1	バンダナの若き庭師や松手入れ	松手入れ	秋	19.10.9.
2	石伝ひ木賊の先に躙り口	木賊	秋	19.10.9.
3	菊人形瓜実顔の揃ひけり	菊人形	秋	19.10.9.
4	菊人形瓜実顔の美男美女	菊人形	秋	19.10.9.
5	肌寒や睨み据えたる仁王かな	肌寒	秋	19.10.9.
6	白き息まではいかねど肌寒し	肌寒	秋	19.10.9.
7	屋根付き橋残る内子や秋うらら	秋うらら	秋	19.10.9.
8	肌寒や赤提灯が呼んでをり	肌寒	秋	19.10.9.
9	肌寒やするする過るやまかがし	肌寒	秋	19.10.9.
10	楷の葉を揺らす秋風孔子像	秋風	秋	19.10.9.
11	朝顔のフェンスを埋めて日々百花	朝顔	秋	19.10.10.
12	朝顔の日々惜し気なく咲き変る	朝顔	秋	19.10.10.
13	朝顔や虚空を掴む蔓の先	朝顔	秋	19.10.10.
14	堂前で拾ふ無患子(むくろじ)深大寺	無患子	秋	19.10.10.
15	無患子や作務衣を着たる若き僧	無患子	秋	19.10.10.
16	枯れてなほ色艶褪せぬ鷹の爪（１９．１０．１０．）	鷹の爪	秋	19.10.10.
17	朝顔の咲き継ぐ日々や野鳩鳴く（１９．１０．１０．）	朝顔	秋	19.10.10.
18	別れ蚊と思へば打たず吹き払ふ（１９．１０．１０．）	別れ蚊	秋	19.10.10.
19	獅子唐の炙りをあてに独り酒（１９．１０．１０．）	獅子唐辛子	秋	19.10.10.
20	獅子唐の激辛食みて泣き笑ひ（１９．１０．１０）	獅子唐辛子	秋	19.10.10.
21	獅子唐の激辛食みて男泣き（１９．１０．１０）	獅子唐辛子	秋	19.10.10.
22	恥じらふや根方にひそと花茗荷	茗荷の花	秋	19.10.11.
23	朝顔と蔓を競ひし藪枯らし	藪枯らし	秋	19.10.11.
24	藪枯らし親の仇のごとく抜く	藪枯らし	秋	19.10.11.
25	気が付けばあそこにここに藪枯らし	藪枯らし	秋	19.10.11.
26	藪枯らし引けばストレス減じけり	藪枯らし	秋	19.10.11.
27	下方から瀬音の響き葛の花	葛の花	秋	19.10.11.
28	重なりし葉を押し退けて葛の花	葛の花	秋	19.10.11.
29	赤き穂の燃えて群れ咲く葛の花	葛の花	秋	19.10.11.
30	切岸に頑と群れ咲く葛の花	葛の花	秋	19.10.11.
31	手放せば野生剥き出す葛の花	葛の花	秋	19.10.11.
32	秩父路や札所へ続く葛の花	葛の花	秋	19.10.11.
33	葛の花繁みの底は深き谿	葛の花	秋	19.10.11.
34	秋うらら一筋長き白眉毛	秋うらら	秋	19.10.11.
35	藪虱纏ひて走る散歩犬	藪虱	秋	19.10.11.
36	野の散歩あらまあらまと牛膝（いのこずち）	牛膝	秋	19.10.11.
37	新藁の草の香匂ふ厩舎かな	新藁	秋	19.10.11.
38	新藁の草の香すがし厩舎かな	新藁	秋	19.10.11.
39	さいかちの実のシルエットめく日暮	さいかち	秋	19.10.11.
40	さいかちの枯莢鳴らす風一陣	さいかち	秋	19.10.11.
41	さいかちの乾びし莢の鳴る日暮	さいかち	秋	19.10.11.
42	一椀の麦飯ありてとろろ汁	とろろ汁	秋	19.10.11.
43	道の駅芭蕉気取りでとろろ汁	とろろ汁	秋	19.10.11.
44	新藁のさみどり残る大わらぢ	新藁	秋	19.10.11.
45	大型に超の付きたる野分来る	野分	秋	19.10.12.
46	スーパーは買ひ溜めの列超野分	野分	秋	19.10.12.
47	超に超付きし野分に術は無し	野分	秋	19.10.12.
48	列島を痛め尽くすや超野分	野分	秋	19.10.12.
49	雨音の刻々高し野分待ち	野分	秋	19.10.12.
50	交通のほぼ止まりたる野分前	野分	秋	19.10.12.
51	茱萸含む遠き思い出昭和の子	茱萸	秋	19.10.12.
52	尾の先で池面叩くや夕とんぼ	蜻蛉	秋	19.10.12.
53	路地奥は金木犀の行き止まり	金木犀	秋	19.10.12.
54	白粉の花華やげる日暮れかな	白粉花	秋	19.10.12.
55	おしろいの花色競ふ日暮れかな	白粉花	秋	19.10.12.
56	白粉の花繚乱の日暮れかな	白粉花	秋	19.10.12.
57	石山寺素風過ぎゆく花頭窓	素風	秋	19.10.13.
58	鉢物を元に戻して野分晴	野分晴	秋	19.10.13.
59	秋の蝶ひらひら過る孔子廟	秋の蝶	秋	19.10.13.
60	一粒の稔りを約す稲の花	稲の花	秋	19.10.13.
61	一粒に一花の不思議稲の花	稲の花	秋	19.10.13.
62	大方は気付かず過る稲の花	稲の花	秋	19.10.13.
63	ひそと咲きひそと消えゆく稲の花	稲の花	秋	19.10.13.
64	控え目に重き役目の稲の花	稲の花	秋	19.10.13.
65	愛でらるることなく咲きし稲の花	稲の花	秋	19.10.13.
66	稲の花描けと言はれて描けぬ花	稲の花	秋	19.10.13.
67	稲の花咲ひて稔りの道開け	稲の花	秋	19.10.13.
68	獅子唐の激辛食みてはひふへほ	獅子唐辛子	秋	19.10.13.
69	風ひょうひょう吹きし河原の芋煮会	芋煮会	秋	19.10.13.
70	たわみつつ鞍部越え来る鶸（ひわ）の群れ	鶸	秋	19.10.13.
71	孔子廟絵馬かたかたと素風過ぐ	素風	秋	19.10.13.
72	楷の葉を濡らす秋雨孔子像	秋雨	秋	19.10.13.
73	孔子廟十日の菊を供花とせむ	十日の菊	秋	19.10.14.
74	飾られしこと絶えてなき稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
75	朝練の一団走る稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
76	米粒の数だけ咲けり稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
77	稲咲けり田を見回りの農の笑み	稲の花	秋	19.10.14.
78	神農に託す稔りや稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
79	時来たり濃尾平野は稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
80	時はかりしごとく咲きけり稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
81	農業を継がぬ子ばかり稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
82	放棄田に囲まれて咲く稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
83	廃校の尊徳像や稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
84	また一戸空家になりて稲の花	稲の花	秋	19.10.14.
85	練塀や素風背を押す昌平坂	素風	秋	19.10.14.
86	撫子やごろた敷き積む石河原	撫子	秋	19.10.15.
87	撫子や選りにもよって石河原	撫子	秋	19.10.15.
88	撫子の出自露はに石河原	撫子	秋	19.10.15.
89	撫子の咲きし河原のごろた石	撫子	秋	19.10.15.
90	石竹や紅燃ゆる恋の花	石竹	秋	19.10.15.
91	撫子の何を好んで石河原	撫子	秋	19.10.15.
92	新米の何も入らぬ塩にぎり	新米	秋	19.10.15.
93	新蕎麦を待つ間に旨し新走	新蕎麦	秋	19.10.15.
94	柚子味噌をあてにいただく蕎麦前酒	柚子味噌	秋	19.10.15.
95	木曽谷のなぞへの畑や走り蕎麦	走り蕎麦	秋	19.10.15.
96	ガラス越し店主が打ちし走り蕎麦	走り蕎麦	秋	19.10.15.
97	新蕎麦や店主現れひと講釈	新蕎麦	秋	19.10.15.
98	秋雨のニコライ堂や髭の僧	秋雨	秋	19.10.15.
99	ニコライ堂濡らす秋雨髭の僧	秋雨	秋	19.10.15.
100	秋陰のニコライ堂や髭の僧	秋陰	秋	19.10.16.
101	秋曇るニコライ堂や髭の僧	秋曇る	秋	19.10.16.
102	雲低く秋冷こころ寂しめる	秋冷	秋	19.10.16.
103	うそ寒や句会に向ふ急ぎ足	うそ寒	秋	19.10.16.
104	うそ寒やバス待つ人の長き列	うそ寒	秋	19.10.16.
105	秋曇る灯しの欲しき雲の層	秋曇る	秋	19.10.16.
106	秋曇る昏き部屋出て酒買ひに	秋曇る	秋	19.10.16.
107	秋天を埋め尽くしたる雲不動	秋天	秋	19.10.16.
108	秋冷や熱き茶を飲む午後三時	秋冷	秋	19.10.16.
109	巌門を潜る白波海桐の実	海桐の実	秋	19.10.16.
110	そぞろ寒早や懐かしき炎暑かな	そぞろ寒	秋	19.10.17.
111	そぞろ寒心儚き思ひかな	そぞろ寒	秋	19.10.17.
112	晩酌は温めと決めしそぞろ寒	そぞろ寒	秋	19.10.17.
113	ぬるめの湯肩まで浸かる夜寒かな	夜寒	秋	19.10.17.
114	秋祭支援屋台に長き列	秋祭	秋	19.10.17.
115	賽銭を投じ打つ鐘そぞろ寒	そぞろ寒	秋	19.10.17.
116	そぞろ寒コート羽織りし遍路かな	そぞろ寒	秋	19.10.17.
117	激辛のラーメン啜る夜寒かな	夜寒	秋	19.10.17.
118	赤提灯出でて夜寒の家路かな	夜寒	秋	19.10.17.
119	秋雨や休まず回る観覧車	秋雨	秋	19.10.17.
120	終バスの赤き表示となる夜寒	夜寒	秋	19.10.17.
121	秋雨にずぶ濡れてゐる六地蔵	秋雨	秋	19.10.17.
122	秋陰の空押し返すニコライ堂	秋陰	秋	19.10.18.
123	秋霖の空押し返すニコライ堂	秋霖	秋	19.10.18.
124	孔子廟絵馬をかたりと素風過ぐ	素風	秋	19.10.18.
125	孔子廟絵馬を鳴らして素風過ぐ	素風	秋	19.10.18.
126	楷の葉を濡らす秋霖孔子像	秋霖	秋	19.10.18.
