１日１０句１０００句詠む　第45回

鈴童の遊び


1	チューリップ抱え少女の走り来る	チューリップ	春	20.2.9.
2	ヴィバルディ「四季春」流る生花店	チューリップ	春	20.2.9.
3	「四季春」の楽の音弾むチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
4	喜びを花束にしてチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
5	少女らの胸膨らみぬチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
6	ゆっくりと蜜吸ふ虫やチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
7	昼は日を夜は星見るチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
8	喝采のリンク飛び交ふチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
9	うららかやまたも待ったのへぼ将棋	チューリップ	春	20.2.9.
10	耳寄せてひそと聞かうかチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
11	雨水を流してすくとチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
12	園児らの一番好きなチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
13	園児らのすらすら描くチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
14	園児らが庭でお絵描きチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
15	園児らの歌ひ絵を描くチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
16	チューリップ畑でキスをした二人	チューリップ	春	20.2.9.
17	喜びもへちまもあらでチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
18	廃工場咲いて寂しきチューリップ	チューリップ	春	20.2.9.
19	海胆割って啜れば針のなほ動く	海胆（うに）	春	20.2.10.
20	嬉々として砂浴ぶ雀春隣	春隣	春	20.2.10.
21	磯巾着ふいに巾着閉じにけり	礒巾着	春	20.2.10.
22	礒巾着触手に触るるものを待つ	礒巾着	春	20.2.10.
23	人に無視されて幸せ磯巾着	礒巾着	春	20.2.10.
24	人に無視さるる幸せ磯巾着	礒巾着	春	20.2.10.
25	来るを待つ礒巾着の怠惰かな	礒巾着	春	20.2.10.
26	引き潮に取り残されし海星（ひとで）かな	海星	春	20.2.10.
27	左利き右利きもゐて潮まねき	潮まねき	春	20.2.10.
28	干潟埋めおいでおいでの潮まねき	潮まねき	春	20.2.10.
29	総員でおいでおいでの潮まねき	潮まねき	春	20.2.10.
30	没日に待てよ待てよと汐まねき	汐まねき	春	20.2.10.
31	さざ波を揺り籠にして葦の角	葦の角	春	20.2.11.
32	つくつくと水面のをちこち葦の角	葦の角	春	20.2.11.
33	湖面をば剣山のごと葦の角	葦の角	春	20.2.11.
34	淡海や湖面きらめく葦の角	葦の角	春	20.2.11.
35	朝採りの葦の芽届く板場かな	葦の芽	春	20.2.11.
36	夕日浴び煌めく湖面葦の角	葦の角	春	20.2.11.
37	さざ波の寄せ来る湖畔葦の角	葦の角	春	20.2.11.
38	淡海の淡き緑や蘆の角	蘆の角	春	20.2.11.
39	懐石の一品つとむ葦の角	葦の角	春	20.2.11.
40	葦の角水面賑やか丈競ふ	葦の角	春	20.2.11.
41	一角獣犇めくごとく葦の角	葦の角	春	20.2.11.
42	あしかびのてんぷら旨し湖畔の夜	あしかび(＝葦の芽）	春	20.2.11.
43	板長の三品書き出す葦若芽	葦の芽	春	20.2.11.
44	さざ波のたゆたふ湖や蘆の角	蘆の角	春	20.2.11.
45	葦の角丈を競ひし湖北かな	葦の角	春	20.2.11.
46	信長の膳にも載りし蘆若芽	葦の芽	春	20.2.11.
47	春疾風わが心中に荒野あり	春疾風	春	20.2.11.
48	春疾風わが心中の荒野吹く	春疾風	春	20.2.11.
49	わが肩の凝りを解せよ石叩き	石叩き（＝鶺鴒）	秋	20.2.11.
50	何事もそれで終わりや春北風	春北風	春	20.2.11.
51	世のすべて終わりのありて春北風	春北風	春	20.2.11.
52	嬉々として砂浴ぶ雀風光る	風光る	春	20.2.11.
53	雪しろを集め黒部の谿速し	雪代	春	20.2.12.
54	雪しろを集めて峪の速きかな	雪代	春	20.2.12.
55	四万十川の橋越す流れ雪濁り	雪濁り	春	20.2.12.
56	沈下橋越ゆる奔流雪濁り	雪濁り	春	20.2.12.
57	清流の奔流となる雪濁り	雪濁り	春	20.2.12.
58	奔流となりし清流雪濁り	雪濁り	春	20.2.12.
59	雪しろの岩に飛び散り逆落とし	雪代	春	20.2.12.
60	雪しろを集め嵩増す黒部ダム	雪代	春	20.2.12.
61	雪しろを集め岩食む谿深し	雪代	春	20.2.12.
62	雪しろを集めて深き黒部かな	雪代	春	20.2.12.
63	種蒔の段取りを組むキーボード	種蒔	春	20.2.12.
64	御嶽山に黙祷をして鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.12.
65	ビザ不用パスポートなし鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.12.
66	ビザ不用旅券フリーの鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.12.
67	鳥帰るニコライ堂の円き屋根	鳥帰る	春	20.2.12.
68	ボス猿が人に尻向け日向ぼこ	日向ぼこ	冬	20.2.13.
69	車椅子横一列に日向ぼこ	日向ぼこ	冬	20.2.13.
70	池の岩親亀子亀日向ぼこ	日向ぼこ	冬	20.2.13.
71	猿山の猿と向き合ひ日向ぼこ	日向ぼこ	冬	20.2.13.
72	バス停や春一番の土ぼこり	春一番	春	20.2.13.
73	気象庁春一番のお墨付き	春一番	春	20.2.13.
74	春一番徒党組む者組まぬ者	春一番	春	20.2.13.
75	亀鳴くとたわけたことも通る句座	亀鳴く	春	20.2.13.
76	席題の亀を鳴かせて句座終わる	亀鳴く	春	20.2.13.
77	ひょいひょいと熊手寄せゆく落椿	落椿	春	20.2.13.
78	這い上る毛虫とも見ゆ猫柳	猫柳	春	20.2.13.
79	呆ければ花穂のおぞまし猫柳	猫柳	春	20.2.13.
80	呆ければ奪衣婆に似て猫柳	猫柳	春	20.2.13.
81	銀ねずに返り血のごと猫柳	猫柳	春	20.2.13.
82	ニコライ堂屋根の円きを鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.13.
83	桜島噴煙下に鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.13.
84	連山の鞍部ゆらりと鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.13.
85	四万十川の水嵩増して雪濁り	雪濁り	春	20.2.13.
86	引く鳥や露地では野良が尻尾立て	小鳥引く	春	20.2.14.
87	コロナ避け空の高きを鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.14.
88	鳥帰るクルーズ船は籠の鳥	鳥帰る	春	20.2.14.
89	猿山の猿大あくび鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.14.
90	引く鳥の海原低く飛び行けり	小鳥引く	春	20.2.14.
91	しんがりの少し遅れて鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.14.
92	鳥帰る屋根に石置く家はなし	鳥帰る	春	20.2.14.
93	引く鳥を下に見送る塔高し	小鳥引く	春	20.2.14.
94	ゆるやかに群の解れて鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.14.
95	どれもみな徒党を組んで鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.14.
96	引く鳥にふと北帰行口ずさむ	小鳥引く	春	20.2.14.
97	蕗の薹あらと足止め後戻り	蕗の薹	春	20.2.14.
98	蕗の薹川辺に見つけ帰路速む	蕗の薹	春	20.2.14.
99	蕗の薹味噌和えにして独り酒	蕗の薹	春	20.2.14.
100	蕗の薹見つけて頬の弛みけり	蕗の薹	春	20.2.14.
101	蕗味噌を塗りたる母の焼にぎり	蕗味噌	春	20.2.15.
102	蕗味噌の焼にぎり食ふ母の味	蕗味噌	春	20.2.15.
103	蕗味噌で呑み飯を食ふ男かな	蕗味噌	春	20.2.15.
104	しんがりの付かず離れず鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.15.
105	しんがりのほどよき距離や鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.15.
106	串に刺し焼けば旨かろ鳥帰る	鳥帰る	春	20.2.15.
107	霞網無くて悠々鳥引けり	鳥引く	春	20.2.15.
108	フランスを気取り食はるる蝸牛	蝸牛	夏	20.2.15.
109	背に家を負ひてまぐはふ蝸牛	蝸牛	夏	20.2.15.
110	ででむしの絡み合ひをりまぐはへり	ででむし	夏	20.2.15.
111	ででむしの殻かちかちとまぐはへり	ででむし	夏	20.2.15.
112	なめくじり這ひ跡どれも切れてをり	なめくじり	夏	20.2.15.
113	家捨つるほどの決断なめくじり	なめくじり	夏	20.2.15.
114	なめくじら家無きゆえの総すかん	なめくじら	夏	20.2.15.
115	さぼてんに這ひ跡残すなめくじり	なめくじり	夏	20.2.15.
116	万年を生きし証しと亀鳴けり	亀鳴く	夏	20.2.15.
117	桂郎の亀鳴き人を笑はせる	亀鳴く	夏	20.2.15.
118	桂郎の亀鳴くたびに笑ひ呼ぶ	亀鳴く	夏	20.2.15.
119	桂郎の亀を鳴かせて暇つぶし	亀鳴く	夏	20.2.15.
120	天を突く金精さまや春立ちぬ	春立つ	夏	20.2.15.
121	亀鳴ひて鶴の踊りし平和かな	亀鳴く	夏	20.2.15.
122	蕗の薹摘んで家路の足軽し	蕗の薹	夏	20.2.15.
123	コロナかぜ深呼吸せぬ体操会	風邪	冬	20.2.15.
124	ランチエに厳しき日々や春愁	春愁	春	20.2.16.
125	マスクして鮨を握るや鳴雪忌	マスク・鳴雪忌	春	20.2.16.
126	バーテンもマスクしてをり多喜二の忌	マスク・多喜二忌	冬春	20.2.16.
127	寒明けて隔離病舎のクルーズ船	寒明け	冬春	20.2.16.
128	コロナ禍にマスク欠かせぬ雨水かな	雨水	春	20.2.16.
129	ボス猿にあくびうつさる日永かな	日永	春	20.2.16.
130	コロナ禍に地蔵もマスク春北風	春北風	春	20.2.16.
131	春疾風クルーズ船は地獄攻め	春疾風	春	20.2.16.
132	托鉢の白人僧や春一番	春一番	春	20.2.16.
133	鉄鉢にをさな喜捨する春一番	春一番	春	20.2.16.
