１日１０句１０００句を詠む第３９回

鈴童の遊び


1	青饅（あおぬた）の先付がよし酒旨し	青饅	春	19.2.5.
2	一膳の菜飯楽しき夕餉かな	菜飯	春	19.2.5.
3	炉辺のみな背中に残る余寒かな	余寒	春	19.2.5.
4	半身裂く武甲の山の余寒かな	余寒	春	19.2.5.
5	余寒なほ電気走りし偏頭痛	余寒	春	19.2.5.
6	偏頭痛電気の走る余寒かな	余寒	春	19.2.5.
7	余寒なほ阿吽で耐ゆる仁王像	余寒	春	19.2.5.
8	余寒なほ睨みで耐ゆる仁王像	余寒	春	19.2.5.
9	靴紐の解けてしゃがむ余寒かな	余寒	春	19.2.5.
10	鉢植えに水遣る庭の余寒かな	余寒	春	19.2.5.
11	余寒なほドアノブ走る静電気	余寒	春	19.2.5.
12	仁王像睨みで耐ゆる余寒かな	余寒	春	19.2.5.
13	戸袋を鳴らす風あり冬晴るる	冬晴	春	19.2.6.
14	冬晴や遠富士見ゆる路地の奥	冬晴	春	19.2.6.
15	子ら飛沫上ぐる野川や水温む	水温む	春	19.2.6.
16	餌をねだる鯉の大口水温む	水温む	春	19.2.6.
17	山焼や足あるごとく火の走る	山焼	春	19.2.6.
18	消防車待機してゐる山火かな	山火	春	19.2.6.
19	大空に確と道あり鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.6.
20	ひたすらに家伝のルート鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.6.
21	迷い道無き大空を鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.6.
22	春風や車通さぬ大街道（伊予松山）	春風	春	19.2.6.
23	麦踏はなぜか後ろ手して歩む	麦踏	春	19.2.6.
24	吾もまたアルキメデスよ麦踏みぬ	麦踏	春	19.2.6.
25	麦踏はだれも後ろ手哲学者	麦踏	春	19.2.6.
26	麦踏はだれも後ろ手逍遥派	麦踏	春	19.2.6.
27	嬉々として地を舐め駈くる山火かな	山火	春	19.2.6.
28	逍遥の哲人めきて麦を踏む	麦踏	春	19.2.6.
29	山焼果て男ら湯屋へ煤落し	山焼	春	19.2.7.
30	火付け役合図を待ちし山火かな	山火	春	19.2.7.
31	山焼や消防団の晴れ舞台	山焼	春	19.2.7.
32	山焼の火焔なぞへを駆け上る	山焼	春	19.2.7.
33	風呼んで火焔音立つ山火かな	山火	春	19.2.7.
34	黒煙に紅蓮突き抜く山火かな	山火	春	19.2.7.
35	火が風を風が火を呼ぶ山火かな	山火	春	19.2.7.
36	山焼や兵どもが目を覚ます	山焼	春	19.2.7.
37	山焼や若き和尚が火付け役	山焼	春	19.2.7.
38	イベントに仕立て山焼く過疎の村	山焼	春	19.2.7.
39	山焼をイベントにして村興し	山焼	春	19.2.7.
40	火が風を風が火を呼ぶ野焼かな	野焼	春	19.2.7.
41	舌噛んで痛さで目覚む万愚節	万愚節	春	19.2.7.
42	ゆっくりと親の手を曳く遍路かな	遍路	春	19.2.7.
43	料峭や半身削がれし武甲山	料峭	春	19.2.7.
44	金縷梅や捩れ正せばただの紐	金縷梅（まんさく）	春	19.2.7.
45	迎春花名の大仰に恥つ咲く	迎春花	春	19.2.7.
46	三椏の花に呼ばれて近寄りぬ	三椏の花	春	19.2.7.
47	どれもみな悪女のポーズ紫木蓮	紫木蓮	春	19.2.7.
48	どれもみな悪女めきたる紫木蓮	紫木蓮	春	19.2.7.
49	自堕落と言ふほどでなし紫木蓮	紫木蓮	春	19.2.7.
50	真砂女には似合ふ花あり紫木蓮	紫木蓮	春	19.2.7.
51	真砂女にはマグマ燃え立つ紫木蓮	紫木蓮	春	19.2.7.
52	紫木蓮蹴出しを払ひ恋やつれ	紫木蓮	春	19.2.7.
53	惚れ抜いて一途の恋や紫木蓮	紫木蓮	春	19.2.7.
54	どの墓碑も香煙烟る義士まつり	義士祭	春	19.2.7.
55	山路来てせせらぎ聞こゆ花山葵	花山葵	春	19.2.7.
56	山道にせせらぎ聞けば花山葵	花山葵	春	19.2.7.
57	犬ふぐりあちらこちらに花を撒く	犬ふぐり	春	19.2.7.
58	卓上花寸足らずして犬ふぐり	犬ふぐり	春	19.2.8.
59	魚棲まぬほどの清流山葵生ふ	山葵	春	19.2.8.
60	山葵田の清流歌ふ子守歌	山葵田	春	19.2.8.
61	海風をしなやかに受け野水仙	野水仙	春	19.2.8.
62	蕗味噌の結び買ひたり道の駅	蕗味噌	春	19.2.8.
63	蕗味噌のしみじみ旨し山の宿	蕗味噌	春	19.2.8.
64	清流を畝巡らせて水菜畑	水菜	春	19.2.8.
65	流水の巡りて育つ水菜かな	水菜	春	19.2.8.
66	箸先に蕗味噌載せて独り酒	蕗味噌	春	19.2.8.
67	蕗味噌で丼飯の少年期	蕗味噌	春	19.2.8.
68	母の味蕗味噌を買ふ道の駅	蕗味噌	春	19.2.8.
69	身を清め一徹通す山葵かな	山葵	春	19.2.8.
70	封切ればボトルの水も春の水	春の水	春	19.2.9.
71	春の水川辺に立ちて早春賦	春の水	春	19.2.9.
72	鮠の影走る野川や春の水	春の水	春	19.2.9.
73	田楽を横に引き食む男女かな	春の水	春	19.2.9.
74	田楽を食みて髭面やんちゃの子	田楽	春	19.2.9.
75	田楽と蕗味噌嬉し鄙の宿	田楽	春	19.2.9.
76	田楽の青串残し盃を置く	田楽	春	19.2.9.
77	宍道湖を一椀にして蜆汁	蜆汁	春	19.2.9.
78	蕗味噌の握り飯買ふ道の駅	蜆汁	春	19.2.9.
79	出立の鈴の音すがし遍路宿	遍路宿	春	19.2.9.
80	熱々を啜れば旨し蜆汁	蜆汁	春	19.2.10.
81	美しき骨を遺して蒸鰈	蒸鰈	春	19.2.10.
82	一対も折れずに骨の蒸鰈	蒸鰈	春	19.2.10.
83	貧しさの作り出したる花菜漬	花名漬	春	19.2.10.
84	深鉢に緑鮮やか饅で呑む	青饅（あおぬた）	春	19.2.10.
85	桜湯の薄紅ほのと白磁碗	青饅（あおぬた）	春	19.2.10.
86	大股に都大路を春ショール	春ショール	春	19.2.10.
87	ターコイスブルー靡かせ春ショール	春ショール	春	19.2.10.
88	かつかつとヒール鳴らして春ショール	春ショール	春	19.2.10.
89	都路を白お揃ひの春ショール	春ショール	春	19.2.10.
90	スクランブル交差点行く春ショール	春ショール	春	19.2.10.
91	鮟鱇のまず抜かれたる太き肝	鮟鱇	冬	19.2.10.
92	顎の骨残し鮟鱇捌き終え	鮟鱇	冬	19.2.10.
93	顎吊られ涙ほろりと雌鮟鱇	鮟鱇	冬	19.2.10.
94	逞しや舗道の隙間いぬふぐり	犬ふぐり	春	19.2.10.
95	春疾風寅さん像は襟立てり	春疾風	春	19.2.10.
96	女らは陰に香水かけて夏	夏	夏	19.2.10.
97	まぐわへば春の香水立ち昇る	春	春	19.2.10.
98	春寒し書架に読まずの聖書あり	春寒	春	19.2.10.
99	梅干しを湯割りに落とす余寒かな	余寒	春	19.2.10.
100	寅さん像襟立て凌ぐ余寒かな	余寒	春	19.2.10.
101	下萌えて命ほつほつ滾り初む	下萌	春	19.2.11.
102	山茱萸の花霞みをり近寄りぬ	山茱萸の花	春	19.2.11.
103	山茱萸の花近寄りてなほ霞む	山茱萸の花	春	19.2.11.
104	山茱萸の小花寄合ひ霞をり	山茱萸の花	春	19.2.11.
105	山茱萸の黄花霞みし野点かな	山茱萸の花	春	19.2.11.
106	山茱萸の花寄合えば靄生る	山茱萸の花	春	19.2.11.
107	迎春花お出でおいでと枝しなる	迎春花	春	19.2.11.
108	盆梅の異形に咲くは古城の春	盆梅	春	19.2.11.
109	四十雀吾は八十路や恋もまだ	四十雀	春	19.2.11.
110	四十雀地鳴きでそそと打ち合せ	四十雀	春	19.2.11.
111	放牧の日の近づけば下萌ゆる	下萌	春	19.2.11.
112	放牧の日の近き告げ下萌ゆる	下萌	春	19.2.11.
113	放牧の日の近き知り下萌ゆる	下萌	春	19.2.11.
114	ものの芽の吹き出る野末道祖神	ものの芽	春	19.2.11.
115	地を揺する音なき音や草青む	草青む	春	19.2.11.
116	舗装路の隙間満たして草青む	草青む	春	19.2.11.
117	草萌の庭を気儘に放ち鶏	草萌	春	19.2.11.
118	草青む原に母子の山羊遊ぶ	草青む	春	19.2.12.
119	母山羊の乳欲る仔山羊草萌ゆる	草萌	春	19.2.12.
120	陶の鉢ずしりと重き君子蘭	君子蘭	春	19.2.12.