127	ニコライ堂スラブ十字や秋時雨	秋時雨	秋	19.10.18.
128	秋霖や青きドームのニコライ堂	秋霖	秋	19.10.18.
129	ラグビーや秋天揺るる大歓声	秋天	秋	19.10.18.
130	秋霖や濡れて微笑む孔子像	秋霖	秋	19.10.18.
131	雨にぬれ十日の菊や孔子像	十日の菊	秋	19.10.18.
132	己が脚抜けず慌てる蓮根掘り	蓮根掘り	秋	19.10.18.
133	蓮根の一つ一つの輪に辛子	蓮根	秋	19.10.18.
134	秋曇る空押し返すニコライ堂	秋曇り	秋	19.10.19.
135	やあやあと声を掛けたる椿の実	椿の実	秋	19.10.19.
136	冬瓜の畑に転がる五つほど	冬瓜	秋	19.10.19.
137	冬瓜の不貞腐れたる畑かな	冬瓜	秋	19.10.19.
138	冬瓜の畑にごろりと不貞腐れ	冬瓜	秋	19.10.19.
139	冬瓜のごろり不貞寝の構へかな	冬瓜	秋	19.10.19.
140	山梔子の実に向ひをり無口なり	山梔子	秋	19.10.19.
141	山里の西日眩しき柿すだれ	柿簾	秋	19.10.19.
142	集落の軒いっぱいに柿すだれ	柿簾	秋	19.10.19.
143	四五個食ふ子規を思ひつ柿を食ふ	柿	秋	19.10.19.
144	白木槿一日を生き果てにけり	木槿	秋	19.10.20.
145	終日の雨に咲き継ぐ花木槿	木槿	秋	19.10.20.
146	底紅のどれも昨日の花ならず	木槿	秋	19.10.20.
147	雨降る日咲いて散りゆく花木槿	木槿	秋	19.10.20.
148	花木槿食はれる馬のをらねども	木槿	秋	19.10.20.
149	久方の川辺の道や白木槿	木槿	秋	19.10.20.
150	音高く昼の花火や白木槿	木槿	秋	19.10.20.
151	隣家から老ひし主去り白木槿	木槿	秋	19.10.20.
152	咲ひて散り咲ひて散りゆく木槿かな	木槿	秋	19.10.20.
153	小公園老人のゐて白木槿	木槿	秋	19.10.20.
154	底紅に口寄せてゐる幼児かな	底紅	秋	19.10.20.
155	乙女より儚き命花木槿	木槿	秋	19.10.20.
156	空低き川辺の道や花木槿	木槿	秋	19.10.20.
157	ようやくの日差しに眩し白木槿	木槿	秋	19.10.20.
158	己が脚抜きかねてゐる蓮根掘り	蓮根掘り	秋	19.10.20.
159	紅付けてしなを作りし七五三	七五三	冬	19.10.21.
160	振袖に紅おちょぼ口七五三	七五三	冬	19.10.21.
161	豆ラガー赤だんだらの七五三	七五三	冬	19.10.21.
162	千歳飴袋引きずり宮参り	七五三	冬	19.10.21.
163	絵馬掛けて自撮りの親子七五三	七五三	冬	19.10.21.
164	着飾って何をべそかく七五三	七五三	冬	19.10.21.
165	おちょぼ口早やしな作る七五三	七五三	冬	19.10.21.
166	貸衣装母子で借りて七五三	七五三	冬	19.10.21.
167	母も子も貸衣装なり七五三	七五三	冬	19.10.21.
168	学問の神に絵馬掛け七五三	七五三	冬	19.10.21.
169	父に抱かれ賽銭投げる七五三	七五三	冬	19.10.21.
170	着飾って回転ずしへ七五三	七五三	冬	19.10.21.
171	茹で零余子あてに今宵も独り酒	零余子	秋	19.10.22.
172	一握り加え炊きたる零余子飯	零余子	秋	19.10.22.
173	電子レンジちんして旨し塩むかご	零余子	秋	19.10.22.
174	ポケットに零余子膨らむ家路かな	零余子	秋	19.10.22.
175	零余子蔓引けばぽろぽろ手に余る	零余子	秋	19.10.22.
176	山宿の囲炉裏を囲み零余子飯	零余子飯	秋	19.10.22.
177	杣の宿丼で出る零余子飯	零余子飯	秋	19.10.22.
178	山鳩が鳴けば応へて木の実落つ	木の実落つ	秋	19.10.22.
179	木の実落ち水輪広がる鏡池	木の実落つ	秋	19.10.22.
180	トトロの森椎の実拾ふ母と子と	椎の実	秋	19.10.22.
181	山路来てつるりと赤きたまご茸	茸	秋	19.10.22.
182	団栗の敷き詰む山路栗鼠走る	団栗	秋	19.10.22.
183	己が脚抜くに苦闘の蓮根掘り	蓮根掘る	冬	19.10.22.
184	己が脚抜けず手を焼く蓮根掘り	蓮根掘る	冬	19.10.22.
185	新天皇宣明の日や秋の虹	秋の虹	秋	19.10.23.
186	ことほぎし日の堂々と秋の虹	秋の虹	秋	19.10.23.
187	ことほぎし日の雨あがり秋の虹	秋の虹	秋	19.10.23.
188	新天皇祝賀の首都や秋の虹	秋の虹	秋	19.10.23.
189	言祝ぎの皇居を飾る秋の虹	秋の虹	秋	19.10.23.
190	新天皇言祝ぐ空に秋の虹	秋の虹	秋	19.10.23.
191	土砂降りの〆は鮮やか秋の虹	秋の虹	秋	19.10.23.
192	土砂降りの〆流麗に秋の虹	秋の虹	秋	19.10.23.
193	蕎麦前に出でしこなから新走	新走	秋	19.10.23.
194	大手濠このもかのもの浮寝鳥	浮寝鳥	冬	19.10.23.
195	鷹柱つぎつぎ解け渡り行く	鷹柱	秋	19.10.23.
196	風もなくほろりほろりと散る柳	柳散る	秋	19.10.23.
197	越冬に虫忙しき花野かな	花野	秋	19.10.24.
198	花野にはブルーシートのホームレス	花野	秋	19.10.24.
199	花野にも住む人ありぬホームレス	花野	秋	19.10.24.
200	花野なか掘立小屋の世捨て人	花野	秋	19.10.24.
201	花野来てギャロップになる散歩犬	花野	秋	19.10.24.
202	わが狭庭自然まかせの花野かな	花野	秋	19.10.24.
203	花野きて雲古残せし伊昔紅	花野	秋	19.10.24.
204	自転車を倒し花野の二人かな	花野	秋	19.10.24.
205	大花野トランペットを吹く少年	花野	秋	19.10.24.
206	ゆっくりと水車の回る花野かな	花野	秋	19.10.24.
207	野仏とともに入日の大花野	花野	秋	19.10.24.
208	大花野直線に分け廃線路	花野	秋	19.10.24.
209	ニコライ堂スラブ十字に片時雨	片時雨	冬	19.10.24.
210	白髪のはずが日々うすくなる木の葉髪	木の葉髪	冬	19.10.24.
211	浅黒き研修生や大根引	大根引	冬	19.10.25.
212	黒々と穴を残して大根引	大根引	冬	19.10.25.
213	襟髪を掴むがごとく大根引く	大根引	冬	19.10.25.
214	一列に穴を残して大根引	大根引	冬	19.10.25.
215	八十路にも大根を引く力かな	大根引	冬	19.10.25.
216	大根を引き抜く後の深き穴	大根引	冬	19.10.25.
217	夕日背に長き影見つ大根引く	大根引	冬	19.10.25.
218	ぽこぽこと音のしさうな大根引	大根引	冬	19.10.25.
219	大根を洗えば白く艶めきぬ	大根	冬	19.10.25.
220	大根を洗ふ農婦の胸豊か	大根	冬	19.10.25.
221	ひょいひょいと背中をばねに大根引く	大根引	冬	19.10.25.
222	古網戸活かし切干散りばめり	切干	冬	19.10.25.
223	乾びゆく切干放つ日の匂ひ	切干	冬	19.10.25.
224	切干の乾びて放つ日の匂ひ	切干	冬	19.10.25.
225	切干のざる取り込めば日の匂ひ	切干	冬	19.10.25.
226	懸大根並ぶ軒下放ち鶏	懸大根	冬	19.10.25.
227	日の光浴びて肌焼く懸大根	懸大根	冬	19.10.25.
228	日光浴十日目となる懸大根	懸大根	冬	19.10.25.
229	縁先に切干の笊古民家園	切干	冬	19.10.25.
230	荒筵切干放つ日の匂ひ	切干	冬	19.10.25.
231	農業を継ぐ子はをらず大根引く	大根引	冬	19.10.26.
232	大根引くヌードめきしも引きにけり	大根引	冬	19.10.26.
233	大根引くいやんと言ふも引きにけり	大根引	冬	19.10.26.
234	懸大根ラインダンスのごと連ね	懸大根	冬	19.10.26.
235	二股の大根少し生々し	大根	冬	19.10.26.
236	大根の肌艶やかに積まれけり	大根	冬	19.10.26.
237	屋根付きの橋いっぱいに懸大根	懸大根	冬	19.10.26.
238	風抜ける屋根付き橋の懸大根	懸大根	冬	19.10.26.
239	干大根屋根付き橋を抜ける風	干大根	冬	19.10.26.
240	二股の大根洗へば悶へけり	大根	冬	19.10.26.
241	二股の大根洗へり悶へけり	大根	冬	19.10.26.
242	二股の大根洗ふ悶へをり	大根	冬	19.10.26.
243	二股の大根を引き頬弛む	大根	冬	19.10.26.
244	二股の大根洗ふ恥じらひぬ	大根	冬	19.10.26.
245	切干や日を追ひ縮む吾もまた	切干	冬	19.10.26.
246	切干を皴の手で干す里の母	切干	冬	19.10.26.
247	頭掻き尻掻く猿やそぞろ寒	そぞろ寒	秋	19.10.26.
248	夭折の弟遠き秋彼岸	大根引	秋	19.10.26.
249	夕日背に己が影見つ大根引く	大根引	冬	19.10.26.
250	牡丹餅の御萩に変る秋彼岸	大根引	秋	19.10.26.
251	丹田に力を入れし初時雨	初時雨	冬	19.10.27.
252	仲見世は傘で埋まりし初時雨	初時雨	冬	19.10.27.
253	コンビニの深夜の客や初しぐれ	初時雨	冬	19.10.27.
254	初しぐれ赤提灯のはしご酒	初時雨	冬	19.10.27.
255	初しぐれ雷門の大提灯	初時雨	冬	19.10.27.
