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鈴童の遊び

1	一本釣り空飛ぶ魚となる鰹	鰹	夏	19.6.4.
2	青梅のぽとんぽとりと落ち始む	青梅	夏	19.6.5.
3	青梅のぽとんぽとりと落ちる庭	青梅	夏	19.6.5.
4	青梅のぽとんぽとりと庭静か	青梅	夏	19.6.5.
5	早よ採れと促し落ちる実梅かな	実梅	夏	19.6.5.
6	青梅のぽとんと落ちる音静か	青梅	夏	19.6.5.
7	吊り橋を渡る背に聞くほととぎす	ほととぎす	夏	19.6.5.
8	吊り橋の足下は深しほととぎす	ほととぎす	夏	19.6.5.
9	早口に何伝へるやほととぎす	ほととぎす	夏	19.6.5.
10	禅僧の洒脱な説話ほととぎす	ほととぎす	夏	19.6.5.
11	座禅堂響く警策ほととぎす	ほととぎす	夏	19.6.5.
12	老鶯に歌合戦のほととぎす	ほととぎす	夏	19.6.5.
13	老鶯の鳴けば相の手ほととぎす	ほととぎす	夏	19.6.5.
14	谿風にひらひらと舞ひ竹落葉	竹落葉	夏	19.6.5.
15	くるくると舞ひひらひらと竹落葉	竹落葉	夏	19.6.5.
16	木道の歩荷（ボッカ）の影や水芭蕉	水芭蕉	夏	19.6.5.
17	雨蛙ポケットから出す昭和の子	雨蛙	夏	19.6.5.
18	雨蛙大合唱の無人駅	雨蛙	夏	19.6.5.
19	木道を三段跳びの雨蛙	雨蛙	夏	19.6.5.
20	紫陽花の葉上に蹲踞雨がえる	雨蛙	夏	19.6.5.
21	葉一枚ごとに蹲踞の雨がえる	雨蛙	夏	19.6.5.
22	雨蛙葉に載せたれば青蛙	雨蛙	夏	19.6.5.
23	さくらんぼ頂き物をいただけり	さくらんぼ	夏	19.6.6.
24	さくらんぼ一粒含みまたふふむ	さくらんぼ	夏	19.6.6.
25	ガラス器に盛られて眩しさくらんぼ	さくらんぼ	夏	19.6.6.
26	柄を摘みゆっくり含むさくらんぼ	さくらんぼ	夏	19.6.6.
27	並木道踏みしだかれし桜の実	桜の実	夏	19.6.6.
28	舌に載せ柄を引き食めりさくらんぼ	さくらんぼ	夏	19.6.6.
29	しめやかに梅雨に濡れ立つ六地蔵	梅雨	夏	19.6.6.
30	梅雨蝶の成す術もなき葉裏かな	梅雨	夏	19.6.6.
31	雨蛙大合唱の昭和かな	雨蛙	夏	19.6.6.
32	滴りの悠久刻む鍾乳洞	滴り	夏	19.6.6.
33	梅雨に入り野仏けふも灌仏会	梅雨	夏	19.6.6.
34	青梅雨や甘茶仏めく野の仏	青梅雨	夏	19.6.6.
35	木道を渡る歩荷（ボッカ）や水芭蕉	水芭蕉	夏	19.6.6.
36	丑三つの厨でハミング冷蔵庫	冷蔵庫	夏	19.6.6.
37	丑三つに低きハミング冷蔵庫	冷蔵庫	夏	19.6.6.
38	丑三つにハミング聞こゆ冷蔵庫	冷蔵庫	夏	19.6.6.
39	丑三つにひそとハミング冷蔵庫	冷蔵庫	夏	19.6.6.
40	関取のまわしめきたる昆布刈る	昆布刈	夏	19.6.6.
41	喫水線上げて重たき鰹船	鰹	夏	19.6.7.
42	昆布干す浜一面の黒光り	昆布干	夏	19.6.7.
43	刈り来る昆布総出の天日干し	昆布干	夏	19.6.7.
44	天日干ししたる昆布を折りたたむ	昆布干	夏	19.6.7.
45	刈りし昆布浜黒々と天日干し	昆布干	夏	19.6.7.
46	刈りし昆布浜いっぱいに天日干し	昆布干	夏	19.6.7.
47	刈りし昆布浜を覆ひて天日干し	昆布干	夏	19.6.7.
48	屋根を打つ音しめやかに梅雨入かな	梅雨入	夏	19.6.7.
49	屋根を打つ音しめやかに梅雨に入る	梅雨入	夏	19.6.7.
50	野仏の誕生仏めく梅雨入かな	梅雨入	夏	19.6.7.
51	大串の山女を食みつ杣の宴	山女	夏	19.6.7.
52	滴りの頭頂に落ち背にするり	滴り	夏	19.6.7.
53	蜜吸ひの虫を拒んで水中花	水中花	夏	19.6.8.
54	熱帯魚遊ばせている水中花	水中花	夏	19.6.8.
55	熱帯魚出入りしてゐる水中花	水中花	夏	19.6.8.
56	水中花吐息のごとく泡一つ	水中花	夏	19.6.8.
57	水中花置いて客待つ占い師	水中花	夏	19.6.8.
58	ロゴス亭テーブル飾る水中花	水中花	夏	19.6.8.
59	ロゴス亭シェフのこだわる水中花	水中花	夏	19.6.8.
60	カウンター端の定位置水中花	水中花	夏	19.6.8.
61	蜜吸ひの蝶あわただし梅雨晴れ間	梅雨晴れ間	夏	19.6.8.
62	黒揚羽影と縺れる日の盛り	揚羽蝶	夏	19.6.8.
63	黒い影シンクロさせて黒揚羽	揚羽蝶	夏	19.6.8.
64	己が影シンクロさせて黒揚羽	揚羽蝶	夏	19.6.8.
65	どれもみな尻美しき実梅捥ぐ・	実梅	夏	19.6.8.
66	鍾乳洞悠久刻み滴れり	滴り	夏	19.6.8.
67	鍾乳祠久遠を刻み滴れり	滴り	夏	19.6.8.
68	青梅の尻美しく蒙古班	青梅	夏	19.6.8.
69	儚さを身に纏ひたる守宮かな	守宮	夏	19.6.9.
70	硝子戸に守宮張り付く日暮れかな	守宮	夏	19.6.9.
71	飾り文字キの字張り付く守宮かな	守宮	夏	19.6.9.
72	浴室の窓に守宮のキの字かな	守宮	夏	19.6.9.
73	高窓に守宮張り付くバスルーム	守宮	夏	19.6.9.
74	無口なる少年の飼ふ守宮かな	守宮	夏	19.6.9.
75	肌色の守宮張り付く夜の玻璃戸	守宮	夏	19.6.9.
76	荒川線守宮張り付く車窓かな	守宮	夏	19.6.9.
77	新幹線出庫の窓の守宮かな	守宮	夏	19.6.9.
78	肌色の求肥のごとき守宮かな	守宮	夏	19.6.9.
79	守宮飼ふ少女の頬の笑窪かな	守宮	夏	19.6.9.
80	梅雨寒や残り少なの砂時計	梅雨寒	夏	19.6.9.
81	万緑や不治の病の緑内障	万緑	夏	19.6.9.
82	梅雨冷やぽつんと独り野の仏	梅雨冷	夏	19.6.9.
83	水中花吐息めきたる泡一つ	水中花	夏	19.6.9.
84	時の日や時だけ終りなき不思議	時の日	夏	19.6.9.
85	時の日や漏刻めきて外は雨	時の日	夏	19.6.10.
86	時の日や漏刻偲び外は雨	時の日	夏	19.6.10.
87	時の日や定刻守る新幹線	時の日	夏	19.6.10.
88	時の日や昭和の記憶荒川線	時の日	夏	19.6.10.
89	時の日や白髪の増えし無精ひげ	時の日	夏	19.6.10.
90	時の日や白髪の目立つ無精ひげ	時の日	夏	19.6.10.
91	原爆忌吾はそのとき少国民	原爆忌	夏	19.6.10.
92	少国民死語となりたる原爆忌	原爆忌	夏	19.6.10.
93	過ちを忘れてならじ原爆忌	原爆忌	夏	19.6.10.
94	黒揚羽ひらりと舞ひぬ原爆忌	原爆忌	夏	19.6.10.
95	黒き影ひらりと舞ひぬ原爆忌	原爆忌	夏	19.6.10.
96	原爆忌二発目許す無責任	原爆忌	夏	19.6.10.
97	折り鶴を携へて行く原爆忌	原爆忌	夏	19.6.10.
98	折り鶴のずしりと重き原爆忌	原爆忌	夏	19.6.10.
99	さくらんぼ百粒むしゃと食みし夢	さくらんぼ	夏	19.6.10.
100	父の日や父思ひ出し位牌開く	父の日	夏	19.6.10.
101	父の日の付け足しめきて面映ゆし	父の日	夏	19.6.10.
102	時の日や昭和の残る荒川線	時の日	夏	19.6.10.
103	嬉々として雨を呼ぶ声雨蛙	雨蛙	夏	19.6.11.
104	何事の畑ならんと帚草	帚草	夏	19.6.11.
105	ピーピーとケトル姦し梅雨入りかな）	梅雨入	夏	19.6.11.
106	蜜吸ひの虫寄せつけぬ水中花	水中花	夏	19.6.11.
107	時の日や漏刻と書く水時計	時の日	夏	19.6.11.
108	帚草実のとんぶりをあてに呑む	帚草	夏	19.6.11.
109	ぷちぷちと食むとんぶりや帚草	帚草	夏	19.6.11.
110	一枚の目立つ畑あり帚草	帚草	夏	19.6.11.
111	とんぶりは畑のキャビア帚草	帚草	夏	19.6.11.
112	何事の畑と見れば帚草	帚草	夏	19.6.11.
113	父の日や父懐かしく位牌開く	父の日	夏	19.6.11.
114	父の日の孫と酒酌む一夜かな	父の日	夏	19.6.11.
115	腰折の山滴れて腰伸ばす	山滴る	夏	19.6.12.
116	吊り橋や山滴りて峪深し	山滴る	夏	19.6.12.
117	ケーブルカー山滴れば軋みけり	山滴る	夏	19.6.12.
118	鍾乳洞滴る山の地下宮殿	山滴る	夏	19.6.12.
119	山寺や山滴りて磴千段	山滴る	夏	19.6.12.
120	砂日傘甲羅干す間もスマホ繰る	砂日傘	夏	19.6.12.
121	砂日傘日を避けて繰るスマホかな	砂日傘	夏	19.6.12.
122	泳ぐ間を惜しみスマホの砂日傘	砂日傘	夏	19.6.12.
