１日１０句１０００句詠む第３６回

鈴童の遊び


1	農夫来てただ立ち尽くす旱畑	旱畑	夏	18.7.24.
2	鶏卵を拾ふゲージやひでり空	旱空	夏	18.7.24.
3	湖底より立木顔出す大旱	旱	夏	18.7.24.
4	土用波規制のブイを押し返す	土用波	夏	18.7.24.
5	サーファーの嬉々と潜りし土用波	土用波	夏	18.7.24.
6	規制ブイ引き千切るかに土用波	土用波	夏	18.7.24.
7	滴りや水琴窟の音みやび	滴り	夏	18.7.24.
8	滴りて水琴窟に楽響く	滴り	夏	18.7.24.
9	滴りを首に声上ぐ鍾乳洞	滴り	夏	18.7.24.
10	滴れる洞の奥の濡れ佛	滴り	夏	18.7.24.
11	列島を釜茹でにして七月尽	七月尽	夏	18.7.24.
12	あめんぼう水を凹ませ走るかな	あめんぼう	夏	18.7.24.
13	あめんぼう水を凹ませ走りけり	あめんぼう	夏	18.7.24.
14	海見ゆる棚田焦がすや旱空	旱空	夏	18.7.25.
15	海見ゆる棚田焦げゆく大ひでり	旱	夏	18.7.25.
16	落し文拾ひて読まず戻しけり	落し文	夏	18.7.25.
17	黒山羊さん読まずに食べし落し文	落し文	夏	18.7.25.
18	西行の辿りし径に落し文	落し文	夏	18.7.25.
19	落し文手に余るほど拾ひけり	落し文	夏	18.7.25.
20	落し文脇に移して過ぎにけり	落し文	夏	18.7.25.
21	落し文覗けど読まず戻しけり	落し文	夏	18.7.25.
22	牛車から門に投げ入る落し文	落し文	夏	18.7.25.
23	落し文ほどき観察する理科女	落し文	夏	18.7.25.
24	炎帝も熱中症の晩夏かな	炎帝・熱中症	夏	18.7.25.
25	玫瑰や破船の浜に寄する波	玫瑰	夏	18.7.26.
26	玫瑰やハングル文字の漂着舟	玫瑰	夏	18.7.26.
27	凌霄の落花描きし修羅場かな	凌霄花	夏	18.7.26.
28	残照にわれも負けじと凌霄花	凌霄花	夏	18.7.26.
29	凌霄の落花の数を持て余す	凌霄花	夏	18.7.26.
30	地に落ちて毒気をはらむ凌霄花	凌霄花	夏	18.7.26.
31	頭上には咲き誇りたる凌霄花	凌霄花	夏	18.7.26.
32	散り敷きて修羅場仕立ての凌霄花	凌霄花	夏	18.7.26.
33	道行かば落花狼藉凌霄花	凌霄花	夏	18.7.26.
34	惨劇の路上かと見ゆ凌霄花	凌霄花	夏	18.7.26.
35	ジャスミンの香の塊に噎びけり	ジャスミン	夏	18.7.26.
36	石竹やダム湖の水位下がりたり	石竹	夏	18.7.27.
37	石竹咲き水位の下がるダム湖かな	石竹	夏	18.7.27.
38	引き抜けば長い根ぞろり雪の下	雪の下	夏	18.7.27.
39	乾きたる畑のをちこち莧繁茂	莧	夏	18.7.27.
40	割って入る蕎麦屋の白き夏暖簾	夏暖簾	夏	18.7.27.
41	ジェット機の遠回りする雲の峰	着物峰	夏	18.7.27.
42	夕立来つり橋急ぐ術もなし	夕立	夏	18.7.27.
43	夕立や蜘蛛の子散らす草野球	夕立	夏	18.7.27.
44	コンビニの傘のはけゆく大夕立	夕立	夏	18.7.27.
45	保育園しんと静まる昼寝かな	昼寝	夏	18.7.27.
46	対面はサングラスしてスマホ繰る	サングラス	夏	18.7.27.
47	つんと鼻抜ける辛子や心太	心太	夏	18.7.28.
48	黒蜜を選ぶ乙女ら心太	心太	夏	18.7.28.
49	天突きで押せばにょろりと心太	心太	夏	18.7.28.
50	お好みで酸いも甘いも心太	心太	夏	18.7.28.
51	一本箸添へて出されし心太	心太	夏	18.7.28.
52	一本の塗り箸添へて心太	心太	夏	18.7.28.
53	練りたての辛子効かせて心太	心太	夏	18.7.28.
54	勇み肌つるつる啜る心太	心太	夏	18.7.28.
55	平安の貴族も食みし心太	心太	夏	18.7.28.
56	万太郎辛子利かせて心太	心太	夏	18.7.28.
57	浅草や万太郎食む心太	心太	夏	18.7.28.
58	呑兵衛も下戸も啜るや心太	心太	夏	18.7.28.
59	かなかなや信玄城址暮れなずむ	かなかな	秋	18.7.28.
60	蜩の鳴ひて無住の寺陰る	蜩	秋	18.7.28.
61	蜩の朝に鳴きけり山の宿	蜩	秋	18.7.28.
62	山の墓地蜩鳴ひて暮れにけり	蜩	秋	18.7.28.
63	蜩に急かされ下る山の道	蜩	秋	18.7.28.
64	蜩の声に店閉ず山の茶屋	蜩	秋	18.7.28.
65	蜩のまこと淋しき鳴き音かな	蜩	秋	18.7.28.
66	蜩の黄泉へ誘ふごと鳴けり	蜩	秋	18.7.28.
67	かなかなの鳴ひて城址の日暮れけり	かなかな	秋	18.7.28.
68	蜩の声も馳走や山の宿	蜩	秋	18.7.28.
69	蜩や峡の隠し湯日暮れけり	蜩	秋	18.7.28.
70	蜩の声に不動の野の仏	蜩	秋	18.7.28.
71	蜩や狸顔出す無住寺	蜩	秋	18.7.28.
72	蜩や金星早やも瞬きぬ	蜩	秋	18.7.28.
73	かなかなの鳴ひて始まる日暮れかな	かなかな	秋	18.7.28.
74	蜩の鳴ひて鴉の塒入り	蜩	秋	18.7.28.
75	蜩や人影の無き無人駅	蜩	秋	18.7.28.
76	蜩の鳴ひて部活の終る笛	蜩	秋	18.7.28.
77	蜩の鳴ひて砥ぎ屋も席畳む	蜩	秋	18.7.28.
78	葡萄狩むしゃむしゃと食むマスカット	葡萄	秋	18.7.29.
79	日の恵み受けて房垂る黒葡萄	葡萄	秋	18.7.29.
80	碁敵と一戦終へて葡萄食む	葡萄	秋	18.7.29.
81	葡萄をば皮ごと食みし露西亜人	葡萄	秋	18.7.29.
82	異国語で葡萄摘みゆく研修生	葡萄	秋	18.7.29.
83	ごうごうと厄日の厨茶碗割る	葡萄	秋	18.7.29.
84	厨から皿割れる音厄日なる	厄日	秋	18.7.29.
85	ビニール傘破れ捨てらる厄日かな	厄日	秋	18.7.29.
86	箱詰めの水用意して厄日待つ	厄日	秋	18.7.29.
87	一つ逸れ次の近づく厄日かな	厄日	秋	18.7.29.
88	災害の折重なりし夏越かな	夏越	夏	18.7.30.
89	茅の輪をば兎跳びして潜る子ら	茅の輪	夏	18.7.30.
90	二度三度茅の輪跨いで行く園児	茅の輪	夏	18.7.30.
91	車椅子かたりと越えし茅の輪かな	茅の輪	夏	18.7.30.
92	するすると茅の輪抜け行く車椅子	茅の輪	夏	18.7.30.
93	形代を流す幼に穢れ無し	形代	夏	18.7.30.
94	形代のすぐ沈むもの流るもの	形代	夏	18.7.30.
95	神歌を上げつ潜りし茅の輪かな	茅の輪	夏	18.7.30.
96	寄り添ひて茅の輪潜りつ自撮りかな	茅の輪	夏	18.7.30.
97	大茅の輪まだ青々と草いきれ	茅の輪	夏	18.7.30.
98	草いきれ残る茅の輪を潜りけり	茅の輪	夏	18.7.30.
99	神主の祝詞たゆたふ夏越かな	夏越	夏	18.7.30.
100	神歌をば詠ひつ潜る茅の輪かな	茅の輪	夏	18.7.30.
101	草いきれ残せし茅の輪潜りけり	茅の輪	夏	18.7.30.
102	三角の茅の輪潜りし祓かな	茅の輪	夏	18.7.30.
103	刈り立ての茅の輪の青き潜りけり	茅の輪	夏	18.7.30.
104	旧暦の夏越の社蝉時雨	夏越	夏	18.7.30.
105	草いきれ嗅ぎつ祓の輪を潜る	茅の輪	夏	18.7.30.
106	蝉の声社を包む祓の輪	茅の輪	夏	18.7.30.
107	災害の畳みかけ来る夏越かな	夏越	夏	18.7.30.
108	形代に名を書く社七月尽	形代・七月尽	夏	18.7.30.
109	暑気払ひ手羽の胡椒の効きしかな	暑気払ひ	夏	18.7.31.
110	なんのかの昨日も今日も暑気払ひ	暑気払ひ	夏	18.7.31.
111	居酒屋の客は声高暑気払ひ	暑気払ひ	夏	18.7.31.
112	見上ぐれば武骨逞し青胡桃	青胡桃	夏	18.7.31.
113	跨線橋渡ればたわわ青胡桃	青胡桃	夏	18.7.31.
114	青胡桃父の手作り五平餅	青胡桃	夏	18.7.31.
115	手を伸ばす一寸先の青胡桃	青胡桃	夏	18.7.31.
116	葉の色に紛れ武骨の青胡桃	青胡桃	夏	18.7.31.
117	乾きたる畑のをちこち滑莧	滑莧	夏	18.7.31.
118	捨て畑に版図広げし滑莧	滑莧	夏	18.7.31.
119	畑五日来ねばをちこち滑莧	滑莧	夏	18.7.31.
120	城址濠埋め尽くしたる布袋草	布袋草	夏	18.7.31.