256	初しぐれ大川端に芭蕉像	初時雨	冬	19.10.27.
257	初しぐれ松の廊下の碑を濡らす	初時雨	冬	19.10.27.
258	初しぐれ窓に雫のワインバー	初時雨	冬	19.10.27.
259	猿山に猿の影なし初時雨	初時雨	冬	19.10.27.
260	一葉の井戸を濡らして初しぐれ	初時雨	冬	19.10.27.
261	立ち食ひの蕎麦混み合ひぬ初時雨	初時雨	冬	19.10.27.
262	迸る名残の井戸や一葉忌	一葉忌	冬	19.10.27.
263	真新し五千円札一葉忌	一葉忌	冬	19.10.27.
264	菊坂は緩き坂なり一葉忌	一葉忌	冬	19.10.27.
265	竜泉もけふは雨なり一葉忌	一葉忌	冬	19.10.27.
266	着付師のてきぱき指図一葉忌	一葉忌	冬	19.10.27.
267	菊坂に明治を探す一葉忌	一葉忌	冬	19.10.27.
268	夏ちゃんと子供呼ぶ声一葉忌	一葉忌	冬	19.10.27.
269	一葉の井戸水温し冬隣	冬隣	秋	19.10.28.
270	水鳥の水脈幾筋も冬近し	冬近し	秋	19.10.28.
271	エアコンが暖房になる冬隣	冬隣	秋	19.10.28.
272	赤提灯寄れと揺れけり冬近し	冬近し	秋	19.10.28.
273	冠雪の遠見の富士や冬隣	冬隣	秋	19.10.28.
274	登校の子らの長袖冬近し	冬近し	秋	19.10.28.
275	たこ焼きの錐の手捌き冬隣	冬隣	秋	19.10.28.
276	集落の空家また増え冬近し	冬近し	秋	19.10.28.
277	隣家では屋根の葺き替え冬近し	冬近し	秋	19.10.28.
278	ベランダの鉢を置換え冬を待つ	冬待つ	秋	19.10.28.
279	立ち食いの蕎麦の湯けむり冬隣	冬隣	秋	19.10.28.
280	街中で素材集めし鴉の巣	鴉の巣	春	19.10.28.
281	着水の初鴨どれも水脈引けり	初鴨	秋	19.10.29.
282	旅終えし初鴨の引く長き水脈	初鴨	秋	19.10.29.
283	初鴨や安堵の水脈の幾筋も	初鴨	秋	19.10.29.
284	初鴨の心地よげなる水脈の数	初鴨	秋	19.10.29.
285	初鴨や湖面静かに水脈描く	初鴨	秋	19.10.29.
286	初鴨の着水続く朝まだき	初鴨	秋	19.10.29.
2887	鳥渡る津軽海峡波立ちぬ	鳥渡る	秋	19.10.29.
288	水害の町村過る渡り鳥	渡り鳥	秋	19.10.29.
289	過疎の里寂しき空を鳥渡る	鳥渡る	秋	19.10.29.
290	鞍部越え高度を下げる渡り鳥	渡り鳥	秋	19.10.29.
291	大空に道あるごとく鳥渡る	鳥渡る	秋	19.10.29.
292	一本の道あるごとく鳥渡る	鳥渡る	秋	19.10.29.
293	鷹の爪炙り眼に沁む辛さかな	鷹の爪	秋	19.10.29.
294	鷹の爪炙り辛さが眼に沁みる	鷹の爪	秋	19.10.29.
295	冷まじや一山背負ふ磨崖仏	冷まじ	秋	19.10.29.
296	鷹の爪光彩放つネックレス	鷹の爪	秋	19.10.29.
297	柘榴割りかぶりつきたる昭和の子	柘榴	秋	19.10.29.
298	心臓の無くて恋する海鼠かな	海鼠	冬	19.10.29.
299	風神の何弔ふや虎落笛	虎落笛	冬	19.10.29.
300	菊坂はゆるき坂なり初しぐれ	初時雨	冬	19.10.29.
301	らーめん店傘さす列や初しぐれ	初時雨	冬	19.10.29.
302	建前の柱を濡らす時雨かな	時雨	冬	19.10.29.
303	泣き女すすり泣くかに虎落笛	虎落笛	冬	19.10.29.
304	北の宿心寂しむ虎落笛	虎落笛	冬	19.10.29.
305	虎落笛吹きしは風の寒太郎	虎落笛	冬	19.10.29.
306	咽ぶかに途切れては鳴る虎落笛	虎落笛	冬	19.10.29.
307	ブルーシート被せし屋根や初時雨	初時雨	冬	19.10.30.
308	色鳥や永き眠りの人送る	色鳥	秋	19.10.30.
309	鞍部越え大きく撓む鶸の帯	鶸	秋	19.10.30.
310	裂け口の朱の生々し海桐の実	海桐の実	秋	19.10.30.
311	大空へ伸びるなぞへの青蜜柑	青蜜柑	秋	19.10.30.
312	嬉々として木の実拾ひし子らの声	木の実	秋	19.10.30.
313	冬瓜のころがる畑の荒々し	冬瓜	秋	19.10.30.
314	冬瓜のころがる畑のすさみけり	冬瓜	秋	19.10.30.
315	郁子なるかな貴人のたまふ実の甘し	郁子	秋	19.10.30.
316	ひょうとでも鳴れば拍手の瓢の笛	瓢の笛	秋	19.10.30.
317	瓢の笛鳴らして見せる取り柄かな	瓢の笛	秋	19.10.30.
318	新松子仰ぐ女の胸豊か	新松子	秋	19.10.30.
319	艶やかな粒を揃へて式部の実	式部の実	秋	19.10.30.
320	青空の青にまぎれし臭木の実	臭木の実	秋	19.10.30.
321	青空の青に染まるや臭木の実	臭木の実	秋	19.10.30.
322	青空の色に染まりし臭木の実	臭木	秋	19.10.31.
323	自転車の歩道行き交ふ秋の雨	秋雨	秋	19.10.31.
324	鐘打たぬお寺の増えて秋の暮	秋の暮	秋	19.10.31.
325	鵯来ればそっと散り行く小鳥かな	鵯	秋	19.10.31.
326	後に来て独り占めする鵯の影	鵯	秋	19.10.31.
327	椋鳥の一樹に溢る日暮れかな	椋鳥	秋	19.10.31.
328	小雀来て狭庭賑やか朝まだき	小雀（こがら）	秋	19.10.31.
329	踏み場なく花梨転がる農の庭	花梨	秋	19.10.31.
330	日の温み残る無花果食みにけり	無花果	秋	19.10.31.
331	蔓付きでおばばのくれし通草食む	通草（あけび）	秋	19.10.31.
332	山路きて分け合ひ食めり山葡萄	山葡萄	秋	19.10.31.
333	さいかちのシルエットめく莢鳴りぬ	さいかち	秋	19.10.31.
334	爛漫の花のフレーム蜂の箱	フレーム	冬	19.10.31.
335	フレームに養蜂箱も置かれをり	フレーム	冬	19.10.31.
336	参詣の人の絶えない神の留守	神の留守	冬	19.10.31.
337	出雲そば五杯啜りし神の留守	神の留守	冬	19.10.31.
338	おみくじの凶は少なめ神の留守	神の留守	冬	19.10.31.
339	巫女たちの仕事は減らぬ神の留守	神の留守	冬	19.10.31.
340	権禰宜は予備校講師神の留守	神の留守	冬	19.10.31.
341	神鶏の遊び呆ける神の留守	神の留守	冬	19.10.31.
342	権禰宜は元漕艇部神の留守	神の留守	冬	19.10.31.
343	権禰宜はいつも早食ひ神の留守	神の留守	冬	19.10.31.
344	ひそと咲き人の足止む冬桜	冬桜	冬	19.10.31.
345	花の数まばらが淋し冬ざくら	冬桜	冬	19.10.31.
346	人影の無き公園の冬桜	冬桜	冬	19.10.31.
347	川辺道咲ひて気の付く冬ざくら	冬桜	冬	19.10.31.
348	八百万神で溢るる出雲かな	神在	冬	19.10.31.
349	冬立ちて白衣纏ひし遠見富士	立冬	冬	19.11.1.
350	吐く息の白き朝なり冬に入る	冬に入る	冬	19.11.1.
351	肩こりに大き膏薬冬に入る	冬に入る	冬	19.11.1.
352	膏薬の冷気走るや冬立つ日	立冬	冬	19.11.1.
353	道連れは頭痛肩こり一葉忌	一葉忌	冬	19.11.1.
354	裏路地の咽ぶ街灯冬に入る	冬に入る	冬	19.11.1.
355	青空に刻む稜線今朝の冬	今朝の冬	冬	19.11.1.
256	小春日や矢切を渡る手漕ぎ舟	小春日	冬	19.11.1.
357	咲き継いで来し朝顔の冬に入る	冬に入る	冬	19.11.1.
358	小春日や老婆二人の長話	小春日	冬	19.11.1.
359	小春日や飛越鮮やか女性騎手	小春日	冬	19.11.1.
360	青空に染まり鈴成る臭木の実	臭木の実	秋	19.11.1.
361	襟首を掴むがごとく大根引く	大根引く	冬	19.11.1.
362	そそと咲きそそと散りゆく冬桜	冬桜	冬	19.11.1.
363	侘び寂びて並木作らぬ冬桜	冬桜	冬	19.11.1.
364	ひょうひょうと風吹く岬冬桜	冬桜	冬	19.11.1.
365	野仏を話し相手に冬ざくら	冬桜	冬	19.11.1.
366	早仕舞いしたる売店冬ざくら	冬桜	冬	19.11.1.
367	冬ざくら咲ひて侘しき小公園	冬桜	冬	19.11.1.
368	初咲きの声もかからず冬桜	冬桜	冬	19.11.1.
369	百花園目当ては冬の桜かな	冬桜	冬	19.11.2.
370	わが余命数へて寂し冬ざくら	冬桜	冬	19.11.2.
371	あらと指さして立ち去る冬桜	冬桜	冬	19.11.2.
372	言ふなれば返り花めく冬桜	冬桜	冬	19.11.2.
373	墨堤を少し外れて冬ざくら	冬桜	冬	19.11.2.
374	季を違えいとしめやかに冬桜	冬桜	冬	19.11.2.
375	トランペット吹く少年や冬桜	冬桜	冬	19.11.2.
376	自死をする獣はをらず冬ざくら	冬桜	冬	19.11.2.
377	重なり合ふほどの花なき冬桜	冬桜	冬	19.11.2.
378	曇天にことさら淋し冬桜	冬桜	冬	19.11.2.
379	花園も並木も持たぬ冬桜	冬桜	冬	19.11.2.