134	引く鳥にふと口ずさむ北帰行	鳥引く	春	20.2.16.
135	草萌ゆる野辺に小さき骸かな	草萌	春	20.2.16.
136	草萌ゆる片方に朽ちる骸かな	草萌	春	20.2.16.
137	春が来て生きとし生きる中に吾	春	春	20.2.16.
138	桂郎の亀を鳴かせて大笑ひ	亀鳴く	春	20.2.16.
139	桂郎の亀を鳴かせて笑ふかな	亀鳴く	春	20.2.16.
140	春疾風わが心中の荒野にも	春疾風	春	20.2.17.
141	肌触れて見合ひ即決初蛙	初蛙	春	20.2.17.
142	蛙どち美醜は問はぬ連れ選び	蛙	春	20.2.17.
143	雌蛙鳴き音確かめ婿選び	蛙	春	20.2.17.
144	即決で肌許し合ふ初蛙	初蛙	春	20.2.17.
145	蛙にも美醜の基準婿選び	蛙	春	20.2.17.
146	咆哮で雌痺れさす牛蛙	牛蛙	春	20.2.17.
147	目を付けし雄に抱き着く雌蛙	蛙	春	20.2.17.
148	うららかや女もしたる立小便	うららか	春	20.2.17.
149	疣の数多き競ふや疣蛙	蛙	春	20.2.17.
150	寒卵安いから食へてふ習ひ	寒卵	冬	20.2.17.
151	葉物畑気付けばどれも菜の花に	菜の花	春	20.2.17.
152	アブラナ科どれも血筋の菜の花に	菜の花	春	20.2.17.
153	茎立てば菜の花眩し花明かり	菜の花	春	20.2.17.
154	ゲットして連れと飛び立つ百千鳥	百千鳥	春	20.2.17.
155	囀りや読経の声も盛り上がる	囀り	春	20.2.17.
156	うららかや和讃唱和の阿弥陀寺	うららか	春	20.2.17.
157	雲水の和讃の堂宇風光る	風光る	春	20.2.17.
158	長閑けしや和讃唱和の阿弥陀寺	長閑	春	20.2.17.
159	生きてゐるそこから一歩春一番	春一番	春	20.2.17.
160	みんな良し生きてゐるから風光る	風光る	春	20.2.17.
161	引く鳥にふと鼻歌の北帰行	鳥引く	春	20.2.18.
162	密と紅にじむ遅咲き豊後梅	梅	春	20.2.18.
163	八十路来てなほ春愁とはいかに	春愁	春	20.2.18.
164	コロナ風邪戦々恐々春愁	春愁	春	20.2.18.
165	節々の痛み軋みて春愁ひ	春愁	春	20.2.18.
166	耳遠く目の霞めども春愁	春愁	春	20.2.18.
167	春愁の欠片を拾ふ散歩道	春愁	春	20.2.18.
168	中也詩集ページ繰るごと春愁ひ	春愁	春	20.2.18.
169	中也詩集朱線をちこち春愁ひ	春愁	春	20.2.18.
170	背を反らす金精さまや風光る	風光る	春	20.2.18.
171	背を反らす金精さまや揚げ雲雀	雲雀	春	20.2.18.
172	うららかや金精さまは黒光り	うららか	春	20.2.18.
173	春の風祠ににょきと金精神	春風	春	20.2.18.
174	春風や金精さまに目鼻なし	春風	春	20.2.18.
175	イムジン河いつか行き来を蝶の夢	蝶	春	20.2.18.
176	蝶自在イムジン河を越え行けり	蝶	春	20.2.19.
177	掌（たなごころ）火照って終る茶もみかな	茶揉み	春	20.2.19.
178	茶もみ終え主婦に戻りて夕支度	茶揉み	春	20.2.19.
179	息止めて足裏置きたる絵踏かな	絵踏み	春	20.2.19.
180	踏むも地獄踏まぬも地獄踏絵かな	踏絵	春	20.2.19.
181	主を踏みて足裏凍らす絵踏かな	踏絵	春	20.2.19.
182	剣山を踏みたる思ひ絵を踏みぬ	絵踏み	春	20.2.19.
183	尊ときは命なりけり澱の蝌蚪	蝌蚪	春	20.2.19.
184	梅咲ひて桜のつぼみ出を計る	梅・桜	春	20.2.19.
185	梅を見つ出支度始む桜かな	梅・桜	春	20.2.19.
186	好き嫌ひ言ひ放ちたし鷹女の忌	鷹女忌	春	20.2.19.
187	おんころころちちんぷいする日永かな	日永	春	20.2.19.
188	しまったと思えど遅し落し角	落し角	春	20.2.20.
189	しばらくは角突き合へぬ落し角	落し角	春	20.2.20.
190	雄鹿の首傾げをり落し角	落し角	春	20.2.20.
191	振り向かず牡鹿去り行く忘れ角	忘れ角	春	20.2.20.
192	角落し後ずさりする牡鹿かな	落し角	春	20.2.20.
193	角落しちゃんばらできぬ牡鹿かな	落し角	春	20.2.20.
194	雄鹿は首振るばかり落し角	落し角	春	20.2.20.
195	奈良の旅みやげに拾ふ落し角	落し角	春	20.2.20.
196	角落し肩こり消ゆる牡鹿かな	落し角	春	20.2.20.
197	落し角跨ぎ去り行く牡鹿かな	落し角	春	20.2.20.
198	角落し未練なく去る牡鹿かな	落し角	春	20.2.20.
199	さりげなく牡鹿の角の転げ落つ	落し角	春	20.2.20.
200	この世の果てだいぶ近くに日はうらら	うらら	春	20.2.20.
201	直販の台に“無料”のつくしんぼ	土筆	春	20.2.20.
202	ほらここにあらあそこにも蕗の薹	蕗の薹	春	20.2.20.
203	茶もみする乙女の白きたなごころ	茶もみ	春	20.2.20.
204	雪しろを集め黒部の峪穿つ	雪代	春	20.2.20.
205	一角獣犇めきゐるや葦の角	葦の角	春	20.2.21.
206	百千鳥水場を囲むカメラマン	百千鳥	春	20.2.21.
207	そこここに鳴き音姦し百千鳥	百千鳥	春	20.2.21.
208	姦しき命の季節百千鳥	百千鳥	春	20.2.21.
209	大枡で量り売りせん蝌蚪の群	蝌蚪	春	20.2.21.
210	引鶴や助走の後は脚隠し	引鶴	春	20.2.21.
211	磴千段青き空飛ぶ岩燕	岩燕	春	20.2.21.
212	追ひ切れぬ速さで過るつばくらめ	つばくらめ	春	20.2.21.
213	寸止めの技を磨くや初燕	初燕	春	20.2.21.
214	ひるがへりまたひるがへりつばめ飛ぶ	燕	春	20.2.21.
215	つばくろや動態視力追ひ着かず	つばくろ	春	20.2.21.
216	無人駅通り抜け行くつばくらめ	つばくらめ	春	20.2.22.
217	投函の欠席投句初つばめ	初燕	春	20.2.22.
218	廃集落古巣を直すつばくらめ	つばくらめ	春	20.2.22.
219	氷上を舞ふより軽く初燕	初燕	春	20.2.22.
220	庇裏踊る水影初つばめ	初燕	春	20.2.22.
221	大口で犇めく鯉や初つばめ	初燕	春	20.2.22.
222	石礫風切るごとく初つばめ	初燕	春	20.2.22.
223	軽やかに赤門潜る初つばめ	初燕	春	20.2.22.
224	楽寮の楽の音みやび初燕	初燕	春	20.2.22.
225	代掻きの馬くっきりと白馬岳	雪形	春	20.2.22.
226	種蒔を始む翁や爺ヶ岳	種蒔	春	20.2.22.
227	奥入瀬の水嵩増して雪濁り	雪濁り	春	20.2.22.
228	奥入瀬の速き流れや雪濁り	雪濁り	春	20.2.22.
229	引く鳥にふと歌いをり北帰行	鳥引く	春	20.2.22.
230	雲間から日矢放ちをり春夕焼	春夕焼	春	20.2.23.
231	春夕焼雲海射抜く太き日矢	春夕焼	春	20.2.23.
232	遠富士を黒焦げにして春夕焼	春夕焼	春	20.2.23.
233	マスクして校門潜る受験生	受験生	春	20.2.23.
234	体温のチェック経て行く受験生	受験生	春	20.2.23.
235	誇らしく襟にバッジの新社員	新社員	春	20.2.23.
236	襟バッジ少し面はゆ新社員	新社員	春	20.2.23.
237	風を呼び音立て走る野焼かな	野焼	春	20.2.23.
238	大炎上河原を焦がす野焼かな	野焼	春	20.2.23.
239	風上で火の放たれし野焼かな	野焼	春	20.2.23.
240	対岸に人垣できる野焼かな	野焼	春	20.2.23.
241	野焼てふ火焔逆巻く野外劇	野焼	春	20.2.23.
242	鹿の糞こぼる鹿島や風生忌	風生忌	春	20.2.24.
243	雪代の滔々流る茂吉の忌	茂吉忌	春	20.2.24.
244	はだらの山囲む盆地や龍太の忌	龍太忌	春	20.2.24.
245	雪代の笛吹川や上り鮎	雪代・登り鮎	春	20.2.24.
246	山々の目覚め始めし雪濁り	雪濁り	春	20.2.24.
247	急かすごと雪解雫の連打かな	雪解雫	春	20.2.24.
248	草堂や雪解雫の姦しき	雪解雫	春	20.2.24.
249	雪解川潜る魚影の数増せり	雪解川	春	20.2.24.
250	奥多摩の山稜薄き春の虹	春の虹	春	20.2.24.
251	鈴の音も透き通りたる遍路道	遍路	春	20.2.24.
252	蕗の薹手土産にして碁敵来	蕗の薹	春	20.2.24.
253	引き分けて碁敵と酌む蕗の薹	蕗の薹	春	20.2.24.
254	マヌカンの陰なき裸衣更へ	衣替え	夏	20.2.24.
255	マヌカンの陰なき故の春愁	春憂	春	20.2.24.
256	うらら日や乳吸ふ嬰の手が遊ぶ	うらら	春	20.2.25.
257	ウイルスを怖れマスクの遍路かな	マスク・遍路	冬・春	20.2.25.
258	マスクせし人が見下ろす犬ふぐり	マスク・犬ふぐり	冬・春	20.2.25.
259	用水の瀬音ひねもす猫柳	猫柳	春	20.2.25.
260	同じ場所今年もやあと犬ふぐり	犬ふぐり	春	20.2.25.
