Takydromus tachydromoidese
〜猫額庭に棲む日本金蛇(かなへび)たち〜

茶々 秀吉 捨て坊

★わが草むら式の小庭「猫額庭」を棲み家にしているニホンカナヘビのアルバム・コーナーです。偶然の“出合い頭のショット”ができた折々に画像を追加していこうと考えています。本来、爬虫類は苦手で、その一員であるトカゲの仲間のカナヘビをペットにしたいなどとおぞましいことを考えたことはありませんが、連続猛暑の夏以来たびたび出逢ううちに「偶然の出合いという形でなら、交流するのも楽しいナ」と思うようになりました。互いに目と目が合ったとき、静止したまま暫し睨めっこに付き合ってくれるのが、うれしいですね。先方さんは、デジカメを突き出してパシャパシャやる奴(筆者のことですが)をはてさてどう想っているのでしょうか。

「俺、ほんとは井守になりたかった日本金蛇」



昨年(2010)11月以来半年ぶりに5月2日(2011)、わが猫額庭に棲み付く日本金蛇と再会しました。秀吉や茶々に似ていますが、捨て坊の成長した姿かも知れません。よく見ると尻尾が根元のあたりからありません。でも元気そうで、尻尾も再生することでしょう。

★そして1週間後の5月9日、火鉢池の水替えをしていたとき、池面から半身だけ出して壁に張り付いている尻尾の長い日本金蛇を発見。容姿は昨夏の秀吉にそっくりです。さらによく見ると背中にモノアラガイの稚貝が2匹貼り付いています。水中に長いこと浸っていた証拠です。どうやら自分は陸棲の日本金蛇でなく、水陸両棲の井守と思っている気配です。

★翌10日、池面を囲む側壁を覗くと、やはり“秀吉”が下半身を水中に沈めたままへばり付いています。昨日、背中に張り付いていた貝の姿はありません。コンデジを突き出してシャッターを押すと、フラッシュ。2回、3回とフラッシュを焚いても不動。さらにレンズを近づけてフラッシュを焚くと、片方の前脚を壁から離し、白い腹を見せながらきょとん。

★2分余り経過しても同じポーズを続ける“秀吉”にこちらが痺れを切らして小枝でちょんと構うと、身をくねらせ、見事な蛇泳ぎで池を横切り、対面の壁際で鼻だけ水面に出して“鰐のポーズ”。以上の様子は写真でご披露させていただきます。

[2011年夏]
再会した尻尾のない日本金蛇(11.5.2.)
火鉢池(目高池)で再会した“秀吉”(11.5.9.)→→ 背中にモノアラガイ(物洗貝)が2匹貼り付いている
ひょいと振り向いた“秀吉”(11.5.10.) 下半身は水の中
鼻だけ出す“鰐のポーズ”の水中の“秀吉”(11.5.10.)
水中を遊弋しているのは、シロメダカ(白目高)
身を左右にくねらせる“蛇泳ぎ”で対面の壁面へ

「暫らく」の大見得のまま金蛇おり

わが金蛇日がな目高と水遊び

なななんと目高と泳ぐ金蛇かな

俺金蛇気持ちは井守池暮らし

可愛いと言へば可愛ゆし金蛇かな

                       鈴童 

もしかしたらモノアラガイを餌に?(11.5.10.)

ニホンカナヘビ(日本金蛇、日本蛇舅母) アカハライモリ(赤腹井守、赤腹蠑?)
カナヘビ科カナヘビ属(爬虫類) イモリ科トウヨウイモリ属(両生類)
昆虫エクスプローラより転借
wikipedより転借


[井守になった秀吉の物語]

★本来金魚とメダカ用だった火鉢池ですが、3年前に夏の日差し除けに入れていたホテイソウを水草に変えたのをきっかけに小さな水槽世界に異変が始まりました。まず、巻貝の仲間のモノアラガイ(物洗貝)が壁面にびっしりと貼り付き出したのです。購入した水草についていた卵が孵化、繁殖したのでしょう。ところが冬場になると、モノアラガイは壁面からすっかり姿を消し、底を浚っても貝殻も見当たらないのです。「火鉢池七不思議」の1つです。

[モノアラガイ(物洗貝)]

◆メダカ池がモノアラガイの大繁殖池に


★そして年が明け、水温むころになると、再び壁面に小さなモノアラガイが日毎に数を増やしていくのです。今年(2011)も5月の半ばの現在、壁面だけでなく、水中に大きく枝葉を広げた水草の上にも中にも数百個のモノアラガイだらけ。サカナの方はやはり3年前からメダカ(白メダカ)だけに切り換え、欠けると補充して常に10匹が泳いでいるようにしていました。その間、一度も繁殖する様子がなかったメダカですが、今月(5月)に入って水温が上がり、水面近くで活発に遊弋するようになったとき、10匹のはずが12匹、つまり2匹増えているのを発見しました。