380	なんとなく返り花めく冬桜	冬桜	冬	19.11.2.
381	星数の数へ尽くせぬ冬銀河	冬銀河	冬	19.11.2.
382	ベランダに立ちて吐息の冬銀河	冬銀河	冬	19.11.2.
383	冬銀河見上げて深き吐息かな	冬銀河	冬	19.11.2.
384	ラストシーン銀杏黄葉の並木道	銀杏黄葉	秋	19.11.2.
385	陵へ銀杏黄葉の並木道	銀杏黄葉	秋	19.11.2.
386	降り注ぐ銀杏黄葉のダナエかな	銀杏黄葉	秋	19.11.2.
387	銀杏黄葉神と交わるダナエかな	銀杏黄葉	秋	19.11.2.
388	小春日や矢切の渡し手漕ぎ舟	小春日	冬	19.11.2.
389	冬ざくら咲ひて独りの小公園	冬桜	冬	19.11.2.
390	アスファルト舗装の隙間野路すみれ	菫	春	19.11.3.
391	舗装路の隙間肩寄せ菫咲く	菫	春	19.11.3.
392	今年また同じ道端に犬ふぐり	菫	春	19.11.3.
393	捨て鉢に立坪菫咲き揃ふ	菫	春	19.11.3.
394	捨て鉢に菫たくまし勝手咲き	菫	春	19.11.3.
395	楚々と咲く菫の芯の強さかな	菫	春	19.11.3.
396	踏まれても息吹き返す野のすみれ	菫	春	19.11.3.
397	花びらを風のくすぐる野路すみれ	菫	春	19.11.3.
398	反骨を秘めて道端の群れ菫	菫	春	19.11.3.
399	母と子のしゃがんで撫でる菫かな	菫	春	19.11.3.
400	漱石のこよなく愛す菫草	菫	春	19.11.3.
401	草野球外野のあたり菫草	菫	春	19.11.3.
402	捨て鉢に神の手すさび野の菫	菫	春	19.11.3.
403	踏まれてもなほ踏まれても咲く菫	菫	春	19.11.3.
404	楚々として逞しきかな菫咲く	菫	春	19.11.3.
405	神の留守出雲を向ひて拝みけり	神の留守	冬	19.11.4.
406	倹約の青春切符神の旅	神の旅	冬	19.11.4.
407	キャリーバッグがらがらと引き神の旅	神の旅	冬	19.11.4.
408	本局へ出かけ投函神の留守	神の留守	冬	19.11.4.
409	山里は鍵を掛けずに神の留守	神の留守	冬	19.11.4.
410	フレームで蝶を育てる農ジュニア	フレーム	冬	19.11.4.
411	日曜画家とんと見かけず秋うらら	秋うらら	秋	19.11.4.
412	蒼天に日を照り返す柿眩し	柿	秋	19.11.4.
413	千成の柿てんでんに日を返す	柿	秋	19.11.4.
414	千成柿採る人もなし里暮るる	柿	秋	19.11.4.
415	山里や千成柿を暮れ残す	柿	秋	19.11.4.
416	山里や千成柿の暮れ残る	柿	秋	19.11.4.
417	冷まじや山を背負ひし磨崖仏	冷まじ	秋	19.11.4.
418	脚を抜きまた脚を抜き蓮根掘り	蓮根掘り	冬	19.11.4.
419	小春日や矢切の渡し漕が撓る	小春日	冬	19.11.4.
420	泣きべそをかきつ引きずる千歳飴	千歳飴	冬	19.11.4.
421	出雲から電報で指示神の留守	神の留守	冬	19.11.4.
422	出雲からスマホのメール神の留守	神の留守	冬	19.11.4.
423	侘び寂びて並木を持たぬ冬桜	冬桜	冬	19.11.5.
424	有田の皿二枚もとめて神の留守	神の留守	冬	19.11.5.
425	留守番を恵比寿に託し神の旅	神の旅	冬	19.11.5.
426	旅立ちし神の留守番弁財天	神の旅	冬	19.11.5.
427	弁天と恵比寿が守る神の留守	神の留守	冬	19.11.5.
428	たこ焼きの熱々食みぬ神の留守	神の留守	冬	19.11.5.
429	たこ焼きの錐先踊る神の留守	神の留守	冬	19.11.5.
430	レジ袋風が舞ひ上ぐ神の留守	神の留守	冬	19.11.5.
431	ベンダーのモーター唸る神の留守	神の留守	冬	19.11.5.
432	恵比寿神釣りを休んで神の留守	神の留守	冬	19.11.5.
433	弁財天琵琶をつま弾く神の留守	神の留守	冬	19.11.5.
434	神の留守預かる恵比寿独り酒	神の留守	冬	19.11.5.
435	神の留守鍵を預かる恵比寿神	神の留守	冬	19.11.5.
436	遅れしも十日の菊のなほ盛ん	十日の菊	秋	19.11.5.
437	神渡し欠航のなき出雲便	神渡し	冬	19.11.5.
438	神の旅欠航のなき出雲便	神の旅	冬	19.11.5.
439	脚抜くに時間のかかる蓮根掘り	蓮根掘り	冬	19.11.5.
440	脚抜くにひと手間掛かる蓮根掘り	蓮根掘り	冬	19.11.5.
441	己が脚抜くもひと手間蓮根掘り	蓮根掘り	冬	19.11.5.
442	将棋指す恵比寿弁天神の留守	神の留守	冬	19.11.6.
443	練塀の続く聖堂嵐雪忌	嵐雪忌	冬	19.11.6.
444	日溜りに甲羅干す亀桂郎忌	桂郎忌	冬	19.11.6.
445	子亀背に甲羅干す亀桂郎忌	桂郎忌	冬	19.11.6.
446	神様の留守も忙し社務所かな	神の留守	冬	19.11.6.
447	朝採りの足裏で歌ふ霜柱	霜柱	冬	19.11.6.
448	朝採りの足裏で奏ず霜柱	霜柱	冬	19.11.6.
449	霜柱溶けぬ間にする畑仕事	霜柱	冬	19.11.6.
450	霜柱踏み競ひ行く登校児	霜柱	冬	19.11.6.
451	腹黒き奴が踏み行く霜柱	霜柱	冬	19.11.6.
452	朝採りの作業急き立つ霜柱	霜柱	冬	19.11.6.
453	綿虫の綿に触るれば飛べずなり	綿虫	冬	19.11.6.
454	薄幸を愛でるがごとき冬桜	冬桜	冬	19.11.6.
455	儚さを見せて日暮れの冬桜	冬桜	冬	19.11.6.
456	儚きを儚きとする冬桜	冬桜	冬	19.11.6.
457	墨堤の陰に隠れて冬桜	冬桜	冬	19.11.6.
458	人が背を丸める日暮れ雪蛍	雪蛍	冬	19.11.6.
459	反骨の花とも言へず冬桜	冬桜	冬	19.11.6.
460	尾根道に何の気まぐれ冬桜	冬桜	冬	19.11.6.
461	冬ざくら脇に小さな遭難碑	冬桜	冬	19.11.6.
462	鯛焼は海知らぬまま食はれけり	鯛焼	冬	19.11.7.
463	老人が鯛焼を食ふ小講演	鯛焼	冬	19.11.7.
464	鯛焼を尻尾から食む老二人	鯛焼	冬	19.11.7.
465	英字紙を読むバンダナの焼藷屋	焼藷屋	冬	19.11.7.
466	髭黒々アルカイダめく焼藷屋	焼藷屋	冬	19.11.7.
467	草野球客待ってゐる焼藷屋	焼藷屋	冬	19.11.7.
468	差入れの焼藷を食ふ草野球	焼藷屋	冬	19.11.7.
469	鬼コーチ焼藷配る仏顔	焼藷	冬	19.11.7.
470	復興の支援の屋台夜鳴そば	夜鳴蕎麦	冬	19.11.7.
471	舌焼ひて母懐かしき根深汁	根深汁	冬	19.11.7.
472	変哲もなくてしみじみ根深汁	根深汁	冬	19.11.7.
473	旧年のさっと去り行く除夜の鐘	除夜の鐘	冬	19.11.7.
474	旧年をつと切り離す除夜の鐘	除夜の鐘	冬	19.11.7.
475	一打して新旧分かつ除夜の鐘	除夜の鐘	冬	19.11.7.
476	除夜の鐘一打に並ぶ百八人	除夜の鐘	冬	19.11.7.
477	除夜の鐘聞きつ鎮守に初詣	除夜の鐘・初詣	新年	19.11.7.
478	電線に横一列の寒雀	寒雀	冬	19.11.7.
479	羽交（はがい）に嘴埋めて夢路の浮寝鳥	浮寝鶏	冬	19.11.7.
480	声荒げ羽打ち合へる大白鳥	白鳥	冬	19.11.7.
481	諍へる大白鳥の荒々し	白鳥	冬	19.11.7.
482	何もかも食み尽くさるる海鼠かな	海鼠	冬	19.11.7.
483	綿虫や日暮れ儚くして飛べり	綿虫	冬	19.11.7.
484	綿虫や速き日暮れに無頓着	綿虫	冬	19.11.7.
485	空耳か冬のちちろの忍び泣く	冬	冬	19.11.7.
486	返り花かも知れず冬桜	冬桜	冬	19.11.7.
487	せっかちに咲ひて居直る寒椿	寒椿	冬	19.11.7.
488	雪の朝ひと際目立つ寒椿	寒椿	冬	19.11.7.
489	山茶花の咲ひては散りて花座布団	山茶花	冬	19.11.7.
490	本丸跡開けし辺り蕗の薹	蕗の薹	春	19.11.7.
491	絵踏せず死を受け入れし村史読む	絵踏	春	19.11.8.
492	礒菜摘む手を止め腰のスマホ取る	礒菜摘む	春	19.11.8.
493	女らの掻き採る手際礒菜摘み	礒菜摘む	春	19.11.8.
494	女らの手際素早き礒菜摘み	礒菜摘む	春	19.11.8.
495	春耕のエンジン音の響き合ふ	春耕	春	19.11.8.
496	屋根替の職人傾斜立ち歩く	屋根替	春	19.11.8.
497	古民家で菜飯一膳いただけり	菜飯	春	19.11.8.
498	おふくろの味の菜飯や道の駅	菜飯	春	19.11.8.
499	桜餅一つは葉ごとむしゃむしゃと	桜餅	春	19.11.8.
500	桜餅一つは葉ごといただけり	桜餅	春	19.11.8.
501	宿坊や緑鮮やか菜飯膳	菜飯	春	19.11.8.
502	女郎花近くて遠き男郎花	女郎花・男郎花	春	19.11.8.
503	女郎花指呼の近きに男郎花	女郎花・男郎花	春	19.11.8.