261	野仏の目を楽しませ犬ふぐり	犬ふぐり	春	20.2.25.
262	川底の影引き連れて鮠走る	鮠	春	20.2.25.
263	鮠走る川の瀬音の鈴に似て	鮠	春	20.2.25.
264	鮠走り影も負けじと底過る	鮠	春	20.2.25.
265	まんさくの花の縒り解く風の棘	まんさく	春	20.2.25.
266	かたつむり己のけふを楽しむや	蝸牛	夏	20.2.26.
267	ででむしのそろりそろりと急ぎ足	ででむし	夏	20.2.26.
268	かたつむり火急の用と急ぎをり	蝸牛	夏	20.2.26.
269	ででむしの尻に帆掛けて逃げ支度	ででむし	夏	20.2.26.
270	なめくじり見れば塩撒く人の癖	なめくじり	夏	20.2.26.
271	家持たぬ故に嫌はるなめくじり	なめくじり	夏	20.2.26.
272	雨降らば葉裏葉表かたつむり	蝸牛	夏	20.2.26.
273	紫陽花の葉裏葉表かたつむり	蝸牛	夏	20.2.26.
274	かたつむり野良が跨いで行きにけり	蝸牛	夏	20.2.26.
275	ででむしと宅配走る小雨かな	ででむし	夏	20.2.26.
276	勤行の大戸を上るかたつむり	蝸牛	夏	20.2.26.
277	なめくじり裸一貫つらぬけり	なめくじり	夏	20.2.26.
278	ででむしのべそかひてゐる葉裏かな	ででむし	夏	20.2.26.
279	木魚鳴るうつらうつらと蝸牛	蝸牛	夏	20.2.26.
280	針山をするする越ゆる蝸牛	蝸牛	夏	20.2.26.
281	家と家背負ひまぐはふ蝸牛	蝸牛	夏	20.2.26.
282	卒塔婆の天辺きはめ蝸牛	蝸牛	夏	20.2.26.
283	世の中は成らぬことあり蝸牛	蝸牛	夏	20.2.26.
284	ブランデーぼっと火のつく蝸牛	蝸牛	夏	20.2.26.
285	成らぬこといろいろあれど蝸牛	蝸牛	夏	20.2.26.
286	ででむしやハートの形の焼にぎり	ででむし	夏	20.2.26.
287	おふくろの胎で聞きたる二二六	二二六	春	20.2.26.
288	ででむしがくしゃみこらへるマスクかな	ででむし・マスク	夏春	20.2.26.
289	カップ麺啜る八十路やかたつむり	蝸牛	夏	20.2.26.
290	ででむしの分も塩受くなめくじり	ででむし	夏	20.2.27.
291	ででむしの這ふを肴に飲む其角	ででむし	夏	20.2.27.
292	かたつむり這ふを相手に酌む其角	かたつむり	夏	20.2.27.
293	青桐の幹上り行くかたつむり	かたつむり	夏	20.2.27.
294	青桐の幹ひた登るかたつむり	かたつむり	夏	20.2.27.
295	家を負ひ家を離れぬ蝸牛	蝸牛	夏	20.2.27.
296	針の山越え来たりたるかたつむり	かたつむり	夏	20.2.27.
297	アスファルト舗装の隙間すみれ咲く	菫	春	20.2.27.
298	勝手咲きながら踏まれずすみれ草	菫	春	20.2.27.
299	荒れ庭のをちこち目立つ菫草	菫	春	20.2.27.
300	放棄畑つくつくつくと土筆出ず	土筆	春	20.2.27.
301	吟行の句帳しまひて土筆摘む	土筆	春	20.2.27.
302	晩酌のあて思ひつつ土筆摘む	土筆	春	20.2.27.
303	碁敵のけふの手土産つくしんぼ	土筆	春	20.2.27.
304	三品となりて夕餉の土筆かな	土筆	春	20.2.27.
305	三品で出でし土筆をあてに呑む	土筆	春	20.2.27.
306	摘み帰る土筆顔出す茶碗蒸し	土筆	春	20.2.27.
307	遍路宿夕餉の膳に土筆載る	土筆	春	20.2.27.
308	一生をそお急ぐなとかたつむり	蝸牛	夏	20.2.27.
309	電線の弦かき鳴らし虎落笛	虎落笛	冬	20.2.27.
310	電線の啜り泣きする虎落笛	虎落笛	冬	20.2.27.
311	ででむしの挿しつ挿されつまぐはへり（蝸牛は両性具有）	ででむし	夏	20.2.27.
312	雪女陰燃え立てば溶けゆけり	雪女	冬	20.2.27.
313	雪女陰の溶け行く熱きまら	雪女	冬	20.2.27.
314	まぐはへば死と知りつなほ雪女	雪女	冬	20.2.27.
315	雪女黒き恥毛に肌白し	雪女	冬	20.2.27.
316	水かげろふ踊る書院の春障子	春障子	春	20.2.27.
317	水かげろふゆらゆら踊る春障子	春障子	春	20.2.27.
318	後戻りすることはなし蝸牛	蝸牛	夏	20.2.28.
319	雨降れば心の踊る蝸牛	蝸牛	夏	20.2.28.
320	雨降れば心の晴るる蝸牛	蝸牛	夏	20.2.28.
321	蝸牛遠き先祖は海の中	蝸牛	夏	20.2.28.
322	勤行の木魚の響きかたつむり	蝸牛	夏	20.2.28.
323	モルタルの壁を齧るや蝸牛	蝸牛	夏	20.2.28.
324	角振りつ玻璃戸を登る蝸牛	蝸牛	夏	20.2.28.
325	てんでんに葉裏葉表かたつむり	蝸牛	夏	20.2.28.
326	金剛杖てっぺんにゐる蝸牛	蝸牛	夏	20.2.28.
327	赤ワイン飲みつ食みたるエスカルゴ	蝸牛	夏	20.2.28.
328	理科室のメス持つ生徒かたつむり	蝸牛	夏	20.2.28.
329	野仏の丸き頭やかたつむり	蝸牛	夏	20.2.28.
330	水注ぎ勿忘草に語りかく	勿忘草	春	20.2.28.
331	出窓には勿忘草の鉢ひとつ	勿忘草	春	20.2.28.
332	口ずさむ乙女は八十路勿忘草	勿忘草	春	20.2.28.
333	日にいくつ忘れゆきしか勿忘草	勿忘草	春	20.2.28.
334	ででむしや牛車仕立ての旅に出む	ででむし	夏	20.2.29.
335	蝸牛牛車仕立てで旅をせむ	蝸牛	夏	20.2.29.
336	いざ参らん牛車仕立ての蝸牛	蝸牛	夏	20.2.29.
337	まひまひの牛車に乗りてシンデレラ	まひまひ	夏	20.2.29.
338	まひまひの牛車の姫は伏し目がち	まひまひ	夏	20.2.29.
339	葉表に移してやりぬ蝸牛	蝸牛	夏	20.2.29.
340	海去りし事情を知るや蝸牛	蝸牛	夏	20.2.29.
341	雨上がり深呼吸する蝸牛	蝸牛	夏	20.2.29.
342	メロディーは男と女かたつむり	蝸牛	夏	20.2.29.
343	ででむしを丸く囲んで写生の子	ででむし	夏	20.2.29.
344	野仏や少しこそばゆかたつむり	蝸牛	夏	20.2.29.
345	切り株に命の証ひこばゆる	ひこばゆ	春	20.2.29.
346	蘖（ひこばえ）の命始まる丈五寸	蘖	春	20.2.29.
347	蘖の背伸び始まる丈五寸	蘖	春	20.2.29.
348	天を突く覇気を隠さずひこばゆる	ひこばゆ	春	20.2.29.
349	まず百年目指す蘖丈五寸	蘖	春	20.2.29.
350	末黒野や塒に鴉帰り行く	末黒野	春	20.3.1.
351	鼻を突く焼野の臭ひ日暮れ道	焼野	春	20.3.1.
352	塒へと椋鳥過ぎる大焼野	焼野	春	20.3.1.
353	目瞑れば焼野を覆ふ死の臭ひ	焼野	春	20.3.1.
354	末黒野の鼻突く匂ひ死の臭ひ	末黒野	春	20.3.1.
355	下町を焼野にしたる大空襲（２０．３．１．）	焼野	春	20.3.1.
356	野鼠の早やも走りし焼野かな（２０．３．１．）	焼野	春	20.3.1.
357	野鼠の早や末黒野を走りをり（２０．３．１．）	末黒野	春	20.3.1.
358	末黒野や煤にまみれし野の仏（２０．３．１．）	末黒野	春	20.3.1.
359	大焼野空襲想ふ昭和の子（２０．３．１．）	焼野	春	20.3.1.
360	空襲の悪夢重なる大焼野（２０．３．１．）	焼野	春	20.3.1.
361	甦るまでの静寂や大焼野（２０．３．１．）	焼野	春	20.3.1.
362	鴉どち群れし焼野の不穏かな（２０．３．１．）	焼野	春	20.3.1.
363	鴉どち群れし焼野の不穏なり（２０．３．１．）	焼野	春	20.3.1.
364	雨の来て臭ひ饐えたる焼野行く（２０．３．１．）	焼野	春	20.3.1.
365	雨の来て臭ひ饐えたる焼野かな（２０．３．１．）	焼野	春	20.3.1.
366	末黒野や雨待つ煤の道祖神（２０．３．１．）	末黒野	春	20.3.1.
367	鈴に似し瀬音の川や鮠走る（２０．３．１．）	鮠（はや）	春	20.3.1.
368	鈴に似し瀬音立つ川鮠走る	鮠	春	20.3.1.
369	雨来るを葉表で待つ蝸牛	蝸牛	夏	20.3.1.
370	青桐をどこまで上る蝸牛	蝸牛	夏	20.3.1.
371	でで虫や都大路を渡り行く	ででむし	夏	20.3.1.
372	ゆっくりとででむし越ゆる単線路	ででむし	夏	20.3.1.
373	ででむしの歩速早まる日暮れかな	ででむし	夏	20.3.1.
374	花束や出るに出られぬ蝸牛	蝸牛	夏	20.3.1.
375	賓頭盧の天頂つるり蝸牛	蝸牛	夏	20.3.1.
376	涅槃像足裏を上るかたつむり	蝸牛	夏	20.3.1.
377	城下行く坊ちゃん列車春疾風	春疾風	春	20.3.1.
378	うららかや太鼓で開ける道後の湯	うららか	春	20.3.1.
379	漱石や桜膨らむ道後の湯	桜	春	20.3.1.