123	赤々と夕日と競ふ帚草	帚草	夏	19.6.12.
124	夕焼けに競ひて燃ゆる帚草	帚草	夏	19.6.12.
125	突出しは畑のキャビア帚草	帚草	夏	19.6.12.
126	ケーブルカー山滴りて軋みけり	山滴る	夏	19.6.12.
127	けろけろと雨を呼ぶかに雨蛙	雨蛙	夏	19.6.12.
128	砂日傘海に入らずスマホかな	砂日傘	夏	19.6.13.
129	夕映えに朱を燃え立たす帚草	帚草	夏	19.6.13.
130	鴎外の墓に尻向け桜桃忌	桜桃忌	夏	19.6.13.
131	青は赤赤は青追ふべらの恋	べら	夏	19.6.13.
132	茗荷の子くきくきくきと摘みゆけり	茗荷の子	夏	19.6.13.
133	朝露に濡れつ摘みたる茗荷の子	茗荷の子	夏	19.6.13.
134	朝採りが味噌椀になる茗荷の子	茗荷の子	夏	19.6.13.
135	あぶな絵ののけぞる女洗ひ髪	洗ひ髪	夏	19.6.13.
136	髪洗ふ女の背の毅然たる	髪洗ふ	夏	19.6.13.
137	髪洗ひ勝負をかける女かな	髪洗ふ	夏	19.6.13.
138	髪洗ひ一つのけじめ付けし朝	髪洗ふ	夏	19.6.13.
139	髪洗ふ女の白きうなじかな	髪洗ふ	夏	19.6.14.
140	髪洗ひ女もすなる梯子酒	髪洗ふ	夏	19.6.14.
141	無防備を許し女は髪洗ふ	髪洗ふ	夏	19.6.14.
142	翡翠のその瞬間を待つ静寂	翡翠	夏	19.6.14.
143	翡翠の視線定まる池の面	翡翠	夏	19.6.14.
144	翡翠の凝視の一点魚を待つ	翡翠	夏	19.6.14.
145	魚影待つ翡翠の黙人の黙	翡翠	夏	19.6.14.
146	上水路日当る側の青芒	青芒	夏	19.6.14.
147	青芒色艶やかに古戦場	青芒	夏	19.6.14.
148	一陣の風に頷く青芒	青芒	夏	19.6.14.
149	青春はかくのごとしと青芒	青芒	夏	19.6.14.
150	日暮れ道夕日の残す忘草	忘草（＝萱草の花）	夏	19.6.14.
151	草原に入日のかけら忘草	忘草	夏	19.6.14.
152	草原に入日のかけら野萱草	忘草	夏	19.6.14.
153	色合せ入日としたる忘草	忘草	夏	19.6.14.
154	野仏を照らす夕日や忘草	忘草	夏	19.6.14.
155	野仏を囲む日暮れの忘草	忘草	夏	19.6.14.
156	大根抜きめきし鰹の一本釣	鰹	夏	19.6.15.
157	大根を引き抜く如く鰹釣	鰹	夏	19.6.15.
158	大根を引き抜く手際鰹釣	鰹釣	夏	19.6.15.
159	喫水上げ船足重き鰹船	鰹船	夏	19.6.15.
160	船倉のずしりと重き鰹船	鰹船	夏	19.6.15.
161	美しき尻を揃へし実梅捥ぐ	実梅	夏	19.6.15.
162	曲線の尻美しき実梅捥ぐ	実梅	夏	19.6.15.
163	ぶつ切りをどんぶりで食む鰹船	鰹船	夏	19.6.15.
164	滴りを口開けて受く峠道	滴り	夏	19.6.15.
165	青苔を伝ふ滴り摩崖仏	滴り	夏	19.6.15.
166	滴れる洞奥に坐す濡れ仏	滴り	夏	19.6.15.
167	したたれる洞奥深く濡れ仏	滴り	夏	19.6.15.
168	大根を抜くが如くに鰹釣	鰹釣	夏	19.6.15.
169	次々と空に弧を描く鰹	鰹	夏	19.6.15.
170	大根抜くごとき鰹や一本釣	鰹	夏	19.6.16.
171	喫水を上げて帰港の鰹船	鰹船	夏	19.6.16.
172	船腹のずしりと重き鰹船	鰹船	夏	19.6.16.
173	青梅や尻に揃ひの蒙古斑	青梅	夏	19.6.16.
174	畑仕事農婦の胸の丸き汗	汗	夏	19.6.16.
175	ノーブラの胸にまあるく汗の跡	汗	夏	19.6.16.
176	千段の磴上り切り汗拭ふ	汗	夏	19.6.16.
177	顔の汗拭ひつ出でしラーメン店	汗	夏	19.6.16.
178	おしぼりで汗を拭ひつカレー食む	汗	夏	19.6.16.
179	睡蓮の池面眩しき照り返し	睡蓮	夏	19.6.16.
180	木漏れ日や睡蓮の池静まりぬ	睡蓮	夏	19.6.16.
181	睡蓮の池面で遊ぶみずすまし	睡蓮・みずすまし	夏	19.6.16.
182	父の日や今年も届く赤ワイン	父の日	夏	19.6.16.
183	大根抜く手際で挑む鰹釣	鰹釣	夏	19.6.16.
184	大根抜く手際なりけり鰹釣	鰹釣	夏	19.6.16.
185	大根抜く手際を見せて鰹釣	鰹釣	夏	19.6.16.
186	大根抜く手際に紛う鰹釣	鰹釣	夏	19.6.16.
187	大根抜く呼吸と同じ鰹釣	鰹釣	夏	19.6.16.
188	父の日や孫がくれたる肩叩き券	父の日	夏	19.6.17.
189	父の日や孫がくれたる肩もみ券	父の日	夏	19.6.17.
190	鉢掲げ人込み分くる朝顔市	朝顔市	夏	19.6.17.
191	朝顔市鉢高くして人分けり	朝顔市	夏	19.6.17.
192	鉢掲げ人を縫ひ行く朝顔市	朝顔市	夏	19.6.17.
193	朝顔市異国語も飛ぶ鬼子母神	朝顔市	夏	19.6.17.
194	夏祭天下御免の真昼酒	夏祭	夏	19.6.17.
195	胸固く晒を巻きし女子神輿	神輿	夏	19.6.17.
196	胸固く晒を巻ひて女子神輿	神輿	夏	19.6.17.
197	倶利伽羅の刺青懐かし夏祭	夏祭	夏	19.6.17.
198	倶利伽羅の刺青消えし夏祭	夏祭	夏	19.6.17.
199	幼らの茅の輪をくぐる兎跳び	茅の輪	夏	19.6.17.
200	とんぶりでキャビアの気分帚草	帚草	夏	19.6.18.
201	山寺の日暮れの鐘や帚草	帚草	夏	19.6.18.
202	肩寄せて毬藻と紛ふ帚草	帚草	夏	19.6.18.
203	肩寄せて丘の毬藻か帚草	帚草	夏	19.6.18.
204	もこもこが笑みを誘ひし帚草	帚草	夏	19.6.18.
205	肩寄せてもこりもこりと帚草	帚草	夏	19.6.18.
206	もこもこに幼指さす帚草	帚草	夏	19.6.18.
207	メルヘンの畑かも知れず帚草	帚草	夏	19.6.18.
208	座禅堂もこもこ並ぶ帚草	帚草	夏	19.6.18.
209	微笑みを誘ふ畑や帚草	帚草	夏	19.6.18.
210	寒山と拾得の声帚草	帚草	夏	19.6.18.
211	人の足止めるもこもこ帚草	帚草	夏	19.6.18.
212	黒揚羽ひらひら舞ひぬ昼の墓地	揚羽蝶	夏	19.6.18.
213	卒塔婆にひょいと止まりし黒揚羽	揚羽蝶	夏	19.6.18.
214	釣れ立てを丼で食ふ鰹船	鰹船	夏	19.6.18.
215	朝焼けやまだついている玄関灯	朝焼け	夏	19.6.19.
216	尺とりの律儀に尺を取る頑固	尺とり	夏	19.6.19.
217	尺とりの地に足付けし競歩かな	尺とり	夏	19.6.19.
218	炎天に疲れを知らぬ蟻の列	炎天・蟻	夏	19.6.19.
219	日盛りや姫蔓蕎麦の花の帯	日盛り	夏	19.6.19.
220	かたばみの花茎揺らす夏の蝶	夏蝶	夏	19.6.19.
221	仕舞屋の小さきチャペル夏の蝶	夏蝶	夏	19.6.19.
222	辛子効かせ漢の啜る心太	心太	夏	19.6.19.
223	心太箸一本で啜りけり	心太	夏	19.6.19.
224	あん蜜を関取と食む相撲女子	あん蜜	夏	19.6.19.
225	黒文字の太きを添へて葛桜	葛桜	夏	19.6.19.
226	のほほんと生きて八十路や濃紫陽花	紫陽花	夏	19.6.19.
227	黒揚羽伝へたきことある風情	揚羽蝶	夏	19.6.19.
228	うなじから背に汗走る座禅堂	汗	夏	19.6.20.
229	うなじから背を走る汗座禅堂	汗	夏	19.6.20.
230	皮を剥ぐごとく剥ぎ取る汗のシャツ	汗	夏	19.6.20.
231	農婦の胸丸き乳房の汗マーク	汗	夏	19.6.20.
232	農婦来る胸乳に二つ汗マーク	汗	夏	19.6.20.
233	農婦来る胸乳に丸い汗マーク	汗	夏	19.6.20.
234	万年の滴り続く鍾乳洞	滴り	夏	19.6.20.
235	柄杓に滴り受くる観音堂	滴り	夏	19.6.20.
236	老鶯を聴きつ滴り口に受く	滴り	夏	19.6.20.
237	滴りに口寄す真上摩崖仏	滴り	夏	19.6.20.
238	仕舞屋の小さきチャペル立葵	立葵	夏	19.6.20.
239	波間から鰹引き抜く竿捌き	鰹	夏	19.6.20.
240	滴りを水割りにして露営の夜	滴り	夏	19.6.20.
241	滴りを樋に集めし苔清水	滴り	夏	19.6.20.
242	滴りて苔の蒸したる土牢跡	滴り	夏	19.6.20.
243	滴りて苔むす小さき遭難碑	滴り	夏	19.6.21.
244	滴りて緑衣を纏ふ観世音	滴り	夏	19.6.21.
245	滴りて苔の緑衣の観世音	滴り	夏	19.6.21.
246	滴りて苔を纏ひし観世音	滴り	夏	19.6.21.
247	源流の滴り掬ふ至福かな	滴り	夏	19.6.21.