504	男郎花相近寄らぬ女郎花	女郎花・男郎花	春	19.11.8.
505	吾亦紅目立たぬくせに目立つ花	吾亦紅	春	19.11.8.
506	山路来て日当る窪の濃竜胆	竜胆	春	19.11.8.
507	蝋梅に鼻寄せてゐる二人かな	蝋梅	冬	19.11.9.
508	山路来て休憩となる帰り花	帰り花	冬	19.11.9.
509	日当りの窪に寄り添ふ帰り花	帰り花	冬	19.11.9.
510	蜜吸ひの虫を呼び寄せ返り花	返り花	冬	19.11.9.
511	返り花小さき虫呼び日の温し	返り花	冬	19.11.9.
512	白銀の遠見の富士や帰り花	帰り花	冬	19.11.9.
513	神職の筆鮮やかに立春大吉	立春大吉	春	19.11.9.
514	高僧の太き筆なり立春大吉	立春大吉	春	19.11.9.
515	人影に鯉の大口春立ちぬ	立春	春	19.11.9.
516	餌をねだる鯉の大口春立ちぬ	立春	春	19.11.9.
517	三頭身骨太に咲く濃竜胆	竜胆	春	19.11.9.
518	日溜りを選んで咲けり濃りんどう	竜胆	春	19.11.9.
519	竜胆を見落とし過る登山靴	竜胆	春	19.11.9.
520	ハンググライダーふわりと離陸濃りんどう	竜胆	春	19.11.9.
521	日溜りや風遣り過す濃りんどう	竜胆	春	19.11.9.
522	竜胆に般若心経読み聞かす	竜胆	春	19.11.9.
523	海風の強きに遊ぶ野水仙	水仙	冬	19.11.9.
524	海風に音立て揺るる野水仙	水仙	冬	19.11.9.
525	海風の音猛々し野水仙	水仙	冬	19.11.9.
526	海鳴りに葉を打ち叩く野水仙	水仙	冬	19.11.9.
527	雄たけびを上ぐる海鳴り野水仙	水仙	冬	19.11.9.
528	大揺れに揺るる終日野水仙	水仙	冬	19.11.9.
529	海風の吹けばのりのり野水仙	水仙	冬	19.11.9.
530	動かざる灯台囃す野水仙	水仙	冬	19.11.9.
531	海風に心気易き野水仙	水仙	冬	19.11.9.
532	蔓橋風と遊ぶや野水仙	水仙	冬	19.11.9.
533	一病は保護観察中年新た	年新た	新年	19.11.10.
534	十七音ひねる生き甲斐年新た	年新た	新年	19.11.10.
535	日常とさして変わらぬ三が日	三が日	新年	19.11.10.
536	切れ目なく流るる川や去年今年	去年今年	新年	19.11.10.
537	昨日今日積み重ねたる去年今年	去年今年	新年	19.11.10.
538	孫鉄は青春切符旅初め	旅初め	新年	19.11.10.
539	老妻と誤嚥恐れつ雑煮食む	雑煮	新年	19.11.10.
540	雑煮の椀誤嚥怖れて咽びけり	雑煮	新年	19.11.10.
541	誤嚥怖れ雑煮を食めば咽びたり	雑煮	新年	19.11.10.
542	罅割れぬハードカバーの鏡餅	鏡餅	新年	19.11.10.
543	四股踏めどびくともせざる鏡餅	鏡餅	新年	19.11.10.
544	失敗の芸で笑はす猿廻し	猿廻し	新年	19.11.10.
545	失敗をして笑はせる猿廻し	猿廻し	新年	19.11.10.
546	失敗もとぼけも芸の猿廻し	猿廻し	新年	19.11.10.
547	年一度顔出す不思議紅ちょろぎ	ちょろぎ	新年	19.11.10.
548	歯ぎしりを一度聞きたしごまめ食む	ごまめ	新年	19.11.10.
549	雀の子一期一会で巣立ちけり	雀の子	新年	19.11.10.
550	巣立鳥生き抜ひてこそ明日あり	巣立鳥	新年	19.11.10.
551	満作に己が異形の自覚なし	満作	新年	19.11.10.
552	集落に入る坂道榛の花	榛の花	新年	19.11.10.
553	吟行の連れのたまはく榛の花	榛の花	新年	19.11.10.
554	長短で雌雄を分ける樺の花	榛の花	新年	19.11.10.
555	緩やかな風に降り継ぐ柳絮かな	柳絮	新年	19.11.10.
556	風やんでなほも降り継ぐ柳絮かな	柳絮	新年	19.11.10.
557	地上をばパステルカラーチュウーリップ	チューリッピ	新年	19.11.10.
558	下町の軒に並びし君子蘭	君子蘭	新年	19.11.10.
559	花韮や憎まれて咲くパレスチナ	花韮	春	19.11.10.
560	わが狭庭知的を誇る諸葛菜	諸葛菜	春	19.11.10.
561	手重なり恋の芽生へるかるた会	歌留多会	新年	19.11.10.
562	除夜の鐘一打で決まる去年今年	去年今年	新年	19.11.10.
563	雉鳩の連れ呼ぶ声や初しぐれ	初時雨	冬	19.11.10.
564	交尾中連れむしゃむしゃと女蟷螂	蟷螂	秋	19.11.10.
565	除夜の鐘一打で分かつ去年今年	去年今年	新年	19.11.10.
566	昨日今日積み重ね来て去年今年	去年今年	新年	19.11.10.
567	日当りの窪に寄り添ふ濃竜胆	竜胆	春	19.11.10.
568	兜太書く一気の筆や立春大吉	立春大吉	春	19.11.10.
569	柏手を打てば龍鳴く淑気かな	淑気	新年	19.11.10.
570	大成殿孔子の座像淑気満つ	淑気	新年	19.11.11.
571	神職の砂利踏む木沓淑気満つ	淑気	新年	19.11.11.
572	神鶏の人と距離置く淑気かな	淑気	新年	19.11.11.
573	冷蔵庫輪飾り貼りし淑気かな	淑気	新年	19.11.11.
574	白銀の遠富士染むる初茜	初茜	新年	19.11.11.
575	神鶏の鬨の声上ぐ淑気かな	淑気	新年	19.11.11.
576	山里に春耕告げるエンジン音	春耕	春	19.11.11.
577	トラクター音軽やかに田を返す	田を返す	春	19.11.11.
578	春耕のトラクター繰る研修生	春耕	春	19.11.11.
579	人海で田を起しゆく千枚田	田起し	春	19.11.11.
580	一段ごと田を起しゆく千枚田	田起し	春	19.11.11.
581	田打ち終え農道列なすトラクター	田打ち	春	19.11.11.
582	壺焼の滾りて流る醤油の香	壺焼	春	19.11.12.
583	壺焼と言ふ残酷をいただけり	壺焼	春	19.11.12.
584	壺焼の野趣にぎやかに九十九里	壺焼	春	19.11.12.
585	誉めたればどっと届きし柿日和	柿	秋	19.11.12.
586	雲一片なき蒼天や柿日和	柿	秋	19.11.12.
587	蒼天の深き恐ろし柿日和	柿	秋	19.11.12.
588	凍蝶の息吹き返す小春かな	凍蝶・小春	冬	19.11.12.
589	うつらうつら頭を垂るる柿日和	柿	冬	19.11.12.
590	柊の花こぼるれば香もこぼれ	柊の花	冬	19.11.12.
591	穭田の薄き緑やへんろ道	穭田	秋	19.11.12.
592	小春日や茶飲話の友来る	小春日	冬	19.11.13.
593	穭田に草食む山羊の母と子と	穭田	秋	19.11.13.
594	穭田の緑やさしき札所道	穭田	秋	19.11.13.
595	穭田に濃淡ありし伊予路かな	穭田	秋	19.11.13.
596	屋根を越す千成柿の日に眩し	柿	秋	19.11.13.
597	整然と筋目残せし穭かな	穭田	秋	19.11.13.
598	夕風のそっと撫でゆく穭かな	穭	秋	19.11.13.
599	松山城マドンナとゐて冬うらら	冬うらら	冬	19.11.13.
600	伊予弁の田舎のカフエ柿日和	柿	秋	19.11.13.
601	太山寺遍路肩寄せ日向ぼこ	日向ぼこ	冬	19.11.13.
602	いけめんの空海像や冬うらら	冬うらら	冬	19.11.14.
603	電線に鴉百羽や憂国忌	憂国忌	冬	19.11.14.
604	切字とは切痔にあらず波郷の忌	波郷忌	冬	19.11.14.
605	夕暮れを儚くさせて雪蛍	雪蛍	冬	19.11.14.
606	農小屋を閉めれば過る雪蛍	雪蛍	冬	19.11.14.
607	袖に触れ儚くなりし雪蛍	雪蛍	冬	19.11.14.
608	綿虫の行方は問はず見送れり	綿虫	冬	19.11.14.
609	噴流で泥底穿つ蓮根掘り	蓮根掘	冬	19.11.14.
610	泥中にありてｗ清らの蓮根掘る	蓮根掘	冬	19.11.14.
611	日暮れ来てしみじみ寂し蓮根掘り	蓮根掘	冬	19.11.14.
612	山里や千成柿の暮れ残る	柿	冬	19.11.15.
613	蒼天の松山城や柿日和	柿	冬	19.11.15.
614	坊ちゃんも見上げし城や薄紅葉	薄紅葉	秋	19.11.15.
615	フレーム(温室）の中を蝶舞ひ蜂が飛ぶ	フレーム蝶蜂	冬春春	19.11.15.
616	フレームや百花と遊ぶ蝶と蜂	フレーム蝶蜂	冬春春	19.11.15.
617	フレームの中は常春蝶舞へり	フレーム蝶	冬春	19.11.15.
618	甲羅干す神池の亀年新た	年新た	新年	19.11.15.
619	変哲もなき元日に身を置けり	元日	新年	19.11.15.
620	床暖房ほのぼの温き大旦（おおあした）	大旦(元日）	新年	19.11.15.
621	街灯の明かり残して初茜	初茜	新年	19.11.15.
622	狭庭へと一筋走る初明り	初明り	新年	19.11.15.
623	豆腐屋のふと見上げたる初茜	初茜	新年	19.11.16.
624	上水の右岸明るき初御空	初御空	新年	19.11.16.
625	上水に暗きを残し初茜	初茜	新年	19.11.16.
626	武甲山削がれてもなほ淑気かな	淑気	新年	19.11.16.
627	年ごとに増ゆる年賀のＥメール	年賀	新年	19.11.16.
628	ただ風の吹ひてゐるだけ早春賦	早春	新年	19.11.16.