121	日の匂ひ潮の匂ひや若布干す	若布	春	19.2.12.
122	潮の香に日の匂ひ呼び若布干し	若布	春	19.2.12.
123	潮の香に日の香加はる若布干し	若布	春	19.2.12.
124	潮の香に日の香加へて若布干し	若布	春	19.2.12.
125	潮の香に日の香加わる若布干し	若布	春	19.2.12.
126	女子らの総出で浜の若布干し	若布	春	19.2.12.
127	おなごらの声賑やかに若布干し	若布	春	19.2.12.
128	若布干す浜は潮の香日の匂ひ	若布	春	19.2.12.
129	潮風に日の力借り若布干し	若布	春	19.2.12.
130	釣り人の増えし突堤水温む	水温む	春	19.2.12.
131	若布干す黒一色の浜の昼	若布	春	19.2.12.
132	五十年煤けて若き内裏雛	内裏雛	春	19.2.12.
133	老いの家の男びな女びなも煤けけり	雛人形	春	19.2.12.
134	不老長寿なれど煤けし内裏雛	内裏雛	春	19.2.12.
135	瓜実のままに煤けし内裏雛	内裏雛	春	19.2.12.
136	内裏雛だけを飾りし老いの家	内裏雛	春	19.2.12.
137	娘等も初老となりぬ雛飾り	雛飾り	春	19.2.12.
138	娘等は五十路となりぬ雛飾り	雛飾り	春	19.2.12.
139	内裏雛飾る翁と媼かな	内裏雛	春	19.2.12.
140	雛人形出して仕舞ひて半世紀	雛人形	春	19.2.12.
141	内裏雛出して飾りし八十路かな	内裏雛	春	19.2.12.
142	うららかや野辺にまぐわふ道祖神	うららか	春	19.2.13.
143	初ひばり野辺にまぐわふ道祖神	初ひばり	春	19.2.13.
144	春昼の野辺にまぐわふ道祖神	春昼	春	19.2.13.
145	モンローの唇燃ゆるななかまど	ななかまど	秋	19.2.13.
146	山鳥の地鳴き聞ゆるななかまど	ななかまど	秋	19.2.13.
147	植林の山路抜ければななかまど	ななかまど	秋	19.2.13.
148	崖の端下は千丈ななかまど	ななかまど	秋	19.2.13.
149	咄嗟には火焔かと見ゆななかまど	ななかまど	秋	19.2.13.
150	ななかまど崖剥落の端に燃ゆ	ななかまど	秋	19.2.13.
151	春疾風欠航告げる佐渡汽船	春疾風	春	19.2.13.
152	早春賦口ずさみゐる綾子かな	早春賦	春	19.2.13.
153	魚が氷に上り木魚の音響く	魚が氷に上る	春	19.2.13.
154	道祖神まぐわふ道に犬ふぐり	犬ふぐり	春	19.2.13.
155	天井っ子割れたと魚は氷に上る	魚が氷に上る	春	19.2.13.
156	高圧線早春の山一つ越ゆ	早春	春	19.2.13.
157	春浅し泉に白き水煙	春浅し	春	19.2.13.
158	ねえはめて女雛におうと男雛	雛	春	19.2.13.
159	飄々と舗道の隙間いぬふぐり	犬ふぐり	春	19.2.14.
160	チューチルと恋のシグナル目白来る	目白	春	19.2.14.
161	義理チョコが友チョコとなるバレンタイン	バレンタインの日	春	19.2.14.
162	青空を地に撒いたかに犬ふぐり	犬ふぐり	春	19.2.14.
163	あら嬉し庭に一叢犬ふぐり	犬ふぐり	春	19.2.14.
164	嬉しやな庭に一叢犬ふぐり	犬ふぐり	春	19.2.14.
165	吾書斎いつ坐りても獺祭	獺祭	春	19.2.14.
166	奥暗き木立の端の雪割草	雪割草	春	19.2.14.
167	神輿蔵日当る角に節分草	節分草	春	19.2.14.
168	農夫婦黙々と踏む麦の畝	麦踏	春	19.2.14.
169	鬱屈の心に遠く春の雷	春雷	春	19.2.14.
170	陶片の掃き捨てしごと犬ふぐり	犬ふぐり	春	19.2.14.
171	陽炎に車体歪めつ峡のバス	陽炎	春	19.2.14.
172	呟けば空しさ募る春の雷	春雷	春	19.2.14.
173	鳩時計いまは鳴らずに春の雷	春雷	春	19.2.14.
174	青磁片撒き散らすごと犬ふぐり	犬ふぐり	春	19.2.15.
175	大宇宙広大無辺鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
176	海千里万里に耐えて鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
177	白銀のアルプス越えて鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
178	それぞれに一本の道鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
179	空に引く家伝の道を鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
180	魂の道かも知れず鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
181	大空に迷ふ道なし鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
182	見上ぐれば長き鳥影北帰行	鳥帰る	春	19.2.15.
183	来しときと同じ鞍部を鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
184	大空に導く手あり鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
185	突堤に釣り人増えて鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
186	身一つの長き旅なり鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
187	矢も盾もたまらぬごとく鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
188	山焼の男ら湯屋へ煤落し	鳥帰る	春	19.2.15.
189	年号の変る平成鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
190	平成に別れを告げて鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
191	青空の切片散らす犬ふぐり	犬ふぐり	春	19.2.15.
192	庭隅にいつの間にやら犬ふぐり	犬ふぐり	春	19.2.15.
193	魂の道を辿りて鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.15.
194	御嶽山いまは鎮もり鳥雲に	鳥帰る	春	19.2.16.
195	御嶽山鎮魂の空鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.16.
196	鳥雲に勤行の僧木魚打つ	鳥雲に	春	19.2.16.
197	自動車の免許を返し鳥雲に	鳥雲に	春	19.2.16.
198	駐在も定年迎え鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.16.
199	駐在の定年の日や鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.16.
200	神主は数学教師鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.16.
201	神主は六社兼務や鳥雲に	鳥雲に	春	19.2.16.
202	神主はコンピュータ技師鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.16.
203	駐在さん髭剃り落し鳥雲に	鳥雲に	春	19.2.16.
204	貫主座す座布団紫紺鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.16.
205	本堂に響く木魚や鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.16.
206	満作に紅の花燃え立てり	満作	春	19.2.16.
207	紅の満作風に燃え立てり	満作	春	19.2.16.
208	赤花の満作風の焔かな	満作	春	19.2.16.
209	近寄らば紅満作の焔立つ	満作	春	19.2.16.
210	風呼んで赤き満作焔立つ	満作	春	19.2.16.
211	満作に赤花ありて焔立つ	満作	春	19.2.16.
212	満作の赤花風に焔立つ	満作	春	19.2.16.
213	紅まんさく風と火遊び始めけり	満作	春	19.2.16.
214	紅まんさく風と火遊び焔立つ	満作	春	19.2.16.
215	赤花の満作風に焔立つ	満作	春	19.2.16.
216	梅を見つ啜る掻き揚げうどんかな	梅	春	19.2.17.
217	梅を見つ掻き揚げうどん啜りけり	梅	春	19.2.17.
218	風呼んで紅の満作焔立つ	満作	春	19.2.17.
219	まんさくや池面犇めく鯉の口	満作	春	19.2.17.
220	まんさくやソバージュ多き女学園	満作	春	19.2.17.
221	各卓にアネモネ一輪色違え	アネモネ	春	19.2.17.
222	アネモネの花束抱きし童女像	アネモネ	春	19.2.17.
223	一輪挿し全卓飾るチューリップ	チューリップ	春	19.2.17.
224	べた塗りに砺波平野のチューリップ	チューリップ	春	19.2.17.
225	砺波平野べた塗りにしてチューリップ	チューリップ	春	19.2.17.
226	風信子書きてつくづくヒヤシンス	ヒヤシンス	春	19.2.17.
227	摘み取れどまたひょこひょこと葱坊主	葱坊主	春	19.2.17.
228	初雷臍を隠せし昭和かな	初雷	春	19.2.18.
229	初雷聞きて聞へぬスマホかな	初雷	春	19.2.18.
230	初雷や桑原なくて遠慮がち	初雷	春	19.2.18.
231	佐保姫の裳裾を濡らす雪解かな	佐保姫・雪解	春	19.2.18.
232	棄てられて眼瞑り子猫泣く昭和	子猫	春	19.2.18.
233	捨て子猫泣き疲れたる日暮れかな	子猫	春	19.2.18.
234	捨て子猫残し去り行く回収車	子猫	春	19.2.18.
235	捨て子猫一匹残る日暮れかな	子猫	春	19.2.18.
236	野良がゐて子猫がゐたる昭和かな	子猫	春	19.2.18.
237	屋根替は集落互助の白川郷	屋根替	春	19.2.18.
238	屋根替を知らずに作句俳句馬鹿	屋根替	春	19.2.18.
239	春の夜や格別のことなくて更け	春	春	19.2.18.
240	目も開かぬうちに捨てられ泣く子猫	子猫	春	19.2.18.
241	目も開かぬ子猫六匹路地で泣く	子猫	春	19.2.18.
242	捨子猫まだ目も見えず命乞ひ	子猫	春	19.2.18.
243	捨子猫生まれ出でたる地獄かな	子猫	春	19.2.18.
244	捨てられし子猫哀れと通り過ぎ	子猫	春	19.2.18.
245	捨て子猫命絶ゆればゴミ袋	子猫	春	19.2.18.
246	捨子猫目も見えずして命乞ひ	子猫	春	19.2.18.
247	緩急をつけし木魚に春の音	春	春	19.2.18.
248	てきぱきと屋根葺き替える職の技	屋根替	春	19.2.18.
249	春の夜や厨で唸る冷蔵庫	春の夜	春	19.2.18.
250	春の夜や厨で寝ずの冷蔵庫	春の夜	春	19.2.18.
251	春の夜の止みては続く木魚かな	春の夜	春	19.2.19.
252	夜半の春水嵩増せる取水堰	夜半の春	春	19.2.19.
253	ジェット機の音姦しき夜半の春	夜半の春	春	19.2.19.