380	遍路行く古刹名刹貧乏寺	遍路	春	20.3.1.
381	徒歩へんろ歩く辛さも功徳かな	遍路	春	20.3.1.
382	蜆汁腹にしみじみしみ渡る	蜆汁	春	20.3.2.
383	蜆汁二杯も飲めば立ち直り	蜆汁	春	20.3.2.
384	しみじみと朝餉の蜆汁啜る	蜆汁	春	20.3.2.
385	宍道湖や夫婦相和す蜆舟	蜆舟	春	20.3.2.
386	鋤簾（じょれん）刺すたびに傾く蜆舟	蜆舟	春	20.3.2.
387	鋤簾（じょれん）突くたびに傾く蜆舟	蜆舟	春	20.3.2.
389	鋤簾（じょれん）突くたびに傾ぎし蜆舟	蜆舟	春	20.3.2.
390	足腰で鋤簾を捌く蜆舟	蜆舟	春	20.3.2.
391	足腰で鋤簾を捌く蜆採り	蜆採り	春	20.3.2.
392	石山を背にして瀬田の蜆採り	蜆採り	春	20.3.2.
393	石山寺背にして瀬田の蜆採り	蜆採り	春	20.3.2.
394	真空パック開けて湯を差す蜆汁	蜆汁	春	20.3.2.
395	しみじみと臓腑を満たす蜆汁	蜆汁	春	20.3.2.
396	舗装路を過り始めし蝸牛	蝸牛	夏	20.3.2.
397	手を貸すかさても車道の蝸牛	蝸牛	夏	20.3.2.
398	青桐を天空目指す蝸牛	蝸牛	夏	20.3.2.
399	線路這ふででむし自死の覚悟かな	ででむし	夏	20.3.2.
400	鋤簾突くたびに大揺れ蜆舟	蜆舟	春	20.3.2.
401	野鼠の早や末黒野を走り行く	末黒野	春	20.3.2.
402	直販の台に“無料”の土筆あり	土筆	春	20.3.2.
403	ででむしのそろりそろりと急ぎ行く	ででむし	夏	20.3.2.
404	ででむしも歩速早める日暮れかな	ででむし	夏	20.3.2.
405	逃げ場なきコロナウィルス春疾風	春疾風	春	20.3.3.
406	暗雲のコロナウィルス雛祭	雛祭	春	20.3.3.
407	客呼ばぬコロナ自粛の雛祭	雛祭	春	20.3.3.
408	コロナ禍やマスク付けたる内裏雛	マスク・雛祭	冬春	20.3.3.
409	コロナ禍やラインで祝ふ雛祭	雛祭	春	20.3.3.
410	古雛や瓜実顔も煤けたり	雛	春	20.3.3.
411	産院に華やぎ添へる雛飾り	雛飾り	春	20.3.3.
412	蝸牛老樹の幹も拘らず	蝸牛	夏	20.3.3.
413	ででむしの果てて残さぬ殻の謎	ででむし	夏	20.3.3.
414	やあと出てやあと食はるる地虫かな	地虫出ず	春	20.3.3.
415	啓蟄やさあ出て来いと雀どち	啓蟄	春	20.3.3.
416	啓蟄に待ってましたと雀どち	啓蟄	春	20.3.3.
417	蟻穴を出で早や隊列の帯長し	蟻穴を出ず	春	20.3.3.
418	啓蟄や浮かれて落ちる蟻地獄	啓蟄	春	20.3.3.
419	啓蟄や地上はコロナウィルス禍	啓蟄	春	20.3.3.
420	蜥蜴出てつつつと走りつと止まる	蜥蜴出る	春	20.3.3.
421	うらら日や陰門（ひなと）もしたる大あくび	うらら	春	20.3.3.
422	しめやかに陰門手探る男雛かな	雛	春	20.3.3.
423	女子らが陰門に飼ひしなめくじら	なめくじら	春	20.3.3.
424	乙女らの陰門に棲みしなめくじら	なめくじら	春	20.3.3.
425	しみじみと懐かし陰門鳥雲に	鳥雲に	春	20.3.3.
426	裸婦像の陰（ほと）に雫や春の雨	春雨	春	20.3.3.
427	裸婦像の陰門（ひなと）に蝶の止まりたる	蝶	春	20.3.4.
428	穴を出し蜥蜴つつつと走りけり	蜥蜴穴を出ず	春	20.3.4.
429	春北風ほとほと鳴らす雨戸かな	春北風（はるならひ）	春	20.3.4.
430	春北風や気張る阿吽の仁王立ち	春北風	春	20.3.4.
431	春北風や仏はいつも夏姿	春北風	春	20.3.4.
432	花冷えや薄着で御座す仏たち	花冷え	春	20.3.4.
433	花冷えや露座の仏の薄衣	花冷え	春	20.3.4.
434	コロナ風邪はだかる恐怖花の冷え	花冷え	春	20.3.4.
435	母ちゃんが舫ふ夫婦の蜆舟	蜆舟	春	20.3.4.
436	まんさくの寝ぐせのごとき捩れかな	まんさく	春	20.3.4.
437	ででむしをひょいと啄ばむ放ち鶏	ででむし	夏	20.3.4.
438	まひまひをひょいとのみこむ放ち鶏	まひまひ	夏	20.3.4.
439	遠郭公聞ゆる峪に陰門岩	郭公	夏	20.3.4.
440	うららかや縦割れ深き陰門岩	うららか	春	20.3.4.
441	佐保姫の肌艶やかな陰門岩	佐保姫	春	20.3.4.
442	子に乳房含ます母や春障子	春障子	春	20.3.4.
443	人の輪のだんだん縮む花の冷え	花冷え	春	20.3.4.
444	白魚の指がもみ上ぐ玉露かな	茶揉み	春	20.3.5.
445	焙炉場の勤勉実直送風機	焙炉場（ほいろば）	春	20.3.5.
446	送風機唸る焙炉場茶の香り	焙炉場	春	20.3.5.
447	場所取りの苦役引き継ぐ花筵	花筵	春	20.3.5.
448	非正規に場所取りさせる花筵	花筵	春	20.3.5.
449	非正規が独り番する花筵	花筵	春	20.3.5.
450	コロナ禍や自粛喜ぶ桜かな	桜	春	20.3.5.
451	コロナ禍や手持無沙汰の花篝	花篝	春	20.3.5.
452	爺と婆猫背並べて日向ぼこ	日向ぼこ	夏	20.3.5.
453	青桐は天への梯子かたつむり	蝸牛	夏	20.3.5.
454	磨崖仏肩凝りほぐす蝸牛	蝸牛	夏	20.3.5.
455	太郎にも花子にもなる恋まひまひ	まひまひ	夏	20.3.6.
456	海渡る大志のありや蝸牛	蝸牛	夏	20.3.6.
457	園児らの歌に合はせる蝸牛	蝸牛	夏	20.3.6.
458	角出して次は目玉と蝸牛	蝸牛	夏	20.3.6.
459	雨呼んで葉裏葉表かたつむり	蝸牛	夏	20.3.6.
460	殻捨てし先祖恨むやなめくじり	蝸牛	夏	20.3.6.
461	すれ違ふでんでん虫となめくじり	なめくじり	夏	20.3.6.
462	でで虫の殻寄せ合ひてまぐはへり	でで虫	夏	20.3.6.
463	陽炎や五重塔もフラダンス	陽炎	春	20.3.6.
464	陽炎や洟垂れのゐぬ幼稚園	陽炎	春	20.3.6.
465	陽炎や吾にも躍る心あり	陽炎	春	20.3.6.
466	陽炎や老ひても弾むもののあり	陽炎	春	20.3.6.
467	尻尾立て野良来る道のかぎろひぬ	かぎろひ	春	20.3.6.
468	五分遅れ陽炎連れてバス来たる	陽炎	春	20.3.6.
469	五分遅れかげろふ道をバス来たる	かげろふ	春	20.3.6.
470	陽炎や大地を踏めば揺るぎなし	陽炎	春	20.3.6.
471	コロナ禍や黒マスクして春ショール	マスク・春ショール	冬春	20.3.7.
472	笑ふ山背にコロナ禍の磨崖仏	山笑ふ	春	20.3.7.
473	山笑ふ街はマスクのコロナ風邪	山笑ふ・マスク	春冬	20.3.7.
474	用水路水澄む底の蜷の道	蜷	春	20.3.7.
475	上書きの足跡重ね蜷の道	蜷	春	20.3.7.
476	初蝶にスマホを向ける無人駅	初蝶	春	20.3.7.
477	初蝶や農の庭先直販台	初蝶	春	20.3.7.
478	初蝶や観客のゐぬ草野球	初蝶	春	20.3.7.
479	枯れ枝と見せて燃え立つ牡丹の芽	牡丹の芽	春	20.3.7.
480	燃え立てる焔固めし牡丹の芽	牡丹の芽	春	20.3.7.
481	高野山でで虫もゆく奥の院	でで虫	春	20.3.7.
482	笈を背に奥の院へと蝸牛	蝸牛	春
483	胡葱（あさつき）のぬたで酒酌む男かな	胡葱	春	20.3.7.20.3.7.
484	胡葱のぬた一品で独り酒	胡葱	春	20.3.7.
485	胡葱の酢味噌が旨し独り酒	胡葱	春	20.3.7.
486	胡葱の緑清しや独り酒	胡葱	春	20.3.7.
487	持ってけと農婦のくれし韮の束	韮	春	20.3.7.
488	朝採りの胡葱並ぶ直販台	胡葱	春	20.3.7.
489	胡葱を手に立ち寄りぬ酒販店	胡葱	春	20.3.7.
490	胡葱のぬたでちびりと独り酒	胡葱	春	20.3.7.
491	胡葱のぬたほろほろと独り酒	胡葱	春	20.3.7.
492	胡葱と田螺のぬたで濁り酒	胡葱・田螺	春	20.3.7.
493	あら酷し目刺目無しにして干さる	目刺	春	20.3.8.
494	貧しきを嘆くにあらず目刺焼く	目刺	春	20.3.8.
495	目刺焼き友と語りし茶碗酒	目刺	春	20.3.8.
496	胡葱を一掴み抜き朝餉かな	胡葱（あさつき）	春	20.3.8.
497	庭採れの胡葱浮かぶ朝餉汁	胡葱	春	20.3.8.
498	かげろふを纏ひて来たり一輌車	陽炎	春	20.3.8.
499	スカイツリー上る無謀の蝸牛	蝸牛	夏	20.3.8.
