---

鈴童の遊び

1	桂浜竜馬目線の天の川	天の川	秋	19.8.10.
2	幼くて逝きし弟妹訪ふ銀河	銀河	秋	19.8.10.
3	銀漢を攀じ登りたき一夜かな	銀漢	秋	19.8.10.
4	竹林を抜ける小径や秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
5	大久保はコリアンタウン秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
6	日の暮るる多摩の横山秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
7	棄て畑の広がる里や秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
8	水車小屋ごとんごとんと秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
9	棄て畑の朽ちし廃車や秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
10	無住寺となりし山里秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
11	賽銭箱撤去の社秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
12	鍾乳洞淡き照明秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
13	らーめんは醤油味なり秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
14	卒塔婆のかたりことりと秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
15	払子の瀧落下の響き秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
16	払子の瀧落ちる響きや秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
17	うるさいと言はれず鳴くや秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.11.
18	寂寥を帯びて鳴きをり秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.11.
19	鳴き競ふことを知らずに秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.11.
20	秋蝉やけふは八月十五日	秋の蝉	秋	19.8.11.
21	ひと鳴きし木を移り行く秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.11.
22	卒塔婆の梵字黒々秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.11.
23	滑め瀧の音無き流れ秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.11.
24	人間が鬼になりたる原爆忌	原爆忌	秋	19.8.11.
25	秋の蝉寂寥負ひて鳴きにけり	秋の蝉	秋	19.8.11.
26	八月の蝉よ声上げ鳴き尽くせ	秋の蝉	秋	19.8.11.
27	理由付けしても空しき原爆忌	原爆忌	秋	19.8.11.
28	終戦と決まり忙しいなご捕り	蝗	秋	19.8.11.
29	空鍋でいなごを煎りし疎開の子	蝗	秋	19.8.11.
30	援農の稲田で捕りし蝗食ふ	蝗	秋	19.8.11.
31	西に富士望む庵や秋簾	秋簾	秋	19.8.11.
32	廃屋やぱくと口開く秋簾	秋簾	秋	19.8.11.
33	料亭の節美しき秋簾	秋簾	秋	19.8.11.
34	秋すだれ節で描きし八ヶ岳	秋簾	秋	19.8.11.
35	人道の箍を外せし原爆忌	原爆忌	秋	19.8.11.
36	句集なき俳詠む一人秋簾	秋簾	秋	19.8.11.
37	雨上がりひと葉ひと葉に青蛙	青蛙	夏	19.8.11.
38	水車小屋ごとりごとりと秋の声	秋の声	秋	19.8.11.
39	儚きを纏ひて鳴くや秋の蝉	秋の声	秋	19.8.11.
40	鉄鍋のたちまち滾る泥鰌汁	泥鰌汁	夏	19.8.12.
41	刻み葱継ぎ足し食みし泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.8.12.
42	女子会は丸敬遠の泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.8.12.
43	暑き日に熱々旨し泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.8.12.
44	割きも良し丸でも旨し泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.8.12.
45	早よ食へと滾り音立つ泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.8.12.
46	路床へとはみ出し猛る夏よもぎ	夏蓬	夏	19.8.12.
47	飯田屋の暖簾跳ね上げ泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.8.12.
48	噺家も隣の席に泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.8.12.
49	浅草は鰻食ふより泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.8.12.
50	狭庭にも繁る草陰秋の声	秋の声	秋	19.8.12.
51	道祖神多き安曇野秋の声	秋の声	秋	19.8.12.
52	木魚の音に強弱秋の声	秋の声	秋	19.8.12.
53	仲見世の人途切れずに秋の声	秋の声	秋	19.8.12.
54	仲見世の裏も人波秋の声	秋の声	秋	19.8.12.
55	水上バス行き交う川面秋の声	秋の声	秋	19.8.12.
56	投げ込み寺墓石肩寄せ秋の声	秋の声	秋	19.8.12.
57	耳鳴りに紛れ込みたる秋の声	秋の声	秋	19.8.12.
58	果たすこと果たして逝けり秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.12.
59	秋の蝉ことりと逝けり永遠の黙	秋の蝉	秋	19.8.12.
60	予告なき死を賜りて秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.12.
61	夕焼けに染まる白壁秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.12.
62	病む間なくことりと逝けり秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.12.
63	秋蝉の声静まりて鴉鳴く	秋の蝉	秋	19.8.12.
64	粟国島塩炊く釜や秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.12.
65	秋蝉や札所に聞こゆ般若経	秋の蝉	秋	19.8.13.
66	秋蝉や般若経読む母子へんろ	秋の蝉	秋	19.8.13.
67	秋の蝉手を出せぬ子もゐるキャンプ	秋の蝉	秋	19.8.13.
68	碓氷峠秋の声聞く廃線路	秋の声	秋	19.8.13.
69	峡の里早き日暮れに秋の声	秋の声	秋	19.8.13.
70	奥山の黙に流るる秋の声	秋の声	秋	19.8.13.
71	風一陣山廬に掛かる秋簾	秋簾	秋	19.8.13.
72	城を出て向かふ茶屋町秋簾	秋簾	秋	19.8.13.
73	白壁を染むる夕日や秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.13.
74	秋扇一重ひとへに恋へんろ	秋扇	秋	19.8.13.
75	嫋やかに手首動かす秋扇	秋扇	秋	19.8.13.
76	女らの口元隠す秋扇	秋扇	秋	19.8.13.
77	通底のアウシュヴィッツや原爆忌	原爆忌	夏	19.8.13.
78	しづの女の叱咤の声や炎暑なほ	炎暑	夏	19.8.13.
79	秋簾まず外されて家解体	秋簾	秋	19.8.14.
80	水平線沈む夕日や秋簾	秋簾	秋	19.8.14.
81	遠富士の浮かぶ夕日や秋簾	秋簾	秋	19.8.14.
82	廃旅館少し裂けたる秋簾	秋簾	秋	19.8.14.
83	鶏舎の背長きを連ね秋簾	秋簾	秋	19.8.14.
84	廃屋や破れかぶれの秋簾	秋簾	秋	19.8.14.
85	秋の声ほらあそこからこちらから	秋の声	秋	19.8.14.
86	秋の声ほらあそこでもこちらでも	秋の声	秋	19.8.14.
87	聞えたよあそこでここで秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
88	ほらそこであっちの方で秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
89	ほらあちらほらほらこちら秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
90	散歩道足止めて聞く秋のこゑ	秋の声	秋	19.8.14.
91	なまこ塀続く坂道秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
92	ハケの道辿ればひそと秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
93	軽やかな太鼓の響き秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
94	軽やかに太鼓打つ音秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
95	たこ焼きをほお張りをれば秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
96	まっすぐに行けば村社や秋のこゑ	秋の声	秋	19.8.14.
97	補聴器を外し秋声楽しめり	秋の声	秋	19.8.14.
98	補聴器を外せし耳に秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
99	補聴器の無くて楽しき秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
100	補聴器を外ししみじみ秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
101	補聴器を外せど聞こゆ秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
102	耳遠き翁微笑む秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
103	耳遠き人にも届く秋の声	秋の声	秋	19.8.14.
104	相継ぎて友の訃報や秋の声	秋の声	秋	19.8.15.
105	砂時計はかる余命や秋の声	秋の声	秋	19.8.15.
106	アルバムの古き写真や秋の声	秋の声	秋	19.8.15.
107	若者に遠き八月十五日	八月十五日	秋	19.8.15.
108	玉音の不思議な人語敗戦忌	敗戦忌	秋	19.8.15.
109	玉音や灯火管制解かれし日	敗戦忌	秋	19.8.15.
110	いもかぼちゃ命繫ぎし敗戦忌	敗戦忌	秋	19.8.15.
111	ピカドンの二発が止め敗戦忌	敗戦忌	秋	19.8.15.
112	ピカドンを知らぬ若者敗戦忌	敗戦忌	秋	19.8.15.
113	台風の情報ばかり敗戦日	敗戦日	秋	19.8.15.
114	少国民ゲートル解きし敗戦日	敗戦日	秋	19.8.15.
115	給食支援はばかる子らや敗戦忌	敗戦忌	秋	19.8.15.
116	戦没の数三百万敗戦忌	敗戦忌	秋	19.8.15.
117	深々と頭を垂れよ八月忌	八月忌	秋	19.8.15.
118	まぐわひし雄をがぶりと雌蟷螂	蟷螂	秋	19.8.15.
119	補聴器を外して楽し秋の声	秋の声	秋	19.8.15.
120	寂しきはこの指とまれ秋の声	秋の声	秋	19.8.15.
121	侘び寂びて耳傾けん秋の声	秋の声	秋	19.8.15.
122	もやもやと歩いてきた道秋の声	秋の声	秋	19.8.16.
123	板根の岩噛む山路秋の声	秋の声	秋	19.8.16.
124	吊り橋の不意つく揺れや秋の声	秋の声	秋	19.8.16.
125	秋簾峠の茶屋の茸蕎麦	秋簾	秋	19.8.16.
126	墓守を兼ねし花屋の秋簾	秋簾	秋	19.8.16.
127	秋簾蕎麦屋の嫁はフランス人	秋簾	秋	19.8.16.
128	秋簾垂れし庫裏から人の声	秋簾	秋	19.8.16.
129	吊り橋の悲鳴まとめて秋の声	秋の声	秋	19.8.16.
130	薄墨で忌中の札や秋簾	秋簾	秋	19.8.16.
131	門跡寺書院に掛かる秋簾	秋簾	秋	19.8.16.
132	草堂に近き川瀬や秋簾	秋簾	秋	19.8.16.
133	風を呼び瀬音伝へる秋簾	秋簾	秋	19.8.16.
134	秋簾大志抱きしころ遠し	秋簾	秋	19.8.16.
135	秋簾大志抱きし日のありて	秋簾	秋	19.8.16.
136	富士塚をゆるりぐるりと登高す	登高	秋	19.8.17.
137	富士塚や登高の列老一団	登高	秋	19.8.17.
138	八朔や限りあるなり椅子の数	八朔	秋	19.8.17.
139	風の盆路地を抜け行く胡弓の音	風の盆	秋	19.8.17.
140	嫋々と胡弓響くや風の盆	風の盆	秋	19.8.17.
141	しめやかに八尾の夜更け風の盆	風の盆	秋	19.8.17.
142	夜更けの路地胡弓泣くかに風の盆	風の盆	秋	19.8.17.
143	哀調の胡弓の響き風の盆	風の盆	秋	19.8.17.