シロメダカ12匹と水中の壁面に張り付いたモノアラガイ モノアラガイ
11.5.14.撮影

◆メダカも2匹増えたが


★詳しく観察すると、購入3年になるメダカのうち2匹が腹を膨らませているのを確認しました。時折、藻に腹部を擦り付けるような動きをしているので、産卵が近付いている感じです。しかし、産卵しても藻や水草にびっしりと貼り付いているモノアラガイの餌食になるのだろうな、と懸念しています。

◆モノアラガイに好かれる秀吉


★そして、そして、いよいよ本題です。やはり、ニホンカナヘビの秀吉は、自分は爬虫類ではなく、両生類のイモリだと確信しているのが明らかになってきたのです。11日、12日と本格的な雨降りとなったとき、火鉢池を覗いてみると、しっかりと下半身を水に浸け、壁面に貼り付いている秀吉を見つけました。背中にはモノアラガイが2個貼り付いていました。

壁面に貼り付いて動かない秀吉の背中に這い上るモノアラガイ
11.5.9.撮影

◆水中に沈んだまま1分余り

★そして、晴天のきょう(5月14日)、秀吉はメダカに混じって池面を身を左右にくねらせて泳ぎ回っていました。壁面の際に寄って、水面に四肢を広げてそのうち真っ直ぐに身を伸ばし、水中で昼寝を始めたのです。

池面を泳ぎ回った後、水中に静止して動かない秀吉 メダカが秀吉の上をすいすいと泳いでも同じポーズ

★そのとき、1匹のモノアラガイが秀吉の右後肢に貼り付きました。さすがに目が覚めたのか秀吉が向きを変えました。そして、なんと秀吉は、貝を後肢に浸けたまま再び眠りに入った様子です。

鼻だけ水面に出して不動の秀吉の後肢に貼り付くモノアラガイ モノアラガイは右肢裏から甲に移動
貝は水中を右後肢から尻尾→背中へと進む 貝はさらに肩から右前肢へ
貝は首から喉へ。秀吉は水中に体を沈めたまま不動 どうやら秀吉は眼を閉じて睡眠中

◆秀吉、水中で酔生夢死状態


★秀吉の首筋まで這い上ってきたモノアラガイは、貝殻を下にして(つまり仰向けになって)水面をぷかりぷかり。秀吉の方は同じ姿勢のまま、まったく動かず。ついには鼻先も水中に没し、“死んだ真似のポーズ”で1分余り。

池面を貝殻を下にして泳ぐモノアラガイ 上部に口が見える
秀吉の“死んだ真似のポーズ” 溺死したのか、と棒でお腹を軽く突くと元気に動き出した

★心配になって、再び棒でそっと腹部に触れると、秀吉は棒にしがみ付いてきました。生きている!いやあ、なぜかほっとしました。棒を優しく振り払うと、秀吉はのそのそと壁面に這い上がり、長い尻尾を水に浸けたまま、またもや不動の態勢に入りました。この間、コンデジでパシャパシャとフラッシュを焚き続けたのに、酔生夢死状態。


白い腹を見せ、水中の“死んだふり”から一転水面に顔を出した秀吉
同時に腹部が左右に膨らんだり縮んで呼吸再開 ゆっくりと泳ぎ出した秀吉
水から上がり、壁面に なぜかキョトンとしている秀吉

★それにしても何か変です。水中で微動だにせず、突如白い腹部を見せながら水中に没したままでいる秀吉。爬虫類の蜥蜴が日がな水中にいたら、低体温症になる恐れがあるのではないか。と心配しつつも、元気な様子に安堵。翌15日は朝から外出、この日は秀吉とは対面せずに終わりました。

秀吉、死す

◆白い腹を見せ、秀吉が池面に浮かんでいた

★5月16日朝、火鉢池の2日に一度の水替えをしようと池面を覗くと、池中央で白い腹を上にして、四肢を左右に開き、「キ」の字になった秀吉が浮かんでいました。体に触れても反応なし。一昨日、秀吉が酔生夢死状態の際に過ぎった死の影が、ほんとうになってしまいました。

◆井守になって旅立った秀吉

★庭の隅に葬ってやろうと割り箸で取り上げようとすると、左前肢に藻が引っ掛かってなかなか取れません。もしかして、藻に絡まり、もがき疲れての疲労死か?いや、他の三肢に藻が絡まった様子はなく、苦悶の痕跡もありません。自分は日本金蛇ではなく、井守と思い込んでいた秀吉は、水に浸かり過ぎ、心臓が低温静止したのではないでしょうか。そう、きっと秀吉は、朦朧、夢心地の中で井守としてあの世へ旅立ったのに違いありません。さよなら、秀吉。