500	スカイツリー上る狂気や蝸牛	蝸牛	夏	20.3.8.
501	芹摘めば流れを走る鮠の影	芹・鮠	春	20.3.8.
502	爪染めて互いに競ふ蕨摘み	蕨	春	20.3.8.
503	山峡の里のなぞへや蕨狩	蕨狩	春	20.3.8.
504	汗ばみつなぞへ這ふかに蕨摘む	蕨	春	20.3.8.
505	マスクの句目立つ句会やコロナの春	マスク・春	冬春	20.3.8.
506	たんぽぽやマスク着けたる散歩犬	たんぽぽ・マスク	春冬	20.3.8.
507	風光る街を行き交ふマスクかな	風光る・マスク	春冬	20.3.8.
508	小市民てふ幸せの蜆汁	蜆汁	春	20.3.9.
509	石山の鐘に尻向け蜆舟	樒舟	春	20.3.9.
510	石山の鐘を背に聞く蜆舟	樒舟	春	20.3.9.
511	コロナ禍や法度となりし花筵	花筵	春	20.3.9.
512	コロナ禍や花見のマスク行き交ひぬ	花見。マスク	春冬	20.3.9.
513	マスクしていとしめやかな花見かな	マスク・花見	冬春	20.3.9.
514	マスクして宴自粛の桜狩	マスク・桜狩	冬春	20.3.9.
515	コロナ禍に陣取りのゐぬ花見かな	花見	春	20.3.9.
516	お花見の弁当売れず値下げ札	花見	春	20.3.9.
517	山茱萸のぼおと明るき花霞	山茱萸	春	20.3.9.
518	初つばめマスクの街を過るかな	初つばめ・マスク	春冬	20.3.10.
519	人まばら雷門を初つばめ	初つばめ	春	20.3.10.
520	広東語絶えし仲見世つばめ飛ぶ	燕	春	20.3.10.
521	雷門燕返しの初つばめ	初つばめ	春	20.3.10.
522	咳一つ凍る周囲や初つばめ	初つばめ	春	20.3.10.
523	客入れぬ春場所寂しコロナ風邪	春場所・風邪	春冬	20.3.10.
524	センバツも観客入れぬテレワーク	選抜	春	20.3.10.
525	春場所に続き選抜テレワーク	春場所	春	20.3.10.
526	春場所に続きセンバツ無観客	春場所	春	20.3.10.
527	春場所や客を入れないテレワーク	春場所	春	20.3.10.
528	旅立ちの儀式自粛や初つばめ	初つばめ	春	20.3.10.
529	嬰が手を開き乳呑む花辛夷	花辛夷	春	20.3.10.
530	辛夷咲き蕾膨らむ紫木蓮	辛夷・紫木蓮	春	20.3.10.
531	辛夷追ひ蕾膨らむ紫木蓮	辛夷・紫木蓮	春	20.3.10.
532	春の季語兼ねるやコロナ禍のマスク	春・マスク	春冬	20.3.10.
533	信長の膳に載りたる葦若芽	葦若芽	春	20.3.10.
534	葦牙（あしかび）のそよろと揺るる淡海かな	葦牙	春	20.3.10.
535	種蒔の段取り覗くタブレット	種蒔	春	20.3.11.
536	タブレット確認しつつ種下ろし	種下ろし	春	20.3.11.
537	苗箱の色で識別種下ろし	種下ろし	春	20.3.11.
538	AIの指示に従ふ種下ろし	種下ろし	春	20.3.11.
539	AIの指示に委ねて種下ろし	種下ろし	春	20.3.11.
540	苗箱にブランド米の種蒔けり	種蒔	春	20.3.11.
541	AIに取り仕切らるる種下ろし	種下ろし	春	20.3.11.
542	前日に漁協継ぎ足す潮干狩	潮干狩	春	20.3.11.
543	明日用の貝撒く漁協潮干狩	潮干狩	春	20.3.11.
544	おでこ向け尻向けてんで潮干狩	潮干狩	春	20.3.11.
545	おでこ向け尻向け競ふ潮干狩	潮干狩	春	20.3.11.
546	あらかじめ漁協貝撒く潮干狩	潮干狩	春	20.3.11.
547	大空に確と道見え鳥帰る	鳥帰る	春	20.3.11.
548	大空に確と道あり鳥帰る	鳥帰る	春	20.3.11.
549	相伝の空路悠々鳥帰る	鳥帰る	春	20.3.11.
550	相伝の空路違へず鳥帰る	鳥帰る	春	20.3.11.
551	だれも皆素足の白き潮干狩	潮干狩	春	20.3.12.
552	春場所やコロナ由来のテレワーク	春場所	春	20.3.12.
553	腰屈めつくづく見入る春りんどう	春竜胆	春	20.3.12.
554	腰落しつくづく見入る春りんどう	春竜胆	春	20.3.12.
555	山路来て日当る窪に春竜胆	春竜胆	春	20.3.12.
556	山路には日向の好きな春竜胆	春竜胆	春	20.3.12.
557	日当りの窪にひょこりと春竜胆	春竜胆	春	20.3.12.
558	せせらぎの響き軽やか春竜胆	春竜胆	春	20.3.12.
559	春竜胆ほほ笑み誘ふ四頭身	春竜胆	春	20.3.12.
560	日の当たる窪のそこここ春竜胆	春竜胆	春	20.3.12.
561	枯芝や春竜胆に日の光	春竜胆	春	20.3.12.
562	春竜胆寸を詰めたる逞しさ	春竜胆	春	20.3.12.
563	寸詰めて風避ける知恵春竜胆	春竜胆	春	20.3.12.
564	かたつむりじっと見つめてゐる坊や	蝸牛	春	20.3.12.
565	蹲踞して坊や頷く蝸牛	蝸牛	春	20.3.12.
566	野鼠の早や戻り来し焼野かな	焼野	春	20.3.13.
567	マスクして土筆を嬉々と採る母子	マスク・土筆	春	20.3.13.
568	野菜炒め土筆の混じる夕餉かな	土筆	春	20.3.13.
569	野に遊び母子で摘みし土筆かな	土筆	春	20.3.13.
570	けふ摘みし土筆加えて五目飯	土筆	春	20.3.13.
571	湧き出でし水を走らせ座禅草	座禅草	春	20.3.13.
572	しめやかなハケの水音座禅草	座禅草	春	20.3.13.
573	覗けども間口の暗き座禅草	座禅草	春	20.3.13.
574	話好き農婦のくれし野蒜かな	野蒜	春	20.3.13.
575	かたくりの花号砲を待つ構え	片栗の花	春	20.3.13.
576	上水の川辺眩しき黄水仙	黄水仙	春	20.3.13.
577	接骨木の遠目に白き花霞	接骨木（にはとこ）	春	20.3.13.
578	反転の技鮮やかに初つばめ	初燕	春	20.3.13.
579	鳥つぶて反転したる飛燕かな	飛燕	春	20.3.13.
580	屋根石のいまは無き里鳥帰る	鳥帰る	春	20.3.13.
581	猿山のボス大あくび鳥帰る	鳥帰る	春	20.3.13.
582	おでこ向け尻向け合ひて潮干狩	潮干狩	春	20.3.13.
583	屋根石の鄙びし里や鳥帰る	鳥帰る	春	20.3.13.
584	場所取りの苦役を解きしコロナ風邪		春	20.3.14.
585	大方がマスク姿の花見かな	花見	春	20.3.14.
586	宴（うたげ）張る花人の無き上野山	花人	春	20.3.14.
587	花筵自粛でひそと上野山	花筵	春	20.3.14.
588	花咲けどマスク行き過ぐ上野かな	花	春	20.3.14.
589	咳すれば視線集まる花見かな	咳・花見	冬・春	20.3.14.
590	花寂しパンデミックの吉野山	花	春	20.3.14.
591	コロナの春カミユの「ペスト」よく売れる	春	春	20.3.14.
592	コロナ禍や宴自粛の花見かな	花見	春	20.3.14.
593	コロナ禍や閑古鳥鳴く花見船	花見船	春	20.3.14.
594	くしゃみして視線集める花粉症	くしゃみ・花粉症	春	20.3.14.
595	コロナ禍の雪の降る日に開花かな	雪・花	春	20.3.14.
596	東京の染井開花や牡丹雪	花・牡丹雪	春	20.3.14.
597	雪降りて開花の桜縮みけり	雪・桜	春	20.3.14.
598	開花日や霙が雪に変りけり	花・霙・雪	春	20.3.14.
599	開花日や季重ねで詠む雪に風邪	花・雪・風邪	春冬	20.3.14.
600	コロナ禍や開花の首都に雪しんしん	花・雪	春冬	20.3.14.
601	湧き出でし水に浮くかに座禅草	座禅草	春	20.3.15.
602	泰西に吟遊詩人西行忌	西行忌	春	20.3.15.
603	コロナ禍や夜の寂びれて其角の忌	其角忌	春	20.3.15.
604	欲情の声ほとばしる恋の猫	恋猫	春	20.3.15.
605	欲情の果て恋猫の朝帰り	恋猫	春	20.3.15.
606	欲情の修羅の傷跡恋の猫	恋猫	春	20.3.15.
607	乳を欲る子猫の声の姦しき	猫の子	春	20.3.15.
608	うたた寝の耳に亀鳴く声したり	亀鳴く	春	20.3.15.
609	亀鳴ひて新型コロナ果つるべし	亀鳴く	春	20.3.15.
610	黒々と澱に蠢く蝌蚪不気味	蝌蚪	春	20.3.15.
611	開花宣言桜かくしの日となりぬ (東京開花宣言の１４日雪)	桜	春	20.3.15.
612	花辛夷乳呑む嬰の手が泳ぐ	花辛夷	春	20.3.15.
613	コロナ禍や碁敵も来ぬ花の冷え	花冷え	春	20.3.16.
614	コロナ禍や碁敵も来ぬ桜冷え	桜冷え	春	20.3.16.
615	ゴーグルとマスクの老医さくら冷え	桜冷え	春	20.3.16.
616	絢爛と桜尽くしの吉野山	山桜	春	20.3.16.
617	山覆い峪を埋めたる山桜	山桜	春	20.3.16.
618	桜追ひ奥千本に西行庵	桜	春	20.3.16.
619	山襞も峰も桜の吉野山	桜	春	20.3.16.
620	山桜奥千本の清水酌む	桜	春	20.3.16.
621	吉野山峪まで埋む山桜	山桜	春	20.3.16.
622	吉野山桜の果てに西行庵	桜	春	20.3.16.
623	腹くちるほどに桜の吉野かな	桜	春	20.3.16.
