鈴童
俳誌『春耕』の「耕人集」搭載作品帳
選者 棚山波朗(春耕主宰)
[平成23年2月号]
<四国60番札所横峰寺(愛媛県)の参道の山道にて 22.11.8.>
山道や冬苺摘む母子遍路


<同上>
冬うらら遍路の鈴に会釈して

<四国43番札所明石寺(愛媛県)旧参道の植林の山道にて 22.11.9.>
杉葉降る微かな響き冬木立

[平成23年3月号]
<自宅付近のバス停で10.12.13.>
凩や陽だまりの影腕を組み

<都立武蔵野公園にて10.12.19.>
飯桐や百万粒の真紅の実

<小平市内の菜園で10.12.20.>
去り際にくわあと一声寒鴉

<自宅で10.12.22.>
穏やかに西に傾く冬至の日

[平成23年4月号]
<自宅から近い玉川上水小桜橋で11.2.1.>
背鰭立て上水泳ぐ寒の鯉

<狭庭の火鉢池の10匹のメダカたち11.2.4.>
活気づく池の目高や春立ちぬ

<自宅で晩酌しつつ11.1.10.>
ぬる酒をほろほろと呑む蕗の薹


[平成23年5月号]
<千葉市内の公園の乙女像を詠む11.2.13.>
春光に乳首撥ね上ぐ乙女像

<小平市内の菜園でのジャガイモの植え付けで11.2.15.>
断面の利休鼠の薯を植う 

<小平市内の菜園で11.2.17.>
春泥に足滑らせつ畝づくり

<東京に春一番が吹いた日に11.2.25.>
歩くひと頭突き出し春一番


[平成23年6月号]
<3.11.東日本大震災に寄せて11.3.26.>
被災地に降るを怨まん斑雪

<3.11.東日本大震災に寄せて11.3.27.>
畑打ちの人影消えし汚染地区


<3.11.東日本大震災に寄せて11.3.30.>
鎮魂の響きとぞ聴く春の雷


[平成23年7月号]
<階下に遊びにきた孫坊主の声を聞きながら11.4.15.>
春愁ひどこ吹く風の孫の声

<11.4.15.>
摘み草のいつか四つ葉をさがしをり

<11.4.29.>
花種を蒔きをり頬に風受けて

[平成23年8月号]
<小平稲門会の同好会「楽農会」仲間との秩父1泊2日懇親の旅で吾野にてにて11.6.2.>
高麗川の瀬音涼しくえごの花

<上記の懇親の旅で長瀞にて11.6.3.>
長瀞の巨岩の窪に菖蒲揺れ

<上記の懇親の旅で西武秩父駅にて11.6.3.>
削られて細る武甲の梅雨晴間

<四国春の旅(5.18〜21.)で愛媛での思い出を詠む>
お遍路や紫霞む花あふち

<課題詠(七夕)入選句 東日本大震災被災者を想いつつ>
七夕竹筆太の字で戻りたい
[平成23年9月号]
花ざくろ濡れてひと際燃えたてり
真夏日の丘虎の尾不動なり
終焉の場所を見つけて揚羽蝶
<課題詠(鯊)入選句>
鯊撥ねて水面に水輪残しけり
[平成23年10月号]
藻の絡み慌てて抜ける目高かな
賢治にも恋の歴あり夏木立
えごの花数だけの身を下げゐたり
<課題詠(露)入選句>
いっせいに塒飛び立つ露時雨れ
[平成23年11月号]
立ち止まり耳を澄ませば螻蛄鳴く
塾終へて無月の道を走る子ら
風一陣網戸に止まる秋の蝶
<課題詠(酉の市、熊手)入選句>
参道の人波分けてくる熊手
[平成23年12月号]
方丈の白き着流し曼珠沙華
花数の重みに傾ぐ紫苑かな
鎌握り稲刈る児らの汗まみれ
稲架掛けて里山の景定まれり
<課題詠(神楽)入選句>
舞終へてラジカセ止める里神楽
