取りて 春菊 12.4.25.
731 細き葉を散らして丸いクロッカス クロッカス 12.4.26.
732 クロッカス花引き立てて三頭身 クロッカス 12.4.26.
733 血しぶきと怯ませて咲く緋木瓜かな 木瓜 12.4.26.
734 近道の路地の生垣更紗木瓜 木瓜 12.4.26.
735 濃淡の花に虫呼ぶ更紗木瓜 木瓜 12.4.26.
736 呆けと木瓜なぜかおかしく緋木瓜咲く 木瓜 12.4.26.
737 大地震今日か明日かと春愁ひ 春愁ひ 12.4.26.
738 木漏れ日に一人静は陰を取り 一人静 12.4.26.
739 二人静木の間隠れに静かなり 二人静 12.4.26.
740 群れ咲けど二人静の影薄く 二人静 12.4.26.
741 青空と同じ色なり筆竜胆 筆竜胆 12.4.27.
742 行き戻り改めて見る春竜胆 春竜胆 12.4.27.
743 死に仕度なかなかできず紫木蓮
(死に仕度致せ致せと桜哉 一茶 の対句として詠む)
木蓮 12.4.27.
744 忘れ名を都忘れと思い出し 都忘れ 12.4.27.
745 花と花頬寄せ合いし筆竜胆 筆竜胆 12.4.27.
746 葱坊主頭に揚羽とめてをり 葱坊主 12.4.27.
747 春惜しむ旅あきらめて人恋し 春惜しむ 12.4.27.
748 石楠花や藪漕ぎすれば血の滲み 石楠花 12.4.27.
749 苧環(おだまき)の路山頂に続くなり 苧環 12.4.27.
750 苧環の花色淡き奥秩父 苧環 12.4.27.
751 をだまきの風に首振る夕間暮れ 苧環 12.4.28.
752 鯉のぼり泳ぎ始めて四月尽 四月尽 12.4.28.
753 山吹や枝揺るるたび花おどり 山吹 12.4.28.
754 ねこ猫背たしかに猫背春の昼 春の昼 12.4.28.
755 眠る猫たしかに猫背春の昼 春の昼 12.4.28.
756 種芋や芭蕉の歩く伊賀の里 種芋 12.4.28.
757 春愁ひ俳句の境地ツイッター 春愁ひ 12.4.28.
758 ブラウスの乳房撥ね上ぐ半仙戯
<半仙戯=ブランコ 春の季語>
半仙戯 12.4.28.
759 やわらかな丸き乳房や母子草 母子草 12.4.28.
760 裸婦像の乳房を撫ぜて春の風 春の風 12.4.28.
761 鬚生えて胸ふくらみて人の春 12.4.29.
762 乳房吸ふものみな可愛春うらら 12.4.29.
763 亀鳴いて蚯蚓鳴く日のあるもがな 亀鳴く 12.4.29.
764 涸れ枝に吹き出す若葉梅坊主 梅若葉 12.4.29.
765 吹き出せし若葉の横に梅坊主 梅若葉 12.4.29.
766 梅若葉剃り跡青き小坊主も 梅若葉 12.4.29.
767 鉄幹の若葉を濡らす春しぐれ 春時雨 12.4.29.
768 耳鳴りの音責め立てる春の闇 春の闇 12.4.29.
769 耳鳴りや春のすだきと居直らん 12.4.29.
770 エアコンの暖を点ずる春しぐれ 春時雨 12.4.29.
771 フェンス越え地に向かいたる蔦若葉 蔦若葉 12.4.30.
772 ゆく春や酒を切らして落ち着かず 行く春 12.4.30.
773 春惜しむ旅あきらめて独り酒 春惜しむ 12.4.30.
774 永き日の水飲み鳥のお辞儀かな 永き日 12.4.30.
775 春の闇埴輪の深き眼窩かな 春の闇 12.4.30.
776 ジーパンにスマートフォンの遍路かな 遍路 12.4.30.
777 バス連ね賑やかに行く遍路ツアー 遍路 12.4.30.
778 住職の器量が分かる遍路寺 遍路 12.4.30.
779 水中の影夥し蝌蚪(かと)の群れ 蝌蚪(おたまじゃくし)
12.4.30.
780 四分音符ばらまいてゐる蝌蚪の群れ 蝌蚪 12.4.30.
781 四分音符ドレミファソラシ蝌蚪泳ぐ 蝌蚪 12.5.1.