144	三味胡弓笛すすり泣く風の盆	風の盆	秋	19.8.17.
145	嫋々と路地行く八尾廻り盆	風の盆	秋	19.8.17.
146	どれもみなひょっとこおかめ阿波踊り	風の盆	秋	19.8.17.
147	膝まげて面白可笑し阿波踊り	阿波踊り	秋	19.8.17.
148	総員が阿呆となりし阿波踊り	阿波踊り	秋	19.8.17.
149	どれもみな睨み効かせて佞武多ゆく	佞武多	秋	19.8.17.
150	かつと眼を開き見得切る佞武多かな	佞武多	秋	19.8.17.
151	成田屋に負けぬ睨みの武者ねぶた	佞武多	秋	19.8.17.
152	成田屋と声飛ぶ睨み武者佞武多	佞武多	秋	19.8.17.
153	秩父路や日差し眩しき秋遍路	秋遍路	秋	19.8.17.
154	空海像見上げつ昼餉秋遍路	秋遍路	秋	19.8.17.
155	コンビニの弁当開く秋遍路	秋遍路	秋	19.8.17.
156	原爆忌ずしりと重き千羽鶴	原爆忌	秋	19.8.17.
157	詠み続け叫びつづけむ八月忌	八月	秋	19.8.17.
158	原爆忌眼窩の昏き焼けマリア	原爆忌	秋	19.8.17.
159	忘れまい忘れてならじ八月忌	八月	秋	19.8.17.
160	少年も老ひし語り部終戦日	終戦日	秋	19.8.17.
161	どれもみな和風仕立ての舟遊び	船遊び	夏	19.8.18.
162	細長き座敷の宴船遊び	船遊び	夏	19.8.18.
163	其角の声去来の声や船遊び	船遊び	夏	19.8.18.
164	カラオケの歌声流る船遊び	船遊び	夏	19.8.18.
165	風そよろ夜景も馳走船遊び	船遊び	夏	19.8.18.
166	船遊び宴たけなわが擦れ違ふ	船遊び	夏	19.8.18.
167	船酔ひも少し加はる船遊び	船遊び	夏	19.8.18.
168	手際よく並ぶ馳走や船遊び	船遊び	夏	19.8.18.
169	東京湾夜景も馳走船遊び	船遊び	夏	19.8.18.
170	船遊び其角気取りの発句詠む	船遊び	夏	19.8.18.
171	帰港して少しよろめく船遊び	船遊び	夏	19.8.18.
172	船遊びライトアップの橋潜る	船遊び	夏	19.8.18.
173	遊船の手を振り合ひてすれ違ひ	遊船	夏	19.8.18.
174	船遊び其角の気分一句詠む	船遊び	夏	19.8.18.
175	賑やかに阿呆楽しむ阿波踊り	阿波踊り	秋	19.8.18.
176	街あげて阿呆楽しや阿波踊り	阿波踊り	秋	19.8.18.
177	富士塚に登高の列老一団	登高	秋	19.8.18.
178	夜更けの路地胡弓むせびし風の盆	風の盆	秋	19.8.18.
179	菊酒と雅めかして友と酌む	菊酒	秋	19.8.18.
180	菊酒と雅めかして菊一片	菊酒	秋	19.8.18.
181	桝酒に菊の浮かびし重九かな	重九	秋	19.8.18.
182	句座跳ねて車座で飲む菊酒かな	菊酒	秋	19.8.18.
183	もってのほか浮かべる機転菊の酒	菊酒	秋	19.8.18.
184	もってのほか浮かべて雅重九の盃	重九	秋	19.8.18.
185	もってのほか浮かべ重九の祝ひ酒	重九	秋	19.8.18.
186	もってのほか浮かべ盃上ぐ重九かな	重九	秋	19.8.18.
187	菊水の銘柄選び重九の宴	重九	秋	19.8.18.
188	菊水の銘柄選び菊酒とす	菊酒	秋	19.8.18.
189	供花二三片毟り浮かべて菊の酒	菊酒	秋	19.8.18.
190	夜更けの路地胡弓泣かせる風の盆	風の盆	秋	19.8.19.
191	京アニメ悼む若者終戦日	終戦日	夏	19.8.19.
192	語り部のまた一人逝き終戦日	終戦日	夏	19.8.19.
193	大国が火事場泥棒敗戦忌	敗戦忌	夏	19.8.19.
194	グラマンに殺され損ね敗戦忌	敗戦忌	夏	19.8.19.
195	木炭バス客が坂押す終戦日	終戦日	夏	19.8.19.
196	敗戦忌どこに負けたと問ふ生徒	敗戦忌	夏	19.8.19.
197	天国へ太き列なし茄子の馬	茄子の馬	秋	19.8.19.
198	苧殻焚く日暮れの門の薄煙	苧殻	秋	19.8.19.
199	卒塔婆の杉の香匂ふ施餓鬼かな	施餓鬼	秋	19.8.19.
200	流灯の光の帯や渡月橋	流灯	秋	19.8.19.
201	エノラゲイ悪魔の鳥や原爆忌	原爆忌	夏	19.8.19.
202	閃光に玻璃戸震へる木歩の忌	木歩忌	秋	19.8.19.
203	夜更けてむせぶ胡弓や風の盆	風の盆	秋	19.8.19.
204	大川の翁座像や大銀河	銀河	秋	19.8.19.
205	路地裏を胡弓むせぶや風の盆	風の盆	秋	19.8.19.
206	オカリナを吹けば聞こゆる秋の声	秋の声	秋	19.8.19.
207	熊注意警告の札秋の声	秋の声	秋	19.8.19.
208	木道の人の温みや秋の声	秋の声	秋	19.8.19.
209	山里のまた一つ消え秋の声	秋の声	秋	19.8.19.
210	オカリナの音足して聞く秋の声	秋の声	秋	19.8.19.
211	佃島もんじゃ通りや秋の声	秋の声	秋	19.8.20.
212	走り根の岩噛む山路秋の声	秋の声	秋	19.8.20.
213	木道の補修の跡や秋の声	秋の声	秋	19.8.20.
214	かづら橋峪深くして秋の声	秋の声	秋	19.8.20.
215	補聴器を外し確かむ秋の声	秋の声	秋	19.8.20.
216	夜更けし暗き厨に秋の声	秋の声	秋	19.8.20.
217	屋外機静かに回る良夜かな	良夜	秋	19.8.20.
218	終バスの尾灯遠のく良夜かな	良夜	秋	19.8.20.
219	峪深く川面の光る良夜かな	良夜	秋	19.8.20.
220	ゆるキャラの案山子並びし棚田かな	案山子	秋	19.8.20.
221	人寄せのゆるキャラ案山子並ぶ里	案山子	秋	19.8.20.
222	列なして鳴子綱引く学習田	鳴子	秋	19.8.20.
223	山里の速き水路や芋水車	芋水車	秋	19.8.20.
224	百日紅ぽつんと山の一軒家	百日紅	夏	19.8.20.
225	貨車百輌渡る鉄橋さるすべり	百日紅	夏	19.8.20.
226	向日葵の笑ひさざめく休耕田	向日葵	夏	19.8.20.
227	向日葵の万花笑みゐる山の里	向日葵	夏	19.8.20.
228	噛む暇の初手からあらず冷素麺	冷素麺	夏	19.8.20.
229	つるつるとまたつるつると冷素麺	冷素麺	夏	19.8.20.
230	つるつると啜る軽さよ冷素麺	冷素麺	夏	19.8.20.
231	食欲の無くて軽やか冷素麺	冷素麺	夏	19.8.20.
232	冷素麺つるつる啜る昼餉かな	冷素麺	夏	19.8.20.
233	蜩や夕餉始まる遍路宿	蜩	秋	19.8.21.
234	かなかなを背に磴下る遍路かな	蜩	秋	19.8.21.
235	かなかなの鳴きて灯の入る赤提灯	蜩	秋	19.8.21.
236	蜩に急き立てられつ山下る	蜩	秋	19.8.21.
237	蜩や夕刊配るバイク音	蜩	秋	19.8.21.
238	耳元にかなかなを聞く磨崖仏	蜩	秋	19.8.21.
239	蜩やピザ配達のバイク行く	蜩	秋	19.8.21.
240	だんだんとテンポ早まる法師蝉	法師蝉	秋	19.8.21.
241	狭庭に来火急を告げる法師蝉	法師蝉	秋	19.8.21.
242	さあさあとばかり急き立て法師蝉	法師蝉	秋	19.8.21.
243	アジテータかくのごとしと法師蝉	法師蝉	秋	19.8.21.
244	アジリては樹を移り行く法師蝉	法師蝉	秋	19.8.21.
245	持ち帰りどれもさび抜き握り鮨	鮨	夏	19.8.21.
246	つんと来るさびで覚えし鮨の味	鮨	夏	19.8.21.
247	つんと来るさびで背伸びつ鮨を知る	鮨	夏	19.8.21.
248	一口で食み切る鮨や江戸握り	鮨	夏	19.8.21.
249	つんと来るさびこそ命握り鮨	鮨	夏	19.8.21.
250	鮓食ひねえ森の石松舟で行く	鮨	夏	19.8.22.
251	したたりや悠久めきし自然体	したたり	夏	19.8.22.
252	熱中症ぴたりと止みて秋めきぬ	秋めく	秋	19.8.22.
253	屋外機音静まりて秋めきぬ	秋めく	秋	19.8.22.
254	宮型の霊柩車減り秋めきぬ	秋めく	秋	19.8.22.
255	宿題の絵日記溜まり秋めけり	秋めく	秋	19.8.22.
256	宿題に追い込みかかる涼新た	涼新た	秋	19.8.22.
257	道場の窓開け放ち秋凉し	秋凉し	秋	19.8.22.
258	本堂に風を呼び入れ涼新た	涼新た	秋	19.8.22.
259	谿深き揺るる吊り橋秋凉し	秋凉し	秋	19.8.22.
260	内定を取りて帰省子秋うらら	秋うらら	秋	19.8.22.
261	谿深し静寂切り裂き鹿鳴けり	鹿	秋	19.8.23.
262	宮島の海の鳥居や鹿鳴けり	鹿	秋	19.8.23.
263	雄鹿の恋の鳴き音や峪深し	鹿	秋	19.8.23.
264	奈良に来て七堂伽藍鹿鳴けり	鹿	秋	19.8.23.
265	葭原を仮の宿りの帰燕かな	帰燕	秋	19.8.23.
266	葭原の夜を膨らます帰燕かな	帰燕	秋	19.8.23.
