鈴童の遊び
一日十句以上を千句詠む

(第6回)


季語 作句日
畑土に胡坐をかきし赤蕪 12.12.2.
赤蕪を担ぎ上げたる霜柱 蕪・霜柱 12.12.2.
赤蕪の摘まめばひょいと土を抜け 12.12.2.
腰浮かし抜かるを待てり赤蕪 12.12.2.
九条ねぎ抜かれて並ぶ柳腰 12.12.2.
木の葉散る暗闇坂の道暗し 木の葉散る 12.12.2.
舞ひ落ちて木の葉つつつと走りけり 木の葉 12.12.2.
無患子の実を探しつつ掃く落葉 落葉 12.12.2.
さらさらと木の葉時雨の止めどなし 木の葉時雨 12.12.2.
10 里山で吾に呼びかく冬の鵙 冬の鵙 12.12.2.
11 里山の吾を仲間に冬の鵙 冬の鵙 12.12.3.
12 ゆさゆさと羽音残して寒鴉 寒鴉 12.12.3.
13 寒朝や雌呼ぶ鳩の声野太 寒朝 12.12.3.
14 凩を蹴散らして行くダンプカー 12.12.3.
15 ちゃんちゃんこ着た猫はなし犬ばかり ちゃんちゃんこ 12.12.3.
16 乳母車ちゃんちゃんこ着て散歩犬 ちゃんちゃんこ 12.12.3.
17 石畳け躓きつつ散る落葉 落葉 12.12.3.
18 石畳け躓きつつ落葉散る 落葉 12.12.3.
19 降る木の葉け躓いたり滑ったり 木の葉降る 12.12.3.
20 降る木の葉け躓くもの滑るもの 木の葉降る 12.12.3.
21 西日受けステンドグラスとなる紅葉 紅葉 12.12.4.
22 グーグルで黄泉平坂(よもつひらさか)問ふ遍路 遍路 12.12.4.
23 遍路道よもつひらさかどのあたり 遍路道 12.12.4.
24 女房の指図で動く年の暮 年の暮 12.12.4.
25 吾影を見る間に伸ばす冬西日 12.12.4.
26 音消して花のトレモロ冬菫 冬菫 12.12.4.
27 千切れ雲胃痛を拭へ漱石忌 漱石忌 12.12.4.
28 ちゃんちゃんこ皮足袋で行く散歩犬 ちゃんちゃんこ 12.12.4.
29 枯野ゆく黄泉平坂(よもつひらさか)ある気配 枯野 12.12.4.
30 鍋焼を頼み待つ間のそば焼酎 鍋焼 12.12.4.
31 熱燗に声高くなる友と飲む 熱燗 12.12.5.
32 熱燗や胃痛治めんために飲む 熱燗 12.12.5.
33 年の瀬やしゃこばさぼてん咲き初めり 年の瀬 12.12.5.
34 しゃこばさぼてん燭増やしゆく師走かな 師走 12.12.5.
35 燭灯ししゃこばさぼてん冬明り 12.12.5.
36 冬呼んでしゃこばさぼてん花繚乱 12.12.5.
37 冬を待ちしゃこばさぼてん燃へ立ちぬ 12.12.5.
38 しゃこばさぼてん艶やかに咲く師走かな 師走 12.12.5.
39 きょうの日はきょう限りなり冬菫 冬菫 12.12.5.
40 時刻む音遅滞なし花八ッ手 花八ッ手 12.12.5.
41 紅の花芽が光る冬木立 冬木立 12.12.6.
42 廃線の路飲み込んで冬木立 冬木立 12.12.6.
43 枕木の残る枯野や千切れ雲 枯野 12.12.6.
44 廃線に通過の音や枯野中 枯野 12.12.6.
45 老ゆらけど燃ゆる冬薔薇育めり 冬薔薇 12.12.6.
46 枯園の果てに聳ゆる大公孫樹 枯園 12.12.6.
47 昭一的こころ残して変哲忌
(12.12.11.小沢昭一10日没)
変哲忌 12.12.6.
48 水溜り浮いて沈みし冬紅葉 冬紅葉 12.12.6.
49 極月や一句も詠めず暮れなずむ 極月 12.12.6.
50 極月や大音響のシンフォニー 極月 12.12.6.
51 隙間風入らぬ家の換気扇 隙間風 12.12.7.
52 湯たんぽの夢をつなぎし温さかな 湯たんぽ 12.12.7.
53 ノンキャリのしたたかさかな一茶の忌 一茶忌 12.12.7.
54 季語増えて自縄自縛の年の暮 年の暮 12.12.7.
55 決め付けの句は嫌ひなり石蕗の花 石蕗の花 12.12.7.
56 戯言に微動だにせじ石蕗の花 石蕗の花 12.12.7.
57 それぞれの思ひを込めて年暮るる 年の暮 12.12.7.
58 週に五度ごみ出しつとめ年暮るる 年の暮 12.12.7.
59 姫林檎鈴なりの実に空の青 林檎 12.12.7.
60 枯菊を踏んで農小屋配置換え 枯菊 12.12.7.
61 一瞥で次々に繰る賀状かな 年賀状 12.12.8.
62 半世紀会はず遣り取る賀状かな 年賀状 12.12.8.
63 俳人の気まぐれ嗤ふ石蕗の花 石蕗の花 12.12.8.
64 凛として崩れぬ気概石蕗の花 石蕗の花 12.12.8.
65 湯豆腐の昆布に葱載せ酒を酌む 湯豆腐 12.12.8.
66 蹲踞(つくばい)に蓋するごとく薄氷 薄氷 12.12.8.
67 蹲踞の底にひと葉の冬紅葉 冬紅葉 12.12.8.
68 はいよっと親爺差し出す葱鮪(ねぎま)かな 葱鮪 12.12.8.
69 人はみな耐へて生きるや藪柑子 藪柑子 12.12.8.
70 竹の径坂を下れば藪柑子 藪柑子 12.12.8.
71 午後の日に赤い実光る藪柑子 藪柑子 12.12.9.
72 控え目に十両名乗る藪柑子 藪柑子 12.12.9.
73 わが庭に千両はなし藪柑子 藪柑子 12.12.9.
74 庭主に似合うとばかり藪柑子 藪柑子 12.12.9.
75 枯菊の捨て場に白き花二輪 枯菊 12.12.9.
76 泥土を持ち上げ清ら霜柱 霜柱 12.12.9.
77 泥濘も一夜明ければ霜柱 霜柱 12.12.9.
78 決め付ける女俳は嫌ひ石蕗の花 石蕗の花 12.12.9.
79 白菜の巻き始めたり大柄に 白菜 12.12.9.
80 白い肌はみ出してゐる蕪畑 12.12.9.
81 畑土を蹴り上げ並ぶ白蕪 12.12.10.
82 衰へを知れば喜寿なり石蕗の花 石蕗の花 12.12.10.
83 蝋燭のほとほと燃ゆる寒参り 寒参り 12.12.10.
84 冬萌や吾余命まだ尽きざれば 冬萌 12.12.10.
85 霜柱解けずに暮るる畝の影 霜柱 12.12.10.
86 日が陰り列荒涼の寒菫 寒菫 12.12.10.
87 枯芒頓着なげに揺れてをり 枯芒 12.12.10.
88 枯蟷螂堀部弥兵衛喜寿で討つ 枯蟷螂 12.12.10.
89 冬の日や果てしない道俳の道 冬の日 12.12.10.
90 蝋梅や光を集む黄金花 蝋梅 12.12.10.
91 武蔵野を透かして見せる冬木立 冬木立 12.12.11.
92 冬木立灰白色の靄まとひ 冬木立 12.12.11.
93 冬木立最後の一葉残す樹も 冬木立 12.12.11.
94 しがらみを一切捨てし枯木立 枯木立 12.12.11.
95 細枝にいのちの息吹き枯木立 枯木立 12.12.11.
96 緑赤黄色を留めて冬木立 冬木立 12.12.11.
97 瀬戸の海渡る潮風石蕗の花 石蕗の花 12.12.11.
98 しぶき舞ふ瀬戸の島影石蕗の花 石蕗の花 12.12.11.
99 瀬戸の海見守るごとく石蕗の花 石蕗の花 12.12.11.
100 何気なく口づけしをり石蕗の花 石蕗の花 12.12.11.
101 句碑洗ふ瀬戸のしぶきや石蕗の花 石蕗の花 12.12.12.
102 一楽章終はるや咳の満つホール 12.12.12.
103 音楽堂楽章ごとに咳沸けり 12.12.12.
104 しまったと言ふ風情なり帰り花 帰り花 12.12.12.
105 刈り込みに無聊をかこつ返り花 返り花 12.12.12.
106 余所行きの顔で食い初む河豚料理 河豚 12.12.12.
107 てつちりの骨しゃぶり終へ雑炊に てっちり 12.12.12.
108 濡れそぼつ野良と眼の合う時雨かな 時雨 12.12.12.
109 雫垂れ餌待つ野良や夕しぐれ 夕時雨 12.12.12.
110 裸木をひたすら濡らすしぐれかな 時雨 12.12.12.
111 裸木を黒く染め上ぐ時雨かな 時雨 12.12.13.
112 七つの子くぐもり流る夕時雨 夕時雨 12.12.13.
113 夕刊を配るバイクや夕時雨 夕時雨 12.12.13.
114 尼寺の厨に灯の入る夕時雨 夕時雨 12.12.13.
115 しぐるるや部屋飼い犬の騒がしき 時雨 12.12.13.
116 立ち喰ひの湯気上ぐ蕎麦や時雨寒 時雨 12.12.13.
117 政権の移る日暗き時雨かな 時雨 12.12.13.
118 つくばいに末期の水か冬の蝶 冬の蝶 12.12.13.
119 つくばいに翅を浮かべて冬の蝶 冬の蝶 12.12.13.
120 伊予鹿島句碑と野鹿と石蕗の花 石蕗の花 12.12.13.
121 銘柄を選ばず旨し鰭の酒 鰭酒 12.12.14.
122 煮凝も河豚ともなればありがたく 煮凝、河豚 12.12.14.