782 チューリップ目立つ女に相似たり チューリップ 12.5.1.
783 握る手をぬるっと抜けし池の鯉 12.5.1.
784 春の午後少年長き吐息つく 12.5.1.
785 少年の深き吐息や春の暮 春の暮 12.5.1.
786 ひかがみを躍らせ下校の一年生 12.5.1.
787 豆の花ついと離れる蝶一羽 豆の花
12.5.1.
788 ほつれ髪胸乳の疼く春の宵 春の宵 12.5.1.
789 春風や胸乳豊かに観世音 春風 12.5.1.
790 古美術になりし仏の春愁ひ 春愁 12.5.1.
791 乳房こそ春には春の武器となり 12.5.2.
792 群青の咲き揃ひたる燕子花 燕子花 12.5.2.
793 回遊の池端鮮やか燕子花 燕子花 12.5.2.
794 香華なき古美術仏や春時雨 春時雨 12.5.2.
795 石仏の古拙の笑みや春の昼 春の昼 12.5.2.
796 燕子花早や咲き初めて四月尽 燕子花 12.5.2.
797 光琳の意匠光るや燕子花 燕子花 12.5.2.
798 春更の厠を戻り夢続く 春更く 12.5.2.
799 チャコールの小花粋なり花青木 青木の花 12.5.2.
800 江戸小紋思わす粋や花青木 青木の花 12.5.2.
801 その男ゾルバ見終へて荷風の忌 荷風忌
(4月30日)
12.5.3.
802 飛燕の技見せて過ぎりしつばくらめ 12.5.3.
803 青山のブランド通り春の雨 春の雨 12.5.3.
804 三年を生きて七匹しろめだか 目高 12.5.3.
805 白目高釘打つごとく泳ぎをり 目高 12.5.3.
806 洗ひ髪乾きゆく間の一句かな 洗ひ髪 12.5.3.
807 園庭の緑の池辺かきつばた 燕子花 12.5.3.
808 逆落とし起伏を走るシャワー浴ぶ シャワー 12.5.3.
809 ジョッキーの音響き合ふビヤホール ビヤホール 12.5.3.
810 生ビールどこに入るや三杯目 生ビール 12.5.3.
811 夕焼けに富士黒々と浮き出せり 夕焼け 12.5.4.
812 洗顔の水心地よし五月来ぬ 五月 12.5.4.
813 麦秋を詠みたけれども麦田消え 麦秋 12.5.4.
814 ミニからの素脚まぶしく五月来ぬ 五月 12.5.4.
815 乙女らの素足眩しき夏は来ぬ 12.5.4.
816 夏富士や遠見を競ふ六三四の塔 12.5.4.
817 右巻も左もありて捩じり花 捩花
文字摺草
12.5.4.
818 もじずりの捩じり違へる右左 文字摺草 12.5.4.
819 芍薬のなぜと問はらば立ち姿 芍薬 12.5.4.
820 筍飯煮物和えもの汁までも 筍飯 12.5.4.
821 湯気上る蕗の煮物は鰹だし 12.5.5.
822 三杯酢潜りし蕗のしゃきしゃきと 12.5.5.
823 蚕豆や殻皿いらぬ柔らかさ 蚕豆 12.5.5.
824 筍やずしりと重き宅配便 12.5.5.
825 踊子草百万本の放置畑 踊子草 12.5.5.
826 休耕の畑埋め尽くし踊子草 踊子草 12.5.5.
827 白牡丹衣の重ねをくづしけり
<「春耕」5月号課題詠(牡丹) 秀逸を取る>
牡丹 12.5.5.
828 春を閉む接骨木(にわとこ)の花霞をり 接骨木の花 12.5.5.
829 白霞む接骨木の花四月尽 接骨木の花 12.5.5.
830 そこまでも言ふかと屁糞葛かな 屁糞葛 12.5.5.
831 簗の上わしづかみする命かな 12.5.6.
832 簗に立ち掬ふつもりが掬はれて 12.5.6.
833 簗しぶき魚とともに浴びにけり 12.5.6.
834 薫風に魂載せて目高逝く 風薫る
目高
12.5.6.
835 三年を生きし目高や二匹死す 目高 12.5.6.
836 暑かーと乙女の叫ぶ炎暑の日 炎暑 12.5.6.
837 暑かーと乙女もおらぶ炎暑かな 炎暑 12.5.6.
838 燕子花緑青の葉の清和なり 燕子花 12.5.6.