121	蜩の声も混りて蝉時雨	蜩・蝉時雨	夏	18.7.31.
122	月下美人早よ見に来よと夜の電話	月下美人	夏	18.7.31.
123	電動ソー唸る岸辺の草いきれ	草いきれ	夏	18.8.1.
124	刈られたる野道に強き草いきれ	草いきれ	夏	18.8.1.
125	逞しき命の証し草いきれ	草いきれ	夏	18.8.1.
126	大ジョッキぐびりと呑みて暑気払ひ	暑気払ひ	夏	18.8.1.
127	二杯目も大ジョッキなり暑気払ひ	暑気払ひ	夏	18.8.1.
128	大ジョッキ冬には言はぬ暑気払ひ	暑気払ひ	夏	18.8.1.
129	暑気払ひノンアルコール飲むもゐて	暑気払ひ	夏	18.8.1.
130	大ジョッキがちりと合はせ暑気払ひ	暑気払ひ	夏	18.8.1.
131	風抜ける社の森は蝉時雨	蝉時雨	夏	18.8.1.
132	蜩の昼間から鳴く社かな	蜩	秋	18.8.1.
133	むんむんと熱気の野道秋隣	秋隣	夏	18.8.1.
134	草の香を残せし茅の輪潜りけり	茅の輪	夏	18.8.2.
135	暑かあと熊本弁の漢かな	暑し	夏	18.8.2.
136	屋外機競ひて唸る残暑かな	残暑	秋	18.8.2.
137	八月忌六日九日十五日	八月	秋	18.8.2.
138	八月は六日九日十五日	八月	秋	18.8.2.
139	八月や六日九日十五日	八月	秋	18.8.2.
140	六日来て九日が来て原爆忌	原爆忌	秋	18.8.2.
141	風化させじ六日九日原爆忌	原爆忌	秋	18.8.2.
142	散水のホース波打つ残暑かな	残暑	秋	18.8.2.
143	朱の塔の風鐸黙す残暑かな	残暑	秋	18.8.2.
144	朱の塔を燃え立たすかに秋暑し	秋暑し	秋	18.8.2.
145	照り返す多摩の横山秋暑し	秋暑し	秋	18.8.2.
146	片蔭を行交ふ人の江戸しぐさ	片蔭	夏	18.8.2.
147	黒山羊の読まずに食べし落し文	落と文	夏	18.8.2.
148	かなかなの鳴いて起さる山の宿	かなかな（蜩）	秋	18.8.3.
149	空襲の終りし夜や盆の月	盆の月	秋	18.8.3.
150	父の齢過ぎて仰ぎし盆の月	盆の月	秋	18.8.3.
151	解除さる灯火管制盆の月	盆の月	秋	18.8.3.
152	名月の先触れ務め盆の月）	盆の月	秋	18.8.3.
153	とも白髪並べて見上ぐ盆の月	盆の月	秋	18.8.3.
154	路地裏を風の過るや盆の月	盆の月	秋	18.8.3.
155	路地裏の仄と明かるき盆の月	盆の月	秋	18.8.3.
156	夏の果て待てど釜茹で続きけり	夏の果て	夏	18.8.3.
157	夏の果て首長くして待つ列島	夏の果て	夏	18.8.3.
158	咲き上り風に頷く立葵	立葵	夏	18.8.3.
159	照りつける日中に紅白立葵	立葵	夏	18.8.3.
160	照りつける日中に眩し立葵	立葵	夏	18.8.3.
161	日暮れには日暮れの風情立葵	立葵	夏	18.8.3.
162	買い忘れ戻る路地ばた立葵	立葵	夏	18.8.3.
163	咲き上り下から散りぬ立葵	立葵	夏	18.8.3.
164	朱の塔を燃え立たすかの残暑かな（高幡不動五重塔)	残暑	秋	18.8.4.
165	朱の塔の燃え立つごとき残暑かな	残暑	秋	18.8.4.
166	青胡桃拾って笑みし幼かな	青胡桃	夏	18.8.4.
167	土ぼこり上がる日中の胡麻の花	胡麻の花	夏	18.8.4.
168	蜜吸ひの虫よびつけて胡麻の花	胡麻の花	夏	18.8.4.
169	胡麻咲いて畑に小さき土ぼこり	胡麻の花	夏	18.8.4.
170	夕顔の開く日暮れや風止まる	夕顔	夏	18.8.4.
171	月光にレース飾りの烏瓜	カラスウリの花	夏	18.8.4.
172	薊かと寄れば優しき田村草	田村草	秋	18.8.4.
173	落蝉の一声鳴ひて果てにけり	蝉	夏	18.8.4.
174	列島は釜茹でなれど赤とんぼ	赤とんぼ	秋	18.8.5.
175	秋立てど秋一粒の塵もなし	立秋	秋	18.8.5.
176	蝗取りいまは懐かし蝗かな	蝗	秋	18.8.5.
177	蝗取りいまは懐かし蝗跳ぶ	蝗	秋	18.8.5.
178	列島を釜茹でにする惨暑かな	残暑	秋	18.8.5.
179	顔拭ひ首を拭ひし残暑かな	残暑	秋	18.8.5.
180	をちこちで四十度越ゆる秋初め	初秋	秋	18.8.5.
181	釜茹での湯を下げて欲しけふ立秋	立秋	秋	18.8.5.
182	釜茹でのまま列島の秋初め	初秋	秋	18.8.5.
183	立秋のはずが居座る酷暑かな	立秋・酷暑	秋夏	18.8.5.
184	列島は釜茹でのまま秋初め	初秋	秋	18.8.5.
185	桐一葉ふわりと落ちし蟻の列	桐一葉・蟻	秋・夏	18.8.6.
186	重なるも除けるもありて桐の秋	桐の秋	秋	18.8.6.
187	散る一葉かさりと聞こゆ空耳か	散る一葉	秋	18.8.6.
188	空耳かかさりと聞こゆ桐一葉	桐一葉	秋	18.8.6.
189	桐一葉空に一筋飛行雲	桐一葉	秋	18.8.6.
190	桐一葉一葉一葉のいのちかな	桐一葉	秋	18.8.6.
191	連れ立ちて散る葉もありて桐の秋	桐の秋	秋	18.8.6.
192	蔵の屋根庇に転ぐ桐一葉	桐一葉	秋	18.8.6.
193	桐一葉六日九日過ぎにけり	桐一葉	秋	18.8.6.
194	六日が過ぎ九日も過ぎ桐の秋	桐の秋	秋	18.8.6.
195	六日過ぎ九日も過ぎ一葉疾し	一葉疾し	秋	18.8.6.
196	蝸牛だよなと食みぬエスカルゴ	蝸牛	秋	18.8.6.
197	噺家の噺つ脱ぎし夏羽織	夏羽織	秋	18.8.6.
198	鉄棒の子さかさに見上ぐ秋の空	秋空	秋	18.8.6.
199	鉄棒で逆さに見上ぐ秋の空	秋空	秋	18.8.6.
200	逆上がり逆さに見上ぐ雲の峰	雲の峰	夏	18.8.6.
201	照りつける日中に赤き立葵	立葵	夏	18.8.6.
202	胡麻咲きし畑に小さき土ぼこり	胡麻の花	夏	18.8.6.
203	土ぼこり上がる畑や胡麻の花	胡麻の花	夏	18.8.6.
204	熱風に耐えて咲きけり胡麻の花	胡麻の花	夏	18.8.7.
205	土ぼこり舞ふ畑中の胡麻の花	胡麻の花	夏	18.8.7.
206	頑健な農婦に似たる胡麻咲けり	胡麻の花	夏	18.8.7.
207	照りつける日に泰然と胡麻の花	胡麻の花	夏	18.8.7.
208	本堂を埋める僧侶や施餓鬼寺	施餓鬼	秋	18.8.7.
209	勤行の男声波寄す大施餓鬼	施餓鬼	秋	18.8.7.
210	勤行の男声轟く大施餓鬼	施餓鬼	秋	18.8.7.
211	大施餓鬼堂宇揺るがす読経かな	施餓鬼	秋	18.8.7.
212	杉の香の塔婆配らる施餓鬼堂	施餓鬼	秋	18.8.7.
213	新しき塔婆に変る施餓鬼墓地	施餓鬼	秋	18.8.7.
214	銅鑼太鼓木魚唸りし施餓鬼寺	施餓鬼	秋	18.8.7.
215	昼日中影なき畑の胡麻の花	胡麻の花	夏	18.8.7.
216	影失せて日は天頂に胡麻の花	胡麻の花	夏	18.8.7.
217	影消えて日は天頂に胡麻の花	胡麻の花	夏	18.8.8.
218	嘆き来し酷暑解けたり夏惜しむ	夏惜しむ	夏	18.8.8.
219	爽やかに肌撫でる風夏惜しむ	夏惜しむ	夏	18.8.8.
220	爽やかに肌撫でる風夏の果	夏の果	夏	18.8.8.
221	卒塔婆のどれも新し夏の果	夏の果	夏	18.8.8.
222	釜茹での日々の終れば夏惜しむ	夏惜しむ	夏	18.8.8.
223	涼風に心和らぐ夏の果て	夏の果	夏	18.8.8.
224	涼風に頬を撫でられ夏惜しむ	夏惜しむ	夏	18.8.8.
225	小便小僧高く吹き上げ夏惜しむ	夏惜しむ	夏	18.8.8.
226	音立てて回る水車や夏の果	夏の果	夏	18.8.8.
227	狛犬の阿吽の口や暮の夏	夏の果	夏	18.8.8.
228	狛犬の阿吽の口や夏終る	夏終る	夏	18.8.8.
229	宿題の工作仕上げ夏の果	夏の果	夏	18.8.9.
230	少年もいつか語り部原爆忌	原爆忌	夏	18.8.9.
231	安居終へ寺出る僧の手ニスマホ	安居	夏	18.8.9.
232	巡り来し六日九日八月忌	八月	秋	18.8.9.
233	桐一葉落ちてわずかに転げけり	桐一葉	秋	18.8.9.
244	屋外機回り続けて星月夜	星月夜	秋	18.8.9.
245	地球てふ星を眺むる遠き星			18.8.9.
246	落葉松の淡く霞し秋の空	秋空	秋	18.8.9.
247	姿見に姿曝せば生身魂	生身魂	秋	18.8.9.