123 日溜りに石蕗の花咲く札所かな 石蕗の花 12.12.14.
124 冬耕や日をかすめ行く雲速し 冬耕 12.12.14.
125 池の面の白き絣や花八ッ手 花八つ手 12.12.14.
126 寂寞の庭とはせずに石蕗の花 石蕗の花 12.12.14.
127 香を放ち籬に白き花柊 花柊 12.12.14.
128 石蕗の花供へられたる墓一基 石蕗の花 12.12.14.
129 伊予小富士瀬戸を見下ろす枇杷の花 枇杷の花 12.12.14.
130 散歩道老眼の故かまことか冬霞 冬霞 12.12.14.
131 下積みで鍛へし腕のちゃんこ鍋 ちゃんこ鍋 12.12.15.
132 上水や長蛇の列の冬木立 冬木立 12.12.15.
133 花柊籬に白き香を放ち 花柊 12.12.15.
134 白菜の葉の豪胆に巻き始む 白菜 12.12.15.
135 湯ざめして入り直すやしみじみと 湯ざめ 12.12.15.
136 湯気立ててぴーぴーと呼ぶ薬缶かな 湯気 12.12.15.
137 冬休孫は部活で超多忙 冬休 12.12.15.
138 近頃は樹脂で封ぜし鏡餅 鏡餅 12.12.15.
139 パソコンに宛名任せて賀状刷る 賀状刷る 12.12.15.
140 菜園の野菜あれこれ年用意 年用意 12.12.15.
141 畳替死語になりつつある暮らし 畳替 12.12.16.
142 良いお年を交す挨拶年の暮 年の暮 12.12.16.
143 ごみ出しが御用納の老後なり 御用納 12.12.16.
144 晦日蕎麦えび天二匹載りにけり 晦日蕎麦 12.12.16.
145 焼藷を食めば気泡の三つほど 焼藷 12.12.16.
146 時雨止み文鎮ほどの鬱残る 時雨 12.12.16.
147 土手鍋の牡蠣染まりゆく味噌の味 牡蠣 12.12.16.
148 後頭部円い月出る木の葉髪 木の葉髪 12.12.16.
149 黒髪も夢まぼろしの木の葉髪 木の葉髪 12.12.16.
150 花蜜の至福知らずに冬の蜂 冬の蜂 12.12.16.
151 天皇がまだがんばると年の暮 年の暮 12.12.17.
152 臍の緒と別れて遥か年の暮 年の暮 12.12.17.
153 吾もまた禿げの仲間や年暮るる 年の暮 12.12.17.
154 湯豆腐や鍋の昆布も食みつ呑む 湯豆腐 12.12.17.
155 マヤ暦の騒ぎことなし年暮るる 年の暮 12.12.17.
156 北風を肥やしに葉物うま味増す 北風 12.12.17.
157 胸中に埋火残し年の暮 年の暮 12.12.17.
158 曇天の屋根まで下りて年暮るる 年の暮 12.12.17.
159 冬桜樹下には吾の影ひとつ 冬桜 12.12.17.
160 冬桜蜜吸いに来る虫ありや 冬桜 12.12.17.
161 散るを知りその時を待つ木の葉かな 木の葉 12.12.18.
162 数へ日やパンの耳見て一句詠む 数へ日 12.12.18.
163 天下置き些事で句を詠む年の暮 年の暮 12.12.18.
164 赤青黄イタ飯屋での年忘れ 年忘 12.12.18.
165 ついにまた押し詰まりての賀状書き 賀状書く 12.12.18.
166 もう止めと告げるも手間で賀状書く 賀状書く 12.12.18.
167 数へ日や追い詰められて書く賀状 数へ日 12.12.18.
168 冬木立少年の吹くサキソフォン 冬木立 12.12.18.
169 食卓の皿のレタスや冬日和 冬日和 12.12.18.
170 朝どりのレタス畑の霜柱 霜柱 12.12.18.
171 朝どりのレタスにラディシュ霜畑 12.12.19.
172 冬晴れやフォークで食みしカレーパン 冬晴れ 12.12.19.
173 枯木立すっぽんぽんになりにけり 枯木立 12.12.19.
174 枯木立アダムとイヴが羨まし 枯木立 12.12.19.
175 枯木立すっぽんぽんで立ち尽くす 枯木立 12.12.19.
176 数へ日や喜怒哀楽の締め句会 数へ日 12.12.19.
177 修理待つ蛇口の雫夜半の冬 夜半の冬 12.12.19.
178 風吹けば私語始めたる枯柏 枯柏 12.12.19.
179 冬林檎蜜の部分が透けて見へ 冬林檎 12.12.19.
180 籾殻の眠り覚まされ冬林檎 冬林檎 12.12.19.
181 取り尽くす前に飯入れ牡蠣雑炊 牡蠣雑炊 12.12.20.
182 土手鍋の味噌の味滲む牡蠣雑炊 牡蠣雑炊 12.12.20.
183 畝ごとに種類たがへて冬菜畑 冬菜 12.12.20.
184 黙々と熱きを啜る蕪汁 蕪汁 12.12.20.
185 豆同士相性の良き納豆汁 納豆汁 12.12.20.
186 禅僧の工夫が嬉しけんちん汁 けんちん汁 12.12.20.
187 おでん屋台背は寒くとも顔温し おでん 12.12.20.
188 熱燗をちろりで注ぐや赤ちょうちん 熱燗 12.12.20.
189 烏賊徳利熱燗が良しさあ飲むぞ 熱燗 12.12.20.
190 木枯を纏ひて男走りゆく 木枯 12.12.20.
191 数へ日や大寒む小寒むノロ用心 数へ日 12.12.21.
192 バスタブの柚子かき分けて冬至の湯 冬至 12.12.21.
193 冬至湯の柚子と戯る乳房かな 冬至 12.12.21.
194 バスタブに乳房も浮かぶ柚子湯かな 柚子湯 12.12.21.
195 冬休み部活の児らがボール蹴る 冬休み 12.12.21.
196 クリスマス好みで選ぶケーキかな クリスマス 12.12.21.
197 年の瀬や奥歯の補填外れけり 年の瀬 12.12.21.
198 本買ひに年内六日となりにけり 年内 12.12.21.
199 森閑と小学校の冬休み 冬休み 12.12.21.
200 忙しなき年の瀬を背に句を捻る 年の瀬 12.12.21.
201 からたちの棘凍空をを引き裂けり 凍空 12.12.22.
202 凍道や響き姦し女靴 凍道 12.12.22.
203 寒月にことりと動く虫の影 寒月 12.12.22.
204 寒風を螺旋で上り行く鳶 寒風 12.12.22.
205 木道のくの字くの字を空っ風 空っ風 12.12.22.
206 ガラス窓結露が霜に変わりをり 12.12.22.
207 木道を置去りにして枯野中 枯野 12.12.22.
208 三十三才(みそさざい)鳥語の歌詞の長きこと 三十三才 12.12.22.
209 生延びし使命のありや冬の虻 冬の虻 12.12.22.
210 冬の虻残置諜者の覚悟かな 冬の虻 12.12.22.
211 公孫樹落葉集める人の汗みずく 落葉 12.12.23.
212 寒林の一樹で用足す散歩犬 寒林 12.12.23.
213 曇天に梢突刺す枯木立 枯木立 12.12.23.
214 枯木立尖り過ぎるな雲が泣く 枯木立 12.12.23.
215 寡婦の身となりてさ迷ふ冬の蜂 冬の蜂 12.12.23.
216 藪柑子見上ぐる先に青木の実 藪柑子、青木の実 12.12.23.
217 冬草や姫蔓蕎麦も仲間入り 冬草 12.12.23.
218 かさこそと下る道端に冬苺 冬苺 12.12.23.
219 切刻み食ひ尽くされる海鼠かな 海鼠 12.12.23.
220 寒灯を消して寝入れば夢の国 寒灯 12.12.23.
221 寒灯を消して寝入れば夢次々 寒灯 12.12.24.
222 冬の蠅憎さ薄れて哀れなり 冬の蠅 12.12.24.
223 のたのたと老ひ突きつけて冬の蠅 冬の蠅 12.12.24.
224 冬帽を枝に取られて後じさり 冬帽 12.12.24.
225 ちゃんちゃんこ人の代わりに散歩犬 ちゃんちゃんこ 12.12.24.
226 ちかごろは老ひも若きも紙マスク マスク 12.12.24.
227 冬耕に地下足袋の底冷えにけり 冬耕 12.12.24.
228 凍て道のチャルメラの音聞きたし夜 凍て道 12.12.24.
229 寒影の吾にたがはず老ひにけり 寒影 12.12.24.
230 凩や孤独の月を揺さぶれり 12.12.24.
231 綿虫に触るれば命奪ふこと 綿虫 12.12.25.
232 山茶花や散り敷き見せる死に化粧 山茶花 12.12.25.
233 柊の匂ひ微かにこぼれ花 12.12.25.
234 つはぶきは長女の花やたくましや 石蕗の花 12.12.25.
235 芭蕉忌や大川端の像動く 芭蕉忌 12.12.25.
236 痩躯弊衣市井聖や空也の忌 空也忌 12.12.25.
237 ノンキャリの役人想ふ一茶の忌 一茶忌 12.12.25.
238 柿の葉鮨てんでに開き降誕祭 降誕祭 12.12.25.
239 小さきに拘りて詠む蕪村の忌 蕪村忌 12.12.25.
240 九条葱腰くねらせて抜かれけり 12.12.25.
241 冬ざれに待ったをかけし青菜畑 冬ざれ 12.12.26.
242 居酒屋の美人女将や冬の蜂 冬の蜂 12.12.26.
243 枯菊の中に一輪咲き残る 枯菊 12.12.26.
244 河豚提灯皮一枚のふくれ面 河豚 12.12.26.
245 耐えられぬ軽さに耐えて河豚提灯 河豚 12.12.26.
246 吹けば飛ぶ軽きに泣くや河豚提灯 河豚 12.12.26.
247 何もない腹に灯ともす河豚ランタン 河豚 12.12.26.
248 赤貝やばしっと叩かれ握り鮓 赤貝 12.12.26.