839 上水の流れも踊る五月来ぬ 五月 12.5.6.
840 噴水を涼しと見上ぐ五月来ぬ 五月 12.5.6.
841 公園の半袖増えし五月かな 五月 12.5.7.
842 大手ひろげ吾を迎える五月かな 五月 12.5.7.
843   一列に並んで咲けり葱の花   葱の花 12.5.7.
844 女医さんもマスク外して立夏かな 立夏 12.5.7.
845 薫風にジャズのリズムや花水木 風薫る 12.5.7.
846 花水木追いかけて咲く山法師 花水木
山法師
12.5.7.
847 コルトレーン深夜に聴くや山法師 山法師 12.5.7.
848 コルトレーン薫風入れて聴く夜かな 風薫る 12.5.7.
849 そっと触れたちまち寝入るねむり草 眠草 12.5.7.
850 薫風に箱庭の人動きけり 風薫る 12.5.7.
851 薫風に箱庭の人動くかな 風薫る 12.5.8.
852 面妖な容姿を見せて花通草(はなあけび) 花通草 12.5.8.
853 道草を食へば日暮れの花通草 花通草 12.5.8.
854 みどりの日金婚となる共白髪 みどりの日 12.5.8.
855 生きる術寄らば大樹の花通草 花通草 12.5.8.
856 ロリコンの衣裳に似たり著莪の花 著莪の花 12.5.8.
857 花著莪や意匠凝らして藪のなか 著莪の花 12.5.8.
858 夫の手の熱きに触れし多佳子の忌 多佳子忌 12.5.8.
859 佳人にも疼く春情多佳子の忌 多佳子忌 12.5.8.
860 釣鐘草ひょいと出てきた蟻二匹 釣鐘草・蟻 12.5.8.
861 楊貴妃と呼ばる牡丹の揺らぎかな 牡丹 12.5.9.
862 牡丹百花眺めゐるうち咽びけり 牡丹 12.5.9.
863 白牡丹衣の重ねの崩るるや 牡丹 12.5.9.
864 白牡丹衣の重ねのくづれけり 牡丹 12.5.9.
865 衣衣の重ねを解きし牡丹かな 牡丹 12.5.9.
866 そこまでも言ふかと屁糞葛かな 屁糞葛 12.5.9.
867 メーデーの高揚のころ懐かしく メーデー 12.5.9.
868 メーデーや勝ち取る夢のありしころ メーデー 12.5.9.
869 茗荷の子見つけてうれし庭の隅 茗荷の子 12.5.9.
870 抜きかけてはっと気付くや茗荷の子 茗荷の子 12.5.9.
871 あそこにもここにも背伸ぶ茗荷の子 茗荷の子 12.5.10.
872 ビートルズ愛こそすべて風薫る 風薫る 12.5.10.
873 レッツシング愛こそすべて風薫る 風薫る 12.5.10.
874 All you need is love風薫る 風薫る 12.5.10.
875 風薫る愛こそすべてビートルズ 風薫る 12.5.10.
876 初夏の池ものあら貝の増えに増え 初夏 12.5.10.
877 紅薔薇の蕾燃え立つファンファーレ 薔薇 12.5.10.
878 池あふれ逃げ出す目高手に掬ふ 目高 12.5.10.
879 善意など誤解の牙で砕く雷 12.5.10.
880 茄子トマト苗植え付けて背を伸ばし 茄子
トマト
12.5.10.
881 鯉のぼり風の意のまま靡きをり 鯉のぼり 12.5.11.
882 裏通り眼の癒さるる柿若葉 柿若葉 12.5.11.
883 白から黄うつろひ哀しすいかずら(忍冬) 忍冬 12.5.11.
884 むせ返る男の香り栗の花 栗の花 12.5.11.
885 花栗の香に乙女らの胸さわぐ 栗の花 12.5.11.
886 卯の花の枝広げたる下に谷 卯の花
空木
12.5.11.
887 青空に浮かぶ雲あり鯉のぼり 鯉のぼり 12.5.11.
888 留め金の錆の歳月鯉のぼり 鯉のぼり 12.5.11.
889 薫風を腹いっぱいに鯉のぼり 鯉のぼり 12.5.11.
890 青梅になに語りかく鯉のぼり 鯉のぼり 12.5.11.
891 梅若葉そよぎて泳ぐ鯉のぼり 鯉のぼり 12.5.12.