629	猿廻し猿にも生きる打算あり	猿廻し	新年	19.11.16.
630	七福神詣での止め桜餅	七福神詣で・桜餅	新年・春	19.11.16.
631	七福を詣でし証し桜餅	七福神詣で・桜餅	新年・春	19.11.16.
632	福詣で終え墨堤の桜餅	七福神詣で・桜餅	新年・春	19.11.16.
633	鷽替へて美しき嘘つきにけり	鷽替え	新年	19.11.16.
634	墨堤で上戸も摘まむ桜餅	桜餅	春	19.11.16.
635	レガッタや岸辺にぎやか早慶戦	レガッタ	春	19.11.16.
636	雑煮餅恐るおそるに食む八十路	雑煮	新年	19.11.16.
637	「サクラサク」ラインで告げる受験生	受験生	春	19.11.16.
638	「サクラサク」ラインで告げる合格子	合格	春	19.11.16.
639	立春大吉いなせに鳶の木遣歌	立春大吉	春	19.11.16.
640	女らは手際素早く礒菜摘む	礒菜摘む	春	19.11.17
641	反抗の芸で笑はす猿廻し	猿廻し	新年	19.11.17
642	碧眼に半纏の美女植木市	植木市	春	19.11.17
643	白鷺ののそりのそりと春の川	春	春	19.11.17
644	しぐるるや蒟蒻ゆかり太山寺	時雨	冬	19.11.17
645	鳥影の枝を走りし嵐雪忌	嵐雪忌	冬	19.11.17
646	枯菊の括られしまま刈られけり	枯菊	冬	19.11.17
647	亀鳴くと句帳に一句書つけり	亀鳴く	春	19.11.17
648	ジーンズにナイキシューズの遍路かな	遍路	春	19.11.17
649	先達の減りて遍路の曲がり角	遍路	春	19.11.17
650	粛々と弦引き絞る弓始	弓始	新年	19.11.17
651	粛々と神事に似たる弓始	弓始	新年	19.11.17
652	横一列てんでに放つ弓始	弓始	新年	19.11.17
653	粛として弦音ひそと弓始	弓始	新年	19.11.17
654	絶壁の中腹に咲く石蕗凛々し	石蕗の花	冬	19.11.17
655	洞門に轟く浪や石蕗の花	石蕗の花	冬	19.11.17
656	振り返る寅さん像や春疾風	春疾風	春	19.11.17
657	雲丹割きてしばし蠢く針哀れ	雲丹	春	19.11.17
658	地に降りて親の後追ふ雀の子	雀の子	春	19.11.17
659	過疎の里一戸預かる巣の燕	巣燕	春	19.11.17
660	寒椿庭の蛇口の上に咲く	寒椿	冬	19.11.18.
661	変哲も無き庭隅に寒椿	寒椿	冬	19.11.18.
662	実と並び早や紅の寒椿	寒椿	冬	19.11.18.
663	池の面に三つ浮かびし寒椿	寒椿	冬	19.11.18.
664	廃校舎尊徳像に寒椿	寒椿	冬	19.11.18.
665	寒椿百のポーズの百羅漢	寒椿	冬	19.11.18.
666	門跡寺なぞへに赤き寒椿	寒椿	冬	19.11.18.
667	近寄りて確かめ直す枇杷の花	枇杷の花	冬	19.11.18.
668	群がりて甘き香放つ枇杷の花	枇杷の花	冬	19.11.18.
669	石彫を辿るなぞへに枇杷の花	枇杷の花	冬	19.11.18.
670	風呂吹の厚き輪切の湯気盛ん	風呂吹	冬	19.11.18.
671	風呂吹の輪切湯気立つ夕餉かな	風呂吹	冬	19.11.18.
672	神の留守スマホで指示の神もゐて	神の留守	冬	19.11.18.
673	神の留守みたらし団子五本食ふ	神の留守	冬	19.11.18.
674	いつ来ても荒涼として神の留守	神の留守	冬	19.11.18.
675	神主も海外旅行神の留守	神の留守	冬	19.11.18.
676	神の留守禰宜は救急救命士	神の留守	冬	19.11.18.
677	神職ら雀卓囲む神の留守	神の留守	冬	19.11.19.
678	わが狭庭何が無くても諸葛祭	諸葛菜	春	19.11.19.
679	一つずつ個性豊かな巣箱かな	巣箱	春	19.11.19.
680	手際よく巣箱懸けゆく人梯子	巣箱	春	19.11.19.
681	楽し気に巣箱懸けゆく人梯子	巣箱	春	19.11.19.
682	父と子の巣箱懸けゆく肩車	巣箱	春	19.11.19.
683	農学生巣箱懸けゆく演習林	巣箱	春	19.11.19.
684	神の留守貧乏神も不在なり	神の留守	冬	19.11.19.
685	何となく仮設に似たる巣箱かな	巣箱	春	19.11.19.
686	杖の鈴鳴らし山路の遍路かな	遍路	春	19.11.19.
687	海鳴りの聞ゆる岬冬桜	冬桜	冬	19.11.19.
688	海風に終日踊る野水仙	水仙	冬	19.11.19.
689	猿山の子猿じゃれ合ふ小春かな	小春	冬	19.11.20.
690	上水を鯉群れ泳ぐ冬はじめ	冬初め	冬	19.11.20.
691	団子屋の醤油香りぬ冬浅し	冬浅し	冬	19.11.20.
692	濡れ煎餅ちぎっては食む冬初め	冬初め	冬	19.11.20.
693	一葉の名残の井戸や冬浅し	冬浅し	冬	19.11.20.
694	一葉の井戸ほの温し冬はじめ	冬初め	冬	19.11.20.
695	石切り場発破響きぬ冬浅し		冬	19.11.20.
696	雲のなき空に残月冬初め	冬初め	冬	19.11.20.
697	チエンソー響く山路や冬初め	冬初め	冬	19.11.20.
698	日溜りの川辺の鴨や冬初め	冬初め	冬	19.11.20.
699	電動ソー竹伐る響き冬はじめ	冬初め	冬	19.11.20.
700	鳶の舞ふ空に残月冬初め	冬初め	冬	19.11.20.
701	武甲山削がれてなほも淑気満つ	淑気	新年	19.11.20.
702	初時雨錆びて放置の船外機	初時雨	冬	19.11.20.
703	反省のポーズで稼ぐ猿廻し	猿廻し	新年	19.11.21.
704	読初や兜太百年句集読む	読初	新年	19.11.21.
705	年酒や稍々年越しのきらひあり	年酒	新年	19.11.21.
706	正月の膳で再会紅ちょろぎ	ちょろぎ	新年	19.11.21.
707	俎始妻と娘のゐる厨	俎始	新年	19.11.21.
708	熊を抱き猪を抱き山眠る	山眠る	冬	19.11.21.
709	冬眠の熊を抱へて山眠る	山眠る	冬	19.11.21.
710	一山を眠らせ臼杵磨崖仏	山眠る	冬	19.11.21.
711	眠る山すり抜けて行く新幹線	山眠る	冬	19.11.21.
712	蛇笏の山影を正して眠りをり	山眠る	冬	19.11.21.
713	巌門に唸りを上げる冬怒涛	冬怒涛	冬	19.11.21.
714	蜜柑箱からの旅立ち蜜柑食む	蜜柑	冬	19.11.21.
715	海風に葉を打ち合ひし野水仙	水仙	冬	19.11.21.
716	冬めくや発破轟く石切り場	冬めく	冬	19.11.21.
717	上水を鯉滑り行く十二月	十二月	冬	19.11.21.
718	冬浅し発破轟く石切り場	冬浅し	冬	19.11.21.
719	切干や日の匂ひして荒筵	切干	冬	19.11.21.
720	切干を油揚と炊く母の味	切干	冬	19.11.21.
721	切干の甘き日の香やふるさと便	切干	冬	19.11.21.
722	切干に日を呼ぶ農の軒端かな	切干	冬	19.11.21.
723	切干の三杯酢よし独り酒	切干	冬	19.11.21.
724	駅前に客待つタクシー冬銀河	冬銀河	冬	19.11.21.
725	フルートの歌口に呼気冬の星	冬の星	冬	19.11.21.
726	このごろは誰も歌はぬ手毬唄	手毬唄	新年	19.11.22.
727	手毬つく童はをらじ手毬唄	手毬唄	新年	19.11.22.
728	羽子つきも手毬つく子も昭和かな	羽子板・手毬唄	新年	19.11.22.
729	荒凡夫産土に咲く黄水仙	黄水仙	春	19.11.22.
730	囀の突如止まりし樹の不穏	囀	春	19.11.22.
731	樹を変へて囀続く雑木山	囀	春	19.11.22.
732	不意打ちの号砲に似て牛蛙	牛蛙	春	19.11.22.
733	見上ぐれば広大無辺冬銀河	冬銀河	冬	19.11.22.
734	地球てふ星ある不思議冬銀河	冬銀河	冬	19.11.22.
735	打ち重なり打ち重なりて冬銀河	冬銀河	冬	19.11.22.
736	団塊の元祖なりけり蝌蚪の群れ	蝌蚪	春	19.11.22.
737	のどけしや東御苑の雅楽寮	長閑	春	19.11.22.
738	羽子突ひて顔に墨塗る昭和の子	羽子つき	新年	19.11.22.
739	ニコライ堂天井高きクリスマス	クリスマス	冬	19.11.22.
740	ニコライ堂スラブ十字のクリスマス	クリスマス	冬	19.11.22.
741	園長が白い髭付けクリスマス	クリスマス	冬	19.11.22.
742	老園長自前の髭でクリスマス	クリスマス	冬	19.11.22.
743	ハロウィーンその延長にクリスマス	クリスマス	冬	19.11.22.
744	クリスチャン一人もゐないクリスマス	クリスマス	冬	19.11.22.
745	教会にママチャリ並ぶクリスマス	クリスマス	冬	19.11.22.
746	歌声はボーイソプラノ降誕祭	降誕祭	冬	19.11.22.
747	なんのこと吾足元も冬の星	冬の星	冬	19.11.22.
748	足元の大地も同じ冬の星	冬の星	冬	19.11.22.
749	切干の日を呼ぶ農の軒すだれ	切干	冬	19.11.22.
750	切干のすだれ日を呼ぶ農の軒	切干	冬	19.11.22.
751	腹温め心暖めおでん酒	おでん酒	冬	19.11.22.
752	さう言へば吾足元も冬の星	冬の星	冬	19.11.22.
753	空海像遍路肩寄せ日向ぼこ（四国５２番札所で）	日向ぼこ	冬	19.11.22.
754	おでん酒玉子突つけど逃げらるる	おでん酒	冬	19.11.22.
755	独り酒おでん温め直し呑む	おでん	冬	19.11.22.