248	波間から鰹引き抜く一本釣り	鰹	夏	19.6.20.
249	一本釣り鰹次々ごぼう抜き	鰹	夏	19.6.21.
250	ごぼう抜き一本釣りの鰹漁	鰹	夏	19.6.21.
251	鰹漁一本釣りの力業	鰹	夏	19.6.21.
252	畑仕事農婦の胸の丸き汗	汗	夏	19.6.21.
253	政治家のどろどろ隠す御禊かな	御禊	夏	19.6.21.
254	重なりし葉に重なりて青胡桃	青胡桃	夏	19.6.21.
255	上水の鯉の背びれや青胡桃	青胡桃	夏	19.6.21.
256	上水の水面覆ひて青胡桃	青胡桃	夏	19.6.21.
257	青梅に似れど山出し青胡桃	青胡桃	夏	19.6.21.
258	空ふさぐ葉をかき分けて青胡桃	青胡桃	夏	19.6.21.
259	青柿の惜しげを見せぬ落果かな	青柿	夏	19.6.21.
260	砂日傘出入りの多き一家族	砂日傘	夏	19.6.22.
261	母さんはゆっくり昼寝砂日傘	砂日傘	夏	19.6.22.
262	砂日傘みんな出払ひ母スマホ	砂日傘	夏	19.6.22.
263	砂日傘簡易テントに押され気味	砂日傘	夏	19.6.22.
264	ロープウェイ滴る山に己が影	山滴る	夏	19.6.22.
265	分け入れば山滴りて眼に眩し	山滴る	夏	19.6.22.
266	整然と百鉢育つ帚草	帚草	夏	19.6.22.
267	花卉園に千鉢並ぶ帚草	帚草	夏	19.6.22.
268	とんぶりの味懐かしき帚草	帚草	夏	19.6.22.
269	とんぶりの味思ひ出す帚草	帚草	夏	19.6.22.
270	浜日傘影を作りて影に入る	浜日傘	夏	19.6.23.
271	砂日傘ビーチチェアーの白昼夢	砂日傘	夏	19.6.23.
272	三尺寝弟子はスマホで寝もやらず	三尺寝	夏	19.6.23.
273	三尺寝寝る間惜しんでスマホかな	三尺寝	夏	19.6.23.
274	パソコンに向かひ気付けば三尺寝	三尺寝	夏	19.6.23.
275	山の洞ザック枕に三尺寝	三尺寝	夏	19.6.23.
276	スマホから目覚ましの音三尺寝	三尺寝	夏	19.6.23.
277	長距離トラック三十分の三尺寝	三尺寝	夏	19.6.23.
278	親方の夢で下知する三尺寝	三尺寝	夏	19.6.23.
279	棟梁の夢で下知する三尺寝	三尺寝	夏	19.6.23.
280	研修のアフリカ系も三尺寝	三尺寝	夏	19.6.23.
281	園児らの干物めきたる昼寝かな	昼寝	夏	19.6.23.
282	ケーブルカー滴る山を軋み行く	山滴る	夏	19.6.23.
283	吊り橋や山滴りて暗き谿	山滴る	夏	19.6.23.
284	ロープウェイ滴る山に映す影	山滴る	夏	19.6.23.
285	翡翠や嘴で抗ふ太き魚	翡翠	夏	19.6.23.
286	滴りて苔を纏ひし磨崖仏	滴り	夏	19.6.23.
287	折り鶴の重き願ひや原爆忌	原爆忌	夏	19.6.23.
288	ふんと言ふ眼で杭なる河鵜かな	鵜	夏	19.6.24.
289	鵜の数を友待つ暇に数へけり	鵜	夏	19.6.24.
290	騒ぎ立つ髪切虫を放ちけり	髪切虫	夏	19.6.24.
291	キイキイと天牛（かみきり）鳴かす昭和の子	天牛	夏	19.6.24.
292	蜘蛛の子の散りて始まるこの世かな	蜘蛛の子	夏	19.6.24.
293	蜘蛛の子のひたすら散じ走りけり	蜘蛛の子	夏	19.6.24.
294	とげとげの葉を従えて紅の花	紅花	夏	19.6.24.
295	雨に濡れ色鮮やかに青山椒	愛山椒	夏	19.6.24.
296	お伽めく日暮れの畑の帚草	帚草	夏	19.6.24.
297	靄がかる畑の日暮れや帚草	帚草	夏	19.6.24.
298	刈られたるなぞへの径の草いきれ	草いきれ	夏	19.6.24.
299	草いきれ電動ソーの唸りけり	草いきれ	夏	19.6.24.
300	草いきれ少女が二人立ち話	草いきれ	夏	19.6.24.
301	ラジコンの飛行機舞ひぬ草いきれ	草いきれ	夏	19.6.24.
302	浮雲や池面くるくる源五郎	源五郎	夏	19.6.25.
303	田の水に独り遊びの源五郎	源五郎	夏	19.6.25.
304	息継ぎの一泡抱きて源五郎	源五郎	夏	19.6.25.
305	水槽に屁玉とばして源五郎	源五郎	夏	19.6.25.
306	踏まれてもおほばこの花穂立ち上がる	おほばこ	夏	19.6.25.
307	おほばこの花穂踏みゆけば山の墓地	おほばこ	夏	19.6.25.
308	おほばこの確と花咲くアスファルト	おほばこ	夏	19.6.25.
309	さやさやと音無き音や竹落葉	竹落葉	夏	19.6.25.
310	竹落葉被り音聞く百羅漢	竹落葉	夏	19.6.25.
311	百羅漢耳欹てる竹落葉	竹落葉	夏	19.6.25.
312	さやさやと音を眼で聞く竹落葉	竹落葉	夏	19.6.25.
313	竹落葉頭に肩に百羅漢	竹落葉	夏	19.6.25.
314	百羅漢眠気誘はれ竹落葉	竹落葉	夏	19.6.25.
315	さやさやと空耳に似て竹落葉	竹落葉	夏	19.6.25.
316	マンネリを怖れず平和原爆忌	原爆忌	夏	19.6.25.
317	マンネリを怖れず叫ぶ原爆忌	原爆忌	夏	19.6.25.
318	平和にはマンネリは無し原爆忌	原爆忌	夏	19.6.25.
319	雨に濡れ色の清しき青山椒	青山椒	夏	19.6.25.
320	雨上がり露の零るる青山椒	青山椒	夏	19.6.25.
321	靄がかる畑の日暮れや帚草	帚草	夏	19.6.25.
322	梅雨晴れ間色の清しき青山椒	青山椒	夏	19.6.26.
323	厨から擂る香清しき青山椒	青山椒	夏	19.6.26.
324	夕餉には味噌田楽か青山椒	青山椒	夏	19.6.26.
325	香に呼ばれ厨覗けば青山椒	青山椒	夏	19.6.26.
326	擂粉木の小さきで擂する青山椒	青山椒	夏	19.6.26.
327	晩酌で始まる夕餉青山椒	青山椒	夏	19.6.26.
328	老妻と静かな夕餉青山椒	青山椒	夏	19.6.26.
329	庭に降り小ざるに摘みし青山椒	青山椒	夏	19.6.26.
330	碁敵を引き留め夕餉青山椒	青山椒	夏	19.6.26.
331	青山椒香も一品の夕餉かな	青山椒	夏	19.6.26.
332	赤いべろ青いべろ出しかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
333	氷あずき注文したる初デート	かき氷	夏	19.6.27.
334	舌出せば色毒々しかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
335	毒々し舌を見せ合ふかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
336	かき氷アルミの匙の懐かしき	かき氷	夏	19.6.27.
337	鈍色のアルミの匙でかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
338	赤文字の氷の旗やかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
339	食べ終えて舌の痺れしかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
340	削氷機唸り続けるかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
341	菊坂や手動懐かしかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
342	痺れたる舌を見せ合ふかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
343	駄菓子屋の手動の響きかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
344	べろの色父子で見せ合ふかき氷	かき氷	夏	19.6.27.
345	かき氷ばさりと零しべそ掻く子	かき氷	夏	19.6.27.
346	滴りて緑衣を纏ふ磨崖仏	滴り	夏	19.6.27.
347	竹落葉頭に肩に百羅漢	竹落葉	夏	19.6.28.
348	百羅漢眠気誘はれ竹落葉	竹落葉	夏	19.6.28.
349	蜘蛛の囲に不動明王金縛り	蜘蛛の囲	夏	19.6.28.
350	毘沙門に仕えて走る百足かな	百足	夏	19.6.28.
351	蜘蛛の囲や父子相伝の技光る	蜘蛛の囲	夏	19.6.28.
352	一本の糸で始まる蜘蛛囲かな	蜘蛛の囲	夏	19.6.28.
353	蠅虎（はえとりぐも）八艘飛びの技さえる	蠅虎	夏	19.6.28.
354	蜘蛛の囲に夜露鏤め待つ女郎	蜘蛛の囲	夏	19.6.28.
355	蠅虎ネット張る手間惜しみけり	蠅虎	夏	19.6.28.
356	蜘蛛の子や散り際競ふ事始め	蜘蛛の子	夏	19.6.28.
357	蜘蛛の子の散るを踏む子と踏まぬ子と	蜘蛛の子	夏	19.6.28.
358	太鼓裂け蜘蛛の子散らす日暮れかな	蜘蛛の子	夏	19.6.28.
359	ピカドンの二発が止め終戦忌	終戦忌	夏	19.6.28.
360	大国も火事場泥する終戦忌	終戦忌	夏	19.6.28.
361	親方の声飛ぶ汗の相撲部屋	汗	夏	19.6.28.
362	農婦の胸丸き乳首の汗マーク	汗	夏	19.6.28.
363	朝焼けや少し眠たげ玄関灯	朝焼け	夏	19.6.28.
364	朝焼けや少し惚けし玄関灯	朝焼け	夏	19.6.28.
365	朝焼けや惚けて灯る玄関灯	朝焼け	夏	19.6.28.
366	髪洗ひ一つのけじめ付ける朝	朝焼け	夏	19.6.28.
367	日盛やカリヨン響く時計台	日盛	夏	19.6.29.
368	バス停や踏む陰の無き日の盛り	日盛	夏	19.6.29.
369	日盛やラーメン店に人の列	日盛	夏	19.6.29.
370	ソナチネをさらふピアノや日の盛り	日盛	夏	19.6.29.
371	日盛の交差点行く荒川線	日盛	夏	19.6.29.
372	短パンの若き女や日の盛り	日盛	夏	19.6.29.
373	勤行の木魚の音や日の盛り	日盛	夏	19.6.29.
374	日盛や赤いバイクの郵便夫	日盛	夏	19.6.29.
375	猿山の猿も日陰に日の盛り	日盛	夏	19.6.29.