892 ベランダでだだ捏ねている鯉のぼり 鯉のぼり 12.5.12.
893 腹の中までもずぶ濡れ鯉のぼり 鯉のぼり 12.5.12.
894 雷も轟く雨の鯉のぼり 鯉のぼり 12.5.12.
895 鯉のぼり真似て口開く池の鯉 鯉のぼり 12.5.12.
896 雨に濡れ一束となる鯉のぼり 鯉のぼり 12.5.12.
897 紅薔薇に負けじと緋鯉こどもの日 薔薇 12.5.12.
898 こどもの日原発ゼロを生かすべし こどもの日 12.5.12.
899 原発ゼロ知恵試さるる夏来たり 夏来る 12.5.12.
900 原発ゼロ祝ふがごとく薔薇開く 薔薇 12.5.12.
901 原発ゼロ再稼働せぬ夏の知恵 12.5.13.
902 原発ゼロ夏を越えたらさていかに 12.5.13.
903 けたたまし音も立てずに糸とんぼ 糸とんぼ 12.5.13.
904 糸とんぼただゆらゆらと飛翔せり 糸とんぼ 12.5.13.
905 雛罌粟やろくろっ首のごとき花 雛罌粟 12.5.13.
906 他の木々に被さり咲けりすひかづら すいかづら 12.5.13.
907 細き蔓ゆるぎを見せず鉄線花 鉄線花 12.5.13.
908 山の路ひと息つかん山法師 山法師 12.5.13.
909 簗の上わしづかみする命かな 簗・魚簗 12.5.13.
910 簗に立ち掬ふつもりが掬はれて 簗・魚簗 12.5.13.
911 簗しぶき魚とともに浴びにけり 簗・魚簗 12.5.14.
912 八国の山裾埋む花菖蒲 花菖蒲 12.5.14.
913 花びらのひらひらと揺れ花菖蒲 花菖蒲 12.5.14.
914 花菖蒲思ひ思ひに揺れており 花菖蒲 12.5.14.
915 花菖蒲色色々に競いけり 花菖蒲 12.5.14.
916 縦横に水路走らせ菖蒲園 菖蒲 12.5.14.
917 そよ風に揺れ方違ふ花菖蒲 花菖蒲 12.5.14.
918 そよ風に動かぬもある花菖蒲 花菖蒲 12.5.14.
919 花筵広げて見せる菖蒲園 菖蒲園 12.5.14.
920
菖蒲田や水路を走るみずすまし 菖蒲田 12.5.14.
921 花菖蒲水路に映る飛行雲 花菖蒲 12.5.5
922 翡翠の来る池もあり菖蒲園 菖蒲園 12.5.5
923 江戸の人いのちを懸けし花菖蒲 花菖蒲 12.5.5
924 水馬(あめんぼう)潜りもならず滑るのみ 水馬(あめんぼう) 12.5.5
925 まひまひの何狂おしく回るかな 鼓虫(まひまひ)・水澄 12.5.5
926 みずすまし何狂おしく回るかな 水澄(みづすまし) 12.5.5
927 目高死す忽然と逝く流儀かな 目高 12.5.5
928 七年の闇から抜けて蝉唄ふ 12.5.5
929 仰向けにじいとひと鳴き蝉逝けり 12.5.5
930
空蝉や源氏の涙背を濡らす 空蝉 12.5.5
931 蝉鳴くや七日かぎりの嫁捜し 12.5.6
932 母の日やお袋の味五目飯 母の日 12.5.6
933 母の日やカレー懐かしメリケン粉 母の日 12.5.6
934 母の日にメリケン粉入りカレー汁 母の日 12.5.6
935
若葉して老鉄幹も華やぎぬ 若葉 12.5.6
936 紛れきて一輪咲けり長実雛罌粟 雛罌粟 12.5.6
937 勝手咲き長実雛罌粟自在なり 雛罌粟 12.5.6
938 目高らが餌に飛びつく若葉風 目高・若葉風 12.5.6
939 葉を重ね庭隅埋める鴨足草(ゆきのした) 鴨足草(ゆきのした) 12.5.6
940 あらごめん踏んでしもうた雪の下 雪の下 12.5.6
941 ごつい葉に花可憐なり虎耳草(ゆきのした) 虎耳草(ゆきのした) 12.5.7
942 ごつい葉に粋なリボンや雪の下 雪の下 12.5.7
943 葉を剥がす手ぎは難し柏餅 柏餅 12.5.7
944 柏餅つぶこしみそと食べにけり 柏餅 12.5.7
945 柏餅つぶこしみそと皆美味し 柏餅 12.5.7