756	神の留守貧乏神は居残れり	神の留守	冬	19.11.23.
757	年用意草の香残る大わらぢ	年用意	冬	19.11.23.
758	木枯らしや瀧に打たるる荒法師	木枯らし	冬	19.11.23.
759	廃線の真っ直ぐ続く大枯野	枯野	冬	19.11.23.
760	空耳か寝息静かに山眠る	山眠る	冬	19.11.23.
761	三頭（みとう）の瀧響き鎮めて山眠る	山眠る	冬	19.11.23.
762	眠る山巡視路辿る巡視員	山眠る	冬	19.11.23.
763	産土の山と眠るや荒凡夫	山眠る	冬	19.11.23.
764	山眠り巣穴の熊は夢の中	山眠る	冬	19.11.23.
765	月の輪が寝返り打ちて山眠る	山眠る	冬	19.11.23.
766	神の留守貧乏神とへぼ将棋	神の留守	冬	19.11.23.
767	ＡＩに名句詠ませて春うらら	春うらら	春	19.11.23.
768	ゲーム繰る余力残して風邪籠	風邪籠	冬	19.11.24.
769	風邪休校やったと言ふ子叱りをり	風邪	冬	19.11.24.
770	毒々しマウスピースのラガーかな	ラガー	冬	19.11.24.
771	目の回る連続技やスケーター	スケーター	冬	19.11.24.
772	少しずつ痩せ衰へる干大根	干大根	冬	19.11.24.
773	農の軒干大根の簾かな	干大根	冬	19.11.24.
774	農の軒ずしりと重き干大根	干大根	冬	19.11.24.
775	干大根への字になりて仕上がれり	干大根	冬	19.11.24.
776	フレームやこれも一つの未来都市	フレーム	冬	19.11.24.
777	荒縄を捌き雪吊仕上げゆく	雪吊	冬	19.11.24.
778	菰巻ひて見越しの松に句読点	菰巻	冬	19.11.24.
779	衰へて年寄歩き冬銀河	冬銀河	冬	19.11.24.
780	神の留守貧乏神と将棋指す	神の留守	冬	19.11.24.
781	風邪休校やったと言ふ子たしなめり	風邪	冬	19.11.24.
782	蛇笏の山影を整へ眠りをり	山眠る	冬	19.11.24.
783	蛇笏の山稜線連ね眠りをり	山眠る	冬	19.11.24.
784	貧乏神居残ってゐる神の留守	神の留守	冬	19.11.25.
785	無住寺の背戸でしきりに笹子鳴く	笹子鳴く	冬	19.11.25.
786	人住まぬ集落の昼笹子鳴く	笹子鳴く	冬	19.11.25.
787	茶店跡朽ちし葦簀や笹子鳴く	笹子鳴く	冬	19.11.25.
788	夜の高尾むささび飛んで冷えにけり	むささび	冬	19.11.25.
789	明治から続く甘味屋一葉忌	一葉忌	冬	19.11.25.
790	深大寺墓に供花あり波郷の忌	波郷忌	冬	19.11.25.
791	めずらしや狭庭に雀一茶の忌	一茶忌	冬	19.11.25.
792	電線の雀で一句一茶の忌	一茶忌	冬	19.11.25.
793	宗教のしのごは言はずクリスマス	クリスマス	冬	19.11.25.
794	咲きながらどこか淋し気冬ざくら	冬桜	冬	19.11.25.
795	間の悪き風情で咲けり冬ざくら	冬桜	冬	19.11.25.
796	戸惑ひを隠せぬ風情冬ざくら	冬桜	冬	19.11.25.
797	良寛に似たる野仏冬ざくら	冬桜	冬	19.11.25.
798	冬桜あらと言はれて終りけり	冬桜	冬	19.11.25.
799	冬桜あらと言はれて終りとは	冬桜	冬	19.11.25.
800	紺碧の空が寂しい冬桜	冬桜	冬	19.11.26.
801	大空に鳶が輪を描く冬桜	冬桜	冬	19.11.26.
802	花の数恥ずるかに咲く冬桜	冬桜	冬	19.11.26.
803	飢えしのぐ蜜吸ふ虫や冬ざくら	冬桜	冬	19.11.26.
804	咲き誇ることなく咲くや冬桜	冬桜	冬	19.11.26.
805	咲き誇ることなく侘びの冬桜	冬桜	冬	19.11.26.
806	侘び寂びてひそと咲きけり冬桜	冬桜	冬	19.11.26.
807	良寛に似た野仏や冬ざくら	冬桜	冬	19.11.26.
808	並木にはなれずしめやか冬桜	冬桜	冬	19.11.26.
809	遺言は無くて一句や冬の海	冬の湖	冬	19.11.26.
810	冬の海寄せ来る浪は死のにおい	冬の湖	冬	19.11.26.
811	群雀枯野の先は八ヶ岳	枯野	冬	19.11.26.
812	冬の湖楷書のごとき富士の影	冬	冬	19.11.26.
813	稜線にかかる日差しや冬の虹	冬の虹	冬	19.11.26.
814	音もなく路地を濡らして冬の雨	冬の雨	冬	19.11.26.
815	「サクラサク」ラインで嬉々と合格子	受験生	春	19.11.26.
816	老園長自前の髭のサンタかな	サンタクロース	冬	19.11.26.
817	さう言へば吾足下にも冬の星	冬星	冬	19.11.26.
818	その昔付け取り攻防十二月	十二月	冬	19.11.27.
819	息上がりつつなほ走る十二月	十二月	冬	19.11.27.
820	人を読むことの難し義仲忌	義仲忌	冬	19.11.27.
821	供花香煙絶えぬ武将や義仲忌	義仲忌	冬	19.11.27.
822	利用され尽くして討たる義仲忌	義仲忌	冬	19.11.27.
823	駅伝のアンカーに似て十二月	十二月	冬	19.11.27.
824	ジングルベル鳴りて間のなき除夜の鐘	除夜の鐘	冬	19.11.27.
825	ジングルベル鳴れば間もなく除夜の鐘	除夜の鐘	冬	19.11.27.
826	断崖に潮風受けて石蕗の花	石蕗の花	冬	19.11.27.
827	海洞に轟く浪や石蕗の花	石蕗の花	冬	19.11.27.
828	切岸の崩れやすきに石蕗の花	石蕗の花	冬	19.11.27.
829	荒縄を捌く庭師や冬構	冬構	冬	19.11.27.
830	ぎっくり腰気を付けながら大根引く	大根引く	冬	19.11.28.
831	母を呼び父を呼ぶかに虎落笛	虎落笛	冬	19.11.28.
832	北からの風ひょうひょうと虎落笛	虎落笛	冬	19.11.28.
833	北の夜を寂しがらせて虎落笛	虎落笛	冬	19.11.28.
834	北の浜すすり泣くかに虎落笛	虎落笛	冬	19.11.28.
835	豆乳をごくりと飲む夜虎落笛	虎落笛	冬	19.11.28.
836	般若経上ぐる堂守虎落笛	虎落笛	冬	19.11.28.
837	寝静まる漁師集落もがり笛	虎落笛	冬	19.11.28.
838	寝息立つ太郎次郎や虎落笛	虎落笛	冬	19.11.28.
839	突堤を越ゆる波涛や虎落笛	虎落笛	冬	19.11.28.
840	堂守は過去を語らず虎落笛	虎落笛	冬	19.11.28.
841	北の夜を恨めしくして虎落笛	虎落笛	冬	19.11.29.
842	冬の虹懸りやすらぐ八ヶ岳	冬の虹	冬	19.11.29.
843	潜り来て皇紀三代年忘	年忘	冬	19.11.29.
844	忘れたきことの多さよ年忘れ	年忘	冬	19.11.29.
845	ほとんどが義理で加はる年忘れ	年忘	冬	19.11.29.
846	晩酌で一年中が年忘れ	年忘	冬	19.11.29.
847	秩父夜祭寒気解きし縄のれん	秩父夜祭	冬	19.11.29.
848	高張の光の列や秩父祭	秩父夜祭	冬	19.11.29.
849	秩父夜祭武甲の山も踊りをり	秩父夜祭	冬	19.11.29.
850	峡の人寒気に荒ぶ秩父夜祭	秩父夜祭	冬	19.11.29.
851	枯菊の括られしまま刈られけり	枯菊	冬	19.11.30.
852	どれもみな色を残して菊枯るる	枯菊	冬	19.11.30.
853	めらめらと焚かれ枯菊香を放つ	枯菊	冬	19.11.30.
854	一括りされて枯菊焼かれゆく	枯菊	冬	19.11.30.
855	枯菊の音立て燃ゆる野辺送り	枯菊	冬	19.11.30.
856	枯菊の燃ゆる炎や野辺送り	枯菊	冬	19.11.30.
857	忘れたきことの多くて年忘れ	年忘	冬	19.11.30.
858	忘れたきこと忘れ得ず年忘れ	年忘	冬	19.11.30.
859	物忘れひどきを忘れ年忘れ	年忘	冬	19.11.30.
860	クリスマスケーキ手に手の昭和かな	年忘	冬	19.11.30.
861	気が付けば吾足元も冬の星	冬の星	冬	19.11.30.
862	マドンナの乳首に止る冬の蝶	冬の蝶	冬	19.11.30.
863	柔らかき乳房確かめ冬構	冬構	冬	19.11.30.
864	マドンナの乳房を頬に山眠る	山眠る	冬	19.11.30.
865	観世音胸乳柔らに山眠る	山眠る	冬	19.11.30.
866	女身仏胸ふくよかな小春かな	小春	冬	19.11.30.
867	荒ぶれて咆哮あげる冬の海	冬の海	冬	19.12.1.
868	どどどどと巖を叩きし冬の海	冬の海	冬	19.12.1.
869	狂乱に海鵜もすくむ冬の海	冬の海	冬	19.12.1.
870	低き空押し返すかに冬の海	冬の海	冬	19.12.1.
871	荒みたる空荒みたる冬の海	冬の海	冬	19.12.1.
872	ひゅうひゅうと竜飛岬や冬の海	冬の海	冬	19.12.1.
873	号泣も怒声もありて冬の海	冬の海	冬	19.12.1.
874	御用納め取材する側記者稼業	御用納め	冬	19.12.1.
875	着ぶくれて憮然と坐る二人掛け	着ぶくれ	冬	19.12.1.
876	正ちゃん帽呼び名懐かし冬帽子	冬帽子	冬	19.12.1.
877	薄くなり冷える頭に冬帽子	冬帽子	冬	19.12.1.
878	札所寺遍路肩寄せ日向ぼこ	日向ぼこ	冬	19.12.1.