254	緩急をつけし木魚や夜半の春	夜半の春	春	19.2.19.
255	水垢離の修行の僧や夜半の春	夜半の春	春	19.2.19.
256	野仏の足元で泣く捨て子猫	子猫	春	19.2.19.
257	摘み取れどまた摘み取れど葱坊主	葱坊主	春	19.2.19.
258	摘み取れどまた頭出す葱坊主	葱坊主	春	19.2.19.
259	春の夜や宿の亭主とへぼ将棋	春の夜	春	19.2.19.
260	洋酒入りチョコ後を引くバレンタイン	バレンタインの日	春	19.2.19.
261	鮟鱇鍋捕食の魚も仲間入り	鮟鱇鍋	春	19.2.20.
262	鮟鱇鍋捕食の魚も煮え滾る	鮟鱇鍋	春	19.2.20.
263	海荒れて勝鬨上ぐる鰤漁師	鰤	春	19.2.20.
264	寒鰤の腹裂く出刃の走りけり	鰤	春	19.2.20.
265	日の窪に春竜胆の立ち話	春竜胆	春	19.2.20.
266	日溜りや春竜胆は三頭身	春竜胆	春	19.2.20.
267	日を集め山路の窪の春竜胆	春竜胆	春	19.2.20.
268	ハンカチに包みいそいそ蕗の薹	蕗の薹	春	19.2.20.
269	三つほどなれど嬉しや蕗の薹	蕗の薹	春	19.2.20.
270	無造作に農婦のくれし野蒜かな	野蒜	春	19.2.20.
271	軍手はめなぞへに挑む蕨狩り	蕨狩	春	19.2.20.
272	早よ採れとなぞへを埋めし初わらび	初わらび	春	19.2.20.
273	爪汚し開き直りの蕨狩り	蕨狩	春	19.2.20.
274	一叢の芹に足止む川辺かな	芹	春	19.2.20.
275	鮠走る川辺で摘みし田芹かな	芹	春	19.2.20.
276	ものの芽の吹き出す野辺や道祖神	ものの芽	春	19.2.20.
277	御嶽山鎮もる空を鳥帰る	鳥帰る	春	19.2.21.
278	緩急をつけし木魚や春の雲	春の雲	春	19.2.21.
279	碁敵は手土産持参蕗の薹	蕗の薹	春	19.2.21.
280	蕗の薹持って碁敵訪ね来る	蕗の薹	春	19.2.21.
281	三個ほどなれど手土産蕗の薹	蕗の薹	春	19.2.21.
282	田楽の青き竹串緋毛氈	田楽	春	19.2.21.
283	田楽の熱きを食みつ茶店酒	田楽	春	19.2.21.
284	田楽を一皿取りて岐阜城下	田楽	春	19.2.21.
285	田楽の熱々旨し茶店酒	田楽	春	19.2.21.
286	田楽の八丁味噌の焦げ加減	田楽	春	19.2.21.
287	田楽を一皿追加昼の酒	田楽	春	19.2.21.
288	渓流の岩噛むしぶき春の水	春の水	春	19.2.21.
289	田楽の皿三枚目酒もまた	田楽	春	19.2.21.
290	舌焦がす味噌田楽や酒ぬるめ	田楽	春	19.2.21.
291	味噌田楽取りて茶店の昼の酒	田楽	春	19.2.21.
292	取水堰越えて轟く春の水	春の水	春	19.2.21.
293	味噌田楽食みつ茶店の昼の酒	田楽	春	19.2.22.
294	渚行く遍路二人のシルエット	遍路	春	19.2.22.
295	車椅子姿もありて遍路宿	遍路宿	春	19.2.22.
296	遍路宿見知らぬ同士夕餉かな	遍路宿	春	19.2.22.
297	山路行く歩き遍路の鈴の音	遍路	春	19.2.22.
298	夕餉の膳土佐造り出る遍路宿	遍路宿	春	19.2.22.
299	正打ちと逆打ち語る遍路宿	遍路宿	春	19.2.22.
300	潮騒の風に乗り来る遍路宿	遍路宿	春	19.2.22.
301	句帳手に札所を巡る俳遍路	遍路	春	19.2.22.
302	頭丸め僧一団の遍路かな	遍路	春	19.2.22.
303	労わりつ労わられつつ母子遍路	遍路	春	19.2.22.
304	父子の名もありしがやはり母子草	母子草	春	19.2.22.
305	母子草摘まれど摘まぬ父子草	父子草	春	19.2.22.
306	七草に御形と呼ばれ母子草	母子草	春	19.2.22.
307	母子草少しくすみし父子草	父子草	春	19.2.22.
308	母と子のそつと触れをり母子草	母子草	春	19.2.22.
309	七草の粥に混ざりし母子草	母子草	春	19.2.22.
310	七草のひとつと知らず母子草	母子草	春	19.2.22.
311	妻よりも先に逝きたし母子草	母子草	春	19.2.22.
312	老いてなほ父と距離あり母子草	母子草	春	19.2.22.
313	酒酌めど口数途切れ父子草	父子草	春	19.2.22.
314	にやにやと親父と息子父子草	父子草	春	19.2.22.
315	父来れば話題変りし母子草	母子草	春	19.2.22.
316	野仏の足元埋めて母子草	母子草	春	19.2.22.
317	口開けて鯉寄る池辺母子草	母子草	春	19.2.22.
318	ベビーカー日を背に回し母子草	母子草	春	19.2.22.
319	母子草卒寿の母の髪飾り	母子草	春	19.2.22.
320	父と子でそれぞれ恋し母子草	母子草	春	19.2.22.
321	大池に飛べぬ白鳥母子草	母子草	春	19.2.22.
322	母と来て摘んで帰りし母子草	母子草	春	19.2.22.
323	母と子が池辺で摘みし母子草	母子草	春	19.2.22.
324	本堂に木魚の響き母子草	母子草	春	19.2.22.
325	墓地までは木魚聞こえず母子草	母子草	春	19.2.22.
326	墓に来て八十路手向ける母子草	母子草	春	19.2.22.
327	墓に来て翁手向ける母子草	母子草	春	19.2.22.
328	母ちゃんと呟く八十路母子草	母子草	春	19.2.22.
329	母ちゃんと呟く翁母子草	母子草	春	19.2.22.
330	男とは寂しきものよ母子草	母子草	春	19.2.23.
331	野仏の赤い前垂れ母子草	母子草	春	19.2.23.
332	貨車百輌渡る鉄橋父子草	父子草	春	19.2.23.
333	吟行が摘草になる主婦俳女	摘草	春	19.2.23.
334	摘草の詳しき人を真似て摘む	摘草	春	19.2.23.
335	摘草の三種並びし夕餉かな	摘草	春	19.2.23.
336	俳女らに混り草摘む漢かな	草摘む	春	19.2.23.
337	草摘みてどれも膨らむレジ袋	摘草	春	19.2.23.
338	吟行のはずが草摘み主婦の顔	草摘む	春	19.2.23.
339	吟行の足を止めたり芹野蒜	芹・野蒜	春	19.2.23.
340	吟行の足の止まりし芹野蒜	芹・野蒜	春	19.2.23.
341	母子草見つむるだけで思ひ湧く	母子草	春	19.2.23.
342	満作の黄に従わぬ紅も佳し	満作	春	19.2.23.
343	補聴器より治聾酒欲しき春の宵	春の宵	春	19.2.23.
344	春風や空の彼方に竜宮城	春風	春	19.2.23.
345	風光る水上バスの太き水脈	風光る	春	19.2.24.
346	風光る水上バスの水脈太し	風光る	春	19.2.24.
347	風光る水上バスの長き水脈	風光る	春	19.2.24.
348	梅二輪咲ひて蕾の明日を待つ	梅	春	19.2.24.
349	年古りて花白無垢の豊後梅	梅	春	19.2.24.
350	薄紅の消えて真白き豊後梅	梅	春	19.2.24.
351	見下ろせば花ふくよかに豊後梅	梅	春	19.2.24.
352	梅を背に自撮りのスマホ遠近に	梅	春	19.2.24.
353	ほんのりと紅にじませて豊後梅	梅	春	19.2.24.
354	子に乳を吸はす狛犬梅真白	梅	春	19.2.24.
355	肝つ玉小さき蹴飛ばす春疾風	春疾風	春	19.2.24.
356	関門の潮ひたひたと若布刈る	若布刈る	春	19.2.24.
357	蟻穴を出てためらわず走りけり	蟻穴を出る	春	19.2.24.
358	蟻穴を出て一筋の補給線	蟻穴を出る	春	19.2.24.
359	海鼠ぼそり切られりゃ痛い俺だって	海鼠	冬	19.2.24.
360	さくさくと生きて切らるる海鼠かな	海鼠	冬	19.2.24.
361	古書買へり紙魚はおまけと店主言ふ	紙魚	夏	19.2.24.
362	古書届く生きたる紙魚のおまけ付き	紙魚	夏	19.2.24.
363	古書を手に紙魚を引き連れ戻りけり	紙魚	夏	19.2.24.
364	店主言ふ紙魚はおまけと希覯本	紙魚	夏	19.2.24.
365	神田から紙魚持ち帰る家路かな	紙魚	夏	19.2.24.
366	山焼を終え夕焼の空になる	山焼き	春	19.2.25.
367	放水車四囲に固めし野焼きかな	野焼き	春	19.2.25.
368	放水車四囲に固めて山火かな	山火	春	19.2.25.
369	山焼を終えて凛々しき煤の顔	山焼き	春	19.2.25.
370	山火消え夕焼け空に変りけり	山火	春	19.2.25.
371	火が走り風が走りし野焼かな	野焼き	春	19.2.25.
372	山火消え塒に帰る鳥の影	山火	春	19.2.25.
373	山焼に帰省の顔の揃ひけり	山焼き	春	19.2.25.
374	山焼や火焔走りて風を呼ぶ	山焼き	春	19.2.25.
375	山焼を終えて手締めの煤け顔	山焼き	春	19.2.25.
376	山焼き終え湯屋に駆け込み煤落し	山焼き	春	19.2.25.
377	山焼やどれも凛々しき煤の顔	山焼き	春	19.2.25.