376	釣り堀の人影消ゆる日の盛り	日盛	夏	19.6.29.
377	庇下肩寄す鳩や日の盛り	日盛	夏	19.6.29.
378	浜昼顔砂地に錆びた船外機	浜昼顔	夏	19.6.30.
379	浜昼顔漁夫の繕ふ破れ網	浜昼顔	夏	19.6.30.
380	浜昼顔砂地の先は日本海	浜昼顔	夏	19.6.30.
381	浜昼顔そよろと過る海の風	浜昼顔	夏	19.6.30.
382	帯一本上り下りの蟻の列	蟻	夏	19.6.30.
383	指揮命令行き届きたる蟻の列	蟻	夏	19.6.30.
384	逃げ出すもさぼるもゐない蟻の列	蟻	夏	19.6.30.
385	蟻の列一度は見たき最後尾	蟻	夏	19.6.30.
386	青春の座右の詩集走る紙魚	紙魚	夏	19.6.30.
387	草子本四十八手に紙魚走る	紙魚	夏	19.6.30.
388	四十八手指南の草紙紙魚走る	紙魚	夏	19.6.30.
389	けふもまた紙魚と共存古書店主	紙魚	夏	19.6.30.
390	青春の手擦れし詩集走る紙魚	紙魚	夏	19.6.30.
391	リアル過ぎ華やぎすぎて水中花	水中花	夏	19.6.30.
392	詠み続け叫びつづけむ原爆忌	原爆忌	夏	19.6.30.
393	平成去り昭和も彼方金魚玉	金魚玉	夏	19.7.1.
394	総中流昭和懐かし金魚玉	金魚玉	夏	19.7.1.
395	ジャパンアズナンバーワンや金魚玉	金魚玉	夏	19.7.1.
396	蚊遣焚き縁台将棋指す昭和	蚊遣	夏	19.7.1.
397	未曾有なる歴史の昭和金魚玉	金魚玉	夏	19.7.1.
398	米搗虫ピシと駒音たてて跳ね	米搗虫	夏	19.7.1.
399	孑孑や浮ひて沈みてまた浮ひて	孑孑	夏	19.7.1.
400	ぼうふらの浮沈続けて育ちけり	孑孑	夏	19.7.1.
401	まくなぎに多々羅を踏みしジョガーかな	まくなぎ	夏	19.7.1.
402	ががんぼに過ぎたる脚の長さかな	ががんぼ	夏	19.7.1.
403	ががんぼのどうやら脚を持て余す	ががんぼ	夏	19.7.1.
404	脚一本捨てて蚊蜻蛉無頓着	蚊蜻蛉	夏	19.7.1.
405	愚直なる叫びは止めじ原爆忌	原爆忌	夏	19.7.1.
406	生きている限り許さじ原爆忌	原爆忌	夏	19.7.1.
407	愚直なることこそ力原爆忌	原爆忌	夏	19.7.1.
408	悠久の祈りを込めし原爆忌	原爆忌	夏	19.7.1.
409	いい湯なりこの平和こそ原爆忌	原爆忌	夏	19.7.1.
410	平和てふ人類の智慧原爆忌	原爆忌	夏	19.7.1.
411	瀬戸内の漁家の垣に海桐咲く	海桐の花	夏	19.7.1.
412	瀬戸内を渡る潮風とべら咲く	海桐の花	夏	19.7.1.
413	夕凪の海辺に白き花とべら	海桐の花	夏	19.7.1.
414	漁網干す漁師の庭の花とべら	海桐の花	夏	19.7.1.
415	うりずんの岬かぐわし花海桐	海桐の花	夏	19.7.1.
416	美らの海見下ろす岬とべら咲く	海桐の花	夏	19.7.1.
417	名を刻む摩文仁の丘や花海桐	海桐の花	夏	19.7.1.
418	巌門に響く波涛や花海桐	海桐の花	夏	19.7.2.
419	竹の皮脱いで天突く青春期	竹の皮脱ぐ	夏	19.7.2.
420	城址堀隙間なく埋め布袋草	布袋草	夏	19.7.2.
421	堀埋めて日を照り返す布袋草	布袋草	夏	19.7.2.
422	ペディキュアの深紅と競ふ紅蜀葵	紅蜀葵	夏	19.7.2.
423	無人駅咲き競ひたる立葵	立葵	夏	19.7.2.
424	無人駅ホームに立てば銭葵	銭葵	夏	19.7.2.
425	ワンマンカー降りしホームの立葵	立葵	夏	19.7.2.
426	向日葵の咲き競ひたる田一枚	向日葵	夏	19.7.2.
427	向日葵を咲かせ明るき保育園	向日葵	夏	19.7.2.
428	向日葵の背丈越える子越えない子	向日葵	夏	19.7.2.
429	向日葵の里と変わりし過疎の村	向日葵	夏	19.7.2.
430	睡蓮の池に真鯉の黒き影	睡蓮	夏	19.7.2.
431	睡蓮の池面眩しき照り返し	睡蓮	夏	19.7.2.
432	睡蓮や弁財天の浮御堂	睡蓮	夏	19.7.2.
433	向日葵の里に変身過疎の村	向日葵	夏	19.7.2.
434	草むらに足止めさせる野萱草	萱草の花	夏	19.7.2.
435	荒みたる葎なごます花萱草	萱草の花	夏	19.7.2.
436	荒みたる葎の灯し花萱草	萱草の花	夏	19.7.2.
437	荒みたる葎を統ぶる花萱草	萱草の花	夏	19.7.2.
438	曇天の草むらに映え花萱草	萱草の花	夏	19.7.2.
439	遠目にも花の灯しや野萱草	萱草の花	夏	19.7.2.
440	昼の灯を日暮れに閉ざす花萱草	萱草の花	夏	19.7.2.
441	チコチコちゃんに嬉々と叱られ濃紫陽花	紫陽花	夏	19.7.3.
442	チコちゃんに叱られさうな梅雨晴れ間	梅雨晴れ間	夏	19.7.3.
443	睡蓮の目覚めは早し朝まだき	睡蓮	夏	19.7.3.
444	朝靄の池の睡蓮目覚めけり	睡蓮	夏	19.7.3.
445	朝まだき目覚めも早やき未草	未草	夏	19.7.3.
446	さざ波の池面に揺ぎ無き睡蓮	睡蓮	夏	19.7.3.
447	浮雲を映す池面のひつじ草	未草	夏	19.7.3.
448	睡蓮の花閉じ初むる未かな	睡蓮	夏	19.7.3.
449	睡蓮に早寝早起き教へられ	睡蓮	夏	19.7.3.
450	睡蓮の池面に長き飛行雲	睡蓮	夏	19.7.3.
451	睡蓮のどれも花閉ず未刻	睡蓮	夏	19.7.3.
452	睡蓮の池面にひょいと鯉の口	睡蓮	夏	19.7.4.
453	近頃は見かけぬ物に誘蛾灯	誘蛾灯	夏	19.7.4.
444	汗拭うタオルのナイキ中国製	汗	夏	19.7.4.
455	薄墨の忌中の札や青すだれ	青簾	夏	19.7.4.
456	句会終えこれが本命冷し酒	冷し酒	夏	19.7.4.
457	年寄の冷や水ならじ冷し酒	冷し酒	夏	19.7.4.
458	冷やし中華運びどすんと実習生	冷し中華	夏	19.7.4.
459	鍾乳洞出でて茶店の冷さうめん	冷素麺	夏	19.7.4.
460	冷麦や赤と緑が二三本	冷麦	夏	19.7.4.
461	庭採りの青紫蘇で食ぶ冷素麺	冷素麺	夏	19.7.4.
462	七彩の冷し中華を眼でも食ぶ	冷し中華	夏	19.7.4.
463	時計草何気なく見る腕時計	時計草	夏	19.7.4.
464	名を刻む礎の丘や花海桐	花海桐	夏	19.7.5.
465	朱の映ゆる弁天堂や夏木立	夏木立	夏	19.7.5.
466	上水の日陰途切れぬ夏木立	夏木立	夏	19.7.5.
467	葉隠れの枝に五位鷺夏木立	夏木立	夏	19.7.5.
468	神池を跨ぐ朱の橋夏木立	夏木立	夏	19.7.5.
469	絵馬堂の天保の大絵馬夏木立	夏木立	夏	19.7.5.
470	ざりがにをげそで釣る子ら夏木立	夏木立	夏	19.7.5.
471	夏木立苔むして建つ供養塔	夏木立	夏	19.7.5.
472	奪衣婆の暗き祠や夏木立	夏木立	夏	19.7.5.
473	ジョギングの一団が行く夏木立	夏木立	夏	19.7.5.
474	夏木立静寂を破る鳥の声	夏木立	夏	19.7.5.
475	激流にカヤック縺れ夏木立	夏木立	夏	19.7.5.
476	吹き倒す風に地を這ふ黒揚羽	揚羽蝶	夏	19.7.6.
477	捥ぎ立てのトマトの温み日の温み	トマト	夏	19.7.6.
478	捥ぎ立てのトマトを食めば日の温み	トマト	夏	19.7.6.
479	上水の鯉ゆらゆらと夏木立	夏木立	夏	19.7.6.
480	松落葉さらりさらりと散りにけり	松落葉	夏	19.7.6.
481	眼こらせど散る影薄き松落葉	松落葉	夏	19.7.6.
482	松落葉ベンチに積もる日暮れかな	松落葉	夏	19.7.6.
483	えごの花散りたる後は忘れらる	えごの花	夏	19.7.6.
484	汗みどろ江戸風鈴の町工房	汗。風鈴	夏	19.7.6.
485	行き交ふは男も日傘差す時代	日傘	夏	19.7.6.
486	行き交ひし男も日傘差す時代	日傘	夏	19.7.6.