879	ちゃっちゃっと吾囃すかに笹子鳴く	笹子鳴く	冬	19.12.2.
880	ちょっとちょっと吾を呼び止む笹子かな	笹子	冬	19.12.2.
881	笹鳴きにわんと応へる散歩犬	笹鳴	冬	19.12.2.
882	た行から習ひ始める笹子かな	笹子	冬	19.12.2.
883	鴛鴦の雄と競ふや伊達男	鴛鴦	冬	19.12.2.
884	連れ立てる鴛鴦残す水尾二本	鴛鴦	冬	19.12.2.
885	鴛鴦や夫唱婦随の水尾二本	鴛鴦	冬	19.12.2.
886	年忘れチャンチキおけさ賑やかに	年忘	冬	19.12.2.
887	嘴揃へ鉄鎖に並ぶ冬かもめ	冬鴎	冬	19.12.2.
888	向ひ風鉄鎖に並ぶ冬かもめ	冬鴎	冬	19.12.2.
889	白鳥の羽搏き縺る大喧嘩	白鳥	冬	19.12.2.
890	争へる大白鳥の猛々し	白鳥	冬	19.12.2.
891	争へば怒声凄まじ大白鳥	白鳥	冬	19.12.2.
892	切り込める子規の文机冬日さす	冬日	冬	19.12.2.
893	稜線に日の差す空や冬の虹	冬の虹	冬	19.12.2.
894	稜線に日の差し初めて冬の虹	冬の虹	冬	19.12.2.
895	寒夕焼背にくっきりと黒富岳	寒夕焼	冬	19.12.3.
896	白銀を黒富士に変え冬夕焼	寒夕焼	冬	19.12.3.
897	黒富士の背中を燃やす寒茜	寒茜	冬	19.12.3.
898	寒夕焼湖面に富士のシルエット	寒夕焼	冬	19.12.3.
899	黒富士の背中燃え立つ寒茜	寒茜	冬	19.12.3.
900	寒夕焼鉄橋渡る貨車百輌	寒夕焼	冬	19.12.3.
901	雲水が一列に行く寒茜	寒茜	冬	19.12.3.
902	野道行く雲水の列寒夕焼	寒夕焼	冬	19.12.3.
903	墨染のバイクの僧や寒夕焼	寒夕焼	冬	19.12.3.
904	灯台に灯の入る岬冬夕焼	寒夕焼	冬	19.12.3.
905	稜線の雲間に薄き冬の虹	冬の虹	冬	19.12.3.
906	山稜を跨ぐかに見ゆ冬の虹	冬の虹	冬	19.12.3.
907	小春日や胸ふくよかな女身仏	小春日	冬	19.12.3.
908	朝練の若者走る枯野かな	枯野	冬	19.12.3.
909	野兎の兎跳びする枯野かな	枯野	冬	19.12.3.
910	黙然と切られ食はるる海鼠かな	海鼠	冬	19.12.4.
911	逆らふといふこと知らぬ海鼠かな	海鼠	冬	19.12.4.
912	どこもかも棄てる部位無き海鼠食む	海鼠	冬	19.12.4.
913	海鼠にも言ひたきことの二つ三つ	海鼠	冬	19.12.4.
914	悠々と輪切りにされる海鼠かな	海鼠	冬	19.12.4.
915	のほほんと輪切りにされる海鼠かな	海鼠	冬	19.12.4.
916	泡一つ海鼠のおならかも知れず	海鼠	冬	19.12.4.
917	逃げ隠れすること知らぬ海鼠かな	海鼠	冬	19.12.4.
918	海鼠食む居酒屋女子の紅の口	海鼠	冬	19.12.4.
919	紅唇にぱくりと食はる海鼠かな	海鼠	冬	19.12.4.
920	こりこりと歯ごたえで食ふ海鼠かな	海鼠	冬	19.12.4.
921	海鼠にも意地と誇りはありさうな	海鼠	冬	19.12.4.
922	男根を同胞（はらから）と呼ぶ海鼠かな	海鼠	冬	19.12.4.
923	男根を兄弟と呼ぶ海鼠かな	海鼠	冬	19.12.4.
924	小春日や夫婦まぐはふ道祖神	小春日	冬	19.12.4.
925	まぐかひの部屋鎮まりて外は雪	雪	冬	19.12.4.
926	まぐはひの部屋鎮まりて寒満月	寒満月	冬	19.12.4.
927	まぐはひや寒満月の月明り	寒満月	冬	19.12.4.
928	ほろほろと馬柵（ませ）を越え行く冬の蝶	冬の蝶	冬	19.12.4.
929	いつの間に八十路半ばや冬銀河	冬銀河	冬	19.12.4.
930	どれもみな花色残し菊枯るる	枯菊	冬	19.12.4.
931	母を恋ひ咽び泣くかに虎落笛	虎落笛	冬	19.12.4.
932	枯菊の音轟々と焼却炉	枯菊	冬	19.12.4.
933	枯菊の音立て燃ゆる焼却炉	枯菊	冬	19.12.4.
934	香を放ち枯菊燃ゆる農の庭	枯菊	冬	19.12.4.
935	枯菊を畑の炉で焚く野辺送り	枯菊	冬	19.12.4.
936	寺々の一打が分かつ去年今年	去年今年	新年	19.12.5.
937	寺々の鐘で分かたる去年今年	去年今年	新年	19.12.5.
938	できるなら春のうららに野辺送り	野辺送り	春	19.12.5.
939	冬星の一つの家路急ぎけり	冬星	冬	19.12.5.
940	オンリーの南部訛りや敗戦忌	敗戦忌	夏	19.12.5.
941	白菜を半切で買う核家族	白菜	冬	19.12.5.
942	白菜のずしりと重き一個かな	白菜	冬	19.12.5.
943	白菜の出自伝へる山東菜	白菜	冬	19.12.5.
944	葱一本あれば間に合ふ昼支度	葱	冬	19.12.5.
945	大鍋や大根だけの煮大根	煮大根	冬	19.12.5.
946	大根焚はふはふと食む了徳寺	大根焚	冬	19.12.5.
947	枯菊を焚かず地中に都市農家	枯菊	冬	19.12.5.
948	鳴滝の寺が振る舞ふ大根焚	大根焚	冬	19.12.5.
949	親鸞の旨ひと食みし大根焚	大根焚	冬	19.12.5.
950	冬の星踏みしめ帰る家路かな	冬の星	冬	19.12.6.
951	星空や足元もまた冬の星	冬の星	冬	19.12.6.
952	なんとなくどん詰まりなり十二月	十二月	冬	19.12.6.
953	どれほどのことも為さずに十二月	十二月	冬	19.12.6.
954	あれこれと妻指図する十二月	十二月	冬	19.12.6.
955	あれこれと妻が指図の十二月	十二月	冬	19.12.6.
956	スマホ繰りバス待つ列も十二月	十二月	冬	19.12.6.
957	十二月八日もいまや普通の日	十二月	冬	19.12.6.
958	持ち帰り鮨はさび抜き十二月	十二月	冬	19.12.6.
959	鼻毛抜き並べてをりし十二月	十二月	冬	19.12.6.
960	カップめん食んで寂しき十二月	十二月	冬	19.12.6.
961	家長てふ言葉も死語に十二月	十二月	冬	19.12.6.
962	韋駄天の走りで来る十二月	十二月	冬	19.12.6.
963	妻に尻叩かれる月十二月	十二月	冬	19.12.6.
964	寄鍋や家族仲間のあればこそ	寄鍋	冬	19.12.6.
965	寄鍋の果ててなほ飲む男あり	寄鍋	冬	19.12.6.
966	寄鍋の果てればてんでの家路かな	寄鍋	冬	19.12.6.
967	コンビニでおでん買い行く独り者	おでん	冬	19.12.6.
968	トロ赤身鮨になれずに葱鮪（ねぎま）汁	葱鮪汁	冬	19.12.7.
969	二日酔ひ昼の鮨屋で葱鮪汁	葱鮪汁	冬	19.12.7.
970	二日酔ひ馴染みの店で葱鮪汁	葱鮪汁	冬	19.12.7.
971	握られず汁にどぼんと葱鮪かな	葱鮪	冬	19.12.7.
972	葱鮪汁啜りて直す二日酔ひ	葱鮪汁	冬	19.12.7.
973	長屋では日落ちのしたる葱鮪汁	葱鮪汁	冬	19.12.7.
974	鮨屋では賄ひで食ふ葱鮪汁	葱鮪汁	冬	19.12.7.
975	鮨職の賄いけふも葱鮪汁	葱鮪汁	冬	19.12.7.
976	葱鮪汁丼飯の長屋かな	葱鮪汁	冬	19.12.7.
977	葱鮪汁丼飯の番屋かな	葱鮪汁	冬	19.12.7.
978	二日酔ひ昼の鮨屋で葱鮪汁	葱鮪汁	冬	19.12.7.
979	番屋では熱々啜る葱鮪汁	葱鮪汁	冬	19.12.7.
980	風呂吹と言ふシンプルを戴きぬ	風呂吹	冬	19.12.7.
981	風呂吹の端正にして柔らかき	風呂吹	冬	19.12.7.
982	風呂吹をあてに戴く独り酒	風呂吹	冬	19.12.7.
983	枯萩や無住となりし寺の庭	枯萩	冬	19.12.8.
984	枯萩や手が回らぬと老和尚	枯萩	冬	19.12.8.
985	狭庭ではけふも早口みそさざい	鷦鷯	冬	19.12.8.
986	ちゃんちゃんこ着ればたちまち好々爺	ちゃんちゃんこ	冬	19.12.8.
987	墨染の和尚も被る冬帽子	冬帽子	冬	19.12.8.
988	カウンター定席で飲む冬帽子	冬帽子	冬	19.12.8.
989	手袋の人差し指に小さき穴	手袋	冬	19.12.8.
990	昨日から片手袋のあるベンチ	手袋	冬	19.12.8.
991	白バイの黒手袋が追ひかける	手袋	冬	19.12.8.
992	足袋の裏少し汚れし仲居かな	足袋	冬	19.12.8.
993	外套の若者目立つ令和かな	外套	冬	19.12.8.
994	昨日のまま片手袋のあるベンチ	手袋	冬	19.12.8.
995	片手袋三日目もあるベンチかな	手袋	冬	19.12.8.
996	戻って来た重きコートの令和かな	コート	冬	19.12.8.
997	粕汁に頬染めてゐる下戸の妻	粕汁	冬	19.12.9.
998	ポインセチア出窓に置きし女高生	ポインセチア	冬	19.12.9.
999	鎌上げて構へ寂しき枯蟷螂	枯蟷螂	冬	19.12.9.
1000	凍蝶に思ひを馳せる人の情	凍蝶	冬	19.12.9.