267	葭原や帰燕万羽の寝息あり	帰燕	秋	19.8.23.
268	帰燕去り静寂戻りし葭の原	帰燕	秋	19.8.23.
269	一群の帰燕旅立つ葭の原	帰燕	秋	19.8.23.
270	案山子などどこ吹く風の稲雀	稲雀	秋	19.8.23.
271	旋回しまた田に戻る稲雀	稲雀	秋	19.8.23.
272	ドラマーを夢見てけふも石叩き	石叩き（＝鶺鴒）	秋	19.8.23.
273	礒鴫や水平線の大入日	鴫	秋	19.8.23.
274	落日の渚小走る鴫の影	鴫	秋	19.8.23.
275	落日の富士黒々と雁渡し	雁渡し	秋	19.8.23.
276	遠富士の影絵となりぬ雁渡し	雁渡し	秋	19.8.23.
277	秋の虹下校促す七つの子	秋の虹	秋	19.8.23.
278	秋の虹淡く儚く架かり消ゆ	秋の虹	秋	19.8.23.
279	秋虹や遍路唱へる般若経	秋の虹	秋	19.8.23.
280	遠山に稲妻走る予讃線	稲妻	秋	19.8.23.
281	ぎくしゃくとしたる国から雁渡し	雁渡し	秋	19.8.23.
282	四万十の清流走る雁渡し	雁渡し	秋	19.8.23.
283	猛暑日のいつか遠のき雁渡し	雁渡し	秋	19.8.23.
284	子規庵の狭庭撫でゆく雁渡し	雁渡し	秋	19.8.23.
285	名のごとく異相際立つ鶏頭花	鶏頭花	秋	19.8.23.
286	鶏頭の供花に加はる秋彼岸	鶏頭	秋	19.8.23.
287	野仏を確と囲みし鶏頭花	鶏頭花	秋	19.8.23.
288	かなかなの鳴ひて人恋ふ日暮れかな	かなかな	秋	19.8.24.
289	かなかなや類想類句また一句	かなかな	秋	19.8.24.
290	かなかなの声に家路の足速む	かなかな	秋	19.8.24.
291	蜩や飛ぶがごとくに山下る	蜩	秋	19.8.24.
292	蜩や翁座像の回る刻	蜩	秋	19.8.24.
293	かなかなの鳴ひて暮れ行く無住寺	かなかな	秋	19.8.24.
294	かなかなに家路の歩速上がりけり	かなかな	秋	19.8.24.
295	山寺や蜩を聞く磴千段	かなかな	秋	19.8.24.
296	かなかなや太宰の眠る禅林寺	かなかな	秋	19.8.24.
297	かなかなを背に聞きながら鍬洗ふ	かなかな	秋	19.8.24.
298	蜩の鳴ひて足止む桔梗門	蜩	秋	19.8.24.
299	かなかなや早や灯の入りし赤提灯	かなかな	秋	19.8.24.
300	かなかなの楷書崩さぬ鳴き音かな	かなかな	秋	19.8.24.
301	かなかなの下山急がす日暮れかな	かなかな	秋	19.8.24.
302	子規庵の狭庭に確と鶏頭花	鶏頭	秋	19.8.24.
303	鶏頭や分厚き花に触れてみる	鶏頭	秋	19.8.24.
304	鶏頭の花に触るれば陽の温み	鶏頭	秋	19.8.25.
305	縄文の野に縄文の子と鶏頭	鶏頭	秋	19.8.25.
306	縄文の野を駆ける子や鶏頭花	鶏頭	秋	19.8.25.
307	鶏頭は異相の花よ放ち鶏	鶏頭	秋	19.8.25.
308	鶏頭花束ねて運ぶ猫車	鶏頭	秋	19.8.25.
309	鶏頭や憮然としたる面構へ	鶏頭	秋	19.8.25.
310	鶏頭の花園明るしバーベキュー	鶏頭	秋	19.8.25.
311	花箱の鶏頭溢るる花屋かな	鶏頭	秋	19.8.25.
312	一癖も二癖もあり鶏頭花	鶏頭	秋	19.8.25.
313	鶏頭に出合へば浮かぶ子規綾子	鶏頭	秋	19.8.25.
314	放ち鶏啄ばむ庭や鶏頭花	鶏頭	秋	19.8.25.
315	六地蔵一本ずつの鶏頭花	鶏頭	秋	19.8.25.
316	鶏頭を振ればきゃっきゃっと嬰笑ふ	鶏頭	秋	19.8.25.
317	鶏頭や好きと言ふ子と首振る子	鶏頭	秋	19.8.25.
318	冷麦の腹爽やかに泳ぎをり	冷麦	夏	19.8.25.
319	渓流の響く茶店や冷素麺	冷素麺	夏	19.8.25.
320	ゆったりと胃の腑泳ぎし冷素麺	冷素麺	夏	19.8.25.
321	秋の声補聴器外し聞きにけり	秋の声	秋	19.8.26.
322	しみじみと耳傾ける秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
323	一葉の汲みし井戸汲む秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
324	茹で蕎麦の水切る音や秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
325	払子の瀧四季に音変え秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
326	卒塔婆のかたりことりと秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
327	潮騒のコード変わりて秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
328	大川や秋の声聞く芭蕉像	秋の声	秋	19.8.26.
329	見得切りし仁王も聞くや秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
330	秋の声詠めば類想類句かな	秋の声	秋	19.8.26.
331	秋の声ひとすじ添へし松花堂	秋の声	秋	19.8.26.
332	水切りの石に纏はる秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
333	水切りの石に乗りたる秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
334	水切りの石滑らかに秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
335	秋の声添へて出さるる松花堂	秋の声	秋	19.8.26.
336	懐石に一筋添へし秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
337	懐石や彩に添ふ秋の声	秋の声	秋	19.8.26.
338	秋蝉や蜩なぞに負けるなよ	秋の蝉	秋	19.8.26.
339	出遅れは出遅れ同士秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.26.
340	破れ鍋に綴じ蓋でよし秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.26.
341	熱中症終息待たず秋桜	秋桜	秋	19.8.27.
342	照り返し互ひに眩し黄コスモス	コスモス	秋	19.8.27.
343	白粉花路地にあふれて午後三時	白粉花	秋	19.8.27.
344	白粉花点描で描く赤白黄	白粉花	秋	19.8.27.
345	白粉花ホーム仕切りし無人駅	白粉花	秋	19.8.27.
346	コスモスの縺れ離れし日がなかな	コスモス	秋	19.8.27.
347	コスモスの縺れ離れてまた縺れ	コスモス	秋	19.8.27.
348	揺れ遊ぶコスモスの野に酔ひにけり	コスモス	秋	19.8.27.
349	風止みてコスモス時を持て余す	コスモス	秋	19.8.27.
350	大揺れに揺れて愛でらる秋桜	秋桜	秋	19.8.27.
351	先駆けの黄花コスモス日に眩し	コスモス	秋	19.8.27.
352	一巡り富士見櫓の赤とんぼ	赤とんぼ	秋	19.8.28.
353	富士見櫓白き壁映ゆ赤とんぼ	赤とんぼ	秋	19.8.28.
354	富士見櫓白き壁映ゆ秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.28.
355	秋蝉や松の廊下の碑が一つ	秋の蝉	秋	19.8.28.
356	千鳥ヶ淵墓苑鎮まり秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.28.
357	クリムトや女に呑ます天の川	天の川	秋	19.8.28.
358	漁火や銀河と競ふごと増ゆる	銀河	秋	19.8.28.
359	生命の鼓動はありや天の川	天の川	秋	19.8.28.
360	銀漢やロープウエイの最終便	銀漢	秋	19.8.28.
361	銀漢に対座して飲む大吟醸	銀漢	秋	19.8.28.
362	杓手に銀河掬ひし夢の中	銀河	秋	19.8.28.
363	ペット吹く人影一つ大銀河	銀河	秋	19.8.28.
364	山里に人居らずなり天の川	天の川	秋	19.8.28.
365	銀漢に光のしぶき巨鯨吼ゆ	銀漢	秋	19.8.28.
366	鶏頭の花に触れたり陽の温み	鶏頭	秋	19.8.29.
367	白粉花繚乱となる午後三時	白粉花	秋	19.8.29.
368	啄木鳥や湖面に映る逆富士	啄木鳥	秋	19.8.29.
369	削岩機唸る石切りけらつつき	けらつつき	秋	19.8.29.
370	脳震盪起こさぬ不思議けらつつき	けらつつき	秋	19.8.29.
371	啄木鳥の静寂深める連打音	啄木鳥	秋	19.8.29.
372	峪深し乾きし響きけらつつき	けらつつき	秋	19.8.29.
373	連打して朝餉始めしけらつつき	けらつつき	秋	19.8.29.
374	幹掴み削岩機のごとけらつつき	けらつつき	秋	19.8.29.
375	けらつつき打音響かせ朝餉かな	けらつつき	秋	19.8.29.
376	勤行の木魚と競ふけらつつき	けらつつき	秋	19.8.29.
377	軽やかにリズム刻みしけらつつき	けらつつき	秋	19.8.29.
378	一汁に一切菜でよし今年米	今年米	秋	19.8.30.
379	水加減控へ目に炊く今年米	今年米	秋	19.8.30.
380	神領の伊勢から届く今年米	今年米	秋	19.8.30.
381	新米の試食が旨し塩にぎり	新米	秋	19.8.30.
382	新米と墨書二文字鮨を食ふ	新米	秋	19.8.30.
383	新米の結び持参の食事会	新米	秋	19.8.30.
384	新米のおにぎり三種食事会	新米	秋	19.8.30.
385	一膳が二膳となりし今年米	今年米	秋	19.8.30.
386	鮭たらこ梅干にぎり今年米	今年米	秋	19.8.30.
387	給食は地産地消の今年米	今年米	秋	19.8.30.
388	新米の袋山積み道の駅	新米	秋	19.8.30.
389	新米の白飯売れる総菜店	新米	秋	19.8.30.
390	新米を炊ひて今年も柔らかめ	新米	秋	19.8.30.
391	ブランド名競ひて売らる今年米	今年米	秋	19.8.30.
392	花火する家も子供も居ぬ街に	花火	夏	19.8.30.
393	花火する家も子供も居らぬ街	花火	夏	19.8.30.
394	花火する家も子供も居なひ街	花火	夏	19.8.30.
395	漁火に華やぎ加へ流れ星	流れ星	秋	19.8.31.
396	願ひごと言ひ切らぬ間の流れ星	流れ星	秋	19.8.31.