248	姿見に写る吾身ぞ生身魂	生身魂	秋	18.8.9.
249	生身魂ばかり集ひし句会かな	生身魂	秋	18.8.10.
250	還暦が若手と呼ばれ扇置く	扇置く	秋	18.8.10.
251	若女将胸に挿したる秋扇	秋扇	秋	18.8.10.
252	高点句詠んで貰いひし秋扇	秋扇	秋	18.8.10.
253	秋扇ぱたと扇ひで香を遺す	秋扇	秋	18.8.10.
254	秋扇の蔭でおほほと神楽坂	秋扇	秋	18.8.10.
255	若女将指揮棒のごと秋扇	秋扇	秋	18.8.10.
256	大女将指図に使う秋扇	秋扇	秋	18.8.10.
257	政治家の忙しく扇ぐ秋扇	秋扇	秋	18.8.10.
258	貰ひしが使いみち無き秋扇	秋扇	秋	18.8.10.
259	抽斗の秋扇開き戻しけり	秋扇	秋	18.8.11.
260	不思議めく漢は差さぬ秋日傘	秋日傘	秋	18.8.11.
261	老尼差す鼠色淡き秋日傘	秋日傘	秋	18.8.11.
262	同行二人背に黒々と秋遍路	秋遍路	秋	18.8.11.
263	接待のお茶で昼摂る秋遍路	秋遍路	秋	18.8.11.
264	鯊船の縦横斜め三番瀬	鯊	秋	18.8.11.
265	鯊船の散らばり浮ぶ三番瀬	鯊	秋	18.8.11.
266	鯊船を浮かべて眩し三番瀬	鯊	秋	18.8.11.
267	民宿の主の日課鰍突く	鰍	秋	18.8.11.
268	山宿の主自ら鰍突き	鰍	秋	18.8.11.
269	伐られたる竹の青々匂ひけり	竹伐る	秋	18.8.11.
270	ありがたや豊作告げる早稲の花	早稲の花	秋	18.8.11.
271	一斉に越後平野は稲の花	稲の花	秋	18.8.11.
272	稲の花咲ひて安堵の米農家	稲の花	秋	18.8.11.
273	庄内も越後も嬉し稲の花	稲の花	秋	18.8.11.
274	安達太良に稔りを念じ稲の花	稲の花	秋	18.8.11.
275	噴出せしごとくに咲けり早稲の花	早稲の花	秋	18.8.11.
276	妙高にまだ雪はなし稲の花	稲の花	秋	18.8.11.
277	福島の復興告げて稲の花	稲の花	秋	18.8.11.
278	豊穣の先触れ嬉し稲の花	稲の花	秋	18.8.11.
279	瑞穂なる国に可憐な稲の花	稲の花	秋	18.8.11.
280	野仏の頬弛ませて稲咲けり	稲の花	秋	18.8.11.
281	稲の花咲ひて待たるる稔りかな	稲の花	秋	18.8.11.
282	声上げて読む子少なし早稲の花	早稲の花	秋	18.8.11.
283	どの子にも得手のありしや稲の花	稲の花	秋	18.8.11.
284	広げ閉じ広げ閉じして秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
285	白魚の指のまさぐる秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
286	化粧濃き女はたはた秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
287	香水の強き女や秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
288	老妓の所作ぴしりと決めし秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
289	隙の無き老妓の所作や秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
290	父の齢過ぎてしみじみ盆の月	盆の月	秋	18.8.12.
291	雉鳩の声くぐもりて今朝は秋	秋	秋	18.8.12.
292	左足踏み出す一歩今朝の秋	秋	秋	18.8.12.
293	長尻の炎帝去りて白帝来	炎帝・白帝	夏秋	18.8.12.
294	エアコンは付けず窓明け秋入るる	秋	秋	18.8.12.
295	屋外機どこも音せず今朝の秋	秋	秋	18.8.12.
296	鹿鳴館踊る淑女の秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
297	御令閨とは大時代秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
298	歌舞伎座の幕間のロビー秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
299	縁台の将棋めずらし秋団扇	秋扇	秋	18.8.12.
300	おちょぼ口舞妓の胸の秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
301	薄墨の涼の一文字秋扇	秋扇	秋	18.8.12.
302	山宿の亭主が突きし鰍食む	鰍	秋	18.8.12.
303	房がぶり種なし葡萄食む剛毅	葡萄	秋	18.8.12.
304	種なしの葡萄がぶりと食みにけり	葡萄	秋	18.8.12.
305	蜩の鳴ひて日暮れを寂しめり	蜩	秋	18.8.12.
306	抽斗の秋扇開きまた戻す	秋扇	秋	18.8.13.
307	抽斗の秋扇手にし戻しけり	秋扇	秋	18.8.13.
308	秋扇手にしたものの仕舞けり	秋扇	秋	18.8.13.
309	秋扇手にしたもののまた戻す	秋扇	秋	18.8.13.
310	出番なき机の奥の捨扇	捨扇	秋	18.8.13.
311	吾暮し使ひみちなき捨扇	捨扇	秋	18.8.13.
312	風雅なれど使ひみちなき捨扇	捨扇	秋	18.8.13.
313	秋扇使ふ機会の無き暮し	秋扇	秋	18.8.13.
314	蜩の鳴ひて社を風過る	蜩	秋	18.8.13.
315	蜩の鳴ひて歩足の速まれり	蜩	秋	18.8.13.
316	蜩の鳴ひて駈け出す使ひの子	蜩	秋	18.8.13.
317	蜩の鳴けばご飯と母の声	蜩	秋	18.8.13.
318	種なしの葡萄房ごと食む漢	葡萄	秋	18.8.13.
319	二百十日待たず台風数珠繋ぎ	二百十日・台風	秋	18.8.13.
320	二百十日待てぬ台風数珠繋ぎ	二百十日・台風	秋	18.8.13.
321	無用の用秋の扇の風雅かな	秋扇	秋	18.8.13.
322	ゆるやかに秋の扇の風雅かな	秋扇	秋	18.8.13.
323	麗人の秋扇の所作雅なる	秋扇	秋	18.8.13.
324	香のほのか秋扇の所作雅なる	秋扇	秋	18.8.13.
325	心映ゆ秋扇の所作雅なる	秋扇	秋	18.8.13.
326	心映ゆ秋扇の香の雅なる	秋扇	秋	18.8.13.
327	心映ゆ秋の扇の風雅かな	秋扇	秋	18.8.13.
328	心映ゆ秋扇の香の仄かなる	秋扇	秋	18.8.13.
329	さり気なく流れ来し香や秋扇	秋扇	秋	18.8.13.
330	学年で競ふ案山子や学習田	案山子	秋	18.8.14.
331	ガンダムの案山子登場コンクール	案山子	秋	18.8.14.
332	ガンダムの案山子登場収穫祭	案山子	秋	18.8.14.
333	太陽光使ひ声出す案山子かな	案山子	秋	18.8.14.
334	指導者の案山子会する収穫祭	案山子	秋	18.8.14.
335	青々と竹新しきばったんこ	ばったんこ	秋	18.8.14.
336	ばったんこじっと見守る三歳児	ばったんこ	秋	18.8.14.
337	分かってはゐるが謎めく添水かな	添水	秋	18.8.14.
338	秋耕の農夫の影の長きかな	秋耕	秋	18.8.14.
339	秋耕の鍬振る農夫影伸ばす	秋耕	秋	18.8.14.
340	秋蒔きを終ゆれば富士の初冠雪	秋蒔き	秋	18.8.14.
341	葡萄をば皮ごとむしゃと食む露人	葡萄	秋	18.8.14.
342	露西亜人皮ごと葡萄食みにけり	葡萄	秋	18.8.14.
343	出番なき鞄の底の秋扇	秋扇	秋	18.8.14.
344	雅なる香の流れ来し秋扇	秋扇	秋	18.8.14.
345	秋耕の農夫日暮れの長い影	秋耕	秋	18.8.14.
346	秋の夜や旅寝の宿の独り酒	秋の夜	秋	18.8.15.
347	秋の夜や後期高齢者てふ吾	秋の夜	秋	18.8.15.
348	屋外機唸り続けし秋の夜	秋の夜	秋	18.8.15.
349	地下道に浮浪者あふる敗戦忌	敗戦忌	秋	18.8.15.
350	終戦日記憶の文字の擦れゆく	終戦日	秋	18.8.15.
351	終戦日記憶の文字の擦れけり	終戦日	秋	18.8.15.
352	風化する戦火の記憶敗戦忌	敗戦忌	秋	18.8.15.
353	雑炊に群がる人や終戦日	終戦日	秋	18.8.15.
354	闇米を運ぶ担ぎ屋敗戦忌	敗戦忌	秋	18.8.15.
355	八月や灯火管制解除の夜	八月	秋	18.8.15.
356	カストリに酔ひを求めし敗戦忌	敗戦忌	秋	18.8.15.
357	カストリに酔ひを託せし敗戦忌	敗戦忌	秋	18.8.15.
358	カストリに酔ひを託して敗戦忌	敗戦忌	秋	18.8.15.
359	大方は戦火を知らぬ生身魂	生身魂	秋	18.8.15.
360	教科書に墨塗る授業敗戦忌	敗戦忌	秋	18.8.15.
361	DDT列島まぶす敗戦忌	敗戦忌	秋	18.8.15.
362	秋耕の農夫夕日に長い影	秋耕	秋	18.8.15.
363	猛暑酷暑果ててしめやか秋の夜	秋の夜	秋	18.8.16.
364	騒がしきことども過ぎて秋の夜	秋の夜	秋	18.8.16.
365	新しき卒塔婆を過る黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.16.
366	花色を暮色に溶かし藤袴	藤袴	秋	18.8.16.
367	風に揺れ白きに還る藤袴	藤袴	秋	18.8.16.
368	目立たねど花揺らしをり藤袴	藤袴	秋	18.8.16.
369	波立てる野道に揺るる藤袴	藤袴	秋	18.8.16.
370	池の面に浮雲浮かべ藤袴	藤袴	秋	18.8.16.
371	野を渡る風に一叢藤袴	藤袴	秋	18.8.16.
372	無住寺の日暮れに霞む藤袴	藤袴	秋	18.8.16.
373	目立たねど遠目に分かる藤袴	藤袴	秋	18.8.16.