249 凍て空に少なき星の数かぞふ 凍て空 12.12.26.
250 冬耕の人影消ゆる午後三時 冬耕 12.12.26.
251 大根引抜かれる力抜く力 大根引 12.12.27.
252 葱掘りて根をそのままに持ち帰る 12.12.27.
253 床暖房遊び疲れて子ら眠る 暖房 12.12.27.
254 気がつけば湯たんぽ胸に抱きけり 湯たんぽ 12.12.27.
255 サッシ窓隔ててうつら日向ぼこ 日向ぼこ 12.12.27.
256 寒灯も十年保証のLED 寒灯 12.12.27.
257 冬の蚊やわが手に止まり針刺せず 冬の蚊 12.12.27.
258 冬帽や髪薄くなりすぐ脱げる 冬帽 12.12.27.
259 着膨れは老ひも若きも死語になり 着膨れ 12.12.27.
260 熱燗ややはりちろりがよく似合ふ 熱燗 12.12.27.
261 塩引の茶づけ掻き込む幼き日 塩引 12.12.28.
262 湯ざめして入り直すや深夜の湯 湯ざめ 12.12.28.
263 一楽章終ればホール咳満ちて 12.12.28.
264 水洟を啜れば喉を流れけり 水洟 12.12.28.
265 蟹股で吾に付き添ふ寒き影 寒影 12.12.28.
266 赤蕪をわっしょと担ぐ霜柱 赤蕪、霜柱 12.12.28.
267 声捨ててよろぼひ生きる冬の虫 冬の虫 12.12.28.
268 媾合いて死を賜りし冬の蜂 冬の蜂 12.12.28.
269 それなりの訳がありそな帰り花 帰り花 12.12.28.
270 一片に命惜しみつ山茶花散る 山茶花 12.12.28.
271 虫ピンをばら撒くごとく花八つ手 花八つ手 12.12.29.
272 柊の花もやもやとこぼれけり 柊の花 12.12.29.
273 あるべき場知りて咲きゐる石蕗の花 石蕗の花 12.12.29.
274 冬耕や堆肥に注ぐ立小便 冬耕 12.12.29.
275 竜の去る気配もありて除夜の鐘 除夜の鐘 12.12.29.
276 辰年にさよならを言ひ除夜の鐘 除夜の鐘 12.12.29.
277 一筆で描く巳年の賀状かな 賀状書き 12.12.29.
278 亭主より孫大事らし年暮るる 年の暮 12.12.29.
279 壇ノ浦細き水路に石蕗の花 石蕗の花 12.12.29.
280 ゴジラにも引退の文字年暮るる 年の暮 12.12.29.
281 叩かれつ年の瀬迎ふ木魚かな 年の瀬 12.12.30.
282 年始の経木魚の音もフォルテシモ 年始 12.12.30.
283 池の水汲む柄びしゃくに薄氷 薄氷 12.12.30.
284 石蕗は毅然たる花男花 石蕗の花 12.12.30.
285 辰の年さらば次また会へるかな 12.12.30.
286 辰の年次は米寿の吾ありや 12.12.30.
287 新年はぬらりくらりの巳年かな 新年 12.12.30.
288 無精ひげ擦りつ立つ庭冬薔薇 冬薔薇 12.12.30.
289 無精ひげ禿げずに伸びる年の暮 年の暮 12.12.30.
290 お四国はニライカナイや遍路旅 遍路 12.12.30.
291 賀状書き今年もやはり大晦日 賀状書き 12.12.31.
292 日溜りに猫三匹の日向ぼこ 日向ぼこ 12.12.31.
293 蕪村忌や福餅と呼ぶ忌日餅(いみびもち)
(12.12.29.小林秀雄方恒例の餅つきパーティーで)
蕪村忌 12.12.31.
294 生みたての卵もやはり寒卵 寒卵 12.12.31.
295 寒卵黄身取り出して飯にかけ 寒卵 12.12.31.
296 伸びる影縮む命や寒夕焼け 寒夕焼け 12.12.31.
297 親爺より一回り超え年暮るる 年の暮 12.12.31.
298 億劫に向き合ひつつの年の暮 年の暮 12.12.31.
299 手袋を脱ぎし女人の冷たき手 手袋 12.12.31.
300 手袋を脱ぎし冷たき手を握る 手袋 12.12.31.
301 飲み終へし頃合ひに出るおじやかな おじや 12.12.31.
302 いも粥やお袋の声父の声 いも粥 12.12.31.
303 新巻を切るは家長の父の役 新巻 12.12.31.
304 焼芋の五六個揺れる壺の中 焼芋 12.12.31.
305 路地裏に苦しき咳の続きけり 12.12.31.
306 人絶へて寒影と行く吾ひとり 寒影 12.12.31.
307 年用意ほどほどとする老夫婦 年用意 12.12.31.
308 昼酒の頭痛失せよと飲む熱燗 熱燗 12.12.31.
309 変哲の言ふ通りなり句は日記(無季句) 12.12.31.
310 燗酒を冷まして啜る若布酒 燗酒 12.12.31.
311 冬の日の野天で楽し年忘れ 年忘れ 12.12.31.
312 去年ゐた古老の欠けし年忘れ 年忘れ 12.12.31.
313 老ひの輪は病歴自慢年忘れ 年忘れ 12.12.31.
314 惨敗の死票も来る年忘れ 年忘れ 12.12.31.
315 晴天の翌日は雨年の暮 年の暮 12.12.31.
316 最後まで照る日雨の日年暮るる 年の暮 12.12.31.
317 人生の宿題抱へ年越し蕎麦 年越蕎麦 12.12.31.
318 黒髪も遠い昔や木の葉髪 木の葉髪 12.12.31.
319 冬帽子芒に似たる髪収め 冬帽子 12.12.31.
320 文化財指定農家の冬構へ 冬構 12.12.31.
321 ぽつねんと春待つ枯野石地蔵 枯野 13.1.1.
322 綿虫に選ぶ意思あり力あり 綿虫 13.1.1.
323 綿虫やすべてが巨大大宇宙 綿虫 13.1.1.
324 綿虫や巨竜時代に居る心地 綿虫 13.1.1.
325 初刷の分厚きがきてページ繰る 初刷 新年 13.1.1.
326 白銀の富士遠望の淑気かな 淑気 新年 13.1.1.
327 重詰の彩りつとむ紅ちよろぎ ちょろぎ 新年 13.1.1.
328 初暦今年が静かに動き初む 初暦 新年 13.1.1.
329 初暦喜怒哀楽の日々が待つ 初暦 新年 13.1.1.
330 スカイプで顔を写しつ初電話 初電話 新年 13.1.1.
331 スカイプで海を隔てて初電話 初電話 新年 13.1.1.
332 スカイプで時間気にせず初電話 初電話 新年 13.1.1.
333 スカイプで話延々初電話 初電話 新年 13.1.1.
334 ベビーカー押す若夫婦初雀 初雀 新年 13.1.1.
335 日溜りで餌啄ばむや初雀 初雀 新年 13.1.1.
336 こぼれ種群れで啄ばむ初雀 初雀 新年 13.1.1.
337 鳩来ても啄ばみ止めぬ初雀 初雀 新年 13.1.1.
338 電線に横一列や初雀 初雀 新年 13.1.1.
339 伊勢海老や冷凍庫にて安楽死 伊勢海老 新年 13.1.1.
340 三が日過ぎれば忘るちょろぎかな ちょろぎ 新年 13.1.1.
341 三が日過ぎて忘らるちょろぎかな ちょろぎ 新年 13.1.2.
342 めずらしや群れで啄ばむ初雀 初雀 新年 13.1.2.
343 かしわ手に一人ひとりの淑気かな 淑気 新年 13.1.2.
344 柏手に人の心の淑気かな 淑気 新年 13.1.2.
345 柏手に老ひも若きも淑気かな 淑気 新年 13.1.2.
346 不動堂五重塔の淑気かな 淑気 新年 13.1.2.
347 参道を行き交ふ人の淑気かな 淑気 新年 13.1.2.
348 男坂上りて拝む淑気かな 淑気 新年 13.1.2.
349 男坂上りて参る淑気かな 淑気 新年 13.1.2.
350 どの顔も淑気に満ちて鈴鳴らす 淑気 新年 13.1.2.
351 茶髪の子鈴の綱振る淑気かな 淑気 新年 13.1.3.
352 境内に鳩舞ひ降りて淑気満つ 淑気 新年 13.1.3.
353 甘酒を振舞はれ飲む淑気かな 淑気 新年 13.1.3.
354 世話役の小父さんの顔淑気満つ 淑気 新年 13.1.3.
355 星空も見上げる吾も淑気満つ 淑気 新年 13.1.3.
356 少年の吹き初め響くサキソフォン 吹初 新年 13.1.3.
357 禿げ白髪梅干し並ぶ初句会 初句会 新年 13.1.3.
358 大杯で大洋を干す淑気かな 淑気 新年 13.1.3.
359 大杯で海原を干す初の夢 初夢 新年 13.1.3.
360 大杯で大洋を干す夢初め 初夢 新年 13.1.3.
361 初日受け紅滲ませる花八つ手 初日、花八つ手 新年 13.1.3.
362 初富士や大沢なだれへこみをり 初富士 新年 13.1.3.
363 白銀の富士仰ぎたる淑気かな 淑気 新年 13.1.3.
364 なんとなく改まりたる初句会 初句会 新年 13.1.3.
365 正月も人の営み止まらず 正月 新年 13.1.3.
366 吹初やトロンボーンの四重奏 吹初 新年 13.1.3.
367 喉越しに気をつけて食ふ雑煮かな 雑煮 新年 13.1.3.
368 あっさりと澄まし仕立ての雑煮食ふ 雑煮 新年 13.1.3.
369 屠蘇飲んで息も絶へ絶へ下戸の妻 屠蘇 新年 13.1.3.
370 屠蘇散の香の馥郁と絹袋 屠蘇 新年 13.1.3.
371 屠蘇散の香の粛然と絹袋 屠蘇 新年 13.1.4.
372 彩りのちょろぎばかりが残りけり ちょろぎ 新年 13.1.4.