397	流れ星どれも斜めに走りけり	流れ星	秋	19.8.31.
398	欠けたるはプラネタリュウム走る星	流れ星	秋	19.8.31.
399	漁火にエールを送る流れ星	流れ星	秋	19.8.31.
400	花火する子らの背中を流れ星	花火・ 流れ星	夏秋	19.8.31.
401	流星の音なきショーや山の宿	流れ星	秋	19.8.31.
402	願ひごと愚痴めいてくる流れ星	流れ星	秋	19.8.31.
403	連れ合ふて夜空を過る流れ星	流れ星	秋	19.8.31.
404	流れ星また流れ星小海線	流れ星	秋	19.8.31.
405	山寺や磴千段の流れ星	流れ星	秋	19.8.31.
406	休耕田埋めて向日葵畑かな	向日葵	夏	19.8.31.
407	流れ星七つ数へし野道かな	流れ星	秋	19.8.31.
408	野仏と共に数へし流れ星	流れ星	秋	19.8.31.
409	願ひごと三度託せし流れ星	流れ星	秋	19.8.31.
410	山里の静寂深めるけらつつき	けらつつき	秋	19.8.31.
411	啄木鳥のドラム軽やか無住寺	啄木鳥	秋	19.8.31.
412	啄木鳥やひそと剥落しらかんば	啄木鳥	秋	19.8.31.
413	秋風や投句遺して句友逝く	秋風	秋	19.9.1.
414	頼りなき歩調追ひ越す秋の風	秋風	秋	19.9.1.
415	卒塔婆を鳴らし過ぎ行く秋の風	秋風	秋	19.9.1.
416	釣り人の背中抜け行く秋の風	秋風	秋	19.9.1.
417	秋風や荒川線に乗ってみる	秋風	秋	19.9.1.
418	秋風と競ひて走る荒川線	秋風	秋	19.9.1.
419	荒川線色なき風の街を行く	色なき風	秋	19.9.1.
420	素風吹く街川昏き神田川	素風	秋	19.9.1.
421	素風吹くニコライ堂や髭の僧	素風	秋	19.9.1.
422	聖橋素風の底の神田川	素風	秋	19.9.1.
423	正装の髭の主教や秋うらら	秋うらら	秋	19.9.1.
424	のたまはく孔子巨像や天高し	天高し	秋	19.9.1.
425	秋風や川面の深き聖橋	秋風	秋	19.9.1.
426	かなかなや亭主の灯す赤提灯	かなかな	秋	19.9.1.
427	襁褓干す昭和も遠し秋うらら	秋うらら	秋	19.9.1.
428	ねこじゃらし庭にはダメと妻の声	ねこじゃらし	秋	19.9.1.
429	かなかなや赤提灯に灯の入りぬ	かなかな	秋	19.9.1.
430	銀漢に光のしぶき集魚灯	銀漢	秋	19.9.2.
431	流星雨心ゆくまで浴びし夜	流星雨	秋	19.9.2.
432	祖谷の里峪深くして星走る	星走る	秋	19.9.2.
433	果てもなく日ごと夜ごとの流れ星	流れ星	秋	19.9.2.
434	恐竜の眼にも映りし流れ星	流れ星	秋	19.9.2.
435	恐竜の咆哮止まず流れ星	流れ星	秋	19.9.2.
436	星流れ時も流れて行きにけり	流れ星	秋	19.9.2.
437	名指されてつと従ふや流れ星	流れ星	秋	19.9.2.
438	星飛んでまた飛んで行く無言劇	星飛ぶ	秋	19.9.2.
439	流れ星虚空に響く擦過音	流れ星	秋	19.9.2.
440	宇宙塵瞬時見得を切る 流れ星	流れ星	秋	19.9.2.
441	急ぐなと言へども聞かぬ流れ星	流れ星	秋	19.9.2.
442	宇宙塵命の果ての流れ星	流れ星	秋	19.9.2.
443	恐竜の長き咆哮流れ星	流れ星	秋	19.9.2.
444	楷の木や素風過りし孔子廟	素風	秋	19.9.3.
445	黒光る孔子の廟や鰯雲	鰯雲	秋	19.9.3.
446	素風過ぐニコライ堂や髭の僧	素風	秋	19.9.3.
447	秋うらら弟子三千の孔子廟	秋うらら	秋	19.9.3.
448	秋天や昌平坂の孔子廟	秋天	秋	19.9.3.
449	楷の木や湯島聖堂初もみぢ	初もみぢ	秋	19.9.3.
450	楷の木や湯島聖堂薄もみぢ	薄もみぢ	秋	19.9.3.
451	色変へぬ松や仁徳説く孔子	色変へぬ松	秋	19.9.3.
452	色変へぬ松や湯島の孔子像	色変へぬ松	秋	19.9.3.
453	菊の香や静寂の中の孔子廟	菊	秋	19.9.3.
454	孔子像静寂にひそと木の実落つ	木の実落つ	秋	19.9.3.
455	秋天や深き川面の聖橋	秋天	秋	19.9.3.
456	鶏頭の花に触るるや陽の温み	鶏頭の花	秋	19.9.3.
457	鶏頭の花に触れけり陽の温み	鶏頭の花	秋	19.9.3.
458	大口の鯉の呼気鳴る秋の水	秋の水	秋	19.9.4.
459	大口の鯉の呼気聞く秋の水	秋の水	秋	19.9.4.
460	鯉の呼気荒々しきや秋の水	秋の水	秋	19.9.4.
461	喉鳴らす鯉の大口水の秋	水の秋	秋	19.9.4.
462	胡麻叩く農婦の顔に笑みはなし	胡麻叩く	秋	19.9.4.
463	間引く手にたちまち萎る貝割れ菜	貝割れ菜	秋	19.9.4.
464	味噌つけて齧れば香る新生姜	新生姜	秋	19.9.4.
465	一畝を終えて間引菜ひと握り	間引菜	秋	19.9.4.
466	庭摘みの紫蘇の実炊きて食前酒	紫蘇の実	秋	19.9.4.
467	入日浴びひと際赤き鷹の爪	鷹の爪	秋	19.9.4.
468	けれんなく長きを垂れし糸瓜かな	糸瓜	秋	19.9.4.
469	ずっしりと重きを垂るる大糸瓜	糸瓜	秋	19.9.4.
470	細き柄のよく耐えてをり大糸瓜	糸瓜	秋	19.9.4.
471	のんしゃらん棚傾がせて大糸瓜	糸瓜	秋	19.9.4.
472	碁敵の手土産なぜか大糸瓜	糸瓜	秋	19.9.4.
473	軒先に糸瓜欠かせぬ子規旧居	糸瓜	秋	19.9.4.
474	勝手口覗く影あり藪枯らし	藪枯らし	秋	19.9.4.
475	ほっとけば狭庭仕切りし藪枯らし	藪枯らし	秋	19.9.4.
476	節介をやく人に似て藪枯らし	藪枯らし	秋	19.9.4.
477	廃屋の庭わが物に藪枯らし	藪枯らし	秋	19.9.4.
478	引き抜ける手応へ楽し藪枯らし	藪枯らし	秋	19.9.4.
479	引き抜けばなほずるずると藪枯らし	藪枯らし	秋	19.9.4.
480	引き抜くほど留飲下がる藪枯らし	藪枯らし	秋	19.9.4.
481	月島のもんじゃ通りや鰯雲	鰯雲	秋	19.9.4.
482	ひぐらしや鏝で頬張るもんじゃ焼き	蜩	秋	19.9.4.
483	秋雲や昭和の名残りもんじゃ焼き	秋雲	秋	19.9.4.
484	秋冷やもんじゃ通りはソースの香	秋冷	秋	19.9.4.
485	引き抜かれ引き剥がされて藪枯らし	藪枯らし	秋	19.9.5.
486	雲丹たらこ鮭の結びや鰯雲	鰯雲	秋	19.9.5.
487	図書室の音無き音や秋の雲	秋の雲	秋	19.9.5.
488	免許証返しママチャリ鰯雲	鰯雲	秋	19.9.5.
489	鶏頭につくずく思ふ異相なり	鶏頭	秋	19.9.5.
490	駿河台坂ゆるやかに秋の雲	秋の雲	秋	19.9.5.
491	括られて十日の菊となりにけり	十日の菊	秋	19.9.5.
492	艶やかに爆ぜるとき待つ椿の実	椿の実	秋	19.9.5.
493	赤き茱萸ふふめば渋き甘さかな	茱萸	秋	19.9.5.
494	枸杞の実の赤きを透かす日の光り	枸杞の実	秋	19.9.5.
495	無花果の食えと開きしおちょぼ口	無花果	秋	19.9.5.
496	漁火や銀河と競ふかに増ゆる	銀河	秋	19.9.5.
497	孔子廟十日の菊の香り立つ	十日の菊	秋	19.9.5.
498	回りけりトトロの森の木の実独楽	木の実独楽	秋	19.9.5.
499	孔子像色なき風の中に立つ	色なき風	秋	19.9.6.
500	聖橋川面に映る鰯雲	鰯雲	秋	19.9.6.
501	孔子像仰げば高き秋の空	秋空	秋	19.9.6.
502	秋髙しポニー嘶く明神社	秋高し	秋	19.9.6.
503	秋空や甘酒旨し明神社	秋空	秋	19.9.6.
504	秋天に甘酒旨し明神社	秋天	秋	19.9.6.
505	秋の声耳傾ける孔子像	秋の声	秋	19.9.6.
506	秋風や川面の深き聖橋	秋風	秋	19.9.6.
507	深き谿跨ぐ吊り橋秋の山	秋	秋	19.9.6.
508	Ｖ字谷粧ふ山を仰ぎ見る	山粧ふ	秋	19.9.6.
509	橋脚を素風抜け行く聖橋	素風	秋	19.9.6.
510	秋天や甘酒旨し神田宮	秋天	秋	19.9.6.
511	爽やかに球技をさばくホイッスル	爽やか	秋	19.9.7.
512	秋冷や縁なし眼鏡して行かむ	秋冷	秋	19.9.7.
513	秋冷や休憩に入る屋外機	秋冷	秋	19.9.7.
514	青梨を芯まで齧る昭和かな	梨	秋	19.9.7.
515	二十世紀梨酸っぱき芯も齧りたり	梨	秋	19.9.7.
516	梨一個齧る幸せ昭和の子	梨	秋	19.9.7.
517	ラフランスしばし飾りて食しけり	梨	秋	19.9.7.
518	長十郎梨かぶりつきたる昭和かな	梨	秋	19.9.7.