378	一円玉拾はず過ぎぬ風光る	風光る	春	19.2.26.
379	一円玉拾ふ人なし風光る	風光る	春	19.2.26.
380	春昼や庇に揺るる水の影	春昼	春	19.2.26.
381	春昼や庇に踊る水の影	春昼	春	19.2.26.
382	潮まねき総出で客を引く干潟	干潟	春	19.2.26.
383	現れし干潟にぎやか潮まねき	干潟	春	19.2.26.
384	春波に身を載せ憩ふ都鳥	春の波	春	19.2.26.
385	乳欲りて仔猫啼きつつふと欠伸	仔猫	春	19.2.26.
386	屋根替の季語もそろそろ死語近し	屋根替	春	19.2.26.
387	貰い手の無くて捨てらる子猫かな	子猫	春	19.2.26.
388	親猫も子猫も消えし路地さみし	子猫	春	19.2.26.
389	雅なる名の一樹ずつ梅見かな	梅	春	19.2.27.
390	雅なる名の一樹ずつ梅めぐる	梅	春	19.2.27.
391	雅なる名を確かめつ梅めぐる	梅	春	19.2.27.
392	雅なる名を確かめつ梅見かな	梅	春	19.2.27.
393	雅なる名を持つ梅を一樹ずつ	梅	春	19.2.27.
394	梅林にひそと花桃混り咲く	花桃	春	19.2.27.
395	梅林の紅白制し紅千鳥	梅	春	19.2.27.
396	縛られて微笑む地蔵春うらら	春うらら	春	19.2.27.
397	小日向の坂に寺あり花樒	樒の花	春	19.2.27.
398	小日向の坂に寺あり樒咲く	樒の花	春	19.2.27.
399	小日向の急坂の寺樒咲く	樒の花	春	19.2.27.
400	仄暗き葉陰にひそと花樒	樒の花	春	19.2.27.
401	はふはふと味噌田楽で社店酒	田楽	春	19.2.27.
402	春告げて雪割一華咲き初めり	雪割草	春	19.2.27.
403	地に低く雪割草の咲き初めり	雪割草	春	19.2.27.
404	草むらを屈みて見れば雪割草	雪割草	春	19.2.27.
405	腰屈め草むら見れば雪割草	雪割草	春	19.2.27.
406	腰屈め草むら追えば雪割草	雪割草	春	19.2.27.
407	謡曲を唸るドクター風光る	風光る	春	19.2.28.
408	犇めける鯉の大口風光る	風光る	春	19.2.28.
409	がばがばと水吐く鯉や風光る	風光る	春	19.2.28.
410	あべこべに靴履く園児光る風	風光る	春	19.2.28.
411	あべこべに靴履く園児風光る	風光る	春	19.2.28.
412	風光り南を向きし風見鶏	風光る	春	19.2.28.
413	乙女舞ふ公園の像風光る	風光る	春	19.2.28.
414	団子屋の幟はたはた風光る	風光る	春	19.2.28.
415	池の岩親亀子亀風光る	風光る	春	19.2.28.
416	ママチャリの並ぶ公園風光る	風光る	春	19.2.28.
417	風光るサル山のボス大あくび	風光る	春	19.2.28.
418	勤行の木魚の音や風光る	風光る	春	19.2.28.
419	ざりがにを釣る子ら濡らす春の水	春の水	春	19.3.1.
420	蔵出しの酒をごくりと春の水	春の水	春	19.3.1.
421	しなやかに若鮎上る魚道かな	若鮎	春	19.3.1.
422	若鮎のひねもす堰を越ゆる影	若鮎	春	19.3.1.
423	若鮎のただひた向きに上り行く	若鮎	春	19.3.1.
424	堰越えてまた堰越えて上り鮎	上り鮎（＝若鮎）	春	19.3.1.
425	魚道おばジグザグに行く上り鮎	上り鮎	春	19.3.1.
426	底抜けに明るき黄なりいたちぐさ	イタチグサ（＝連翹）	春	19.3.1.
427	連翹や両手広げし乙女像	連翹	春	19.3.1.
428	日に向ひ光を返すいたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.1.
429	初雷や臍を隠せし昭和かな	初雷	春	19.3.1.
430	初雷や臍を隠せし昭和の子	雪割草	春	19.3.1.
431	地に低く雪なき里の雪割草	雪割草	春	19.3.1.
432	野焼終えどれも凛々しき煤の顔	野焼	春	19.3.1.
433	猿山のボス大あくび風光る	風光る	春	19.3.1.
434	古書肆からおまけの紙魚も連れ帰る	紙魚	夏	19.3.1.
435	帰省子の揃ひ山焼く過疎の村	山焼	春	19.3.2.
436	桜漬浮かぶ白磁の薄茶碗	桜漬	春	19.3.2.
437	桜湯の花の解れてめでたき日	桜湯	春	19.3.2.
438	桜湯の花のたゆたふ祝ひ膳	桜湯	春	19.3.2.
439	桜湯の花たゆたへり祝ひ膳	桜湯	春	19.3.2.
440	咲きし日へ解れ戻りし桜漬	桜漬	春	19.3.2.
441	桜湯を含みつ交す祝賀の膳	桜湯	春	19.3.2.
442	桜漬意思あるごとく解れゆく	桜漬	春	19.3.2.
443	ゆっくりと花ほぐれけり桜漬	桜漬	春	19.3.2.
444	青柳の垂るる池面や鯉の群れ	青柳	春	19.3.2.
445	今年またひそと飾りし内裏雛	内裏雛	春	19.3.2.
446	瓜実の細き眼をせし内裏雛	内裏雛	春	19.3.2.
447	一年に一度箱出る内裏雛	内裏雛	春	19.3.2.
448	娘らは初老となりぬ雛祭	雛祭	春	19.3.2.
449	帰省子の顔揃ひたる野焼かな	野焼	春	19.3.2.
450	取水堰がうがう越ゆる春の水	春の水	春	19.3.2.
451	取水堰がうがうと越ゆ春の水	春の水	春	19.3.2.
452	連翹のなぞへ華やぐ六地蔵	連翹	春	19.3.2.
453	田楽の串横に引き熱き食む	田楽	春	19.3.2.
454	はふはふと味噌田楽を食み合へり	田楽	春	19.3.2.
455	はふはふと味噌田楽の熱き食む	田楽	春	19.3.2.
456	足早に原爆ドーム上る蟻	原爆ドーム	夏	19.3.2.
457	原爆忌あの日の空になりにけり	原爆忌	夏	19.3.2.
458	雉走るなぞへの畑の日暮れ時	雉	春	19.3.2.
459	山里の静寂引き裂く雉の声	雉	春	19.3.2.
460	山里の静寂突き刺す雉の声	雉	春	19.3.2.
461	ひたすらに身を焦がしゐる恋の猫	恋猫	春	19.3.3.
462	ひたぶるに身を焼き猛るさかり猫	猫さかる	春	19.3.3.
463	肉欲の猛り立ちたるさかり猫	猫さかる	春	19.3.3.
464	身を焦がし果て無き叫びさかり猫	猫さかる	春	19.3.3.
465	肉欲の絶叫姦し春の猫	春の猫	春	19.3.3.
466	あられなく雄たけび上げて恋の猫	恋猫	春	19.3.3.
467	恋猫や身を焦がしゐる独り者	恋猫	春	19.3.3.
468	肉欲を露はに路地行くさかり猫	猫さかる	春	19.3.3.
469	突き上ぐるものに身悶えさかり猫	猫さかる	春	19.3.3.
470	春しぐれ傘を開けば止みにけり	春時雨	春	19.3.3.
471	春時雨ちょうど目の前縄のれん	春時雨	春	19.3.3.
472	折畳み傘出しかねし春時雨	春時雨	春	19.3.3.
473	鈎型に光走りぬ春の雷	春雷	春	19.3.3.
474	遠山の空に閃光春の雷	春雷	春	19.3.3.
475	突き上ぐるものに身悶えさかり猫	さかり猫	春	19.3.3.
476	肉欲を露はに路地行くさかり猫	さかり猫	春	19.3.3.
477	難関を倦まず抜け行く上り鮎	上り鮎	春	19.3.3.
478	難関を知らぬが仏上り鮎	上り鮎	春	19.3.3.
479	若鮎に逡巡はなしひた上る	若鮎	春	19.3.3.
480	水底に影走らせて上り鮎	上り鮎	春	19.3.3.
481	川幅を少し広げて春の水	春の水	春	19.3.3.
482	若鮎の姿（なり）美しく上り行く	若鮎	春	19.3.4.
483	若鮎の先を競ひて段差越ゆ	若鮎	春	19.3.4.
484	若鮎や青春と言ふひと盛り	若鮎	春	19.3.4.
485	迷ひなき青春賛歌のぼり鮎	上り鮎	春	19.3.4.
486	生れ出てまだ暗闇の子猫かな	子猫	春	19.3.4.
487	開かぬ眼に乳欲り縺る仔猫かな	仔猫	春	19.3.4.
488	開かぬ眼に乳欲る子猫縺れ合ふ	子猫	春	19.3.4.
489	電柱に子猫譲ると写真付き	子猫	春	19.3.4.
490	眼も開かぬ子猫のしたる欠伸かな	子猫	春	19.3.4.
491	団子屋の幟はためき風光る	風光る	春	19.3.4.
492	味噌田楽おふくろの味ほろと食む	田楽	春	19.3.4.
493	田楽はおふくろの味ほろと食む	田楽	春	19.3.4.
494	春の夜や読経の裏を打つ木魚	春の夜	春	19.3.4.
495	春の夜の読経裏打つ木魚かな	春の夜	春	19.3.5.
496	春の夜や宵から続く木魚の音	春の夜	春	19.3.5.
497	春の夜や顔真卿の筆踊る	春の夜	春	19.3.5.
498	シルバーパス示す老尼や春うらら	春うらら	春	19.3.5.
499	啓蟄や髭剃り忘れ大慌て	啓蟄	春	19.3.5.
500	啓蟄やけふは祝賀の席に出づ	啓蟄	春	19.3.5.