373 彩りのちょろぎばかりが残る重 ちょろぎ 新年 13.1.4.
374 朝酒と言はず戴くお屠蘇かな 屠蘇 新年 13.1.4.
375 朝酒を憚らず呑むお屠蘇なり 屠蘇 新年 13.1.4.
376 朝酒もお屠蘇となれば粛然と 屠蘇 新年 13.1.4.
377 沈金の鶴もほろ酔ふ屠蘇の盃 屠蘇 新年 13.1.4.
378 参道の一人一人の淑気かな 淑気 新年 13.1.4.
379 何ごとも何も変わらぬ三が日 三が日 新年 13.1.4.
380 われもまた娑婆遊びせん初句会 初句会 新年 13.1.4.
381 去年今年蛇口の雫続きをり 去年今年 新年 13.1.4.
382. 途切れずに蛇口の雫去年今年
去年今年 新年 13.1.4.
383 お節食ふ無くて困らぬちょろぎかな
お節 新年 13.1.4.
384 星空も見上げる吾も淑気満つ 淑気 新年 13.1.4.
385 あら目出たと指をささるる初鴉 初鴉 新年 13.1.4.
386 見上ぐれば居住まい正す初鴉 初鴉 新年 13.1.4.
387 初鴉ちょいと居住まい正しけり 初鴉 新年 13.1.4.
388 初大師とんとこ響く飴包丁 初大師 新年 13.1.4.
389 孫も来て膳にぎやかな二日かな 二日 新年 13.1.4.
390 海見つめ灯台見上ぐ水仙花 水仙 13.1.4.
391 平日の便利さを知る猪日かな 猪日 新年 13.1.5.
392 平日のありがたさ知る三が日 三が日 新年 13.1.5.
393 雑煮からトーストになる四日かな 雑煮 新年 13.1.5.
394 読初の歳時記開きまず一句 読初 新年 13.1.5.
395 歳時記に正月行事教へられ 正月 新年 13.1.5.
396 鰭酒や類稀なる熱さかな 鰭酒 13.1.5.
397 鰭酒の舌焼く熱さ至福なり 鰭酒 13.1.5.
398 鰭酒や煮え滾るこそ旨きかな 鰭酒 13.1.5.
399 蒲鉾に寿の文字雑煮椀 雑煮椀 新年 13.1.5.
400 初富士に電線よぎる路地の奥 初富士 新年 13.1.5.
401 路地奥に初富士白く浮かびをり 初富士 新年 13.1.6.
402 ほんとうはやるよりほしいお年玉 お年玉 新年 13.1.6.
403 氷川丸鉄鎖に並ぶ冬かもめ 冬鴎 13.1.6.
404 横一列みな北向きに冬鴎 冬鴎 13.1.6.
405 弧を描き池面に降りる百合鴎 百合鴎 13.1.6.
406 水上バスよぎる波間の都鳥 都鳥 13.1.6.
407 隅田川いまも昔も都鳥 都鳥 13.1.6.
408 掛け軸の書引き立てし福寿草 福寿草 新年 13.1.6.
409 すずしろのごとく伸びたる脚美人 すずしろ 新年 13.1.6.
410 すずしろのごとく艶やか脚美人 すずしろ 新年 13.1.6.
411 葉影から日差しを招く藪柑子 藪柑子 13.1.7.
412 初春や豊かに流る隅田川 初春 新年 13.1.7.
413 明の春大川端に芭蕉像 明の春 新年 13.1.7.
414 突出しの煮凝を食む箸使い 煮凝 13.1.7.
415 恋ひすれば水仙の花首長し 水仙 13.1.7.
416 林辺に肩寄せ合いし水仙花 水仙 13.1.7.
417 水仙の花それぞれに向きを変へ 水仙 13.1.7.
418 目の端に入りて足止む冬桜 冬桜 13.1.7.
419 行き過ぎて振り返り見る冬桜 冬桜 13.1.7.
420 散り際を競ふでもなし冬桜 冬桜 13.1.7.
421 小寒やガラス張りなり池の面 小寒 13.1.8.
422 鉄幹の荒々しきや寒の入 寒の入 13.1.8.
423 曇天も凍りついたか寒の入 寒の入 13.1.8.
424 白いもの落ちてきそうな寒の入 寒の入 13.1.8.
425 頬を刺す風まで固き寒の入 寒の入 13.1.8.
426 人待ちの図書館前や寒の入 寒の入 13.1.8.
427 小寒や摂氏三度の薄日差す 小寒 13.1.8.
428 洗濯物ごわごわと揺る寒の入り 寒の入 13.1.8.
429 振り向けば胸乳の薄き雪女 雪女 13.1.8.
430 背で来いと夢路を誘ふ雪女郎 雪女郎 13.1.8.
431 寒の入り今夜は月も凍るらし 寒の入 13.1.9.
432 わが庭は十両の名の藪柑子 藪柑子 13.1.9.
433 かさかさと葉ずれの音や冬柏 冬柏 13.1.9.
434 蕪村忌や絵には仕掛けの二つ三つ 蕪村忌 13.1.9.
435 あす七日けふは七福めぐりかな 七福神詣 13.1.9.
436 松の内また来年となりにけり 松の内 13.1.9.
437 福詣どの社寺からもスカイツリー
(13.1.6. 亀戸七福神詣をして)
七福神詣 13.1.9.
438 福詣スカイツリーの監視付 七福神詣 13.1.9.
439 侘助の咲く寺の名は萩の寺
(13.1.6.亀戸七福神詣龍眼寺布袋尊)
侘助 13.1.9.
440 弁天の肌薄紅や冬薔薇
(同亀戸・東覚寺で)
冬薔薇 13.1.9.
441 冬薔薇や弁天さまの肌の色 冬薔薇 13.1.10.
442 冬薔薇や弁天さまの臍の色 冬薔薇 13.1.10.
443 健康でぽっくり願う福詣 七福神詣 13.1.10.
444 金盃に光溢るる福寿草 福寿草 13.1.10.
445 金盃の光こぼるる福寿草 福寿草 13.1.10.
446 治聾酒や季語で知りたる特効薬 治聾酒 13.1.10.
447 難聴に特効ありと治聾酒 治聾酒 13.1.10.
448 日を浴びて光こぼるる福寿草 福寿草 13.1.10.
449 野仏を眩しがらせて福寿草 福寿草 13.1.10.
450 敢然と紅燃やす冬薔薇 冬薔薇 13.1.10.
451 大寒や今夜は月も凍るらし 大寒 13.1.11.
452 星までも凍りて見ゆる寒九かな 寒九 13.1.11.
453 大寒の路地に響くや女靴 大寒 13.1.11.
454 霜夜来て星もぎしぎし軋みをり 霜夜 13.1.11.
455 霜柱踏み崩しつつレタス抜く 霜柱 13.1.11.
456 白無垢に茶のしみ浮かぶ寒椿 寒椿 13.1.11.
457 白無垢にしみ浮かばせて寒椿 寒椿 13.1.11.
458 弁天の裸身紅さす寒椿 寒椿 13.1.11.
459 福詣なま唾を飲む弁天堂 福詣 13.1.11.
460 好日や根岸の里の寒椿 寒椿 13.1.11.
461 葉牡丹の花に化けたる鉢並ぶ 葉牡丹 13.1.12.
462 屋敷町干布団なく清々し 干蒲団 13.1.12.
463 干布団叩く女の鬼面かな 干蒲団 13.1.12.
464 干蒲団砧のごとく叩く主婦 干蒲団 13.1.12.
465 ただ一椀被せたごとき冬帽子 冬帽子 13.1.12.
466 ただ椀を被りしごとき我が冬帽 冬帽 13.1.12.
467 白足袋を穿くとき覗くふくらはぎ 白足袋 13.1.12.
468 裾割りて白足袋穿けば若女将 白足袋 13.1.12.
469 ただいまと先ず足袋を脱ぐ芸妓かな 足袋 13.1.12.
470 水餅の独特の香も遠き日々 水餅 13.1.12.
471 紙パック八個並びし寒卵 寒卵 13.1.13.
472 殻の色濃淡ありて寒卵 寒卵 13.1.13.
473 切干と黄ばみ縮むを競ふ日々 切干 13.1.13.
474 芝庭に動くを見れば寒雀 寒雀 13.1.13.
475 冬萌や息吹のごとき気配あり 冬萌 13.1.13.
476 白菜や尻を揃へて積まれゆく 白菜 13.1.13.
477 白菜の丸き尻撫ぜ笑む農婦 白菜 13.1.13.
478 白菜の纏ふ薄紙あづき色 白菜 13.1.13.
479 鉢並べ日を浴びている室の花 室の花 13.1.13.
480 半切の白菜並ぶ無人棚 白菜 13.1.13.
481 転倒の膝はれ上がり寒九来る 寒九 13.1.14.
482 寒椿白き重ねに走るしみ 寒椿 13.1.14.
483 侘助の白無垢どれも日焼け痕 侘助 13.1.14.
484 おいでよと背中で誘ふ雪女郎 雪女郎 13.1.14.
485 おいでよと襟足深き雪女郎 雪女郎 13.1.14.
486 賢しらに視線を向ける寒鴉 寒鴉 13.1.14.
487 賢しらに小首傾げる寒鴉 寒鴉 13.1.14.
488 藁靴の跡を残して雪女 雪女 13.1.14.
489 白無垢の着流しで笑む雪女郎 雪女郎 13.1.14.
490 寒昴見上げる首の骨の音 寒昴 13.1.14.
491 寒の星指さす腕を神経痛 寒の星 13.1.15.
492 初雪や成人の日の第一歩 初雪 13.1.15.
493 初雪や成人の日を祝ふごと 初雪 13.1.15.
494 初雪や成人の日の晴れ着にも 初雪 13.1.15.
495 初雪をマント仕立ての藪柑子(季重なり 初雪、藪柑子) 初雪 13.1.15.
496 初雪と思へぬピッチ庭埋む 初雪 13.1.15.
497 ごみ出しも初雪ならば傘ささず 初雪 13.1.15.
498 初雪を浴びつごみ出す四十歩 初雪 13.1.15.