[2010年夏]
ニホンカナヘビ(日本金蛇) ニホンカナヘビ
カナヘビ科カナヘビ属 カナヘビ科カナヘビ属
周りいるのはモノアラガイ(物洗貝) モノアラガイ(有肺目モノアラガイ科に分類の巻貝の一種)
モノアラガイ科モノアラガイ属 モノアラガイ科モノアラガイ属
10.9.18.撮影 10.9.18.撮影

★冒頭でも書きましたが、真夏日の上を行く猛暑日が連日記録更新を続けていた10年9月18日、火鉢池のシロメダカとモノアラガイたちのために水換えをしようと、水面に浮く水草やモノアラガイの様子を点検していたとき、水面から頭だけ突き出して内壁に貼り付いている黒い生き物を見つけました。いつもポケットに入れているコンデジカメラを急いで取り出し、水面すれすれにレンズを突き出してショット。瞬間、フラッシュが一閃。モニター画面を見ると茶褐色のワニ様の姿がくっきりと写っています。

★一瞬、トカゲと思ったものの、両生類でないトカゲが水に浸かって生活するだろうか、ひょっとしてイモリ!!イモリなら水陸またに活動して当然、となぜかわくわくしたものです。部屋に戻ってインターネットでWikipediaなどで撮影した画像の照合を続けた結果、ニホンカナヘビと判断せざるを得ないとの結論に達しました。ほんらい陸棲のカナヘビも猛暑を避けて体を冷やしていたのでしょうか。

ニホンカナヘビ(日本蜥蜴) ニホンカナヘビ
カナヘビ科カナヘビ属 カナヘビ科カナヘビ属
10.10.8.撮影 10.10.8.撮影

★猛暑日の連続記録も71日で止まり、くだんのトカゲの姿を見ることも無くなり、ちょっぴり淋しい思いでいたのですが、10月に入って鉢物を並べた棚にいる旧友に再会。以来、またときどき姿を確認していたところ、本日(10日)、彼(彼女?)とは一回り以上小振りで黒褐色のニホンカナヘビと鉢合わせ。早速、「あぷっぷ」の睨めっこをしながら、10数枚の画像をショットしました。ひょっとしたら、旧友はお母さんトカゲで、きょう出逢った子トカゲは彼女の子供かも知れないナ、と。

ニホンカナヘビ(日本蜥蜴) ニホンカナヘビ
カナヘビ科カナヘビ属 カナヘビ科カナヘビ属
10.10.10.撮影 10.10.10.撮影

10月11日午前9時半 雲一つない蒼穹の下、眩しい陽光を浴びている多肉植物の鉢物の棚に視線を遣ると、「やあ!」といった感じで夏以来の付き合いになった茶褐色の日本金蛇と目が合いました。朝の陽射しが強すぎてデジカメのモニター画面が真っ白になり、被写体が見極められません。太陽を体で遮り、影を作ってショット。何枚か撮っていたらフラッシュが発光、日本金蛇は跳び撥ねて鉢の裏へ遁走。

「茶々」 フラッシュに驚いて遁走する「茶々」
10.10.11.撮影 10.10.11.撮影

★諦めて火鉢池の水換え作業を再開しながら、ふと背後に気配を感じて鉢物棚に目を遣ると、アロエの葉の間から半身を伸ばして窺っている黒い奴。昨日の黒い小金蛇より一回り以上大きい別人いや別の日本金蛇です。もしかしたら茶褐色がお母さんで、これがお父さん、そして黒いチビが子供かな、と勝手に想像。爬虫類の金蛇の世界にそんなファミリー形成の習慣があるのかどうかも分からない素人の思い付きですから、詳しい方がこのコーナーに目を止められたら、ご教示下さい。当ホームページの[伝言板]に書き込んでいただけたら、嬉しいですね。

初お目見えの「秀吉」
10.10.11.撮影

★これからも爬虫類の彼らが冬眠するまでの間、偶然の出逢いの姿をショットできましたら、追加搭載したいと思いますので、乞うご期待。で、記述の便宜上、茶褐色金蛇を「茶々」、黒の大を「秀吉」、チビ黒を「捨て坊」と名付け、報告をさせていただきますので、ご了解ください。

「暫らく」と昇天したり冬金蛇
冬金蛇メロスの如く昇天す
自宅前の路上で10.11.22.撮影

★暦の上では「小雪」の11月22日、曇天ながら寒さを感じることもない朝9時すぎ、家の前の落葉を掃除していると、アスファルトの路面に金蛇の姿が目に止まりました。冬眠期なのに、と尻尾に触れてみましたが、右後脚を軽く上げた姿勢のまま不動。いまにも駆け出しそうな歌舞伎の「暫らく」のポーズ。なぜか息絶えていました。庭の片隅の“金魚塚”に埋葬してやりました。合掌。


♪BGM:わらべ歌[通りゃんせ]arranged by Ripple♪

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