624	亀鳴ひて果つる新型コロナかな	亀鳴く	春	20.3.16.
625	亀鳴けば果つる新型コロナかな	亀鳴く	春	20.3.16.
626	隠れたるあばた現る焼野かな	焼野	春	20.3.17.
627	火が風を風が火を呼び焼野なる	焼野	春	20.3.17.
628	イヤホンを耳に麦踏む研修生	麦踏み	春	20.3.17.
629	イヤホンを耳に麦踏む農の黙	麦踏み	春	20.3.17.
630	末黒野や忘れ潮めく水溜り	末黒野	春	20.3.17.
631	鎮火せし火事場の臭ひ焼野道	焼野	春	20.3.17.
632	末黒野を過りし服に火の臭ひ	末黒野	春	20.3.17.
633	林地への緩きなぞへに節分草	節分草	春	20.3.17.
634	木漏れ日や屈み確かむ節分草	節分草	春	20.3.17.
635	人の眼を避くるごと咲く雪割草	雪割草	春	20.3.17.
636	春菊をざくリざくりと畑鋏	春菊	春	20.3.17.
637	春菊や切れ味のよき畑ばさみ	春菊	春	20.3.17.
638	イヤホンを耳に麦踏む農夫かな	麦踏み	春	20.3.17.
639	花冷えや薄き衣の仏たち	花冷え	春	20.3.17.
640	山桜峰埋め峪を埋めて吉野山	山桜	春	20.3.1８.
641	大口で鯉が吐き吸ふ花筏	花筏	春	20.3.1８.
642	並木道紅に色染む桜蕊	桜蕊	春	20.3.1８.
643	無造作に踏み行く人や桜蕊	桜蕊	春	20.3.1８.
644	足止める人無き道や桜蕊	桜蕊	春	20.3.1８.
645	小川には流れを隠す花筏	花筏	春	20.3.1８.
646	花筏がばと吐き出す鯉の口	花筏	春	20.3.1８.
647	船頭の無きまま長き花筏	花筏	春	20.3.1８.
648	踏まれても紅染む道や桜蕊	桜蕊	春	20.3.1８.
649	鯉の背が乱せど戻る花筏	花筏	春	20.3.1８.
650	三椏（みつまた）の花賑やかに咲き競ふ	三椏の花	春	20.3.19.
651	三椏の黄花群れ咲き日と遊ぶ	三椏の花	春	20.3.19.
652	翳持たず三椏の花日と遊ぶ	三椏の花	春	20.3.19.
653	日に睦み光を返すいたちぐさ	いたちぐさ（＝連翹）	春	20.3.19.
654	連翹の光の径を辿りけり	連翹	春	20.3.19.
655	連翹に蒼天深きなぞへ道	連翹	春	20.3.19.
656	鎮守社に続く籬やいたちぐさ	いたちぐさ	春	20.3.19.
657	山路来てきぶしの細き花鎖	木五倍子	春	20.3.19.
658	日出山下るなぞへの花馬酔木	花馬酔木	春	20.3.19.
659	鈴あまた黙を貫く花馬酔木	花馬酔木	春	20.3.19.
660	花馬酔木鈴の音聞く白昼夢	花馬酔木	春	20.3.19.
661	風呼んで遊び呆ける雪柳	雪柳	春	20.3.20.
662	コロナなどどこ吹く風と雪柳	雪柳	春	20.3.20.
663	ラジオ体操加わる如く雪柳	雪柳	春	20.3.20.
664	何はしゃぐ日暮れの小径雪柳	雪柳	春	20.3.20.
665	日暮れにもひとり明るき雪柳	雪柳	春	20.3.20.
666	月光に鎮まる白や雪柳	雪柳	春	20.3.20.
667	雪柳踊り疲れし日暮れかな	雪柳	春	20.3.20.
668	参道の所どころに雪柳	雪柳	春	20.3.20.
669	言ふなればこつまなんきん小米花	小米花	春	20.3.20.
670	自堕落な女のポーズ紫木蓮	紫木蓮	春	20.3.20.
671	屈託なき子ら駆け回り初桜	初桜	春	20.3.21.
672	夏みかん旨さうに食む妊婦	夏蜜柑	春	20.3.21.
673	夏蜜柑たわわに付けし空家かな	夏蜜柑	春	20.3.21.
674	すいすいと夏蜜柑食む女人かな	夏蜜柑	春	20.3.21.
675	夏みかん涼し気に食む女たち	夏蜜柑	春	20.3.21.
676	山吹に車窓撫でらる荒川線	山吹	春	20.3.21.
677	宿坊の膳にめずらしうこぎ飯	うこぎ飯	春	20.3.21.
678	うこぎ和えうこぎ飯出る山の宿	うこぎ和え	春	20.3.21.
679	植林の山路に煙る杉花粉	杉花粉	春	20.3.21.
680	植林の山路に杉の花けぶる	杉の花	春	20.3.21.
681	植林の山路は暗し杉の花	杉の花	春	20.3.21.
682	吊り橋や杉の花舞ふ峡の村	杉の花	春	20.3.21.
683	マスクして授業始まる四月かな	マスク・四月	冬春	20.3.22.
684	入学式無しに始まる新学期	入学式	春	20.3.22.
685	マスクして登校の子ら山吹草	マスク・山吹草	冬春	20.3.22.
686	踏んでゐることに気づきし犬ふぐり	犬ふぐり	春	20.3.22.
687	蜆蝶群れ集ふかに犬ふぐり	蜆蝶・犬ふぐり	春	20.3.22.
688	花韮や片脚上げし散歩犬	花韮	春	20.3.22.
689	マスクして散歩の人や草若葉	マスク・草若葉	冬春	20.3.22.
690	畑に舞ふ蝶に舌打つ農夫かな	蝶	春	20.3.22.
691	畑に舞ひ企み深き白き蝶	蝶	春	20.3.22.
692	無住寺に風通す日や蝶舞ひぬ	蝶	春	20.3.22.
693	草若葉長打少なき草野球	草若葉	春	20.3.22.
694	蝶を眼で追ふセンターや草野球	蝶	春	20.3.22.
695	火を放ち声懸け走る野焼きかな	野焼き	春	20.3.23.
696	めらめらと火焔音立つ野焼きかな	野焼き	春	20.3.23.
697	桜背に自撮りのマスク上野山	桜	冬・春	20.3.23.
698	千鳥ヶ淵マスク行き交ふ花見かな	マスク・花見	冬・春	20.3.23.
699	コロナ禍やいとしめやかに花見客	花見客	春	20.3.23.
700	ひたすらに歩き廻りて花疲れ	花疲れ	春	20.3.23.
701	コロナ禍やテレビ花見となりにけり	花見	春	20.3.23.
702	コロナ禍のマスク行き交ふ花見かな	花見	冬・春	20.3.23.
703	風船に逃げられ地団駄踏む幼	風船	春	20.3.23.
704	踊子草ひしめく紅の放棄畑	踊子草	春	20.3.23.
705	農夫老ひ畑一面の踊子草	踊子草	春	20.3.23.
706	耕運機たちまち返す畑三枚	畑返す	春	20.3.24.
707	畑返す行き来行き来の耕運機	畑返す	春	20.3.24.
708	切り口に灰たっぷりと薯を植ゆ	薯植う	春	20.3.24.
709	刻まれてやがて芽を出す薯植ゆる	薯植う	春	20.3.24.
710	切り口に灰をまぶして薯植ゆる	薯植う	春	20.3.24.
711	耕運機響くを聞きつ薯植ゆる	薯植う	春	20.3.24.
712	道の駅人気定食菜飯食む	菜飯	春	20.3.24.
713	道の駅緑鮮やか菜飯食む	菜飯	春	20.3.24.
714	定食の菜飯が人気道の駅	菜飯	春	20.3.24.
715	田舎定食緑鮮やか菜飯食む	菜飯	春	20.3.24.
716	ふるさとは若狭の妻や蒸鰈	蒸鰈	春	20.3.25.
717	食べ終えて骨美しき蒸鰈	蒸鰈	春	20.3.25.
718	しゃきしゃきと歯ざわり楽し独活を食む	独活	春	20.3.25.
719	しゃきしゃきと音立つ如く独活を食む	独活	春	20.3.25.
720	散歩道直販台で野蒜買ふ	野蒜	春	20.3.25.
721	農の庭野蒜も並ぶ直販台	野蒜	春	20.3.25.
722	山里にせせらぐ小川遠霞	霞	春	20.3.25.
723	靴脱いで靴下脱ぎて青き踏む	踏青	春	20.3.25.
724	青き踏む白き素足の生々し	踏青	春	20.3.25.
725	ひんやりと素足の足裏青踏みぬ	踏青	春	20.3.25.
726	吟行がたちまち競ふ蕨狩	蕨	春	20.3.25.
727	花冷えやパンデミックにクラスター	花冷え	春	20.3.26.
728	コロナ禍の外出自粛花の冷え	花冷え	冬春	20.3.26.
729	千鳥ヶ淵マスクで過る花見かな	花見	冬春	20.3.26.
730	ゴーグルにマスクの町医コロナの春	春	春	20.3.26.
731	咳くしゃみ視線集まる春コロナ	咳くしゃみ春	冬春	20.3.26.
732	買い溜めに走るコロナ禍花の冷え	花冷え	春	20.3.26.
733	コロナ禍や花の宴の無き上野	花の宴	春	20.3.26.
734	コロナ禍の終息見えず松の芯	松の芯	春	20.3.26.
735	コロナ禍の終息見えず万愚節	万愚節	春	20.3.26.
736	コロナ禍やデマの飛び交ふ万愚節	万愚節	春	20.3.26.
737	コロナ禍や摘む人影もなき土筆	土筆	春	20.3.26.
738	春陰やロックダウンの言葉知る	春陰	春	20.3.26.
739	草薙の剣の欲しき野焼きかな	野焼	春	20.3.26.
740	コロナ風邪番外にして黄沙来ぬ	黄沙	春	20.3.26.
741	スマホ手に少女うつらの目借時	目借時	春	20.3.27.
742	手のスマホ落ちそで落ちぬ目借時	目借時	春	20.3.27.
743	パソコンもスリープになる目借時	目借時	春	20.3.27.
744	不眠症夜にも欲しい目借時	目借時	春	20.3.27.
745	本開き三ページ目は目借時	目借時	春	20.3.27.
746	木魚の音いつか夢路の目借時	目借時	春	20.3.27.
747	はっとして居住まい正す目借時	目借時	春	20.3.27.
748	授業中いびきも聞こゆ目借時	目借時	春	20.3.27.
