空海さんに出逢う旅C


空海(弘法大師)像
東寺所蔵

私の恒例行事「空海さんに出逢う旅 2011年初夏」で5月24日から27日の3泊4日、愛媛県松山市に出かけてきました。

★5年余り係わった民放局の仕事が縁で業界の四国OB会メンバーに加えてもらい、同好会「空海部会」の春秋年2回の催しにJRの「じぱんぐ倶楽部」3割引き特典を活用しての東京からの参加も、今年で7年目になりました。

★今回(第12回例会)は、四国巡礼発祥の地と言われる松山市郊外、久谷の里の別格第9番札所、文殊院を中心に四国遍路47番札所の八坂寺、同46番の浄瑠璃寺を巡った後、愛媛人物博物館、砥部焼の里を訪れるコース。

文殊院本堂 空海と衛門三郎の像(四国番外札所、杖杉庵=徳島県)
万緑の山柔らかく衛門寺

★文殊院は、大法山文殊院徳盛寺が正式寺号の真言宗醍醐派の寺院。小造りのお寺ながら、先にちょっと触れましたが、四国遍路の元祖、衛門三郎の屋敷跡と言われる地に建つ古刹です。

タチアオイ(立葵) ブラシノキ(別名:花槙、金宝樹)
アオイ科ビロードアオイ属 フトモモ科ブラシノキ属
シモツケ(下野) ニオイバンマツリ(匂蕃茉莉)
バラ科シモツケ属 ナス科ブルンフェルシア属
いずれも文殊院付近で撮影

★住職の衛門三郎の故事解説に耳を傾け、衛門三郎の8人の子供が葬られていると言う八ッ塚群集古墳を訪ねた後、八坂寺、浄瑠璃寺を巡りました。

衛門三郎の8人の子供の墓と伝えられる八ッ塚群集古墳 八ッ塚群集古墳
第47番札所、八坂寺 八坂寺極楽門
八坂寺や極楽橋を夏の風
第46番札所、浄瑠璃寺 イブキ(伊吹 別名:柏槇、伊吹柏槇)
薫風に千年香樹浄瑠璃寺 ヒノキ科ビャクシン属
薫風に千年伊吹浄瑠璃寺 松山市指定天然記念物 推定樹齢約1000年
ユキノシタ(雪の下) ユキノシタ
ユキノシタ科ユキノシタ属 ユキノシタ科ユキノシタ属
浄瑠璃寺境内で撮影
ナヨクサフジ(弱草藤) ナヨクサフジ
マメ科ソラマメ属 マメ科ソラマメ属
松山市内の生涯学習センターの草叢で撮影
おびんづる像(浄瑠璃寺本堂前で)
夏風やおびんづるいる浄瑠璃寺

★翌26日は、前日の“遍路日和”と打って変わり、雨雲が垂れ込める中、単独行で、数年前に訪れた市内高井の第48番札所、西林寺へ。実は門前にある子規の句碑「秋風や高井のていれぎ三津の鯛」に詠まれている「ていれぎ」(大葉種漬け花 アブラナ科タネツケバナ属)の繁殖地、杖ノ淵公園(西林寺奥の院)内の茶店で、「名水百選」に加えられた空海伝説の名水で冷やしたそーめんを味わうのを楽しみにしての再訪でした。

第48番札所、西林寺山門 本堂
杖ノ淵公園(西林寺奥の院)の空海像 公園内の名水取水場
杖ノ淵名水走る梅雨の入り
杖ノ淵公園の掘割のカルガモ(軽鴨) 公園隣りの代田で餌を探すダイサギ(大鷺 白鷺の仲間)
餌売りがメタボと笑う夏の鴨 代掻きの田に白鷺の一羽おり
正岡子規
オオバタネツケバナ(大葉種漬け花 別名:ていれぎ)
秋風や高井のていれぎ三津の鯛(子規)
<上掲句へのオマージュ吟>
ていれぎを妻に鯛刺し走り梅雨(鈴童)

★途中から降り出した雨(この日、四国は梅雨入り)の中を辿り着いたら「臨時休業」。ボトル持参の人に混じって名水の味を確かめ、バス、電車、タクシーを乗り継いで自由律俳人、種田山頭火の終焉の「一草庵」へ向かいました。「おちついて死ねさうな草枯るる」(山頭火)の句を遺し、1940年10月、同草庵で永眠、享年59歳。