499 初雪や上下二色の木々の枝 初雪 13.1.15.
500 初雪や白黒二色木々の枝 初雪 13.1.15.
501 初雪や抑揚つけて降りしきる 初雪 13.1.16.
502 初雪やなぜか自然に昼の酒 初雪 13.1.16.
503 初雪や雪見と言はず昼の酒 初雪 13.1.16.
504 初雪や百万匹の雪蛍 初雪・雪蛍 13.1.16.
505 鉄幹の枝に降り積む初の雪 初雪 13.1.16.
506 初雪に早やベランダの達磨かな 初雪 13.1.16.
507 初雪や晴れ着も映へる成人式 初雪 13.1.16.
508 香ほのかに素心蝋梅日に眩し 蝋梅 13.1.16.
509 光集め素心蝋梅咲き初めり 蝋梅 13.1.16.
510 蝋梅や金無垢の鈴連ねをり 蝋梅 13.1.16.
511 蝋梅や電飾のごと鈴生れり 蝋梅 13.1.17.
512 蝋梅や落ちずに枝に萎え果つる 蝋梅 13.1.17.
513 蝋梅の花咲く根方残り雪 蝋梅、雪 13.1.17.
514 蝋梅の花開き初め残り雪 蝋梅、雪 13.1.17.
515 蝋梅の花咲き初める雪解かな 蝋梅、雪 13.1.17.
516 薄氷を踏み抜いて行く鴨のをり 薄氷 13.1.17.
517 北向きの屋根の形に残る雪 残雪 13.1.17.
518 雪しんしんケース・ギャレットのジャズピアノ 13.1.17.
519 空晴れてべそをかきたる雪だるま 雪だるま 13.1.17.
520 六地蔵並ぶ隣に雪仏 雪仏 13.1.17.
521 六地蔵隣に並ぶ雪仏 雪仏 13.1.18.
522 残雪を見つめ動かぬ寒鴉 雪、寒鴉 13.1.18.
523 凍て雪の轍牙剥く悪意かな 凍つ、雪 13.1.18.
524 氷面鏡小鳥も滑る真似をして 氷面鏡 13.1.18.
525 氷面鏡つつつと小鳥遊びをり 氷面鏡 13.1.18.
526 凍雪のどどっと轟く軒はざま 13.1.18.
527 寒林の天突刺して屹立す 寒林 13.1.18.
528 冬木の芽見上げてゐるを会釈され 冬木の芽 13.1.18.
529 チェーンソー唸りを上げる冬木立 冬木立 13.1.18.
530 蝋梅の花咲き初めて空青し 蝋梅 13.1.18.
531 冬木立犬のお供の人と人 冬木立 13.1.19.
532 冬木影主に代わりて動きけり 冬木 13.1.19.
533 池底の朽葉に稚貝点々と 朽葉 13.1.19.
534 葉陰から赤艶やかに青木の実 青木の実 13.1.19.
535 大雪を地に伏して耐ふ藪柑子 藪柑子 13.1.19.
536 侘助殿われは本家の寒椿 侘助、寒椿 13.1.19.
537 寒椿赤白ならび地上でも 寒椿 13.1.19.
538 寒椿しみを隠さず泰然と 寒椿 13.1.19.
539 寒椿児らの背丈に合わせ咲き 寒椿 13.1.19.
540 寒椿別れも告げず落ちにけり 寒椿 13.1.19.
541 寒椿花芯に動くもののあり 寒椿 13.1.20.
542 花びらの波打つ重ね寒椿 寒椿 13.1.20.
543 寒椿ぽとりと落ちし日暮れかな 寒椿 13.1.20.
544 山茶花や根方も紅を敷き詰めて 山茶花 13.1.20.
545 今生の別れ見事に寒椿 寒椿 13.1.20.
546 侘助やさにあらずしてさにありし 侘助 13.1.20.
547 侘助や一輪挿しの花は白 侘助 13.1.20.
548 つくばひの水涸れてゐる寒椿 寒椿 13.1.20.
549 侘助や首傾げれば花もまた 侘助 13.1.20.
550 侘助の吐息と見せてわが吐息 侘助 13.1.20.
551 せつなくも侘助ほどのせつなさを 侘助 13.1.21.
552 寒木瓜の枝分かちあふ赤と白 寒木瓜 13.1.21.
553 たこ焼きを食みし少女ら寒椿 寒椿 13.1.21.
554 大寒やホーム駆け抜く旋風 大寒 13.1.21.
555 大寒や頬を突き刺す風固し 大寒 13.1.21.
556 大寒や頬に鋭き風の刺 大寒 13.1.21.
557 雪吊の役に立ったといふ風情 雪吊 13.1.21.
558 火の鳥の飛翔かくやとしゃこばさぼてん しゃこばさぼてん 13.1.21.
559 水洟を袖で拭ひし児らゐた日 水洟 13.1.21.
560 悪がきが袖で拭いし水っ洟 水洟 13.1.21.
561 てかてかに袖光らせて水っ洟 水洟 13.1.22.
562 新海苔や海の香とどむ黒光 新海苔 13.1.22.
563 新海苔の磯辺巻き食ふ野良のお茶 新海苔 13.1.22.
564 新海苔の磯辺巻きなり今日の餅 新海苔 13.1.22.
565 新海苔や海の香連れて黒光り 新海苔 13.1.22.
566 新海苔や母の二重の海苔弁当 新海苔 13.1.22.
567 鶏舎には温みほのかに寒卵 寒卵 13.1.22.
568 鶏舎には温みの残る寒卵 寒卵 13.1.22.
569 寒卵椀の縁にて割にけり 寒卵 13.1.22.
570 止め難き煙草のごとき賀状かな(年賀はがき抽選発表に) 年賀状 13.1.22.
571 会ふことなく五十年余の賀状かな 年賀状 13.1.23.
572 山茶花の濡れそぼちをりどの花も 山茶花 13.1.23.
573 山茶花や長き盛りの疲れ花 山茶花 13.1.23.
574 山茶花や盛りの長き疲れ花 山茶花 13.1.23.
575 花八つ手切り花拒み庭に咲く 花八つ手 13.1.23.
576 庭隅に切り花拒む花八つ手 花八つ手 13.1.23.
577 初場所や横綱大鵬旅立てり(1.19.没 72歳) 初場所 13.1.23.
578 雨止んで日射しに光る寒椿 寒椿 13.1.23.
579 大寒や付いて来るのは影法師 大寒 13.1.23.
580
自恃の句を誰も選ばぬ寒句会 13.1.23.
581 凧(いかのぼり)遥かの空を結ぶ糸 凧(たこ・いかのぼり) 13.1.24.
582 凧持ちつ持たれつ天地合掌 13.1.24.
583 天と地の引き合ふ心地凧と我 13.1.24.
584 懸命に凧の糸引く胸騒ぎ 13.1.24.
585 どの花も焦げ目の付きし寒椿 寒椿 13.1.24.
586 金無垢に焦げ目口惜し蝋梅花 蝋梅 13.1.24.
587 金無垢の蝋梅の花ありぬべし 蝋梅 13.1.24.
588 日の境行きつ戻りつ寒雀 寒雀 13.1.24.
589 木漏れ日を啄ばんでゐる寒雀 寒雀 13.1.24.
590 庭隅に一輪咲けり寒すみれ 寒菫 13.1.24.
591 庭隅に白きもの見ゆ冬菫 冬菫 13.1.25.
592 水遣りもせぬ庭隅の冬菫 冬菫 13.1.25.
593 一滴の花の涙か寒菫 寒菫 13.1.25.
594 雪の庭うれしげに立つ藁ぼっち 13.1.25.
595 雪吊の絵になりすぎし雪の朝 雪吊、雪 13.1.25.
596 陰る日を素心蝋梅補へり 蝋梅 13.1.25.
597 厠へと蒲団抜け出す余寒かな 余寒 13.1.25.
598 片貝となりて洗はる桜貝 桜貝 13.1.25.
599 今宵また千年続く猫の恋 猫の恋 13.1.25.
600
今宵またダイナマイトの猫の恋 猫の恋 13.1.25.
601 欲情の雄叫び響く猫の恋 猫の恋 13.1.26.
602 欲情の雄叫び上げて猫の恋 猫の恋 13.1.26.
603 欲情の焔今宵も猫の恋 猫の恋 13.1.26.
604 桜貝波に洗はれ片想い 桜貝 13.1.26.
605 路地の灯のじじじと鳴りし余寒かな 余寒 13.1.26.
606        “男装”のヨイトマケ聴く紅白の夜   
(美輪明宏が若者に話題)
紅白 13.1.26.
607 疎開の日弟の骨拾ふ野辺
(13.1.30.疎開先で45年4月夭折した弟に)
無季 13.1.26.
608 すべて哀しすべて嬉しい老いの春 13.1.26.
609 ピアフ聴く喜怒哀楽の早春賦 13.1.26.
610 吉良常やぼんちたびなし老いの春
(尾崎士郎「人生劇場」吉良常を囃す児ら「ぼんち足袋なし」逆さに読めば)
13.1.26.
611 「らんぶる」の咳も憚る春の午後 13.1.27.
612 一刻(いっこく)の足らぬ夫たる老の春 13.1.27.
613 蹲踞の水面やはらぎ日脚伸ぶ 日脚伸ぶ 13.1.27.
614 こけた膝掻痒の時期春近し 春近し 13.1.27.
615 一米ころげ飛びたる老の春 13.1.27.
616 四等の賀状去年と同じ数 賀状 新年 13.1.27.
617 山頂にダイヤ埋むや寒暮富士 寒暮 13.1.27.
618 咲き継ぎて冬凌ぎたる薔薇の鉢 冬薔薇 13.1.27.
619 冬薔薇呼び名はずす日あす立春 冬薔薇 13.1.27.
620 冬の薔薇紅失はず春立ちぬ 冬薔薇 13.1.27.
621 黒抑へ紅深む冬の薔薇 冬薔薇 13.1.28.
622 夕映えて金波の瀬戸や遍路鈴 遍路 13.1.28.
623 お遍路に先を急がす入日かな 遍路 13.1.28.