374	藤袴遠目に分かる野道かな	藤袴	秋	18.8.16.
375	二倍半生きて迎へる獺祭忌	獺祭忌	秋	18.8.17.
376	獺祭忌痺れし膝を崩しけり	獺祭忌	秋	18.8.17.
377	合同句集編みて迎へし獺祭忌	獺祭忌	秋	18.8.17.
378	高弟の認めぬ名句獺祭忌	獺祭忌	秋	18.8.17.
379	小便は如雨露のごとし獺祭忌	獺祭忌	秋	18.8.17.
380	獺祭忌掃除の好きな隣家かな	獺祭忌	秋	18.8.17.
381	坊主頭一筆書きの子規忌かな	子規忌	秋	18.8.17.
382	糸瓜忌や薬草園の大糸瓜	糸瓜忌	秋	18.8.17.
383	獺祭忌ぶらりと下がる糸瓜かな	獺祭忌	秋	18.8.17.
384	十四五本論じて一書子規忌かな	子規忌	秋	18.8.17.
385	十四五本論ずる新書獺祭忌	獺祭忌	秋	18.8.17.
386	十四五本新解釈の子規忌かな	子規忌	秋	18.8.17.
387	獺祭と言ふ名酒あり獺祭忌	獺祭忌	秋	18.8.17.
388	獺の絶えし列島獺祭忌	獺祭忌	秋	18.8.17.
389	ふるさとを持たぬ八十路や芒原	芒	秋	18.8.17.
390	廃線路覆い隠して芒原	芒	秋	18.8.17.
391	廃村の墓地跡つつむ芒原	芒	秋	18.8.17.
392	廃村の墓地跡と知る芒原	芒	秋	18.8.17.
393	廃村の山の墓地跡芒原	芒	秋	18.8.17.
394	限界の集落消えし芒の野	芒	秋	18.8.17.
395	坊主頭一筆で描く子規忌かな	芒	秋	18.8.17.
396	黒揚羽吉凶告げて過ぎりしや	黒揚羽	夏	18.8.17.
397	黒揚羽過ぎり吉凶計りたり	黒揚羽	夏	18.8.17.
398	過ぎりしに意味はなけれど黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
399	黒揚羽吉凶告げし過ぎりかな	黒揚羽	夏	18.8.17.
400	吉凶を告げる過ぎりや黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
401	一塊の闇過ぎりたり黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
402	一塊の闇の深さや黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
403	黒揚羽無住の寺を守るかに	黒揚羽	夏	18.8.17.
404	卒塔婆をついと離れし黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
405	のっぺらも三つ目も怖し芒原	芒	秋	18.8.17.
406	ひたすらに藪漕ぐ背の稲光	稲光	秋	18.8.17.
407	影が影作りて舞ふや黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
408	何ごとか告げた気に舞ふ黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
409	誰かの死告げに来たるか黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
410	黒門町練り塀小路や黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
412	卒塔婆や供花の蜜吸ふ黒揚羽	黒揚羽	夏	18.8.17.
413	糸瓜忌やぶらりと下がる子規旧居	糸瓜忌	秋	18.8.17.
414	のっぺら坊顔出しさうな芒原	芒	秋	18.8.17.
415	二百十日待てぬ台風列なせり	二百十日	秋	18.8.17.
416	秋耕の農夫影伸ぶ日暮れかな	秋耕	秋	18.8.17.
417	蜩やご飯よと呼ぶ母の声	蜩	秋	18.8.17.
418	新涼やパソコン開きメール読む	新涼	秋	18.8.18.
419	新涼やあるかなきかの朝の風	新涼	秋	18.8.18.
420	新涼や雉鳩の声弾みをり	新涼	秋	18.8.18.
421	取水堰音轟々と赤とんぼ	赤とんぼ	秋	18.8.18.
422	B29悪夢の時代赤とんぼ	赤とんぼ	秋	18.8.18.
423	隊形を崩すもありて赤とんぼ	赤とんぼ	秋	18.8.18.
424	去りてまた戻る竿先赤とんぼ	赤とんぼ	秋	18.8.18.
425	群れ飛べり大室山の赤とんぼ	赤とんぼ	秋	18.8.18.
426	取水堰ついと過ぎりし銀やんま	とんぼ	夏	18.8.18.
427	山頂の逃げ場なき身や秋の雷	秋の雷	秋	18.8.18.
428	橋下に逃れて見上ぐ秋の雷	秋の雷	秋	18.8.18.
429	仰向けに落ちてそのまま秋の蝉	秋蝉	秋	18.8.19.
430	落蝉のみな仰向けに果てにけり	蝉	夏	18.8.19.
431	鳴き尽し落蝉ことり逝きにけり	蝉	夏	18.8.19.
432	かなかなの鳴ひて三毛猫立ち上がる	かなかな	秋	18.8.19.
433	木の幹を横に動きし秋の蝉	秋蝉	秋	18.8.19.
434	じいとだけ呟ひて去る秋の蝉	秋蝉	秋	18.8.19.
435	野川沿い小さき馬場あり木槿咲く	木槿	秋	18.8.19.
436	菊坂の路地の鉢植え鳳仙花	鳳仙花	秋	18.8.19.
437	宅配のいつも小走り鳳仙花	鳳仙花	秋	18.8.19.
438	午後三時路地の白粉咲き競ふ	白粉の花	秋	18.8.19.
439	群れ咲きて路地にぎやかに夕化粧	夕化粧（＝白粉花）	秋	18.8.19.
440	火襷の色よき二百十日かな	二百十日	秋	18.8.20.
441	窯の火を落して二百十日かな	二百十日	秋	18.8.20.
442	窯出しの火だすき温き厄日かな	厄日	秋	18.8.20.
443	火だすきの壺を取り出す厄日かな	厄日	秋	18.8.20.
444	火だすきの縄目鮮やか厄日去ぬ	厄日	秋	18.8.20.
445	鉢物を下ろして二百十日かな	二百十日	秋	18.8.20.
446	縁台の将棋待ったと秋団扇	秋団扇	秋	18.8.20.
447	素潜りを終へし海女食む巨峰かな	巨峰	秋	18.8.20.
448	葡萄食むクレオパトラの紅き唇	葡萄	秋	18.8.20.
449	葡萄園ときどきしゃがむ大男	葡萄園	秋	18.8.20.
450	海女小屋の海女ら半裸で葡萄食む	葡萄	秋	18.8.21.
451	下ネタの好きな海女らや葡萄食む	葡萄	秋	18.8.21.
452	下ネタに海女大笑ひ葡萄食む	葡萄	秋	18.8.21.
453	海女小屋は下ネタばかりマスカット	葡萄	秋	18.8.21.
454	海女小屋は下ネタばかり黒葡萄	葡萄	秋	18.8.21.
455	海女小屋の巨乳が食みし巨峰かな	巨峰	秋	18.8.21.
456	下ネタの好きな海女らが葡萄食む	葡萄	秋	18.8.21.
457	葡萄食みつのろ気に変る海女の小屋	葡萄	秋	18.8.21.
458	葡萄食みつのろ気話の海女の小屋	葡萄	秋	18.8.21.
459	朝採りの秋茄子走る夜露かな	秋茄子	秋	18.8.21.
460	朝採りの秋茄子伝ふ夜露かな	秋茄子	秋	18.8.21.
461	秋茄子採る手休めて腰伸ばす	秋茄子	秋	18.8.21.
462	秋茄子の小粒になれど色褪せず	秋茄子	秋	18.8.21.
463	ひぐらしの澄みし鳴き音の孤愁かな	蜩	秋	18.8.21.
464	かなかなに浮かれ心の鎮もれる	かなかな	秋	18.8.21.
465	かなかなのなぜか涙を誘ひけり	かなかな	秋	18.8.21.
466	かなかなにこころ淋しき日暮れかな	かなかな	秋	18.8.21.
467	予報士の声高になる厄日かな	かなかな	秋	18.8.21.
468	樽の底抜きしごときの厄日かな	厄日	秋	18.8.22.
469	鬼灯を鳴らす乙女の時代あり	鬼灯	秋	18.8.22.
470	鬼灯を鳴らして遊ぶ昭和かな	鬼灯	秋	18.8.22.
471	ぶいぶいと鬼灯鳴らす昭和の子	鬼灯	秋	18.8.22.
472	かなかなの鳴ひて夕風過ぎりけり	かなかな	秋	18.8.22.
473	かなかなや路地の子ら散る昭和かな	かなかな	秋	18.8.22.
474	夕日浴び朱色燃え立つ鷹の爪	鷹の爪	秋	18.8.22.
475	農の軒西日と競ふ唐辛子	唐辛子	秋	18.8.22.
476	艶やかな赤照り返す鷹の爪	鷹の爪	秋	18.8.22.
477	朝食の卓に山盛り貝割菜	貝割菜	秋	18.8.22.
478	列島を二百十日の首飾り	二百十日	秋	18.8.23.
479	男踊り女踊りや風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
480	胡弓の音啜り哭くかに風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
481	胡弓の音辻から辻へ風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
482	胡弓の音夜更けの辻に風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
483	おわら節夜更けの辻を風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
484	二階から踊り見下ろす風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
485	鈴なりの人が見守る風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
486	坂道を胡弓と鉦の風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
487	里帰り踊り手になる風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
488	雲切れて月の見下ろす風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
489	胡弓の音ふと涙ぐむ風の盆	風の盆	秋	18.8.23.
490	平成の閉めは最多の厄日かな	厄日	秋	18.8.24.
491	二百十日鉢なぎ倒し余波の風	二百十日	秋	18.8.24.
492	蔓草や二百十日を凌ぎきる	二百十日	秋	18.8.24.
493	芒の穂払ひつ走る単車輌	穂芒	秋	18.8.24.
494	芒原掻き分けて来るディーゼル車	芒	秋	18.8.24.
495	気動車を励ますごとく芒原	芒	秋	18.8.24.
496	駆動車を絞り出すかに芒原	芒	秋	18.8.24.
497	放棄田を版図に加へ芒原	芒	秋	18.8.24.
498	縦横に気動車揺るる芒原	芒	秋	18.8.24.
499	縦横に気動車揺るる芒の野	芒野	秋	18.8.24.