御幸寺境内の納屋を改造した一草庵 復元した一草庵
迎え梅雨句と酒で果つ山頭火 山頭火終の草庵梅雨の入り
山頭火の俳句の師、荻原井泉水が揮毫した掲額 室内(位牌と一升瓶が置かれていた)
山頭火酒に果てたる庵の梅雨 梅雨入りや一草庵の酒の瓶

一草庵から途中、護国神社にお参りし、30分ほど雨の中を道後温泉まで歩き、写真を撮った後、古い喫茶店で喉を潤おした後、ちんちん電車で大街道のホテルに戻り、その足で松山最後の夜を瀬戸内の美味しい魚とお酒を堪能しに出陣しました。

重要文化財、道後温泉本館 坊ちゃん列車
漱石のふと現れん梅雨道後 ごとごとと坊ちゃん列車梅雨の中

                                             (2011.5.29.記)



遍路吟

四国霊場48番札所、西林寺 同寺奥の院、杖ノ淵の空海像


<四国遍路開祖、衛門三郎史跡の寺、四国霊場別格第九番札所、文殊院で>
万緑の山柔らかく衛門寺

<四国霊場第46番札所、浄瑠璃寺で>
夏風やおびんづるいる浄瑠璃寺

薫風に千年伊吹浄瑠璃寺

薫風に千年香樹浄瑠璃寺

<四国霊場第47番札所、浄瑠璃寺で>

八坂寺や極楽橋を夏の風

<四国霊場第48番札所、西林寺で>

梅雨空に経よむ遍路西林寺

お遍路の経読む背中走り梅雨


<四国霊場第48番札所、西林寺奥の院、杖ノ淵で>
杖ノ淵名水走る梅雨の入り

餌売りがメタボと笑う夏の鴨

代掻きの田に白鷺の一羽おり

薄日射す梅雨の晴れ間の遍路道


梅雨に濡れ癒されに往く遍路道

梅雨に濡れ同行者追う遍路道

五七五詠みつつ辿る梅雨遍路



山頭火寓居「一草庵」吟

種田山頭火


<山頭火の終の棲家となった「一草庵」を訪ねた11.5.26.四国地方梅雨入り>
走り梅雨一草庵の山頭火

迎え梅雨句と酒で果つ山頭火

山頭火一草庵の迎え梅雨

青梅雨や鉄鉢の酒山頭火

山頭火酒に果てたる庵の梅雨

入梅や一草庵の酒の瓶

山頭火終の草庵梅雨の入り



車中吟


★空海さんに出逢う旅は、毎回、東京から四国まで列車で出かけています。「じぱんぐ倶楽部」の割引きの利く「ひかり」を使うので東海道山陽新幹線の東京ー岡山間4時間余り、JR四国の特急「しおかぜ」で岡山ー松山間3時間弱、合わせて7時間の列車行です。

★「安い航空券を見つければ、1時間で行けるのに、尻が痛くならないか」と周囲から声がかかりますが、生来、汽車の旅が好きなんで、見慣れた車窓風景を何度眺めても飽きないのですから、ご心配無用。今回は車窓に映る初夏の風景を詠みながらメモ帳に書き止めているうちに、退屈知らずで往復約15時間の空海さんに出逢う旅を楽しむことができました。以下、車中吟の中からご披露させていただきます。

東海道山陽新幹線「ひかり」の車窓から
往路
夏の雨富士を隠せし車窓かな

茶畑のまあるい起伏緑雨降る

万緑の濃淡見せて雨上がる

山襞に雲湧き上がり緑雨やむ

万緑の連山つなぐ送電線

旅のたび車窓に映る青田減り

植田あり青田もありし車窓かな

雨天から夏空になる新幹線

夏雲の湧き立つ楽し車窓かな


[JR四国「しおかぜ」の車窓から]
往路

夏雲や車窓から見る瀬戸の凪

標高は富士より高し雲の峰

復路
トラクター田を縦横に代を掻く

麦秋の田ひと際映える梅雨の入り

人濡らし田も濡れている梅雨の入り

瀬戸の凪鮑の寝言聞こえたり

梅雨空や瀬戸の島々紗を隔て




♪BGM:Chopin[Nocturne20]arranged by Reinmusik♪

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出逢う旅
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