624 夕映えの海に手合す老遍路 遍路 13.1.28.
625 大師像見据へ経あぐ母子遍路 遍路 13.1.28.
626 接待のお茶しみじみと母子遍路 遍路 13.1.28.
627 投句箱一句納めて遍路立つ 遍路 13.1.28.
628 一寺一句八十八句と笑む遍路 遍路 13.1.28.
629 飛ぶがごとく山道下る若遍路 遍路 13.1.28.
630 空ボトルお茶を授かる遍路かな 遍路 13.1.28.
631 接待の伊予蜜柑手に笑む遍路 遍路 13.1.29.
632 ジーンズにズックの似合ふ媛遍路 遍路 13.1.29.
633 けふからは寒の字取れて咲く椿 椿 13.1.29.
634 けふからは寒の字なしの椿なり(2月4日、立春) 椿 13.1.29.
635 けふからは心華やぐ春ともし(2月4日、立春) 春ともし、春灯 13.1.29.
636 沈丁花楷書の花ぞ硬派なり 沈丁花 13.1.29.
637 ひと吹きで幼も得意しゃぼん玉 しゃぼん玉 13.1.29.
638 墨堤や葉もむしゃむしゃと桜餅(向島長命寺桜餅) 桜餅 13.1.29.
639 黒蜜と黄粉がありて蕨餅 蕨餅 13.1.29.
640 胃カメラで腹を探るやけふ二月 二月 13.1.29.
641 胃カメラで腹探らるや春隣 13.1.30.
642 ただ一度生きる幸せ二月入る 二月 13.1.30.
643 一度きり生きる幸せ老の春 13.1.30.
644 寒暁の鉄幹突く鳥の影 寒暁 13.1.30.
645 鉄幹にひとり遊びの三十三才(みそさざい) 三十三才 13.1.30.
646 校庭の球追ふ児らに日脚伸ぶ 日脚伸ぶ 13.1.30.
647 面白きふぐり落としも廃れ季語 ふぐり落とし 13.1.30.
648 厄除けのふぐり落としも死語となり 厄除・ふぐり落とし 13.1.30.
649 厄除けのふぐり落としで縮みたり 厄除・ふぐり落とし 13.1.30.
650 褌がふぐり落としで社殿にも ふぐり落とし 13.1.30.
651 赤鬼やふぐり落としを集めけり ふぐり落とし 13.1.31.
652 下帯やふぐり落としでそこかしこ ふぐり落とし 13.1.31.
653 バス停の道の端つなぎ草萌ゆる 草萌 13.1.31.
654 枯芝に一刷け引きて下萌ゆる 下萌 13.1.31.
655 剃り跡の青きに似たり下萌ゆる 下萌 13.1.31.
656 節分草細き茎ゆえ地に添ひて 節分草 13.1.31.
657 地を恋ひて低きに咲けり節分草 節分草 13.1.31.
658 餌をやる児らも囀る春隣 春隣 13.1.31.
659 餌やりの児らも囀る春隣 春隣 13.1.31.
660 冬萌の緑の滲む通学路 冬萌 13.1.31.
661 春待てり人も草木も虫魚も 待春 13.2.1.
662 褒貶も句作の肥やし久女の忌(1月21日久女忌) 久女忌 13.2.1.
663 褒貶を勲章にして久女の忌 久女忌 13.2.1.
664 大輪の色香華やぐ室の花 室の花 13.2.1.
665 根を切られ生花となりし室の花 室の花 13.2.1.
666 噛み合せこめかみ痛む草城忌(1月25日蕪村忌) 草城忌 13.2.1.
667 鏡には老爺がぶ然春隣 春隣 13.2.1.
668 歳時記に従ふ吾の冬終る 冬終る 13.2.1.
669 パソコンのキーボード拭き冬終る 冬終る 13.2.1.
670 新年会二月二日で冬終る
(13.2.2.小平稲門会新年会の日)
冬終る 13.2.1.
671 ボール蹴る児らの掛け声春隣 春隣 13.2.2.
672 バス停で背筋の伸びる春隣 春隣 13.2.2.
673 茶室から句会の声や春を待つ 待春 13.2.2.
674 寒木瓜の勝気の蕾開きけり 寒木瓜 13.2.2.
675 寒椿あと一日で春の花 寒椿 13.2.2.
676 渓流の音轟ける探梅行 探梅行 13.2.2.
677 太鼓橋渡るご利益初天神(1月25日初天神) 初天神 13.2.2.
678 このごろは釦付けだけ針供養(2月8日針供養) 針供養 13.2.2.
679 「鬼は外」一言だけで雨戸閉め 鬼やらひ 13.2.2.
680 節分やこぼれ豆踏む二三日 節分 13.2.2.
681 ホームレス長い列なり寒施行 寒施行 13.2.3.
682 ホームレス列を作りし寒施行 寒施行 13.2.3.
683 恵方巻まだ腹にあり春立ちぬ 立春 13.2.3.
684 団十郎鬼追ひ散らし旅立てり
(12代目市川団十郎、3日、肺炎のため死去、66歳)
鬼やらひ 13.2.3.
685 蛇口まで春立つ音に変はりけり 立春 13.2.3.
686 渓流の音を足下に探梅行 探梅 13.2.3.
687 屋根に乗るホルスタインか斑雪 斑雪 13.2.3.
688 屋根に寝るホルスタインか斑雪 斑雪 13.2.3.
689 春の泥こねて行き来の畑仕事 春泥 13.2.3.
690 春泥をやらに捏ねつ農作業 春泥 13.2.3.
691 春泥にわざわざ入る幼たち 春泥 13.2.4.
692 二日酔ひ春泥のごと居座りぬ 春泥 13.2.4.
693 落椿の紅鮮やかに斑雪 春泥 13.2.4.
694 つくばいに紅き椿の浮かびけり 椿 13.2.4.
695 さぼてんに八つ当たりして孕猫 孕猫 13.2.4.
696 三連打咳かしましく春の風邪 春の風邪 13.2.4.
697 柊を戸口に挿して鬼は外 柊挿す 13.2.4.
698 豆撒いて四日過ぎてもまた出て来 豆撒き 13.2.4.
699 茶柱をお守りに入れ受験生 受験生 13.2.4.
700 「さくら咲く」メール打ちこむ受験生 受験生 13.2.4.
701 胴上げの続く合格掲示板 合格 13.2.5.
702 歓声を背に立ち去るも受験生 受験生 13.2.5.
703 春北風(はるならひ)バス待つ列の紙マスク 春北風 13.2.5.
704 日替わりで首伸び縮む浅き春 浅き春 13.2.5.
705 春寒や顔に飛び散る風の刺 春寒 13.2.5.
706 学校の授業で遺る針供養 針供養 13.2.5.
707 持参する古針のなき針供養 針供養 13.2.5.
708 針千本刺されて暮るる針供養 針供養 13.2.5.
709 大豆腐剣山と化す針供養 針供養 13.2.5.
710 蒟蒻と豆腐ならべて針供養 針供養 13.2.5.
711 さあ刺せと豆腐居直る針供養 針供養 13.2.6.
712 針供養やはり壺刺す鍼灸師 針供養 13.2.6.
713 蒟蒻にごめんと言ひつ針供養 針供養 13.2.6.
714 針負ひし豆腐どうなる針供養 針供養 13.2.6.
715 針山も針箱もなし針供養 針供養 13.2.6.
716 繕へる母懐かしき針供養 針供養 13.2.6.
717 微笑みつ足裏受くる踏絵かな 踏絵 13.2.6.
718 笑む神子の顔に足乗す踏絵かな 踏絵 13.2.6.
719 踏絵待つ老若男女長い列 踏絵 13.2.6.
720 聖母子の顔ひんやりと踏絵かな 踏絵 13.2.6.
721 青銅の絵踏のゼウス擦り減りて 踏絵 13.2.7.
722 鶯餅皿に夫婦で並びけり 鶯餅 13.2.7.
723 身を寄せて鶯餅や皿の上 鶯餅 13.2.7.
724 緋毛氈鶯笛も鳴りにけり 鶯笛 13.2.7.
725 まぐわいに命掻き立つ恋の猫 恋猫 13.2.7.
726 まぐわいて孕みし猫のふてぶてし 孕み猫 13.2.7.
727 自家用と言ひつ麦踏む老農夫 麦踏 13.2.7.
728 犬ふぐり見つけて春を確認し 犬ふぐり 13.2.7.
729 ほぼ同じ場所に咲きゐる犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.7.
730 畑脇に見つけてうれし犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.7.
731 日溜りにまだ三つ四つ犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.8.
732 枯芝の縁青々と草萌ゆる 草萌 13.2.8.
733 草萌を分けて流るる用水路 草萌 13.2.8.
733 黄砂来るPM2.5てふ悪魔 黄砂 13.2.8.
735 犬交(さか)る身を一つにし西東 犬交る 13.2.8.
736 囀りの鳥語解せる術ありや 囀り 13.2.8.
737 揚雲雀たちまち天に吸い込まれ 雲雀 13.2.8.
738 春夕焼少年の吹くコルネット 春夕焼 13.2.8.
739
春泥に靴を取られて案山子かな 春泥 13.2.8.
740 黒々と鋤鍬を待つ春の土 春の土 13.2.8.
741 陽炎を追いかけて行く単線路 陽炎 13.2.9.
742 かげろふにゴッホの絵筆走りけり 陽炎 13.2.9.
743 ケーンケン雉の雄叫び山の畑 13.2.9.
744 刺身(さし)のつま先ずていれぎを食みにけり
(テイレギ=オオバタネツケバナの松山方言)
ていれぎ 13.2.9.
745 パソコンに作句打ちこむ春の昼 春の昼 13.2.9.
746 寒明けも便座の温みありがたし 寒明け 13.2.9.
747 雪吊を残したままで寒明けり 寒明け 13.2.9.
748 春一番ならぬ春北風(はるきた)骨身凍む 春一番・春北風 13.2.9.
749 銀ねずの花穂艶やかに猫柳 猫柳 13.2.9.
750 さり気なく川辺に二つ蕗の薹 蕗の薹 13.2.9.