500	八ヶ岳仰ぎつ走る芒原	芒	秋	18.8.24.
501	芒原波打つ先に八ヶ岳	芒	秋	18.8.24.
502	夕日背に吾影長き芒原	芒	秋	18.8.24.
503	すすき野や鉄橋渡る貨車百輌	芒野	秋	18.8.24.
504	すすき野や数え疲れし貨車百輌	芒野	秋	18.8.24.
505	二百十日隣の三毛が訪ね来る	二百十日	秋	18.8.25.
506	二百十日猫の寄合ふ農具小屋	二百十日	秋	18.8.25.
507	片蔭を行き交ふ人の江戸しぐさ	片蔭	夏	18.8.25.
508	蜩は片仮名で鳴くカナカナと	蜩	秋	18.8.25.
509	蜩は楷書で鳴けりかなかなと	蜩	秋	18.8.25.
510	かなかなの澄みし鳴き音の日暮れかな	かなかな	秋	18.8.25.
511	かなかなの鳴ひて日暮れを仕切りけり	かなかな	秋	18.8.25.
512	かなかなの鳴ひて厨に灯が灯る	かなかな	秋	18.8.25.
513	かなかなの鳴ひて鎮もる平林寺	かなかな	秋	18.8.25.
514	ひぐらしや魚板乾びし禅の寺	蜩	秋	18.8.25.
515	蜩やゆっくり回る水車小屋	蜩	秋	18.8.25.
516	かなかなの声よく通る九品仏	かなかな	秋	18.8.25.
517	河原辺に撫子咲けりただ一本（１８．８．２６．）	撫子	秋	18.8.26.
518	砂利山に撫子咲けり嫋やかに（１８．８．２６．）	撫子	秋	18.8.26.
519	砂利山に撫子咲けり強き花（１８．８．２６．）	撫子	秋	18.8.26.
520	石畳姫なでしこの逞しく（１８．８．２６．）	撫子	秋	18.8.26.
521	撫子の供花にはあらず地から咲く（１８．８．２６．）	撫子	秋	18.8.26.
522	葛の花触れんとすれば深き渓（１８．８．２６．）	葛の花	秋	18.8.26.
523	葛咲くや紅蠟燭の数十本（１８．８．２６．）	葛の花	秋	18.8.26.
524	葉隠れに紅の蠟燭葛咲けり（１８．８．２６．）	葛の花	秋	18.8.26.
525	葛の葉の隠し切れずに葛の花（１８．８．２６．）	葛の花	秋	18.8.26.
526	道標覆い隠して葛の花（１８．８．２６．）	葛の花	秋	18.8.26.
527	底深き瀬音の山路葛の花（１８．８．２６．）	葛の花	秋	18.8.26.
528	滝音の響く山路や葛の花（１８．８．２６．）	葛の花	秋	18.8.26.
529	海女ら寄り乳房露はに葡萄食む	葡萄	秋	18.8.26.
530	海女ら寄り乳房ゆたかに葡萄食む	葡萄	秋	18.8.26.
531	海女小屋の半裸姦し葡萄食む	葡萄	秋	18.8.26.
532	厭はるるほどに逞し藪枯らし	藪枯らし	秋	18.8.26.
533	厭はれてなほ蔓延りし藪枯らし	藪枯らし	秋	18.8.26.
534	ずるずると手繰れば長し藪枯らし	藪枯らし	秋	18.8.26.
535	台風を繋いで二百十日かな	二百十日	秋	18.8.27.
536	ひぐらしや森は夜行の獣の眼	蜩	秋	18.8.27.
537	ひぐらしや蠢き初むる夜行獣	蜩	秋	18.8.27.
538	ひぐらしや目覚むる森の夜行獣	蜩	秋	18.8.27.
539	ひぐらしやたちまち黒き夜の森	蜩	秋	18.8.27.
540	絞り出すごとくに鳴けり法師蝉	法師蝉	秋	18.8.27.
541	鳴くほどにテンポの上がる法師蝉	法師蝉	秋	18.8.27.
542	さながらに火急告知の法師蝉	法師蝉	秋	18.8.27.
543	鳴くほどに感極まりし法師蝉	法師蝉	秋	18.8.27.
544	煽り立て煽り立て鳴く法師蝉	法師蝉	秋	18.8.27.
545	気忙しく鳴き上げて去る法師蝉	法師蝉	秋	18.8.27.
546	己が身を急き立て鳴くや法師蝉	法師蝉	秋	18.8.27.
547	路地裏に子らの声なしちひろの忌	ちひろ忌（＝８．８．）	秋	18.8.27.
548	路地裏に子らの声絶ゆちひろの忌	ちひろ忌	秋	18.8.27.
549	路地遊びする子の減りてちひろの忌	ちひろ忌	秋	18.8.27.
550	ちびまる子平成抜けてももこの忌	ももこ忌（＝８．１５．）	秋	18.8.28.
551	ざわざわと音立つ袋いなご捕り	蝗	秋	18.8.28.
552	空鍋で蝗を炒りし昭和かな	蝗	秋	18.8.28.
553	いなご捕り蝗を食ひし少国民	蝗	秋	18.8.28.
554	居酒屋でいなご懐かし少年期	蝗	秋	18.8.28.
555	いなご捕り競ひし里の少年期	蝗	秋	18.8.28.
556	穂から穂へ飛びし稲田のいなご捕り	蝗	秋	18.8.28.
557	穂から穂へ飛ぶを手掴みいなご捕り	蝗	秋	18.8.28.
558	手拭の袋脹らむいなご捕り	蝗	秋	18.8.28.
559	いなご捕り動員されし少国民	蝗	秋	18.8.28.
560	いなご捕り明け暮れ戦終りけり	蝗	秋	18.8.28.
561	毒の種除けて甘露や一位の実	一位の実	秋	18.8.29.
562	毒の種吐きつむしゃむしゃ一位の実	一位の実	秋	18.8.29.
563	熟れ切りし香の迫り来る葡萄棚	葡萄	秋	18.8.29.
564	葡萄狩り手荒に食しマスカット	葡萄	秋	18.8.29.
565	捥ぎ立てを競ひて食みし黒葡萄	葡萄	秋	18.8.29.
567	ハラショー！と葡萄皮ごと食む露人	葡萄	秋	18.8.29.
568	蓑虫の天下泰平風まかせ	蓑虫	秋	18.8.29.
569	蓑虫や命の綱の伸び縮み	蓑虫	秋	18.8.29.
570	蓑虫の首出し天下窺へり	蓑虫	秋	18.8.29.
571	蓑虫を淋しがらせよ鉦叩き	蓑虫	秋	18.8.29.
572	蓑虫やからくり時計時告げる	蓑虫	秋	18.8.29.
573	風よぎり動く影あり吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.29.
574	足止めて顔を寄せれば吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.29.
575	よく撓り揺れて気付かす吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.29.
576	風よぎり影かと見れば吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.30.
577	辻地蔵供花に混ざりし吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.30.
578	野仏の供花に混ざりし吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.30.
579	主張する花とは見えず吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.30.
580	吾亦紅そっと花穂撫ぜ過ぎりけり	吾亦紅	秋	18.8.30.
581	なんとなく足を止めさす吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.30.
582	雄を背におんぶ飛蝗の放物線	飛蝗	秋	18.8.30.
583	雄を背におんぶ飛蝗の飛翔かな	飛蝗	秋	18.8.30.
584	きちきちと鳴いてさみしきばったかな	飛蝗	秋	18.8.30.
585	精霊もおんぶも吾も生きてあり	飛蝗	秋	18.8.30.
586	背に雄を負いて逞し雌ばった	飛蝗	秋	18.8.30.
587	恥外聞おんぶばったの無頓着	飛蝗	秋	18.8.30.
588	どれも皆蚤の夫婦の飛蝗かな	飛蝗	秋	18.8.30.
589	驚いて飛蝗飛び出す河原道	飛蝗	秋	18.8.30.
590	はたはたを道案内に河原道	飛蝗	秋	18.8.30.
591	分け入れば飛蝗飛び立つ野道かな	飛蝗	秋	18.8.30.
592	きちきちの鳴いて淋しき日暮れかな	飛蝗	秋	18.8.30.
593	名月を猪口に映せし風雅かな	名月	秋	18.8.30.
594	名月を酒杯に浮かべ独り酒	名月	秋	18.8.30.
595	名月の揺るる酒杯を飲み干せり	名月	秋	18.8.30.
596	升酒に揺るる満月酌み交す	満月	秋	18.8.30.
597	野仏の顔も真ん丸望の月	望の月	秋	18.8.31.
598	六地蔵照らす満月影六つ	満月	秋	18.8.31.
599	野兎の走る影あり望の月	望の月	秋	18.8.31.
600	立ち番の警官照らす望の月	望の月	秋	18.8.31.
601	本堂に響くロックや望の月	望の月	秋	18.8.31.
602	名月を見向きもせずにスマホかな	名月	秋	18.8.31.
603	名月を見上ぐる庭の黙不思議	名月	秋	18.8.31.
604	塾終り小走りの子ら望の月	望の月	秋	18.8.31.
605	満月や道に段差の注意札	満月	秋	18.8.31.
606	満月を過る影あり飛行灯	満月	秋	18.8.31.
607	勤行の粛々として今日の月	今日の月	秋	18.8.31.
608	コンビニの夜更けの客や望の月	望の月	秋	18.8.31.
609	変哲も無きが好かるる吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.31.
610	世に不思議花にも不思議吾亦紅	吾亦紅	秋	18.8.31.
611	辻過る祷りの音色風の盆	風の盆	秋	18.8.31.
612	風の盆流す胡弓の嫋々と	風の盆	秋	18.8.31.
613	着流しの楽の一団風の盆	風の盆	秋	18.8.31.
614	雀斑の少女に似たり杜鵑草	杜鵑草（ほととぎす）	秋	18.9.1.
615	樹々高き径の昏きに時鳥草	時鳥草（ほととぎす）	秋	18.9.1.
616	墓地の黙夕日に白き時鳥草	時鳥草	秋	18.9.1.
617	深き森抜け出る辺り杜鵑草	杜鵑草	秋	18.9.1.
618	昏き径抜け出る際の杜鵑草	杜鵑草	秋	18.9.1.
619	草分けし覚えなけれど草虱	草虱	秋	18.9.1.