501	桃咲ひて桃源郷となる廃村	桃の花	春	19.3.5.
502	桃咲ひて桃源郷の過疎の村	桃の花	春	19.3.5.
503	雛飾り桃の代わりに梅の花	梅の花	春	19.3.5.
504	限界の集落埋む桃の花	桃の花	春	19.3.5.
505	水車朽ち人無き里の桃の花	桃の花	春	19.3.5.
506	日を受けて光を返すいたちぐさ	いたちぐさ（＝連翹）	春	19.3.5.
507	シルバーパス示すシスター春うらら	春うらら	春	19.3.5.
508	住職も担ぎ手になる荒神輿	神輿	夏	19.3.6.
509	住職も担ぎ手になる村祭	祭り	夏	19.3.6.
510	白足袋が乱舞してゆく荒神輿	神輿	夏	19.3.6.
511	担ぎ手はにわか江戸っ子夏祭	夏祭	夏	19.3.6.
512	担ぎ手の江戸っ子気取る夏祭	夏祭	夏	19.3.6.
513	都大路無礼講なり荒神輿	神輿	夏	19.3.6.
514	嘶ける神馬も晴れ着夏祭	夏祭	夏	19.3.6.
515	寅さんの姿見かけし夏祭	夏祭	夏	19.3.6.
516	子供神輿色とりどりのスニーカー	神輿	夏	19.3.6.
517	女子サッカー部員の担ぐ荒神輿	神輿	夏	19.3.6.
518	荒くれに女子も混じるや荒神輿	神輿	夏	19.3.6.
519	序の口が主役で担ぐ荒神輿	神輿	夏	19.3.6.
520	序の口が主役務める荒神輿	神輿	夏	19.3.6.
521	樽酒で力を付けし荒神輿	神輿	夏	19.3.6.
522	綿飴を親子で舐めつ神輿追ふ	神輿	夏	19.3.6.
523	足踏んづけ踏んづけられて荒神輿	神輿	夏	19.3.6.
524	泣き疲れ子猫のしたる欠伸かな	子猫	春	19.3.6.
525	あべこべに靴履く幼風光る	風光る	春	19.3.7.
526	春眠を誘ふ横揺れ荒川線	春眠	春	19.3.7.
527	川縁に座り日を待つ残り鴨	残り鴨	春	19.3.7.
528	川縁に上がりうつらの残り鴨	残り鴨	春	19.3.7.
529	ふうわりと川辺に正座残り鴨	残り鴨	春	19.3.7.
530	骨酒も岩魚尽くしや杣の小屋（季語＝夏)	岩魚	夏	19.3.7.
531	春場所を告げる川筋触れ太鼓	春場所	春	19.3.7.
532	力士幟はたはた揺らす涅槃西風	涅槃西風	春	19.3.7.
533	触れ太鼓浪速の春を告げにけり	春場所	春	19.3.7.
534	回廊に火の粉舞い散るお水取り	お水取り	春	19.3.7.
535	火の粉舞ひ火の粉を被る修二会かな	修二会	春	19.3.7.
536	火の粉仰ぐ善男善女お水取り	お水取り	春	19.3.7.
537	坊さんも担ぎ手になる荒神輿	荒神輿	夏	19.3.7.
538	まつり女子男に混り荒神輿	荒神輿	夏	19.3.7.
539	春場所や御堂筋行く触れ太鼓	春場所	春	19.3.7.
540	突上ぐるもののありせば鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.8.
541	突き上ぐるものに委ねて鳥雲に	鳥雲に	春	19.3.8.
542	来た道の鞍部を越えて鳥雲に	鳥雲に	春	19.3.8.
543	航空路行くがごとくに鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.8.
544	木曽谷は父の産土鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.8.
545	横田基地悠々過り鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.8.
546	それぞれに定めの道を鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.8.
547	親から子相伝の道鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.8.
548	組合せいろいろあるや鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.8.
549	鳥帰る屋根付き橋を下に見て	鳥帰る	春	19.3.8.
550	熱気球浮かぶその上鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.8.
551	鎮魂の御嶽越えて鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.8.
552	担ぎ手に坊さんもゐる荒神輿	荒神輿	夏	19.3.8.
553	担ぎ手に修行の僧も荒神輿	荒神輿	夏	19.3.8.
554	春の昼客一人ゐる古書肆かな	春昼	春	19.3.9.
555	放ち鶏突然走る春の昼	春昼	春	19.3.9.
556	「オカムラバカ」いんこが叫ぶ春の昼	春昼	春	19.3.9.
557	春昼やワインを独り飲む女	春昼	春	19.3.9.
558	居眠りを無視する教師春の昼	春昼	春	19.3.9.
559	鼾かくなチョークの飛びし春の昼	春昼	春	19.3.9.
560	野遊びや草上で食む握り飯	野遊	春	19.3.9.
561	野遊びや匍匐前進してみたり	野遊	春	19.3.9.
562	野遊びや句帳手にして八千歩	野遊	春	19.3.9.
563	野遊びやなぜか人気の赤ワイン	野遊	春	19.3.9.
564	野遊びや輪になって飲む赤ワイン	野遊	春	19.3.9.
565	摘草や女らたちまち主婦の顔	摘草	春	19.3.9.
566	酢味噌和え胡麻和えもよし草を摘む	摘草	春	19.3.9.
567	摘草や男は持参の酒を酌む	摘草	春	19.3.9.
568	授業中響く鼾や春の昼	春昼	春	19.3.9.
569	まず葉ごと次いで葉を除け桜餅	桜餅	春	19.3.10.
570	長命寺詣で目当ては桜餅	桜餅	春	19.3.10.
571	酒飲みも墨堤で食ふ桜餅	桜餅	春	19.3.10.
572	桜餅目当てで参る長命寺	桜餅	春	19.3.10.
573	長命寺詣で左党も桜餅	桜餅	春	19.3.10.
574	長命寺参り列なし桜餅	桜餅	春	19.3.10.
575	花散らすほどにはあらじ桜まじ	桜まじ	春	19.3.10.
576	風鐸を揺らして過る桜まじ	桜まじ	春	19.3.10.
577	魚島を引きて飛び来る鴎かな	魚島	春	19.3.10.
578	魚島を引き連れて来る鴎かな	魚島	春	19.3.10.
579	魚島に鬨の声上ぐ漁師船	魚島	春	19.3.10.
580	魚島や瀬戸内の海盛り上る	魚島	春	19.3.10.
581	蕾の鉾天に向けたる紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.10.
582	恋多き女人の風情紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.10.
583	免許証返すと決めて紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.10.
584	庇裏水輪踊るや春の昼	春昼	春	19.3.11.
585	春一番水輪の踊る庇裏	春一番	春	19.3.11.
586	春昼や水輪の踊る庇裏	春昼	春	19.3.11.
587	海女小屋の窓にブラジャー風抜ける	海女小屋	春	19.3.11.
588	海女小屋の窓にブラジャー花吹雪	海女小屋	春	19.3.11.
589	どの海女も乳房露わはに磯かまど	海女	春	19.3.11.
590	息計り綱握りたる海女の夫	海女	春	19.3.11.
591	仕事終え乳房豊かに海女の小屋	海女	春	19.3.11.
592	庭園にモデル微笑む花衣	花衣	春	19.3.11.
593	招かれしセレブ競ひし花衣	花衣	春	19.3.11.
594	たちまちに被写体となる花衣	花衣	春	19.3.12.
595	墨堤をそぞろ歩きの花衣	花衣	春	19.3.12.
596	花びらをこぼしつ脱ぐぎし花衣	花衣	春	19.3.12.
597	帯解けば二片三片花ごろも	花衣	春	19.3.12.
598	花衣着たる二人は広東語	花衣	春	19.3.12.
599	兵たる父匍匐をしたる野に遊ぶ	野遊	春	19.3.12.
600	野遊びや煙りをちこちバーベキュー	野遊	春	19.3.12.
601	穴を出し蜥蜴が過る石畳	蛇穴を出る	春	19.3.12.
602	石垣の穴からぽとりやまかがし	蛇穴を出る	春	19.3.12.
603	蛇穴を出し城址の野積垣	蛇穴を出る	春	19.3.12.
604	蝌蚪の紐触るればぬると揺らめけり	蝌蚪の帯	春	19.3.12.
605	空色に老婆髪染め春うらら	春うらら	春	19.3.12.
606	空色の髪の老婆や春うらら	春うらら	春	19.3.12.
607	真っ直ぐに行く手定めて鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.12.
608	野を越えて山海越えて鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.12.
609	シジフォスの苦役にも似て鳥帰る	鳥帰る	春	19.3.12.
610	瀬戸内を魚島来ると鴎どち	魚島	春	19.3.12.
611	魚島に嬉々と付き添ふ伊予かもめ	魚島	春	19.3.12.
612	魚島のその一匹か膳の鯛	魚島	春	19.3.12.
613	魚島のその一匹の鯛を食む	魚島	春	19.3.12.
614	魚島の上で群れ舞ふ鴎かな	魚島	春	19.3.12.
615	魚島の位置を知らせる群れ鴎	魚島	春	19.3.12.
616	瀬戸内の海盛り上げて魚島来	魚島	春	19.3.13.
617	ごみ出しの頬にやさしき南風かな	南風	春	19.3.13.
618	うららかや電気走らす偏頭痛	麗らか	春	19.3.13.
619	麗らかや水輪の踊る庇裏	麗らか	春	19.3.13.
620	古里や木の芽田楽母の味	木の芽田楽	春	19.3.13.
621	田楽の青串増ゆる茶店酒	田楽	春	19.3.13.
622	行きつけで田楽あてに独り酒	田楽	春	19.3.13.
623	箸使ひ手慣れ菜飯を食む外人	菜飯	春	19.3.13.
624	目刺焼く匂ひ懐かし昭和かな	目刺	春	19.3.13.
625	目刺焼き車座で飲む男酒	目刺	春	19.3.13.
626	目刺焼き山の飯場の男酒	目刺	春	19.3.13.
627	春の野や一つ大きく深呼吸	春	春	19.3.14.
628	和えものも酢の物も佳し土筆摘む	土筆	春	19.3.14.