487	白南風や鴎引き連れ船帰港	白南風	夏	19.7.7
488	白南風やタクラマカンをふと想ふ	白南風	夏	19.7.7
489	白南風や窓全開の海女の小屋	白南風	夏	19.7.7
490	カツカレー食ぶる卯の花腐しかな	卯の花腐し	夏	19.7.7
491	夏霧や薄墨色の浮御堂	夏霧	夏	19.7.7
492	夏霧や中央線に遅れ無し	夏霧	夏	19.7.7
493	江ノ島をほぼ掻き消して夏の霧	夏霧	夏	19.7.7
494	夏霧を纏ひて走る荒川線	夏霧	夏	19.7.7
495	雉鳩のくぐもる声や夏の霧	夏霧	夏	19.7.7
496	点灯の車行き交ふ夏の霧	夏霧	夏	19.7.7
497	点眼の朝の一滴梅雨寒し	梅雨寒	夏	19.7.7
498	梅雨寒や片脚欠けし散歩犬	梅雨寒	夏	19.7.8
499	エアコンを暖にしてみる梅雨の寒	梅雨寒	夏	19.7.8
500	激辛のラーメン啜る梅雨の寒	梅雨寒	夏	19.7.8
501	梅雨寒を纏ひて走る荒川線	梅雨寒	夏	19.7.8
502	鬼子母神朝顔市の狭さかな	朝顔市	夏	19.7.8
503	鉢下げて朝顔市を抜け出せり	梅雨寒	夏	19.7.8
504	鉢守り朝顔市を無事に抜け	梅雨寒	夏	19.7.8
505	実を食めば畑のキャビア帚草	帚草	夏	19.7.8
506	泳ぐ間を惜しむスマホや砂日傘	砂日傘	夏	19.7.8
507	山滴る磴千段の上に寺	山滴る	夏	19.7.8
508	宿直開け家路を急ぐ草田男忌	草田男忌	夏	19.7.9
509	草田男忌長子次男も家出でぬ	草田男忌	夏	19.7.9
510	のど越しの良き麦とろや草田男忌	草田男忌	夏	19.7.9
511	マネキンの全裸が眩し草田男忌	草田男忌	夏	19.7.9
512	老妻は新妻の果て草田男忌	草田男忌	夏	19.7.9
513	丑の日やひと決意して鰻食む	土用鰻	夏	19.7.9
514	土用鰻おのれの美味さ知らずをり	土用鰻	夏	19.7.9
515	土用鰻おのれの美味さ知らずして	土用鰻	夏	19.7.9
516	土用うなぎ逃げる術なき桶の底	土用鰻	夏	19.7.9
517	土用鰻おのれの美味き身の不幸	土用鰻	夏	19.7.9
518	夏本番と騒ぐテレビや今朝の秋	今朝の秋	秋	19.7.9
519	小さき秋似て非なる今朝の秋	今朝の秋	秋	19.7.9
520	忘れてもいいことわすれ髪洗ふ	髪洗ふ	夏	19.7.9
521	嫌なこと忘れむとし髪洗ふ	髪洗ふ	夏	19.7.9
522	髪洗ふ兼題詠み髪洗ふ	髪洗ふ	夏	19.7.9
523	髪洗ひ出して電話の間の悪さ	髪洗ふ	夏	19.7.9
524	洗髪の真っ最中に鳴る電話	髪洗ふ	夏	19.7.9
525	出たくても出られぬ電話洗ひ髪	髪洗ふ	夏	19.7.9
526	胡瓜一本味噌付けて呑む独り酒	胡瓜	夏	19.7.9
527	曲がっても胡瓜はきゅうり塩で食む	胡瓜	夏	19.7.9
528	農婦の胸丸き二つの汗マーク	汗	夏	19.7.10
529	汗の輪を胸に滲ます農婦かな	汗	夏	19.7.10
530	アフリカ系研修生も三尺寝	三尺寝	夏	19.7.10
531	ケーブルカー滴る山に軋みけり	山滴る	夏	19.7.10
532	植木職腰に蚊遣の煙り立つ	蚊遣	夏	19.7.10
533	あん蜜と言ふ勇気なく心太	あん蜜・心太	夏	19.7.10
534	あん蜜と言へず頼みし心太	あん蜜・心太	夏	19.7.10
535	あん蜜を美味さうに食む相撲取り	あん蜜	夏	19.7.10
536	網の目が背中に痛きハンモック	ハンモック	夏	19.7.10
537	ギヤマンに琥珀を注ぐバー・ルパン	ギヤマン	夏	19.7.10
538	明珍の火箸風鈴響きけり	風鈴	夏	19.7.10
539	明珍の火箸風鈴にじり口	風鈴	夏	19.7.10
540	幸せを食みし土用の鰻かな	土用鰻	夏	19.7.11.
541	土用には何がなんでも鰻かな	土用鰻	夏	19.7.11.
542	土用には幸せを食む鰻食む	土用鰻	夏	19.7.11.
543	土用うなぎ幸せを食む一家族	土用鰻	夏	19.7.11.
544	山峡の吊り橋揺るる草田男忌	草田男忌	夏	19.7.11.
545	山々の緑に噎せる草田男忌	草田男忌	夏	19.7.11.
546	朝刊をポストから取る今朝の秋	今朝の秋	夏	19.7.11.
547	庭に立ち深呼吸する今朝の秋	今朝の秋	夏	19.7.11.
548	通勤の自転車過る今朝の秋	今朝の秋	夏	19.7.11.
549	白波の寄せては返す今朝の秋	今朝の秋	夏	19.7.11.
550	名を刻む礎に添ひぬ花海桐	海桐の花	夏	19.7.11.
551	名を刻む礎に添ひし花海桐	海桐の花	夏	19.7.11.
552	名を刻む礎に優し花海桐	海桐の花	夏	19.7.11.
553	名を刻む礎の丘や花海桐	花海桐	夏	19.7.12.
554	名を刻む礎の丘や今朝の秋	今朝の秋	秋	19.7.12.
555	新涼や薄毛となりしわが頭頂	新涼	秋	19.7.12.
556	新涼やフランス人の鼻濁音	新涼	秋	19.7.12.
557	園舎からおもちゃのちゃちゃちゃ涼新た	新涼	秋	19.7.12.
558	晋三と名付けし犬や涼新た	新涼	秋	19.7.12.
559	周航の白き客船涼新た	新涼	秋	19.7.12.
560	新涼や飼い犬の名は山田君	新涼	秋	19.7.12.
561	新涼やいまも昔も鯵フライ	新涼	秋	19.7.12.
562	新涼や海月人気の水族館	新涼	秋	19.7.12.
563	新涼や海月浮遊の大水槽	新涼	秋	19.7.12.
564	ぺちゃぱいは畳に画びょう涼新た	新涼	秋	19.7.12.
565	束髪の乙女弓引く涼あらた	新涼	秋	19.7.12.
566	西郷像けふも犬連れ涼新た	新涼	秋	19.7.12.
567	生身魂となりてけふも達者なり	生身魂	秋	19.7.13.
568	生身魂ガラスに映る己が影	生身魂	秋	19.7.13.
569	句友みな紛ふことなき生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
570	休肝日辞書に無いらし生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
571	率先し免許返せし生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
572	生身魂二人の会話かみ合わず	生身魂	秋	19.7.13.
573	遊び上手けふもお出かけ生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
574	生身魂日がなスマホと睨めっこ	生身魂	秋	19.7.13.
575	太極拳百歳目指す生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
576	あちこちの句会忙し生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
577	生身魂誰のことかと鏡見る	生身魂	秋	19.7.13.
578	耳遠く声の大きな生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
579	生身魂俺のことかと舌打てり	生身魂	秋	19.7.13.
580	家中で一番元気生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
581	大声で長電話する生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
582	敬遠の言葉身に沁む生身魂	生身魂	秋	19.7.13.
583	孫とのみ名は無き礎沖縄忌	沖縄忌	夏	19.7.13.
584	孫とのみ名の無き礎沖縄忌	沖縄忌	夏	19.7.13.
585	孫とのみ刻みし礎沖縄忌	沖縄忌	夏	19.7.13.
586	孫とのみ刻む礎や沖縄忌	沖縄忌	夏	19.7.13.
587	山里や人住む証し芋水車	芋水車	秋	19.7.13.
588	時々は一息つひて芋水車	芋水車	秋	19.7.13.
589	野仏の立ちし川辺の芋水車	芋水車	秋	19.7.13.
590	人影の無き山里の芋水車	芋水車	秋	19.7.13.
591	飽きもせずひねもす回る芋水車	芋水車	秋	19.7.13.
592	早き流れゆっくり回る芋水車	芋水車	秋	19.7.14.
593	急流にゆっくり回る芋水車	芋水車	秋	19.7.14.
594	孫とだけ名の無き礎沖縄忌	沖縄忌	夏	19.7.14.
595	孫とだけ刻む礎や沖縄忌	沖縄忌	夏	19.7.14.
596	日暮れきて急ぐ山路や提灯花（＝蛍袋）	提灯花	夏	19.7.14.
597	九十九折る山路の窪の風鈴草（＝蛍袋）	風鈴草	夏	19.7.14.
598	蛍袋そろそろ灯（ともし）付けんかな	蛍袋	夏	19.7.14.
599	蛍袋ペットボトルに挿し下山	蛍袋	夏	19.7.14.
600	山下る日暮れは早し釣鐘草（＝蛍袋）	釣鐘草	夏	19.7.14.
601	雨に濡れ下る山路や釣鐘草	釣鐘草	夏	19.7.14.
602	蛍袋蜜吸ひの虫送り出す	蛍袋	夏	19.7.14.
603	蛍袋九十九折るごと灯をともす	蛍袋	夏	19.7.14.
604	鼻毛十本抜ひてにやりと生身魂	生身魂	秋	19.7.14.
605	鼻毛抜き吹き飛ばしたる生身魂	生身魂	秋	19.7.14.
606	蛍袋点灯したき日暮れかな	蛍袋	夏	19.7.14.
607	日盛やピアノの音のたどたどし	日盛	夏	19.7.14.
608	大庇肩寄す鳩や日の盛り	日盛	夏	19.7.14.
609	黒板塀長き酒蔵日の盛り	日盛	夏	19.7.14.
610	日盛りやレール軋ませ荒川線	日盛	夏	19.7.14.
611	笛吹の川で珍し徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	19.7.15.
612	徒歩鵜飼い鵜匠も川を歩み行く	徒歩鵜	夏	19.7.15.
613	徒歩鵜飼い鵜匠も川を渉りけり	徒歩鵜	夏	19.7.15.
614	徒歩鵜の夜女鵜匠も川渉る	徒歩鵜	夏	19.7.15.
615	逸る鵜に歩速を上げる徒歩鵜匠	徒歩鵜	夏	19.7.15.
616	笛吹きを川風過る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	19.7.15.
617	逸る鵜に鵜匠よろめく徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	19.7.15.
618	川苔に足を取られし徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	19.7.15.
619	川中を鵜を追ひ渉る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	19.7.15.
620	スタメンを外れ無聊の鵜籠の鵜	徒歩鵜	夏	19.7.15.
621	笛吹の川面を上る徒歩鵜かな	徒歩鵜	夏	19.7.15.
622	日盛りや厨で物の割れる音	日盛	夏	19.7.15.
623	日盛りや厨で皿の割れる音	日盛	夏	19.7.15.
624	日盛りや赤いバイクの郵便夫	日盛	夏	19.7.15.
625	日盛りや厨で茶碗割れる音	日盛	夏	19.7.15.