[平成24年1月号]
うそ寒や主なき蜘蛛の巣破れけり
湯を潜り隠元の色際立てり
補陀落へ言伝て負ひて帰燕かな
鈴なりの実をもぎし木の木守柿
<課題詠(独楽)入選句>
独楽廻し腕を競ひし友も老い
[平成24年2月号]
つくばひに揺るる影あり浮紅葉
剣山のごとき根方や萩の跡
鉄幹の散り残る葉の寒さかな
雪吊の髷を結ひたる小松かな
<課題詠(梅)佳作句>
まず一輪見つけてうれし梅の花
  [選者講評] 一瞬探梅かしら?と思ったが、庭の梅である。沢山の蕾の中に
   開き始めた一輪を見つけた時のぞくぞくするような感激。それからは三寒四温
    の陽気に一進一退を繰り返して満開となり、辺り一面馥郁とした香に包まれる。
[平成24年3月号]
初日の出枝の一葉も動かずに
寒禽の鋭き声や梢揺る
早よ抜けと土に浮き出す蕪かな
田雲雀とおぼしき声の飛び去れり
<課題詠(雛一般)入選句>
内裏さま今年も供をやすませて
[平成24年4月号]
池底の寒鯉ときにゆらりとす
トントコと飴切る音や初大師
一輪に声弾ませて探梅行
猫柳光纏はる瀬音かな
<課題詠(仏生会)入選句>
薬缶から甘茶いただく仏生会
[平成24年5月号]
大仏の胎から眺む長谷の春
佐保姫の裳裾濡らして瀬の速む
春服のこころハズます軽さかな
六地蔵首なきもある余寒かな
<課題詠(牡丹)秀逸(特選)入選句>
白牡丹衣の重ねをくづしけり
[選者講評] 掲句は白牡丹の花弁を、衣の重ねと捉えた処が眼目。白牡丹の
花の盛りは、美しい衣の重ねの貴婦人のよう。そしてその花の崩れる美しさを、
「衣の重ねをくづしけり」と言った処画、貴婦人が一枚ずつ衣を脱ぐような妖艶さ
と重なって、白牡丹の崩れる美しさをより際立たせる一句となって成功した。
[平成24年6月号]
さみどりの色も味なり嫁菜飯
轟然と岩噛んでゆく雪解水
わさび田の畝たてよこに水の音
<課題詠(簗)入選句>
簗に立ち掬ふつもりが掬はれて
[平成24年7月号]
卯の花の枝広げたる下に谷
四分音符ばらまいている蝌蚪の群れ
母の日やカレー懐かしメリケン粉
ぼうふらの耳目鋭く沈みけり
<課題詠(蝉)入選句>
七年の闇から抜けて蝉唄ふ
[平成24年8月号]
捩花を見遣る目線も螺旋かな
鴨足草白八の字の髭髭髭
遠雷や忘れたころに通り雨
蟠踞して居場所定る蟇蛙
<課題詠(盆踊)入選句>
よさこいが広場盛り上ぐ盆踊り
[平成24年9月号]
さり気なくトトロの森の落し文
尺とりや逃げるときにも尺をとり
南天の花さらさらと地に積もり
小判草飾れば福の来るごとし
<課題詠(蜻蛉)入選句>
空を飛ぶ猛虎かくやの鬼やんま
[平成24年10月号]
冷奴四角四角に崩し食む
風呼んで頭振り合ふ千日紅
まくなぎの中通り抜け大吐息
磨りガラガラスに守宮の影や厨窓
<課題詠(渡り鳥)入選句>
渡り鳥仰ぎつ野良の腰伸ばす
[平成24年11月号]
それぞれの頭巾新し地蔵盆
蜩や入相の鐘促せり
道よぎる揚羽の影や晩夏光
小鼓の乾きし響き韮の花
<課題詠(神楽)入選句>
舞殿にアンプがひとつ里神楽
♪BGM:Buch[Goldberg Variations 31aria]arranged by Kumamoto Mari♪

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