629	早よ摘めとばかりに土筆生え立てり	土筆	春	19.3.14.
630	ひと掴みほどの土筆を持ち帰る	土筆	春	19.3.14.
631	吟行で摘みし土筆を手土産に	土筆	春	19.3.14.
632	夜の膳摘みし土筆が酢の物に	土筆	春	19.3.14.
633	一握の土筆土産に家路かな	土筆	春	19.3.14.
634	車椅子押して遍路の母と子と	遍路	春	19.3.14.
635	風光る水上バスの太き水脈	風光る	春	19.3.14.
636	馬事公苑人馬一体風ひかる	風光る	春	19.3.14.
637	窯出しの大皿小皿風光る	風光る	春	19.3.14.
638	若冲ら奇想の系譜風光る	風光る	春	19.3.14.
639	島々の浮かぶ瀬戸内風光る	風光る	春	19.3.14.
640	瀬戸大橋橋桁太し風ひかる	風光る	春	19.3.14.
641	瀬戸内は渡船活躍風ひかる	風光る	春	19.3.14.
642	川底に影走らせて上り鮎	上り鮎	春	19.3.14.
643	連翹の籬光を満たしをり	連翹	春	19.3.15.
644	連翹や風が弾みて籬越ゆ	連翹	春	19.3.15.
645	連翹の籬に風も弾みけり	連翹	春	19.3.15.
646	連翹の籬を風の弾みゆく	連翹	春	19.3.15.
647	いたちぐさ背にまぐはひし道祖神	いたちぐさ（＝連翹）	春	19.3.15.
648	連翹や夫婦和合の道祖神	連翹	春	19.3.15.
649	連翹の光まとひし水車小屋	連翹	春	19.3.15.
650	連翹に飛沫きらめく水車小屋	連翹	春	19.3.15.
651	峪深き祖谷の里道いたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.15.
652	底抜けの能天気よしいたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.15.
653	眩しさを明るさに変えいたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.15.
654	底抜けの明るさが良しいたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.15.
655	気前よく光を返すいたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.15.
656	晴天に磨きを掛けるいたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.15.
657	誉め殺すほどに明るきいたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.15.
658	連翹や二連水車の回る里	連翹	春	19.3.15.
659	連翹や二連水車に日の眩し	連翹	春	19.3.15.
660	三連の水車華やぐいたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.15.
661	ここもまた人無き里やいたちぐさ	いたちぐさ	春	19.3.15.
662	苔清水竹樋に散る遅桜	遅桜	春	19.3.16.
663	苔清水峪へ散り行く遅桜	遅桜	春	19.3.16.
664	西行庵見守る一樹遅桜	遅桜	春	19.3.16.
665	奥千本とどのつまりの遅桜	遅桜	春	19.3.16.
666	西行の筆すらすらと遅桜	遅桜	春	19.3.16.
667	水車朽ち人無き里の遅桜	遅桜	春	19.3.16.
668	苔清水掬ぶ西行遅桜	遅桜	春	19.3.16.
669	旧友の相次ぐ訃報遅桜	遅桜	春	19.3.16.
670	みちのくはいまが盛りの遅桜	遅桜	春	19.3.16.
671	郵便車上る山路や遅桜	遅桜	春	19.3.16.
672	遠郭公早や聞く山の遅桜	遅桜	春	19.3.16.
673	山中に一樹堂々遅桜	遅桜	春	19.3.16.
674	多摩源流訪ねし山路遅桜	遅桜	春	19.3.16.
675	巨岩垂る札所の軒や遅桜	遅桜	春	19.3.16.
676	無住寺やしめやかに散る遅桜	遅桜	春	19.3.16.
677	川底に水脈刻むかに蜷の道	蜷の道	春	19.3.16.
678	吾八十路蜷の刻みし道に似て	蜷の道	春	19.3.16.
679	刻み行く生きし証しの蜷の道	蜷の道	春	19.3.16.
680	刻みたる生きし証しの蜷の道	蜷の道	春	19.3.16.
681	吾もまた八十路刻めり蜷の道	蜷の道	春	19.3.16.
682	ぺちゃくちゃと喋り続けて百千鳥	百千鳥	春	19.3.16.
683	ぺちゃくちゃと喋り続ける百千鳥	百千鳥	春	19.3.16.
684	ぺちゃくちゃとてんでに喋る百千鳥	百千鳥	春	19.3.16.
685	春昼や呟き始む冷蔵庫	春昼	春	19.3.17.
686	春昼や小人ゐさうな玉子茸	春昼	春	19.3.17.
687	木魚の音緩急ありぬ春の昼	春昼	春	19.3.17.
688	春昼や本を補修の古書店主	春昼	春	19.3.17.
689	小日向は急坂ばかり春の昼	春昼	春	19.3.17.
690	春昼や哲学堂の涅槃像	春昼	春	19.3.17.
691	数寄凝らす芙美子旧居や春の昼	春昼	春	19.3.17.
692	人影に鯉の大口春の昼	春昼	春	19.3.17.
693	数式で埋まる黒板春の昼	春昼	春	19.3.17.
694	野遊びやお結び落としべそ掻く子	野遊び	春	19.3.17.
695	野遊びの子らの髪の毛日の匂ひ	野遊び	春	19.3.17.
696	野遊びの園児てんでに駆け回る	野遊び	春	19.3.17.
697	木魚にも緩急徐あり春の昼	春昼	春	19.3.17.
698	春寒やスープに浮かぶ髪一筋	春寒	春	19.3.17.
699	貧乏と同行二人てふ遍路	遍路	春	19.3.17.
700	般若経声上げて読む春の昼	春昼	春	19.3.18.
701	園舎からおもちゃのちゃちゃちゃ春の昼	春昼	春	19.3.18.
702	ソナチネを誰が弾くのか春の昼	春昼	春	19.3.18.
703	蝌蚪の紐泳ぎ出てゆく黒き粒	蝌蚪	春	19.3.18.
704	つぎつぎと紐離れ行く数珠子かな	蝌蚪	春	19.3.18.
705	川の澱動く団子は蝌蚪の群れ	蝌蚪	春	19.3.18.
706	これ全部命持ちたる蝌蚪団子	蝌蚪	春	19.3.18.
707	芥子粒が固まり泳ぐ蝌蚪団子	蝌蚪	春	19.3.18.
708	騒めける塒の一樹百千鳥	百千鳥	春	19.3.18.
709	電車過ぐガードに紛ふ百千鳥	百千鳥	春	19.3.18.
710	百千鳥聞く耳持たず囃しけり	百千鳥	春	19.3.18.
711	百千鳥聞く耳持たず囃し合ふ	百千鳥	春	19.3.18.
712	百千鳥聞く耳持たず囃し立つ	百千鳥	春	19.3.18.
713	囃したて一樹膨らむ百千鳥	百千鳥	春	19.3.18.
714	ガード下居るかのごとし百千鳥	百千鳥	春	19.3.18.
715	囃し立つ塒の一樹百千鳥	百千鳥	春	19.3.18.
716	山深く人無き里の遅桜	遅桜	春	19.3.19.
712	奥千本西行庵の遅桜	遅桜	春	19.3.19.
713	ででぽぽと鳩鳴く里の遅桜	遅桜	春	19.3.19.
714	遭難碑二十歳とありぬ遅桜	遅桜	春	19.3.19.
715	遅桜散り初む山路遭難碑	遅桜	春	19.3.19.
716	廃校舎人無き庭の遅桜	遅桜	春	19.3.19.
717	遅桜熊出没とある山路	遅桜	春	19.3.19.
718	遅桜咲く山里に郵便車	遅桜	春	19.3.19.
719	遅桜散り初む祖谷のかずら橋	遅桜	春	19.3.19.
720	平成の終り見届け遅桜	遅桜	春	19.3.19.
721	散り初むる人無き里の遅桜	遅桜	春	19.3.19.
722	鉱山跡人無き谿の遅桜	遅桜	春	19.3.19.
723	炭焼きの古し窯跡遅桜	遅桜	春	19.3.19.
724	風強き竜飛岬や遅桜	遅桜	春	19.3.19.
725	風強き竜飛の岬遅桜	遅桜	春	19.3.19.
726	祖谷の里つづら上れば遅桜	遅桜	春	19.3.19.
727	姿見の池にさざ波風光る	風光る	春	19.3.20.
728	遠富士の浮かぶ連山風光る	風光る	春	19.3.20.
729	遠富士の浮かぶ山波風光る	風光る	春	19.3.20.
730	風光る吊り橋の揺れアフタクト	風光る	春	19.3.20.
731	ページ繰る立体絵本風光る	風光る	春	19.3.20.
732	子の繰りし立体絵本風光る	風光る	春	19.3.20.
733	太陽とほどよき距離や風光る	風光る	春	19.3.20.
734	疑はず堰に挑むや上り鮎	上り鮎	春	19.3.20.
735	スケボーの選手に紛ふ上り鮎	上り鮎	春	19.3.20.
736	連翹の影は不要と咲きにけり	連翹	春	19.3.20.
737	連翹の籬抜け行く郵便車	連翹	春	19.3.20.
738	青空をなほ明るめて連翹黄	連翹	春	19.3.20.
739	連翹やちと明るすぎはしまいか	連翹	春	19.3.20.
740	連翹や雨が上がれば傘畳む	連翹	春	19.3.20.
741	光る風吊り橋揺るるアウフタクト	風光る	春	19.3.20.
742	吊り橋の揺れアウフタクト風光る	風光る	春	19.3.20.
743	連翹や雨が上がりぬ傘畳む	連翹	春	19.3.21.
744	風ぬるし蕾解き初む紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
745	風ぬるし白き蹴出しの紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
746	大胆に花芯開けり紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
747	咲き初めもあばずれ気取る紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
748	ぼってりと年増の色気紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
749	裾開き自堕落気取る紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
750	情深き女の気配紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
751	咲き初めて風に乱るる紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
752	風呼んで狂恋見せる紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
753	紫木蓮開く花芯に日の惑ひ	紫木蓮	春	19.3.21.
754	荒々し女の色気紫木蓮	紫木蓮	春	19.3.21.