519	白桃の皮剥く手間の長さかな	白桃	秋	19.9.7.
520	皮剥けば水の滴る桃啜る	桃	秋	19.9.7.
521	白桃の薄皮を剥く白き指	白桃	秋	19.9.7.
522	沖縄やざわわざわわと黍嵐	黍嵐	秋	19.9.7.
523	倶利伽羅の刺青消えし秋祭	秋祭	秋	19.9.7.
524	担ぎ手はネットで募る秋祭	秋祭	秋	19.9.7.
525	蔵を出ぬ神輿寂しき秋祭	秋祭	秋	19.9.7.
526	小海線車窓を過る流れ星	流れ星	秋	19.9.7.
527	雁渡しひゅうと抜け行く聖橋	雁渡し	秋	19.9.7.
528	青北風や高圧線の重低音	青北風	秋	19.9.7.
529	青北風や電線唸る重低音	青北風	秋	19.9.7.
530	渓谷を南へ走る雁渡し	雁渡し	秋	19.9.7.
531	一年ずつ小刻みに生き雁渡し	雁渡し	秋	19.9.7.
532	手水舎の杓転がす雁渡し	雁渡し	秋	19.9.7.
533	秋雲や昭和の香りもんじゃ焼き	秋雲	秋	19.9.8.
534	肩車の嬰手を伸ばす天の川	天の川	秋	19.9.8.
535	肩車の嬰と仰ぎし天の川	天の川	秋	19.9.8.
536	烏賊釣りの漁火眩し天の川	天の川	秋	19.9.8.
537	月島のもんじゃ通りや秋の虹	秋の虹	秋	19.9.8.
538	見上ぐれば儚き色の秋の虹	秋の虹	秋	19.9.8.
539	秋の虹てんでに向けるスマホかな	秋の虹	秋	19.9.8.
540	遠山に稲妻走る無言劇	稲妻	秋	19.9.8.
541	遠山に折り目正しき稲光	稲光	秋	19.9.8.
542	秋夕焼け客足絶えぬ御徒町	秋夕焼	秋	19.9.8.
543	秋夕焼けバス停長き人の列	秋夕焼	秋	19.9.8.
544	富士山頂豊穣極む天の川	天の川	秋	19.9.8.
545	年ごとに狂暴となる野分来る	野分	秋	19.9.9.
546	野分去り重九の朝や乱れ菊	野分・重九	秋	19.9.9.
547	野分去り鉢物戻す元の位置	野分	秋	19.9.9.
548	野分去り日差し戻りし重九かな	野分・重九	秋	19.9.9.
549	野分去り重九の朝となりにけり	野分・重九	秋	19.9.9.
550	野分去り朝飯前の後始末	野分	秋	19.9.9.
551	台風に大風呂敷を被せたし	台風	秋	19.9.9.
552	台風の置き忘れたる風一陣	台風	秋	19.9.9.
553	野分あとはたはたはたとヘリの音	野分	秋	19.9.9.
554	新豆腐金釘で書く小店かな	新豆腐	秋	19.9.9.
555	新豆腐旨ひ気のする夕餉かな	新豆腐	秋	19.9.9.
556	秋灯やピザ配達のバイク音	秋灯	秋	19.9.10.
557	傾ぎ伏すままに十日の菊畑	十日の菊	秋	19.9.10.
558	秋灯の家路を阻む赤提灯	秋灯	秋	19.9.10.
559	内定の通知を照らす秋灯	秋灯	秋	19.9.10.
560	秋灯や追ひ込みかける受験生	秋灯	秋	19.9.10.
561	秋灯や板書の踊る塾講師	秋灯	秋	19.9.10.
562	添削の子らの作文読む秋灯	秋灯	秋	19.9.10.
563	サスペンス輝度下げて読む秋ともし	秋灯	秋	19.9.10.
564	飛蚊症一匹踊る秋ともし	秋灯	秋	19.9.10.
565	長谷寺の階段廊下秋ともし	秋灯	秋	19.9.10.
566	にごり酒ごくりと飲みつ飛騨想ふ	にごり酒	秋	19.9.10.
567	濁り酒片口で出る鄙の宿	濁り酒	秋	19.9.10.
568	先頭と末尾知りたき蟻の列	蟻	夏	19.9.10.
569	逃亡もはぐれも出さぬ蟻の列	蟻	夏	19.9.10.
570	教会のクルスに王手蔦紅葉	蔦紅葉	秋	19.9.10.
571	垂直をひたすら登り蔦紅葉	蔦紅葉	秋	19.9.10.
572	旧館の歴史の証蔦紅葉	蔦紅葉	秋	19.9.10.
573	建物を包む裏技蔦紅葉	蔦紅葉	秋	19.9.10.
574	秋天や青きドームのニコライ堂	秋天	秋	19.9.10.
575	天高く青きドームのニコライ堂	天高し	秋	19.9.10.
576	仙台堀映す秋空聖橋	秋空	秋	19.9.10.
577	天高し長き練塀孔子廟	天高し	秋	19.9.10.
578	秋天や甘酒名題神田宮	秋天	秋	19.9.10.
579	秋天や光と影の聖橋	秋天	秋	19.9.10.
580	鯊釣りの舟に埋まりし三番瀬	鯊釣り	秋	19.9.11.
581	犇めひて鰡の爆ぜ合ふ船溜まり	鰡	秋	19.9.11.
582	屋形船舫ふ運河や鰡飛べり	鰡飛ぶ	秋	19.9.11.
583	蜻蛉来て池面打つ尾の二度三度	蜻蛉	秋	19.9.11.
584	芦原や帰燕旅立つ朝まだき	帰燕	秋	19.9.11.
585	海原の低きを渡る帰燕かな	帰燕	秋	19.9.11.
586	落鮎や長き旅路の果て近し	落鮎	秋	19.9.11.
587	古民家の烟る囲炉裏や鵙日和	鵙日和	秋	19.9.11.
588	古民家の烟る囲炉裏や鵙高音	鵙高音	秋	19.9.11.
589	蜩の鳴ひて日暮れを寂びしめり	蜩	秋	19.9.11.
590	かなかなの鳴ひて淋しき日暮れかな	かなかな	秋	19.9.11.
591	日没を告げて蜩鳴き止みぬ	蜩	秋	19.9.11.
592	高原を吹き行く風や流れ星	流れ星	秋	19.9.12.
593	見上ぐればあつ流れ星また一つ	流れ星	秋	19.9.12.
594	ポケットのスマホ鳴るなり流れ星	流れ星	秋	19.9.12.
595	肌寒や炎暑が少し懐かしき	肌寒	秋	19.9.12.
596	肌寒やしみじみ吾は哺乳類	肌寒	秋	19.9.12.
597	肌寒し暖房までの端境期	肌寒	秋	19.9.12.
598	肌寒や猿山の猿笑ひをり	肌寒	秋	19.9.12.
599	肌寒に抱き合ふ二人燃え立ちぬ	肌寒	秋	19.9.12.
600	流れ星瞬間芸の奥義かな	流れ星	秋	19.9.12.
601	君がゐて僕がゐて天の川	天の川	秋	19.9.12.
602	毛深きは猿山の猿肌寒し	肌寒	秋	19.9.12.
603	小さきが大きを倒す相撲かな	相撲	秋	19.9.12.
604	鳩を吹く遊びも消えて令和かな	鳩を吹く	秋	19.9.13.
605	鳩を吹く子供もをらじ令和かな	鳩を吹く	秋	19.9.13.
606	葛根掘る今も昔も男衆	葛根掘る	秋	19.9.13.
607	地にありてやはり逞し葛根引掘る	葛根掘る	秋	19.9.13.
608	どれもみな人の背丈の葛根掘る	葛根掘る	秋	19.9.13.
609	男衆の黙々と掘る吉野葛	葛掘る	秋	19.9.13.
610	パソコンに向ひ夜なべの令和かな	夜なべ	秋	19.9.13.
611	庭園の静寂深むる添水かな	添水	秋	19.9.13.
612	青竹の色瑞々し添水かな	添水	秋	19.9.13.
613	青竹の尻打つ響きばたつたんこ	ばつたんこ	秋	19.9.13.
614	庭園の静寂伝へるししおどし	鹿威し	秋	19.9.13.
615	水を吐き尻打つ不思議ばつたんこ	ばつたんこ	秋	19.9.13.
616	黄落やドローンたちまち鳥観図	黄落	秋	19.9.14.
617	旧一高緑も残る黄落期	黄落期	秋	19.9.14.
618	クリムトの画集広げる黄落期	黄落期	秋	19.9.14.
619	黄落や東大生も手にスマホ	黄落	秋	19.9.14.
620	黄落や眼に一点の飛蚊症	黄落	秋	19.9.14.
621	陵は黄落の道奥深く	黄落	秋	19.9.14.
622	黄落や母子の馬のゐる牧場	黄落	秋	19.9.14.
623	クリムトの女の気分黄落期	黄落期	秋	19.9.14.
624	黄落の校舎の先にレストラン	黄落	秋	19.9.14.
625	学生の行き交う並木黄落期	黄落期	秋	19.9.14.
626	清掃員いざ出陣の黄落期	黄落期	秋	19.9.14.
627	黄落の並木で靴の紐結ぶ	黄落	秋	19.9.14.
628	十六夜の月にお辞儀をして帰る	十六夜	秋	19.9.14.
629	十六夜や異国語飛びし雷門	十六夜	秋	19.9.14.
630	下るほど水嵩を増す落し水	落し水	秋	19.9.14.
631	頭垂る稲穂促す落し水	落し水	秋	19.9.15.
632	役目終え田を離れ行く落し水	落し水	秋	19.9.15.
633	千枚田海へと走る落し水	落し水	秋	19.9.15.
634	水争ひ記す村史や落し水	落し水	秋	19.9.15.
635	休耕田増えて寂しき落し水	落し水	秋	19.9.15.
636	落し水これが最後と老農夫	落し水	秋	19.9.15.
637	落し水集めて走る用水路	落し水	秋	19.9.15.
638	田を回り稔り確かめ落し水	落し水	秋	19.9.15.
639	用水路弾む瀬音や落し水	落し水	秋	19.9.15.
640	学習田稔り豊かに落し水	落し水	秋	19.9.15.
641	用水路音軽やかに落し水	落し水	秋	19.9.15.
642	不意打ちに泥鰌慌てる落し水	落し水	秋	19.9.15.
643	青竹の色瑞々しばったんこ	ばったんこ	秋	19.9.16.