626	日盛りやケトル鳴り出す蒸気笛	日盛	夏	19.7.16.
627	オランダ坂下る神父や日の盛り	日盛	夏	19.7.16.
628	オランダ坂神父の下る日の盛り	日盛	夏	19.7.16.
629	日盛りに神父下り来るオランダ坂	日盛	夏	19.7.16.
630	まず一糸張りて始まる蜘蛛の網	蜘蛛の囲	夏	19.7.16.
631	蜘蛛の囲を吐ひて腹減る女郎ぐも	蜘蛛の囲	夏	19.7.16.
632	風に耐え雨にもたえて蜘蛛の糸	蜘蛛の糸	夏	19.7.16.
633	蜘蛛の囲に阿吽の仁王金縛り	蜘蛛の囲	夏	19.7.16.
634	女郎蜘蛛腹凹ませて巣を仕上ぐ	蜘蛛の巣	夏	19.7.16.
635	朝露の重みで撓む蜘蛛の網	蜘蛛の囲	夏	19.7.16.
636	朝露のつつつと走る蜘蛛の網	蜘蛛の囲	夏	19.7.16.
637	網張りて女郎蜘蛛の待ち時間	女郎蜘蛛	夏	19.7.16.
638	朝露の重みで蜘蛛囲撓みけり	蜘蛛の囲	夏	19.7.16.
639	オランダ坂神父下り来る日の盛り	日盛	夏	19.7.16.
640	新涼や独り遊びのカード切る	新涼	秋	19.7.17.
641	両肩に貼りし湿布や涼新た	涼新た	秋	19.7.17.
642	句会終え小酌の杯涼新た	涼新た	秋	19.7.17.
643	剃り跡の青き雲水秋凉し	秋凉し	秋	19.7.17.
644	野歩きの頬過る風涼新た	涼新た	秋	19.7.17.
645	食べ終えてシェフに親指涼新た	涼新た	秋	19.7.17.
646	パソコンに向かひてうつら涼新た	涼新た	秋	19.7.17.
647	八百屋消え魚屋消えて秋涼し	秋凉し	秋	19.7.17.
648	新涼や丸き尻には蒙古斑	新涼	秋	19.7.17.
649	プレバトのテレビにぎやか秋凉し	秋凉し	秋	19.7.17.
650	トランペット吹く少年や秋凉し	秋凉し	秋	19.7.17.
651	たまらん坂神父下り来る日の盛り	日盛	夏	19.7.17.
652	同じ個所縺れるピアノ日の盛り	日盛	夏	19.7.17.
653	日盛やピアノの音の縺れけり	日盛	夏	19.7.17.
654	釣り堀の人影消えて日の盛り	日盛	夏	19.7.17.
655	日盛りやラーメン店の長き列	日盛	夏	19.7.17.
656	たどたどしピアノの音や日の盛り	日盛	夏	19.7.17.
657	古書店の鳩時計鳴く日の盛り	日盛	夏	19.7.17.
658	日の盛り靴あべこべに履いてる子	日盛	夏	19.7.18.
659	日盛りやひたすら上る磴千段	日盛	夏	19.7.18.
660	日盛りや翁も踏みし磴千段	日盛	夏	19.7.18.
661	ごみ出しを終えて庭掃く涼新た	涼新た	秋	19.7.18.
662	牛の眼に雲を映して涼新た	涼新た	秋	19.7.18.
663	ラーメン店人の列延び涼新た	涼新た	秋	19.7.18.
664	新涼の朝をいつもの荒川線	新涼	秋	19.7.18.
665	新涼を運ぶがごとく荒川線	新涼	秋	19.7.18.
666	水切りの石のスキップ涼新た	涼新た	秋	19.7.18.
667	新涼や鉄橋渡る貨車百輌	新涼	秋	19.7.18.
668	点眼薬ぽとりと落とす今朝の秋	今朝の秋	秋	19.7.18.
669	眼圧を下げる点眼今朝の秋	今朝の秋	秋	19.7.18.
670	幼弾くピアノの音や日の盛り	日盛	夏	19.7.18.
671	日盛りの保育園舎は夢紡ぐ	日盛	夏	19.7.19.
672	日盛りやピアノの稽古始まりぬ	日盛	夏	19.7.19.
673	咲き揃ひ無惨に萎むさぼてん花	さぼてんの花	夏	19.7.19.
674	ががんぼの持て余したる長き脚	ががんぼ	夏	19.7.19.
675	二本目の脚もががんぼ捨て行けり	ががんぼ	夏	19.7.19.
676	ががんぼの手足置き去る無頓着	ががんぼ	夏	19.7.19.
677	ががんぼのうっそり生きる平和主義	ががんぼ	夏	19.7.19.
678	土用うなぎ素通りをして泥鰌食ふ	土用鰻	夏	19.7.19.
679	土用鰻二段重ねの懐かしき	土用鰻	夏	19.7.19.
680	泥鰌鍋お運びはみな大年増	泥鰌鍋	夏	19.7.19.
681	蜜豆を食みつ夢道の俳句論	蜜豆	夏	19.7.19.
682	取りあえずビールで始む句座の後	ビール	夏	19.7.20.
683	仲見世を行き交ふ浴衣広東語	浴衣	夏	19.7.20.
684	レンタルの浴衣行き交ふ雷門	浴衣	夏	19.7.20.
685	一ッ葉を引けば逞し根を持てり	一ッ葉	夏	19.7.20.
686	露凉し狭庭に立ちて深呼吸	露凉し	夏	19.7.20.
687	ゴム手袋脱げば十指の涼しけり	涼し	夏	19.7.20.
688	羅のセレブも覗くスマホかな	羅	夏	19.7.20.
689	羅の墨染凛と門跡尼	羅	夏	19.7.20.
690	羅に隠す女身の火照りかな	羅	夏	19.7.20.
691	羅にひそと包みし恋ひとつ	羅	夏	19.7.20.
692	滴りの洞の奥なる濡れ観音	滴り	夏	19.7.20.
693	緑濃きなぞへの墓地や草田男忌	草田男忌	夏	19.7.20.
694	早よ出よと探れど遅き茗荷の子	茗荷の子	夏	19.7.20.
695	日盛りや厨でケトル鳴り響く	日盛	夏	19.7.20.
696	水切りの石軽やかに涼新た	涼新た	秋	19.7.20.
697	遊び上手けふも出かける生身魂	生身魂	秋	19.7.20.
698	師系では「風」の流れや秋の風	秋風	秋	19.7.21.
699	雪被る一樹と見えし山法師	山法師	夏	19.7.21.
700	橋の際花房揺るる花槐	花槐	夏	19.7.21.
701	朴の花宙の高きを見つめをり	朴の花	夏	19.7.21.
702	背の高き枝葉隠れに朴の花	朴の花	夏	19.7.21.
703	デザートに四日続きし大西瓜	西瓜	夏	19.7.21.
704	四分割西瓜西瓜の冷蔵庫	西瓜・冷蔵庫	夏	19.7.21.
705	放棄畑点々と咲く月見草	月見草	夏	19.7.21.
706	過疎の里あちこち増えし月見草	月見草	夏	19.7.21.
707	放棄畑頼みもせぬに月見草	月見草	夏	19.7.21.
708	小海線車窓を過る月見草	月見草	夏	19.7.21.
709	神の手のメスの捌きや草田男忌	草田男忌	夏	19.7.22.
710	ど突き合ふ句座の無くなり草田男忌	草田男忌	夏	19.7.22.
711	論争の絶えて万緑草田男忌	草田男忌	夏	19.7.22.
712	長子から里出て行けり草田男忌	草田男忌	夏	19.7.22.
713	蟇に託し家去る長子草田男忌	草田男忌	夏	19.7.22.
714	長子ら去り蟇の残りし草田男忌	草田男忌	夏	19.7.22.
715	限界の里蟇残るのみ草田男忌	草田男忌	夏	19.7.22.
716	うっそりと蟇這い出せり草田男忌	草田男忌	夏	19.7.22.
717	菊坂や神父下り来る日の盛り	日盛	夏	19.7.22.
718	菊坂や手動で削るかき氷	かき氷	夏	19.7.22.
719	人絶えし里にのそりと蟾蜍	蟾蜍	夏	19.7.22.
720	万緑のなぞへの墓地や草田男忌	万緑・草田男忌	夏	19.7.22.
721	家持たぬ故に厭はるなめくじり	なめくじ	夏	19.7.23.
722	なめくじを見れば塩振る人可笑し	なめくじ	夏	19.7.23.
723	蛞蝓や途中で消ゆる銀の筋	かめくじ	夏	19.7.23.
724	ででむしはひょこと葉の上愛でらるる	ででむし	夏	19.7.23.
725	ででむしとなめくじ出合ひ過ぎ行けり	ででむし・なめくじ	夏	19.7.23.
726	雨上がり殻まだ濡れし蝸牛	蝸牛	夏	19.7.23.
727	なめくじに塩撒きででむし愛ずる女	なめくじ・ででむし	夏	19.7.23.
728	家背負わぬ故に厭わはるなめくじり	なめくじ	夏	19.7.23.
729	ででむしの二匹寄り添ふ雨上がり	ででむし	夏	19.7.23.
730	家背負ふ自由不自由かたつむり	蝸牛	夏	19.7.23.
731	なめくじり夜明けに消えし銀の筋	なめくじ	夏	19.7.23.
732	ホームレス悲哀を分かつなめくじり	なめくじ	夏	19.7.23.
733	厨から女の悲鳴なめくじり	なめくじ	夏	19.7.23.
734	なめくじに悲鳴の上がる厨かな	なめくじ	夏	19.7.23.
735	濡れし葉の彼方此方に蝸牛	蝸牛	夏	19.7.23.
736	ででむしを食ふってことかエスカルゴ	ででむし	夏	19.7.23.
737	ででむしをフォークで食みぬエスカルゴ	ででむし	夏	19.7.23.
738	句座のみな紛ふことなき生身魂	生身魂	夏	19.7.23.
739	なめくじに塩取りに行く少年期（１９．７．２３．）	なめくじ	夏	19.7.23.
740	日盛りやケトル鳴り出す蒸気笛	日盛	夏	19.7.24.
741	鳴り響くケトルの笛や日の盛り	日盛	夏	19.7.24.
742	ピーピーとケトル鳴り出す日の盛り	日盛	夏	19.7.24.
743	まひまひや水面に映る飛行雲	まひまひ	夏	19.7.24.
744	くるくるとまたくるくると水すまし	水澄	夏	19.7.24.
745	あめんぼの空を逆さに滑りをり	あめんぼ	夏	19.7.24.
746	まひまひの暇を惜しんで回りをり	まひまひ	夏	19.7.24.