620	草虱笑いこらへし視線かな	草虱	秋	18.9.1.
621	のほほんと歩きし科か草じらみ	草虱	秋	18.9.1.
622	草虱バスの車内を和ませり	草虱	秋	18.9.1.
623	視線寄りはっと気づきし草虱	草虱	秋	18.9.1.
624	人に先ず気付かれて知る藪虱	藪虱	秋	18.9.1.
625	一つづつ摘まねば取れぬ草虱	草虱	秋	18.9.1.
626	慌てればさらに笑はる草虱	草虱	秋	18.9.1.
627	付いた付いた子らのはしゃぎし草虱	草虱	秋	18.9.1.
628	子ら走る背にも胸にも草虱	草虱	秋	18.9.1.
629	野辺行けば淡き花色ふじばかま	藤袴	秋	18.9.2.
630	姿見の池に影差す藤袴	藤袴	秋	18.9.2.
631	夕暮れに淡き色溶く藤袴	藤袴	秋	18.9.2.
632	雨音を久方に聞く藤袴	藤袴	秋	18.9.2.
633	野仏の背に一叢の藤袴	藤袴	秋	18.9.2.
634	淡彩で描かれ香の立つ藤袴	藤袴	秋	18.9.2.
635	色も香もほのと佇む藤袴	藤袴	秋	18.9.2.
636	足止める人の少なき藤袴	藤袴	秋	18.9.2.
637	一輪挿しなれば一茎藤袴	藤袴	秋	18.9.2.
638	藤袴手折りし指に香のほのか	藤袴	秋	18.9.2.
639	雨に濡れ茎を傾げし藤袴	藤袴	秋	18.9.2.
640	雉鳩の野太き声や秋の雨	秋雨	秋	18.9.2.
611	ゐのこづち纏はり付けば吾身内	ゐのこづち	秋	18.9.2.
642	一粒ずつ数へつ剥がすゐのこづち	ゐのこづち	秋	18.9.2.
643	早慶戦終ればただの秋団扇	秋団扇	秋	18.9.2.
644	青春は悔恨ばかり茨の実	茨の実	秋	18.9.3.
645	名の由来ちと憚りし通草かな	通草（あけび）	秋	18.9.3.
646	君の名はちとあけすけな通草かな	通草	秋	18.9.3.
647	通草見つ春画を描く浮世絵師	通草	秋	18.9.3.
648	堂々と秘所開陳のあけびかな	通草	秋	18.9.3.
649	どれもみな秘所あけすけの通草かな	通草	秋	18.9.3.
650	描き上げて通草にたりと食む北斎	通草	秋	18.9.3.
651	描き終へて通草がぶりと食む北斎	通草	秋	18.9.3.
652	どの蔓の通草も腹を割りてをり	通草	秋	18.9.3.
653	杣小屋で杣夫と食みし通草かな	通草	秋	18.9.3.
654	蔓付きの通草土産に山下る	通草	秋	18.9.3.
655	腹割って何を語りし通草かな	通草	秋	18.9.3.
656	兄弟が色てんでんに野の葡萄	野葡萄	秋	18.9.3.
657	野葡萄の七色を競ふ日暮れかな	野葡萄	秋	18.9.3.
658	山葡萄食めば酸っぱき俳吟行	山葡萄	秋	18.9.3.
659	読み散らし本積み上ぐる獺祭忌	獺祭忌	秋	18.9.3.
660	持ち歩く鞄の底の秋扇	秋扇	秋	18.9.3.
661	芒原行けども行けども芒原	芒原	秋	18.9.3.
662	夢の中行けども果てぬ芒原	芒原	秋	18.9.3.
663	鯔跳べど竿差す人のゐぬ運河	鯔	秋	18.9.3.
664	鯔跳んで瀬戸の海辺の真昼時	鯔	秋	18.9.3.
665	突堤に釣り人独り鯔とべり	鯔	秋	18.9.3.
666	釣り人をおちょくるごとく鯔とべり	鯔	秋	18.9.3.
667	釣り人のゐない運河に跳ねる鯔	鯔	秋	18.9.3.
668	けふもまた出番無きまま秋扇	秋扇	秋	18.9.4.
669	飽きもせでシウマイ弁当獺祭忌	獺祭忌	秋	18.9.4.
670	シウマイの弁当傘寿獺祭忌	獺祭忌	秋	18.9.4.
671	読み散らし本積み上ぐる子規忌かな	子規忌	秋	18.9.4.
672	駅前に大き句碑あり獺祭忌	獺祭忌	秋	18.9.4.
673	点盛りで無声無念の獺祭忌	獺祭忌	秋	18.9.4.
674	秋鯖に醤油一振り熱き食ふ	秋鯖	秋	18.9.4.
675	痰切れて空を仰げば鰯雲	鰯雲	秋	18.9.4.
676	鰯雲広がる浜のバーベキュ	鰯雲	秋	18.9.4.
677	秋刀魚焼けみんな立ち食ひ浜祭	秋刀魚	秋	18.9.4.
678	片肘を突きし蕪村や秋団扇	秋団扇	秋	18.9.4.
679	読み散らし本をちこちに獺祭忌	獺祭忌	秋	18.9.4.
680	散歩道帽子に受けし零余子かな	零余子	秋	18.9.5.
681	触れたればぽろぽろ零る零余子かな	零余子	秋	18.9.5.
682	さて思案十粒じゃ足りぬ零余子飯	零余子	秋	18.9.5.
683	炒り立ての零余子ほくほく妻と食む	零余子	秋	18.9.5.
684	炒り立ての零余子肴に杣の酒	零余子	秋	18.9.5.
685	ぶら下がるも地に転がるも隼人瓜	隼人瓜	秋	18.9.5.
686	拳ほどな実ををちこちに隼人瓜	隼人瓜	秋	18.9.5.
687	人も食ひ牛にも食はす隼人瓜	隼人瓜	秋	18.9.5.
688	拳ほどな少し剽軽はやと瓜	隼人瓜	秋	18.9.5.
689	放ち鶏跨ぐもありぬ隼人瓜	隼人瓜	秋	18.9.5.
690	隼人瓜転がる庭の放ち鶏	隼人瓜	秋	18.9.5.
691	お茶請けの漬物の名は隼人瓜	隼人瓜	秋	18.9.5.
692	直ぐへたる間引菜集め腰伸ばす	間引菜	秋	18.9.5.
693	残すべき菜を間引きがち腰軋む	間引菜	秋	18.9.5.
694	土に触ることなく育つ貝割菜	貝割菜	秋	18.9.5.
695	貝割菜小さきなりに影を持ち	貝割菜	秋	18.9.5.
696	秋扇巧みに使ひヌードショー	秋扇	秋	18.9.6.
697	をちこちに秋扇揺るる幕間かな	秋扇	秋	18.9.6.
698	秋扇の香の重なりし幕間かな	秋扇	秋	18.9.6.
699	蔓引けばぽろぽろ零る零余子かな	零余子	秋	18.9.6.
700	掴むより零るが多き零余子かな	零余子	秋	18.9.6.
701	電子レンジ二分で仕上ぐ零余子かな	零余子	秋	18.9.6.
702	廃屋や大きく裂けし秋簾	秋簾	秋	18.9.6.
703	秋の蚊に逞しきもゐて打ち払ふ	秋の蚊	秋	18.9.6.
704	秋の蚊の血を吸ふ力残しをり	秋の蚊	秋	18.9.6.
705	塩でよし醤油でもよし衣被	衣被	秋	18.9.6.
706	熱々をつるりと剥けり衣被	衣被	秋	18.9.6.
707	醤油よし塩味噌もよし衣被	衣被	秋	18.9.6.
708	芋茎干す卒寿の老婆峡の村	芋茎（ずいき）	秋	18.9.6.
709	芋水車ごろりごろりと磨き上ぐ	芋水車	秋	18.9.6.
710	ひと息をつくかに止まる芋水車	芋水車	秋	18.9.6.
711	さがし物さがし疲れし秋の夜	秋の夜	秋	18.9.6.
712	本堂に響くロックや秋の夜	秋の夜	秋	18.9.6.
713	パソコンの前でうたた寝秋の夜半	秋の夜半	秋	18.9.6.
714	盃に月を映してさあ呑むか	月	秋	18.9.6.
715	盃に名月映しさあ呑むか	名月	秋	18.9.6.
716	盃に月を浮かべて呑まんかな	月	秋	18.9.6.
717	盃に浮かぶ月よし独り酒	月	秋	18.9.6.
718	虫の声せぬ庭の闇深し	虫の声	秋	18.9.7.
719	虫すだくことなき庭の深き闇	虫集く	秋	18.9.7.
720	虫すだくことなき庭の闇深し	虫集く	秋	18.9.7.
721	虫すだくことなき庭の闇の黙	虫集く	秋	18.9.7.
722	一声も無き虫いずこ庭の闇	虫	秋	18.9.7.
723	虫時雨いまは懐かし庭の黙	虫時雨	秋	18.9.7.
724	虫の音の絶えて久しき庭の黙	虫の音	秋	18.9.7.
725	虫すだくことなき野道歩を速む	虫集く	秋	18.9.7.
726	玉音のとぎれとぎれや蝉時雨	蝉時雨	夏	18.9.7.
727	天変地異虫のすだくを許さざり	虫集く	秋	18.9.7.
728	鶺鴒の地球を叩く心地かな	鶺鴒	秋	18.9.7.
729	日に何度地球を叩く黄鶺鴒	黄鶺鴒	秋	18.9.7.
730	地球に活入んと叩く黄鶺鴒	黄鶺鴒	秋	18.9.7.
731	地球に活入るる連打や黄鶺鴒	黄鶺鴒	秋	18.9.7.
732	靡けども人になびかぬ芒かな	芒	秋	18.9.7.
733	風に靡き人になびかぬ芒かな	芒	秋	18.9.7.
734	濡れたればおどろめかせし芒かな	芒	秋	18.9.7.
735	にわか雨吾も芒も濡れ鼠	芒	秋	18.9.7.
736	藪漕げば首筋撫ずる芒かな	芒	秋	18.9.7.
737	点盛りに無声の帰路や鰯雲	鰯雲	秋	18.9.7.
738	白桃の皮を剥ぎ行く時間かな	白桃	秋	18.9.7.