749	鬼教師近づいてゆく目借時	目借時	春	20.3.27.
750	先生のチョークが飛びぬ目借時	目借時	春	20.3.27.
751	先生に当てられ詰まる目借時	目借時	春	20.3.27.
752	乗り過ごし一駅戻る目借時	目借時	春	20.3.27.
753	風なくもかそけく揺るる藤の房	藤	春	20.3.28.
754	白藤の房豊満に香を放つ	藤	春	20.3.28.
755	豊艶と呼びたき藤の房潜る	藤	春	20.3.28.
756	山藤の小瀧となりて咲き満てり	藤	春	20.3.28.
757	豊満な乳房とも見ゆ藤の花	藤	春	20.3.28.
758	山藤や遠見に白き花の瀧	藤	春	20.3.28.
759	白藤の房犇めきて暗き棚	藤	春	20.3.28.
760	花房のずしりと重き藤の棚	藤	春	20.3.28.
561	妖艶な白き裸身や藤の花	藤	春	20.3.28.
762	妖艶な女人ひしめく藤の花	藤	春	20.3.28.
763	山襞に白き瀧なす藤の花	藤	春	20.3.28.
764	授業中いびき聞こゆる目借時	目借時	春	20.3.28.
765	授業中寝息聞こゆる目借時	目借時	春	20.3.28.
766	授業中寝息の漏るる目借時	目借時	春	20.3.28.
767	マスクして校門潜る入学児	マスク・入学	冬春	20.3.28.
768	コロナ禍の歴史背負ひて入学児	入学	春	20.3.28.
769	敷居に蝋塗りて軽やか春障子	春障子	春	20.3.29.
770	コロナ禍や自粛促す春の雪	春の雪	春	20.3.29.
771	耕耘機音軽やかに畑駆ける	耕耘機	春	20.3.29.
772	耕耘機くるりくるりと畑走る	耕耘機	春	20.3.29.
773	畑一枚たちまち仕上ぐ耕耘機	耕耘機	春	20.3.29.
774	全員がコロナマスクで卒業す	卒業	冬春	20.3.29.
775	首都に降るコロナ封じの春の雪	春の雪	春	20.3.29.
776	コロナ禍や人閉じ込める春の雪	春の雪	春冬	20.3.29.
777	学習田紅鮮やかにげんげ咲く	げんげ	春	20.3.29.
778	年ごとにげんげ田消えし車窓かな	げんげ	春	20.3.29.
779	とんかつにソースざぶりと桜冷え	桜冷え	春	20.3.29.
780	春の雪コロナ自粛の助っ人に	春の雪	春冬	20.3.29.
781	春の雪コロナ自粛にお役立ち	春の雪	春冬	20.3.29.
782	コロナ禍や自粛助ける春の雪	春の雪	春冬	20.3.29.
783	とさみづきちろろちろろと咲きにけり	土佐水木	春	20.3.30.
784	はちきんと呼ばれうつむく土佐みづき	土佐水木	春	20.3.30.
785	土佐水木けふも米搗く水車小屋	土佐水木	春	20.3.30.
786	花どれもどこか淋しき土佐みづき	土佐水木	春	20.3.30.
787	華やぎを省き小径のとさみづき	土佐水木	春	20.3.30.
788	網もよふ内に隠して貝母咲く	貝母の花	春	20.3.30.
789	何を秘めなにを恥じらふ花貝母	貝母の花	春	20.3.30.
790	二の腕に命の刺青貝母咲く	貝母の花	春	20.3.30.
791	ヒヤシンスひしめく花に傾ぎをり	ヒヤシンス	春	20.3.30.
792	風信子ボーイズラブの元祖とも	ヒヤシンス(風信子	春	20.3.30.
793	ヒヤシンス花群れ重く傾ぎけり	ヒヤシンス	春	20.3.30.
794	風に乗り円盤飛べりヒヤシンス	ヒヤシンス	春	20.3.30.
795	コロナ禍や桜かくしの上野山	桜かくし	春	20.3.30.
796	苗箱をずらり並べて種下ろし	種下ろし	春	20.3.30.
797	苗箱の一箱ずつに種下ろし	種下ろし	春	20.3.30.
798	苗箱に稔り念じつ種下ろし	種下ろし	春	20.3.30.
799	小さき芽の息吹初めたる籾下ろす	籾下ろす	春	20.3.30.
800	おでこ向け背を向け競ふ潮干狩	潮干狩	春	20.3.30.
801	コロナ禍や桜かくしの吾妻橋	桜かくし	春	20.3.30.
802	年ごとにげんげ田消ゆる車窓かな	げんげ	春	20.3.31
803	野に遊ぶコロナマスクの母子かな	野遊び	春	20.3.31
804	花柄のコロナマスクや青き踏む	踏青	春	20.3.31
805	野遊びやコロナマスクで深呼吸	野遊び	春	20.3.31
806	蓬摘むコロナマスクの農婦かな	蓬	春	20.3.31
807	惜し気なく紫雲英鋤き込む耕耘機	紫雲英	春	20.3.31
808	げんげ田や花の盛りを鋤き込まる	紫雲英	春	20.3.31
809	虎杖を折らんと寄れば崖の端	虎杖	春	20.3.31
810	虎杖の酸きに唾湧く疎開の子	虎杖	春	20.3.31
811	山葵田を終日洗ふ水清し	山葵	春	20.3.31
812	浜言葉飛び交ふ海女や磯開き	磯開き	春	20.3.31
813	海女小屋に人の声する磯開き	磯開き	春	20.3.31
814	母と子とコロナマスクで青き踏む	踏青	春	20.3.31
815	青き踏むコロナマスクの母子かな	踏青	春	20.3.31
816	晩春もへちまもあらぬコロナ風邪	晩春	春	20.3.31
817	晩春やコロナマスクの街を行く	晩春	春	20.4.1
818	晩春や雨空重きコロナ風邪	晩春	春	20.4.1
819	コロナ禍の曇天暗き桜かな	桜	春	20.4.1
820	コロナ禍や志村けん逝き弥生尽	弥生尽	春	20.4.1
821	コロナ禍に呆け散り初む桜かな	桜	春	20.4.1
822	コロナ禍に戸惑ふ桜散り急ぐ	桜	春	20.4.1
823	コロナ禍や流言飛語の万愚節	万愚節	春	20.4.1
824	花冷えや志村けん逝くコロナ風邪	花冷え	春	20.4.1
825	コロナ禍に列島縮む花の冷え	花冷え	春	20.4.1
826	コロナ禍や吐息溜息花の冷え	花冷え	春	20.4.1
827	コロナ禍に身動き取れぬ花の冷え	花冷え	春	20.4.1
828	マスクして国会審議さくら冷え	桜冷え	春	20.4.1
829	花冷えや心も冷ゆるコロナ風邪	桜冷え	春	20.4.2
830	遅き日の潮の満ちたる干潟かな	遅日	春	20.4.2
831	ひたひたと干潟潮満つ遅日かな	遅日	春	20.4.2
832	乙女像跳ねしポーズの日永かな	日永	春	20.4.2
833	石山の鐘の明るき遅日かな	日永	春	20.4.2
834	遅き日の瀬田の唐橋渡り切る	遅日	春	20.4.2
835	家籠もるコロナ自粛の日永かな	日永	春	20.4.2
836	朧夜やコロナマスクがすれ違ふ	朧夜	春	20.4.2
837	コロナマスクぬっと現る春の闇	春の闇	春	20.4.2
838	見上ぐればどれも涙目春の星	春の星	春	20.4.2
839	勤行の木魚聞こゆる朧月	朧月	春	20.4.2
840	木魚打ち経上ぐ僧や朧月	朧月	春	20.4.2
841	コロナ禍や桜吹雪のバス通り	桜吹雪	春	20.4.2
842	散りしきる千鳥ヶ淵の桜かな	散る桜	春	20.4.2
843	コロナ禍や桜吹雪も上の空	桜吹雪	春	20.4.2
844	春暁や早出の人の靴の音	春暁	春	20.4.3
845	春暁や消え残りたる玄関灯	春暁	春	20.4.3
846	コロナ禍のテレビ延々春の昼	春昼	春	20.4.3
847	コロナ禍の首都は騒然さくら散る	桜散る	春	20.4.3
848	コロナ禍や桜吹雪の首都騒然	桜吹雪	春	20.4.3
849	花冷えや露座の大仏泰然と	花冷え	春	20.4.3
850	人影はコロナマスクで磯遊び	磯遊び	春	20.4.3
851	二枚貝なれど一片さくら貝	桜貝	春	20.4.3
852	海の香に醤油たぎりし栄螺かな	栄螺	春	20.4.3
853	潮引けばお出でお出でと汐まねき	汐まねき	春	20.4.3
854	潮引けば客引き始む汐まねき	汐まねき	春	20.4.3
855	椋鳥の塒ふくらむ大樹かな	椋鳥	秋	20.4.3
856	青き踏むコロナマスクの母と子と	青き踏む	春	20.4.4
857	春陰やコロナ自粛の家居かな	春陰	春	20.4.4
858	コロナ禍や山笑ふとも心冷ゆ	山笑ふ	春	20.4.4
859	養老の瀧を背にする花見かな	花見	春	20.4.4
860	養老の瀧音を背に花見の輪	花見	春	20.4.4
861	新社員コロナマスクで初仕事	新社員	春	20.4.4
862	頬刺を手掴みにして酒を酌む	頬刺	春	20.4.4
863	一筋の藁抜き目刺五匹焼く	目刺	春	20.4.4
864	目刺焼く杣の夕餉の煙りかな	目刺	春	20.4.4
865	コロナ禍や外出自粛目刺焼く	目刺	春	20.4.4
866	飯よりも酒の似合ひし目刺かな	目刺	春	20.4.4
867	うんうんと独り頷く日永かな	日永	春	20.4.5
868	山路来てとげ怖れつつ楤芽かく	楤の芽	春	20.4.5
869	楤の芽や鋭き刺の挟み撃ち	楤の芽	春	20.4.5
870	楤の芽や鋭き刺の怖ろしき	楤の芽	春	20.4.5
871	楤の芽や悲鳴をちこち太き刺	楤の芽	春	20.4.5
872	楤の芽の三品並びし山の宿	楤の芽	春	20.4.5
873	花にらの根元群れ咲く百年樹	花韮	春	20.4.5