747	隠沼の池面の黙やあめんぼう	あめんぼ	夏	19.7.24.
748	流されし距離だけ戻るあめんぼう	あめんぼ	夏	19.7.24.
749	夜の静寂みみず鳴かせる螻蛄の技	蚯蚓・ 螻蛄	夏	19.7.24.
750	夜の厨静寂深めて螻蛄鳴けり	螻蛄	夏	19.7.24.
751	螻蛄鳴けばさらに深まる夜の静寂	螻蛄	夏	19.7.24.
752	螻蛄鳴けり無念の死者の歯の軋り	螻蛄	夏	19.7.24.
753	石畳のた打つ蚯蚓跨ぎ過ぐ	蚯蚓	夏	19.7.24.
754	石畳蚯蚓のた打つ死の舞踏	蚯蚓	夏	19.7.24.
755	含みたる口ややえごしゆすらうめ	ゆすらうめ	夏	19.7.24.
756	知らぬとは怖ろしきこと原爆忌	原爆忌	夏	19.7.25.
757	長崎は天気晴朗原爆忌	原爆忌	夏	19.7.25.
758	テレビの前起立黙とう原爆忌	原爆忌	夏	19.7.25.
759	梅雨明けの十日余りに秋立ちぬ	梅雨明け・立秋	夏・秋	19.7.25.
760	ノーブラの胸揺らし行く日の盛り	日盛	夏	19.7.25.
761	檜扇の一叢咲けり廃線路	檜扇	夏	19.7.25.
762	震度３虎杖の花少し揺れ	虎杖の花	夏	19.7.25.
763	上水の木立を割りて竹煮草	竹煮草	夏	19.7.25.
764	電気ソーまず竹煮草切り倒す	竹煮草	夏	19.7.25.
765	定位置は狭庭の隅の麒麟草	麒麟草	夏	19.7.25.
766	日暮れ来て一枝動かぬ土用凪	土用凪	夏	19.7.25.
767	庭採りの茗荷汁吸ふ朝餉かな	茗荷汁	夏	19.7.25.
768	指先にぽきぽき摘みし茗荷の子	茗荷の子	夏	19.7.25.
769	あれこれと遊び上手の生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
770	老いてなほ英書講読生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
771	句座仕切る九十媼の生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
772	還暦の娘叱咤の生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
773	をちこちの友見舞ふ日々生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
774	生身魂けふも元気に友見舞ひ	生身魂	秋	19.7.26.
775	飲む薬十種に余る生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
776	薬だけで腹膨るると生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
777	メゾソプラノ声艶やかに生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
778	花を活け書を書き句作生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
779	握り鮨ぱくりぱくりと生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
780	眼も耳も口跡もよし生身魂	生身魂	秋	19.7.26.
781	秋風や生きる吐息の自由律	生身魂	秋	19.7.26.
782	日盛りや律儀に時打つ鳩時計	日盛	夏	19.7.26.
783	からくりの時計にぎやか日の盛り	日盛	夏	19.7.26.
784	明治村手動で削るかき氷	かき氷	夏	19.7.26.
785	日盛りや健気に走る娘車夫	日盛	夏	19.7.26.
786	日盛りや浅草走る娘車夫	日盛	夏	19.7.27.
787	オランダ坂神父下り来る日の盛り	日盛	夏	19.7.27.
788	刻み葱てんこ盛りして泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.7.27.
789	大西日黒焦げの富士浮かびをり	西日	夏	19.7.27.
790	西日浴び川風欲しき芭蕉像	西日	夏	19.7.27.
791	碁敵の自転車で来る日の盛り	日盛	夏	19.7.27.
792	仁王像金縛りせし女郎蜘蛛	女郎蜘蛛	夏	19.7.27.
793	日盛りや走る笑顔の娘車夫	日盛	夏	19.7.27.
794	西日側空席目立つ湖西線	西日	夏	19.7.27.
795	いじめっ子さすがにゐない日の盛り	日盛	夏	19.7.27.
796	宅配のいつも小走り日の盛り	日盛	夏	19.7.27.
797	土用丑逃げるを追はず泥鰌食ふ	土用丑・泥鰌鍋	夏	19.7.27.
798	土用丑せめて泥鰌の鍋とせむ	土用丑・泥鰌鍋	夏	19.7.27.
799	割り下を継ぎ足し食めり泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.7.27.
800	土用鰻団扇叩いて客を呼ぶ	土用鰻	夏	19.7.27.
801	子らはみな過疎の村去り草田男忌	草田男忌	夏	19.7.27.
802	蟇残し長子村去る草田男忌	草田男忌	夏	19.7.27.
803	土用うなぎ美味き身を持つ不幸せ	土用鰻	夏	19.7.27.
804	日暮れ来て風鈴鳴りぬ草田男忌	草田男忌	夏	19.7.27.
805	日暮れ来て風鈴ちりと草田男忌	草田男忌	夏	19.7.27.
806	舌染むる色毒々しかき氷	かき氷	夏	19.7.27.
807	アルミの匙添へし茶店のかき氷	かき氷	夏	19.7.27.
808	知らぬ間に蹴飛ばしてゐる夏蒲団	夏蒲団	夏	19.7.28.
809	腹に載せ夢に落ちたる夏蒲団	夏蒲団	夏	19.7.28.
810	足二本突き出してゐる夏蒲団	夏蒲団	夏	19.7.28.
811	ふんはりと軽さがいのち夏蒲団	夏蒲団	夏	19.7.28.
812	ふんはりと軽さが凉し夏蒲団	夏蒲団	夏	19.7.28.
813	両の腕両の足出し夏蒲団	夏蒲団	夏	19.7.28.
814	腹巻のつもりで載せる夏蒲団	夏蒲団	夏	19.7.28.
815	手探りを繰り返したる夏蒲団	夏蒲団	夏	19.7.28.
816	夏蒲団ふはりと掛けて夢の中	夏蒲団	夏	19.7.28.
817	夏蒲団気付けば遠く足の先	夏蒲団	夏	19.7.28.
818	胡坐の膝突出し座る藺座布団	藺座布団	夏	19.7.28.
819	飴色の蠅取リボン無人駅	蠅取リボン	夏	19.7.28.
820	蠅取りのリボン下がりし鮮魚店	蠅取リボン	夏	19.7.28.
821	スタメンを外れ鵜籠の鵜の静か	鵜籠・鵜	夏	19.7.28.
822	テレビの前立ちて黙祷原爆忌	原爆忌	夏	19.7.28.
823	日盛りを笑顔で走る娘俥夫	日盛	夏	19.7.28.
824	仁王さま動かないでと女郎蜘蛛	女郎蜘蛛	夏	19.7.29.
825	女郎蜘蛛阿吽の像を金縛り	女郎蜘蛛	夏	19.7.29.
826	囲を張りて逆さの好きな女郎蜘蛛	女郎蜘蛛	夏	19.7.29.
827	朱の色を仁王と競ふ女郎蜘蛛	女郎蜘蛛	夏	19.7.29.
828	グラマンは案山子も撃ちて去り行けり	案山子	秋	19.7.29.
829	グラマンに案山子撃たるる白昼夢	案山子	秋	19.7.29.
830	グラマンに案山子撃たるる悪夢かな	案山子	秋	19.7.29.
831	快晴となりしが不幸長崎忌	長崎忌	夏	19.7.29.
832	過ちは繰り返さぬと原爆忌	原爆忌	夏	19.7.29.
833	桑の実の甘き香に噎せ二つ三つ	桑の実	夏	19.7.29.
834	桑の実を見つけ幼き日を語る	桑の実	夏	19.7.29.
835	過ちを繰り返しそふ原爆忌	原爆忌	夏	19.7.29.
836	分け入らば立ち往生の夏蓬	夏蓬	夏	19.7.30.
837	分け入らば藪漕ぎとなる夏蓬	夏蓬	夏	19.7.30.
838	照り返しひと際激し夏蓬	夏蓬	夏	19.7.30.
839	棄て畑を呑み尽くしたる夏蓬	夏蓬	夏	19.7.30.
840	分け入らば押し返しくる夏蓬	夏蓬	夏	19.7.30.
841	猛々し河原蓬の照り返し	河原蓬	夏	19.7.30.
842	夏よもぎ路床狭むる単線路	夏蓬	夏	19.7.30.
843	藪漕ぎの様で過りし夏蓬	夏蓬	夏	19.7.30.
844	人影の見えぬ里道夏よもぎ	夏蓬	夏	19.7.30.
845	人拒む河原蓬の照り返し	河原蓬	夏	19.7.30.
846	廃線路行く手を阻む夏よもぎ	夏蓬	夏	19.7.30.
847	サバイバルナイフ一振り竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
848	背比べするかに並ぶ竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
849	竹煮草日暮れの早き峡の里	竹煮草	夏	19.7.31.
850	吊り橋の際に憮然と竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
851	愛でられもせぬに花咲く竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
852	鎌一振り切り倒さるる竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
853	太き茎突き立て並ぶ竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
854	花咲けど愛でられもせず竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
855	花咲けど愛でる人無き竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
856	太き茎切れば血を吹く竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
857	人ならば嫌はれ松子竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
858	立ち止まる人無き花の竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
859	繋がれし山羊も齧らぬ竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
860	ふてぶてし様で立ちたる竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
861	スカイツリー望む丘陵竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
862	猛々し人無き里の竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
863	荒地こそわがグルンドと竹煮草	竹煮草	夏	19.7.31.
864	てやんでえ土用丑には泥鰌鍋	土用丑の日・泥鰌鍋	夏	19.8.1.
865	取り合へずビールで始む暑気払ひ	暑気払ひ	夏	19.8.1.
866	生身魂揃ひ踏みして暑気払ひ	暑気払ひ	夏	19.8.1.
867	とくとくと酒注ぐ音や鬼貫忌	鬼貫忌	秋	19.8.1.
868	枡に酒とくとく溢る鬼貫忌	鬼貫忌	秋	19.8.1.
869	句座終えて酒杯にぎやか暑気払ひ	暑気払ひ	夏	19.8.1.
870	五十鈴川神杉映す守武忌	守武忌	秋	19.8.1.
871	廃屋となりて半年秋簾	秋簾	秋	19.8.1.
872	ごみ隠すごとく空家の秋簾	秋簾	秋	19.8.1.
873	廃屋と共に朽ち行く秋簾	秋簾	秋	19.8.1.
874	補聴器を持たず聞きゆく秋の声	秋の声	秋	19.8.1.
875	補聴器の無くて聞こゆる秋の声	秋の声	秋	19.8.1.
876	渓谷の深き吊り橋秋の声	秋の声	秋	19.8.1.