946 柏餅われは三種派つぶこしみそ 柏餅 12.5.7
947 顔のしみ年輪と思ふ若葉風 若葉風 12.5.7
948 明日のこと思はず生きる目高かな 目高 12.5.7
949 目高並み明日思はざる人もゐて 目高 12.5.7
950 延々と流れるツイット健吉忌 健吉忌 12.5.7
951 紫陽花の青葉茂りて満を持す 紫陽花 12.5.8
952 子かまきり生まれながらに凄みけり 蟷螂・かまきり 12.5.8
953 早よ熟し口吸はるべし青鬼灯 青鬼灯 12.5.8
954 ががんぼのすべてに長き造りかな ががんぼ 12.5.8
955 ぼうふらの耳目鋭く沈みけり ぼうふら 12.5.8
956 ぼうふらや浮かび沈みつ出番待つ ぼうふら 12.5.8
957 布袋草池面を埋めて花笑ふ 布袋草 12.5.8
958 緑陰や胸乳豊かに観世音
緑陰 12.5.8
959 花魁の外八の字の素足かな 素足 12.5.8
960 湯の町のそぞろ歩きの浴衣かな 浴衣 12.5.8
961 炎帝の股を潜りし暑さかな 炎帝 12.5.9
962 箱庭の流れに釣りの男立つ 箱庭 12.5.9
963 釣堀や無言の行の男たち 釣堀 12.5.9
964 夏場所やちょん髷もゐる総武線 夏場所 12.5.9
965 ちょん髷が通勤電車に乗る五月 五月 12.5.9
966 ちょん髷が電車で通ふ五月場所 五月場所 12.5.9
967 両国は鬢付けの香や五月場所 五月場所 12.5.9
968 砂かぶりいい女いる五月場所 五月場所 12.5.9
969 目高には明日憂ふことなかりけり 目高 12.5.9
960 羨まし明日の憂ひのなき目高 目高 12.5.9
971 ぽっかりと浮いて終はりの目高かな 目高 12.5.10
972 夜の闇はさみで切れば若葉風 若葉風 12.5.10
973 どこやらか余花の一片舞ひ込めり 余花 12.5.10
974 六三四の塔そっと触れゆく若葉風 若葉風 12.5.10
975 流鏑馬に青春の似て柿若葉 柿若葉 12.5.10
976 君が好き君だけが好き若葉風 若葉風 12.5.10
977 薔薇の香の満ちて女の香も満てる 薔薇 12.5.10
978 紅薔薇の妖艶忘じ難き罪 薔薇 12.5.10
979 唇のルージュが光る薔薇一枝 薔薇 12.5.10
980 ストローにルージュ残して若葉風 若葉風 12.5.10
981 柿若葉透けて輝く薄緑 柿若葉 12.5.11
982 遠雷に耳を澄ませつ雨戸閉め 12.5.11
983 遠雷を伝へて雨の繁くなり 12.5.11
984 遠雷やさて遠吠えのツイッター 12.5.11
985 起こし方知らずに触れしねむり草 眠草 12.5.11
986 触れし後起こす術なし眠草 眠草 12.5.11
987 眠れぬ夜指を瞼に眠草 眠草 12.5.11
988 湯の町のそぞろ歩きの浴衣かな 浴衣 12.5.11
989 青臭き青春想ふ蛍篭 蛍篭 12.5.11
990 青春の青臭き香や蛍篭 蛍篭 12.5.11
991 青臭き匂ひ残れる蛍篭 蛍篭 12.5.12
992 蛍篭嗅いでみるべし蛍の香 蛍篭・蛍 12.5.12
993 明滅を終へて蛍の青臭き 12.5.12
994 したたかに長実雛罌粟自在なり 雛罌粟 12.5.12
995 葱坊主ここにもいると呼びにけり 葱坊主 12.5.12
996 指先で摘まみつ捨てつ葱坊主 葱坊主 12.5.12
997 畝わきに点々と捨つ葱坊主 葱坊主 12.5.12
998 葱坊主天ぷらに揚げ独り酒 葱坊主 12.5.12
999 原発の思惑うろん葱坊主 葱坊主 12.5.12
1000 つけ残る原発うろん葱坊主 葱坊主 12.5.12



♪BGM:Chopin[Nocturne8]arranged by Pian♪

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