739	桃の皮剥き終えた手で啜り食む	桃	秋	18.9.7.
740	あご伝ふ雫拭ひつ桃を食む	桃	秋	18.9.7.
741	母の剥く桃凝視して待つ幼	桃	秋	18.9.7.
742	啜る音立てて車座桃を食む	桃	秋	18.9.7.
743	桃丸ごと食む少年の歯の白き	桃	秋	18.9.7.
744	ちゃぶ台で親子梨食む昭和かな	梨	秋	18.9.8.
745	二十世紀梨しみじみ食みし昭和かな	梨	秋	18.9.8.
746	梨の芯酸っぱきも吸ふ昭和かな	梨	秋	18.9.8.
747	パーティーで食みしが初のラフランス	梨	秋	18.9.8.
748	梨一個丸かじりした少年期	梨	秋	18.9.8.
749	リヤカーで梨売りに来し昭和かな	梨	秋	18.9.8.
750	梨売りの小屋消え去りて住宅地	梨	秋	18.9.8.
751	藤の実の犇めき下がる棚昏し	藤の実	秋	18.9.8.
752	酔いどれの少なくなりぬ酔芙蓉	酔芙蓉	秋	18.9.8.
753	純白も夕日の色に酔芙蓉	酔芙蓉	秋	18.9.8.
754	一日で汚れ娼婦か酔芙蓉	酔芙蓉	秋	18.9.8.
755	老残をつくずく見せて酔芙蓉	酔芙蓉	秋	18.9.8.
756	面白くも可笑しくもなく芒かな	芒	秋	18.9.8.
757	変哲のなくても風の芒かな	芒	秋	18.9.8.
758	葉生姜の緑鮮やか生姜市	生姜市	秋	18.9.8.
759	葉生姜を一束書いて宮参り	生姜	秋	18.9.8.
760	荒神輿急磴登る生姜祭	生姜	秋	18.9.8.
761	まず生姜一束買ひて荒神輿	生姜	秋	18.9.9.
762	葉生姜の一束買いて待つ神輿	生姜	秋	18.9.9.
763	葉生姜を一束買ひて待つ神輿	生姜	秋	18.9.9.
764	一束の葉生姜背に負ひ待つ神輿	生姜	秋	18.9.9.
765	急磴を生姜まつりの荒神輿	生姜	秋	18.9.9.
766	葉生姜を下げて行交う生姜市	生姜市	秋	18.9.9.
767	葉生姜をさげて行交う宮まいり	生姜	秋	18.9.9.
768	どの手にも葉生姜下げし祭かな	生姜	秋	18.9.9.
769	葉生姜揺れ急磴駈ける荒神輿	生姜	秋	18.9.9.
770	かつかつと生姜まつりの沓の音	生姜	秋	18.9.9.
771	廃れたる菊の節句を句に残す	菊の節句	秋	18.9.10.
772	芒原波打つ果てに八ヶ岳	芒原	秋	18.9.10.
773	峠来てつくづく月を楽しめり	月	秋	18.9.10.
774	爽やかに谷中を食みし夕餉かな	谷中（＝葉生姜）	秋	18.9.10.
775	葉の緑色鮮やかに生姜祭	生姜	秋	18.9.10.
776	葉の緑抱へ家路の生姜祭	生姜	秋	18.9.10.
777	正殿の長き神事やつくつくし	法師蝉	秋	18.9.10.
778	神事果てつくつく法師仕切りけり	法師蝉	秋	18.9.10.
779	月光の路地一直線を照らしをり	月光	秋	18.9.10.
780	月照らす堤防道の白さかな	月	秋	18.9.10.
781	どの墓碑も供華鮮やかに秋彼岸	秋彼岸	秋	18.9.10.
782	墓参り香華立ち舞ふ秋彼岸	秋彼岸	秋	18.9.10.
783	人影の見えぬ山里芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
784	山里やごとりごとりと芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
785	飽きもせず終日回る芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
786	ひと息つきまた回り出す芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
787	ふと止まりまた回り出す芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
788	過ぎ行くは同行二人芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
789	遍路道ごとりごとりと芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
790	時々は一息入れる芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
791	さぼり癖ときどき見せて芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
792	芋水車くぐり抜け行く鮠の影	芋水車	秋	18.9.11.
793	芋水車回る山里家五軒	芋水車	秋	18.9.11.
794	芋水車日がな律儀に回りをり	芋水車	秋	18.9.11.
795	山里の静寂引き立て芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
796	芋水車回る脇行く郵便車	芋水車	秋	18.9.11.
797	芋水車人住む里と告げにけり	芋水車	秋	18.9.11.
798	芋水車重きを腹にマイペース	芋水車	秋	18.9.11.
799	流れには自尊のペース芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
800	山里や人住む証し芋水車	芋水車	秋	18.9.11.
801	妙高にまだ雪はなし稲稔る	稲の花	秋	18.9.11.
802	どの子にも得手はあるもの稲の花	稲の花	秋	18.9.11.
803	どの子にも得手はあるもの木の実降る	木の実降る	秋	18.9.11.
804	説教を終へて坊主の秋思かな	秋思	秋	18.9.11.
805	秋の蝶ゆらりゆらりと二日酔ひ	秋蝶	秋	18.9.11.
806	竿並べ秋草濡らす立小便	秋草	秋	18.9.11.
807	雉撃ちは谷へ銃身鰯雲	鰯雲	秋	18.9.11.
808	雉撃ちは谷へ銃口いわし雲	鰯雲	秋	18.9.11.
809	懺悔室籠る司祭の秋思かな	秋思	秋	18.9.11.
810	名を知れば野道足止むタカサブロウ	高三郎（秋草の名）	秋	18.9.11.
811	捨てるべきものに囲まれ秋思かな	秋思	秋	18.9.11.
812	捨てるべきものに囲まれ吾秋思	秋思	秋	18.9.11.
813	捨てるべきもの捨てられぬ秋思かな	秋思	秋	18.9.11.
814	ちんちんの不如意こぼしつ鰯雲	鰯雲	秋	18.9.11.
815	秋扇口元隠しひそひそと	秋扇	秋	18.9.11.
816	口元を隠す秋扇ひそひそと	秋扇	秋	18.9.11.
817	秋風の掬ひ上げたるレジ袋	秋風	秋	18.9.12.
818	秋風や心変りと言ふ三文字	秋風	秋	18.9.12.
819	秋風や銀の食器に顔映す	秋風	秋	18.9.12.
820	ボランティア待つ被災地を秋の風	秋風	秋	18.9.12.
821	雉撃ちやずぼり快便いわし雲	鰯雲	秋	18.9.12.
822	禿白髪一人二役秋の風	秋風	秋	18.9.12.
823	髑髏には目玉がなくて芒原	芒原	秋	18.9.12.
824	がんばれは禁句の時代秋の風	秋風	秋	18.9.12.
825	がんばれを使へぬ不便秋の風	秋風	秋	18.9.12.
826	「君」でなく「さん」の気遣ひ秋の風	秋風	秋	18.9.12.
827	腕白も得手の一つや木の実降る	木の実降る	秋	18.9.12.
828	どの子にも得手はあるはず木の実降る	木の実降る	秋	18.9.12.
829	くわっと口裂きし石榴の烈火かな	石榴	秋	18.9.13.
830	裂帛の赤き口裂く柘榴かな	柘榴	秋	18.9.13.
831	さあ食えと赤き腹裂く柘榴かな	柘榴	秋	18.9.13.
832	柘榴には身を裂くほどの忿怒あり	柘榴	秋	18.9.13.
833	裂けし石榴食むとき心荒ぶれり	石榴	秋	18.9.13.
834	木の実雨笑顔崩さぬ百羅漢	木の実雨	秋	18.9.13.
835	木の実雨頬ふくらませ栗鼠走る	木の実雨	秋	18.9.13.
836	急磴をけんけんぱーと木の実飛ぶ	木の実	秋	18.9.13.
837	にわか雨真似て降り来る木の実かな	木の実	秋	18.9.13.
838	起伏見せ白一面の蕎麦の花	蕎麦の花	秋	18.9.13.
839	爪楊枝一本で食む林檎かな	林檎	秋	18.9.14.
840	爪楊枝挿して出さるる林檎食む	林檎	秋	18.9.14.
841	金色の蜜透きとおる林檎食む	林檎	秋	18.9.14.
842	信濃路や赤き林檎の畑よぎる	林檎	秋	18.9.14.
843	ずっしりと重き林檎の宅配便	林檎	秋	18.9.14.
844	塩水を潜りし林檎さくさくと	林檎	秋	18.9.14.
845	紅玉が林檎の王の遠き日々	林檎	秋	18.9.14.
846	母の剥く林檎の皮は螺旋形	林檎	秋	18.9.14.
847	一つずつ林檎磨きし青果店	林檎	秋	18.9.14.
848	電子レンジ届き試しに焼りんご	林檎	秋	18.9.14.
849	姥捨のなぞへは赤き林檎畑	林檎	秋	18.9.14.
850	宅配で届きしりんご赤と黄と	林檎	秋	18.9.14.
851	あと一歩赤き林檎の帯切れる	林檎	秋	18.9.14.
852	採るよりも零すが多き零余子かな	零余子	秋	18.9.15.
853	花色を日暮れに溶かし藤袴	藤袴	秋	18.9.15.
854	藤袴手折れば指に香を移す	藤袴	秋	18.9.15.
855	柔らかく土を掴みし貝割菜	貝割菜	秋	18.9.15.
856	棒立ちを繰り返しつつ菜を間引く	間引菜	秋	18.9.15.
857	自然薯を縦深く掘る根気かな	自然薯	秋	18.9.15.
858	自然薯は亭主の掘りし山の宿	自然薯	秋	18.9.15.
859	三品の芋茎料理や山の宿	芋茎	秋	18.9.15.
860	道の駅芋茎料理のメニューあり	芋茎	秋	18.9.15.
861	御師の宿膳に載りたる芋茎和	芋茎	秋	18.9.15.
862	自然薯に深き地目指す悲願あり	自然薯	秋	18.9.15.
863	自然薯の深き地目指す悲願とは	自然薯	秋	18.9.15.
864	自然薯は固き意思持ち一直線	自然薯	秋	18.9.16.
865	頑として地を貫きし山の芋	山芋	秋	18.9.16.