644	新生姜下げて家路の足速む	新生姜	秋	19.9.16.
645	間引菜の引けばたちまちヘタリけり	間引菜	秋	19.9.16.
646	酢につけてほのと紅さす新生姜	新生姜	秋	19.9.16.
647	爪先でしごき紫蘇の実摘みにけり	紫蘇の実	秋	19.9.16.
648	炊き立ての紫蘇の実あてに食前酒	紫蘇の実	秋	19.9.16.
649	紫蘇の実の佃煮でやる食前酒	紫蘇の実	秋	19.9.16.
650	秋茄子の鉄火味噌よし母の味	秋茄子	秋	19.9.16.
651	きくきくと音立て洗ふ秋茄子	秋茄子	秋	19.9.16.
652	どれもみな腰を絞りて青瓢	青瓢	秋	19.9.16.
653	十余り狭庭賑はす青瓢	青瓢	秋	19.9.16.
654	赤白と畑の左右に蕎麦の花	蕎麦の花	秋	19.9.16.
656	宅造地気付けば揺るるゐのこ草	ゐのこ草	秋	19.9.17.
657	吾もまたあの一本の猫じゃらし	猫じゃらし	秋	19.9.17.
658	逞しや黄花コスモス数増せり	コスモス	秋	19.9.17.
659	雀斑の子のゐずなりぬ杜鵑草	杜鵑草（ほととぎす）	秋	19.9.17.
660	恥じろうてゐるかに咲くや杜鵑草	杜鵑草	秋	19.9.17.
661	排気ガス浴びて逞し富士薊	富士薊	秋	19.9.17.
662	説明版無き一叢や鳥かぶと	鳥かぶと	秋	19.9.17.
663	山路来て日当る窪の濃竜胆	濃竜胆	秋	19.9.17.
664	六地蔵一本ずつの濃りんだう	濃竜胆	秋	19.9.17.
665	釣舟草ゆらりゆらりと風の波	釣舟草	秋	19.9.17.
666	蜜吸ひの虫が揺らすか黄釣舟	黄釣舟	秋	19.9.17.
667	風吹けば屈託のない猫じゃらし	猫じゃらし	秋	19.9.17.
668	道の端でじゃれ合ってゐる猫じゃらし	猫じゃらし	秋	19.9.17.
669	生真面目に横一列に紫苑咲く	紫苑	秋	19.9.17.
670	人の丈越えて花咲く紫苑かな	紫苑	秋	19.9.17.
671	高すぎることの良し悪し紫苑咲く	紫苑	秋	19.9.17.
672	吾亦紅見つけ足止む老一団	吾亦紅	秋	19.9.17.
673	なんとなく供花に加えし吾亦紅	吾亦紅	秋	19.9.17.
674	風に揺れあらと気付けり吾亦紅	吾亦紅	秋	19.9.17.
675	はあと一つ溜息つひて九月果つ	九月	秋	19.9.17.
676	十月や頬を撫で行く風の道	十月	秋	19.9.18.
677	十月の岬に立ちて風を聞く	十月	秋	19.9.18.
678	十月の風の抜け行く竜馬像	十月	秋	19.9.18.
679	すがすがし香を遺したる刈田かな	刈田	秋	19.9.18.
680	刈田道ほのかに甘き香りあり	刈田	秋	19.9.18.
681	剃髪の雲水が行く刈田かな	刈田	秋	19.9.18.
682	次々に虎刈りになる棚田かな	刈田	秋	19.9.18.
683	杉玉の緑が告げる新酒かな	新酒	秋	19.9.18.
684	とくとくと音の弾みし新走り	新走り	秋	19.9.18.
685	酒の味覚えし初め濁り酒	濁り酒	秋	19.9.18.
686	一日に十句を詠みて菊膾	菊膾	秋	19.9.19.
687	夭折の弟妹こひし菊膾	菊膾	秋	19.9.19.
688	彩をしゃきさやきと食む菊膾	菊膾	秋	19.9.19.
689	彩をしゃきさやき食めり菊膾	菊膾	秋	19.9.19.
690	とろろ汁音立てて食む夕餉かな	とろろ汁	秋	19.9.19.
691	麦飯の日々懐かしくとろろ汁	とろろ汁	秋	19.9.19.
692	熱々の飯にざぶりととろろ汁	とろろ汁	秋	19.9.19.
693	旅人のかき込んでゆくとろろ汁	とろろ汁	秋	19.9.19.
694	おしぼりで指先拭きつ衣被	衣被	秋	19.9.19.
695	味噌も良し醤油も旨し衣被	衣被	秋	19.9.19.
696	味噌も良し紫も旨し衣被	衣被	秋	19.9.19.
697	一粒を生み出す一花稲のはな	稲の花	秋	19.9.19.
698	一粒のその一粒に稲の花	稲の花	秋	19.9.19.
699	白飯になる日夢見て稲のはな	稲の花	秋	19.9.19.
700	稲の花咲きて祈りの農夫かな	稲の花	秋	19.9.19.
701	かそけくも勁き命の稲の花	稲の花	秋	19.9.19.
702	日を呼びて越後平野は稲の花	稲の花	秋	19.9.19.
703	先がけて稲の花咲く早稲田かな	稲の花	秋	19.9.19.
704	ひそやかに稔り支度や稲の花	稲の花	秋	19.9.19.
705	バーベキュー焼きもろこしに人の列	もろこし	秋	19.9.19.
706	刈田道ほのかに甘き香を吸ひぬ	刈田道	秋	19.9.19.
707	おはようと声をかけたり蛍草	蛍草	秋	19.9.20.
708	朝刊を抜けば眼に入る蛍草	蛍草	秋	19.9.20.
709	露草の色も呑み込み深呼吸	露草	秋	19.9.20.
710	花屋では見かけぬ不思議ほたる草	蛍草	秋	19.9.20.
711	朝露に濡れし朝刊ほたる草	蛍草	秋	19.9.20.
712	朝露に際立つ一花ほたる草	蛍草	秋	19.9.20.
713	散歩犬尿かけるなよ蛍草	蛍草	秋	19.9.20.
714	すすき原根方にひそと思草	思草	秋	19.9.20.
715	寄生する己恥じるや思ひ草	思草	秋	19.9.20.
716	ひそやかに生くる定めと思草	思草	秋	19.9.20.
717	草陰に異形恥じるか思ひ草	思草	秋	19.9.20.
718	岩に根を張りて逞し忍草	忍草	秋	19.9.20.
719	刈田道ほのかに甘き香のしたり	刈田道	秋	19.9.20.
720	舌に載せ玉噛むごとく新走	新走	秋	19.9.20.
721	刈田道ほのかに稲の香を残す	刈田道	秋	19.9.21.
722	佇めば稲の香残る刈田かな	刈田	秋	19.9.21.
723	道問へば木犀の香で教へられ	木犀	秋	19.9.21.
724	夕暮れて儚きを告ぐ木槿かな	木槿	秋	19.9.21.
725	通るたび木槿は花を改めぬ	木槿	秋	19.9.21.
726	通るたび底紅いつも新しき	底紅	秋	19.9.21.
727	遠目にも紛ふことなき花木槿	木槿	秋	19.9.21.
728	けふ合ひて明日は別の木槿かな	木槿	秋	19.9.21.
729	小公園人影なくて白木槿	白木槿	秋	19.9.21.
730	花木槿入れて自撮りの女高生	花木槿	秋	19.9.21.
731	底紅や大口開ける池の鯉	底紅	秋	19.9.21.
732	逆さ富士映す湖畔やけらつつき	けらつつき	秋	19.9.21.
733	啄木鳥や湖畔のどかに連打音	啄木鳥	秋	19.9.21.
734	啄木鳥や湖畔に響く連打音	啄木鳥	秋	19.9.21.
735	独りかな話しようよ秋うらら	秋うらら	秋	19.9.21.
736	秋うらら呟ひてみて話そうか	秋うらら	秋	19.9.21.
737	秋蝉のじいとだけ鳴き去り行けり	秋蝉	秋	19.9.22.
738	とりどりの源氏名競ふ今年米	今年米	秋	19.9.22.
739	とりどりの源氏名楽し今年米	今年米	秋	19.9.22.
740	踊子の名かと紛ひし今年米	今年米	秋	19.9.22.
741	一汁に一菜でよし今年米	今年米	秋	19.9.22.
742	新米の何も入れない塩にぎり	新米	秋	19.9.22.
743	新米の菜は刺身でいただきぬ	新米	秋	19.9.22.
744	晩酌をさっと切り上げ栗ご飯	栗飯	秋	19.9.22.
745	パソコンに向ひキー打つ夜なべかな	夜なべ	秋	19.9.22.
746	信濃路や蕎麦を刈りゆくコンバイン	蕎麦刈	秋	19.9.22.
747	ジーンズで副住職の盆支度	盆支度	秋	19.9.22.
748	神領の五十鈴の水や今年米	今年米	秋	19.9.22.
749	漁火に飛び込むごとく流れ星	流れ星	秋	19.9.22.
750	露天風呂薄き湯けむり星走る	星走る	秋	19.9.22.
751	露天風呂星空過る流れ星	流れ星	秋	19.9.22.
752	海原に流星走る室戸岬	流れ星	秋	19.9.22.
753	漁火に光影走る流れ星	流れ星	秋	19.9.22.
754	漁火にエールして果つ流れ星	流れ星	秋	19.9.22.
755	間をはかるごとくに過る流れ星	流れ星	秋	19.9.22.
756	八十路来て流星のごと終りたし	流れ星	秋	19.9.22.
757	秋風に身揺るぎもせず孔子像	秋風	秋	19.9.22.
758	廻し一本人生託す相撲かな	相撲	秋	19.9.22.
759	ニコライ堂青きドームに鰯雲	鰯雲	秋	19.9.22.
760	星走る宙に響きし擦過音	星走る	秋	19.9.23.
761	流れ星宙に響きし擦過音	流れ星	秋	19.9.23.
762	流星の宙に残せし擦過音	流れ星	秋	19.9.23.
763	炎上げ大気貫く流れ星	流れ星	秋	19.9.23.
764	遠花火音無き空を星走る	星走る	秋	19.9.23.
765	光の尾曳きて岬の夜這星	夜這星	秋	19.9.23.
766	常夜灯めきしコンビニ流れ星	流れ星	秋	19.9.23.
767	海原に潮吹く鯨流れ星	流れ星	秋	19.9.23.
768	恋焦がれ一直線に夜這星	夜這星	秋	19.9.23.