751 梅林の三樹咲き初め人寄せり 梅林 13.2.10.
752 早咲きを競ふ長寿と八重野梅 13.2.10.
753 蒼天や枝網の目に八重野梅 13.2.10.
754 白梅や枝網の目に咲き初めり 13.2.10.
755 咲き初めし梅に鼻寄す人の影 13.2.10.
756 梅の香を冷たき風が運び来る 13.2.10.
757 梅の香を振り撒くごとく風よぎる 13.2.10.
758 咲き初めし白梅の下マスク取り 13.2.10.
759 人の輪に得意気に咲く八重野梅 13.2.10.
760 まんさくの赤きリボンの棚引けり 満作 13.2.10.
761 まんさくや満艦飾の緋のリボン 満作 13.2.11.
762 夕映えの照葉眩し藪椿 椿 13.2.11.
763 犬ふぐり小さきゆへに可憐なり 犬ふぐり 13.2.11.
764 古利根の枯敷く縁に犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.11.
765 ギヤマンの小さきグラス犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.11.
766 どの花も日に向かひ咲く犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.11.
767 初咲きをしゃがみて接写犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.11.
768 同じ場所やはり咲き初む犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.11.
769 句材には欠かせぬ花や犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.11.
770 野蒜摘み持ち帰りたる幼の日 野蒜 13.2.11.
771 揚げ雲雀声振落し空に消ゆ 雲雀 13.2.12.
772 色形意匠小粋に犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.12.
773 武者震いするがごとくに犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.12.
774 散歩する人が足止む犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.12.
775 接写するたびにピンボケ犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.12.
776 天神橋曲がる袂に犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.12.
777 首のない地蔵も並ぶ犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.12.
778 犬ふぐり散歩の犬のいばり浴び 犬ふぐり 13.2.12.
779 すずめ来て啄ばむ庭に犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.12.
780 犬ふぐり花可憐なりしぶとけり 犬ふぐり 13.2.12.
781 どの花も日に顔向けて犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.13.
782 北を向く地蔵の背後犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.13.
783 季の変わり先触れて咲く犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.13.
784 犬ふぐり追ふがごとくに仏の座 犬ふぐり・仏の座 13.2.13.
785 梅林に続く道なり犬ふぐり 梅林・犬ふぐり 13.2.13.
786 池の魚動きかねたる余寒かな 余寒 13.2.13.
787 如月を尻に敷きたるベンチかな 如月 13.2.13.
788 清明やぽとりと落ちる水の音 清明 13.2.13.
789 春暁のポストから取る全国紙 春暁 13.2.13.
790 春暁の庭に日差しの走りけり 春暁 13.2.13.
791 春暁の庭に一閃日の光り 春暁 13.2.14.
792 花冷や人影のない田舎町 花冷 13.2.14.
793 花冷や厨でぽとり水の音 花冷 13.2.14.
794 春光や斜面波打つ茶の畑 春光 13.2.14.
795 初蝶や蝶よけ掛ける農作業 初蝶 13.2.14.
796 人眠る夜闇の化粧春の雪 春の雪 13.2.14.
797 淡雪や丑三つどきの置き土産 淡雪 13.2.14.
798 朝日浴び雫に変わる春の雪 春の雪 13.2.14.
799 白き屋根たちまちはだる牡丹雪 牡丹雪 13.2.14.
800 庭白し夜鍋仕事の春の雪 春の雪 13.2.14.
801 春の雪夜鍋で街を包みけり 春の雪 13.2.15.
802 日の眩し夜鍋仕事の春の雪 春の雪 13.2.15.
803 日の射して雫かしまし春の雪 春の雪 13.2.15.
804 淡雪を溶かして過ぎる風の刺 淡雪 13.2.15.
805 淡雪の溶けて顔振る犬ふぐり 淡雪 13.2.15.
806 リズム打つ軒の雫や春の雪 春の雪 13.2.15.
807 日差し受け白塗り剝げる春の雪 春の雪 13.2.15.
808 白塗りを涙に変へて春の雪 春の雪 13.2.15.
809 白塗りの剝げて老ひ知る春の雪 春の雪 13.2.15.
810 白塗りの剝げし弁天春の雪 春の雪 13.2.15.
811 冬と春引き継ぎ続く斑雪(はだれ)かな 斑雪 13.2.16.
812 畑仕事足引っ張るや春の泥 春泥 13.2.16.
813 畑から戻り玄関春の泥 春泥 13.2.16.
814 春泥や汁粉の中と思ふべし 春泥 13.2.16.
815 泡盛入りチョコでほろ酔ふバレンタイン バレンタインの日 13.2.16.
816 蓬萌ゆ人近づけぬ汚染地区 蓬萌 13.2.16.
817 蓬生(よもぎふ)や土筆も頭ならべをり 蓬生 13.2.16.
818 萍(うきくさ)や陣地広げる堀の面 13.2.16.
819 山裾に紫の影春竜胆 春竜胆 13.2.16.
820 筆竜胆峠を分けて静かなり 筆竜胆 13.2.16.
821 火と煙走りに走る野焼きかな 野焼 13.2.17.
822 霾(つちふ)るや迷惑メールのごと届く 13.2.17.
823 霾(つちふ)るや迷惑メールのごと来たり 13.2.17.
824 霾(つちふ)るや迷惑メールのごときもの 13.2.17.
825 川底に足跡刻む蜷の筋 13.2.17.
826 水底に蜷の描きしナスカの線 13.2.17.
827 蜷の引く筋目ナスカの線画かな 13.2.17.
828 ナスカの絵蜷の筋目に相似たり 13.2.17.
829 川底に生きた証の蜷の筋 13.2.17.
830 悠然と筋引いてゆく蜷の影 13.2.17.
831 悠然と足跡記す蜷の刻 13.2.18.
832 動くとも見せず刻むや蜷の筋 13.2.18.
833 蜷の筋わが道を行く証かな 13.2.18.
834 川底に筋を刻んで蜷の日々 13.2.18.
835 老梅の枝震わせて風光る(季重なり:梅、風光る) 梅・風光る 13.2.18.
836 かたかたと戸袋鳴らし風光る 風光る 13.2.18.
837 うらら日に棹さすごとくつむじ風 うらら 13.2.18.
838 風ひかり激しく梢揺れにけり 風光る 13.2.18.
839 路地奥に二月の富士の薄霞 二月・薄霞 13.2.18.
840 路地奥に如月富士の薄霞む 如月・薄霞む 13.2.18.
841 陽炎に目まいかと足止めにけり 陽炎 13.2.19.
842 陽炎の中にしゃがみて畑仕事 陽炎 13.2.19.
843 畑を打つ鍬に小石の当たりたり 畑打 13.2.19.
844 枝の上畑打つ吾を見る鴉 畑打 13.2.19.
845 隣り畑あいさつ交はし畑を打つ 畑打 13.2.19.
846 五重塔風鐸揺れて風光る 風光る 13.2.19.
847 薄氷を頭突きで破る鯉の長(おさ) 薄氷(うすらい) 13.2.19.
848 薄氷の上で気ぜわし黄鶺鴒 薄氷 13.2.19.
849 薄氷を餌場に跳ねる黄鶺鴒 薄氷 13.2.19.
850 春陰や天地晴れあり曇りあり 春陰 13.2.19.
851 新しき堂宇の華鬘(けまん)風光る 風光る 13.2.20.
852 けふ雨水暮れて残りし薄氷 雨水・薄氷(うすごおり) 13.2.20.
853 薄氷を残して暮るる雨水かな 薄氷 13.2.20.
854 春陰や心読み取る埴輪の眼 春陰 13.2.20.
855 風光る遠き記憶や埴輪の眼 風光る 13.2.20.
856 山茱萸の黄晴れやかに霞みをり 山茱萸(さんしゅゆ)・霞 13.2.20.
857 冬と春行ったり来たり二月尽
(冬、春、二月尽が季重なり)
冬・春・二月尽 13.2.20.
858 如月や寒き現実春夢見
(如月、寒し、春が季重なり)
如月・寒し・春 春・冬 13.2.20.
859 逃げ月の裾をつかんで牡丹雪
(逃げる月=2月、牡丹雪が季重なり)
逃げる月・牡丹雪 13.2.20.
860 牡丹雪ふざけ合いつつ降りにけり 牡丹雪 13.2.20.
861 牡丹雪たわむれながら枝を抜け 牡丹雪 13.2.21.
862 ふわふわと枝すり抜ける春の雪 春の雪 13.2.21.
863 綿虫と戯れゐたり牡丹雪
(綿虫、牡丹雪が季重なり)
綿虫・牡丹雪 春・冬 13.2.21.
864 綿虫になりすまし舞ふ牡丹雪
(綿虫、牡丹雪が季重なり)
綿虫・牡丹雪 春・冬 13.2.21.
865 舞い降りつ梅が枝に付く牡丹雪
(梅、牡丹雪が季重なり)
梅・牡丹雪 13.2.21.
866 淡雪やふわりふわりと遊び雪 淡雪 13.2.21.
867 積もる気もなさそで積もる牡丹雪 牡丹雪 13.2.21.
868 雪吊を喜ばしたる春の雪
(雪吊、春の雪が季重なり)
雪吊・春の雪 春・冬 13.2.21.
869 右左舞ひ揺れながら牡丹雪 牡丹雪 13.2.21.
870 追ひ抜くも追ひ抜かれるも牡丹雪 牡丹雪 13.2.21.
871 五位鷺の待ち続けゐる二月川 二月 13.2.22.
872 なに待つや五位鷺一羽春の川 春の川 13.2.22.
873 五位鷺のじっと日を浴ぶ春の川 春の川 13.2.22.
874 薄氷を張り残したる雨水かな
(雨水=18日季重なり)
薄氷・雨水 13.2.22.
875 薄氷の庭に日の射す雨水かな(同上、薄氷、雨水) 薄氷・雨水 13.2.22.
876 風光り掘る青葱の色深む(同上 風光る、葱) 風光る・葱 春・冬 13.2.22.
877 春耕の鍬暴き出す霜柱(同上 春耕、霜柱) 春耕・霜柱 春・冬 13.2.22.