874	味噌和えの萵苣(ちしゃ)懐かしき母の味	萵苣	春	20.4.5
875	見回ればまた増えてをり葱坊主	葱坊主	春	20.4.5
876	春菊やざくりざくりと農鋏	春菊	春	20.4.5
877	しろつめ草いきなり出合ふ四葉かな	白詰草	春	20.4.5
878	接骨木の花遠のけば霞けり	接骨木の花	春	20.4.6
879	手入れせぬ狭庭華やぐ諸葛菜	諸葛菜	春	20.4.6
880	荒れ庭を花野に変へる諸葛菜	諸葛菜	春	20.4.6
881	紫に狭庭華やぐ諸葛菜	諸葛菜	春	20.4.6
882	勝手咲き狭庭明るむ諸葛菜	諸葛菜	春	20.4.6
883	狭庭埋め初蝶遊ぶ諸葛菜	諸葛菜	春	20.4.6
884	荒れ庭に花色優し諸葛菜	諸葛菜	春	20.4.6
885	手を入れぬ狭庭を埋む諸葛菜	諸葛菜	春	20.4.6
886	せせらぎや日に背を向けて座禅草	座禅草	春	20.4.6
887	湧水のせせらぎ纏ふ座禅草	座禅草	春	20.4.6
888	湧水の流れ清らに座禅草	座禅草	春	20.4.6
889	ひかり背に懐暗き座禅草	座禅草	春	20.4.6
890	ヒヤシンス花房重く傾ぎけり	ヒヤシンス	春	20.4.7
891	魚島に犇めき舞ひつ鴎来る	魚島	春	20.4.7
892	花冷えやこころ乾びしコロナ風邪	花冷え	春	20.4.7
893	息詰めて蟄居の春やコロナ風邪	春	春	20.4.7
894	花冷えや街閑散とコロナ風邪	花冷え	春	20.4.7
895	宣言で何かが変るさくら冷え	桜冷え	春	20.4.7
896	宣言の初日なりけり椿寿の忌	椿寿忌（＝虚子忌）	春	20.4.7
897	不急不要コロナの春の合言葉	春	春	20.4.7
898	春陰やコロナマスクの野の仏	春陰	春	20.4.7
899	ジョギングもコロナマスクや初燕	初燕	春	20.4.7
900	花冷えやふくれっ面に泣きっ面	花冷え	春	20.4.7
901	初蝶にちっと舌打つ農夫かな	初蝶	春	20.4.7
902	熊蜂や見かけに違ふ平和主義	熊蜂	春	20.4.7
903	蜂を追ふましらの如き信濃人	蜂	春	20.4.7
904	蜂の子をあてに酒酌む信濃人	蜂	春	20.4.7
905	賓頭盧の頭で滑る春の蠅	春の蠅	春	20.4.7
906	俯せも上向きもあり落椿	落椿	春	20.4.7
907	日照雨過ぎ雫をこぼす藪椿	藪椿	春	20.4.7
908	一輪ずつ供花の椿や六地蔵	椿	春	20.4.7
909	コロナ禍や春に背きし家居かな	春	春	20.4.7
910	コロナマスク付けて対面入学児	入学児	春	20.4.8
911	ふくよかに聖母の乳房藤の花	藤	春	20.4.8
912	藤棚の高き潜りて百花園	藤	春	20.4.8
913	ウイルスと真っ向勝負春深し	春深し	春	20.4.8
914	春の海大橋潜るコンテナ船	春の海	春	20.4.8
915	水温むコロナマスクの子ら遊ぶ	水温む	春	20.4.8
916	水温むコロナマスクの子らの声	水温む	春	20.4.8
917	白鷺の歩む野川や水温む	水温む	春	20.4.8
918	白鷺の降り立つ野川水ぬるむ	水温む	春	20.4.8
919	コロナマスクした子らや水温む	水温む	春	20.4.8
920	せせらぎも弾む野川や水温む	水温む	春	20.4.8
921	大仏もコロナマスクやさくら冷え	桜冷え	春	20.4.8
922	野仏の肩で雨待つかたつむり	蝸牛	春	20.4.8
923	野仏の肩で息つくかたつむり	蝸牛	春	20.4.8
924	スカイツリー上り始めしかたつむり	蝸牛	春	20.4.8
925	スカイツリー天辺目指す蝸牛	蝸牛	春	20.4.8
926	大志秘めでで虫上るスカイツリー	でで虫	春	20.4.8
927	でで虫の静かな一歩スカイツリー	でで虫	春	20.4.8
928	スカイツリー登頂目指すかたつむり	蝸牛	春	20.4.8
929	三段跳びするでで虫のゐたりして	でで虫	春	20.4.8
930	産土の潮騒聞くやかたつむり	蝸牛	春	20.4.8
931	人間に四の五はあれど蝸牛	蝸牛	春	20.4.8
932	好き嫌ひ惚れて惚れられ野焼きかな	野焼き	春	20.4.8
933	父の歳はるかに超えぬ花馬酔木	花馬酔木	春	20.4.9
934	馬酔木咲く庭の主は代替わり	馬酔木の花	春	20.4.9
935	馬酔木咲く日暮れの庭に風邪ほのと	馬酔木の花	春	20.4.9
936	秩父には秩父満天星大没日	満天星の花	春	20.4.9
937	入相の鐘峪渡る花馬酔木	花馬酔木	春	20.4.9
938	白藤の犇めき下がる棚暗し	白藤	春	20.4.9
939	花房の下がりて静か藤の棚	藤	春	20.4.9
940	入相の風に小ゆるぎ藤の花	藤	春	20.4.9
941	棚仕立て撓めし枝の梨の花	梨の花	春	20.4.9
942	棚仕立てきりりと白き梨の花	梨の花	春	20.4.9
943	端正な梨の花咲く稲城かな	梨の花	春	20.4.9
944	裏路地の籬に赤き木瓜の花	木瓜の花	春	20.4.9
945	亀鳴かす名人集ふ句会かな	亀鳴く	春	20.4.9
946	でで虫のスキップを見て亀鳴けり	でで虫・亀鳴く	春	20.4.9
947	大真面目亀が鳴ひたと俳句詠み	亀鳴く	春	20.4.9
948	亀鳴いてニュースにならぬ句会かな	亀鳴く	春	20.4.9
949	コロナ禍や終わりなきかに春の雷	春雷	春	20.4.9
950	山襞に小瀧をちこち藤の花	藤の花	春	20.4.10
951	山襞に小瀧かと見ゆ藤の花	藤の花	春	20.4.10
952	山襞に小瀧をなせる藤の花	藤の花	春	20.4.10
953	山襞に瀧かと見れば藤の花	藤の花	春	20.4.10
954	山襞に小瀧と紛ふ藤藤の花	藤の花	春	20.4.10
955	山襞に瀧かと紛ふ藤の花	藤の花	春	20.4.10
956	峪隔てつくづく見上ぐ藤の瀧	藤	春	20.4.10
957	遠見には瀧の幾筋藤の花	藤の花	春	20.4.10
958	空仰ぎ長嘆息の落椿	落椿	春	20.4.10
959	わが美貌とくとご覧と落椿	落椿	春	20.4.10
960	地に伏してよよと泣くかに落椿	落椿	春	20.4.10
961	箒の目残る庭先落椿	落椿	春	20.4.10
962	コロナ禍や藤棚見上ぐ人もなし	藤	春	20.4.10
963	のた打ちし太き幹持つ藤の花	藤	春	20.4.10
964	花房の犇めき暗き藤の棚	藤	春	20.4.10
965	美女百人千人妖し藤噎せる	藤	春	20.4.10
966	美女千人頬を寄せ合ふ藤の棚	藤	春	20.4.10
967	柳絮飛ぶ石神井池の池面かな	柳絮	春	20.4.11
968	石神井池きらめく池面柳絮飛ぶ	柳絮	春	20.4.11
969	楊貴妃の佇みさうな華鬘草	華鬘草	春	20.4.11
970	華鬘草かすかに揺らす風のあり	華鬘草	春	20.4.11
971	湧水のせせらぎ聞こゆ華鬘草	華鬘草	春	20.4.11
972	そよ風の過れば揺るるけまんかな	華鬘草	春	20.4.11
973	大正も昭和も遠く藍微塵(＝勿忘草)	藍微塵	春	20.4.11
974	勿忘草歌ふアルトの柔らかし	勿忘草	春	20.4.11
975	勿忘草歌ふ卒寿の媼かな	勿忘草	春	20.4.11
976	勿忘草夢二の女人手を伸ばす	勿忘草	春	20.4.11
977	名を呼べば勿忘草の頷きぬ	勿忘草	春	20.4.11
978	山襞に藤いく筋も瀧をなす	藤	春	20.4.11
979	紫陽花の花号の風雅辿るかな	紫陽花	夏	20.4.11
980	紫陽花の花号雅ななぞへ追ふ	紫陽花	夏	20.4.11
981	紫陽花寺一花一花の雅号ふ	紫陽花	夏	20.4.11
982	紫陽花の百花彩なす不動尊	紫陽花	夏	20.4.11
983	紫陽花寺九十九折なす背山かな	紫陽花	夏	20.4.11
984	それぞれに雅な花号紫陽花寺	紫陽花	夏	20.4.11
985	色姿百花彩なす紫陽花寺	紫陽花	夏	20.4.11
986	色姿意匠競ひし紫陽花寺	紫陽花	夏	20.4.11
987	紫陽花の背山彩なす不動尊	紫陽花	夏	20.4.11
988	背山埋め花号風雅に紫陽花寺	紫陽花	夏	20.4.11
989	七変化人のこころは量りかね	七変化	夏	20.4.11
990	花色を変へて罪なき七変化	七変化	夏	20.4.11
991	雨降ればこれもまたよし紫陽花寺	紫陽花	夏	20.4.11
992	雨に濡れ空色冴ゆる四葩かな	四葩（＝紫陽花）	夏	20.4.11
993	紫陽花の一葉ひと葉に雨蛙	紫陽花	夏	20.4.11
994	七変化人のこころは度し難し	七変化	夏	20.4.11
995	それぞれの花号楽しき紫陽花寺	紫陽花	夏	20.4.12
996	紫陽花寺その名に応ふ背山かな	紫陽花	夏	20.4.12
997	雨に濡れ紺碧映ゆる四葩かな	四葩	夏	20.4.12
998	雅なる花号も楽し紫陽花寺	紫陽花	夏	20.4.12
999	雅なる花号楽しや紫陽花寺	紫陽花	夏	20.4.12
1000	風雅なる花号も楽し紫陽花寺	紫陽花	夏	20.4.12

♪BGM:ヴィバルディ［四季春］arranged by Reinmusik♪


第４４回へ		表紙へ		第46回へ