769	銃火なく砲煙もなく流れ星	流れ星	秋	19.9.23.
770	秋風や標高高き小海線	秋風	秋	19.9.23.
771	風紋のゆるきカーブや秋の風	秋風	秋	19.9.23.
772	戸袋をかたりことりと秋の風	秋風	秋	19.9.23.
773	秋風に鬨の声聞く古戦場	秋風	秋	19.9.23.
774	摺り足を忘ればたばた負け相撲	相撲	秋	19.9.23.
775	うそ寒や改憲叫ぶ国の末	うそ寒	秋	19.9.24.
776	ほろほろとしみじみと飲む温め酒	温め酒	秋	19.9.24.
777	ほろほろと臓腑に滲みる温め酒	温め酒	秋	19.9.24.
778	ほろほろと飲めば沁み入る温め酒	温め酒	秋	19.9.24.
779	道の端に見つけて嬉し野紺菊	野紺菊	秋	19.9.24.
780	野紺菊一花ずつ挿し六地蔵	野紺菊	秋	19.9.24.
781	貴船菊菊一族にあらねども	貴船菊	秋	19.9.24.
782	湯気立ちて河原おちこち芋煮会	芋煮会	秋	19.9.24.
783	風ひょうひょう吹きし河原の芋煮かな	芋煮	秋	19.9.24.
784	鍋材料一式借りし芋煮かな	芋煮	秋	19.9.24.
785	去来忌や日暮れに沈む羅漢像	去来忌	秋	19.9.24.
786	山寺の夕べの鐘や去来の忌	去来忌	秋	19.9.24.
787	野菊をば一花ずつ挿し六地蔵	野菊	秋	19.9.25.
788	秋晴や遠見の富士に深呼吸	秋晴	秋	19.9.25.
789	秋晴やはたはたはたとヘリ過る	秋晴	秋	19.9.25.
790	秋晴や若い女性に追ひ抜かる	秋晴	秋	19.9.25.
791	秋晴や三分遅れてバスが来る	秋晴	秋	19.9.25.
792	般若経聞ゆる札所秋の声	秋の声	秋	19.9.25.
793	秋の声啜るがごとく山家そば	秋の声	秋	19.9.25.
794	鰯雲鰯尽くしをいわし屋で	鰯雲	秋	19.9.25.
795	摩天楼見下ろしてゐる鰯雲	鰯雲	秋	19.9.25.
796	いわし雲野良あくびして立ち上がる	鰯雲	秋	19.9.25.
797	鰯雲河原でペット吹く少年	鰯雲	秋	19.9.25.
798	鰯雲国境線を跨ぎけり	鰯雲	秋	19.9.25.
799	鰯雲ふんと横向く野良のゴン	鰯雲	秋	19.9.25.
800	けふもまた海で弔ひ鰯雲	鰯雲	秋	19.9.25.
801	見上ぐればショールにしたき絹の雲	絹蜘蛛	秋	19.9.25.
802	黒猫のハイヒールで来る星月夜	星月夜	秋	19.9.25.
803	黒猫のハイヒールになる星月夜	星月夜	秋	19.9.25.
804	タンタロス不死身を嘆く星月夜	星月夜	秋	19.9.25.
805	狼の長き遠吠え星月夜	星月夜	秋	19.9.25.
806	手花火の子らの背中を流れ星	流れ星	秋	19.9.26.
807	祖谷の里峪深くして星奔る	流れ星	秋	19.9.26.
808	素風過ぐニコライ堂や露人僧	素風	秋	19.9.26.
809	楷の葉を揺する秋風孔子像	秋風	秋	19.9.26.
810	一葉舞ひまた一葉舞ふ孔子廟	落葉	秋	19.9.26.
811	孔子廟ひらり舞ひ出し秋の蝶	秋の蝶	秋	19.9.26.
812	秋天や微笑み浮かべ孔子像	秋天	秋	19.9.26.
813	微笑みし孔子の像や素風過ぐ	素風	秋	19.9.26.
814	秋夕焼イコン明るむニコライ堂	秋夕焼	秋	19.9.26.
815	秋夕焼け堂内暗きニコライ堂	秋夕焼	秋	19.9.26.
816	楷の葉を素風撫ぜゆく孔子像	素風	秋	19.9.27.
817	ニコライ堂ドームを染める秋夕焼け	秋夕焼	秋	19.9.27.
818	庭隅に寄り添ふ二輪彼岸花	彼岸花	秋	19.9.27.
819	木漏れ日や炎とも見ゆ曼殊沙華	曼殊沙華	秋	19.9.27.
820	野仏を包むかに咲く曼殊沙華	曼殊沙華	秋	19.9.27.
821	曼殊沙華朱一色の野道かな	曼殊沙華	秋	19.9.27.
822	曼殊沙華人人人の巾着田	曼殊沙華	秋	19.9.27.
823	曼殊沙華埋め尽くしたる巾着田	曼殊沙華	秋	19.9.27.
824	情念のめらめら燃ゆる曼殊沙華	曼殊沙華	秋	19.9.27.
825	二の丸へ続く道端の彼岸花	彼岸花	秋	19.9.27.
826	孔子廟ひらり舞ひ立つ秋の蝶	秋の蝶	秋	19.9.27.
827	孔子廟秋蝶舞ひし大扉	秋の蝶	秋	19.9.27.
828	天髙しポニー嘶く神田宮	天高し	秋	19.9.27.
829	天髙しポニー首振る神田宮	天高し	秋	19.9.27.
830	孔子廟ふと舞ひ立ちし秋の蝶	秋の蝶	秋	19.9.28.
831	秋風やニコライ堂に露人僧	秋風	秋	19.9.28.
832	秋うららニコライ堂に露人僧	秋うらら	秋	19.9.28.
833	秋風や吾を追ひ抜くハイヒール	秋風	秋	19.9.28.
834	秋うらら翁の投げるブーメラン	秋うらら	秋	19.9.28.
835	秋うらら笑窪持つ子と持たぬ子と	秋うらら	秋	19.9.28.
836	八十路来て余命数へる秋思かな	秋思	秋	19.9.28.
837	貞心尼深き秋思の五合庵	秋思	秋	19.9.28.
838	小仏へ辿る尾根道秋の声	秋の声	秋	19.9.28.
839	補聴器を外して聴けり秋の声	秋の声	秋	19.9.28.
840	半跏趺坐深き秋思の白鳳仏	秋思	秋	19.9.28.
841	仁王像まなこ見開き秋思かな	秋思	秋	19.9.28.
842	空泳ぐ鰯の群れや小鳥来る	小鳥来る	秋	19.9.28.
843	小鳥来て声の弾みし狭庭かな	小鳥来る	秋	19.9.28.
844	くっくくるる美声聞かせる鶉かな	鶉	秋	19.9.28.
845	鶉来てくっくくるると歌ひけり	鶉	秋	19.9.28.
846	老砥ぎ屋日向ぼこしつ刃物砥ぐ	日向ぼこ	秋	19.9.29.
847	秋うらら練塀長き孔子廟	秋うらら	秋	19.9.29.
838	楷の葉を揺する素風や孔子像	素風	秋	19.9.29.
849	孔子廟秋の蝶舞ふ大扉	秋の蝶	秋	19.9.29.
850	秋風過ぐニコライ堂や露人僧	秋風	秋	19.9.29.
851	秋天のニコライ堂や露人僧	秋天	秋	19.9.29.
852	秋澄むやニコライ堂に露人僧	秋澄む	秋	19.9.29.
853	秋澄めりニコライ堂に露人僧	秋澄む	秋	19.9.29.
854	ニコライ堂秋天仰ぐ露人僧	秋天	秋	19.9.29.
855	天髙し神馬はポニー神田宮	天高し	秋	19.9.29.
856	神田川深きにありて天高し	天高し	秋	19.9.29.
857	草の実の証（あかし）新米みどり差す	新米	秋	19.9.29.
858	草の実の証新米薄みどり	新米	秋	19.9.29.
859	秋澄みしニコライ堂や露人僧	秋澄む	秋	19.9.29.
860	天高しニコライ堂に露人僧	天高し	秋	19.9.29.
861	楷の葉を秋風揺らす孔子像	秋風	秋	19.9.30.
862	八端の十字（クロス）に素風ニコライ堂	素風	秋	19.9.30.
863	ニコライ堂スラブ十字や秋うらら	秋うらら	秋	19.9.30.
864	秋天にスラブ十字やニコライ堂	秋天	秋	19.9.30.
865	ニコライ堂髭の主教や秋うらら	秋うらら	秋	19.9.30.
866	天高しニコライ堂のキリル文字	天高し	秋	19.9.30.
867	秋夕焼尖塔暮るるニコライ堂	秋夕焼	秋	19.9.30.
868	ニコライ堂青きドームや秋の虹	秋の虹	秋	19.9.30.
869	ニコライ堂仰げば薄き秋の虹	秋の虹	秋	19.9.30.
870	秋夕焼け静かに暮るるニコライ堂	秋夕焼	秋	19.9.30.
871	ニコライ堂青きドームや秋の虹	秋の虹	秋	19.9.30.
872	ニコライ堂仰げば薄き秋の虹	秋の虹	秋	19.9.30.
873	秋夕焼け静かに暮るるニコライ堂	秋夕焼	秋	19.9.30.
874	秋空にスラブ十字やニコライ堂	秋空	秋	19.9.30.
875	天高くスラブ十字やニコライ堂	天高し	秋	19.9.30.
876	十月来遠見の富士のよく見ゆる	十月	秋	19.10.1.
877	朝採りのもろこし音を響かせる	もろこし	秋	19.10.1.
878	肩寄せて木陰にひそと彼岸花	彼岸花	秋	19.10.1.
879	暑けれど風の乾きし秋日かな	秋日	秋	19.10.1.
880	草田男の仰臥の墓碑や秋うらら	秋うらら	秋	19.10.1.
881	寅次郎さくらの像や秋の風	秋の風	秋	19.10.1.
882	寅次郎失恋ばかり秋の風	秋の風	秋	19.10.1.
883	多摩川の瀬音もいつか秋の声	秋声	秋	19.10.1.
884	先立ちて桜紅葉の始まりぬ	桜紅葉	秋	19.10.1.
885	お伽めく赤き頭布や卵茸	茸	秋	19.10.1.
886	山の宿しめぢどさりと鍋料理	しめぢ	秋	19.10.1.
887	秋天のスラブ十字やニコライ堂	秋天	秋	19.10.1.
888	楷の葉を秋雨濡らす孔子像	秋雨	秋	19.10.1.