877	補聴器の助けは要らぬ秋の声	秋の声	秋	19.8.1.
878	奥山の黙も加はる秋の声	秋の声	秋	19.8.1.
879	夜の厨ひそと聞こゆる秋の声	秋の声	秋	19.8.1.
880	補聴器を使はず暮れぬ秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.1.
881	雲速く日暮れも速し秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.1.
882	野火止や疎林に鳴けり秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.1.
883	秋簾掛りし検番三味の音	秋簾	秋	19.8.1.
884	秋簾掛りし検番三味聞こゆ	秋簾	秋	19.8.1.
885	秋の蝉集中避けしヘッジとも	秋簾	秋	19.8.1.
886	ベランダに落ちて昇天秋の蝉	秋簾	秋	19.8.1.
887	ベランダを死に場所にして秋の蝉	秋簾	秋	19.8.1.
888	サングラスかけて不倫の疑似体験	サングラス	夏	19.8.1.
889	サングラス和服に似合ふセレブかな	サングラス	夏	19.8.1.
890	サングラスかけてポリスに道尋ね	サングラス	夏	19.8.1.
891	まる暴もデカも色濃きサングラス	サングラス	夏	19.8.1.
892	梔子や浜のマリーといふ娼婦	梔子	夏	19.8.2.
893	梔子の強き香に噎せ月あかり	梔子	夏	19.8.2.
894	曹長と刻みし墓石敗戦忌	敗戦忌	秋	19.8.2.
895	曹長と刻む墓石や敗戦忌	敗戦忌	秋	19.8.2.
896	空襲の恐怖解かれし終戦日	終戦日	秋	19.8.2.
897	卒塔婆を手に墓参り大施餓鬼	施餓鬼	秋	19.8.2.
898	墓石背に卒塔婆新し施餓鬼かな	施餓鬼	秋	19.8.2.
899	句座一同紛ふことなき生身魂	生身魂	秋	19.8.2.
900	逃げ支度せずに眠りし終戦日	終戦日	秋	19.8.2.
901	ラジオから天皇の声終戦日	終戦日	秋	19.8.2.
902	パソコンの前でうたた寝今朝の秋	今朝の秋	秋	19.8.2.
903	新聞受け二紙重なりて今朝の秋	今朝の秋	秋	19.8.2.
904	仰向けに転げて果てぬ秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.2.
905	じいとだけ鳴ひて果てたり秋の蝉	秋の蝉	秋	19.8.2.
906	ピカドンを二発喰らひて敗戦忌	敗戦忌	夏	19.8.2.
907	ピカドンを知らぬ若者原爆忌	原爆忌	夏	19.8.2.
908	棄て畑を覆ひ尽くせし夏蓬	夏蓬	夏	19.8.2.
909	布袋草城址の濠を埋め尽くす	萍	夏	19.8.3.
910	布袋草城址の濠の照り返し	萍	夏	19.8.3.
911	布袋草重き緑の照り返し	萍	夏	19.8.3.
912	池の面隠す萍油照り	萍	夏	19.8.3.
913	朱一文字峠の茶屋の氷旗	氷旗	夏	19.8.3.
914	忘れまじ祈り懺悔の八月来	八月	夏	19.8.3.
915	ヒロシマとナガサキの惨八月来	八月	夏	19.8.3.
916	八月や六九十五の深き傷	八月	夏	19.8.3.
917	卒塔婆の墨書新し原爆忌	原爆忌	夏	19.8.3.
918	学習はネズミでもする原爆忌	原爆忌	夏	19.8.3.
919	ピカドンで止め差されし敗戦忌	敗戦忌	夏	19.8.3.
920	水一杯有難く飲む原爆忌	原爆忌	夏	19.8.3.
921	蛍袋点灯したき日暮れ道	蛍袋	夏	19.8.3.
922	猛暑日と騒ぐテレビや今朝の秋	猛暑日・今朝の秋	夏秋	19.8.3.
923	仁王の肩借りて囲を張る女郎蜘蛛	女郎蜘蛛	夏	19.8.3.
924	田の隅でふつふつ湧けり青みどろ	青みどろ	夏	19.8.4.
925	布袋草犇めく濠の照り返し	布袋草	夏	19.8.4.
926	藻の花を覗けば写る己が顔	藻の花	夏	19.8.4.
927	萍の版図広がる池の面	萍	夏	19.8.4.
928	引き抜けどまたはびこりし雪の下	雪の下	夏	19.8.4.
929	濡れ仏纏ふ緑衣に苔の花	苔の花	夏	19.8.4.
930	小仏へ続く山路や夏わらび	夏わらび	夏	19.8.4.
931	船外機錆びし砂地や浜豌豆	浜豌豆	夏	19.8.4.
932	トトロの森抜けるなぞへや蛇苺	蛇苺	夏	19.8.4.
943	隠沼や名のまがまがし蛭蓆	蛭蓆	夏	19.8.4.
934	熟成のチーズを覆ふ厚き黴	黴	夏	19.8.4.
935	黴るほど熟成進むチーズ蔵	黴	夏	19.8.4.
936	土用うなぎ団扇叩いて客呼べり	土用鰻	夏	19.8.5.
937	プールでも長手袋の女群かな	夏手袋	夏	19.8.5.
938	二の腕まで夏手袋の女行く	夏手袋	夏	19.8.5.
939	氷旗軒に突き出す甘味店	氷旗	夏	19.8.5.
940	墨染も匙しゃきしゃきとかき氷	かき氷	夏	19.8.5.
941	庭採りの茗荷も載りし冷奴	冷奴	夏	19.8.5.
942	花かつお踊る夕餉の冷奴	冷奴	夏	19.8.5.
943	休肝日しみじみと食む冷奴	冷奴	夏	19.8.5.
944	連日の猛暑に耐へて胡瓜もみ	胡瓜もみ	夏	19.8.5.
945	青柳の紅の映ゆるや胡瓜もみ	胡瓜もみ	夏	19.8.5.
946	茄子漬の紺鮮やかに夕餉かな	茄子漬	夏	19.8.6.
947	茄子漬のまさに茄子紺食む夕餉	茄子漬	夏	19.8.6.
948	茄子漬の紺さえざえと夕餉の膳	茄子漬	夏	19.8.6.
949	茄子紺の色鮮やかを食む夕餉	茄子漬	夏	19.8.6.
950	茄子漬をあてに夕餉の食前酒	茄子漬	夏	19.8.6.
951	氷片の浮かぶ泡盛毛魚（すく）豆腐	毛魚	夏	19.8.6.
952	泡盛のよく冷えてをり毛魚豆腐	毛魚	夏	19.8.6.
953	冷泡盛極上のあて豆腐よう	冷泡盛	夏	19.8.6.
954	クリームソーダ挟み女の長話	ソーダ水	夏	19.8.6.
955	さくらんぼ一つ浮かびしソーダ水	ソーダ水	夏	19.8.6.
956	蛍袋点灯したき日暮れかな	蛍袋	夏	19.8.7.
957	猛々しとしか言へない残暑かな	残暑	秋	19.8.7.
958	列島の茹で上がりたる残暑かな	残暑	秋	19.8.7.
959	大川端残暑に耐える翁像	残暑	秋	19.8.7.
960	雷門残暑を走る人力車	残暑	秋	19.8.7.
961	野良猫も日陰を歩く残暑かな	残暑	秋	19.8.7.
962	ラジコン機残暑の空に切り込めり	残暑	秋	19.8.7.
963	掃苔の墓石も茹る残暑かな	残暑	秋	19.8.7.
964	蜘蛛の囲の蜘蛛も逃げ出す残暑かな	残暑	秋	19.8.7.
965	すり減りて読めぬ句碑あり秋の風	秋風	秋	19.8.7.
966	ふと見上ぐ夜空を走る星一つ	走り星	秋	19.8.7.
967	願いごと呟く間なき流れ星	流れ星	秋	19.8.7.
968	猛暑日が残暑に変る今朝の秋	今朝の秋	秋	19.8.7.
969	幼らよ心に刻め原爆忌	原爆忌	夏	19.8.8.
970	原爆を二発喰らひし敗戦忌	敗戦忌	夏	19.8.8.
971	忘れまい輪擦れてならじ原爆忌	原爆忌	夏	19.8.8.
972	八月の六日九日原子爆弾投下の日	原爆忌	夏	19.8.8.
973	三発目落とせば破滅原爆忌	原爆忌	夏	19.8.8.
974	繰り返す気配怖ろし原爆忌	原爆忌	夏	19.8.8.
975	真夏日の真っただ中に秋立ちぬ	真夏日・立秋	夏・秋	19.8.8.
976	猛暑なり庭に水撒く今朝の秋	今朝の秋	秋	19.8.8.
977	猛暑日を告げる予報士今朝の秋	今朝の秋	秋	19.8.8.
978	火鉢池孑孑湧かぬ酷暑かな	孑孑・酷暑	夏	19.8.8.
979	照り返すなぞへに太き夏蕨	夏蕨	夏	19.8.8.
980	刻み葱てんこに盛りぬ泥鰌鍋	泥鰌鍋	夏	19.8.8.
981	銀漢を泳ぎ渡りて夢に入る	銀漢	秋	19.8.9.
982	幼くて逝きし弟妹天の川	天の川	秋	19.8.9.
983	争ひの絶えぬ星から天の川	天の川	秋	19.8.9.
984	銀漢やいま一隻の高速艇	銀漢	秋	19.8.9.
985	銀漢をあてにしみじみ独り酒	銀漢	秋	19.8.9.
986	桂浜竜馬と眺む天の川	天の川	秋	19.8.9.
987	天の川峡の静寂に瀬音聴く	天の川	秋	19.8.9.
988	広大無辺タクラマカンの大銀河	銀が	秋	19.8.9.
989	卒塔婆のことりと鳴りぬ天の川	天の川	秋	19.8.9.
990	終戦となりし夜空の天の川	天の川	秋	19.8.9.
991	川端の翁座像や天の川	天の川	秋	19.8.9.
992	漁火や夜空華やぐ天の川	天の川	秋	19.8.9.
993	耳遠く眼は霞みても天の川	天の川	秋	19.8.10.
994	身内なる逝きし数へて天の川	天の川	秋	19.8.10.
995	白波や銀河呼び込む水平線	銀河	秋	19.8.10.
996	嬰の手の掴まんとする天の川	天の川	秋	19.8.10.
997	着飾りし淑女の頸の銀河かな	銀河	秋	19.8.10.
998	クリムトの女もかくや大銀河	銀河	秋	19.8.10.
999	クリムトの女つらぬく大銀河	銀河	秋	19.8.10.
1000	天の川がばと飲むかに水平線	天の川	秋	19.8.10.

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