755	紫木蓮男狂はす魔性あり	紫木蓮	春	19.3.21.
756	紫木蓮魔性の女かも知れず	紫木蓮	春	19.3.21.
757	風に乗り潮騒とどく遍路宿	遍路宿	春	19.3.21.
758	蝌蚪の紐触るればゆらり揺らめけり	蝌蚪の紐	春	19.3.21.
759	魚島を引き連れ来たる鴎かな	魚島	春	19.3.21.
760	風光る吊り橋の揺れアウフタクト	風光る	春	19.3.21.
761	歩とずれし吊り橋の揺れ風光る	風光る	春	19.3.21.
762	歩とずれて揺るるつり橋風光る	風光る	春	19.3.21.
763	春昼や和綴じ補修の古書店主	春昼	春	19.3.21.
764	眼福の顔が見上ぐる初桜	初桜	春	19.3.22.
765	息ひそめ顔寄せ仰ぐ初桜	初桜	春	19.3.22.
766	眼前に富士据へ忍野の初桜	初桜	春	19.3.22.
767	梅散れば入れ替はるかに初桜	初桜	春	19.3.22.
768	初花の数を数へる気象庁	初花	春	19.3.22.
769	初花に早や蜜吸ひの虫の影	初花	春	19.3.22.
770	自撮りの手あちこち伸びる花見かな	花見	春	19.3.22.
771	花粉症涙目で見る初桜	初桜	春	19.3.22.
772	初花や涙目をしてはいチーズ	初花	春	19.3.22.
773	涙目に滲み歪みし初桜	初桜	春	19.3.22.
774	初花の上五句並ぶ句帳かな	初花	春	19.3.22.
775	平成の最後飾りて初桜	初桜	春	19.3.22.
776	立ち食ひの蕎麦屋の窓や初桜	初桜	春	19.3.22.
777	初花円き人の輪ひねもせり	初花	春	19.3.22.
778	涙目を押して見に行く初桜	初桜	春	19.3.22.
779	初桜見上げ頷き立ち去りぬ	初桜	春	19.3.22.
780	眼帯を外せば眩し初桜	初桜	春	19.3.22.
781	免許証返上済ませ初桜	初桜	春	19.3.22.
782	連翹や雨上がりたり傘畳む	連翹	春	19.3.22.
783	ぎこちなく揺れる吊り橋風光る	風光る	春	19.3.23.
784	ちぐはぐに揺るる吊り橋風光る	風光る	春	19.3.23.
785	吊り橋の意表突く揺れ風光る	風光る	春	19.3.23.
786	足裏突く吊り橋の揺れ風光る	風光る	春	19.3.23.
787	逡巡は辞書に無きかに上り鮎	上り鮎	春	19.3.23.
788	吊り橋の波打つ揺れや風光る	風光る	春	19.3.23.
789	山里の見えて連翹花明かり	連翹	春	19.3.23.
790	連翹の明るき里を郵便車	連翹	春	19.3.23.
791	連翹の花の明かりや磴百段	連翹	春	19.3.23.
792	連翹の花の明かりや木魚の音	連翹	春	19.3.23.
793	連翹の明るき寺に木魚の音	連翹	春	19.3.23.
794	川底に水脈を刻むや蜷の道	蜷の道	春	19.3.23.
795	四月馬鹿新元号の発表日	四月馬鹿	春	19.3.24.
796	四月馬鹿話題は一つ新元号	四月馬鹿	春	19.3.24.
797	新元号発表さるる四月馬鹿	四月馬鹿	春	19.3.24.
798	新元号よもやと思ふ万愚節	万愚節	春	19.3.24.
799	はめられぬ二重ファスナー万愚節	万愚節	春	19.3.24.
800	四月馬鹿決め込んでゐる四月馬鹿	四月馬鹿	春	19.3.24.
801	プロポーズ真面目にしたる四月馬鹿	四月馬鹿	春	19.3.24.
802	バレ話大声でする四月馬鹿	四月馬鹿	春	19.3.24.
803	犬が西向けば尾東万愚説	万愚節	春	19.3.24.
804	野良が来て欠伸してゆく万愚節	万愚節	春	19.3.24.
805	一年中四月馬鹿だと言ふ親爺	四月馬鹿	春	19.3.24.
806	欠伸して犬が尾を振る四月馬鹿	四月馬鹿	春	19.3.24.
807	あんぐりと野良の欠伸や万愚節	四月馬鹿	春	19.3.25.
808	つばくらめ翻りまた翻り	燕	春	19.3.25.
809	単線の駅舎を潜る初燕	初燕	春	19.3.25.
810	単線のホームに立てば飛燕舞ふ	燕	春	19.3.25.
811	地を掠め尖搭かすめ初燕	初燕	春	19.3.25.
812	無人駅飛燕の技を楽しめり	燕	春	19.3.25.
813	盗み見ず電線にゐる若燕	燕	春	19.3.25.
814	戦闘機やはり飛燕の模倣かな	燕	春	19.3.25.
815	廃村の人無き軒につばくらめ	燕	春	19.3.25.
816	「落下物注意」の札や燕来る	燕	春	19.3.25.
817	交番の軒にぎやかに雛燕	燕	春	19.3.25.
818	老いを知り老いを尽くさん遅桜	遅桜	春	19.3.26.
819	耳遠く目は霞めども遅桜	遅桜	春	19.3.26.
820	おさならの声あげ駈くる花吹雪	花吹雪	春	19.3.26.
821	木魚の音掻き消すや花吹雪	花吹雪	春	19.3.26.
822	積りゆく数凄まじや花吹雪	花吹雪	春	19.3.26.
823	花筏背びれが残す鯉の水脈	花筏	春	19.3.26.
824	花筏堰で別れてまた集ふ	花筏	春	19.3.26.
825	鯉の背が水脈描きゆく花筏	花筏	春	19.3.26.
826	花吹雪潜る機関車トーマス号	花吹雪	春	19.3.26.
827	無住寺に人影はなし遅桜	遅桜	春	19.3.26.
828	花吹雪地の遠近にトルネード	花吹雪	春	19.3.26.
829	花吹雪浴びて泰然猿のボス	花吹雪	春	19.3.26.
830	火鉢池どこから来たか花筏	花筏	春	19.3.26.
831	頭髪に飛花ひとひらを載せ帰る	飛花	春	19.3.26.
832	白銀の遠見の富士や初燕	初燕	春	19.3.26.
833	つばくらは翻りまた翻り	燕	春	19.3.26.
834	初つばめ翻りまた翻り	初燕	春	19.3.26.
835	単線の駅舎抜け行く初燕	初燕	春	19.3.26.
836	後継ぎの無くて捨て畑春の草	春の草	春	19.3.27.
837	捨て畑や紫雲英と紛ふ踊子草	紫雲英・踊子草	春	19.3.27.
838	反り撓り風やり過ごす雪柳	雪柳	春	19.3.27.
839	垣なせる小米桜の白眩し	小米桜（＝雪柳）	春	19.3.27.
840	競ふごと小枝波打つ雪やなぎ	雪柳	春	19.3.27.
841	波打ちて花さんざめく雪柳	雪柳	春	19.3.27.
842	黄昏の野道急がす雪やなぎ	雪柳	春	19.3.27.
843	風無くば雪の景なす小米花	小米花（＝雪柳）	春	19.3.27.
844	風吹けば嬉々と戯る雪やなぎ	雪柳	春	19.3.27.
845	風来れば大揺れ小揺れ雪柳	雪柳	春	19.3.27.
846	園児らの走る小径や雪やなぎ	雪柳	春	19.3.27.
847	静と動くっきり見せて雪やなぎ	雪柳	春	19.3.27.
848	嫌な奴の名も物忘れ春うらら	春うらら	春	19.3.27.
849	日出山もこりもこりと花馬酔木	花馬酔木	春	19.3.27.
850	背の高き一樹めずらし花馬酔木	花馬酔木	春	19.3.27.
851	胸固く晒巻きたる女子神輿	神輿	春	19.3.28.
852	すべてみな昔となりし潮干狩	潮干狩	春	19.3.28.
853	汐干潟おいでおいでと汐まねき	汐干潟	春	19.3.28.
854	汐まねき鋏振り出す汐干かな	汐干	春	19.3.28.
856	潮干狩り縄文人の血筋かな	潮干狩	春	19.3.28.
857	離発着する飛機を背に潮干狩	潮干狩	春	19.3.28.
858	酢味噌和え独活しゃきしゃきと夜の膳	独活	春	19.3.28.
859	山独活を見つけて帰路は急ぎ足	独活	春	19.3.28.
860	独活を食む異邦の人の正座かな	独活	春	19.3.28.
861	独活煮たる話はついぞ聞かざりし	独活	春	19.3.28.
862	山独活の朝採り出でし膳に着く	独活	春	19.3.28.
863	室の独活白き女体を掘る妖気	独活	春	19.3.28.
864	室の独活白き女体を掘る気分	独活	春	19.3.28.
865	室の独活掘れば女体の白き肌	独活	春	19.3.28.
866	突出しは独活しゃきしゃきと酢味噌和え	独活	春	19.3.28.
867	春眠や夢の続きを見てをりぬ	春眠	春	19.3.28.
868	春眠に誘ひ込まれて羽化登仙	春眠	春	19.3.28.
869	春眠や乗り過ごしたる駅三つ	春眠	春	19.3.28.
870	春眠の数の増えたる車内かな	春眠	春	19.3.29.
871	春眠のスマホ落とさぬ女高生	春眠	春	19.3.29.
872	春眠の傾く客に肩を引く	春眠	春	19.3.29.
873	春眠の客の傾き三十度	春眠	春	19.3.29.
874	春眠の乗客傾ぐ三十度	春眠	春	19.3.29.
875	春眠の傾く客を肩透かし	春眠	春	19.3.29.
876	春愁と五回書きたり春うれひ	春愁	春	19.3.29.
877	春愁と呟いてみる春うれひ	春愁	春	19.3.29.
878	カルチャーで春愁と書く受講生	春愁	春	19.3.29.
879	八十路なる翁にもなほ春愁	春愁	春	19.3.29.