889	秋雨に濡るる楷の木孔子像	秋雨	秋	19.10.1.
890	日向ぼこしつつ刃物を砥ぐ研ぎ師	日向ぼこ	秋	19.10.1.
891	毟られし鶏の痛みも赤い羽根	赤い羽根	秋	19.10.2.
892	毟られし鶏の痛みや赤い羽根	赤い羽根	秋	19.10.2.
893	毟られし鶏を思ふや赤い羽根	赤い羽根	秋	19.10.2.
894	毟られし鶏を思ひつ赤い羽根	赤い羽根	秋	19.10.2.
895	愛の羽根痛みに耐ゆる鶏のゐて	愛の羽根	秋	19.10.2.
896	鶏どちの痛み分かつや赤い羽根	赤い羽根	秋	19.10.2.
897	杉玉の緑鮮やか新酒なる	新酒	秋	19.10.2.
898	大仰に声上ぐ子らや赤い羽根	赤い羽根	秋	19.10.2.
899	赤い羽根二日と持たず消えにけり	赤い羽根	秋	19.10.2.
900	托鉢僧胸に挿したる赤い羽根	赤い羽根	秋	19.10.2.
901	住職も袈裟に挿したる赤い羽根	赤い羽根	秋	19.10.2.
902	鶏どちの痛み思へよ赤い羽根	赤い羽根	秋	19.10.2.
903	新藁の青き香の立つ農具小屋	新藁	秋	19.10.3.
904	今年藁青き香こもる農具小屋	今年藁	秋	19.10.3.
905	藁塚にタックル掛けるラガーかな	藁塚	秋	19.10.3.
906	藁塚に凭れてスマホ繰る少年	藁塚	秋	19.10.3.
907	新藁を蹴散らし走る放ち鶏	新藁	秋	19.10.3.
908	新藁のさみどり残る大草履	新藁	秋	19.10.3.
909	コンバイン唸り藁塚無き田んぼ	藁塚	秋	19.10.3.
910	竹伐りの音軽やかに電気ソー	竹伐り	秋	19.10.3.
911	竹伐りや空の間口を広げゆく	竹伐り	秋	19.10.3.
912	竹伐りや広がる空に飛行雲	竹伐り	秋	19.10.3.
913	竹伐りを終えて車座竹の盃	竹伐り	秋	19.10.3.
914	萩寺の萩刈り終えて風止めり	萩刈る	秋	19.10.3.
915	雉鳩のくぐもる声や秋の雨	秋の雨	秋	19.10.4.
916	演習田伝統遺す稲架襖	稲架	秋	19.10.4.
917	雷神の太鼓遠くに秋の雨	秋の雨	秋	19.10.4.
918	雷神の太鼓も聞こゆ秋の雨	秋の雨	秋	19.10.4.
919	雷神の太鼓引き連れ秋の雨	秋の雨	秋	19.10.4.
920	魚島を告げる海鳥いわし雲	鰯雲	秋	19.10.4.
921	てきぱきと菊師挿しゆく花の武者	菊人形	秋	19.10.4.
922	生きいきと水の滴る菊の武者	菊人形	秋	19.10.4.
923	水遣りで息吹き返す菊人形	菊人形	秋	19.10.4.
924	鯊釣りや二の字ハの字に舟浮かぶ	鯊	秋	19.10.4.
925	一陣の風を形に稲雀	稲雀	秋	19.10.4.
926	立ち並ぶ案山子も仲間稲雀	稲雀	秋	19.10.4.
927	クリムトの画集広ぐや黄落期	黄落期	秋	19.10.4.
928	煩悩の姿に紛ふ鶏頭花	鶏頭の花	秋	19.10.4.
929	代用食不味き南瓜に恨みあり	南瓜	秋	19.10.4.
930	逸品は腰を曲げたる瓢かな	瓢	秋	19.10.4.
931	暇人の磨きをかける瓢かな	瓢	秋	19.10.4.
932	芋茎和煮込みも出でし御師の宿	芋茎	秋	19.10.4.
933	刈田には早や芽吹くもの薄緑（１９．１０．５．）	刈田	秋	19.10.5.
934	風吹けど揺るるもの無き刈田かな（１９．１０．５．）	刈田	秋	19.10.5.
935	刈り株のおろし金めく刈田かな（１９．１０．５．）	刈田	秋	19.10.5.
936	穭田のさみどり揺るる日暮れかな（１９．１０．５．）	穭田	秋	19.10.5.
937	穭田にそよろそよろと風遊ぶ（１９．１０．５．）	穭田	秋	19.10.5.
938	穭田にそよろと遊ぶ風のあり（１９．１０．５．）	穭田	秋	19.10.5.
939	夕風に無心に遊ぶ穭かな（１９．１０．５．）	穭	秋	19.10.5.
940	穭田に心安らぐ薄みどり（１９．１０．５．）	穭田	秋	19.10.5.
941	山羊親子悠々と食む穭の穂（１９．１０．５．）	穭の穂	秋	19.10.5.
942	穭田や越後平野の薄みどり（１９．１０．５．）	穭田	秋	19.10.5.
943	穭田の緑をぼかす日暮れかな（１９．１０．５．）	穭田	秋	19.10.5.
944	束の間の安らぎ流る穭かな（１９．１０．５．）	穭	秋	19.10.5.
945	鋤き込まるまでの現を穭の穂	穭の穂	秋	19.10.5.
946	村上げて一つの区切り落し水	落し水	秋	19.10.5.
947	務め終え音軽やかに落し水	落し水	秋	19.10.6.
948	用水路水嵩増やす落し水	落し水	秋	19.10.6.
949	千枚田海へと向ふ落し水	落し水	秋	19.10.6.
950	歓喜の歌越後平野の落し水	落し水	秋	19.10.6.
951	犇めいて鰡のジャンプの日がなかな	鰡	秋	19.10.6.
952	犇めきて鰡ジャンプする浜離宮	鰡	秋	19.10.6.
953	水澄みて滔々流る墨田川	水澄む	秋	19.10.6.
954	水澄める池に犇めく鯉の口	水澄む	秋	19.10.6.
955	水澄みし忍野八海風渡る	水澄む	秋	19.10.6.
951	水澄みて忍野八海鯉悠々	水澄む	秋	19.10.6.
952	声高に鵯うち合はす朝まだき	鵯	秋	19.10.7.
953	川の瀬の石当て擦る黄鶺鴒	黄鶺鴒	秋	19.10.7.
954	尾の端の破れもせずに石叩	石叩	秋	19.10.7.
955	石橋を叩いて渡る黄鶺鴒	黄鶺鴒	秋	19.10.7.
956	走りつつ尾を当て擦る石叩	石叩	秋	19.10.7.
957	何もかも尾で当て擦る石たたき	石叩	秋	19.10.7.
958	地球をば叱咤激励石たたき	石叩	秋	19.10.7.
959	一二三四一二三四と石叩	石叩	秋	19.10.7.
960	啄木鳥や通行不可の道標	啄木鳥	秋	19.10.7.
961	啄木鳥の音する山路がけ崩れ	啄木鳥	秋	19.10.7.
962	啄木鳥や朽ち傾きし道標	啄木鳥	秋	19.10.7.
963	杉玉の緑が告げる新走	新走	秋	19.10.7.
964	杉玉の緑告げをり新走	新走	秋	19.10.7.
965	萩寺の萩刈り終えて風迷走	萩刈る	秋	19.10.7.
966	風惑ふ萩刈り終えし萩の寺	萩刈る	秋	19.10.7.
967	冷まじや磔刑火刑の宗教史	冷まじ	秋	19.10.7.
968	層なして空いっぱいに赤とんぼ	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
969	畑仕事腰を伸ばせば赤蜻蛉	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
970	鍬の柄に翅伏せてゐる赤蜻蛉	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
971	爆弾を落とさぬ平和赤とんぼ	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
972	限界の集落の空赤とんぼ	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
973	多摩川の堤は長し赤蜻蛉	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
974	虫はみなキモイと言ふ子赤蜻蛉	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
975	休耕田連なる里や秋茜	秋茜	秋	19.10.8.
976	人住むは二軒の里や秋茜	秋茜	秋	19.10.8.
977	野仏の頭で休む秋茜	秋茜	秋	19.10.8.
978	山頂の視界広々赤とんぼ	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
979	杭の先深き沈思の秋茜	秋茜	秋	19.10.8.
980	杭の先一期一会の赤蜻蛉	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
981	赤とんぼ見向きもせずに過る子ら	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
982	野仏の頭と肩に赤とんぼ	赤蜻蛉	秋	19.10.8.
983	秋茜群れなし向ふ水辺かな	秋茜	秋	19.10.8.
984	冷さまじや鍾乳洞の一滴	冷まじ	秋	19.10.8.
985	冷さまじや半身削がれし武甲山	冷まじ	秋	19.10.8.
986	冷さまじや深手賞味の活き造り	冷まじ	秋	19.10.8.
987	艶やかに日を照り返す鷹の爪	鷹の爪	秋	19.10.8.
988	吊るされて軒先赤き唐辛子	唐辛子	秋	19.10.8.
989	吊るされて辛さ仕上げる唐辛子	唐辛子	秋	19.10.8.
990	どれもみな一癖秘めし唐辛子	唐辛子	秋	19.10.8.
991	偽善者の薄ら笑ひの冷まじや	冷まじ	秋	19.10.8.
992	休耕田ならず放棄田冷まじや	冷まじ	秋	19.10.8.
993	吊るされて磨きを掛くる唐辛子	唐辛子	秋	19.10.8.
994	冷まじや瀕死の魚を食む淑女	冷まじ	秋	19.10.8.
995	冷さまじや瀕死の鯛の活き造り	冷まじ	秋	19.10.8.
996	放棄田の連なる里や秋茜	秋茜	秋	19.10.9.
997	草叢に咲ひて愛でらる蛍草	蛍草	秋	19.10.9.
998	露纏ひ色鮮やかに蛍草	蛍草	秋	19.10.9.
999	露草を挿して拝みぬ野の仏	露草	秋	19.10.9.
1000	草叢の露草すがし朝ぼらけ	露草	秋	19.10.9.
1001	枯蔓にぽつんと一つ烏瓜	烏瓜	秋	19.10.9.
1002	夕日にも負けじと赤き烏瓜	烏瓜	秋	19.10.9.
1003	たわみつつ鞍部越え来る鶸一群	鶸	秋	19.10.9.

♪BGM:［虫の声］arranged by Ripple♪

第41回へ    表紙へ   第４３回へ