866	頑として地を貫くや山の芋	山芋	秋	18.9.16.
867	頑として意地貫きし山の芋	山芋	秋	18.9.16.
868	にわか雨濡れて艶増す白式部	白式部	秋	18.9.16.
869	古民家に紫式部白式部	紫式部・白式部	秋	18.9.16.
870	庭園のなぞへ辿れば式部の実	式部の実	秋	18.9.16.
871	姦しく雉鳩鳴けり実むらさき	実むらさき	秋	18.9.16.
872	椎の実を鎮守の森で十粒ほど	椎の実	秋	18.9.16.
873	椎の実に気づき拾ひし十粒ほど	椎の実	秋	18.9.16.
874	鮮やかに九十九（つづら）の山路ななかまど	ななかまど	秋	18.9.16.
875	植林を抜けて山路のななかまど	ななかまど	秋	18.9.16.
876	新蕎麦を啜れば回る水車かな	新蕎麦	秋	18.9.17
877	曼珠沙華一輪ひそと咲く狭庭	曼珠沙華	秋	18.9.17
878	姦し鳴く雉鳩や曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
879	インタフォン人影映し曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
880	春ひさぐ女の話まんじゅしゃげ	曼珠沙華	秋	18.9.17
881	春ひさぐ赤き唇曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
882	高麗の里人の列なす曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
883	瞽女の列辿りし野道曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
884	木漏れ日に姿を見せて曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
885	毀誉褒貶勲章にして曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
886	曼珠沙華人の帯なす巾着田	曼珠沙華	秋	18.9.17
887	まんじゅしゃげむかし女も立小便	曼珠沙華	秋	18.9.17
888	囲まれて野仏眩し曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
889	ハーレムのごとき野仏曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
890	昼告げるサイレンの音曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
891	野火のごと赤ぎらぎらと曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
892	どれもみな背丈そろへて曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
893	狐花紛れ咲き初む狭庭かな	狐花	秋	18.9.17
894	放棄田にまとまり咲きぬ曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.17
895	供花に挿し華やぎ加ふまんじゅしゃげ	曼珠沙華	秋	18.9.17
896	戸袋をやさしく鳴らす秋の風	秋の風	秋	18.9.17
897	戸袋をことりと鳴らす秋の風	秋の風	秋	18.9.17
898	頬撫ずる秋風に息止めてみる	秋の風	秋	18.9.17
899	意固地なほど目立たぬ意匠われもこう	吾亦紅	秋	18.9.17
900	雄を背に負んぶ飛蝗のランデヴウ	飛蝗	秋	18.9.17
901	大飛球ばったの跳ねる草野球	飛蝗	秋	18.9.17
902	雄を背に負んぶ飛蝗の恋路かな	飛蝗	秋	18.9.18
903	風呼んで風と戯る吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
904	風来れば風に従ひ吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
905	やはらかに影撓らせて吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
906	のびやかに撓る影あり吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
907	ゆらゆらとまたゆらゆらと吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
908	勁草と言ふ言葉あり吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
909	吾もまた日本男児や吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
910	遠くから吾を呼ぶ声吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
911	花穂濡るる朝露の径吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
912	ジョギングの人に頷く吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
913	本当のことは黙して吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
914	吾亦紅ひょろりと挿して卓上花	吾亦紅	秋	18.9.18
915	無頓着貫き揺るる吾亦紅	吾亦紅	秋	18.9.18
916	むかし瞽女辿りし野道曼珠沙華	曼珠沙華	秋	18.9.18
917	九十九折る山路鮮やかななかまど	ななかまど	秋	18.9.18
918	蜜吸ひの虫呼び集め萩の花	萩の花	秋	18.9.19
919	地を覆うほど花散らし乱れ萩	乱れ萩	秋	18.9.19
920	恋多き女も老いてこぼれ萩	こぼれ萩	秋	18.9.19
921	縺れ合い撓り重なり風の萩	萩	秋	18.9.19
922	山下る女らの声萩の黙	萩	秋	18.9.19
923	やはらかに嬰を抱くかに萩括る	萩	秋	18.9.19
924	牡丹餅が御萩となりて萩の茶屋	萩	秋	18.9.19
925	風を呼び嬉々と戯る萩の花	萩	秋	18.9.19
926	片脚上げ萩に尿する散歩犬	萩	秋	18.9.19
927	上水に宮城野萩の影揺るる	萩	秋	18.9.19
928	上水に宮城野萩の長い影	萩	秋	18.9.19
929	厨まで花吹き零れ萩の寺	萩	秋	18.9.19
930	庭一面雪かと紛ふこぼれ萩	こぼれ萩	秋	18.9.19
931	はっと眼を射る真紅さねかずら	実葛	秋	18.9.20
932	目に入れば足止め寄りぬさねかずら	実葛	秋	18.9.20
933	紅熟の覗く葉陰のさねかずら	実葛	秋	18.9.20
934	他家の庭覗き込ませる実葛	実葛	秋	18.9.20
935	生々し紅あざやかにさねかずら	実葛	秋	18.9.20
936	鮮やかな紅生々しさねかずら	実葛	秋	18.9.20
937	美男葛紅熟の実の生々し	実葛	秋	18.9.20
938	人の足止めて鮮やかさねかずら	実葛	秋	18.9.20
939	企みの紅鮮やかにさねかずら	実葛	秋	18.9.20
940	鮮やかな紅の企みさねかずら	実葛	秋	18.9.20
941	寡婦の手に美男葛の真紅の実	美男葛	秋	18.9.20
942	覗き込み立去る女さねかずら	実葛	秋	18.9.20
943	さねかずら女がそっと触れ行けり	実葛	秋	18.9.20
944	赤き実になんのたくらみ実葛	実葛	秋	18.9.20
945	企みを秘めて真紅のさねかずら	実葛	秋	18.9.20
946	女妬く美男葛の真紅の実	美男葛	秋	18.9.20
947	モンローの紅き唇さねかずら	実葛	秋	18.9.20
948	真紅の実触るれば疼くさねかずら	実葛	秋	18.9.20
949	葉に隠れなほ目立ち過ぐさねかずら	実葛	秋	18.9.20
950	子ら描きしまんこマークや鰯雲	鰯雲	秋	18.9.20
951	まんこマーク懐かし板塀猫じゃらし	猫じゃらし	秋	18.9.20
952	まんこマーク懐かし昭和赤まんま	赤あまんま	秋	18.9.20
953	流磴の傾くありて沈みけり	流磴	秋	18.9.21
954	流磴を川下に待つ回収船	流磴	秋	18.9.21
955	流磴のくるくる回る一つあり	流磴	秋	18.9.21
956	流磴の先端橋を潜りゆく	流磴	秋	18.9.21
957	下り来る光の帯や流磴会	流磴会	秋	18.9.21
958	鰯屋の料理十品みな鰯	鰯	秋	18.9.21
959	鰯雲海の仲間とメールかな	鰯雲	秋	18.9.21
960	すーっと来てすーっと消えぬ秋蛍	秋蛍	秋	18.9.21
961	ただ一度光りて消えし秋蛍	秋蛍	秋	18.9.21
962	半袖の少し肌寒秋蛍	秋蛍	秋	18.9.21
963	秋の蚊の生き永らへて刺しにけり	秋の蚊	秋	18.9.21
964	老残をきつく知らしめ酔芙蓉	酔芙蓉	秋	18.9.21
965	命継ぐために名も無き草の花	草の花	秋	18.9.21
966	ミニ花瓶卓上飾る草の花	草の花	秋	18.9.21
967	さっちゃんがね黙ってくれし草の花	草の花	秋	18.9.21
968	庭隅の金魚の墓に草の花	草の花	秋	18.9.21
969	野仏に農婦供へし草の花	草の花	秋	18.9.21
970	花筒に撫子六本六地蔵	草の花	秋	18.9.21
971	どれもみな名無しにあらじ草の花	草の花	秋	18.9.21
972	どれもみな名を持つ誇り草の花	草の花	秋	18.9.21
973	草の花虫それぞれに好き嫌ひ	草の花	秋	18.9.21
974	野仏や供華は可憐な草の花	草の花	秋	18.9.21
975	妻剥きし林檎の皮の赤き紐	林檎	秋	18.9.22
976	母むけば梨も林檎も皮の紐	梨・林檎	秋	18.9.22
977	ラ・フランス届きて三日後に食みぬ	ラ・フランス	秋	18.9.22
978	焼芋を食みつ女子会盛上る	焼芋	秋	18.9.22
979	滴れる桃丸かじりキャンプの夜	桃	秋	18.9.22
980	白桃を丸かじりして顔洗ふ	白桃	秋	18.9.22
981	碁敵が白桃下げて来る昼間	白桃	秋	18.9.22
982	一生をひと日で示し酔芙蓉	酔芙蓉	秋	18.9.22
983	純潔の朝に戻れぬ酔芙蓉	酔芙蓉	秋	18.9.22
984	短命の気配を見せず白木槿	白木槿	秋	18.9.22
985	一日の花とは見せず木槿咲く	木槿	秋	18.9.22
986	一朝の夢を分かちて白木槿	白木槿	秋	18.9.22
987	何もかも一朝の夢木槿咲く	木槿	秋	18.9.22
988	儚きを儚きとせず花木槿	花木槿	秋	18.9.22
989	儚きを微塵も見せず花木槿	花木槿	秋	18.9.22
990	儚きを微塵も見せず散る木槿	木槿	秋	18.9.22
991	花木槿たっぷり生きし一日かな	花木槿	秋	18.9.22
992	白木槿花食む馬のゐぬ時代	白木槿	秋	18.9.22
993	一生を一日で生き木槿散る	木槿	秋	18.9.22
994	昨日から今日へ咲き継ぐ木槿かな	木槿	秋	18.9.22
995	従容と花入れ替はる木槿よし	木槿	秋	18.9.22
996	従容と花入れ替はる木槿かな	木槿	秋	18.9.22
997	さり気なく花入れ替はる木槿かな	木槿	秋	18.9.22
998	泰然と花入れ替はる木槿かな	木槿	秋	18.9.22
999	咲ひて散り散りて咲き継ぐ花木槿	花木槿	秋	18.9.22
1000	輪廻とは敢えて言はねど花木槿	花木槿	秋	18.9.22

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