878 水菜引き根を切り取るも畑作業 水菜 13.2.22.
879 霜に耐へ甘味増したる春野菜(季重なり 霜、春) 霜・春 冬・春 13.2.22.
880 雪吊を解いて降りたる春の雪 雪吊・春の雪 冬・春 13.2.22.
881 風光る佐渡に祈りの朱鷺飛べり 風光る 13.2.23.
882 朱鷺舞ひて道端に揺れる犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.23.
883 風光る大佐渡小佐渡朱鷺よ飛べ 風光る 13.2.23.
884 群れ翔べる朱鷺美しき春の夢 春の夢 13.2.23.
885 啓蟄や泥にまみれて畑仕事 啓蟄 13.2.23.
886 啓蟄の虫よ許せと鍬を打つ
啓蟄 13.2.23.
887 水温み大口開けて迫る鯉 水温む 13.2.23.
888 水温み乗っ込みを追ふ子らの声
水温む 13.2.23.
889 木の芽味噌ねぶりつ昼の独り酒 木の芽 13.2.23.
890 数千の木の芽朱色に満を持す 木の芽 13.2.23.
891 木々の芽の不穏の鼓動高まれり 木の芽 13.2.24.
892 犬の尿(しと)泰然と受け薺咲く 薺の花 13.2.24.
893 ものの芽の命確かむ蹲踞かな ものの芽 13.2.24.
894 仏の座踊り子草と肩寄せて 仏の座・踊り子草 13.2.24.
895 仏の座踊り子草はいとこなり 仏の座・踊り子草 13.2.24.
896 幼き日従兄弟と競ひ田螺取り 田螺 13.2.24.
897 身をせせり歯にしこしこと田螺食ふ 田螺 13.2.24.
898 杭上る蜷甲斐もなく落ちにけり 田螺 13.2.24.
899 蜆汁歯に砂噛みつ身も食めり 蜆汁 13.2.24.
900 春の海五分で渡船島に着き 春の海 13.2.24.
901 春の海岩の狭間でしぶき上げ 春の海 13.2.25.
902 嬰児(みどりご)に乳首かまれし春の昼 春の昼 13.2.25.
903 嬰児に乳房含ませ朝寝かな 朝寝 13.2.25.
904 春うらら乳房かい撫で幼の手 春うらら 13.2.25.
905 春うらら乳房まさぐる幼の手 春うらら 13.2.25.
906 幼子の吸ひゐる乳房風光る 風光る 13.2.25.
907 東風吹くや盛(もり)に熱燗二本の宴 東風 13.2.25.
908 凍て土に足滑らせつ鍬起し 凍て 13.2.25.
909 レジ袋舞い上げてゐる春一番 春一番 13.2.25.
910 駐輪場将棋倒しに春一番 春一番 13.2.25.
911 春一番骨董市の土ぼこり 春一番 13.2.26.
912 春北風(はるならひ)寅さん像も首すくめ 春北風 13.2.26.
913 鉄板の焼きそば襲ふ春北風 春北風 13.2.26.
914 春の風邪くしゃみ鼻水とめどなし 春の風邪 13.2.26.
915 マフラーを慌て持ち出す余寒かな 余寒 13.2.26.
916 勤行のマスクの僧や春の風邪 春の風邪 13.2.26.
917 艶やかな眩しさを食む細魚(さより)刺し 細魚(さより) 13.2.26.
918 銀色の産毛に紛ふ猫柳 猫柳 13.2.26.
919 温そふな花の膨らみ猫柳 猫柳 13.2.26.
920 根に霜を付けし春菊摘みにけり 春菊・霜 春・冬 13.2.26.
921 季重なり名句集めて二月尽 二月尽 13.2.27.
922 季のずれを詠めば当然季重なり 13.2.27.
923 春寒や意固地蕎麦屋の蕎麦を食ふ 春寒 13.2.27.
924 春寒や意固地蕎麦屋の高価蕎麦 春寒 13.2.27.
925 爺婆の詠みし俳句や木瓜の花 木瓜 13.2.27.
926 春寒や遊び心のない俳句 春寒 13.2.27.
927 余寒ゆへ心を笑ます句のあらん 余寒 13.2.27.
928 春北風(はるきた)や毬栗のごと顔刺せり 春北風 春・秋 13.2.27.
929 シクラメン燃立ち二月あと二日 シクラメン・二月 13.2.27.
930 竹籠の網目すがしくシクラメン シクラメン 13.2.27.
931 マスク越し笑顔の会釈春の風 春の風 13.2.28.
932 燗酒で蕎麦を食ふ会春の昼 春昼 13.2.28.
933 ざる蕎麦を横に酒飲む春の昼 春昼 13.2.28.
934 蕎麦屋ゆえ憚らず飲む春の昼 春昼 13.2.28.
935 年ごとに群落増やす犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.28.
936 在来は見へず舶来犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.28.
937 犬ふぐり在来追はれ帰化ばかり 犬ふぐり 13.2.28.
938 犬の尿(しと)浴びても清ら犬ふぐり 犬ふぐり 13.2.28.
939 佐保姫の尿(しと)かも知れず草の露 佐保姫 13.2.28.
940 佐保姫の尿かと草の露に触れ 佐保姫 13.2.28.
941 佐保姫の尿飲むといふ健康法 佐保姫 13.3.1.
942 昼酒の醒めずに帰る春の暮 春の暮 13.3.1.
943 蕎麦食いて春昼の酒金盞花 春昼・金盞花 13.3.1.
944 膕(ひかがみ)の乙女の色香風光る(膕=膝の裏側) 風光る 13.3.1.
945 乙女らの膕(ひかがみ)あらは春めけり 春めく 13.3.1.
946 柴又の寅さん像に春遅し 春遅し 13.3.1.
947 編笠のごとき貝母(ばいも)の花揺れる 貝母 13.3.1.
948 修羅落し途絶へし渓間静まれり 修羅落 13.3.1.
949 隠れ田のごとき山葵田せせらげり 山葵田 13.3.1.
950 シクラメン燃立ち二月尽きにけり シクラメン・二月尽 13.3.1.
951 啓蟄を待ちかねゐたり人もまた 啓蟄 13.3.2.
952 啓蟄や嘴磨き待つ解禁日 啓蟄 13.3.2.
953 啓蟄や吾も岐阜までいとこ会 啓蟄 13.3.2.
954 啓蟄や吾も見上げる旅の空 啓蟄 13.3.2.
955 啓蟄や虫のごとくに旅に出ん 啓蟄 13.3.2.
956 白鷺は独り居が好き春の川 13.3.2.
957 五位鷺や春の川辺に小半日 13.3.2.
958 初咲きは弥生一日豊後梅 弥生・梅 13.3.2.
959 五位鷺の向き変ふ川辺春一番 春一番 13.3.2.
960 袋戸を打ち響かせて春一番 春一番 13.3.2.
961 ごうごうと梢を揺らし春一番 春一番 13.3.3.
962 春一番来たぞ来たぞと窓叩く 春一番 13.3.3.
963 窓叩き雄叫び上げる春一番 春一番 13.3.3.
964 ひゅうひゅうと息はずませて春一番 春一番 13.3.3.
965 家々に来たぞと告げる春一番 春一番 13.3.3.
966 一息を入れつ吹き荒る春一番 春一番 13.3.3.
967 春一番一息入れつ吹き荒れり 春一番 13.3.3.
968 止んだかと思へば吹けり春一番 春一番 13.3.3.
969 春一番荒ぶり梅を吹き散らす 春一番 13.3.3.
970 春一番梢の花を捥ぎ取るな 春一番 13.3.3.
971 春一番梢の花を目の敵 春一番 13.3.4.
972 袋戸の音姦しく春一番 春一番 13.3.4.
973 白鷺も立ち往生の春一番
春一番 13.3.4.
974 春一番梢の花を怯へさせ 春一番 13.3.4.
975 凍て土に足滑らせつ畑を鋤く 畑鋤く 13.3.4.
976 声かすれ読経の僧や春の風邪 春の風邪 13.3.4.
977 ひたすらに帽子ころがす春一番 春一番 13.3.4.
978 人めぐるタイの巨大な涅槃像 涅槃像 13.3.4.
979 水とりに合わせて吹けり春一番(季重なり:水取・春一番) 水取・春一番 13.3.4.
980 ほんのりと匂ひも紅も豊後梅 13.3.4.
981 逃水や日向歩きの道案内 逃水 13.3.5.
982 土筆のあと追ひかけるごと杉菜生ふ 土筆・杉菜 13.3.5.
983 虚無僧の深編笠や貝母咲く 貝母(ばいも) 13.3.5.
984 内裏さま顔若々し五十年 内裏雛 13.3.5.
985 奥多摩の岸辺明るむ花卯木(初夏の景) 花卯木・卯の花 13.3.5.
986 筍(こ)のために身を窶(やつ)しゐる竹の秋 筍・竹の秋 夏・春 13.3.5.
987 老梅の顔寄せ見れば唐棣色(はねずいろ) 13.3.5.
988 春天の光は眩し風の冷え 春天 13.3.5.
989 雛祭り爺独りの男酒 雛祭り 13.3.5.
990 年古し鉄幹の花紅ひそか 鉄幹の花(梅) 13.3.5.
991 老鉄幹紅を秘めたる花の中 鉄幹の花(梅) 13.3.6.
992 人里(へんぼり)と読む集落や仏の座 仏の座 13.3.6.
993 内裏さまこの世七日でまた眠る 内裏雛 13.3.6.
994 内裏雛雪洞消してまた来年 内裏雛 13.3.6.
995 内裏雛眠る時間の長きこと 内裏雛 13.3.6.
996 白酒の酔ひの醒めるは一年後 白酒 13.3.6.
997 四季通じ絶えぬ紅(くれない)長春花 長春花
(四季咲きの薔薇)
13.3.6.
998 四季通じ紅繋ぐ長春花 長春花 13.3.6.
999 四季通じ咲き繋ぐ紅長春花 長春花 13.3.6.
1000 鉢見れば絶えぬ紅長春花 長春花 13.3.6.



♪BGM:Chopin[Nocturne8]arranged by Pian♪

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