880	犇めける鯉の大口春愁	春愁	春	19.3.29.
881	廃屋の消えし跡地や春うれひ	春愁	春	19.3.29.
882	室の独活掘れば艶めく白き肌	独活	春	19.3.29.
883	春眠の傾ぐをすっと肩透かし	春愁	春	19.3.29.
884	春眠の傾ぐ隣に肩透かし	春愁	春	19.3.29.
885	青春の真っただ中の春うれひ	春愁	春	19.3.29.
886	花冷や江ノ電走る由比ヶ浜	花冷	春	19.3.30.
887	花冷や散歩の犬もちゃんちゃんこ	花冷	春	19.3.30.
888	花冷やラーメン店の長き列	花冷	春	19.3.30.
889	花冷や井伊家の菩提豪徳寺	花冷	春	19.3.30.
890	花冷も気にせずサバー波に乗る	花冷	春	19.3.30.
891	花冷や取り沙汰される新元号	花冷	春	19.3.30.
892	海女もみなウエットスーツ着て仕事	海女	春	19.3.30.
893	海女小屋や還暦過ぎし海女ばかり	海女	春	19.3.30.
894	コンビニですべて誂へ花見かな	花見	春	19.3.30.
895	飲み食ひはコンビニ仕立て花の宴	花の宴	春	19.3.30.
896	花冷や箱根に向ふロマンスカー	花冷	春	19.3.30.
897	涙目でしょぼくれ候花粉症	花粉症	春	19.3.30.
898	八十路にて花粉症出る晩熟（おくて）かな	花粉症	春	19.3.30.
899	春眠のうつらのままに逝けぬかな	春眠	春	19.3.30.
900	海女小屋の窓にブラジャー秘密めく	海女小屋	春	19.3.31.
901	海女小屋の窓にブラジャー艶めきぬ	海女小屋	春	19.3.31.
902	海女小屋の窓にブラジャー揺れにけり	海女小屋	春	19.3.31.
903	海女小屋の窓にブラジャー風に揺る	海女小屋	春	19.3.31.
904	海女小屋の窓にブラジャーDカップ	海女小屋	春	19.3.31.
905	川底に水脈刻むかに蜷の道	蜷の道	春	19.3.31.
906	姑の仕事となりて礒菜摘む	礒菜摘	春	19.3.31.
907	降りかかる飛沫に濡れつ礒菜摘み	礒菜摘	春	19.3.31.
908	濡れそぼち摘みし礒菜の汁旨し	礒菜摘	春	19.3.31.
909	大声で言葉交しつ礒菜摘む	礒菜摘	春	19.3.31.
910	医者いらず浜の女の礒菜摘み	礒菜摘	春	19.3.31.
911	除けきれれぬ飛沫に濡れつ礒菜摘む	礒菜摘	春	19.3.31.
912	礒菜摘む浜の女は医者知らず	礒菜摘	春	19.3.31.
913	元海女のお婆逞し磯菜摘み	礒菜摘	春	19.3.31.
914	春眠の生徒に飛びし白チョーク	春眠	春	19.3.31.
915	春眠や教師の声は子守歌	春眠	春	19.3.31.
916	春眠や吾呼ぶ声の懐かしき	春眠	春	19.4.1..
917	春睡の少年起こすスマホかな	春睡	春	19.4.1..
918	新元号告げし佳き日や万愚節	万愚節	春	19.4.1..
919	新元号告げて記念の万愚節	万愚節	春	19.4.1..
920	新元号聞き耳立てて万愚節	万愚節	春	19.4.1..
921	講師の声遠のひて行く目借時	目借時	春	19.4.1..
922	腹の鳴る音聞きつ目借時	目借時	春	19.4.1..
923	むず痒き目まで蛙に貸し与ふ	蛙の目借時	春	19.4.1..
924	老眼も問はぬと蛙目借時	蛙の目借時	春	19.4.1..
925	電話鳴り目貸しし蛙呼び戻す	蛙の目借時	春	19.4.1..
926	春眠やうつらうつらの舟を漕ぐ	春眠	春	19.4.1..
927	春眠は天国行きの下見かな	春眠	春	19.4.1..
928	梅讃ふ万葉由来令和なる	梅	春	19.4.1..
929	梅讃ふ万葉由来令和明く	梅	春	19.4.1..
930	新元号令和に決まる万愚節	万愚節	春	19.4.1..
931	朝靄の薄れゆくなり糸繰草（＝苧環)	糸繰草（＝苧環）	春	19.4.2.
932	をだまきの咲きて雅な峡の宿	苧環	春	19.4.2.
933	苧環とともに暮れ行く峡の里	苧環	春	19.4.2.
934	苧環のなぞへ埋めたる寺の磴	苧環	春	19.4.2.
935	ふいを突く濁声太き牛蛙	牛蛙	春	19.4.2.
936	姿なく虚を突き吠ゆる牛蛙	牛蛙	春	19.4.2.
937	牛蛙野太き声のラブコール	牛蛙	春	19.4.2.
938	濁声の太きに懸くる牛蛙	牛蛙	春	19.4.2.
939	牛蛙吠えて雌呼びまぐはへり	牛蛙	春	19.4.2.
940	弁天池ずるりと入りし牛蛙	牛蛙	春	19.4.2.
941	放棄田の増えて田螺のぬた料理	田螺	春	19.4.2.
942	放棄田の増えて田螺の湧く川辺	田螺	春	19.4.2.
943	戦中の懐かしき味田螺食む	田螺	春	19.4.2.
944	昭和から三代生きて田螺食む	田螺	春	19.4.2.
945	田の減りて田螺湧く里ぬたを食む	田螺	春	19.4.2.
946	片貝となりて淋しき桜貝	桜貝	春	19.4.2.
947	アルバムの古きページに桜貝	桜貝	春	19.4.2.
948	陽炎やコロッケ載せてパンを食ふ	陽炎	春	19.4.3.
949	陽炎に線路の踊る無人駅	陽炎	春	19.4.3.
950	ダリは多分かげろふ越しに絵を描けり	陽炎	春	19.4.3.
951	陽炎に鎮守の森の踊りをり	陽炎	春	19.4.3.
952	かげろふを独り遊ばせ野の仏	陽炎	春	19.4.3.
953	陽炎や急に音立つジーゼルカー	陽炎	春	19.4.3.
954	腰折の山を霞ませ瀬戸は凪	霞	春	19.4.3.
955	捨て畑の広がる里や薄霞	薄霞	春	19.4.3.
956	かげろふの立つ公園に鳩が二羽	陽炎	春	19.4.3.
957	富士肩に多摩の横山薄霞	薄霞	春	19.4.3.
958	遠富士を肩に江ノ島薄霞	薄霞	春	19.4.3.
959	つばくろの巣作り忙し無人駅	燕	春	19.4.3.
960	燕来て巣作り忙し札所寺	燕	春	19.4.3.
961	ひとひらの花舞ひ落ちぬさくら冷え	さくら冷	春	19.4.3.
962	「頭上注意」札立つ軒に燕の巣	燕	春	19.4.3.
963	陽炎にお出でおいでをしている子	陽炎	春	19.4.3.
964	花疲れ女性トイレの長き列	花疲れ	春	19.4.4.
965	バスタブに手足を伸ばす花疲れ	花疲れ	春	19.4.4.
966	車座にドカ雪のごと花吹雪	花吹雪	春	19.4.4.
967	車座にスマホ離さぬ花の宴	花の宴	春	19.4.4.
968	花見の輪そっと抜け出し縄のれん	花見	春	19.4.4.
969	ビンテージワインも回る花筵	花筵	春	19.4.4.
970	電動のママチャリ並ぶ花の宴	花の宴	春	19.4.4.
971	青き踏み外野を守る草野球	青き踏む	春	19.4.4.
972	女にも薄き髭あり青き踏む	青き踏む	春	19.4.4.
973	ブーメラン飛ばす少年青き踏む	青き踏む	春	19.4.4.
974	尻ぶつけきょうだい喧嘩汐干狩	汐干狩	春	19.4.4.
975	目の前におばさんの尻汐干狩	汐干狩	春	19.4.4.
976	かげろふを遊ばせてゐる野の仏	陽炎	春	19.4.4.
977	桜守混じる媼の薄化粧	桜守	春	19.4.5.
978	名刺には樹木医とあり桜守	桜守	春	19.4.5.
979	花守は女樹木医はだし足袋	花守	春	19.4.5.
980	吉野山埋め尽くしたる桜かな	桜	春	19.4.5.
981	車座になりて女子会花の宴	花の宴	春	19.4.5.
982	バスタブに桜ひとひら浮かびをり	桜	春	19.4.5.
983	散る桜地吹雪となるバス通り	桜	春	19.4.5.
984	満開の桜早くも散り急ぐ	桜	春	19.4.5.
985	花吹雪逃げも隠れもせぬ宴	花吹雪	春	19.4.5.
986	花吹雪浴びて華やぐ宴かな	花吹雪	春	19.4.5.
987	柿の葉寿司誂へ花の吉野山	桜	春	19.4.5.
988	花衣脱げば胸乳も緩びけり	花衣	春	19.4.5.
989	花衣脱げば息つく乳房かな	花衣	春	19.4.5.
990	川床を埋めし菜の花黄金川	菜の花	春	19.4.5.
991	野に遊ぶ子らの黒髪日の匂ひ	野遊び	春	19.4.5.
992	恋の猫憔悴したる朝帰り	恋猫	春	19.4.5.
993	激情に闇を修羅場の恋の猫	恋猫	春	19.4.5.
994	阿鼻叫喚欲情滾る恋の猫	恋猫	春	19.4.5.
995	穂を揃へ緑鮮やか松葉独活	松葉独活（＝アスパラガス）	春	19.4.６.
996	明日葉の三種定食道の駅	明日葉	春	19.4.６.
997	朝採りの明日葉並ぶ道の駅	明日葉	春	19.4.６.
998	山路来て日当る窪や春竜胆	春竜胆	春	19.4.６.
999	切通し抜けし日向に春竜胆	春竜胆	春	19.4.６.
1000	日を集む山路の窪や春竜胆	春竜胆	春	19.4.６.


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